機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第108話

 

 

 報告を終えたキオは真新しい連邦軍の軍服に着替えてオリバーノーツのアクト3に到着する。

 アクト3にはすでにウェンディ達がキオを待っていた。

 

「キオ、襟が少し曲がってるわよ」

「そうかな?」

「そうよ。今日から正式に軍人になるんだからきちんとしなさいよね」

 

 ウェンディはそう言いつつもキオの軍服の襟を直す。

 着る時に鏡で確認している為、問題がある程曲がっている訳ではなく、世話好きな幼馴染の事を少し煩わしく思いつつも母や叔母の前で襟を直される姿は気恥ずかしい。

 そんなキオをロマリーとユノアは微笑ましく見ている。

 

「これで良し!」

 

 ウェンディは気が済んだらしくキオはようやく解放されて一息つく。

 

「それじゃ、母さん、ユノア叔母さん、ウェンディ、そろそろ行くから」

「体には気をを付けるのよ。余り無茶な事はしないのよ。ちゃんとお父さんの言う事を聞くのよ」

「ロマリーさん、向こうには兄さんもいるからキオの無茶はさせないですよ」

 

 何かにつけてロマリーはキオを心配するが、ユノアはキオの配属先にはアセムもいるから大丈夫だと言う。

 それにアセムの部隊は新人の育成も兼ねている為、新人では難しい任務は与えられず、キオの実力なら何の問題もないはずだ。

 

「それはそうだけど……」

「それに僕はもう子供じゃないよ。母さん」

「キオは黙ってなさい。子供が軍に入って安心できる親はいないのよ」

 

 ユノアの言葉にキオは黙らされる。

 今は世界の情勢も安定傾向にあり、連邦軍の敵は大した武装もないテロリストかネオ・ヴェイガンの残党軍くらいな物でたまにUIEの無人機と交戦する程度でアセムが軍に入った時代よりもMSの性能の向上もあり危険ではなくなったが、息子を軍に見送る母の心情としては気が気でないだろう。

 

「だから定期的に連絡は入れなさいよ」

「分かってるよ」

 

 キオも自分が心配されていると言う事は理解しているが、そう何度も言われ続けると少し面白くはない。

 

「時間を見つけて連絡するから」

 

 キオはそういうも5年前にガンダムAGE-3のパイロットとしてディーヴァに乗艦していた時も自分から連絡をする事は結局一度もなかった。

 そんな前科がある為、キオの連絡するがどこまで信用出来るかは分からないが、キオの配属先にいるアセムは小まめにロマリーに連絡を入れている事もあり、そこまでの心配はいらない。

 キオはウェンディ達に見送られながら配属先に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクト3に停泊しているバロノークに新しく配属された3人が乗艦するとすぐにアクト3を出航した。

 キオ達は着任の挨拶すらもなしにパイロットスーツを着用して待機室で待たされている。

 待機室にはキオの他に2人いる。

 どちらもキオとは同期に当たるブライアン・マッカリースとデール・ミック

の2人だ。

 

「なぁ、俺のいた訓練校で噂になってたんだけどさ、ネオ・ヴェイガンの残党の連中がここのところ勢いを出している理由が女帝の亡霊らしいぜ」

 

 ブライアンがキオとデールにそう言いデールは大して興味はなさそうにしているがキオはその噂に食いつく。

 

「どういう事?」

「何でも5年前に戦死したネオ・ヴェイガンの女帝のヴァニス・イゼルカントがこの世に未練を残して現世を彷徨っているらしいって話だ」

 

 キオも最近、ネオ・ヴェイガンの残党の動きが活発になっていると言うニュースは知っていたが、その理由としてヴァニスの亡霊が出ていると言う噂は初耳であった。

 だが、絶対的な力でネオ・ヴェイガンを支配していたヴァニスの戦死がきっかけでネオ・ヴェイガンの勢いが衰えたと言うのであれば再びヴァニスが現れれば勢いづくと言うのも分かる。

 だが、キオはそれが真実でない事を願っている。

 エリスは最後にキオを信じて死んでいった。

 あの時から世界から戦いがなくなったと言う訳では無い為、エリスが生きていたとして今の世界に不満を持ち、あの時言っていたように再び世界にヴァニス・イゼルカントとして現れると言う事もあり得ないと言う訳ではない。

 

「バカバカしいね。亡霊なんて非科学的な存在がいる訳がない。そんな噂はネオ・ヴェイガンがでっち上げたデマに決まっている」

 

 デールはその噂を完全に否定する。

 噂自体はネオ・ヴェイガンの残党が勢いとつける為にでっち上げた嘘で亡霊なんて存在しないと主張する。

 

「けどよ。ヴァニス・イゼルカントのMSらしい影も目撃されてるって話しだ」

「そんな物は幾らでも捏造が効く」

 

 噂を裏付ける情報としてヴァニスの専用機として運用されていたガンダムレギオンの写真や映像があるが、それ自体今の時代では幾らでも捏造する事が出来る為、それで完全に裏付け出来ると言う訳ではない。

 

「キオはどう思うんだよ」

「僕は……」

 

 キオはエリスが生きていて欲しいと願う反面、生きていたとして今の世界の事をどう思っているかと言う事を知るのが怖いと言う思いもある。

 あれから5年が経ち、世界の情勢は大きく変わった。

 しかし、根本的な問題は未だに解決はしておらず問題も山積みだ。

 キオが答えあぐねていると待機室にアセムとその補佐官のジョシュア・シェパードが入って来る。

 アセムが連邦軍に戻る際に10年以上もアセムの右腕として共に戦って来たラドックを誘うも、ラドックは連邦軍のような正規軍とは合わないと言う事やビシディアンの解散の際に軍に入らなかったメンバーの今後の世話などがある為、軍に来る事は無かった。

 ジョシュアは優秀な人材としてアセムの補佐官として配属されている。

 二人が入って来ると流石に雑談を中断して立ち上がる。

 

「俺がお前達の指揮を執るアセム・アスノだ。配属されてすぐではあるが、バロノークは作戦行動に入る」

 

 アセムの言葉に3人の顔は引き締まる。

 いずれは実戦に出る事は軍に入った時点で分かっていた事だが、配属してすぐに実戦に入るとは思っていなかった為、アセムに言われてすぐに気を引き締めた。

 

「作戦の内容は砂漠地帯に潜伏しているネオ・ヴェイガン残党軍の拘束だ」

「拘束ですか?」

「そうだ。まず、ナトーラ艦長に降伏勧告を出して貰う。それで連中が武装を解除して投降するのであれば、捕虜を回収して移送する。勧告を受け入れない場合は俺達が出撃して戦闘に入る。その際、可能な限り敵MSは戦闘不能に持ち込み敵パイロットは戦闘終了後に捕虜にしたい。無論、実戦経験のないお前達にそれを強要するつもりはない」

 

 バロノークが向かっているのはかつて、ディーヴァも通りファントム3の襲撃を受けた砂漠地帯だ。

 その辺りにネオ・ヴェイガンの残党と思われるMSが目撃されている為、調査にバロノークが派遣された。

 砂漠地帯と言う事でネオ・ヴェイガンの残党が隠れるにはうってつけな事もあり、交戦を前提に考えている。

 そして、今回の戦闘は敵の殲滅が目的ではない。

 始めは降伏勧告で敵が降伏してくれるのが一番の理想ではあるが、高確率で敵は降伏はしないだろう。

 そうなればMS隊の出番となる。

 MS戦で敵MSを戦闘不能にしてパイロットを捕虜にする。

 ネオ・ヴェイガン残党軍が多くのMSや戦艦を保有する背後には支援者の影が噂されている。

 軍としてもネオ・ヴェイガン残党軍は量産型レギルスやダナジンのようなネオ・ヴェイガンの主力MSはほとんど見る事は無いがそれでも多数のMSを保有して運用している以上はその噂を噂として無視する訳にもいかない。

 その為、ネオ・ヴェイガン残党軍のMSを戦闘不能にしてパイロットを捕虜にする事で少しでも情報を得たいと思っている。

 だが、敵MSを戦闘不能にすると言う事は敵との実力差がなければ難しい。

 アセムやキオならば簡単にでき、ジョシュアも出来ない事もない。

 しかし、ブライアンとデールは訓練校を主席で卒業はしているが、実戦の経験は訓練校時代に模擬戦で可能な限り実戦に近い訓練を受けただけで本物の実戦経験はない。

 無理に戦闘不能に持って行かせて逆に撃墜されると言う事を防ぐ為にもブライアンとデールには可能な限りと言っておく。

 

「質問が無いようなら、すぐに各員はMSにて待機し出撃準備に入る」

 

 作戦について質問もない為、各員は自分の搭乗機にて待機する。

 バロノークに搭載されているMSは全部で5機だ。

 アセムの搭乗機はガンダムAGE-2 フラットだ。

 AGE-2 ダークハウンドは見た目からして海賊のガンダムである為、ノーマルウェアに戻してかつてアセムが特務隊時代のカラーである白で塗り替えている。

 その際に若干の改良を加えた為、格闘能力はドッズランサーからハイパードッズライフルに変更になり低下し、フラッシュアイやアンカーショットなどの特殊な装備は持っていないが火力は向上し、光波推進システムを機体の一部に追加した事でMS形態での重力下での飛行も可能となっている。

 ジョシュアはアデルマークⅢに搭乗している。

 アデルマークⅢはAGE-1 グランサの追加装甲がアデルマークⅡに追加されている。

 それにより全体的に装甲が厚くなり少しの被弾では撃墜されない事から汎用型MSの主力機や指揮官機などとしても運用されている。

 ジョシュアのアデルマークⅢは指揮官機として運用される際に装備されるグラストロランチャーを装備した指揮官機仕様になっている。

 グラストロランチャーには推力強化のための光波推進システムが搭載されている為、クランシェ程に無いにしろ空中戦に対応も可能だ。

 ブライアンとデールの搭乗機は砲戦型MSのGブラスターだ。

 GブラスターはAGE-3をベースにしてその高い火力を活かした砲戦用MSとして量産されている。

 右手にはシグマシスライフルを装備しており、Gブラスターの持つ火器の中では最強の火力を誇る。

 両肩にはアデルキャノンから流用したドッズキャノンと三連装ミサイルポッドが装備されている。

 両手には電磁装甲が搭載され掌にはヴェイガンのMSと同様にビームサーベルが展開可能なビームバルカンが内蔵されている。

 脚部は現在、バロノークに搭載されているGブラスターは陸戦仕様でAGE-3 フォートレス同様にホバー移動が可能で宇宙戦仕様は脚部をAGE-3 オービタルと同じ物に換装される。

 キオはFXバウンサーに搭乗している。

 Gバウンサーを母体として、マッドーナ工房製のティエルヴァのデータも反映されている。

 右手には専用のドッズライフルに左腕にはシールド、腰には2連装ミサイル、バックパックにビームサーベル、腕の装甲にはビームダガーが装備されている。

 バックパックのテールバインダーは推力が向上した新型を搭載し機体の至るところに光波推進システムが搭載された事で重力下でも高い機動力を持つ。

 また、ビット兵器の類を装備しない事でコストの削減や現場での整備性を向上させている。 それぞれの機体で待機しながらもバロノークはネオ・ヴェイガンが潜伏していると思われる地域に接近する。

 そして、航行中のバロノークに対してミサイルが数発飛んで来る。

 そのミサイルはバロノークに直撃する事なく砂漠に落ちるが明らかにバロノークを狙っての攻撃である事は明らかだ。

 

「艦長、状況は?」

「ネオ・ヴェイガンの残党軍と思われるMSが多数本艦に接近中です。こちらからの通信に対して一切の返答はありません」

「了解した。出撃する」

 

 バロノークからの通信の一切を拒絶していると言う事は向こうに投降する意思があるとは思えない。

 ある程度のMSを持っている事砂漠地帯を単艦で航行しているバロノークは恰好のカモであると踏んでの襲撃であると思われる。

 敵に話し合いの余地がないと言う事は作戦の第二段階であるMS戦に移行される。

 バロノークからすぐにMS隊が出撃させられる。

 

「俺とキオは先行する。ジョシュアはブライアンとデールと共に伏兵に警戒しつつ母艦の護衛に回れ」

 

 AGE-2はストライダー形態に変形して、FXバウンサーと共に接近する敵MSへと向かう。

 アデルマークⅢは地上のGブラスターと合流してバロノークの防衛に入る。

 先行した2機にネオ・ヴェイガンの残党のMSが接近して来る。

 敵はドラドやウロッゾを砂漠戦用に改良したゴメルで構成されている。

 ゴメルはAGE-2にミサイルランチャーを放ち、AGE-2はMS形態に変形し両手にビームサーベルを持って地上に降りそのままゴメルの両腕を切断する。

 ゴメルが2機AGE-2を挟むように砂漠の中からシグルクローを構えて飛び掛かって来る。

 だが、AGE-2は1機目のゴメルの腕を切り裂き2機目のゴメルの攻撃を飛び上がってかわし、2機目のゴメルを踏み台にして1機目のゴメルに叩きつける。

 2機のゴメルはぶつかり倒れる。

 

「砂の中からの攻撃は厄介だな」

 

 砂の中を移動できるゴメルは攻撃するギリギリまでレーダーに捉える事も出来ない。

 その為、アセムはゴメルが砂の中から出て来た瞬間に反応するしかない。

 

「ジョシュア!」

「了解」

 

 後方からジョシュアのアデルマークⅢがグラストロランチャーを放つ。

 ビームが砂漠に直撃し爆発と共に砂が巻き上がる。

 

「そこか!」

 

 舞い上がった砂の中にゴメルの機影を見つけるとAGE-2はハイパードッズライフルでゴメルの腕を撃ち抜き、一気に接近するともう片方の腕をビームサーベルで切り落とす。

 ゴメルと戦闘不能にすると、ドラドがビームサーベルを展開して接近し、ビームサーベルを振り下すがAGE-2はハイパードッズライフルを腰につけてビームサーベルを抜いてドラドのビームサーベルを弾くと二本のビームサーベルでドラドの両腕を両足ごと切断し、足を失ったドラドは仰向けに倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 FXバウンサーも地上に降りて砂漠に対してドッズライフルを放つ。

 すると、砂漠の中からゴメルが出て来るがゴメルの片腕が破壊されている。

 ゴメルは残った腕のミサイルランチャーをFXバウンサーに向けるがミサイルランチャーを放つ前にドッズライフルで腕が撃ち抜かれFXバウンサーはゴメルとの距離を詰める。

 FXバウンサーはビームサーベルを抜いてゴメルの首を切り裂く。

 ゴメルが爆発を起こす前に切り離した頭部を掴むとFXバウンサーは後ろに飛び退く。

 ゴメルの胴体が爆発し、FXバウンサーは持っていた頭部を砂漠の上にゆっくりと置く。

 ドラドがビームバルカンを連射してFXバウンサーに突っ込んで来るがFXバウンサーはシールドで防ぎながらドッズライフルでドラドの四肢を撃ち抜く。

 FXバウンサーの背後からゴメルが飛び出して来るがゴメルが飛び出すよりも早くキオはXラウンダー能力で先読みしている為、FXバウンサーは振り向いてゴメルの懐に入りシールドで不ゴメルの腕を受け止める。

 FXバウンサーは手の装甲に内蔵されているビームダガーを持ちゴメルの首に突き刺す。

 そして、ゴメルの頭部を掴んで潰さないようにゴメルの頭部を引きちぎる。

 ゴメルの頭部を砂漠に置いてFXバウンサーは接近して来たドラドのビームサーベルを回避してビームサーベルでドラドの腕を切り落とす。

 

「こんな無意味な戦いをして!」

 

 FXバウンサーはドラドの両足を切り裂いてドラドをシールドで持ち上げて後方に投げ飛ばす。

 

「聞いてはいたが流石アスノ家の血筋と言うところか」

「俺らの出番はなかったですね」

 

 後方の3機が到着する事にはAGE-2とFXバウンサーの2機でネオ・ヴェイガンの残党軍のMSの大半が戦闘不能に追い込まれている。

 

「MS隊各機は注意して下さい! 大気圏外より大型の熱量をキャッチしました!」

「どう言う事だ?」

「不明です。識別信号も出ていません」

 

 戦闘が簡単に終わるかと思われたが、大気圏外より何かが降下して来ると反応をバロノークで捕捉していた。

 それからは識別信号が出ておらず、巨大な物体である事しか分からない。

 そして、少し離れたところに黒い影が出来ると上空から巨大な物が落ちて来る。

 

「何だ……あれはMSなのか……」

 

 砂漠に落ちた事で砂煙が舞い上がりやがてそれは姿を現す。

 巨大な物が起き上がると全貌が見えて来る。

 遠目で見るとダナジンを改良したMSに見えなくはないが、明らかにダナジンとは大きさが違う。

 大型MSのシドを軽く超え、巨大な翼を広げる。

 頭部には6つの目にドリル状の角が付いており、神話に出て来るドラゴンのように牙を持った頭部に両手もゴメルやウロッゾような巨大な手、重力下でバランスを取る為かダナジンスピーアーのような尾などダナジンを巨大化しているようにも見えるがその姿は神話に出て来るドラゴンが現れたような状況であった。

 

「データベースに情報がある……開発コード『サタン』……叔父さんが開発したMSか!」

 

 AGE-2のデータベースにはドラゴンの情報があった。

 クライドが開発した大罪シリーズの一つで機体名はサタンを表示されている。

 

「父さん! あのMS!」

「各機、油断するな!」

 

 サタンはバロノークの方を見る。

 バロノークから主砲でサタンに砲撃を開始するが、サタンはバロノークの主砲の直撃を受けても傷一つつく事は無い。

 地上からもアデルマークⅢがグラストロランチャーで2機のGブラスターはシグマシスライフルを放つがサタンには効果がない。

 

「化け物が!」

 

 AGE-2はストライダー形態に変形すると、サタンに接近する。

 サタンは装甲の隙間に内蔵されているビームガンを放つ。

 全身の装甲の隙間に内蔵されている為、サタンのビームガンの弾幕をストライダー形態でかわす事は難しく小回りの利くMS形態に変形してハイパードッズライフルを放つ。

 

「父さん!」

 

 FXバウンサーはドッズライフルで援護するが意味は無い。

 AGE-2はシールドを使いつつもサタンから距離を取る。

 

「大丈夫だ」

 

 バロノークの主砲やアデルマークⅢやGブラスターの火力を持ってしても傷をつける事の出来ない上に接近しようにも高密度の弾幕を張られては接近しようもない。

 

「隊長」

「現状でアレを倒すのは難しい。だが……」

 

 今の戦力でサタンを倒す事はまず不可能でサタンと戦う必要もない。

 現状で最善の策はこの場から撤退して、増援を要請するなり倒す策を考える事だが、サタンが大人しく逃がしてくれるとは思えない。

 

「父さん! また何か来る……でもこの感じ……」

 

 キオがそう言うと上空からのビームがサタンに直撃する。

 そして、上空からまた何かが降りて来る。

 今度はサタンのように非常識なサイズではく通常のMSサイズだった。

 上空から舞い降りたMSは光の翼を広げる。

 

「あのMSは……レギオンだと!」

「……エリスさん」

 

 舞い降りたMSはアセムには見覚えがあった。

 細部が違うがかつて、ネオ・ヴェイガンの女帝、ヴァニス・イゼルカントの専用機として運用されていたガンダムレギオンに酷似している。

 だが、シールドやシグマシスキャノン、Cファンネルなどは装備されているようには見えない。

 キオはレギオンが出て来た以上にレギオンに乗っているパイロットの事が誰なのか感知する事が出来た。

 

「エリスだと……本当なのか? キオ」

「本当だよ父さん! エリスさん何でしょ!」

 

 キオはレギオンのパイロットがエリスである事をXラウンダー能力を通して感じる事が出来た。

 

「誰だ……いや、この感じはキオか」

 

 レギオンと通信が繋がれレギオンのパイロットの声が聞こえて来る。

 相手は一瞬、誰だか分からなかったが向こうもキオの事を知っているような口ぶりだ。

 

「まさか、こんなところで会う事になるとはな……フッこれも運命と言う奴か」

「エリスさんなんでしょ! 生きていたんですか!」

「ヴァニス・イゼルカントは5年前に死んだ。今の私は亡霊……そう、差し詰め今の私は亡霊女帝(エンプレス・ファントム)と言ったところだ」

「エリスさん?」

 

 相手がエリスである事は確実であるが、言っている事がイマイチ理解出来ない。

 だが、サタンが口部に内蔵されている火炎放射機が放たれ3機は散開する。

 

「約束事も守れんとは無粋な奴だ」

「エリス、取りあえずお前は俺達の味方と言う事で良いんだな?」

「どうだろうな。取りあえずアレが敵である事は確定事項だ」

 

 エリスの言い回しはともかくサタンが敵と言う事は自分達の味方と見ても構わないとアセムは判断する。

 

「ナトーラ艦長、ここは俺達で時間を稼ぐ。バロノークは後退してくれ」

「分かりました。お願いします。アスノ少佐」

「ジョシュア達もどこに敵のMSが潜んでいるか分からん。バロノークの護衛につけ」

「了解です」

 

 大きな的になるバロノークやサタンの弾幕に対応できないジョナサン達を下げる事でアセム達はサタンを仕留める事に集中する事が出来る。

 バロノークは反転して後退を始め、ジョシュア達もバロノークの護衛について後退を始める。

 

「キオ、エリス、俺達はアレをここで抑える」

「分かったよ。父さん」

「抑えるなど小さい事を言うな。ここでアイツを倒してしまっても問題は無かろう」

「出来ればな」

 

 最低限はサタンの動きを止めるだけの損傷を与えたいが相手が相手だけに簡単に行くとは思えない。

 エリスの強気な発言は頼もしいが、倒す事に気を取られ過ぎて援護が大変になればバロノークを引かせた意味も無くなる。

 

「ならば、エリス・アスノとその愛機、ガンダムレギオン・ミラージュに任せて貰おうか!」

 

 エリスはそう言ってレギオン・ミラージュをサタンに向けて突撃する。

 

「エリスさん!」

「アイツ!」

 

 レギオン・ミラージュはサタンの弾幕を回避するが、かわし切れないビームを左腕にビームシールドを展開して防ぐ。

 レギオン・ミラージュは左腕にシールドが装備されていないが、両腕にはビームシールドの発生装置が内蔵されている。

 ビームシールドで弾幕を防ぎつつ、レギオンライフルを放つ。

 何発かレギオンライフルをサタンに直撃させるとレギオン・ミラージュは後退する。

 

「固いな」

「そう簡単にダメージを与える事が出来れば苦労はしない」

「エリスさん、一人で戦ってはダメです。ここは僕達と協力しましょう」

 

 AGE-2とFXバウンサーもレギオン・ミラージュに合流する。

 

「まぁ、良かろう。して策はあるのか?」

「外部からの攻撃で奴の装甲を抜く事は出来ないだろう」

「ならば、内部から破壊すると言う事だな?」

「そうだ」

 

 外部からの攻撃ではサタンの装甲には傷をつける事は出来ない事は実証済みだ。

 となれば内部から破壊するしかない。

 サタンはその巨体故に関節から内部を狙うと言う事は造作もない。

 

「だけど、あのMSの火力を掻い潜って内部を狙う事は出来るの?」

「私が囮になろう」

「そんな! 無茶ですよ!」

 

 敵の攻撃を誰かが囮となって引きつければその分、他のMSがサタンに接近するチャンスが出来る。

 だが、その囮役は敵の集中砲火を受ける事になる。

 

「問題はない。私には奥の手がある」

「迷っている暇はない。エリスが敵の攻撃を引きつけている間の俺とキオが奴の足を止める。良いな。キオ」

「……分かった。エリスさん、気を付けて下さい」

「私を誰だと思っている。史上最強絶対無敵のエリス・アスノだぞ。あの程度の攻撃など寝ぼけていてもかわせる」

 

 エリスはキオの心配を余所に自分の実力に絶対的な自信を持っているのか断言する。

 レギオン・ミラージュは再びサタンへと向かって行き、AGE-2とFXバウンサーは二手に分かれる。

 

「行け! ビット!」

 

 レギオン・ミラージュはレギルスR同様にエンベッドビットシステムが採用され機体の膝や肘に内蔵されている。

 レギオンビットを展開してサタンに対して弾幕を張る。

 サタンもビームガンをレギオン・ミラージュに集中させるが、レギオン・ミラージュはビームシールドとレギオンビットを駆使して防ぎ、レギオンライフルで応戦する。

 サタンの胴体の装甲が開閉すると強力なビームが放たれる。

 

「大した威力だ……が、いくら強力な攻撃も当たらねば無意味なのだよ」

 

 レギオン・ミラージュはビームをかわすとサタンの上へと移動する。

 左腕のビームバルカンとサタンの頭部に放ちながらサタンの頭部の前に出る。

 サタンは炎を吐きレギオン・ミラージュはかわしてレギオンライフルを放つ。

 サタンの腕の装甲がスライドするとそこには多数のミサイルが内蔵されている。

 大量のミサイルがレギオン・ミラージュに放たれ、頭部のセンサーバルカンや左腕のビームバルカン、レギオンライフルについているビームバルカンで応戦するもミサイルの数は多く迎撃が追いつけない。

 

「フッ……こんな事もあろうかと、父より与えられた奥義を使う時が来たようだな!」

 

 エリスは不敵な笑みを浮かべるとレギオン・ミラージュのスリット状のセンサーが上がりツインアイが露出する。

 そして、レギオン・ミラージュは青白く発光する。

 

「これこそが究極奥義レギオン・ミラージュバーストだ!」

 

 レギオン・ミラージュの新機能の一つにAGE-FXのFXバーストモードを解析して再現したバーストモードがある。

 バーストモードを起動させた事でツインアイが露出するだけでなくバックパックの光波推進システムの光の翼が更に大きな翼となる。

 そして、バーストモードを起動させた事で威力増している胸部のビームブラスターでミサイルを一気に迎撃する。

 

「さぁ! ここからは私のターンだ!」

 

 レギオン・ミラージュは一気に加速する。

 加速したレギオン・ミラージュは残像を残しつつサタンの周りを動く。

 バーストモードの起動時に使う事の出来るもう一つの新機能のミラージュシステムだ。

 ミラージュシステムはステルスシステムの見えざる傘の技術を応用し、姿を消すのではなく自分の姿を投影する事でレギオン・ミラージュの残像を作り出す事で敵を翻弄するシステムだ。

 バーストモードの機動性能とミラージュシステムで惑わされてサタンの攻撃の精度は明らかに落ちている。

 

「無駄だ! そんなお粗末な攻撃では当たらんよ!」

 

 レギオン・ミラージュはサタンの上からサタンのメインカメラの1つをレギオンライフルで狙い破壊する。

 サタンは上空のレギオン・ミラージュに顔を向けて火炎放射機を放とうとする。

 

「まだ、私のターンなのだよ!」

 

 サタンが炎を吐く前にレギオン・ミラージュはビームブラスターをサタンの口の火炎放射機にピンポイントで撃ちこむ。

 それによりサタンの口の中で火炎放射機が誘爆を起こして頭部が吹き飛ぶ。

 

「さて……私の仕事は終わったぞ」

 

 レギオン・ミラージュのバーストモードは終わりセンサーも降りる。

 そして、AGE-2とFXバウンサーはそれぞれ、サタンの足の装甲の隙間から攻撃してサタンの脚部の破壊に成功する。

 

「相変わらず大した腕だ」

「当然だ」

「こっちも終わったよ」

「ご苦労」

 

 サタンは両足を破壊されても何とか機体を支える事は出来るが、まともに移動が出来る状態とは言えない為、作戦は成功したと言っても良い。

 だが、サタンは胸部のビーム砲を展開する。

 

「往生際の悪い事だな。ならば、私が引導を渡してくれる」

 

 サタンがビーム砲を撃つ前にレギオン・ミラージュはレギオンライフルをビーム砲に何発も撃ちこむ。

 それによりサタンの至るところから火を噴いてやがてサタンの機能は完全に停止する。

 

「エリスさん……」

「相変わらずのようだな。キオ・アスノ」

 

 キオはエリスが躊躇う事もなくサタンに止めを刺した事で悲しげな表情をするが、エリスは気にした様子はない。

 

「エリス……いろいろと聞きたい事がある」

「良い女と言う物は秘密を持っている物だ。詮索するのは野暮ではないのか?」

「悪いがそんな事を言っていられる程、俺達も余裕がある訳ではないんでな」

 

 アセムはエリスが生きていた事やエリスが乗っているレギオン・ミラージュの事、なぜここに現れたのかなど聞きたい事は山ほどあるが、エリスはまともに返す気は無くエリスとアセムの間に一発触発の空気が漂う。

 

「父さん待って! エリスさんも! 僕はエリスさんと話したい事が沢山あるんだ。だからエリスさんもエリスさんも話して欲しい」

「良かろう」

 

 エリスはキオの言葉にあっさりと了承し、アセムは肩透かしを食らう。

 

「……バロノークまで同行して貰うが構わないな」

「仕方がない。しっかりとエスコートをして貰う事にする」

 

 エリスの態度にいろいろと言いたい事もあるが、今はエリスから情報を引き出す事が優先だ。

 素直に話す相手とは思えないがどう言う訳かキオに対しては素直である為、話しを聞く事事態は難しくは無いだろう。

 サタンを仕留めた事で脅威は去ったが、それと同等かそれ以上の厄介事を抱えてしまったが、少しでも情報を得なければならない為、アセムはキオと共に後退させたバロノークにエリスを連れて帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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