機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第112話

 

 

 

 クライドによってUIEがノアを地球にぶつけて破壊すると言う計画が判明して半月、連合軍は慌ただしく動いている。

 ノアが進路を変えると言う可能性はないと判断された為、防衛線を張る事は難しくはない。

 問題は戦力にある。

 ノアを移動させていると言う事は計画は最終段階に入っていると見て間違いない。

 となると、UIEは連合軍と正面からぶつかっても勝てるだけの戦力を集めていると見て良い。

 先の戦闘でシドが10機投入されている為、まだシドが製造されている可能性はあり、火星圏の戦闘ではレギルスタイプのMSも確認されている。

 その為、戦力差は絶望的と想定して動いている。

 

「そうだ。積極的に受け入れるんだ。旧式でも作業用でも構わん。使い道はある」

 

 ラ・グラミスの司令室でフリットは地球圏の全体に指示を出している。

 UIEが地球にノアをぶつけて破壊すると言う事はすでに地球圏の全土に知れ渡っている。

 一般人の反応としては余りの大きい出来事に逆に危機感を持ってはいない。

 それでもその情報を信じた者は連邦軍に協力を申し出て来る事も少なくはない。

 本来は素性などを調べてスパイの可能性を確かめる必要があるが、今はそんな事をしている余裕は無い為、善意で協力してもらっていると信じるしかない。

 

「アスノ司令、マッドーナ工房より通信が入っています」

「繋いでくれ」

 

 司令室のメインモニターにマッドーナ工房からの通信が繋がれてララパーリーが写し出される。

 

「もうじきラ・グラミスに合流出来るわ。こちらとしては全面的に支援する用意は出来ているわ」

「助かります」

「気にしないで良いわ。あの人も生きていたらこうするでしょうからね」

 

 地球圏でもトップクラスの技術力を持つマッドーナ工房は真っ先に支援要請を出している。

 その返事としてマッドーナ工房は連邦軍に全面的に協力する事を決めた。

 それは先代の工房長であるムクレド・マッドーナが生きていたら、絶対に連邦軍に協力するからだ。

 

「必要な物があれば言ってちょうだい。マッドーナ工房の意地に賭けても用意するから」

 

 マッドーナ工房の協力は非常に心強い物がある。

 

「協力するのはマッドーナ工房だけではない」

「貴方は……」

 

 通信越しでララパーリーの他にもう一人いた。

 フリットはその相手に見覚えがある。

 フリット達がアンバットを攻撃する際に共に戦ったザラム・エウバ連合を指揮していたラクト・エルファメルだ。

 

「お久しぶりです」

「そうだな。あの時の少年が今は連邦軍のトップか……私も歳を取ったと言う事か」

 

 ラクトは感慨深そうにフリットを見る。

 あれから何十年と時が経ち、当時の少年だったフリットは今は孫までいる。

 当然、それだけラクトも歳を取っている。

 

「だが、ボヤージの判断は正しかったと言う事か。残念だが私は戦場に立つ事は叶わないが私の呼びかけで集まるだけの戦力は集めて来た」

 

 ラクトはすでにMSに乗って戦える歳ではないが、ファーデーンを中心としてエウバには顔も効き、ボヤージから託されたザラムの兵もいる。

 更には宇宙海賊ビシディアンの支援も行っていた為、解散したビシディアンにも声をかけて戦力を集めて来た。

 かつて、ボヤージはフリットに世界を託して死んだ。

 今では連邦軍の総司令官として地球を守る為に戦っているフリットを見ているとあの時のボヤージの判断は正しかったと言う事になる。

 フリットは子供の頃に誓ったみんなを守る救世主になると言う事を忘れた日は一度もなかったが、ヴェイガンへの憎しみで敵を滅ぼす事しか考えなかった時期もあった。

 それでも今はアセムやキオ、ウルフなどの言葉で共存と言う道を選び、地球の危機に人と人の繋がりを強く感じていた。

 

「司令、少しはお休みになられてはいかがですか?」

 

 そんなフリットにアルグレアスがそういう。

 この数日間、フリットは寝る間も惜しんでUIEや連邦軍の戦力を計算して策を練っている。

 すでにフリットは若い訳ではなく、UIEとの決戦では否応なくフリットの出番は数えきれないくらいにある為、今の内に無理をして倒れられたりしたらそれだけで勝つ可能性は低下する。

 一か月後に備えてアセムを初めとした決戦で中核を担うと予測される面々は決戦までに心身を万全な状態にする為に休暇を取らせている

 

「分かっている。アルグレアス……だが、負ける訳にはいかんのだ」

「それも分かりますが……せめて奥方に連絡くらいしてもバチは当たりませんよ」

「アレも私に何十年も付いて来た女だ。世界の危機だ。分かってくれる」

 

 アルグレアスはフリットの妻であるエミリーとそれ程面識がある訳ではない。

 精々、若い頃に数回顔を合わせた程度だ。

 だが、フリットと何十年も連れ添って来た。

 そんなフリットがそういうのであればそうなのだろうが、数分だけでも連絡して話しても良いだろうとアルグレアスは思うが今は少しでも多くの戦力を集めて戦いに勝たなければならない。

 そうでなければ、地球は破壊されて多くの犠牲者が出る。

 それこそ、その数分の時間すら取れなくなるかも知れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マッドーナ工房の格納庫の一画には連邦軍から運び込まれたガンダムが置かれている。

 フリットのガンダムAGE-1 グランサ、アセムのガンダムAGE-2 フラット、キオのガンダムAGE-FX-CS、クライドのF-ZERO、エリアルドのガンダムZERO Ⅲストライカー、エリスのガンダムZERO Z、クリフォードのガンダムAGE-3 トライン、ゼハートのガンダムレギルスRと連邦軍が所有している8機のガンダムが置かれている。

 一か月後のUIEとの決戦に8機のガンダムは必ず中核となる事は確実で地球圏でも最高峰の技術力を持つマッドーナ工房にて完全な状態に整備する為だ。

 

「成程な。中々筋が良い」

 

 ガンダムが置かれている格納庫でクライドはキャロルから渡された端末を見ている。

 そこにはMSの設計データが映されている。

 

「そうかな」

 

 その設計データはキャロルが設計した物でその評価をクライドに頼んでいた。

 クライドからの評価はおおむね良い物でキャロル世代の技者からすればクライド、フリット、ムクレドは神に近い存在である為、キャロルは素直に嬉しい。

 

「こんな時に何しているのよ。貴方達は……」

 

 そんな二人をエリーゼは呆れている。

 地球の存亡のかかっている状況でこんな事をしているのだ当然の反応だと言える。

 

「こんな時だからだよ。俺は孫娘の成長を実感して新しい世代が確実に育っていると言う事を実感しているところだ」

「良く言うわよ」

 

 クライドはそれらしい事を言っているが、実際は自分が楽しんでいるだけで地球の未来などクライドにとっては大した問題ではないのだろう。

 

「まぁ、お爺ちゃんもやる事はやってるんだし、少しくらいは息抜きをしてもさ」

「キャロルは黙ってて」

「……はい」

 

 キャロルはクライドのフォローを入れるがエリーゼに黙らされる。

 対してクライドは二人のやり取りを横目に端末を弄っている。

 

「聞いているの? クライド」

「聞いているけど、流してる。それよりもだ。こいつを見て見ろ。俺がキャロルに設計させた物だ。フリットの設計したAGEシリーズのガンダムと俺のZEROシリーズのガンダムを融合したMSでいわばガンダムAGE-ZEROと言ったところだな」

 

 クライドがキャロルに設計させたのはクライドとフリットの二人が独自に開発したガンダムの技術を融合させて新たなガンダムを生み出すと言う事だ。

 クライドは贔屓目は無しでも、十分に良い出来であった。

 後はクライドが独自に改良を加えれば完成する。

 

「中々の性能だが俺の最高傑作のゼータには劣るけどな」

「ゼータの性能は別格過ぎるよ。お爺ちゃん」

「当然だ。俺が50年以上もかけて構想した究極且つ最強のガンダムだぞ。25年そこらしか生きていない小娘のMSに劣る訳もない」

 

 キャロルの設計したガンダムの性能は優秀ではあるが、それ以上にガンダムZERO Zの破格の性能を自慢したいだけだ。

 いつにも増してはしゃいでいるクライドを見てエリーゼも毒気を抜かれている。

 クライドにとって最強のガンダムを作ると言う事はエリーゼと出会う前からの夢で今までその夢を叶える為に動いていた。

 中には褒められた事ではない事も数えきれない程して来た。

 だが、最強のガンダムだと胸を張って言えるガンダムZERO Zを完成させたのだクライドがここまではしゃいでいる事をエリーゼは責める事は出来ない。

 なぜなら、エリーゼは初めて出会った時に夢を語るクライドに惚れたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休暇を取ったアセムはゼハートと共にトルディアを訪れていた。

 トルディアにはかつてアセムやゼハートが青春時代を過ごした高校がある。

 あれから23年が経ち、今でも高校は残されている。

 今は高校は休校で誰もいない。

 

「ここはあの時と変わらないな」

「そうだな」

 

 アセムとゼハートは高校の敷地内にあるMSクラブのガレージにいた。

 ガレージはあの当時と殆ど変ってなかった。

 MSクラブは何回も大会で優勝している為、MSクラブ目当てに入学する生徒も少なくなく、今では別のガレージを使っておりこのガレージはたまに生徒が掃除して管理しているが、当時のままだ。

 

「アセム? それにゼハートなのか?」

「シャーウィー? それにマシルも……どうしてここに?」

 

 懐かしいガレージを見ていると声をかけられる。

 それは二人とはMSクラブで共に汗を流した旧友のシャーウィーとマシルであった。

 ゼハートは当然の事ながら、アセムも卒業後は余り連絡を取る事もなく卒業後に会ったのはロマリーとの結婚式の時くらいであった。

 そんな二人とMSクラブのガレージで再会したのだ驚くのも無理はない。

 

「あれ? アセムにゼハートじゃん」

 

 更にマリィとロマリーもガレージにやって来る。

 

「こんな偶然もあるんだね」

 

 ロマリーは偶然と言うがアセム達が地球の存亡を賭けた戦いの前に青春時代を過ごしたMSクラブのガレージを訪れる事はさほど珍しいと言う事は無いが、示し合わせたかのように同じ日の同じ時間に同じ場所を訪れると言う事は奇跡と言っても良い。

 20年以上も経ちMSクラブの部員が集まり、ガレージにて昔話に花が咲いた。

 

「それにしてもゼハートがヴェイガンのスパイだったなんてね」

「全くだ。あの時のアセムが庇った時のなんて言ったっけ?」

「うるさいな。俺はゼハートを信じただけだって」

 

 話しの流れからゼハートがかつてトルディアに来た理由にも及ぶ。

 だが、ヴェイガンとの関係が大きく改善されている為、卒業式の最中に憲兵がゼハートをスパイとして拘束しようとしていた時の事なども今となっては笑い話になっている。

 

「済まない」

 

 シャーウィーもマシルも笑い話のつもりだったが、ゼハートは真顔で二人に謝罪する。

 任務とは言えゼハートはアセムやロマリーだけでなくシャーウィーやマシルも騙していた。

 アセムやロマリーとはこの5年で学生時代のように友人としての付き合いがあったが、シャーウィーとマシルには会う事も無い為、謝る機会がなかった。

 ゼハートの謝罪で場の空気が重くなる。

 

「ゼハート、空気読めって」

「そう言う所は相変わらずなんだね」

 

 二人ともゼハートを糾弾したつもりもなく、騙していた事を怒っている訳でもない。

 ゼハートと一番中が良く、連邦軍でガンダムのパイロットとしてヴェイガンやゼハートと戦ったアセムが今もゼハートと友人でいる以上は二人もとうにゼハートの事は許していた。

 

「それよりもシャーウィーとマシルは何でここに?」

 

 アセムが場の空気を変える為に話しを変える。

 アセムとゼハートは決戦を前にMSクラブのガレージで決意を新たにする為に来た。

 マリィもロマリーも似たような理由だろうが、シャーウィーをマシルが二人でここに来る理由は余りない。

 

「俺達も何か出来ないかと思ってさ……」

「軍はパイロットだけじゃなくていろいろと募集してるからね」

 

 連邦軍はMSやMSパイロットを中心に民間などから募集しているが、それ以外でも技術者や医療関係者の募集もしている。

 MSや戦艦の数が増えればそれだけ技術者が必要となり、大規模な戦闘では怪我人も大勢出る事は予想でき、医療関係者も必要となって来る。

 その為、シャーウィーとマシルも志願した。

 二人とも学生時代にMSクラブでMSに関しては本職のメカニックには劣るがある程度の知識はある。

 

「世界がこんな事になってんだ。俺達の力なんて大した事は無いけどさ、少しでも役に立てるならってさ」

「どの道、僕は会社の方に協力要請が来てたみたいだしね」

 

 マシルは現在は民間の会社でエンジニアをしている為、軍の方から会社に協力要請が来ている。

 軍のMSを製造している工房の下請けの仕事が殆どでエンジニアと言っても軍用MSをどこまで扱えるかは疑問だが、会社命令よりも自分の意志で決めた。

 

「アセムやゼハートが前線で戦うって事なら俺達だってやってやるさ」

「シャーウィー……マシル」

 

 シャーウィーも今は弁護士である為、MSと関わる事は無いが地球の危機と言う事で半ば勢いで志願したがアセムやゼハートが前線で戦うと言う事を知り、やる気を出す。

 

「暗い! 暗いよ! アンタ達ね。死にに行くんじゃないんだから!」

 

 昔話に花が咲いていた時とは違い暗い空気に耐えかねたマリィが声を荒げる。

 そして、どこから持ち出して来たのかホワイトボードを持ってきていた。

 

「アンタ達の友情とかどうでも良いから、私達には考える事があるのよ!」

 

 マリィはホワイトボードに殴り書く。

 

「レギルスR……フルアーマー計画?」

 

 ホワイトボードにはレギルスRフルアーマー計画と書かれていた。

 

「そうなのよ! 私は慈悲深いからアンタ達にもこの計画に一枚噛ませてあげるわ」

 

 マリィの言いたい事を要約するとゼハートのレギルスRを決戦に向けてフルアーマー仕様にする為に知恵を貸せと言う事だった。

 そんな話しはレギルスRのパイロットであるゼハートには寝耳に水だ。

 

「マリィ、レギルスRの売りは機動性能だ。フルアーマー仕様にすれば機動力が低下する事になる」

「そんなつまらない意見は聞いていないわ。次」

 

 レギルスRはレギルスよりも機動性能を重視している為、フルアーマー仕様にすればその特性を殺す事になる。

 その為、ゼハートはレギルスRにはフルアーマー仕様にする必要はないと思っているが、マリィは聞く耳を持たない。

 

「なら、追加装甲と火器をすぐにパージ出来るようにすれば良いんじゃないか?」

「それ、頂いたわ!」

 

 シャーウィーの意見をマリィはホワイトボードに書き込む。

 フルアーマー化で機動力が低下するなら、追加した装甲や火器を必要に応じてすぐにパージ出来るようにすれば状況に合わせて身軽に出来る。

 

「けどさ、ヴェイガンのMSは通常装甲でもかなり頑丈だから追加装甲はないんじゃないかな」

「確かにな……連邦系のMS用の追加装甲じゃ規格が合わないかも知れないからな」

 

 元々、ヴェイガンのMSの装甲は連邦軍のMSよりも厚くなっている。

 だから、追加装甲の類の装備は用意されていない。

 連邦軍にはアデルにグランサなどの追加装甲を装備しる事は可能だが、それではレギルスRと追加装甲との規格が合わないと言う可能性が出て来る。

 

「いや、この5年で技術部はヴェイガンの技術者も受け入れて双方のMSの技術融合を進めていると聞いている。現にGブラスターは連邦系のMSにヴェイガンの技術を取り入れている」

「それなら何とか出来そうじゃないか?」

 

 MS開発に関しては一部を除いてはEXA-DBの技術が使われているヴェイガンの方が進んでいる。

 連邦軍はヴェイガンの技術者を技術部に受け入れる事でヴェイガンの技術力を取り入れようとしており、その成果がAGE-3を量産化したGブラスターだ。

 

「マリィ、そもそも必要なのか?」

「分かってないわね。ゼハート。フルアーマー仕様はロマンなのよ! そして決戦ではフルアーマー装備はお約束なのよ! 実際にパパのF-ZEROや叔父さんのグランサがその証拠よ! 世界に名だたる技術者のやる事をゼハートは間違っていると言えるの!」

 

 確かにクライドのF-ZEROやフリットのAGE-1 グランサはフルアーマー仕様のMSだ。

 だが、そうなった理由はマリィの言っているような事ではない。

 クライドもフリットも高齢になったため、高軌道MSでは体が持たない。

 故に機動力を削り装甲と火力を重視している。

 F-ZEROに至っては自分の安全性を最優先とした結果、隠密能力と防御能力に特化したMSになっている。 

 それを説明したところでマリィは引く事は無いだろう。

 

 マリィは結局のところ、レギルスRをフルアーマー仕様に改造したいだけだからだ。

 そんな様子をロマリーは後ろから見ている。

 あれから20年以上が経ち、皆がそれぞれの道に進んだが1機のMSをどうするかを話し合っている今だけは学生時代に戻ったかのように皆が感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニー「アーヴィン」の実家でエリアルドは昔の画像データを見ていた。

 そこには自分の幼少期の画像がいくつも残されている。

 画像には家族以外でもシャルロットやレオーネ、アルベルトと映っている画像も多い。

 だが、今は3人ともいない。

 皆、戦いの中で散って行った。

 今のこの世界はそんな仲間の犠牲の上に成り立っている。

 

「こっちに帰って来るのは珍しい」

「義姉さんこそ」

 

 エリアルドもユーリアもアーヴィンの実家に帰る事はほとんどない。

 

「キャロルは一緒じゃなかったの?」

「キャロルは父さんのところだよ」

 

 ユーリアはキャロルも実家の方に帰っていると思っていたが、キャロルは祖父であるクライドのところに入り浸りだ。

 父としては自分よりも祖父の方に娘が入り浸っている事に寂しさを感じるが、技術者としてのクライドはキャロルにとっては雲の上の存在でそんなクライドに会う事が出来るのだ無理はないと言う事も理解している。

 

「そう……懐かしいわ」

 

 ユーリアもエリアルドと共に画像データを見る。

 エリアルドの子供の頃の画像以外にもユーリアやマリィの子供の頃の画像も残されている。

 そこには若かりし頃のエリーゼやジゼル、アルフレッドの画像もある。

 クライドは自身の画像データを残す事に余り興味が無い為、画像はほとんど残されてはいないが、数枚だけエリーゼ達が本人の許可を得ずに取った画像が残されている。

 

「そうだね。シャルもレオーネもアルベルトもみんないないんだよな」

 

 いつもは考えないようにしているが、幼少期を共に過ごした皆がいないと言う事を実感させられる。

 

「うん。私達だけが生き残ってる」

 

 ユーリアも多くの戦友を戦争で失い蝙蝠退治戦役で知り合った初めての友達であるデシルもノートラム防衛戦で失っている。

 もしも、別の出会い方をしていれば良い友人になれたかも知れないと今でも思う事がある。

 

「だから、私達は生きないといけない」

 

 多くの仲間や友人を失ったが、エリアルドもユーリアもまだ生きている。

 生きている以上は死ぬまで生きなければならない。

 それが生きている自分達が出来る死んだ者達への唯一出来る事だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 休暇を与えられたキオはオリバーノーツに帰って来ていた。

 ルウとエリスの墓の前に来たキオの心中は複雑だった。

 エリスが生きていた事は素直に嬉しいが、エリスはこの5年でいろいろと変わっていた。

 その変化を否定はしないし否定できないからこそ複雑だった。

 

「キオ? 帰ってたのか?」

「ディーン、何か久しぶりな感じがする」

 

 前にルウの墓に来たのは1か月にも満たない筈だが、色々な事があり過ぎてずいぶんと久しぶりな感じがした。

 キオはディーンにエリスが生きていた事などを話した。

 

「そっか……あの人が生きてたんだ」

「まぁね」

「キオも戦うんだろ?」

「うん」

 

 話題がエリスの事から変わる。

 恐らくは地球全土に連邦政府から発表された事に関係していると言う事はすぐに分かる。

 

「俺も軍に志願した」

「ディーン……」

「地球が危ないんだろ? せっかく、ルウの墓を地球に立てる事が出来たんだ。地球を破壊なんてさせるかよ」

 

 ディーンにとってはルウの墓を地球に立てる事はヴェイガンの民が地球と言うエデンに辿りつく事と同じ悲願だった。

 それがようやく叶ったと言うのに地球をUIEに破壊されるのは堪ったものではない。

 だから、ディーンは過去にネオ・ヴェイガンでMSのパイロットをしていた経験から連邦軍に志願した。

 その志願は問題なく受理されて宇宙に上がる前にルウの墓で決意を新たにしようとして訪れていた。

 そんなディーンをキオは止める事が出来ない。

 最悪の場合ディーンが戦死するかも知れないがそれを理由にディーンを止める事はディーンの決意を侮辱する行為だ。

 

「俺の力なんてどこまで役に立つか分からないけどさ、ルウの兄貴としてルウの墓くらいは守りたいからさ」

「ディーンなら出来るよ」

 

 それがキオの精一杯の言葉だった。

 ディーンの覚悟を無駄にしない為にも最前線で戦うキオは戦いに勝つ事で地球を守る事をルウの墓の前で決意した。

 

 

 

 

 

 

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