機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第116話

ノアの破壊をめぐる連邦軍とUIEの決戦はUIEのエース機の撃墜が相次ぎ連邦軍に流れが向いている。

 しかし、肝心のノアは未だに破壊が出来ない。

 ノア内部の居住区では最強の3機のMSが交戦を続けていた。

 ガンダムZERO Ⅱ改がビームガンを2機のガンダムに放つ。

 

「どうして! こんな物を地球に落とすんですか! そんな事をしたら地球が!」

 

 FX-CSはCファンネルを使いビームを防ぐ。

 

「決まっている。人類は宇宙に出て覚醒しなければいずれは種を滅ぼす!」

 

 Ⅱ改はペンタクルライフルを高出力モードで放つ。

 

「そんな事しなくても人は分かり合う事が出来ます!」

 

 FX-CSはCファンネルを一か所に集めて防いだ。

 

「それが出来ないからこそ、人は再び戦争を引き起こした。それが何よりの証拠だ」

「違う! 絶対に違う!」

 

 FX-CSは腕のビームニードルガンを放ち、Ⅱ改はシールドで防いで胸部のビームキャノンを放つ。

 フェオドールは人は宇宙に進出してXラウンダーに覚醒しなければ人は分かり合う事は出来ないと言う。

 だが、キオはそれを認める訳にはいかない。

 例えXラウンダー能力がなくとも分かり合えると言う事はキオは知っている。

 キオの父、アセムはXラウンダー能力を持たない。

 しかし、火星圏で生まれ育ったゼハートと親友になる事が出来た。

 一度は生まれた境遇から敵同士となった二人だが、生まれや境遇を超えて本当の親友となっている。

 フェオドールの言葉を認めてしまえば父の友情も偽りと言う事になってしまう。

 

「そんなのは間違ってます!」

 

 FX-CSはビームシールドで防ぐ。

 

「そうだ。良く言った。キオ、お前はお前のやりたいようにすれば良いのだ」

 

 Ⅱ改の背後からガンダムZERO Zがビームセイバーを抜いて接近していた。

 Ⅱ改は背後のZにビームガンを放つ。

 

「君たちには分かって貰えると思っていたけどね。高レベルのXラウンダー能力を持つ君たちならね」

「知った事ではないな。お前達の主義主張など興味はない。そして、今更私が何かを言う気もない。お前は私の敵だ。お前を殺す理由はそれで十分だ」

 

 Zはビームを回避しながらスタングルライフルを放ち、Ⅱ改は回避してシールドのビームキャノンを放ちZはシールドで防ぐ。

 

「愚かだな。それ程の力を持ちながら考える事を止めて、ただ戦うだけの存在に成り果てたようだね。君は」

「違うな。考える必要などない。私の行動は常に正しい。私がそう決めたのだ。ならばそれが正しい。それを世界の全てが間違いだと言うのなら、間違っているには世界の方だ」

 

 スタングルライフルを連射してⅡ改は回避しながらペンタクルライフルの連射モードでZに反撃するが、Zには当たる事は無い。

 

「それが真理。それが私の進む道だ!」

 

 Zの攻撃を回避するⅡ改の前にFX-CSが立ちはだかりビームサーベルを振るうが、Ⅱ改は上昇して回避して2機にビームガンを放つ。

 

「キオ、分かっているな」

「はい。あの人はここで僕たちが止めます」

「そうだ。私のキオの二人ならば、あの程度の雑魚など瞬殺で殺せる」

 

 ZとFX-CSはⅡ改と睨み合う。

 だが、ノア全体が大きく揺れる。

 

「エリスさん」

「恐らくはな」

 

 ノアがここまで揺れる爆発となると相当な規模である事は容易に想像がつく。

 そして、時間的にこの爆発を起こしたのはクライドたちだろう。

 

「でも……」

「ああ……まだだ」

 

 クライドたちが任務を成功させたのは間違いない。

 しかし、エリスとキオは感じていた。

 まだ駄目だと。

 

「キオ、ここは私が一人で殺る。お前は行って来い」

「エリスさん?」

「お前も感じているのだろう。まだ世界の終焉が回避された訳ではないと」

 

 エリスとキオが感じていたのはまだ地球が救われた訳ではないと言う事だ。

 この爆発は起きても依然地球は危機に瀕している。

 それを感じたからこそ、エリスはキオに行けと言う。

 

「でも、あのMSをエリスさん一人で相手にするのは危険です!」

「キオ、私を誰だと思っている。それに私たちの任務は何だ? こいつを殺す事か? 違うだろう。人類を救う事だろう」

 

 キオとエリスの任務はノアに内部での破壊工作だ。

 それを行う理由は突き詰めれば地球を救う事になる。

 地球の危機が回避されない以上は任務は終わらない。

 そして、目の前の敵以外にも地球を危機に晒す物があればそれを排除するのも任務を拡大解釈すれば入る。

 

「でも……」

 

 キオはエリスの力を知らない訳ではない。

 それでもⅡ改の力を分かるが故にキオもエリスを一人残して行く事を抵抗を感じている。

 

「全く。お前と言う奴は……お前は戦争が生み出した時代の光だ。その優しさはお前が愛されて育ったと言う証だ」

 

 戦争は容易く人の命を奪う。

 かつて、アセムが戦死したとされたからこそ、その忘れ形見であるキオは祖父に母に家族に愛されて育った。

 愛されて育ったが故に敵であろうと理解し、共存を望んだ。

 エリスがヴァニス・イゼルカントと名乗っていた時、エリスと関わった者達ですら世界平和の為にエリスを討たねばならないと思う中、キオはエリスと正面から向き合いぶつかって来た。

 

「そして、私は戦争が生み出した時代の闇だ」

 

 エリスはクライドが最強のガンダムのパイロットになるべくして生み出された最強のパイロットだ。

 生み出す過程でクライドが手に入れたEXA-DBの技術も使われている。

 戦う為に生み出されたエリスはまさに時代の闇とも言える存在だ。

 

「だから、ここは私が殺る。それが私の役目だ。キオ、お前のガンダムはお前の祖父が救世主になる事を望んで作られたMSが進化した物だ。キオ、救世主とは何だ? こいつを殺す事か? 違うだろう。救世主とは全てを救う者だろう。キオ、人類を救って見せろ。人類を救って救世主に……ガンダムとなれ」

 

「救世主……分かりました」

 

 キオのガンダムは元々、フリットはUEの脅威から人類を救う救世主となると言う願いを込めて伝説の救世主からその名を取った。

 そのガンダムはキオの父アセムに受け継がれ、キオに受け継がれて来た。

 今、地球は危機に瀕している。

 それを救ってこそのガンダムだ。

 キオも覚悟を決める。

 FX-CSは一度、外に出る為、居住ブロックから離脱しようとする。

 

「逃がさない」

 

 離脱するFX-CSにペンタクルライフルを向けるが、Zがスタングルライフルを放つ。

 

「おいおい。こんなに良い女がいると言うのに男のケツを追うのはどうなんだ?」

 

 ZがⅡ改の前に立ちはだかる。

 

「悪いがここから先は通行止めになっている。どうしても通りたければ私を倒してからにして貰おうか」

 

 Zはスタングルライフルを放ち、Ⅱ改に接近する。

 Ⅱ改はペンタクルライフルの連射モードで迎え撃つ。

 

「ならば、君だけでもここで仕留めさせて貰う」

「妄想は頭の中だけにしておくのだな」

 

 Zはビームセイバーを振り下ろし、Ⅱ改はペンタクルライフルのビームソードモードで受け止める。

 だが、ビーム刃の出力では圧倒的にZのビームセイバーが上回り次第に押し負けて行く。

 そして、ZはⅡ改のペンタクルライフルを弾き上げてⅡ改を蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたⅡ改はビル群に墜落してZはビームバルカンで追い打ちをかける。

 

「手ごたえがないな」

 

 ビームバルカンでの攻撃では手ごたえを感じる事が出来なかった為、スタングルライフルで辺りを攻撃する。

 Zの攻撃で居住エリアは火の海となる。

 やがて、居住区の疑似重力がなくなり、戦闘で出た破片が浮き上がる。

 エリスは周囲を警戒しながら、フェオドールの出方を見ている。

 この程度の攻撃でⅡ改がやられる筈がないからだ。

 

「焦らして来るじゃないか……」

 

 周囲を警戒していると瓦礫が盛り上がって来る。

 そこからⅡ改が出て来ると思われたが、瓦礫からⅡ改が出て来る事は無い。

 それどころか、瓦礫その物が結合しているようにも見えた。

 

「こいつは……」

「君ほどのXラウンダーを倒すにはこれだけの物でなけばならないようだね」

 

 それは瓦礫が盛り上がった訳ではなかった。

 ガンダムZERO ⅡにはクライドがAGEシステムを解析して応用したシステムが搭載されている。

 交戦相手の情報を収集し、それを倒す策を提示するシステムだ。

 その上でシドは自己修復能力と自己進化能力を持っている。

 システムが導き出し、自己修復と自己進化によって今の姿となった。

 フェオドールがここで待ち構えてしたのも自己修復と自己進化の際に必要な資材は居住エリアには掃いて捨てる程あるからだ。

 

「全く、父さんも厄介な物を作ってくれたな。だが、父さんの作った物であるならば、私が負ける訳にはいかないな」

 

 Zはスタングルライフルを放つ。

 瓦礫と一体化となったⅡ改を貫くがすぐに別の瓦礫で再生してしまう。

 

「再生能力か……ならば、本体を叩くのはセオリーだな」

 

 今度は瓦礫の中央にスタングルライフルを放つ。

 その攻撃も瓦礫を貫き中央に大きな穴を開けるがすぐに穴は瓦礫で埋まる。

 

「おいおい……こういう時は本体は中央にあると言うのがお約束だろう。そんな約束事も守れんのか」

 

 瓦礫がまるで巨大な竜のような形状に集まり、Zへと向かって来る。

 Zはスタングルライフルで撃ち落すが、次々と瓦礫で出来た竜はZに襲いかかる。

 Zは回避しながらスタングルライフルで撃ち落すが撃ち落してもすぐに別の竜が作られて意味がない。

 そして、ついにはZもかわし切れずにシールドで防ぐ。

 シールドに直撃する瞬間に瓦礫の中から鉄骨が付きだして来た為、Zはそのまま弾き飛ばさる。

 

「少しは出来るようだな。ならば、こちらも本気でやらせて貰う」

 

 Zはシールドを捨てる。

 両手にビームセイバーを持つとエリスはモードZEROを起動させる。

 赤く発光したZは一瞬で瓦礫の竜を破壊する。

 

「早い! ミューセルの力でも追えない!」

「これぞ、究極奥義だ。お前程度では追いつく事は出来ない領域なのだよ!」

 

 光速で動くZにフェオドールでは反応する事が出来ずに瓦礫が剥がされていく。

 すぐに瓦礫で再生するが、早すぎるZの攻撃に再生が追いつかなくなる。

 Ⅱ改は瓦礫で巨大な手を作ると広範囲に攻撃する。

 しかし、Zを捕える事が出来ずにビームセイバーを瓦礫に突き刺してそのまま、Zは瓦礫を切り裂いて行き巨大な手は瓦礫となり崩れる。

 

「終いだ」

 

 Zは巨大な瓦礫を切り裂いて瓦礫は崩れ去る。

 瓦礫が崩れるとそこにはⅡ改の姿はない。

 モードZEROが終了し、Zが元に戻った瞬間に鉄骨がZの左肩の付け根に直撃して、Zの左腕が肩ごと吹き飛んだ。

 

「しつこい!」

「君は危険な存在だ! 世界の為にもここで死んで貰う!」

 

 Ⅱ改は瓦礫を纏ったまま、Zに突っ込む。

 モードZEROを使ったせいで体に負担をかけていたエリスは反応が鈍り、Zは瓦礫を纏うⅡ改の突撃をまともに受けてしまう。

 そのまま、居住区の道路に叩きつけられて機体を道路に押し付けられた状態で引きずられる。

 エリスは操縦桿を強く握り、体をシートから吹っ飛ばされないように耐えるしかなかった。

 しかし、引きずられている間にZのバックパックの光波推進システムが付け根からもげ、装甲の所々も剥がれて行く。

 やがて、Zは居住区の縁に叩きつけられる。

 

「がっ!」

 

 叩きつけられた衝撃で一瞬、意識が飛ぶが何とか意識を保つ。

 視界が霞むが、モニターの周囲が瓦礫ばかりで今、Zが瓦礫に埋もれた状態である事は認識できる。

 

「君の敗因は自身の力を驕った事だ」

 

 モニターの正面にはⅡ改の本体の姿がある。

 Ⅱ改はZに胸部のビームキャノンを撃とうとしている。

 この距離で損傷しているZでは耐える事は出来ない。

 

「違うな……驕りではない。私が最強である事は純然たる事実だ。故に私が敗北する事などあり得ない」

 

 エリスは体中が悲鳴を上げる中、操縦桿を握る。

 そして、Zはスタングルライフルを構える。

 

「私は最強だ。最強でなければならない。それがこの私、エリス・アスノだ!」

 

 Ⅱ改がビームキャノンを撃つよりも早くエリスはスタングルライフルの引き金を引いた。

 その一撃はⅡ改を消滅させて大爆発を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クライドがノアのエネルギープラントを破壊した事でノアは内部から大爆発を起こした。

 それにより、ノアの各所から連鎖的に誘爆が起きている。

 ラ・グラミスの司令部でもそれが確認できた。

 

「状況はどうなっている!」

 

 クライド達が成功させたが、状況を把握しなければ戦いに勝利したかは分からない。

 

「ノアの内部で巨大な爆発を確認!」

「司令! ノアは依然として地球への衝突コースです!」

「ノアが加速しているようです!」

「馬鹿な……失敗したのか!」

 

 ノアは爆発により、いくつもの断片に分かれている。

 しかし、ノアは未だに地球への衝突コースだった。

 その上で爆発の勢いと小さくなった事で質量が減り更に加速までしていた。

 小さくなった事で破壊対象が増えてもいる。

 当初よりも被害規模が小さくなるとはいえ、作戦は失敗したと言っても良い。

 

「これでは地球に大打撃を与えてしまう……」

「諦めるな! アルグレアス!」

「アスノ司令……しかし……」

 

 最悪の事態にもはや打つ手は無しと諦めかけていたアルグレアスをノアから離脱したフリットが叱責する。

 

「我らが諦めてしまっては地球は終わりだぞ!」

「しかし、司令、すでにこちらには打つ手は……」

「それでもやるのだ! MSと戦艦の火力をノアに集中して一つたりとも地球に落としてはならん!」

「分かりました」

 

 ノアは分散している為、一つ一つを破壊する事はMSの火力でも十分に可能だ。

 今はその可能性に賭けるしかない。

 

「しかし、一番巨大な破片を破壊するのは戦艦の火力を持ってもしても時間がかかり過ぎます。すでに最終防衛ラインを突破されつつあります」

 

 分散したと言っても巨大な破片は下手な要塞よりも大きい。

 そんな破片をMSや戦艦の火器で破壊するには時間がかかり過ぎて間に合わない。

 

「僕が行きます!」

「キオ!」

 

 ノアの内部からバーストモードでキオのFX-CSが出て来る。

 

「僕とガンダムで一気に破壊します!」

「だが、どうやってだ。キオのガンダムでは火力不足だ」

 

 FX-CSは精密攻撃を主眼に置いている為、火力は低い。

 その為、性能は高くとも対象の破壊には向いてはいない。

 

「爺ちゃん。僕のガンダムに搭載されているAGEドライヴは人の思いを力に変えるんだよね。その力を使えばきっと出来るよ」

「無茶だ! それほどの力を引き出せばお前は!」

 

 FX-CSのに搭載されているAGEドライヴは人の思いに反応して超常的な力を引き出すと言う事はクライドの研究からも明らかになっている。

 FX-CSのバーストモードはそれを意図的に発動する事が出来るようになっている。

 しかし、今まで起きた現象程度なら多少の疲れで済むがノアの破片を全て破壊する程の力を引き出せばパイロットも無事では済まないかも知れない。

 

「爺ちゃん。爺ちゃんは人類を救いたいからガンダムを作ったんだよね。その爺ちゃんのガンダムを父さんが、僕が受け継いで来たんだ。僕は爺ちゃんのガンダムでみんなを守る救世主になる」

「しかし、お前一人にそんな危険を背負わせる訳にはいかん!」

「ならば、二人なら問題はあるまい」

 

 FX-CSがバーストモードでぶち開けた穴からモードZEROを起動したガンダムZERO Zが出て来る。

 

「エリスさん! 無事だったんですね!」

「見ての通り無事だ。生憎と私は死ぬまで死なない体だ」

 

 エリスは見ての通り無事だと言うが、今のZの状況は片翼で左腕を失い右腕も肘から下がない。

 機体の至るところが損傷し、装備も頭部のビームバルカンしか残されてはいない為、とても無事には見えない。

 だが、エリスの言葉に嘘偽りはなかった。

 2度のモードZEROの使用や戦闘の衝撃でエリスの体は機体同様にボロボロでもはや痛みすらも感じてはいない。

 しかし、エリスはキオの前で強がって見せている。

 

「話しを戻す。私とキオのガンダムの力でノアを完全に破壊する。それしか全てを救う方法はないのだろう?」

 

 エリスの言葉にフリットもアルグレアスも反論は出来ない。

 現状で全てを救う術はAGEドライヴの力を使う以外にはない。

 だが、それを行ったとして、それが可能なのかも分からない。

 

「現状ではそれしかないだろう。フリット」

「アスノ博士! いつの間に」

 

 ラ・グラミスの司令室にクライドが入って来る。

 クライドはフリットと共にノアから離脱すると見えざる傘を展開して戦場からラ・グラミスに戻り司令室にまで戻って来ていた。

 

「兄さん、可能なのか?」

「当然だ。AGEドライヴは人の思いに反応する。その思いが強ければ強い程、強大な力を発揮する。俺に考えがある。その為にもエリスとキオを行かせてやって欲しい」

「分かった。気を付けるんだぞ」

「爺ちゃん! ありがとう。僕は爺ちゃんがなろうとした救世主になるから」

 

 クライドの説得もあり、フリットも渋々許可を出す。

 ZとFX-CSはノアを追い越す為に地球の方へと急ぐ。

 

「あの2人だけに命を賭けさせる訳にはいかん。動けるMSは私に続け!」

 

 フリットのグランサはMS隊を引き連れて戦場へと戻って行く。

 

「博士、考えと言うのは?」

「アルグレアス、戦場のMSや戦艦、各コロニーや各都市に通信を送りたい。準備を頼む」

「すぐにかからせます」

 

 クライドの意図している事は分からないが、今はクライドの策に頼るしかない為、アルグレアスはすぐにクライドに言われた通りにする。

 

「準備が完了しました」

 

 暫くすると、準備が完了しクライドは前に出る。

 

「諸君、私は地球連邦軍特別技術開発研究所所属のクライド・アスノだ」

 

 クライドの映像は地球圏の各コロニーや地球の都市の避難所などのモニター、MSのコックピット、戦艦のブリッジのメインモニターなどに一斉に写し出される。

 

「今現在、我が軍はUIEの作戦阻止のための防衛作戦を展開中だ。しかし、我が軍の奮闘も空しく間もなく地球に大型構造物が直撃し、地球は壊滅するだろう」

 

 クライドの発言にアルグレアスも動揺を隠せない。

 クライドは全世界に地球が壊滅すると言う事を宣言したからだ。

 その発言で地球の各都市は混乱するだろう。

 

「だが、そんな絶望的な状況の中、二人の若者が自らの命を犠牲にしてまで地球を救おうとしている」

 

 クライドの映像から戦場にいるZとFX-CS、コックピットのエリスとキオの映像も全世界に流される。

 

「この二人が乗っているMS『ガンダム』は人の思いを力に変える力を持ったMSだ。2人の思いだけでは人類を救う事は出来ないだろう。しかし! 世界中の皆の思いを合わせれば人類を救うだけの力を発揮する事も可能だ。人の思いにはそれだけの可能性を持っているからだ。我らの母なる星、地球を救うために皆の力を借りたい!」

 

 クライドがそう言い全世界への通信が終わる。

 

「成程! 世界中の人々の思いを合わせればノアを破壊する程の力を出す事も可能と言う事ですね」

「そんな訳ないだろう」

 

 クライドは世界中の人々の力を集めて地球を救うと宣言するが、通信が終わるとクライドはあっさりと掌を返した。

 

「AGEドライヴが感知できる人の思いは精々パイロットの物くらいだよ」

「ならば、なぜ、今のような事を?」

「決まっている。これで戦いの終わった後に俺のガンダムは人類を救った救世主として永遠に語り継がれる存在となるだろう」

 

 クライドの目的はそこにあった。

 全世界に地球の危機である事を宣言して、地球を救う為に全世界の人の思いが必要であると言えば皆は地球を救おうと願うだろう。

 それが無意味であるとも知らずに。

 その後、地球が救われれば人は思うだろう。

 ガンダムが世界中の人の思いを力に変えて地球を救ったと。

 そうなれば、クライドの開発したガンダムZERO Zは地球を救った救世主として新たな伝説となりいつまでも語り継がれる事になる。

 それこそがクライドの狙いであった。

 自身が生涯をかけて開発した最強のガンダムをいつまでも歴史に残す。

 今の状況はクライドにとっては最大の好機でもあった。

 

「後はアイツらがやってくれる事を祈るだけだ」

 

 ここまでは怖いくらいに順調に事が運んでいる。

 だが、ここでエリスとキオが失敗すれば全てが無意味となる。

 クライドの生涯を賭けた夢の最後はエリスとキオの二人に託された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ZとFX-CSがノアを追い抜く頃にはノアは地球の引力に捕まる程の距離まで接近していた。

 もはや一刻の猶予も残されてはいない。

 後数分もすればノアは地球に落ちて地球に壊滅的な打撃を与える事になる。

 チャンスは1度、それが2人に残された最初で最後のチャンスだ。

 

「キオ、先ほどの通信は聞いているな」

「はい。世界の人達が僕たちに力をくれています」

 

 クライドからの通信は2人の機体にも流されていた。

 キオはクライドの通信で世界の人々が自分達に力をくれていると感じている。

 当然の事ながら、世界中で祈ったところでAGEドライヴの力を引き出す事にはならないが、世界中の人が自分達に力を貸そうとしてくれていると思うだけで心強い物がある。

 

「爺ちゃん、父さん、僕は……やります!」

「ガンダム、私に力を貸せ!」

 

 ガンダムZERO ZはモードZEROをガンダムAGE-FX-CSはバーストモードを起動させる。

 赤と青に発行する2機のガンダムにノアが接近する。

 

「キオ、私にまぐれとはいえ勝ったんだ。あの程度のガラクタを破壊出来ないと言う事はないだろうな!」

「はい! 僕とエリスさんとガンダムならやれます!」

 

 2機に搭載されているAGEドライヴがパイロットの感情を受信し、出力が上がって行く。

 そして、出力が理論的限界値を突破すると2機のガンダムは金色に光輝く。

 

「世界を! 地球を救って救世主に!」

「当然だ! 最強たるこの私に地球の一つや二つ救えない訳がない!」

 

 2機から放たれる金色の光は分裂した破片を含めて戦場のあらゆるMS、戦艦をも呑み込む。

 戦場の誰もがその輝きに目を閉じやがて光は収まる。

 すると、驚く事に戦場のどこにもノアは存在しなかった。

 まるで始めから戦場にノアがいなかったかのようにだ。

 そだけではない。

 戦場のARISUシステムで稼働していた無人機もまた戦場から跡形もなく消滅していた。

 その光景に戦場の誰もが言葉を失い茫然としていた。

 

「これは……一体」

 

 ラ・グラミスの司令部でも誰も状況が呑み込めないでいた。

 当然の金色の光からノアの消失、何が起きているか分からないのも当然だ。

 ただ一人、クライドを除いて。

 

「良くやった」

 

 クライドはポツリとそうつぶやき、司令室から出て行く。

 司令室を出たクライドは廊下のベンチに座り俯いている。

 エリスとキオがやり遂げた事でクライドは生涯を使っての夢がかなった瞬間に自らが立ち会う事が出来た。

 もう、思い残す事はない。

 そう思える程だ。

 クライドが司令室を立ち去り、司令室で事態が呑み込まれ、歓声が聞こえて来る中、クライドは廊下でただ一人肩を震わせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2機のガンダムの放つ金色の光によってノアは消滅し地球は救われた。

 2機のガンダムのAGEドライヴがオーバーロードを引き起こして強制的に機能が停止している。

 

「エリスさん! やりました!」

「ああ……そうだな。お前は大した奴だ……それでこそ、私が唯一強敵( とも)と認めた男だ」

「エリスさん?」

 

 ノアの消滅で地球が救われた事を喜ぶキオだが、エリスの様子がおかしい事に気が付く。

 

「だい、丈夫だ。少し疲れた……」

 

 当にエリスの体は限界を超えており、ノアを消滅させた事でエリスの緊張の糸が切れて意識が朦朧としていた。

 そして、ガンダムZERO Zは地球の引力に引き寄せられている。

 FX-CSはかろうじて引き寄せられる事はないが、Zは地球に降下を始めている。

 

「エリスさん!」

「言った筈だぞ、キオ……私は死ぬまで死なない体だと……何、少し眠るだけだ。戦いが終わったのだ少しくらい……許せ」

 

 そこで通信が途切れる。

 

「エリスさん! エリスさん!」

 

 キオは必死に手を伸ばそうとするが、AGEドライヴの機能が停止しているFX-CSにはZの物に向かう余裕は残されてはいない。

 

「エリスさぁぁぁぁぁん!」

 

 キオの叫びも空しくガンダムZERO Zは大気圏に突入した。

 その後、ノアを失ったUIEは戦意を喪失して戦闘は終結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 A.G.169年、UIEの地球破壊作戦は連邦軍によって阻止された。

 この戦いで地球を救ったガンダムは救世主として歴史にその名を遺した。

 その後、ガンダムのパイロット、キオ・アスノは平和の為にMSに乗り戦うだけでは戦いを繰り返すだけだと思いMSを降りて政治家としての道に進む事となる。

 世界は火種や問題を抱えつつもゆっくりと平和への道を進み始める。

 その中で大戦の英雄であるフリット・アスノを初めとした歴戦の猛者は老衰によりこの世を去って行く。

 しかし、その中で地球を救った2人の救世主の1人、エリス・アスノを見た者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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