機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第119話

 

 

 ネオ・ヴェイガンを退けたリックはアセムに言われた通りにガンダムAGE-ZEROをMSハンガーに収容した。

 機体をハンガーに入れてようやく一息を付けた。

 いきなりの実戦で上手くAGE-ZEROを動かせたが精神的な負荷も多く心身共に疲れ果ている。

 

「大丈夫……な訳ないよね」

「少し疲れた」

 

 リックは機体のハッチを開閉し、エイミーに肩を借りて機体から降りると座り込む。

 戦闘が終わったばかりでハンガーも慌ただしい為、誰もリックとエイミーの事を気に止めている余裕はない。

 

「本当に戦闘があったんだね」

「うん」

「私達、これからどうなるんだろう」

「分からないよ」

 

 何故、ネオ・ヴェイガンがここを攻撃して来た理由も分からない以上、これからどうなるかは分からないし考えたところでどうなる訳でも無かった。

 結局のところ、リック達は状況に流されるしかない。

 

「リック! エイミー! 無事だったんだな!」

「ジン! 君も無事だったんだね!」

 

 戦闘で疲れた事や先の見えない状況で沈むリックだったが、自分達の元に駆け寄るジンを見て少し元気が出た。

 ジン・ガンへイル。リックとは親同士が親友である為、幼少期より一緒過ごす事が多く兄弟のように育っている。

 

「うぉ! これってガンダムじゃん! 何でガンダムがここにあるんだよ!」

 

 ジンはハンガーに置かれているガンダムを見て驚いている。

 

「落ち着いてよ。ジン、取りあえずここにずっといても先輩たちの邪魔になるから寮に戻ろう?」

 

 勝手に町をうろつける状況を言う訳でもなく、高等部の1年生であるリックたちにはまだコロニー内での明確な役割を与えられている訳ではない。

 その為、寮で待機していれば連絡も付けやすい。

 

「そうだな。ほら」

 

 ジンはリックに肩を貸して3人は寮へと帰って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘を終えた後、アセムは管制室に敵母艦と周囲の警戒を厳密にする事を指示した。

 それから数時間後に生徒側の代表である学生会長のエディに学園の教師陣を集めさせて会議室に集まっている。

 ネオ・ヴェイガンの襲撃で教師陣達にも大きな被害が出ている為、集まったのは半数にも満たなかった。

 

「被害の状況は把握できたか?」

 

 警戒指示と同時にコロニーの被害状況の把握もさせており、エディがそれをまとめ報告する。

 

「MSの被害が20機が撃墜、生徒と教師の死傷者数は不明ですが相当な物ですよ」

 

 エディはどこか投槍に答える。

 MSはコロニーには50機程配備されている。

 その内の20機が撃墜されている。

 撃墜されずともすぐに使えないMSも少なからずあり、使えるMSは20機前後しか残されてはいない。

 その上、生徒や教師も襲撃で命を落としており、今は確認作業を急がせているが学園の生徒は実戦も戦争も知らずに育った生徒しかいない為、難航し正確な数は分からないでいる。

 

「問題はこれからですな……まず、連中の襲撃の目的から考える必要がありますな」

 

 教師の一人がそういう。

 敵の襲撃の目的が分かれば対策の打ちようもある。

 

「新型のガンダムだと私は推測します」

「どういう事だ?」

 

 キャロルの言葉にアセムが反応する。

 それとは別に教師陣、それも技術系の教師が少なからず反応している。

 

「アスノ先生、それ以上は機密に……」

 

 狼狽える教師をアセムは不審に思う。

 明らかに何かを隠している。

 

「この状況で機密も何もないでしょう。どの道、私達だけでは状況の打開は出来ません」

 

 キャロルの反論で教師は黙る。

 これからキャロルの話す事は機密事項である為、身内の人間だろうと余り良い事ではない。

 しかし、状況を隠す事なく共有しなければ生き残る事は出来ない。

 

「このコロニーでは極秘裏に新型のガンダムを製造しています。無論、アスノ家で同時に製造したゼロではなく正式に公表している方のガンダムです」

「そういう事か……道理で」

 

 アセムは少し驚くがその反面納得もしていた。

 このコロニー、レーアツァイトの設備はマッドーナ工房程ではないにしろ、一般の工房よりも設備が充実していると言うのが一つの売りだ。

 それ以外でも技術者やパイロットの育成にも力を入れていると言う事で有名だ。

 それらは次世代の人員を育てると表向きの名目だけでは無く、裏ではガンダムの製造とそれを動かすパイロット、整備する技術者の育成も同時に行っていたと言う事だ。

 

「現在、ここには1号機、2号機、3号機、5号機の4機があります」

 

 新型のガンダム開発計画においてガンダムは7機も製造する予定だった。

 指揮官機、可変機、砲戦用、Xラウンダー専用、白兵戦用、陸戦用、宇宙戦用の7機だ。

 その内、Xラウンダー専用の4号機はすでにロールアウトして実戦に投入されている。

 陸戦用の6号機と宇宙戦用の7号機はまだ設計段階となり、残った1号機、2号機、3号機、5号機がレーアツァイトで作られていた。

 

「それが狙いと言う事か……」

「だが、情報統制は完璧の筈だ」

「人の口に戸は立てられません。先生方も強硬派の黒い噂は知らない筈がありません」

 

 それを言われると教師陣も黙り込んでしまう。

 政府の強硬化には黒い噂が流れている。

 強硬派は天使の落日を繰り返さないように軍備増強を訴えている。

 軍備増強を推し進める為に明確な敵が必要と言う事もあり裏ではネオ・ヴェイガンにMSや戦艦のような兵器や情報を流していると言う噂だ。

 事実、ネオ・ヴェイガンはギラーガやファルシアと言った複数製造されていないMSまで保有している為、その噂もあながち間違いとは言い切れない。

 だが、証拠がある訳でも無く強硬派のどこまではそれに関与しているかも不明だ。

 今回の戦闘もネオ・ヴェイガンの脅威を世間にアピールする為に情報が流されたと言う可能性も考えられる。

 尤も、ここには新型のガンダムが4機もある為、強硬派も情報を流して襲撃はさせないだろうが、どんなに情報を統制したところで人が関わっている以上、情報が漏れないと言う事はあり得ない。

 ここでAGE-ZEROを製造したのも、新型ガンダムの開発を隠れ蓑にしたからで故に今までAGE-ZEROの製造は新型ガンダムの開発に現場で関わった技術者とアセムやキオを初めとしたアスノ家の一部しか知らない事でもあった。

 

「新型ガンダム製造の進捗状況は?」

「全機ともほぼ完成しています。問題はパイロットの方です」

 

 新型ガンダムが完成したところでパイロットがいなければ使いようがない。

 パイロット科の生徒でも初めての実戦で腰が引けた生徒も少なくはないだろう。

 そんな状況でガンダムのパイロットなど到底出来る話しではない。

 

「そんな事よりも逃げましょうよ! 脱出艇なら生徒全員分はありますし!」

 

 エディは話しの腰を折って声を荒げる。

 話しの流れはネオ・ヴェイガンに抗戦する方向に進んでいるがコロニーから脱出すると言う選択もある。

 常に生徒と教師が乗っても十分に余裕のある脱出艇の数は用意されている。

 水や食料の半年分は確保されている。

 ならば、無理に戦わずとも逃げると言う選択も選ぶ事は出来る。

 

「連中が黙って逃がしてくれるとは思えんな。奴らの指導者はあのヴァニス・イゼルカントの娘を名乗っている以上はな」

 

 相手が正規の軍であれば脱出艇を攻撃すると言う事はないが、現在のネオ・ヴェイガンの指導者のヴァレンティナ・イゼルカントはヴァニスの娘と自称している。

 それが事実かはおいておいても強気な言動はヴァニスに通じる物はある。 

 ヴァニスなら、戦場から逃げる敵は民間人の乗った脱出艇だろうと躊躇う事なく撃ち落すだろう。

 その意志を継いでいるネオ・ヴェイガンが見逃してくれるとは到底思えない。

 

「どの道、逃げるにしても立ち向かうにしてもそれ相応の戦力は必要だ」

 

 仮に逃げたとしても敵が素直に行かせてくれる筈もない。

 そうなれば迎撃できるだけの戦力は必要となって来る。

 

「リックのガンダムと新型のガンダムが4機か……それでも厳しいな」

 

 ガンダムが5機とアデル・ガーディアが20機前後あれば十分な戦力だが、リックも含めて実戦経験に乏しい為、不安要素は多い。

 その上でリックのAGE-ZEROにはまともな装備が用意されてはいない。

 

「キャロル、ディーヴァはすぐに使えるか?」

「難しいですね。何年も使ってませんから」

「どういう事だね?」

「このコロニーにはディーヴァも隠してあるんです」

 

 この中でディーヴァの名を知らない者はいない。

 蝙蝠退治戦役から歴代のガンダムの母艦として運用されて来た戦艦だ。

 そのディーヴァも半世紀以上も運用されて老朽艦として数年前に廃棄されていた筈だ。

 しかし、実際はアスノ家によって廃棄を装い秘匿されていた。

 そして、このコロニーを製造する際に極秘裏にコロニーに隠されていた。

 

「使えるまでにどのくらいかかる?」

「技術科の生徒を使って……1月、いえ2週間でやって見せます」

「頼む」

 

 脱出するにしても脱出艇よりも老朽艦とはいえ、ディーヴァで打って出た方が確実だ。

 

「後は連邦軍とネオ・ヴェイガンの増援がどうなるかだ」

「こっちからの救難信号は出せませんから軍がいつ気づいてくれるか……」

 

 これ程までの状況なら連邦軍も気づいて部隊を送ってくれるとは思うが、ネオ・ヴェイガンはコロニーの外への通信網をすでに叩いている。

 そのせいで外に助けを呼ぶ事が出来ない。

 連絡が途絶えればいずれは気づいて貰えるだろうが、このコロニーは学生が切り盛りしている事もあり過去に何度も通信が長期途絶した事はあったため、一か月程度では気づいては貰えないだろう。

 ネオ・ヴェイガンは通信網を叩いた上で小規模な戦闘で終わらせようとしたのはこういう時の事を想定したからだろう。

 余り派手に攻め込むとその戦闘から連邦軍に気づかれる恐れがあった。

 だが、この程度の戦闘なら簡単に気づく事はない。

 アセムが乗って来た輸送船もアセムが降りて物資を下ろしてすでに出航している。

 戻った輸送船から連邦軍はコロニーで問題が起きていないと言う報告を受ければ事態の発覚は更に遅れる事になるだろう。

 

「だが、敵の増援の可能性も低いのが不幸中の幸いと言ったところか……」

 

 ネオ・ヴェイガンの行動から向こうも連邦軍の増援が望んでいないと言う事が分かる。

 となれば、増援部隊を動かせば連邦軍に見つかると言うリスクが伴う。

 先の戦闘で確認できたMSの数は7機で内3機を撃墜した。

 敵母艦がファ・ボーゼ級である事はすでに確認している。

 ファ・ボーゼ級に限界までMSを搭載したとしてもまだ敵は十分な戦力を残していると考えられる。

 ならば、連邦軍の増援を呼びかねない増援部隊を動かすとは考えにくい。

 

「2週間守り切ればディーヴァと脱出艇を使って脱出は可能か……」

 

 キャロル達が2週間でディーヴァを使えるようにすれば戦力として使える。

 戦闘能力のない脱出艇で逃げるよりかは老朽艦とはいえ戦闘能力を持っているディーヴァがいるといないとでは脱出の成功率が大きく変わって来る。

 その後、今後の事について細かい打ち合わせを行い会議は終了する。

 

 

 

 

 

 

 レーアツァイトから帰還したジェレミアとアビーは戦闘の報告をヴァネッサの自室にて行っている。

 モニターにはナイトギラーガとAGE-ZEROとの戦闘の映像が流れている。

 

「これがガンダム……あんな貧相な装備であそこまで戦えるとはね。ジェレミアが腕を失うのも分かるわ」

「奴の特出すべき点は反応速度です。こちらの攻撃に対して異常なまでの反応速度で対応して来ます」

 

 ジェレミアは戦闘の映像と共に実際に戦闘を行った時の率直な感想を述べている。

 AGE-ZEROは攻撃の方は最後の一撃以外はそこまで脅威とも言える程ではない。

 しかし、こちらの攻撃に対する反応速度は異常だった。

 

「パイロットはXラウンダー」

「恐らくは……そうとしか説明が付きません」

 

 これだけの反応速度を持ちながら、攻撃は素人に毛の生えた程度からそれ以外には説明が付かない。

 

「如何なさいますか?」

「このガンダムにAGEシステムが搭載されているのであれば時間をかけるのは分が悪い。次の戦闘で片を付ける。今度は私も出る」

 

 ジェレミアと交戦したガンダムはAGE-1に酷似している。

 新型のガンダムとは明らかに開発系統が違う為、新型とは違うルートで開発された可能性が高い。

 そうなるとAGEシステムを搭載しているかも知れない。

 AGEシステムに実戦データを多く与えるとガンダムを進化させるだけだ。

 ならば、戦闘データの集まっていない時を狙うしかない。

 

「分かりました。整備班には私のナイトギラーガの修理を急がせます」

 

 ジェレミアとアビーは部屋を出て行く。

 ヴァネッサは一人で映像に映るガンダムを眺めている。

 

「また私の前に立ちはだかるか……また?」

 

 ヴァネッサは自身の言葉に少なからず驚いていた。

 ヴァネッサは映像を見て「また」と言った。

 余りにも自然とその言葉が出て来たが、実際ヴァネッサは一度もガンダムと戦った事は無い。

 それなのに自然とまたと口にした。

 

「そんな事はどうでも良いわ。ガンダム……母様の仇は私が取る」

 

 ヴァネッサは映像を切り部屋を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオ・ヴェイガンの襲撃の翌日、レーアツァイトは昨日までの一日の始まりではなかった。

 管制室の索敵班はいつもよりも人員を増強して敵母艦の動きの監視と周囲の索敵を行い、コロニー内でも可能な限りの人員を割り振って行方不明者の捜索と補修作業が続けられている。

 ハンガーではAGE-ZEROの装備を作っていた。

 作ると言っても一からは作る訳ではない。

 アデル・ガーディアのシールドに持ち手を付けてAGE-ZEROが直接手に持って装備出来るように改良されている。

 それとは別にドッズライフルの調整も同時に行われている。

 

「リック! どうだ! 動かして見ろ!」

「分かった!」

 

 シールドを左手に持たせてリックは左腕を動かす。

 シールドを持った状態でも機体は問題なく、動かせる事とシールドを装備している状態の感覚の確認の為だ。

 

「大丈夫みたい」

「二人とも何してんの?」

 

 問題がない事を確認し、シールドを一度外しているとハンガーにエイミーが入って来る。

 

「エイミーこそ暇してんのか?」

「まぁね。MSの数とパイロット科の生徒の数は全然違うから、1年にはMSが回って来ないんだよね」

 

 昨日の戦闘でのショックから立ち直ったかのようにエイミーはそういう。

 戦闘でパイロット科の生徒も少なからず死んでいるが、レーアツァイトに残されているアデル・ガーディアの数は20機前後だが、パイロット科の生徒は100人以上もいる。

 その為、高等部の1年生であるエイミーにアデル・ガーディアが回される事はない。

 よってエイミーを初めとしたパイロット科の生徒のほとんどは仕事が無い為、他の科の手伝いに回されている。

 

「それよりさ、それをガンダムに装備するの?」

「まぁな。ガンダムの装備はビームダガーとビームバルカンだけだからな。アデル用の装備を無理やりにでも装備させないとまともに戦えないからな」

「そうよね……」

 

 エイミーは少し暗い顔をする。

 昨日は何とかネオ・ヴェイガンを退ける事に成功したが、未だにネオ・ヴェイガンの母艦は近くに停泊していると聞いている。

 つまり、再びレーアツァイトが戦場になると言う可能性は高い。

 昨日の事を思い出すと未だに身震いをしてしまう。

 

「リックもガンダムで戦うの?」

「うん、それしかなさそうだから」

 

 リックも戦いたい訳ではない。

 しかし、敵が攻めて来る以上は戦うしか生き残る術はない。

 その為にはガンダムの力が絶対に必要で今、ガンダムを扱えるだけの力を持つのはリックしかいない。

 

「そうなんだよね……」

「暗い顔すんなって、リックにかかればあんな奴らイチコロだぜ」

 

 リックとエイミーが暗くなり、ジンが場の雰囲気を明るくしようとする。

 だが、余り効果は見られない。

 

「エイミーは知らないだろうけど、リックの家のMSバトルシュミレーターにはリックの父ちゃんや爺ちゃんの全盛期のデータが入っててさ、その難度と言ったら、ゲームバランスが破綻した無理ゲーなんだぜ。ボス戦でガンダムが出て来た時の絶望感は半端じゃないんだって」

 

 リックの実家にあるMSバトルシュミレーターをジンも遊んだ事は何度もある。

 その中で歴代のガンダムの実力は全盛期の状態で当然の事ながらジンは勝つどころか上手くやって数秒間だけもてばいい方だ。

 それに比べたら今の状況など大した事は無いと言いたいが、それを知らないエイミーには効果はない。

 

「大丈夫だよ。エイミー、僕がガンダムで皆を守るから」

「まっ、この状況じゃガンダムだけが頼りだからな」

「そんな事……何? この感じ……敵が来る」

 

 リックは不意にそう感じた。

 リックはAGEデバイスをセットし、機体のハッチを閉じると調整の終えているライフルをシールドを装備させてハンガーから出る。

 

「僕は先に行くから、ジン達はその事を伝えて」

 

 そして、リックは宇宙港を目指す。

 宇宙港に到着する事にはジンとエイミーから敵が接近しているかも知れないと言う事を聞いて周囲の索敵を行っていた管制室のセレナから通信が入る。

 

「アスノ君の言う通りネオ・ヴェイガンのMSが2機、接近していますわ。昨日出て来た赤とピンクのMSですわ」

「赤いMS……僕が交戦した奴ですね」

 

 AGE-ZEROが宇宙港に入り外に出る。

 宇宙港を出たAGE-ZEROは接近する敵の方へと向かう。

 

「この距離でも……」

 

 AGE-ZEROはドッズライフルを放つ。

 まだ、距離はあるがアデル・ガーディアのドッズライフルは素人の学生でもある程度の精度で使えるようにセンサー系が強化されている。

 その為、距離があってもある程度の精密射撃が可能であった。

 AGE-ZEROの先制攻撃をナイトギラーガとミラーファルシアは回避する。

 昨日の戦闘で片腕を失っているナイトギラーガは急ピッチで修理を終えて投入されている。

 今回の戦闘ではギラーガアックスを装備せずに代わりにXトランスミッターを装備したモードXで出撃して来た。

 

「ほう……もう出て来たか」

「ガンダムが1機、武装しているけどこっちの想定内ね」

 

 ナイトギラーガとミラーファルシアが出てくれば確実にガンダムを出して対応する事は事前に予測していた通りであった。

 アデル・ガーディアの装備で武装しているがビームダガーに比べると恐れる必要は無い為、武装しているのも許容範囲内だ。

 

「ヴァネッサ様が出て来る前に少し削るぞ」

「分かってるわ。ビット!」

 

 ミラーファルシアから5基のミラービットが射出されてAGE-ZEROを囲む。

 AGE-ZEROの四方からミラービットの攻撃が開始される。

 

「このビットはビームを反射するんだよな」

 

 AGE-ZEROはミラービットにドッズライフルを向けるが攻撃はしなかった。

 昨日の戦闘でミラービットがビームを反射していた為、下手に攻撃してもビームを反射させられるだけだ。

 AGE-ZEROがミラービットの攻撃を掻い潜り包囲網から脱出しようとする。

 だが、その先にはナイトギラーガのギラーガビットがAGE-ZEROを待ち構えていた。

 

「胞子ビット! 誘い込まれたの!」

 

 AGE-ZEROはシールドを掲げるもギラーガビットに突っ込む。

 そして、再びミラービットに包囲されてしまう。

 

「本体を叩けば……」

 

 ビットを無視して本体を叩けばビットはコントロールを失って無力化出来る。 

 しかし、本体のミラファルシアとナイトギラーガは離れたところにいる。

 

「あんなに遠いと届かない!」

 

 ミラービットの攻撃をAGE-ZEROはかわすが、ミラービットから放たれたビームはAGE-ZEROの後方に配置されているミラービットに反射されて背後から襲いかかる。

 

「後ろ!」

 

 AGE-ZEROはシールドで何とか防ぐ。

 ミラービットは何も敵の攻撃だけを反射するだけではない。

 ミラービットやミラーファルシアのビームを反射させる事で敵の死角から攻撃する事も可能だった。

 

「やるわね。あのガンダム」

 

 ミラービットとギラーガビットの2種類のビットによる攻撃を回避し続けるAGE-ZEROにアビーも関心している。

 ミラービットの反射攻撃は並みのパイロットでは対応できないが、AGE-ZEROは苦戦しつつも対応している。

 それも始めに比べれば余裕も見え始めている。

 すると、2機の間にビームが走る。

 

「ビットの合間を撃って来たと言うの!」

「これがガンダムか!」

 

 攻撃は外したが、ミラービットの攻撃を掻い潜りAGE-ZEROは反撃をして来た。

 だが、2機は攻撃をされても十分に対応出来る距離を保っている。

 元より2機は接近する気はない。

 AGE-ZEROのビームダガーはナイトギラーガのビームシールドですら防げない。

 高い出力を持つ反面、極端に間合いが短い為、近接戦闘を完全に避けてビットによる遠距離攻撃を徹底する事でビームダガーの対策を取っている。

 この距離であればビームダガーを投擲したところで回避する事は容易だ。

 

「この攻撃にもだいぶ慣れて来た……もう1機来る!」

 

 ビットの攻撃に慣れた来たところで、2機の背後から更なる気配を感じ取った。

 それも2機以上の力を持っていると感じる程の力だ。

 

「早い!」

 

 その気配の移動速度は普通のMSとりも圧倒的に早かった。

 

「ヴァネッサ様!」

「ガンダムがビットに対応して来たから、私がやるわ」

 

 それはヴァネッサ専用機であるグルドリンカスタムだ。

 グルドリンはヴェイガンが戦争の終盤に資源不足に陥り今までの複雑な機構を持つMSから部品レベルで機構の簡略化を突き詰めた結果、人型である事ですら必要なしと判断されて開発された。

 だが、数機が試験的に開発された時点でヴェイガンはネオ・ヴェイガンとなりレギルスの量産化に成功し、資源不足も解消された為、グルドリンのような従来のMSとは一線を画するMSは不要として開発が中止された。

 グルドリンカスタムはそんな中の1機をヴァネッサ専用にカスタムしたMSだった。

 グルドリンの最大の特徴とも言えるつぼ型の胴体の左右には複数用意されたアタッチメントから鳥の翼を模したウイングアタッチメントが採用されているが、多方向ミサイル発射システムがドッズライフルの銃身に換装され、シドの技術も取り入れられている。

 機体の下部にはライディングギアも兼ねているシグマシスキャノンが2基、機体の正面には元から装備されているビームスクレイパーとその周りに4基のビームバルカンが内蔵されている。

 上部後方には補助スラスターと多連装ミサイルポッドが一体化されたブースターが2基と格闘能力は低いが、高い機動力と火力を持っている。

 

「あれもMS!」

 

 グルドリンカスタムが参戦した事でビットの包囲が緩み、AGE-ZEROはドッズライフルで攻撃する。

 だが、グルドリンカスタムの表面には電磁装甲が使われている為、ドッズライフルの直撃でも無傷だ。

 電磁装甲でドッズライフルの効かないグルドリンカスタムはビームスクレイパーを展開して突っ込む。

 AGE-ZEROはシールドを掲げるもビームスクレイパーでシールドが削られて破壊される前にシールドを捨てて退避する。

 

「無茶苦茶だよ!」

 

 何とかグルドリンカスタムの特攻をかわせたが、ミラービットの攻撃を受ける。

 ミラービットからの攻撃を回避しているうちにグルドリンカスタムは旋回して、ビームバルカンを連射する。

 

「ジェレミアとアビーは回り込んで」

 

 グルドリンカスタムはシグマシスキャノンを放ち、回避したAGE-ZEROの左右からナイトギラーガとミラーファルシアがビームバスターと拡散ビーム砲を放つ。

 シグマシスキャノンとビームバスターの攻撃は回避できたが、拡散ビーム砲の直撃を受けてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3対1の戦闘の様子は管制室でもモニターしている。

 頼みの綱であるガンダムもXラウンダー専用機が3機も相手では分が悪く圧倒されっぱなしだった。

 

「だから無理だったんだよ! 相手はプロのテロリストなんだぞ!」

 

 エディが半ば錯乱気味に叫ぶ。

 昨日の戦いではガンダムのおかげで勝つ事が出来た。

 だが、たった1日でネオ・ヴェイガンも対策を立てて実行して来ている。

 

「皆のリーダーが狼狽えてどうする」

 

 敵の接近の知らせを聞いたアセムが司令室に入って来ると場の空気が少し軽くなる。

 それと同時に完成室の大半がアセムに何かしらの指示を求める視線を送っている。

 皆がガンダムの苦戦でどうしたら良いのか分からなくなっている。

 

「周囲に敵影は?」

「今のところは……」

「なら、MS隊をガンダムの援護に回しても構わない」

 

 周囲に伏兵や別働隊がいないと言う事は投入している戦力から敵の狙いがガンダムの撃破であると思われる。

 ガンダムさえ倒してしまえばレーアツァイトを落とすのは簡単だ。

 その為、先に不安要素であるガンダムを仕留めると言う事は理に適っている。

 

「そのMS隊の発進の前にこっちに寄って下さい」

 

 管制室のモニターの一つにディーヴァの格納庫にいるキャロルが映される。

 

「どうした?」

「徹夜でAGEビルダーの整備を終えて起動させてましたから、前回の戦闘と今の戦闘のデータからAGEシステムが新しい装備を作りました。それをガンダムに届けて下さい」

「AGEシステムが……分かった。ブラック小隊をすぐにディーヴァに向かわせろ」

 

 キャロルはディーヴァの整備の際に真っ先にAGEビルダーの整備から始めていた。

 AGE-ZEROにはAGEシステムが搭載されているがAGEビルダーがなければ新装備を設計しても製造する事が出来ない。

 その為、まずはAGEビルダーを使えるようにして完全にAGEシステムを使えるようにしていた。

 そのお陰でAGEビルダーは新しい装備を製造している。

 AGEシステムが昨日と今の戦闘から設計した新装備はこの状況を打開する程の物でる可能性は高い。

 アセムの指示で待機中だったブラック小隊がディーヴァへと向かう。

 

 

 

 

 

 3機のXラウンダー専用機の攻撃をAGE-ZEROは何とか持ちこたえている。

 ミラーファルシアのビームソードをビームウィップとして使いAGE-ZEROのドッズライフルを破壊する。

 ビームバルカンで牽制するが、ドルドリンカスタムは気にする事もなくビームスクレイパーで突撃して来る。

 

「このままじゃ……」

 

 ライフルとシールドを失い常に距離を取っている為、AGE-ZEROは攻撃を回避するので精一杯で反撃の余裕はない。

 だが、レーアツァイトからの増援のMSが到着する。

 昨日の戦闘でハーマン以外が全滅したブラック小隊だが、新しい編成がされている。

 その為、ハーマン機以外はドッズキャノンを装備した一般機となっている。

 アデル・ガーディアは三連装ミサイルを使って弾幕を張る。

 

「ガンダム、新しい装備を持って来た。こいつを使え!」

 

 ハーマン機はディーヴァで受け取って来た新装備をAGE-ZEROに向けて投げる。

 

「ライフル? でも、ビームじゃあのビットに……」

 

 ハーマン機の投げた武器はライフルであった。

 ビーム兵器ではミラービットに反射されるだけだが、シールドとライフルを失った今の状況ではないよりかはマシだ。

 AGE-ZEROはミラービットの攻撃を掻い潜り投げられたライフルを掴む。

 ライフルの大きさは通常のドッズライフルとは変わらない。

 だが、それがAGEシステムが新たに生み出した新装備のDCドッズライフルだ。

 AGE-ZEROはDCドッズライフルをミラーファルシアに向けた。

 

「新しい武装を装備したところで!」

 

 DCドッズライフルに対してミラーファルシアはミラービットを集めて対応する。

 ミラービットを全て使えばスタングルライフルの直撃も受け止める事が出来る。

 リックが引き金を引くとDCドッズライフルの銃身の先で高密度のエネルギーが収束される。

 そして、圧縮されたエネルギー弾がミラーファルシアに向けて放たれた。

 エネルギー弾はミラービットを粉砕しながらミラーファルシアに向かう。

 

「ビットが!」

 

 ミラーファルシアは左腕の小型シールドを高速で回転させてエネルギー弾を弾こうとするが、小型シールドごと左腕が吹き飛んだ。

 

「何なの! あの武器は!」

「アビー!」

「あんな装備はデータには……新兵器? AGEシステムを搭載しているの? あのガンダムは」

「凄い……」

 

 DCドッズライフルはヴェイガンの胞子ビットの技術を応用して銃身の先端で高出力のビームを圧縮して撃ちだす装備だ。

 その際にドッズライフルは一方向の縦回転を加える事で貫通力を高めているがDCドッズライフルは圧縮された高出力ビームを乱回転させる事で破壊力を高めている。

 それにより、ミラービットを破壊し、ミラーファルシアの左腕を吹き飛ばした。

 

「……撤退するわ」

「しかし! あれほどの装備をガンダムは!」

「あれにはAGEシステムが搭載されているわ。これ以上、経験値を積ませる必要はないわ」

 

 今までの武装にはない技術が使われている為、ヴァネッサはAGE-ZEROにはAGEシステムが搭載されていると考えている。

 それが本当ならば、戦闘経験を積ませると自分達が不利となる。

 ここで確実に仕留める事が出来なくなった以上、ガンダムに経験を積ませる訳にはいかない。

 

「了解しました」

 

 ナイトギラーガはミラーファルシアを抱えて後退を始める。

 

「撤退?」

「追う必要はない。各機、伏兵に警戒しつつ帰投してくれ」

「なぜです! 今なら連中の内1機は手負いです! ガンダムの新装備があれば!」

「敵は今回は3機しか使っていない。無理に追撃すればこちらがやられる」

 

 アセムの言葉にハーマンは言い返せない。

 今回はネオ・ヴェイガンは3機のMSしか投入していない。

 ガンダムを相手に被害を最小限に抑える為にXラウンダー専用機のみを投入したのだろう。

 追撃をすれば、ファ・ボーゼ級に残して来たMSをも戦わなくてはいけない。

 幾らAGEシステムが作り出したDCドッズライフルがあるにしてもライフル一つで勝てる訳もない。

 DCドッズライフルの威力を見せ付ける事は出いている為、敵はDCドッズライフルの対策に時間を使う事になる。

 それで多少なりとも時間を稼ぐ事が出来る為、これ以上の戦闘は自分達の戦力を消費しかねない。

 

「分かりました……」

 

 仲間の仇を取りたいと言う気持ちを抑えてハーマンはアセムの指示に従う。

 ネオ・ヴェイガンの伏兵に気を付けつつもAGE-ZEROはブラック小隊と共にレーアツァイトに帰投する。

 

 

 

 

 

 

 

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