機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第120話

 

 

 ネオ・ヴァイガンの2度目の襲撃から2日間は膠着状態が続いていた。

 ネオ・ヴェイガンもAGEシステムを搭載したガンダムを相手に無駄な戦闘は避ける為動かなかった。

 だが、次の作戦の準備が整っていた。

 

「どう?」

「お似合いです」

 

 ヴァネッサはジェレミアとアビーにそういう。

 ヴァネッサは今、レーアツァイトの高等部の制服と来ていた。

 元々、襲撃とは別にコロニーに潜入してガンダムを奪取すると言う作戦も用意されていた。

 その際に学生に扮する事が最も目立たない方法だった。

 ジェレミアとアビーは20代も後半で制服を着ても学生に扮するには無理があった。

 しかし、10代後半であるヴァネッサならば制服を着れば学生に扮する事は可能だった。

 そして、ヴァネッサの顔は今まで表に出る事は無かったが、用心の為にカラーコンタクトで両目の色を合わせ眼鏡をかけている。

 

「そう? 少し胸の辺りが苦しいわ。何とか出来ない」

「それ以上のサイズとなりますと、メーカーに特注しないといけません。そうなれば時間もかかりますし、足も付きやすくなります」

 

 ヴァネッサは制服の胸元を弄りながらそういう。

 制服のサイズは高等部の女子の制服では一番大きいサイズを着ている。

 それでも同年代に比べるとヴァネッサの胸は大きく一番大きなサイズでも少し胸が苦しい。

 だが、それ以上のサイズとなると制服を作っているメーカーに特注しなければ手に入れる事は出来ない。

 そうした場合、用意できるまでに何日があるいは1週間以上の時間が必要となる。

 その上、特注すれば足も付きやすい。 

 余り時間をかけたくない今の状況では制服に致命的な不備がない限りはそんな事はしない方が無難だ。

 

「分かったわ。私が我慢すれば良いもの。ジェレミア、アビー、手筈は分かっているわね」

「心得ております」

 

 この2日間でレーアツァイトの構造を把握し、作戦もあらゆる状況を想定して綿密に立てている。 

 ヴァネッサの制服に問題が無い為、ネオ・ヴェイガンは水面下で新たな作戦行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日間の膠着状態でレーアツァイトの側も余裕を取り戻しつつある。

 膠着状態の間に部隊編成に各生徒の役割分担、ディーヴァの整備と新型ガンダムの組み立て、やる事は多い為、膠着状態はおおいに望むところではあった。

 そして、今日も定例会議が行われている。

 

「ディーヴァの整備にはまだ時間がかかりますね。新型ガンダムの組み立ても比較的完成していた2号機と5号機はじきに完成して使えるようになります。3号機と1号機は片方は何とか出来そうですけど、両方となると時間が……」

 

 整備科の生徒によるディーヴァの整備と新型ガンダムの完成は余り良い状況とは言えない。

 ディーヴァは老朽艦である為、整備には非常に時間がかかっている。

 新型ガンダムの方も開発が遅れ、2週間で全機を投入する事は出来そうにない。

 

「あのぉ……何とかして連邦軍に連絡を付ける事は無理なんでしょうか……」

 

 エディが少し控えめに進言する。

 それを見ていた教師陣は少し呆れている。

 

「そうだな。念の為に破壊されたアンテナが修理可能か確認する必要もあるな。技術科で手の空いている者を向かわせてくれ。確認作業なら高等部の1年でも出来る筈だ。護衛にガンダムをつける」

 

 アセムもネオ・ヴェイガンが臨機応変に対応している事から直せる程度の破壊で済ませているとは思っていないが、余りエディの意見を否定し続けるのはエディの中で不満が溜まりかねない。

 学生会長であるエディは学生のトップである以上、不満を溜め過ぎて不満が爆発してしまえば最悪内部崩壊を起こす危険性がある。

 それを避ける為にも確認作業をする必要があった。

 大学部の生徒は大半が役割があり、空いている生徒は休憩に入っているだけでいずれは仕事がある。

 だが、入学したての高等部1年ならば、まだ仕事のない生徒はいる。

 アデル・ガーディアの数は少ないが作業用の小型機ならばある程度の数はあり、今の時代小型の作業機を動かす事は難しくはなくここに入学している生徒なら授業で動かす事も多く動かせない生徒はいないだろう。

 そこにリックを護衛としてつける事で少しでもリックがガンダムの操縦に慣れさせる事も出来る。

 

「ガンダムの整備が終わり次第、向かわせます」

「頼む。次は防衛部隊の待機シフトの確認か……切り札がガンダムとはいえガンダムにだけ頼る訳にはいかないからな……」

 

 ガンダムの性能は高いがパイロットのリックに負担を掛けすぎるといざという時に戦えないと言う事もあり得る。

 そんな状態で無理して戦わせてもリックやガンダムの本来の力を出す事もなく撃墜される。

 その為、リックとガンダムだけに頼らない事もこの状況を乗り切る為には必要な事だ。

 機体性能やパイロットの練度ではネオ・ヴェイガンには敵わない為、出来る事は戦術的な方面でしかない。

 戦術と言ってもパイロットが理解し実行できるものでなければ意味はない。

 そうなって来ると戦術の幅が狭くなる。

 それでも戦術を用意しないのとでは違う為、その後の会議はいかにして今の戦力で状況を乗り切るかに焦点を当てて進められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議が終わり、リックはエイミーとジンと共にコロニーの外に出ている。

 エイミーとジンはそれぞれ小型の作業機でリックはDCドッズライフルとアデル用のシールドで武装したガンダムに乗っている。

 リック以外の2人が選ばれた理由は単にリックの友人である事とジンは親も技術者である為、高等部1年では技術的な知識はリックと共に頭一つ抜けているからだ。

 

「アンテナの破壊状況の確認ね……」

「駄目だとは思うけどな」

「そうだね」

 

 リックもジンもアンテナが修理出来るとは思ってはいないが、指示された以上はやるしかない。

 

「それよりリックはノーマルスーツ着ないで良いの?」

「ノーマルスーツはMSを動かすには余り適していないからね。パイロットスーツがないなら制服で動かした方がマシだよ」

 

 ジンとエイミーは場合によっては作業機から出て作業する事もある為、ノーマルスーツだがリックはパイロットスーツもノーマルスーツではなく、制服のままだ。

 その理由としてAGE-ZEROには専用のパイロットスーツが用意されているが、今回は緊急的に起動させた為にここには用意されていない事が1つ目の理由だ。

 1つ目の理由はコロニーにあるパイロットスーツは大学部の生徒用のサイズしかないと言う事だ。

 パイロット科の生徒は大学部に上がるまでは実機を宇宙で動かす事は無い。

 その上、リックは同年代と比べても小柄である為、パイロットスーツのサイズがない。

 ノーマルスーツなら生徒全員が使っても余るだけの数とリックでも着られるサイズがあるが、ノーマルスーツを着てMSを動かすには動き辛い。

 2人のように作業をするにしても簡単な作業であれば問題はないが、リックはあくまでも2人の護衛である為、戦闘になった場合ノーマルスーツでは操縦に支障が出る事を考慮して外に出ないならと制服のままでガンダムに乗っている。

 

「あの辺りだ」

 

 話している間に破壊された場所に到着する。

 

「分かってたが、念入りに破壊してるな。一応、管制には送るけど、俺が見ても無理だって分かるぞ」

 

 アンテナは完全に破壊されており、予備のアンテナに付け替えるにも時間がかかりそうだった。

 ジンは作業機のカメラの映像を管制室に送る。

 元々、ジンたちの仕事は作業機で現場の状況を管制室に送り管制室からアセム達が修理可能かどうかを判断する予定ではあったが、一目で無理だと言う事が分かる。

 

「ジン・ガンへイルです。現場に到着して映像を送りますけど、どう見てもダメです」

「こちら管制室。映像は受け取った。こちらの判断も修理には時間がかかり過ぎると判断した。すぐに帰投してくれ」

「了解」

 

 管制室の方でも特に議論する事もなく、無理だと判断された為、待つ事もなく帰投命令が出される。

 

「結局、私達は無駄足だった訳ね」

「でも、何もしないよりかはマシだって」

「そうだけどさ……」

 

 ジンもエイミーも高等部の1年生と言う事で待機でやる事はほとんどない。

 やる事を言えば雑用くらいだ。

 それに比べれば少しは自分の学科らしい仕事とは言える。

 

「お前もそう思うだろ? リック」

「……そうだね」

 

 ジンはリックに同意を求めるが、リックはどこか上の空で気の抜けた返事をする。

 普段から余り強気な発言はしないが、2人ともリックの様子がおかしい事には気が付いている。

 

「リック? どうかしたの?」

「ジン、エイミー……何か感じない?」

「何かって何だよ? レーダーには特に反応がないぜ?」

 

 作業機のレーダーやガンダムのレーダーにも特に反応はない。

 それでも、リックは何かを感じていた。

 まるで誰かがじっとこちらを見ているかのような感覚だ。

 

「ジン! エイミー! すぐに管制に言って調べて貰って! 僕は様子を見て来る!」

「おい! リック!」

 

 リックはそれだけ言うと機体を1機に加速させる。

 作業機でガンダムの加速に追いつける筈もなく、ジンとエイミーはガンダムから引き離されて仕方がなく、状況を管制室に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機体を加速させている間にレーダーにもMSと思われる反応がいくつか確認が出来るようになっていた。

 リックの感じた感覚は接近するネオ・ヴェイガンのMSであった。

 

「赤い奴に……ドラドが3機、1機はコロニーデストロイヤーを装備しているのか!」

 

 敵はナイトギラーガに3機のドラドだった。

 3機のドラドの内1機はコロニー破壊用の大型ミサイル、コロニーデストロイヤーを装備している。

 

「隊長! ガンダムです!」

「思っていたよりも早いな……まぁ良い。作戦を開始する」

 

 ガンダムが出て来るのは予想よりも早いが作戦を開始しても問題はなかった。

 コロニーデストロイヤーを装備しているドラドがレーアツァイトにコロニーデストロイヤーを向ける。

 

「コロニーには撃たせない!」

 

 AGE-ZEROはDCドッズライフルをコロニーデストロイヤーに向けて放つ。

 ドラドはコロニーデストロイヤーを捨ててコロニーデストロイヤーにビームが直撃して破壊される。

 

「作戦通り、ガンダムは私がやる。お前達は適当に侵攻しろ」

 

 ナイトギラーガはギラーガビットを展開する。

 そして、ギラーガアックスを構えてAGE-ZEROに突撃する。

 

「来る!」

「ガンダム! 仕留めさせて貰う!

 

 ナイトギラーガの一撃をかわしたAGE-ZEROはDCドッズライフルを放つ。

 

「いくら威力があろうとも!」

 

 DCドッズライフルの攻撃をナイトギラーガは容易く回避する。

 DCドッズライフルは破壊力は桁違いではあるが、その反面高濃度のエネルギーを圧縮する為の時間が数秒かかる事もあり、連射が殆ど出来ない。

 その為、一撃一撃を正確に見切る事が出来るのであれば回避する事はさほど難しくはない。

 

「当たらない! こっちの攻撃が見切られている!」

 

 DCドッズライフルの攻撃をかわし、ナイトギラーガはギラーガビットを差し向ける。

 AGE-ZEROはギラーガビットをDCドッズライフルで撃ち落すも、連射の利かないDCドッズライフルでは数の多いギラーガビットを全て撃ち落すには手数が足りず、頭部のビームバルカンで対応する。

 

「後ろががら空きだな! ガンダム!」

 

 ギラーガビットの対応に手一杯なAGE-ZEROの背後からナイトギラーガがギラーガアックスを振るう。

 AGE-ZEROはシールドでギラーガアックスを受け止める。

 しかし、ギラーガアックスにシールドは少しづつ切り裂かれて行き、完全に切り裂かれる前にAGE-ZEROはシールドを手放してDCドッズライフルでシールドごとナイトギラーガを攻撃すうる。

 

「やったの?」

 

 シールドの破壊時の破片でナイトギラーガがどうなったのか分かり辛かったが、ナイトギラーガはギラーガアックスを失ったが機体そのものは無傷であった。

 ナイトギラーガはビームバルカンを放ち、AGE-ZEROは腕で防ぎつつDCドッズライフルで応戦する。

 だが、ナイトギラーガは攻撃を回避して接近する。

 AGE-ZEROはビームダガーを抜いて突き出すが、ナイトギラーガはAGE-ZEROの腕をつかんで止める。

 

「悪いがそれを受ける気は無いのでな!」

 

 ビームダガーの威力ではビームサーベルもビームシールドも防ぐ事は出来ない。

 しかし、ビームダガーのビーム刃を直接受け止めるではなく、AGE-ZEROの腕を直接掴む事でビームダガーの攻撃を止めた。

 

「まずは腕を貰うぞ!」

「そんな事は!」

 

 腕を掴んだままビームサーベルを出してAGE-ZEROの腕を破壊しようとするが、その前にAGE-ZEROはナイトギラーガの至近距離からDCドッズライフルを放つ。

 それを回避する為にナイトギラーガは掴んでいた腕を離して、距離を取って回避した。

 

「ちぃ! しぶとい!」

「当たれ!」

 

 AGE-ZEROはDCドッズライフルを可能な限りの連射をするが当たらず、ナイトギラーガはギラーガビットを使う。

 四方からの攻撃をビームバルカンを使ってAGE-ZEROはビットを撃ち落すが次第に追い詰められてくる。

 

「ここまで耐えるとは流石ガンダムと言ったところか……パイロットの腕も悪くはない。しかし、決定的に経験がないと見える!」

「こんな所で!」

 

 ギラーガビットに翻弄されるAGE-ZEROだが、ナイトギラーガの方に突撃する。

 

「血迷ったか!」

 

 ナイトギラーガはギラーガビットでAGE-ZEROの行く手を遮るが、AGE-ZEROは左腕で機体を最低限守るだけで、ビットの中に突っ込んだ。

 元々、厚い装甲を持つAGE-ZEROは装甲が限界に来る前にギラーガビットを抜ける。

 

「この距離なら!」

 

 ビットを抜けて距離を詰めてAGE-ZEROはDCドッズライフルをナイトギラーガに向ける。

 だが、背後からギラーガビットがAGE-ZEROを襲う。

 AGE-ZEROはとっさに振り返り、ビームバルカンを使いながら左腕で守る。

 その隙にナイトギラーガは両手にビームサーベルを展開しながら距離を詰めていた。

 

「貰ったぞ! ガンダム!」

「まだ!」

 

 ナイトギラーガは右手のビームサーベルを振り落すが、AGE-ZEROは腕を掴んで止める。

 

「悪あがきを!」

 

 片腕を掴まれながらも、左手のビームサーベルを振るい、AGE-ZEROは右手にはDCドッズライフルを持っている為、腕でナイトギラーガの腕を受け止めた。

 

「だが、しかし!」

 

 両腕を抑えられているが、ナイトギラーガはその体勢のまま、ビームバスターを放とうとする。

 

「僕は! こんなところで!」

 

 ナイトギラーガはビームバスターを放つ直前にAGE-ZEROはナイトギラーガを蹴り飛ばす。

 ビームバスターは蹴られつつも放たれてAGE-ZEROの左腕の肘から吹き飛ばす。

 それでも、AGE-ZEROはDCドッズライフルを連射してナイトギラーガは距離を取る。

 

「よもや、これほど粘るとはな……」

 

 常にこちらのペースで戦闘をしているのにもかかわらずようやく腕を一本破壊出来た事にジェレミアは素直に関心している。

 ペースは掴めずともこちらの攻撃に瞬時に対応できる反応速度は脅威としか言いようがない。

 

「ここで仕留めておきたいが功を焦る必要はないか……」

 

 この戦闘の目的はあくまでもヴァネッサがコロニーに侵入する時間を稼ぐ事だ。

 AGE-ZEROの腕を一本破壊した事でガンダムが一対一で絶対に勝てない相手ではないと言う事も確認できた。

 戦闘中にヴァネッサが内部に侵入したと言う事が別ルートから隠密で動いていたアビーから届いている。

 腕を破壊したと言ってもAGE-ZEROのDCドッズライフルやビームダガーは健在でドラドの方も防衛部隊を交戦している。

 時間をかけ過ぎれば増援部隊が到着するだろう。

 学生であっても数度の戦闘で以前のような素人とまではいかない。

 増援部隊が到着すればこちらの方が分が悪くなる。

 そこで撤退すればそれまでの間の経験をガンダムに積ませる事になるだろう。

 そうなるくらいなら、ここで撤退する事でナイトギラーガの損傷とガンダムの経験は最低限で抑えられる。

 

「となれば、この辺りで引くべきだろう」

 

 ジェレミアはそう判断して、機体を母艦の方に返す。

 

「各機、撤退だ」

「どう言う……撤退?」

 

 優勢に戦っていたのにもかかわらずナイトギラーガが撤退する事に疑問を覚えるがすぐに増援のアデル・ガーディアの部隊が到着する。

 

「無事か? ガンダム」

「はい……何とか」

「なら、帰投するぞ」

 

 リックは少し茫然としながらも機体をレーアツァイトへと向かわせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘を終えたリックは機体をハンガーに戻るが余り顔色が優れない。

 今回の戦闘では腕が破壊された。

 今までも楽な戦闘は一度もなかったが、心の底ではガンダムが負ける訳がないと思っていた。

 もしも、増援が来なければ自分がやられていたと思うとこれが本当の実戦であると思い知らされる。

 

「僕がもっとうまく戦えていたら……」

 

 機体から降りて左腕の無いAGE-ZEROを見て呟く。

 自分がもっと上手く操縦できていればガンダムを損傷させなかったのかも知れない。

 片腕の無いガンダムを見るとどうしてもそんな事を考えてしまう。

 ハンガーにAGE-ZEROが戻ったところで技術科の先輩がAGE-ZEROの整備を修理に入りこれ以上はリックは出来る事は無い為、格納庫を出て行く。

 その後もリックは特に用事がある訳ではないが、適当に歩いた。

 気が付くとコロニー内でも生徒の立ち入りを禁止している区画を歩いていた。

 

「何やってんだろうな……僕」

 

 立ち入り禁止区域である為、周囲には人気はない。

 被弾は2度の戦闘で何度もしているが、腕が破壊された程度でここまで落ち込むとはリック自身思ってなかった。

 そんな事を思っていると視界の端に人影が見えた気がした。

 

「こんなところに人?」

 

 当然の事ながら、ここは立ち入り禁止区域で生徒が入る事は禁止されており、緊急時である今もそれは変わらない。

 リックがいるのも何も考えずに歩いていたからで、こんなところに人がいる事は無いはずだ。

 人影は一瞬しか見えていなかったが、高等部の制服を着ていたような気がした。

 リックは不審に思いながらも人影が見えたと思う方を確認する。

 

「女の人?」

 

 そこには後ろ姿だが、確かに高等部の女子の制服を着ている人物が見えた。

 見た感じだとリックよりも年上に見える為、先輩なのだろう。

 

「あの……こんなところで何してるんですか?」

 

 リックは恐る恐る女子生徒に声をかける。

 声をかけた途端、リックは一瞬背筋が凍るような感覚を受けた。

 それは戦場で敵が向けて来る殺気である事にリックは気づかない。

 

「ここは立ち入り禁止区域の筈なんですけど……」

 

 声をかけられた女子生徒はゆっくりとリックの方を向く。

 リックは気づかないが、声をかけた女子生徒は戦闘中のドサクサに紛れてレーアツァイトに侵入していたヴァネッサであった。

 侵入したヴァネッサは内部で重要な話しをすると思われる場所に盗聴器を仕掛け、その後にコロニー内でも生徒の立ち入りが禁止されている立ち入り禁止区域を調べる途中でリックに声をかけられていた。

 声をかけられた時にはばれた時の為に仕込んでいた武器を使い始末しようとも考えたが、潜入して早々に騒ぎを起こすのはまずいと考えて始末するのを止めた。

 

「知ってるわ」

 

 ヴァネッサはリックに向かってそう言う。

 潜入する為に、学生と接触しても怪しまれないように最低限の知識はある。

 後はこの場を上手く切り抜けるだけだった。

 リックとヴァネッサ、新たな世代の2人は互いの素性を知る事なく出会ってしまった。

 

 

 

 

 

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