機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第13話

 

 アンバット攻略戦でヴェイガンの介入で撤退を余儀なくされたアブディエルやドレイク、バッカニア両海賊団は近くのコロニー「ルーアン」に入港している。

 以前にブライドに向かう際のルートにされたが、ルーアンは主にジャンク屋やMS鍛冶などのが多く集まるコロニーだ。

 コロニー国家戦争終結時に定められた「銀の聖杯条約」によりMSなどの兵器を製造することは禁止されていたが、ヴェイガンが表舞台に姿を現した「天使の落日」以来、連邦軍の設立や自衛などの目的から事実上はMSの保有が正当化されているが、条約自体がなくなった訳ではなく、彼らの行いは連邦から違法行為として扱われる可能性がある為、ルーアンは連邦軍との関わりが薄い。

 そのため、宇宙海賊や連邦に追われているパラダイスロストも堂々と入港出来る。

 

「まさか……こんな形でバッカニアが逝っちまうとはな……」

 

 ルーアンの宇宙港に船を入港させた後はクライドはヘンリーと、エドウィンとともにドレイク海賊団のアジトの一つに来ていた。

 

「ええ……父も貴方と決着を付ける日を楽しみにしていましたので残念です……」

 

 エドウィンはアンバットでギラドの荷電粒子砲により艦体と運命を共にした父を思い出し顔を伏せる。

 

「そうだな。それよりも、クライド……お前たちはこれからどうする?」

「さぁてね……次の目的地はまだ決めてないが、当分は力を蓄える時だな」

 

 アンバットでの戦いでヴェイガンと自分達との戦力の差を思い知らされた。

 ガフランやバクトと相手にするならガンダムZEROがあれば何とか出来た。

 だが、ブラッドの新型のギラドや母艦のファ・ボーゼ、そしてあれだけの数を相手にするには今の戦力では戦争にすらならない。

 今回の戦闘で自分達とヴェイガンとの戦力差がはっきり分かった事が今回の最大の収穫と言える。

 そのため戦力を補強する必要がある。

 

「そうか……それで報酬の件だが」

「いらないよ……この戦いは俺達の負けだ。俺達は負けて逃げた。その上報酬なんて貰えるかよ」

 

 元々、ヘンリーからの依頼はバッカニア海賊団との戦いの応援であってヴェイガンとの戦闘は含まれず、ヴェイガンと戦う事は自分達パラダイスロストの基本理念である為、報酬を貰う理由はない。

 ましてや、ヴェイガンを相手に勝利したのではなく敗走しなのならなおさらだった。

 今後の事を考えれば、少しでも資金や物資を蓄える必要もあったが、受け取らないのはクライドのプライドが許さなかったからだ。

 ヘンリーもその辺りの事は理解しているため、それ以上は報酬については何も言わない。

 

「俺の事よりもアンタ達はどうすんだ?喧嘩相手や親父を失ったんだ。やることは無いだろ?」

「俺達の戦力も大きく削がれたんだ。暫くは海賊業を休業してジャンク屋として真面目に働くとするさ」

 

 クライドはどっちもやることはそこまで違わない気もしたが、敢えて何も言わないでおいた。

 

「ついでにバッカニアの連中もボン共々うちで面倒見てやるよ」

「良いんですか?」

「構わねぇよ。問題はフランの説得だな。お前さんがうちにいると何かとアイツが五月蠅いだろうからな」

 

 この場にフランが居ないのはフランはエドウィンに強いライバル心をむき出しにしているため、まともな話し合いにならないとヘンリーが判断したのと、アンバット戦において、自慢のグレートパイレーツのパワーがセリアのバクト相手に全く歯が立たなかった上にそのバクトをクライドのガンダムZEROがあっさりと破壊して見せたことがショックでルーアンに入港しても部屋に籠ったままで呼ばずにいたからだ。

 

「その辺りはお任せします」

「そんじゃ、俺は母艦に戻る」

「ああ……今回の事は借りにしておくぞ」

「……そうしてくれ」

 

 本当なら借りにすることもクライドのプライドが許さなかったが、そのプライドで報酬を受け取らなかった以上、それすら受け取らないことはパラダイスロストに対しては一切の利益がなくる為、プライドよりも組織の利益を優先し、クライドはヘンリーに借りを作ることを了承した。

 クライドが部屋を出ると廊下に長身の男が壁にもたれかかっていた。

 

「アンタが噂のシドウか?」

 

 クライドはその男の只者ならぬ雰囲気ですぐに先の戦闘で交戦したカスタムシャルドールのパイロットのシドウだと判断出来た。

 

「そう言うお前はあの緑のMSのパイロットか?」

「クライド・アスノだ」

「シドウ・ムラサメだ。成程……アスノ家の者ならあれほどのMSを製造出来るのも得心が行く。君の実力も荒削りだが感は悪くない」

 

 シドウはクライドがアスノ家の出だと知ると一人で納得したように呟く。

 天使の落日から実質的に銀の聖杯条約が有名無実化としているため、MS鍛冶として非常に高名なアスノ家のMSの評判はその道に携わるものなら、知らない者の方が少ないくらいだ。

 そのアスノ家の人間ならば、ガンダムZEROの性能の高さも納得がいく。

 

「そりゃどうも……生憎と本業はメカニックなんだけどな……それよりもシドウ、俺達と来ないか? アンタの実力は先の戦闘で確認した。大したもんだよ。噂以上だ。俺ならアンタの腕を最大限に引き出せるMSも用意出来るし、金もそっちの言い値で出す事が出来る」

 

 先の戦いでは機体性能では圧倒的にガンダムZERO Gの方が上回っていたが、シドウはガンダムZEROの懐に飛び込んで一太刀を入れている。

 あの一撃はクライドがXラウンダーとしての能力がなければ見切ることも出来ず、ガンダムZERO Gの装甲で無ければ機体が両断されていた。

 シドウがXラウンダーとしての能力を持っていれば戦ったクライドは感じることは出来たが、それを感じなかった以上、あの戦いはシドウの実戦経験とシドウ自身の能力によるもので、それがクライド以上と言う事はパラダイスロストの戦力としては申し分ない。

 少なくとも、今のパラダイスロストにはいない人材である事は間違いない。

 そのため、シドウの言い値が多少法外な額を提示しようとも雇う価値は多いにある。

 

「魅力的な申し出だが、悪いが断らせて貰う」

「一応、理由を聞いても?」

「雇い主のバッカニアは戦死したが、息子が残っている。俺を雇って雇い主を死なせた以上、このまま別の雇い主に雇われるのは俺の矜持がそれを許さない」

「成程ね」

 

 それはクライドがヘンリーからの報酬を拒んだのと同じ理由からで、クライドにも理解が出来るため、幾ら好条件を提示しようともシドウは首を縦に振ることは無い。

 無理に戦わせたところで、役に立つ訳けも無く風の噂ではシドウはパイロットとしてだけではなく、生身での戦闘能力にも秀でていると聞いている。 

 ガンダムZEROに乗っている状況ならば、エース級の活躍が出来るクライドもガンダムZEROを降りてしまえば、Xラウンダーとは言えただの技術者でしかなく生身の戦闘ではパラダイスロストの中でも殆ど底辺だ。

 

「そう言う事なら仕方がないな」

「すまんな」

「その代り、アンタの矜持の気が済んだら、俺に雇われても良いってことだな?」

 

 それでもシドウの腕は惜しいためクライドはそう言う。

 今は駄目だとしてもいずれは雇われる可能性があれば御の字である。

 少なくともそれだけの価値はある。

 

「それも良かろう……」

「今日のところはそれで十分だよ」

 

 一先ず好感触の返事を受けてクライドはアブディエルへと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギラドの実戦テストは上々のようだな」

 

 アンバットを陥落させたヴェイガンはアンバットの改修作業を行っている。

 アンバットを襲撃したヴェイガンの大型母艦ファ・ボーゼでセリアは通信をしていた。

 その相手は初老の男で名をナーガ・ヘルダー。

 クライドの故郷、オーヴァンを襲撃したと目されている男である。

 

「はい。例のガンダム相手に互角以上の戦いをしました」

 

 セリアは先の戦闘データをすでにナーガに送っている。

 

「見させて貰った。流石と言うところか……ブラッドの活躍はイゼルカント様もさぞご期待なされているだろう」

「ブラッド共々、イゼルカント様のご期待に添えるように致します。それでですが、今後の事で……」

「言ってみろ」

「ブラッドはガンダムとの決着を付けるべく、ガンダムの母艦の捜索、追撃にすぐにでも向かうつもりです」

 

 ブラッドは先の戦いで満足した訳ではない。

 寧ろ、自分の能力について来る機体に自分を熱くする敵が居るため、すぐにでもクライドと再戦を望みファ・ボーゼに留めておくのはセリアでもギーラ・ゾイでも無理だ。

 下手をすればギラドで暴れかねない。

 そうなれば、止める手段もなくヴェイガンが受ける打撃が大きく、今後の計画に支障が出る可能性が出て来る。

 

「好敵手を求めるか……Xラウンダーらしいな。セリアはどう思う?」

「行かせるべきかと……ブラッドはガンダムのパイロットは自分と同レベルのXラウンダーだと言っています。それが事実となれば、イゼルカント様の計画に支障が出る恐れがあります。そうでなくとも、ガンダムはガフランでは相手になりません」

 

 セリアの言う事は尤もだ。

 すでに何機ものガフランがガンダムZEROに落とされ、Xラウンダー専用機のゼダスや重装甲のバクトですらガンダムZEROに敗北している。

 現状でガンダムZEROに対抗出来るのはブラッドとギラドしかいない。

 

「良い判断だ。セリア、それでこそお前をブラッドに付けた意味がある」

「ありがとうございます。それでは?」

「許可しよう。但し、条件がある」

「条件ですか……」

 

 セリアはナーガの言う条件に眉をひそめる。

 条件にもよるが、クライドとの戦いに制限がつくような条件であれば、ブラッドが黙ってはいない。

 そして、そんなブラッドを相手にしないといけないのは、モニターの向こうのナーガではなく、そのことをブラッドに伝える自分であるからだ。

 

「何……条件とはXラウンダーを一人少しの間で良い、面倒を見て貰いたい」

「Xラウンダーですか……」

 

 セリアに取ってはXラウンダーを送ってくれるのは戦力の補強に繋がりありがたい。

 だが、条件と言うからには一筋縄ではいかない相手である可能性も否定できない。

 

「デシル・ガレットと言うがXラウンダーとしての素質はそこそこなのだが……何分経験が不足している。セリアのところで実戦の経験を積ませて欲しいのだ」

 

 つまりは将来の有望な若いXラウンダーの実戦経験を積ませろと言う事だ。

 

「それを飲むのであればその件を許可する。その上バクトを失ったお前にロールアウトした試作機を与える」

 

 流石に上手過ぎる話しに思えるが、それだけブラッドの能力を高く評価しているともとれる。

 何より、断ればブラッドが何を仕出かすか分からない。

 となれば、セリアの答えは一つしかない。

 

「了解しました」

 

 了承するしかない。

 了承さえすれば、多少キナ臭いが戦力の補強にブラッドが堂々とクライドとの決着を付けることも出来る。

 

「お前ならそう言うと思っていた。私も再び地球圏へと向かう。それまでにアンバットの改修とガンダムを倒しておけよ」

「分かりました」

 

 セリアはそう言ってナーガとの通信を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アブディエルに戻ると格納庫ではガンダムZEROの補修作業が急ピッチで進められている。

 

「エミリオ、ゼロはどうだ?」

「幸いフレームには深刻なダメージは受けてないですけど、アーマーの方はしばらくは使えないですね……」

 

 前の戦闘ではあくまでもグラディエーターアーマーの最終調整も兼ねての実戦テストだったが、予想外の乱入でアーマー自体に深刻なダメージを負っている。

 

「やっぱりか……まぁ、装甲の厚いグラディエーターを装備していたからこそ、その程度で済んだと見るべきか……」

 

 これがもしもノーマルアーマーやブリーズアーマーを装備していた場合、先の戦闘で負うダメージはこれ以上だったと思っていた方が幾分かは楽観的に思える。

 逆を言えばそれだけブラッドの新型機のギラドの攻撃力が高いとも言える。

 

「そのアーマーの負荷もあるんですけどね」

 

 グラディエーターアーマーは装甲が厚い分、機体のフレームにかかる負荷も大きくなり、ブリーズアーマー同様長時間の使用は出来ないと言う事が先の戦闘で確認されている。

 

「だな……それにUEの新型機……アイツを相手にするにはノーマルじゃ荷が重いし、ブリーズでなら機動力で圧倒出来るが決定打に欠けるか……」

 

 ブリーズアーマーの機動力ならギラドを機動力で翻弄は出来る。 

 だが、グラディエーターアーマーを装備したガンダムZEROの装甲を破壊出来るギラドの攻撃力は装甲の薄いブリーズアーマーなら一撃でも致命傷になりかねない。

 

「早いところフレームの強化案をマッドーナ工房に発注した方が良いですよ」

 

 すでにブリーズアーマー装備時のデータを参考にフレームの強化案はほぼ完成し、後はそれに今回の戦闘で得たデータを合わせて完成させるだけとなっている。

 

「けどな……そいつはノーマル以外のアーマーの使用時間の延長で機体性能を向上させる訳でも無いから、根本的な解決にはならないんだよな……せめてゼロに新しい動力炉でも積んで出力を向上させたいな……そうすれば、機体性能の基礎が向上してアイツを戦う事も出来るんだけどな……」

「ゼロに搭載されている動力はジェノアスの何倍あると思ってんですか……幾ら師匠でもバンバンと新型の動力炉を設計出来ないですよ」

 

 ガンダムZEROの動力炉はクライドが設計した物でジェノアスの何倍もの出力を出せる。

 ガンダムZEROに搭載されいる動力炉は現在のMSに搭載されている動力炉では最高クラスの動力炉を積んでいる。

 それがガンダムZEROの性能の秘訣だが、それ故にそれ以上の動力炉を積むとなると更に高い技術力が必要となって来る。

 アスノ家の技術の大半をオーヴァン襲撃時までに学んでいるクライド以上の技術があるとすれば、その時に学んでいないアスノ家の技術を使う必要がありそれは叶わないことはクライドが一番知っている。

 後は少しつづデータを集めて改良して行く他ない。

 

「まぁな……無いもねだりをしてもしょうがないな。機体性能の差はパイロットの実力で埋めるしかないな」

 

 少なくともシドウは性能の劣るカスタムシャルドールで機体性能で圧倒しているクライドのガンダムZEROに一太刀を入れた以上、それをクライドに出来ない道理はない。

 クライドのパイロットとしての才能は常人以上ではあるが、エース級のパイロットと比べればXラウンダーの能力意外では特出した点がないのが現状だ。

 だが、可能性がゼロと言う訳でもない。

 

「まぁ、そんな訳だ。後は任せる」

 

 クライドはZEROの補修をエミリオ達に任せて、ブリッジに上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、報酬を受け取らなかったの?」

 

 ブリッジに上がりクライドはヘンリー達と話したことをエリーゼ達に説明すると、エリーゼが冷ややかにクライドを見てそう言う。

 

「……そうだよ」

 

 クライドはバツが悪そうにエリーゼから目を反らす。

 

「……ハァ」

 

 エリーゼとしてもクライドが何故、報酬を受け取らなかったのかは理解出来る。

 クライドは幼少のころからアスノ家の跡取りとして英才教育を受けているため、頭は悪いどころか良い方だが、たまにつまらない意地を張ったり勢いで行動することがある。

 今回も、クライドのつまらない意地で報酬を受け取らなかったのだと予想は出来る。

 だが、それと報酬を受け取らないこととは話が別だった。

 クレマン家に正式に援助が受けられることが決まったとは言えその資金も無限ではない。

 クレマン家の資産が底をつくかも知れないし、資産を管理しているリゼットがクライド達を見限って援助を打ち切ることも考えられる。

 只でさえ、ガンダムZEROにGレックス、デスドール、ジェノワーズと言った高性能かつ、維持費の高く一般的な量産機の部品や市場に流通している部品との互換性の少ないMSを所有しているためMSの保守にかかる費用は馬鹿にならない。

 それはアブディエルも同様である。

 連邦軍の新造艦のデータを盗み、クライドが手を加えたこの船も他の船の部品を殆ど流用出来ないため、マッドーナ工房に部品を特注している。

 武装面で充実しているが故に、それを維持する資金が尽きればMSの補修や整備に支障が出るのも遠くない。

 だからこそ、今回の依頼はドレイク海賊団に借りを作るのと同時に成功報酬も目当てだった。

 

「まぁ、済んだことを言っても仕方がないわね……それよりも、今後の事を考えましょ」

 

 すでに断ってしまった以上、今から報酬を貰いに行くのはクライドのプライドが絶対に許さない。

 いつまでも終わったことをグダグダと言っているよりも今後の事をどうするかが問題だ。

 ヴェイガンとの戦力差がはっきりした今、更なる戦力の増量が必要となって来る。

 時間が無限にある訳ではなく、時間を無駄にしている暇はない。

 

「そのこと何だが、アーヴィンに行こうと思うんだが……」

「アーヴィン……」

 

 クライドがそう言うと、エリーゼ以外はアーヴィンがどういうコロニーだったかを思い出そうとするが、エリーゼだけはすぐに分かるらしく顔を曇らせる。

 エリーゼにとっては考える必要もない場所で、そこはクライドとエリーゼにとってはとても因縁深いコロニーでもある。

 

「そう言えば……その方面にはまだ行ったことは無かったね」

 

 アフルレッドがアーヴィンの大体の位置を思い出しアブディエルがそっちの方向に航海したことが無かったことを思い出した。

 

「そっちには面倒しかないからな」

「そうよ。そんなところにわざわざ行く必要はないわ。私は大反対よ」

 

 エリーゼがそう言うのを流石にアフルレッドも不信に思う。

 今までにも何度も次の目的地を決めることがあったが、その際にエリーゼはリスクを考慮して反対することはあったが、ここまで明確に拒絶したことは一度も無かった。

 

「エリーゼ、そこまでして行きたくない理由があるのかい?」

「あるのよ。クライドだってあるでしょ?」

 

 エリーゼがクライドに話を振るとクライドは肩をすくめる。

 

「誰かさんのせいでね。だからと言ってその面倒事からいつまでも逃げることもでもないだろ? すでにどんだけ逃げた事か……」

 

 エリーゼがアーヴィン方面に行きたくない理由はクライドも無関係ではないため分かっている。

 だけど、それを差し引いてもクライドはアーヴィンに行くべきだと考えている。

 自分とエリーゼの過去と向き合う為にも……

 

「それに、俺達がUEと戦う上で必要な物がアーヴィンにはある。そのためにも俺とエリーゼはあの出来事から逃げる訳にはいかない。そうだろ? エリーゼ……そろそろ、お前も向き合っても良い頃なんじゃないのか?」

「それは……そうだけど……」

 

 エリーゼはそう言われて黙りこむ。

 確かにクライドの言う通り、エリーゼはそれから数年も逃げていることは自分でも理解出来ている。

 だが、それと今、無理に向き合う必要がないことも分かっている。

 クライドが必要としていることはそれと向き合った先にあるものである事はエリーゼにも分かっている。

 だからこそ、エリーゼは迷っている。

 それと向き合うか否かを……

 

「どの道、俺も無関係とは言えないんだ。お前が向き合うと決めたら最後まで付き合うつもりだ」

「……ハァ……確かに、そろそろ潮時ね……これ以上逃げ回って先延ばしにても、更に面倒なことになりかねないし……ここいらで決着を付けてすっきりするのも悪くないわね」

 

 それがエリーゼの決めた答えだった。

 数年前のあの日から、今日まで逃げ続けて来たがそれに終止符を打つと言う事に決めた。

 それはあの日に決めたことと同じくらい、エリーゼの人生の中では一大決心でもある。

 

「私も腹を括るから、クライドもしっかりと決めてよね」

「何を今更……俺はお前に出会ってからとっくに腹は括ってるさ」

「エリーゼも異論がないなら、次の目的地はアーヴィンで良いね」

「ええ、準備が出来次第、私達はコロニー『アーヴィン』に向かうわ」

 

 クライドとエリーゼは過去の出来ごとに終止符を打つため次の目的地をコロニー『アーヴィン』に向けた。

 

 

 

 

 

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