機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第123話

 

 

 

 ガンダムAGE-Ⅵ 2号機によりネオ・ヴェイガンを撃退した次の日、襲撃からちょうど1週間が経った朝、リックの病室にエイミーはリックのお見舞いに来ていた。

 リックの体調は回復しており、今日にも退院できる予定だ。

 

「と言う事があったのよ」

 

 エイミーは昨日の出来事をリックに話す。

 内容はエイミーによって脚色が加えられているが、リックにとっては大した問題ではない。

 問題は別のところにあった。

 

「エイミーがガンダムで戦ったの? どうしてそんな事……危険だって分かるでしょ?」

 

 エイミーの脚色よりもエイミーがガンダムで戦った事の方がリックには重要な事だった。

 幾らガンダムとはいえ絶対に勝てる訳ではないと言う事は数日前に身を持って体験している。

 

「それなのに!」

「分かってるわよ。そのくらい」

「だったら!」

「リックは言ったよね。私達を守るって……じゃあリックは誰が守るのよ?」

 

 リックはかつて、自分がガンダムでみんなを守ると言った。

 その言葉通り、リックはガンダムでコロニーを守って来た。

 だが、リックが倒れて初めて、自分達はリックに頼り切りである事に気が付き、そんなリックを誰が守るのかと思った。

 そして、見計らったかのように2号機が完成していた。

 

「僕は……」

「私はさ、リックみたいにみんなを守る事は出来ないけど、リック位は守れると思うのよ」

「エイミー……」

「そういう事だから、私がリックを守るから。これはもう決定事項よ」

 

 有無を言わせないエイミーにリックはただ頷くしかない。

 こうなったエイミーは簡単に折れる事は無く、リックが折れるしかない事はすでに学習している。

 エイミーがガンダムで戦う事は納得できないが、エイミーを自分で守れば良いだけの事だと自分を無理やり納得させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 7日目から9日目にかけてネオ・ヴェイガンに動きは無かった為、リックは精密検査を受けて問題がない事が確認されてようやく退院の許可が出た。

 リックが退院する頃にはAGE-ZEROの修理を完璧に終えて格納庫に戻されていた。

 

「ガンダムが3機も並ぶと壮観だな」

 

 ジンは3機のガンダムを見上げてそういう。

 格納庫にはリックのAGE-ZEROとエイミーの2号機の他に完成した3機目のガンダム、ガンダムAGE-Ⅵ 5号機が並んでいる。

 5号機は白兵戦に特化したガンダムとなている。

 紫と基調として至るところに近接戦闘用の装備を持つ事が特徴だ。

 両腕にはAGE-1 グランサから流用し小型化されているシールドライフルを装備し、シールドライフルのビームサーベルが展開できる銃口の反対側に高周波ブレードが追加されている。

 腰にはレイザーブレード、脚部に左右に4基つづ計8基のCファンネル、バックパックにはX字になるように長剣、レベルタブレード改が装備されている。

 腰の裏にはヴェイガン系のMSに良く見られた多関節機構の尾、ゼクステイルが装備されゼクステイルの先端には小型の推進装置と突起のついた鉄球が付いている。

 そして、火力を補う為に胸部にはビームバスターが搭載されている。

 運動性能を高める為に連邦系のMSよりも柔軟なフレームを持つヴェイガン系のMSのフレームが採用され、光波推進システムなどヴェイガン系の技術も多く取り入れられている事も特徴

 

となっている。

 

「これのパイロットは決まってないんですよね」

「そうね。今のところは不在になってるわ」

 

 5号機の最終調整を終えたキャロルがそういう。

 2号機の時同様にパイロットの志願を募っているがハーマンが志願したくらいで他は殆どいない。

 

「ジンが乗れば? そんで私とリックとガンダムチームを作ってさ」

「冗談だろ? 俺はメカニックでパイロットは出来ないって」

「そうだね。ジンはエイミーよりもMSを動かすのは下手くそだよ」

「ほんとの事だけど、もう少しオブラートに包めよ」

 

 ジンはリックに抗議するが、内容自体は否定のしようがない。

 ジンもリックの家でMSバトルシュミレーターで遊んでいるが、リック程の腕前にはいたらない。

 子供の事はMSのパイロットに憧れるも、天賦の才を持っていたリックを前に凡人以下の才能しか持っていない自分ではパイロットになる事は無理だろうとすでに悟っている。

 精々、作業用の小型機を扱う程度の腕しかないジンが5号機に乗ったところで宝の持ち腐れでしかない。

 

「それにこの機体がパイロットに求めているのは高い反射速度と空間認識能力。特に反射速度は必須なのよ」

 

 5号機は白兵戦に特化している為、常に敵との距離は近くで戦闘をしなければならない。

 その為、パイロットは敵の攻撃に瞬時に対応できる反応速度を要求される。

 その上でCファンネルを扱う為に高い空間認識能力も必要となって来る。

 5号機のパイロットがXラウンダーである事がベストだが、非Xラウンダーがパイロットになる事を想定して、5号機のCファンネルはXラウンダー能力以外でもオートとマニュアルでの操

 

作が可能となっている。

 オートモードでの操作はかつてスラッシュのギラーガ改がギラーガビットを操作していたようにコンピュータで状況に合わせた自動操作で動かすモードでマニュアルはパイロットがXラ

 

ウンダー能力を使わずにCファンネルを操作するモードだ。

 マニュアルモードでの操作にはXラウンダー能力が必要ない分、パイロットは目測でCファンネルの位置を把握しなければならない。

 機体の方である程度の補助はあるが、どうしてもパイロット自身に負担をかけてしまう。

 

「あの、先生。僕のガンダムの腕なんですけど……」

 

 リックは修理を終えたAGE-ZEROの左腕が前と少し違うと言う事に気が付く。

 以前は左腕には何もついていなかったが、今は装甲のような物が追加されている。

 

「アレは新装備のビームシールドの発生装置よ。アレを取り付ける為に少し時間がかかったの」

 

 キャロルは端末に詳細なデータを映し出す。

 本来ならば1日あれば修理出来たAGE-ZEROの左腕を直すに時間がかかったのはAGEシステムが新たな装備を設計した為で、それをAGEビルダーで製造しAGE-ZEROに組み込んでいた。

 

「今までのアデル用のシールドではXラウンダー機との戦闘では数発の攻撃を防ぐのが限度だったわ。でもビームシールドを使えば理論上はダイダルバズーカの攻撃でも防げる。それにビ

 

ームシールドの形と出力を調整すれば全方位攻撃に対しても対応できる。けど、気を付けてね。シールドはビームの範囲を大きく取ればその分、出力が低下するから」

 

 ビームシールドは従来のシールドサイズに展開からヴェイガンの技術であるビームその物の形状を変化させる技術を応用した事で左腕だけではなく、機体を覆うように全方位に対する

 

防御にも使える。

 その反面、全方位にビームシールドを展開すれば防御力が落ちると言う欠点も持っている。

 しかし、ビームシールドの範囲を限界ギリギリまで絞れば理論上はあのラ・グラミスのディグマゼノン砲の直撃ですら完全に耐える事が出来る程の防御力で展開する事が可能になって

 

いる。

 

「だから、ビームシールドがあるからと言っても気を抜いちゃ駄目よ」

「分かりました」

「大丈夫ですよ! 私がリックを守りますから!」

 

 エイミーは自信満々にそういう。

 リックは嬉しい反面、身内でもあるキャロルに対して堂々と異性に守って貰うと言う宣言をされる事に恥ずかしさも感じている。

 そんな、リックの心情を察してかキャロルも苦笑いしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その翌日、エイミーは少しでも機体の操縦に慣れる為に訓練をしているが、リックは倒れたと言う事もあり事態が動くまでは自由にしているように言われている。

 ジンもガンダムの整備士に志願して、今はキャロルの元で整備の勉強をしている為、今は一人だった。

 思えばいつもジンかエイミーといる事が多く、大抵は二人について行く事の多かった事もあり、いざ一人で自由にしても良いと言われてもすぐにこれと言ってやりたい事は見つからな

 

い。

 自由と言っても状況が状況だけに出来る事は限られているし、今一番やりたい事はガンダムの操縦の訓練だがそれはアセムから禁止されている。

 特にやりたい事もやる事もないが、寮の部屋で一人でじっとしていてもいろいろと考えてしまう為、リックは町を歩いている。

 襲撃の傷跡は未だに残されているが、1週間も経てば今の状況に慣れたのはかつてのと言う程ではないが、外に敵がいるとは思えない落ち着きを取り戻している。

 

「リック、奇遇ね」

「ネッサ先輩」

 

 町を歩いているリックにヴァネッサが声をかける。

 ヴァネッサは奇遇と言っているが、実際はリックを探していた。

 だが、それをリックに悟らせないようにあくまでも偶然を装っている。

 

「今、暇?」

「まぁ……暇ですけど」

「じゃあ少し付き合って貰うわ」

 

 リックも特に用事がある訳でも無い為、ヴァネッサについて行く。

 ヴァネッサに連れられて来たのは学生が経営している喫茶店だ。

 平和な頃はジンとエイミーと良く三人で来た事があるが、前に来てから1か月も経っていないと言うのに前に来た事が遠い昔のように感じる。

 席に案内されて適当に注文して少し落ち着く。

 

「驚いたわ。貴方がガンダムのパイロットだったなんてね」

「そうですか?」

「ええ、普段のリックのイメージとは違うもの」

 

 ヴァネッサは差しさわりの無い話しをリックに振る。

 リックがガンダムのパイロットである事はコロニー内では特に秘匿されている訳ではない。

 リックとガンダムは切り札である為、ある程度は特別扱いをしても不満が出ないように隠さずに生徒なら誰でも知る事が出来る事もありヴァネッサがリックがガンダムのパイロットで

 

ある事を知っていても何も不思議な事はない。

 寧ろ、一般の生徒がその事を知っていると言う事を始めて間近かに感じて少し恥ずかしい。

 

「そうですかね?」

「そうね。そんな事よりも3機目のガンダムが出来たと言う話しは本当なの?」

「ええ、まぁ……パイロットはまだ決まってないですけど」

 

 すでに3機目のガンダムが完成し、パイロットを募集していると言う情報はヴァネッサの方でも掴んでいる。

 リックに確認した事で情報が正しい物であると確信できる。

 

「どんなガンダムなの?」

「どんなですか……えっと、接近戦を重視しているんですけど……」

 

 リックは昨日見た、5号機の特徴をヴァネッサに説明しようとするが、説明に困る。

 リックはヴァネッサの事を普通科の先輩としか思っていない為、パイロットや技術者の専門的な知識はさほど持っていないと思っている。

 専門知識のない人間に教えるのは非常に難しい。

 

「良く分からないわ。ねぇリック、その新型ガンダムを私にも見せて貰えないかしら?」

「新型機をですか?」

「ええ、説明し辛いみたいだし、直接見た方が私でも分かると思うの」

 

 それがヴァネッサがリックに声をかけた最大の理由だ。

 すでにヴァネッサを回収する作戦は失敗に終わり、同じ作戦は通用しないだろう。

 それを見越して失敗した場合はヴァネッサが動くまで不要な行動はとらないように指示を出している為、何もしなければジェレミア達も動かない。

 ここ数日の情報収集で出来るだけ時間を稼いで脱出すると言う情報は掴んでいる為、ヴァネッサとしても出来るだけ早く母艦に帰投する必要がある。

 その為には母艦まで戻る足が必要だ。

 小型艇を奪ったところで追撃されれば流石のヴァネッサも逃げ切れない。

 その身一つでコロニーを脱出しても母艦まで辿りつけるかは分からない。

 

「駄目かしら?」

「そうですね……大丈夫だと思いますよ」

 

 リック自身もガンダムのところに行きたいとは思っていた。

 だが、動かす事を禁止されている手前、格納庫に用もないのに近づくのもジンやキャロルの邪魔になると思い気が引けた。

 しかし、先輩であるヴァネッサが新しいガンダムを見てみたいと自分に頼んでいると言う大義名分があれば気にする事は無い。

 本当であれば部外者を格納庫に連れて来る事は警備の観点から褒められた事ではないが、リックはヴァネッサと数回会っただけで、ヴァネッサの事を分かった気でいる。

 ヴァネッサは悪い人ではないから、格納庫に連れて言っても大丈夫だろうと。

 その後、会計を済ませてリックはヴァネッサと共にガンダムが置かれている格納庫へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 格納庫へと向かうまでに少しまずいとは思ったが、ヴァネッサに大丈夫と言った手前、今更ダメだとは言えずに結局リックはヴァネッサを格納庫まで案内して来た。

 本来ならば生徒とはいえ部外者の立ち入りは出来ないが、リックと一緒と言う事もありヴァネッサも問題なく格納庫に来る事が出来ている。

 格納庫にはリックのAGE-ZEROとその隣に5号機が置かれている。

 

(左腕が前とは違うわね。新装備かしら? それにあれが3機目……)

 

 ヴァネッサはリックに気づかれないように2機のガンダムを見る。

 AGE-ZEROの左腕は前とは少し形状が違う為、新装備を装備していると予測している。

 その横に並んでいるのが新しく完成した3機目のガンダムであるとすぐに分かる。

 

「リック君、貴方は体を休めるように言われていたんじゃないの?」

「済みません。でも、先輩が新しいガンダムに興味があるみたいで」

 

 5号機の調整を終えていたキャロルにリックは言い訳をする。

 それによって注意の矛先がヴァネッサに向かう。

 ヴァネッサは少し焦るが顔に出す事は無い。

 見たところキャロルは学生ではない。

 学生とは違い教師ならば自分が生徒でない事が気づかれるかも知れないからだ。

 

「貴女……どこかで会った事はない?」

「さぁ……私は普通科ですから先生の授業を受けた事は無いはずです」

「そう……」

 

 とっさに適当な事を言ったが、キャロルを誤魔化せたようだった。

 教師でガンダムの整備を担当していると言うのであれば技術系の授業を担当している可能性が高い。

 ヴァネッサは普通科の生徒と言う事になっている為、キャロルの授業を受けていなくても当たり前だ。

 キャロルもヴァネッサには見覚えがあるが、どこかですれ違ったのだと思いそれ以上は追及しないが、ヴァネッサの顔に見覚えがあるのも当然の事だ。

 ヴァネッサはエリスに瓜二つの容姿をしている。

 眼鏡をかけてカラーコンタクトをしているが顔の作りなどは変えてはいない為、エリスの事を知っているキャロルにはその顔に見覚えがあるのは当然の事であった。

 もしも、軽い変装をしていなければヴァネッサは髪の短いエリスと同じなので、キャロルも流石に不審に思っていたところだった。

 

「ネッサ先輩です。えっと……そう言えばファミリーネームは聞いてませんでしたね」

「そんな事はどうでも良いわ。このガンダムは動きますか?」

 

 余り質問をされるとどこでボロが出るか分からない為、リックの質問から無理やり話しを変える。

 

「そうね。最終調整は終わって後はパイロットを見つけるだけよ」

「それは好都合ね」

「先輩?」

 

 そこまで聞ければ良かった。

 ヴァネッサはリックをキャロルの方に付き飛ばした。

 完全に不意を突かれたリックとキャロルは状況を把握する前にぶつかって倒れる。

 ヴァネッサはリックを突き飛ばしてすぐに5号機の方に走る。

 そして、格納庫の整備兵が異常事態に気が付いた頃にはヴァネッサは5号機に乗り込んでいた。

 

「操縦系統は違うけど……何とか出来そうね」

 

 5号機も2号機やAGE-ZERO同様に連邦軍の最新式のコックピットを採用している。

 ヴァネッサのグルドリンカスタムは従来のヴェイガンのMSと同じコックピットである為、操縦系統が違う。

 それでもMS開発に置いて先を進んでいたヴェイガン系のMSの技術を取り入れている為、グルドリンカスタムと操縦系統が大きく違うと言う事はないので大体の操縦は分かる。

 

「さて……ここから先は出たとこ勝負ね」

 

 すぐに5号機が奪われたと言う事は管制室にも知れ渡る事になるだろう。

 そうなる前に離脱したい。

 その為、まずは機体の動かし方を正確に把握する必要はある。

 ヴァネッサは5号機をゆっくりと前進させて格納庫から出る。

 

「動かし方は大体分かった。武装は……多いわね。どれも近接戦闘用の装備ばかり」

 

 動きながら武装の確認をするが、喫茶店でリックが言っていた通りに5号機は白兵戦に特化している。

 武装の方も複雑な装備を装備している事もなく、使い方も十分に把握出来た。

 

「ネッサ先輩!」

「来たわね」

 

 動かし方と装備を確認した頃にはリックもAGE-ZEROに乗り込んでヴァネッサの前に立ちはだかる。

 

「どうしてこんな事をしてるんですか!」

「それを聞いてどうするの?」

「それは……」

 

 リックは答えに詰まる。

 ヴァネッサがこのような行為に出た理由を聞いたところでリックに何が出来る訳ではない。

 その隙に5号機はシールドライフルからビームサーベルを展開してAGE-ZEROに向かう。

 

「聞いても知ってもどうにもならないの。貴方に出来る事はここで私に倒される事だけよ!」

 

 5号機はビームサーベルを振るい、AGE-ZEROはビームシールドで受け止める。

 

「ビームシールド!」

 

 新装備のビームソードに驚くも5号機は機体を反転させて、ゼクステイルの鉄球でビームシールドごとAGE-ZEROを弾き飛ばす。

 AGE-ZEROはビームシールドで守っている為、損傷をする事は無かったが仰向けに倒れる。

 

「先輩!」

「お前がガンダムに乗っている限り、お前は私の敵よ」

 

 倒れているAGE-ZEROにビームサーベルで止めを刺そうとするが、事態を聞きつけて出撃命令の出たアデル・ガーディアの横やりが入る。

 

「邪魔をしないで」

 

 5号機はシールドで攻撃を防いでソードライフルでアデル・ガーディアを撃ち抜く。

 

「先輩!」

 

 AGE-ZEROはビームバルカンで5号機を牽制して立ち上がるとビームダガーを抜いた。

 DCドッズライフルは威力が強すぎる為、コロニー内では使えない。

 その為、リックは近接戦闘に特化している5号機と白兵戦をしなければならない。

 

「僕は貴女を止める!」

「出来る訳はないわ。私は止まらない」

 

 両腕にビームサーベルを展開して、5号機はAGE-ZEROに切りかかる。

 AGE-ZEROのビームダガーではリーチが違う為、ビームシールドとビームダガーで防戦一方になってしまう。

 

「どうしたの? 私を止めるのではないの? その程度で私を止められるとでも?」

「くっ! だからって!」

 

 5号機の攻撃の隙をついてAGE-ZEROはビームダガーを突き出すも、5号機は空中に飛んで逃げる。

 そして、空中からシールドライフルでAGE-ZEROを狙いビームシールドで防ぐ。

 

「僕は!」

 

 AGE-ZEROはスラスターをフル出力で使い空中の5号機に接近するも、空中で自由に動ける5号機に攻撃が当たる事もなく回避されるだけではなく蹴り飛ばされて地面に叩きつけられる。

 

「うっ!」

「諦めなさい」

「リック!」

 

 5号機がビームバスターで止めを刺そうと言う時に訓練を切り上げて来たエイミーが戻る。

 そして、5号機にドッズライフルを放つ。

 5号機はひらりと余裕で回避する。

 

「状況は聞いてるわ! あいつを倒して機体を奪い返せばいいのよね!」

「エイミー! 待って! そのガンダムには!」

 

 エイミーはリックの話しを聞く事なく、ドッズライフルを連射して5号機を攻撃する。

 

「欲張れば元もの子も無くすわね」

 

 元々の目的は自身の離脱である為、戦闘の継続は無意味でしかない。

 ここでガンダムを倒すと言う事に固執してしまえば当初の目的も達成できない。

 ヴァネッサはガンダムを倒す事を諦めてコロニーから離脱する為にリックとエイミーに背を向けて飛び去る。

 

「逃げんな!」

 

 重力下での飛行能力を持つ2号機も飛び去る5号機を追いかける。

 ドッズライフルで攻撃するも一向に5号機に当たる気配はない。

 

「当たんない! だったら!」

 

 遠距離攻撃では埒が明かないと判断したエイミーはドッズライフルを腰につけるとビームサーベルを抜いた。

 そして、2号機の最大速度まで加速する。

 高機動戦闘を重視している2号機の最大速度は5号機はおろか、AGE-ZEROよりも速い為、どんどん5号機との距離を詰めて行く。

 

「速いわね」

「貰った!」

 

 5号機に追いつきざまにビームサーベルで攻撃するが、5号機は回避する。

 回避されてすぐに急制動をかけて方向転換を行い再び5号機にビームサーベルを振るう。

 5号機はビームサーベルで受け止める。

 

「思い切りは良いけれど素人ね。このパワーはこちらの方が上よ」

 

 5号機は簡単に2号機を弾き飛ばす。

 5号機は白兵戦を重視している為、機体のパワーは2号機よりも高いので正面からぶつかり合えば5号機が競り勝つのも当然だ。

 

「なんの!」

 

 体勢を立て直した2号機は再び、5号機に向かう。

 今度はビームサーベルの攻撃をフェイントに脚部のビームカッターで蹴りを入れる。

 

「フェイントが見え見えよ」

 

 フェイントを入れた攻撃もヴァネッサに完全に見切られていた為、5号機は機体を引いて回避する。

 そして、頭部のビームバルカンで2号機を抑えながら後退して行く。

 コロニーの淵まで来ると隔壁が自動的に開閉する。

 

「破壊する手間は省けたけど誘いね」

 

 ヴァネッサは隔壁を破壊して外に出るつもりだったが、管制室は破壊される前に隔壁を開閉させた。

 これは5号機の火力でも十分に隔壁を破壊出来る為、大した時間稼ぎにならないのであれば隔壁を開けて5号機を外に出すようにのアセムの指示だ。

 ヴァネッサも当然の事ながら、これが誘われていると言う事は理解しているが、外に出れるのであれば罠を突破すれば良いだけの事で躊躇う事もなく誘いに乗って開閉する隔壁から外

 

に出る。

 コロニーの外に出るとアデル・ガーディアが待ち構えていた。

 5号機がコロニーから出て来たところを見計らいアデル・ガーディアは5号機に一斉射撃を行う。

 すでに奪還する気もなく、完全に5号機を撃墜する気で攻撃している。

 5号機に敵が乗っていると言う事はこちら側の情報を持ち出している可能性が高い為、無理に奪還をしようとして逃げられて情報が漏洩するくらいなら5号機を1機失うだけで済めばいい

 

との判断だ。

 

「悪くはないけど……」

 

 アデル・ガーディアの一斉射撃を回避して5号機のシールドライフルは180度回転して、高周波ブレードが前に出る。

 5号機は高周波ブレードをアデル・ガーディアに突き出してアデル・ガーディアはシールドを構えるが高周波ブレードはシールドをもろともせずに貫通してアデル・ガーディアの頭部に

 

突き刺さり、そのまま高周波ブレードを動かしてアデル・ガーディアを破壊する。

 

「こんな機体と腕で私は倒せないわ」

 

 5号機は尾の鉄球を射出する。

 尾の鉄球部分はワイヤーにて多関節機構の部分と繋がり小型の推進装置で加速、方向転換を行いアデル・ガーディアをシールドごと粉砕する。

 そして、シールドライフルを再び回転させるとレイザーブレードを抜いてアデル・ガーディアの腕を切り裂き止めを刺そうとする。

 だが、別ルートからコロニーの外に出たAGE-ZEROのDCドッズライフルの妨害を受ける。

 

「リック」

「先輩!」

 

 AGE-ZEROは5号機に当たらないように狙いをつけてDCドッズライフルを撃つ。

 

「当てる気のない攻撃で私を止められると思っているの」

 

 DCドッズライフルの攻撃をかわしながら、接近して5号機はレイザーブレードを振るう。

 AGE-ZEROはビームシールドで受け止める。

 

「私を止めたければ殺す気で来なさい」

「どうしてそんな事を言うんですか!」

「私は死ぬまで止まる気は無いからよ」

 

 AGE-ZEROを蹴り飛ばしてシールドライフルを放つ。

 

「私は母様の理想を完成させなければならない。その為に生きて来た!」

「先輩のお母さんの……」

「そうよ。私の母様は地球圏や火星圏の事を誰よりも考えて戦って来た。でも、それを自分達の一族の地球圏での権力拡大と繁栄の為だけにアスノ家に殺された!」

「え?」

 

 5号機はAGE-ZEROに接近して何度もビームサーベルを振り落し、AGE-ZEROはビームシールドで受け止める。

 5号機の攻撃は駆け引きも何もなく力任せの攻撃だが今までとは違い勢いもあり、リック自身も動揺している。

 

「私の母、ヴァニス・イゼルカントは30年前にガンダムのパイロット、キオ・アスノに殺された!」

「お父さんに……」

 

 今度はヴァネッサの方が動揺して動きを止める。

 決定的な隙ではあるが、リックの方も動揺している為、その隙が突かれる事は無かった。

 ヴァネッサもリックがガンダムのパイロットである事は知っていたが、一般に流れている情報はすでに知っているからと見ていなかったから知らなかった。

 リックもアスノ家の人間であると言う事をだ。

 だが、AGEシステムを搭載したガンダムのパイロットであると言う事はアスノ家の人間であると考えるのは当然ではあったが、その辺りは大して重要だとは思ってはいなかった。

 そして、リックはキオの息子である事を知り、動揺するが次第に怒りへと変わって行く。

 目の前に母親を殺した相手の息子がいるのだ当然の事だ。

 5号機は再びビームサーベルを振り上げる。

 

「貴様だけは! ここで殺す!」

「っ! 先輩!」

 

 ヴァネッサの尋常ではない気迫に圧倒されながらも、DCドッズライフルを放つが回避される。

 DCドッズライフルを連射して、5号機を引き離しているとようやくエイミーの2号機と増援の部隊も到着する。

 

「リック、まだ生きてるわね」

「エイミー……」

「なら良し! 良くもうちのリックに!」

 

 2号機はアデル・ガーディアと共にドッズライフルで5号機を攻撃する。

 

「邪魔をするな!」

 

 5号機の脚部に装備されている8基のCファンネルが展開されて一瞬の内にアデル・ガーディアが切り刻まれる。

 

「何なの! アレ!」

 

 2号機もCファンネルに対応しようとするも、エイミーはファンネルのような武器を相手にした事は無い為、殆ど対応出来てはいないが、AGE-ZEROがDCドッズライフルでCファンネルを牽

 

制する。

 

「気を付けて。エイミー」

「分かってるけどさ」

 

 AGE-ZEROと2号機は互いをフォローし合いCファンネルに対抗する。

 8基のCファンネルは5号機に戻ると5号機はバックパックのレベルタブレード改を抜いて両端を接続したツインランスモードでAGE-ZEROに突っ込む。

 AGE-ZEROはビームダガーで応戦する。

 

「もう止めて下さい!」

「どの口が言うか!」

 

 5号機は無茶苦茶にツインランスを振り回す。

 AGE-ZEROはビームダガーとビームシールドでなんとか攻撃を弾き、2号機はドッズライフルで援護射撃を行い5号機は距離を取る。

 

「ヴァネッサ様!」

「ジェレミアか……出迎えご苦労」

「ヴァネッサ様?」

 

 いつもとは雰囲気の違うヴァネッサに戸惑いつつもナイトギラーガとミラーファルシアは5号機の前に出る。

 

「敵の増援!」

「ジェレミア、アビー、ここは引くわよ」

「はっ!」

 

 ヴァネッサは冷静さを取り戻し、いつものヴァネッサに戻ると撤退を指示する。

 今、重要な事はヴァネッサが見聞きした情報を持ち帰る事でガンダムを倒すのは二の次だ。

 ナイトギラーガはギラーガビットを大量に展開すると弾幕を張る。

 AGE-ZEROはビームシールドの範囲を広げて2号機ごとビットの攻撃を守る。

 

「すご……」

「敵が逃げる!」

 

 ビットの攻撃が終わるころにはすでにヴァネッサ達は遠く離れていた。

 

「どうすんの? 私のガンダムならまだ追いつけるわよ」

「各機は帰投しろ」

 

 2号機がストライダー形態になればまだ追いつく事は十分可能だったが、アセムが帰投の指示を出した。

 

「でも、お爺ちゃん」

「ガンダムの1機くらい、やっても構わん。それよりも無理に追撃してこちらの戦力を減らすと言う事は避けなければらない」

 

 アセムはすでに奪われた5号機に関しては見切りをつけていた。

 今、無理に追撃させて敵の待ち伏せや返り討ちに合って2機のガンダムを失うと言う事があれば脱出の可能性も減る。

 AGE-ZEROと2号機を失い5号機も持って行かれる事に比べれば5号機が1機だけ持って行かれた方が戦力の低下は最小限で抑えられると割り切っての判断だ。

 

「分かったよ。お爺ちゃん」

 

 リックもアセムの判断である以上はそれに従うしかない。

 

「先輩……僕は……」

 

 ヴァネッサの口から効かされた衝撃の事実をリックの中では整理がついていない。

 そんな事を考えつつもリックはエイミーと共にレーアツァイトへと帰還して行く。

 

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