コロニー「レーアツァイト」で新型のガンダムの1機を奪取したヴァネッサはジェレミア達と合流し、母艦に帰投した。
母艦に帰投後は艦の整備班に奪取した5号機の解析を任せてジェレミアとアビーを自室に呼び情報の共有を図っている。
レーアツァイト側は時間を稼いで脱出の準備を進めていると言う事、レーアツァイト側の指揮を執っているのはあのアセム・アスノであると言う事、まだ他に新型ガンダムが建造されていると言う事、そしてEXA-DBの手がかりをレーアツァイト側が掴んでいると言う事をだ。
その話しを聞いた二人も驚くが得心する事も出来た。
「情報は呑み込めました。ヴァネッサ様は次の手を如何なさいます」
「決まっているわ。彼らがコロニーを捨てて逃げ出すと言うのであればその前に叩くまでよ」
「では、EXA-DBの事はどうします?」
「私達の目的はあくまでもガンダムの奪取もしくは破壊。1機を手に入れた時点で私達の任務は完了しているわ。でも、まだガンダムの脅威がある以上はここで叩く」
ヴァネッサがヴァレンティナの親衛隊であるガーディアン5の2人を引き連れてここまで来た目的はあくまでもレーアツァイトで製造されていると思われる新型ガンダムの鹵獲か破壊と言う任務の為だ。
その任務は5号機を奪取した時点で完了している。
EXA-DBを手に入れる事が出来たのであればその中の兵器を使って連邦軍と互角以上に戦う事は出来るだろう。
しかし、スパイを使っての情報収集はもう使えないだろう。
相手を泳がしてEXA-DBを見つけたところを横取りすると言う事が出来なくはないが、リスクが大き過ぎる。
上手く横取りが出来れば良いが横取りに失敗して連邦軍の手にEXA-DBが渡れば最悪だ。
ただでさえ新型のガンダムを複数保有する上にEXA-DBの技術まで手にしてしまえばネオ・ヴェイガンに勝ち目はないだろう。
そのリスクを考えればここでレーアツァイトを完全に叩いて連邦軍にEXA-DBが渡る事を阻止して新型のガンダムを破壊した方がマシだ。
「私のグルドリンと搭載機の整備を最優先に。可能な限り速やかに全機の準備を済ませてレーアツァイトに対して総攻撃をかけるわ」
今までは戦力を温存して仕掛けて来たが、次の戦闘は今の母艦に搭載している全戦力を投入して一気に勝負に出る。
どの道、時間をかけた戦いは敵の思う壺である為、戦力を温存する必要がないからだ。
「了解しました。すぐにそのように指示を出します」
そして、ネオ・ヴェイガンはレーアツァイトに対して最後の戦闘を仕掛ける準備を始める。
戦闘から帰投したリックはアセムに呼び出されている。
直前の情報から5号機を奪取した相手がリックの知り合いであると聞いているからだ。
リックがネオ・ヴェイガンと通じているとは思ってはいないが、少しでも情報が欲しい為呼び出している。
5号機が奪取された時の情報は広まらないように注意し、管制には敵の動きがないか厳密に監視させてリックの自室で事情の説明を聞く事になった。
コロニー内部にスパイがいたと言う事は会議室のような場所は盗聴されている危険性がある為、不特定多数の人が出入りしない場所で尚且つ特定の人物以外出入りするのが不自然な場所は余りない。
自室でアセムはリックから事の事情を説明される。
リックもまだ信じられないようで動揺はしているが何とかヴァネッサの事をアセムに話す。
話している間にリック自身もヴァネッサの事を全くと言って良い程知らないと言う事に気づいていた。
「成程な」
「お爺ちゃん。ごめんなさい……僕のせいでガンダムが……」
「気にするな。お前だけのせいではない」
5号機が奪われたのは自分のせいだと自分を責めるリックにアセムがそういう。
アセム自身、平時ならともかくこの状況で内部にスパイを送り込む可能性を考えてはいなかった。
他にも警備の生徒がリックの知り合いだからと禄に素性も確認せずにヴァネッサを通した事も問題だ。
その為、今は責任の所在がどこにあるかなどは議論する必要はない。
「でも……」
「お前は利用されていただけなんだ」
ヴァネッサは余計な情報をリックに流す事なく、リックから情報を聞き出している。
聞く限りでは始めからリックから情報を引き出す事を目的に接触して来た訳ではないが、5号機を奪取する直前の話しは明らかにリックがガンダムのパイロットと知り、5号機を奪取する為にリックの立場を利用している。
「ねえ、お爺ちゃん。先輩は言ってたんだ。先輩のお母さんはお父さんに殺されたって。お父さんはアスノ家が権力を得る為にって……」
「どういう事だ? リック」
リックの思いもよらない言葉に動揺をしつつも、リックがヴァネッサから聞いた事を話す。
「ヴァニス・イゼルカントの娘だと……」
「うん。先輩はお父さんがお母さんを殺したって言ってた。それは嘘じゃないと感じた」
「それは違うぞ。リック」
ヴァニスの娘を自称しているヴァレンティナと5号機を奪ったヴァネッサがどのような関係かは分からない。
本当にヴァニスの娘なのかもだ。
しかし、キオがヴァニスを殺したと言う事が違うと言う事ははっきりと断言出来た。
ヴァニス・イゼルカントはラ・グラミス攻防戦でキオとの一騎打ちにて戦死したと歴史ではそうなっている。
その歴史は事実であって真実ではない。
あの時の戦いで確かにヴァニスはキオに敗北し、全ての責任を取る形で命を捨てようとした。
だが、それをクライド・アスノによって回収されていた。
それから数年後にイゼルカントの娘であると出生を誤魔化していた時の偽名ではなく本来の名前であるエリス・アスノとして戻って来ている。
「彼女はキオの事を恨んでなどいなかった」
それは本人がそう言っていたのだから間違いはない。
ヴァニスはキオに敗北して自分の野望を遂げる事は出来なかった。
しかし、キオに敗北したからこそ野望に一歩近づく事も出来た。
数年間で同一人物か分からなくなるほど、変わったがヴァニスがキオを恨むと言う事はない。
「なぜ、その先輩がそう言っているのは分からない。だが、キオは権力の為に戦ってはいないと言う事は言える。俺の父さんも、俺もキオもただ守りたい者の為に戦った。その結果として今のアスノ家があるだけの事だ。だからリックは信じれば良い。お前の父さんは地球を救った英雄であるとな」
ヴァネッサがそこまでキオを恨む理由は分からない。
リックがヴァネッサが本気でヴァニスの仇としてキオをアスノ家を恨んでいると言う事を感じたのであればそうなのだろう。
だが、キオがアスノ家の権力を得る為に戦って来たと言う事は絶対に認める訳にはいかない。
キオだけではなく、アセムもアセムの父のフリットも権力の事よりもただ守りたかっただけだ。
その為に違うやり方になっても道が違えても守りたい者を守る為に戦った結果が今のアスノ家だ。
「お爺ちゃん……僕はどうしたらいいと思う?」
「リックはどうしたい」
「僕は先輩が悪い人には思えないんだ」
ヴァネッサがリックを利用していたと言う事は十分に理解できる。
ヴァネッサがキオやアスノ家に対して強い恨みを抱いていると言う事もだ。
それでもリックはヴァネッサの事を信じたい。
「そうか……だったら、信じる事だ。自分自身を。迷えば判断が鈍る。迷う事なく自分を信じる事が出来る奴だけが前に進める。何かを得る事が出来る」
アセムもリックの心情は理解できる。
自分もそうだった。
今でこそは生涯の友であるゼハートも元々はトルディアに隠されたガンダムを奪取する為に送り込まれて来たヴェイガンのスパイだった。
それを知ってゼハートを敵として割り切ろうとしたが結局割り切る事は出来なかった。
その果てに今がある。
だからこそ、リックも割り切る必要はないと言えた。
信じたところでヴァネッサの事を何も知らない以上は自分とゼハートの時のようになるとは限らない。
それでも自分が正しいと信じた道を進んだ結果であればリックも受け入れて前に進む事が出来るとアセムは信じている。
「だから、迷うな。リックはリックの正しいと思った事をすればいい」
「うん……分かったよ。お爺ちゃん」
リックもまだ何がしたいとまでは明確に答える事は出来ないが、もう一度話しをしたいと言う事は分かる。
「話しは終わった。お前も少し休め。次期に大きな戦いになるだろうからな。そうなった時にガンダムが切り札になる」
余り時間を取ってもリックを疲弊させるだけだ。
ネオ・ヴェイガンもこちらの情報を持ち帰ったとなれば遠からず仕掛けて来る事は明白だ。
その時にリックが依然のように疲労で倒れると言う事があれば皆が助からない。
アセムは話しを切り上げて部屋から出て行く。
部屋の前にはリックを心配してかジンとエイミーが待っており、アセムが出て来た為、話しが終わったのだと解釈して部屋に入る。
そんな様子を見届けて同じようにアセムが出て来るのを待っていたキャロルがアセムの元に来る。
「ディーヴァの方は?」
「厳しいですね。何とか航行システムは直して動く事は動きますけど、防御システムの方が殆ど手つかずです。フォトンブラスターはおろか、強襲揚陸モードへの変形も無理です。主砲も1発が限度と言ったところです」
「確かに厳しいな」
キャロルが要求した期限は2週間でまだ1週間しか経っていない。
この1週間で新型ガンダムの組み立てと調整、AGE-ZEROの修理など技術科の生徒を多数導入してディーヴァの整備に当てていたが、今のディーヴァの状況は余り芳しくはない。
何とか航行が可能ではあったが、戦闘となった場合の防衛システムが殆ど直ってはおらず、若干の弾幕を張る事が精一杯で主砲も1発撃てば暫くは使えない。
その上でディーヴァ最大の兵器であるフォトンブラスターキャノンは強襲揚陸モードへの変形が出来ない状態である為、使用できない。
フォトンブラスターキャノンは切り札である為、常に使う事もなくなくても大した問題ではないが主砲が1発しか使えないと言うのは正直厳しい。
「MSで守らせるしかないか……残りの2機は使えるのか?」
「1号機は機体の組み立ては終えていますけど、システムの調整に手間取っています。あの機体のシステムは独特ですからね」
1号機はAGE-1をベースにした汎用型MSではあるが、指揮官機としての機能を持ち通信機能が強化されている。
通信機能だけではなくセンサー系も強化されて偵察機としての使える。
その為、1号機に搭載されているOSのシステムは他のガンダムよりも独特な物となっており扱いが難しい。
専門の技術者が居れば話しが別だが、学生にそこまでは求められない。
そのような事情もあり1号機は機体の組み立ては終わっているが実戦には出せない状態となっている。
「3号機の方は機体はもう使えますが、専用の装備が使えません」
残りの3号機も機体の組み立ては終わり、1号機のように使えない訳ではない。
3号機はAGE-3をベースとした高火力、重装甲型のMSだ。
ゼクスシリーズの開発責任者はキャロルの叔母でアセムの従兄妹でもあるマリィだ。
その為、基本的にゼクスシリーズは重武装、高火力である傾向が強い。
中でも3号機はマリィの趣味がダイレクトに反映されている。
他の6機の装備は既存の装備の技術が流用されている事が多いが3号機に限り従来の物とは違った装備が用意されていた。
それ故に機体は完成していても装備の方が未完成のままだ。
「機体が使えるのであれば戦力として数えたい。何とか出来るか?」
「アデルのライフルとシールドで最低限の武装をすれば」
装備が未完成でも機体その物は完成している。
機体が完成していればアデル・ガーディアのドッズライフルとAGE-ZERO用に改造したシールドを装備させれば実戦でも使えない事もない。
「では頼む。ネオ・ヴェイガンがいつ仕掛けて来ても良いように一般の生徒は脱出艇への避難の準備と誘導、管制や整備の機材、物資等をディーヴァに搬送、脱出の用意を急ぐ必要があるな」
敵がいつ仕掛けて来るか分からない以上、すぐに脱出の用意を進める必要がある。
余り悠長な事をしていれば一般の生徒の避難の時間も稼ぐ必要も出て来る。
事前に避難をしておけばその時間も短縮できる。
後は必要な物をディーヴァに搬送し、今後の事を生徒に通達して敵の襲撃に備えるだけだ。
その翌日から、レーアツァイトは脱出の為の準備を始めている。
戦闘に参加出来ない一般の生徒は一般科目の教師の引率で脱出艇に移動を始め、その他の科の生徒にはディーヴァに乗り込む意志があるかを確認し、ある者にはディーヴァの配属先を指示し、ない者には脱出艇へ避難させた。
「コロニーの回転を止めるとすぐに仕掛け来るぞ」
ディーヴァのブリッジの艦長席に座るアセムがブリッジクルーに指示を出している。
ディーヴァを運用するに当たり、レーアツァイトで唯一指揮経験のあるアセムがディーヴァの艦長に付くのは自然の流れだ。
また、副長として学生会長であるエディが半ば強制的に任命され、オペレーターの席にはセレナが座っている。
生徒の避難が終わったところで、コロニーの回転を止める作業を行っている。
脱出の為には脱出艇が安全圏まで離脱する為の時間を稼ぐ必要がある。
その為、コロニー内で戦闘を行う予定となっている。
コロニー内で戦闘を行えばそれだけ外にいる脱出艇が逃げやすくなる。
しかし、ディーヴァ側の戦力は脱出艇の護衛に付かせていないアデル・ガーディアが十数機にガンダムが3機だ。
その内、2号機のみが重力下での飛行能力を持っている。
それに対してネオ・ヴェイガン側のMSは基本的に光波推進システムにより重力下でも飛行する事が出来る。
それ故にコロニー内で戦闘を行えばサブフライトシステムがない以上、飛べないMSが殆どのディーヴァの戦力では不利となる。
ただでさえ艦の防衛にはMSを頼りにしている為、その状況は非常にまずい。
それを回避する為にコロニー内を無重力状態にする事で回避した。
コロニーの回転を止めれば外でこちらを監視しているネオ・ヴェイガンにもすぐに気づかれる事は確実でそうなればこちらが脱出を図っている事もすぐに分かる事だ。
そうなれば敵も確実に仕掛けて来る。
「艦長、コロニーの回転が止まりました」
「機関最大、ディーヴァを発進させろ」
コロニーの回転が止まったところでディーヴァが再び戦場へと進み始める。
「総員に告げます。これよりディーヴァは作戦行動に入ります。各員は所定の位置にて待機し、指示を待って下さい」
ディーヴァが動きだし、艦内放送が入る。
格納庫の横に設置されているパイロットの控室ではガンダムのパイロットが待機している。
リックとエイミーとハーマンだ。
今まで2号機と5号機のパイロットにも志願していたハーマンだが、機体特性とは合わずにパイロットになる事はなかったが、3号機のパイロットとして正式に決まっている。
「ようやくか、アスノ、バートン。ディーヴァの守りは俺達に任せろ」
「分かりました」
今回の脱出作戦に置いて3機のガンダムは行動を共にしないで別々の役割が与えられている。
ハーマンの3号機はディーヴァの防衛だ。
3号機は本来の装備を装備していない為、戦力としては他のガンダムには劣るがアデル・ガーディアよりかはマシと判断され防衛部隊の指揮官を任されている。
待機の指示があった事で3人はそれぞれのガンダムで待機する為に格納庫に入る。
格納庫には3機のガンダムの他にも何機かのアデル・ガーディアがすでに搬送されている。
ここに搬送されていない機体は脱出艇の護衛かコロニー内の各所で見張りと不意打ちの為にすでに配置されている。
その中でもハーマンの3号機は一際目立っている。
3号機は普通のMSよりも1.5倍程の巨体を持つガンダムだ。
AGE-3の高火力と重装甲を受けついている。
残念ながら専用装備は無い為、右手にはアデル・ガーディア用のドッズライフル、左腕にはAGE-ZERO用に改良したシールドが装備されている。
3号機は見た目が巨体である事から内蔵火器も豊富に思われそうだが、内蔵している火器は頭部の大口径ビームバルカンのみで両腕の装甲にはビームサーベルが内蔵しているくらいしか装備されていない。
その巨体の大半は高火力の装備を扱う為のジェネレーターとその冷却装置、機動力の低下を最小限に抑える為のスラスターで占められている。
その為、専用の装備がない今の状況ではスラスター以外は意味のない重りでしかない。
「ガンダム各機のオペレーターは私が担当する事になりましたわ」
「えっと、セレナ先輩でしたよね」
3機のガンダムにはセレナが専属のオペレーターとしてつく事になっている。
ガンダムはディーヴァの切り札である為、MS隊の中でも優先的に戦況や指示を出せるようにしている。
「よろしくお願いします」
「ええ、よろしく。ガンダム各機は出撃して作戦に入って貰います」
まだ、敵影は確認されてはいないが、先手を打つ為にもすぐに出撃しなければならない。
ディーヴァはすでに事前に手間取る事がなくコロニー内に入れるように開けて置いた道を進み、コロニー内に入っている。
3機のガンダムはすぐに出撃の準備に入る。
ディーヴァのカタパルトは2基しかない為、まずは2号機と3号機がカタパルトにセットされる。
「ハーマン・ブラック。ガンダム3号機、出る」
3号機が射出されると2号機の出撃準備に入りAGE-ZEROもカタパルトにセットされる。
「エイミー・バートン。ガンダム2号機、出ます!」
「リック・アスノ。ガンダム、行きます」
2号機、AGE-ZEROと射出されて、格納庫ではアデル・ガーディアの出撃準備も進められる中、2号機は反転しAGE-ZEROは加速して直進する。
3号機はディーヴァの前方でディーヴァとの距離を保って進み、3機のガンダムはそれぞれの戦場へと向かって行く。
反転した2号機は脱出艇の護衛部隊を合流した。
護衛部隊にも敵が来る事を想定してアデル・ガーディアだけではなく3機の中で最も機動力の高い2号機を配置した。
「遅くなりました!」
「構わないって、敵もまだ来てないみたいだしな」
合流したアデル・ガーディアのパイロットの一人は気楽にそういうがすぐに機体のレーダーに反応が現れる。
「もう、来たのかよ!」
「私が先行します。先輩達は援護をお願いします!」
「任せた!」
2号機は反応のあった敵影へと向かう。
「隊長、接近する機影です。速い!」
「ヴァネッサ様から情報のあった新型の可変型ガンダムね。私が相手をするわ」
脱出艇に接近するアビーのミラーファルシアが接近する2号機へと向かい、2機のドラドが脱出艇の方へと向かう。
「アレはビームの効かない奴!」
「新型の1機はここで抑えさせて貰うわ!」
ミラーファルシアはミラービットを展開する。
2号機はビームサーベルを抜いて一気に加速する。
「こんの!」
ミラービットが2号機を包囲しようとするも、それよりも速く2号機はミラーファルシアに接近してビームサーベルを振るいミラーファルシアはビームソードで受け止める。
だが、ミラーファルシアはフォーンファルシアをベースに若干の改良を加えているだけに過ぎず、パワーで2号機に勝る事は無い為、2号機に押し込まれる。
「ちっ!」
ミラーファルシアは何とか2号機あら距離を取って拡散ビーム砲で牽制するも、2号機はシザーシールドを掲げて突撃して来る。
「無茶苦茶な戦いをして!」
「逃げんな!」
2号機の攻撃をかわしてミラービットで攻撃するも、2号機の動きは直線的であるので動きを読む事は容易いが速い為、ミラービットでは捕捉しきれない。
そして、ミラービットを振り切ってミラーファルシアに接近してビームサーベルを振るいミラーファルシアはシールドで受け止めた。
コロニーの外で交戦が開始されて少しすると内部でも戦闘が開始されている。
コロニーの至るところからネオ・ヴェイガンのMSが内部に侵入して来ている。
予め侵入経路は予測できる為、簡単なトラップを設置していたが、MSを相手にするには若干の時間稼ぎにしかならなかった。
「ディーヴァには自衛力がほとんどない。敵を近づけさせるなよ!」
3号機はドッズライフルでドラドを撃墜する。
3号機は砲戦が主体である為、遠距離遠距離攻撃時の照準機能が非常に高く、ドラドなら簡単に狙いを付けられる。
「凄いな。これがガンダムか」
ドラドのビームライフルをシールドで受け止めてドッズライフルで撃ち落す。
「ハーマン! 抜かれた!」
「俺がフォローする!」
他の小隊の持ち場がダナジンに抜かれてディーヴァに取りつこうとしていた為、3号機がフォローに入る。
3号機は他のゼクスシリーズと比べると機動力は1番低いがそれでもアデル・ガーディアよりかは高い。
3号機はドッズライフルを連射してダナジンの足を止めている間にアデル・ガーディアがドッズキャノンでダナジンを撃墜する。
「まだ来るのか!」
すでに双方が何機か撃墜されているが、ネオ・ヴェイガン側は次々と別のMSがコロニー内部に侵入して来る。
このままではディーヴァがコロニーの外に出る前に沈められてしまう。
「やらせるか!」
3号機は頭部の大口径ビームバルカンでドラドを落としてドッズライフルを連射して敵をディーヴァに近づけさせないようにする。
「アスノはまだか!」
3号機はドラドのビームサーベルの一撃を回避してドッズライフルで撃墜する。
コロニーの中と外で交戦が開始され、ファ・ボーゼ級からは次々とMS隊が出撃し、ついには搭載して来た全てのMSを出撃させていた。
全機を出撃させたところでヴァネッサもグルドリンカスタムで出撃し、その傍らにはナイトギラーガが控えている。
「ヴァネッサ様、MS隊の全機出撃しました」
「私達も出るわ。狙いはガンダムと敵の母艦、最悪ガンダムだけはここで仕留めるわよ」
「はっ!」
MS隊が出撃した事を確認して、グルドリンカスタムとナイトギラーガはレーアツァイトに接近するが、ようやくコロニーに到着しようとする頃にコロニーの外壁をぶち抜いてAGE-ZEROがDCドッズライフルを放つ。
2機はとっさに回避行動を取って無事だったが、反応の遅れたダナジンが撃ち抜かれて破壊された。
「ヴァネッサ様! この攻撃は!」
「ええ、間違いないわ。ガンダム……各機、散開しつつ距離を取って迂回してコロニーに接近、ジェレミアは私と一緒にガンダムを仕留めるわ」
コロニーの外壁を破っての攻撃はAGE-ZEROが装備していたDCドッズライフルの攻撃で間違いはない。
グルドリンカスタムはビームスクレイパーを展開して攻撃を回避しながらコロニーに突っ込む。
ビームスクレイパーでコロニーの外壁を突き破りコロニーの地下に入る。
「外壁を突き破って来た!」
「やはり、そこにいたのね。リック」
地下にはDCドッズライフルを構えていたAGE-ZEROをヴァネッサは発見する。
リックの地下に入って来たグルドリンカスタムを見つけるとDCドッズライフルを放つ。
前回の戦闘ではコロニーへの被害を考慮して使えなかったが、コロニーを破棄する今となっては被害を気にする必要はない。
グルドリンカスタムは旋回してビームバルカンを連射する。
AGE-ZEROはビームシールドで防ぎつつ距離を取り、DCドッズライフルを向ける。
「この感じ……あのMSに乗っているのはネッサ先輩?」
「隙だらけだな! ガンダム!」
グルドリンカスタムに乗っているのがヴァネッサであると感知したリックの隙をついて地下に入ったナイトギラーガはギラーガアックスを振り下ろし、AGE-ZEROはビームシールドで受け止める。
「邪魔をしないで!」
AGE-ZEROはナイトギラーガを蹴り飛ばしてDCドッズライフルを放ち、ナイトギラーガは回避しながら距離を取る。
「先輩! ネッサ先輩なんですよね!」
「だったら何?」
「聞いて下さい! お父さんは!」
「その気は無いわ!」
リックの話しなどヴァネッサは聞く耳を持たずシグマシスキャノンを放ちAGE-ZEROはビームシールドで防ぐ。
「これも効かないとなると……ジェレミア、回り込んで」
「はっ!」
グルドリンカスタムはAGE-ZEROの前方からシグマシスキャノンを放ち、回避する背後からナイトギラーガがギラーガアックスを振るう。
AGE-ZEROはナイトギラーガの攻撃を回避するも、更に回り込んでいたグルドリンカスタムがビームスクレイパーで突っ込んで来る。
「僕の話しを!」
「その気は無いわ!」
AGE-ZEROはビームシールドで防ぐも、そのまま地面に叩き付けられる。
「うぐっ!」
そして、ナイトギラーガがギラーガアックスを構えてAGE-ZEROの上から降下して来る。
AGE-ZEROはビームバルカンを放ち、ナイトギラーガはビームシールドで防ぎ、その間にスラスターだけで移動し、ナイトギラーガの攻撃を回避して体勢を立て直す。
「しぶといわね」
グルドリンカスタムはAGE-ZEROにブースターに内蔵されているミサイルを放つ。
AGE-ZEROはビームバルカンでミサイルを迎撃しつつ、ナイトギラーガにDCドッズライフルを放つ。
AGE-ZEROへの攻撃でギラーガアックスが地面に突き刺さっている為、ナイトギラーガはギラーガアックスを捨てて回避し、ビームバルカンで攻撃する。
「先輩!」
ビームシールドで攻撃を防ぎつつもリックはヴァネッサに呼びかけるもすでに通信は切られておりその声が届く事は無い。
ナイトギラーガは両手にビームサーベルを展開してAGE-ZEROに切りかかり、AGE-ZEROは左手にビームダガーを持って応戦する。
ビームサーベルをビームダガーで弾き突き出そうとするが、ナイトギラーガはビームダガーの間合いに入る事は無く、AGE-ZEROはDCドッズライフルを放つが回避され、上からグルドリンカスタムのビームバルカンの攻撃を受ける。
「アスノ君」
「何ですか!」
「次期にディーヴァはそちらに到着します」
「もうそんな時間……」
ディーヴァからの通信が入り、ディーヴァが間もなくコロニーの淵まで到着する事を知る。
事前にリックもこの後の手筈は聞いている為、これ以上はヴァネッサと話す時間が作れない。
「先輩……」
「お願いしますわ」
「分かりました」
通信が切れるとリックはグルドリンカスタムでもナイトギラーガでもない方向にDCドッズライフルを向けて放つ。
それにより次々と誘爆を起こしていく。
ディーヴァがコロニーの外に出る為の出口を作る為に予め爆発物を仕掛けていた。
リックがそれをDCドッズライフルで誘爆させた。
「これは……」
「ヴァネッサ様!」
爆発が起き、その爆風でコロニーの破片が地下に降り注いでくる。
グルドリンカスタムとナイトギラーガは破片に当たらないように回避行動を取り、その隙にAGE-ZEROはコロニーの外に離脱して行く。
「リック!」
AGE-ZEROが退避した事に気を取られてたせいでグルドリンカスタムは破片の直撃を受けてそのまま、地下に埋もれてしまう。
「ヴァネッサ様!」
ジェレミアがヴァネッサの救援に向かおうとするが、空いた穴をディーヴァが通る。
その護衛についていた3号機がナイトギラーガにドッズライフルを放つ。
「ちぃ! 新型が!」
ナイトギラーガはビームバルカンを撃ちつつ後退する。
幸いグルドリンカスタムは瓦礫に埋もれている為、見つからずディーヴァと護衛のMS隊は気づく事なくコロニーの外に出る。
「ヴァネッサ様!」
ディーヴァが通り敵の攻撃が減ったところでジェレミアはヴァネッサの元に到着する。
すぐに瓦礫をどかしてヴァネッサの救出を行う。
「大丈夫よ。多少の損傷はあるけど致命的ではないわ」
グルドリンカスタムの損傷は軽微で爆発の危険性はない。
しかし、それでも武装のいくつかは損傷している為、すぐにディーヴァを追いかけてガンダム2機を相手に出来ると言う程ではない。
「油断したわ。ジェレミア、戦闘中のMS隊に連絡を入れて戦闘を中止して撤退を始めるようにね」
「ですが……」
「私もこの状況で、ディーヴァがコロニーの外に出たわ。母艦の周りに戦力は殆ど残されてはいないわ。母艦もすぐに退避させないとね。仕方がないわ。ディーヴァにはEXA-DBまで案内させればいいわ」
すでに勝負は決していた。
母艦の防衛には自分達が当たっていた為、母艦の周囲に戦力は殆ど残されていない。
ガンダムが2機もいれば十分に突破出来る程だ。
ヴァネッサもすぐには戦えず、ジェレミアが向かったところで1機で戦況を変える事は出来ないだろう。
その時点で、ヴァネッサ達の敗北が確定している。
敗北が確定しているのであれば、次に考える事はいかに戦力の消費を最低限に抑えると言う事だ。
敵も逃げる事を目的にしている為、攻撃さえしなければ無理に攻撃はして来ないだろう。
そして、この戦いに負けた事で目的をディーヴァの撃沈からEXA-DBの捜索に切り替えれば良い。
ディーヴァはEXA-DBに関わる何かを掴んでいる。
ディーヴァを泳がす事でネオ・ヴェイガンがEXA-DBを手に入れる可能性が出て来たと考えればこの敗北も無駄ではない。
すぐにジェレミアから展開している部隊に対して撤退の指示が出された。
2号機のビームサーベルをミラーファルシアはビームソードでいなして距離を取る。
幾ら距離を取ったところで2号機は機動性能で無理やり近接戦闘に持ち込んで来る為、ミラーファルシアはビームを反射するミラービットでビームを反射して敵の死角から攻撃すると言う本来の戦いが出来ずに苦戦している。
「撤退命令? どういう事なの。ジェレミア」
「こちらが突破された。ヴァネッサ様のグルドリンも多少だが損傷している。これ以上の戦闘は無意味とヴァネッサ様が判断された」
「ヴァネッサ様が! 分かったわ」
ミラーファルシアは拡散ビーム砲とビームバルカン、ミラービットで一斉攻撃を行う。
流石の2号機もその攻撃に対しては無理やり突っ込む事が出来ずにシザーシールドで防ぎつつ回避する。
その間にミラーファルシアは後退を始める。
「逃げた!」
「バートン、もう良い。脱出艇が安全圏まで離脱した。俺達はこのまま脱出艇の護衛に付く。お前はディーヴァに向かえ」
「分かりました! 後は先輩達にお任せします!」
すでに脱出艇に向かった2機のドラドもミラーファルシアと共に撤退を始めている。
脱出艇も安全圏まで離脱している為、エイミーの仕事は終わりで次はディーヴァとの合流だ。
2号機はストライダー形態に変形するとディーヴァの方へと加速する。
コロニーを脱出したディーヴァはファ・ボーゼ級と対峙している。
ファ・ボーゼ級のビームがディーヴァを掠める。
直接戦場に出た事のない生徒はビームが掠った事で悲鳴を上げている。
「この距離ならそうそう当たらん! 敵戦艦に接近して主砲の発射準備! 狙いは敵戦艦の機関部だ! 撃沈する必要はない。動きを封じれば良い!」
アセムの指示でブリッジクルーも半ば自棄になってディーヴァを前進させて主砲の準備を始める。
主砲が使えるのは1度で外してしまえば次は修理をしなければ使えない。
そして、戦闘中に修理する事は出来ない為、外す事の出来ない一撃だ。
ディーヴァが前進し、ファ・ボーゼ級の主砲がディーヴァを狙い放たれる。
直撃コースの攻撃であったが、ディーヴァの前にAGE-ZEROが出て来る。
「ディーヴァにはお爺ちゃんやジン達が乗ってるんだ! やらせない!」
AGE-ZEROは可能な限りの高出力且つ広範囲にビームシールドを展開してファ・ボーゼ級の主砲を防いだ。
「今だ! 主砲、撃て!」
ディーヴァも主砲を放ち、ファ・ボーゼ級を掠めた。
直撃こそはしなかったが、ファ・ボーゼ級は煙を上げて進路がずれていく。
「機関最大! MS隊を収容後、最大船速で離脱する!」
2号機は多少離れても追いつく事は出来る為、周囲に展開しているMS隊を速やかに回収したディーヴァは最大速度で戦闘宙域を離脱する。
ファ・ボーゼ級はディーヴァをすぐに追おうにもMS隊はまだ帰投してはおらず、ヴァネッサも戻っていない為、追うにも追えない。
そんな、ファ・ボーゼ級を横目にストライダー形態の2号機がディーヴァを追いかけてディーヴァが最大速度に加速する前に帰投した。
ディーヴァが完全に離脱した事でコロニー「レーアツァイト」での一連の事件は幕を落とした。