機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

135 / 155
第127話

 

 

 コロニー「レーアツァイト」を襲撃し、見事新型ガンダムを奪取したヴァネッサの部隊は調査に訪れた連邦軍をやり過ごして総司令部とようやく連絡を取る事が出来た。

 現在のネオ・ヴェイガンの総司令部が置かれているのはかつてのヴァニスの乗艦でもあったグレート・エデンだ。

 グレート・エデンも戦後のドサクサに紛れて行方を暗ませていた兵器の一つだ。

 そこをネオ・ヴェイガンの総司令部として運用していた。

 

「ご苦労だった。ネッサ」

「でも、ディーヴァとAGEシステムを搭載したガンダムは取り逃がしたわ」

 

 グレート・エデンのブリッジでヴァネッサはヴァレンティナに任務の結果を報告する。

 ヴァネッサもヴァニスと髪の長さ以外は瓜二つであったが、ヴァレンティナは一目ではヴァニスと見間違う程良く似ている。

 顔立ちに関してはヴァネッサと大して変わらないのだが、ヴァネッサとは違いヴァニスと同じくらいの髪の長さがそうさせる。

 だが、良く見るとヴァニスやヴァネッサは目の色が右目が金色で左目が碧なのに対してヴァレンティアは左右の色が逆で右目が碧、左目が金色となっていた。

 その後ろにはネオ・ヴェイガンの親衛隊、ガーディアン5の隊長であるヴァレリ・アダモフが何食わぬ顔で経っている。

 かつてはヴァニスがネオ・ヴェイガンを率いていた時に参謀になるも、ヴァニスに切り捨てられてUIEに寝返るもスラッシュに敗北して逃走し行方を暗ませていたが、自身をUIEから得た技術を使い強化Xラウンダーとなり肉体も若干弄った上で再びネオ・ヴェイガンの参謀及び親衛隊隊長の座へと返り咲いていた。

 

「AGEシステムを搭載したガンダムとディーヴァが出て来たのは誤算ではあるが新型ガンダムを1機でも奪取して来たのだ。私がネッサを責める筈もないだろう。これもヴァレリの作戦の許容範囲だ。そうだな? ヴァレリ」

「ええ。確かに予想外の事もありましたが、おおよそ私の予想通りの結果ですね。流石はヴァネッサ様」

「そういう事だ」

 

 この作戦はヴァレリの提案による物だ。

 ヴァレリがどこからか仕入れて来た情報から奪取の計画を立てた上でヴァレンティナに進言し、その作戦にはヴァネッサに指揮を取らせるのうに進言したのもだ。

 

「それで姉様、どうするつもり? ディーヴァとガンダムは最悪の組み合わせよ。そこにEXA-DBが加わればこちらも無視は出来ない」

「さて……どうした物か」

 

 ヴァレンティナはちらりとヴァレリの方を見る。

 それに気が付いたヴァレリはコクリと頷く。

 

「そうですね。確かにガンダムとディーヴァの組み合わせは脅威ではあります。しかし、我らが戦争に勝利する為にはEXA-DBは必須。そこで私はディーヴァに仕掛ける事を提案します。それでディーヴァが沈めば良し。仮に取り逃がしてもEXA-DBへと案内して貰えるます」

「成程。流石はヴァレリだ。だが、ガンダムを倒すのは容易ではないぞ。なにせ、ヴァネッサですら仕留める事が出来なかったのだからな」

 

 ディーヴァを沈めるにしてもガンダムを何とかしなければならない。

 ヴァネッサは現在のネオ・ヴェイガンでもヴァレンティナに次ぐ実力者だ。

 そんなヴァネッサでも仕留める事の出来なかった相手を倒す事の出来るパイロットはそうそういない。

 

「ですから。陛下自ら出撃して貰います。陛下とレギーナでしたらガンダムと言えども一溜りもありません。無論、私も同行させていただきます。その間、ヴァネッサ様には新型ガンダムをグレート・エデンまで移送を行って貰います」

「良いだろう。ネッサ、聞いての通りだ」

「分かった。姉様、気を付けてね。相手はガンダムよ」

「無論だ。だが、私のレギーナに加えてヴァレリの策があるのだ負ける要素はない」

 

 ヴァレンティナはそう言い切る。

 自身の能力に絶対的な自信を持つヴァレンティナとヴァレンティナが絶対的な信頼を置くヴァレリの策が加われば相手が誰であろうと負ける気はしなかった。

 ヴァネッサは一度、グレート・エデンに戻る事となり、ネオ・ヴェイガンの現女帝、ヴァレンティナ・イゼルカントがディーヴァを狙い動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マッドーナ工房から離れたファ・ザードはマッドーナ工房をギリギリ監視できる距離を取って工房を監視している。

 先の戦闘で搭載機の大半が損傷している為、まともに戦闘は出来ないが、そのまま引き下がる訳にもいかない。

 

「ローザ・ベンジャミン中尉、入ります」

 

 ファ・ザード内のギルバートの自室にローザが入って来る。

 ローザは先の戦闘での戦闘データをまとめてそれを提出する為にギルバートの元を訪れていた。

 

「ご苦労。データは私の方から上に提出しておく」

「お願いします。少佐、それよりも先の戦闘では申し訳ありません。貴重な機体を……」

「構わない。こちらは1機たりとも撃墜はされていないのだからな」

 

 工房への攻撃で損傷したMSは多いが撃墜されたMSは1機もいなかった。

 パイロットは多少の負傷はあっても戦死者も重傷を負ったパイロットもいない。

 戦いこそは敗走したが、死者が出なかっただけで十分だ。

 

「向こうは手心を加えてくれたと言う事だがな」

 

 ギルバートの言葉にローザは少し反応する。

 あれだけの戦闘で死者が出なかった理由は工房のMSは撃墜よりも無力化を重点に置いたMSを使った事もあったが、それ以上にAGE-ZEROが撃墜しないように手加減をしていたからだ。

 ローザ自身もAGE-ZEROに敗北しているが、止めを刺される事は無かった。

 その気になれば撃墜する事も出来たのにそれをしなかったのは相手に殺す気がなかった事に他ならない。

 

「少佐はディーヴァを如何なさるおつもりですか? このまま見逃すと言う事はありませんよね」

 

 明らかに手加減をされた事はローザにとっては屈辱的な事でこのまま手を引くと言うのは納得は行かない。

 

「そうだな。私達の任務はあくまでも消息不明となっている生徒の安否の確認だ。ディーヴァを運用しているのが生徒であれば無事であると確認できたと判断しても問題はないだろう」

「ですが!」

 

 工房には新型ガンダムの引き渡しを要求したが、建前は生徒の安否確認で命令が来ている。

 その為、安全を確認したと言う報告をすれば任務は完了となる。

 

「だが、このまま帰投する気もない」

「では、準備ができ次第、再び攻撃を開始するのですか?」

「こっちにはすぐに出せるMSは私のガンダムくらいだ。向こうは地球圏でも最強クラスの技術を持つマッドーナ工房がバックにいるのだ。先に準備が整うのは明らかに向こうが先だ」

 

 現在のファ・ザードに搭載しているMSですぐに使えるのはギルバートの4号機のみだ。

 他のMSはどこかしらに損傷を受けており修理の必要がある。

 それは向こうも同じだが、向こうにはマッドーナ工房が付いている。

 マッドーナ工房のスタッフと機材を使えばディーヴァの方が先に準備を整える事は明らかだ。

 ファ・ザードの搭載機が全て使えるようになっている頃にはディーヴァの戦力は完璧に整っているだろう。

 

「それにこれ以上、あそこに攻撃を行うのは不味い」

 

 マッドーナ工房を敵に回せばテロリストに多くのMSが流れる可能性が高い。

 そうなれば地球圏の治安も一気に悪くなるだろう。

 それだけは絶対に避けねばならない事だ。

 

「では少佐はどうするおつもりですか?」

「ディーヴァにはしばらく泳がせておく。ディーヴァが工房から出ればこちらも躊躇う必要はないからな」

 

 工房に滞在している間は工房と連邦との関係悪化を避ける為に仕掛ける事が出来ないが、出てしまえば幾らでも何とか出来る。

 故に工房から出た後を狙うしかない。

 だが、実際のところギルバートは工房から出た後に仕掛ける事よりもディーヴァの動向の方に関心を持っている。

 戦闘が開始された時にアセムは人類や地球圏、火星圏の未来の為に繋がっていると言っていた。

 その言葉がどこの誰かも分からない相手なら嘘偽りだと一蹴出来るが相手がアセムなら話しは別だ。

 ギルバートが尊敬する人物を上げるとすると真っ先に出て来るのが祖父であるゼハート・ガレットだ。

 地球側の英雄がフリットであるのであればヴェイガン側の英雄はゼハートだと言われている。

 ヴェイガンの側から地球との和平を望み、見事今の世界を作った英雄の一人だ。

 今もゼハートは地上で治安維持の為にMSを駆り日々戦いに明け暮れている。

 そんなゼハートと立場や組織、生まれをも超えて友情を築いたアセムが私利私欲でガンダムやディーヴァを使うとは考え難い。

 そうなればアセムの言葉は真実だと思いたい。

 しかし、何も知らないまま引き下がる事が出来ないと言うのも事実だ。

 本当に世界の為になるのであればより強い力を持つ連邦軍の力を使っても良いが、アセムはそれをしないで数機のガンダムとディーヴァの1隻でそれを行おうとしている。

 その理由を知りたいとも思っている。

 

「連中を泳がせてその目的を探る。その間にこちらの戦力を立て直す。ディーヴァに仕掛けるのはそれからでも遅くはないだろう」

「それは……」

「整備班に搭載機の修理を急がせろ。場合によっては再び戦闘をする事になるかも知れないからな」

「はっ」

 

 ギルバートに反論出来ない以上はローザも大人しく引き下がるしかない。

 ローザは下がりファ・ザードはマッドーナ工房を監視しつつ搭載機の修理を急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 粛清委員会によるマッドーナ工房への攻撃から一夜が明けた。

 コロニーに対しての攻撃が行われた訳ではない為、コロニー内では外で揉め事が起きたと言う程度で大きな混乱もなかった。

 コロニーのドックに新生ビシディアンの母艦、バロノークが停泊していた。

 

「ブルーノ! 準備は整ったな!」

「昨日、外で揉め事があったみたいで、少し遅れてましたが物資の買い付けは一通り」

 

 少なからず昨日の戦闘の影響を受けるもビシディアンはMSの修理と艦の補給を終える事が出来ていた。

 

「しかし、キャプテン。本当にディーヴァを追いかけるので?」

「あったり前だ。ビシディアンが舐められたままで引き下がれるかよ」

 

 ブルーノとしては無理にディーヴァに仕掛ける事に難色を示しているが、アンナは屈辱を晴らす為に再度ディーヴァを見つけ出して仕掛ける気だ。

 気は進まずともディーヴァに対して舐められた借りを返そうと思っているのはアンナだけではない為、強く反対する事も出来ない。

 

「分かりました」

 

 仕方がなくブルーノの方が折れる。

 だが、ディーヴァの進路がこちらの方である事は分かっているが、現在の位置までは特定は出来ていない。

 工房から出た後はとにかく、足でディーヴァを探すしかない。

 前回の戦闘から日数が経過している為、ディーヴァがどこかで停泊をしていなければ今はかなり距離を離されているだろう。

 そうなれば見つける事は事実上不可能だ。

 捜索をしてディーヴァが見つからないのであればその内アンナも諦めるだろう。

 

「野郎ども! アタシ等ビシディアンを舐めやがった連邦の犬に借りを返してやるぞ!」

 

 ブルーノの気も知らずにアンナは艦内放送で高らかに宣言し、バロノークはディーヴァを捜索する為にマッドーナ工房から出航する。

 

 

 

 

 

 ネオ・ヴェイガン、粛清委員会、新生ビシディアンに狙われているディーヴァは粛清委員会との戦闘後、数日間はマッドーナ工房に滞在していた。

 粛清委員会もあれから行動を起こす事はないが、あれで諦めてくれるとは思えない。

 再び攻撃を受けた時の為に最低限の戦力の確保が必要だった。

 AGE-ZEROと2号機の修理と整備、3号機の専用装備の調整、パイロットは不在だが1号機のシステムの調整を完璧に終えて搭載されている4機のガンダムはすぐにでも出せるようになっていた。

 母艦であるディーヴァも通常形態での戦闘に限り全ての機能が使えるようになっている。

 強襲揚陸形態とフォトンブラスターキャノンの方はまだ時間がかかる為、後回しになっていたが、通常形態でまともに戦闘が可能となったのは大きい。

 それにより、ディーヴァの防衛力の強化に加えて主砲による艦砲支援も可能となった。

 

「いろいろと世話になった」

「気にしないで良いさ。こっちこそガンダムの力を借りたしね。それよりも気を付けて」

「ああ……分かってる。状況によってはまだ力を借りるかも知れない」

 

 エンジェルに何があるのか分からない以上、エンジェルに行って終わりと言う訳ではない。

 情報を残したのがあのクライドであると言う事を考えればこれで終わると言い事は考え難い。

 

「遠慮しないで頼ってくれ。僕の方でもいろいろと声をかけていつでも協力出来る体勢は整えておくよ」

「何から何まで本当に助かる」

 

 元よりディーヴァのクルーの殆どは学生で戦争や実戦を知らない世代だ。

 連邦軍に追われる可能性も考えればマッドーナ工房の支援は非常にありがたい。

 

「まぁ、アスノ家とは父さんの代からの付き合いだからね」

 

 アスノ家とマッドーナ工房との付き合いはアセムとロディの父の代から続く物でその繋がりは非常に深い。

 故にロディも商売抜きでディーヴァの支援をする事も厭わない。

 

「そう言ってくれると助かる。代金の方はいつも通りで頼む」

「分かってるよ」

 

 ロディも事情が事情なだけに金を取る気はそこまでないが、アセムもその辺りの事は工房との関係を続けるに当たりきちんとすべきところであると考えている為、必ず代金を支払うようにしている。

 ロディもそれを分かっている為、代金はいつも通りに請求する。

 

「余り長居をする訳でにはいかないからな。俺達はそろそろ、エンジェルに向かう事にする」

「何度も言うようだけど、くれぐれも気を付けてくれ」

 

 すでに何日も滞在している為、長居をすれば工房の方にも迷惑がかかるかも知れない。

 そうでなくとも、ネオ・ヴェイガンにEXA-DBの事を知られている危険性もあり、データディスクがコピーされている可能性すらある。

 もしも、コピーされていた場合、先にエンジェルに向かいそこにあると思われる何かを手に入れられてしまうかも知れない。

 そうなった場合、EXA-DBがネオ・ヴェイガンの手に渡るかも知れない。

 それは現状における最悪のシナリオだ。

 そうならない為にもすぐにエンジェルに向かう必要があった。

 だからこそ、強襲揚陸形態への変形は後回しにして貰った。

 工房との通信を追えて間もなくディーヴァはコロニー、エンジェルに向かい工房を出発する。

 

 

 

 

 

 

 

 マッドーナ工房を出てから数日、工房からエンジェルまでは大した距離が無かった事や敵と遭遇する事なく順調に進んだ事もあり、ディーヴァはエンジェルに接近していた。

 遠目からの映像だとエンジェルには特に何かあると言う訳ではない。

 以前にエンジェルにてクライドによって呼び出された各陣営のガンダムのパイロットによる戦闘の跡が未だに残されていた。

 

「ガンダム各機、発進しました」

「ゼロと2号機は先行して状況の確認、3号機には後方から援護をさせろ」

 

 ディーヴァから3機のガンダムが射出される。

 エンジェルに何かあるのは確実だが、不要ににディーヴァが接近するのは危険だ。

 その為、ガンダムを先行させて危険がないかを確認に出している。

 専用の装備を持った3号機はAGE-ZEROや2号機よりも機動力が低い為、普通に進むだけでも必然的に距離が離れてしまう。

 だからこそ、AGE-ZEROと2号機を先行させて機動力の低い3号機が離れたところから広い視野で周囲の確認を行いAGE-ZEROと2号機はエンジェルの内部まで安全を確認させる。

 

「艦長! レーダーに反応です! これは……ビシディアンのMSと思われます!」

「その後方に母艦と思しき反応もあります!」

「まだ諦めてなかったのか」

 

 モニターにGハウンドとその後方からバロノークが接近している映像が映し出される。

 ディーヴァがマッドーナ工房にいる事を知らない新生ビシディアンは当てもなく探していたが、奇跡的にディーヴァを補足していた。

 

「アデル隊を出して牽制させろ」

「艦長、別方向にネオ・ヴェイガンの物と思われるMSを補足しました!」

「更に粛清委員会のガンダムも捕捉しました!」

「こんなタイミングで……」

「どうするんですかぁ! みんな敵ですよ!」

 

 ビシディアンだけならまだしもネオ・ヴェイガンと粛清委員会と周りは全て敵しかいない。

 

「ネオ・ヴェイガンのMSは何機いる?」

「確認できているのは2機です。でも、異常に速いです。モニターに出します」

 

 モニターにネオ・ヴェイガンのMSが映される。

 そこにはヴァレンティナ専用機のガンダムレギーナとヴァレリ専用機のキングレギルスが映されている。

 ガンダムレギーナはエリスが使っていたガンダムレギオンMを改修した機体だ。

 部品はクライドの設計した特注品から量産型レギルスの部品となっている為、基本的な性能は落ちている。

 それ以外には外見的な差は見られない。

 それに追従しているのがキングレギルスだ。

 キングレギルスはガンダムレギルスをベースにしている。

 頭部は常にスリット状のセンサーとなっている。

 左腕にはビームシールドの発生装置が内蔵され、内蔵式のレギルスビット、右手には大型のビームマシンガンを装備している。

 その2機が偵察に出したガンダムに対して向かっていた。

 更にタイミングが悪く、ギルバートの4号機も接近している。

 

「このままじゃ幾らなんでも!」

「慌てるな。ハーマンにはネオ・ヴェイガンのMSをリック達に向かわせるな、リックとエイミーにはビシディアンを追い返せと伝えろ。アデル隊はディーヴァの防衛に専念させろ」

 

 周囲には敵しかいないが、慌てたところで状況が変わる訳ではない。

 一つ一つの事態に冷静に対処しなければこの状況を打開する事は出来ない。

 厳しい状況ではあるが、ブリッジクルーはすぐにアセムの指示を偵察に出したガンダムへと伝える。

 

「海賊にネオ・ヴェイガンに連邦って……」

「来るよ!」

「見つけたぜ! この前の借りを返しに来てやったぞ!」

 

 GハウンドはドッズライフルⅡBを連射しながら、AGE-ZEROに向かって来る。

 2機は応戦するが、GハウンドはドッズライフルⅡBの実体剣でAGE-ZEROに切りかかる。

 AGE-ZEROは直接ビームブレードを展開して受け止める。

 GハウンドはそのままAGE-ZEROをエンジェルの方へと押し込める。

 

「リック!」

 

 2号機はすぐに追いかけようとするも、シャルドール・ローグ改の妨害を受ける。

 

「邪魔しないで!」

 

 ドッズライフルで追い払おうとするも、シャルドール・ローグ改はドッズバスターHで2号機の足止めを行う。

 

 

 

 

 

 

 AGE-ZEROと2号機がビシディアンを交戦を開始した頃、接近するレギーナとキングレギルスに対して3号機はハイパーメガシグマシスバズーカを向けて放つ。

 ハイパーメガシグマシスバズーカから放たれたビームを2機のMSは回避する。

 

「ほう……中々の火力を持っているな」

「陛下。陛下のレギーナとはいえあの一撃をまともに受ければただでは済みません」

「分かっている」

 

 幾らレギーナとはいえハイパーメガシグマシスバズーカの直撃はおろか掠っただけでも十分に致命傷になりうる。

 だが、3号機はハイパーメガシグマシスバズーカではなく、アームドキャノンで砲撃を行う。

 ハイパーメガシグマシスバズーカは破格の威力ではあるが、その分チャージ時間も非常にかかる。

 それを補う装備がアームドキャノンでアームドキャノンは指の部分にシグマシスキャノンが計10問内蔵されている為、単純にAGE-3 フォートレスの倍以上の火力を誇る。

 

「アレはAGEシステムを搭載した奴ではないが、あの火力は面倒だ」

「陛下」

「ああ……もう一人面倒な奴が来た物だ」

 

 レギーナはレギーナライフルを放つ。

 その先にはギルバートの4号機がビームシールドで攻撃を防ぐ。

 

「赤いガンダム……粛清委員会のガンダムか。まぁ良い。先にお前を仕留める」

 

 レギーナはレギーナビットを展開する。

 

「ネオ・ヴェイガンのガンダム……お前を仕留めさせて貰う」

 

 4号機も胞子ビットを展開する。

 2機はビットを操作しながら互いのビットを潰し合う。

 そして、4号機はビームサーベルを展開して振り下ろす。

 レギーナはレギーナライフルの実体剣でビームサーベルを受け止める。

 

「陛下」

「ちぃ!」

 

 キングレギルスが大型ビームマシンガンで4号機を牽制し、2機は離れてレギーナはレギーナビットを4号機に差し向け4号機はビームバルカンで迎撃する。

 

「陛下、奴は厄介です。二人掛かりで落とします」

「良いだろう」

 

 レギーナがレギーナライフルを放ち、4号機はビームシールドを使いつつスタングルライフルで応戦する。

 2機が撃ち合っている間にキングレギルスが4号機の後ろに回り込み、ビームマシンガンを構えるが、後方より3号機がアームドキャノンで4号機を援護する。

 

「3号機が私を援護するか……」

 

 キングレギルスがアームドキャノンを回避している間に4号機はビームサーベルを展開し、レギーナはレギーナライフルで応戦する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 GハウンドとAGE-ZEROはエンジェルの付近まで来たところでAGE-ZEROがGハウンドを蹴り飛ばして距離を取る。

 Gハウンドはドッズライフルを連射し、AGE-ZEROはビームシールドで防ぐ。

 

「この前のようにはいかねぇんだよ!」

「相手をしている暇は!」

 

 AGE-ZEROはビームバルカンでGハウンドを牽制しつつ、2号機の方に向かおうとするが、Gハウンドはアンカーシールドのアンカーを射出する。

 射出されたアンカーはAGE-ZEROの足に引っかかるが、電撃を流す前にアンカーは振り払われる。

 そして、AGE-ZEROはDCドッズライフルⅡBをGハウンドに向ける。

 

「何? 何か……来る」

 

 引き金を引く前にリックは何かを感じ取る。

 それは今までに感じた事のない感覚だ。

 どこか無機質な感じで気味が悪い。

 そして、エンジェルの方からAGE-ZEROとGハウンドに対して無数のビームが放たれる。

 

「コロニーからの攻撃!」

「待ち伏せか! どこの野郎だ!」

 

 2機は回避行動を取るが、ビームの数が多くシールドを使って防ぐ。

 ビームが止むとそれは現れた。

 

「MS?」

「おいおい……何だアイツはよ!」

 

 リックとアンナはそれを見て驚く。

 それはとてもMSには見えない形状をしていた。

 シド・スレイヴ……それがエンジェルから大量に出て来たのだった。

 シドの事を知らない2人からすれば得体の知れない謎のMSだ。

 シド・スレイヴは2機に向かって来る。

 AGE-ZEROはシド・スレイヴにDCドッズライフルを放つ。

 射線上のシド・スレイヴは破壊出来るも数が多すぎる為、焼石に水だ。

 

「糞ったれ! 何だよこいつら!」

 

 GハウンドもドッズライフルⅡBを連射するが、数が多すぎる為大した効果はない。

 

「このままじゃ、僕もあのMSの人も……」

 

 シド・スレイヴの攻撃を回避しつつ撃破しているが、数の差はそう簡単には埋める事は出来ない。

 すでにシド・スレイヴは他のMSまで到達している為、周囲にはシド・スレイヴばかりで後退も容易ではない。

 

「アレは……」

 

 リックはシド・スレイヴの相手をしながらある事に気が付いた。

 エンジェルの宇宙港の入口と思われる場所が見えるがそこにはシド・スレイヴの姿はない。

 シド・スレイヴがエンジェルの中から出て来ている事は確かだが、宇宙港の付近にはいないのかも知れない。

 それに数が多い為、狭い空間に逃げ込めば少しは戦い易くもなる。

 AGE-ZEROはGハウンドの方向にDCドッズライフルを撃ち込む。

 そして、Gハウンドの方に向かい、DCドッズライフルを腰につけるとGハウンドを掴むとビームシールドを展開して強引にエンジェルの方に向かう。

 

「てめぇ! 何しやがる!」

 

 アンナはいきなりAGE-ZEROに引っ張られてた為、頭に血が昇るが通信が繋がれていないのでリックに届く事は無い。

 強引にシド・スレイヴを突破して2機はエンジェルの宇宙港に滑り込む。

 

「追って来ない?」

「どういう事だよ。これは?」

 

 妙な事に突破して宇宙港に入り込んだ2機の事にはまるで関心がないようにシド・スレイヴは宇宙港には来ない。

 理由は分からないが、シド・スレイヴの脅威から一時的にしろ逃れたと言う事になる。

 

「あの……聞こえますか?」

「あ?」

 

 一時的に何とかなったとはいえ、外にはシド・スレイヴが大量に残されている。

 リックはオープンチャンネルでGハウンドに通信を入れた。

 

「この状況では協力をしないとどちらも生き残る事は出来ません。協力しませんか?」

 

 リックはアンナに協力を求めた。

 リックもアンナも母艦に帰投しなければならない。

 その為には協力してこの状況を切り抜けなければならない。

 

「……ちっ、しゃぁねな。何か策があんのかよ?」

 

 アンナもガンダムと協力する事は気が進まないが、ここで死ぬ訳にはいかない。

 単機でガンダムに仕掛けて訳の分からない相手のせいで死ぬなど、笑い種でしかない。

 死んで笑い種になるくらいなら、気が進まずともガンダムと協力して生き延びる方を選べる程にアンナも大人だ。

 

「まだないですけど、アレがここから出て来ている事は確かです。アレに人の気配はしませんからコロニーのどこかにアレを操作している人か制御している装置がある筈です」

「そいつを何とかすればここから脱出も出来るって訳か……」

「そうです。ここから奥に進めます」

 

 幸いな事に2人がいるのは宇宙港だ。 

 宇宙港ならばコロニー内に入り込む道は必ずある。

 そこから中に入り込む事が出来ればシド・スレイヴを遠隔操作している物を止める事も可能かも知れない。

 リックとアンナはシド・スレイヴを止める為にエンジェルの奥へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リックとアンナがエンジェルの奥に進んでいる頃、外では戦闘が継続していた。

 突如、現れた大量のシド・スレイヴは陣営に関係なしに無差別に攻撃を行っている。

 

「なぜ、シド・スレイヴはこんなに……」

 

 戦場の大半はシドの事を知らないが、アセムは過去にシドと交戦経験がある。

 その時にシド・スレイヴとも交戦している。

 だが、そのシドはクライドがEXA-DBを手に入れた時に完全に制御されていた。

 シドはクライドの手からネオ・ヴェイガンを経由してUIEに渡りそこで量産された。

 その大半はすでに失われているが、シド・スレイヴはクライドも必要以上に量産してはいなかった。

 それ以上にここにシド・スレイヴが出て来る事自体がおかしい。

 以前にここで戦闘をした時には出て来なかったと言う事はあの戦闘後に何者かがシド・スレイヴを放ったと言う事になる。

 その心当たりはクライドしか考えられない。

 

「ガンダムに帰投命令を出せ! ゼロの現在位置は!」

「現在、ゼロのシグナルはロストしています! 最後に捕捉した地点はエンジェルの内部に入ったところまでは……」

「なら、2号機だけでも帰投命令を出せ。3号機にも援護するように伝えろ」

 

 AGE-ZEROが最後に捕捉されたのがエンジェルの内部であれば上手く隠れる事も出来るだろう。

 この状況でシド・スレイヴを突破してエンジェルに向かうのは不可能だ。

 何かしらの策を講じる必要がある為、ここは2号機と3号機も帰投させる。

 

「何なのよ! こいつら! うじゃうじゃと!」

 

 エイミーの2号機はドッズライフルでシド・スレイヴを撃墜する。

 シド・スレイヴによってすでにシャルドール・ローグ改は何機かは撃墜されている。

 今はビシディアンもエイミーよりもシド・スレイヴの方を対処している。

 2号機は背部のシグマシスキャノンとドッズライフルを放つ。 

 シャルドール・ローグ改よりかはマシだが数が多い為、余り意味はない。

 だが、後方から3号機がハイパーメガシグマシスバズーカでシド・スレイヴを一気に撃墜する。

 

「バートン! 俺が援護する! ディーヴァまで帰投しろ!」

「でも、リックがまだ!」

「アスノは無事にコロニー内に退避している。お前まで戻らないとディーヴァも動けない!」

「……分かりました」

 

 エイミーは納得はいかないが、ドッズライフルを放ちながら後退を始める。

 3号機がアームドキャノンで援護しながら後退する。

 3号機の援護を利用してビシディアンのMSも次第にバロノークまで後退を始めている。

 

「少佐! このままでは危険です! お戻りに!」

「ああ、分かっている」

 

 ネオ・ヴェイガンと交戦していたギルバートも今はシド・スレイヴの相手をしている。

 同様にヴァレンティナもヴァレリもだ。

 

「敵がいると言うのに……だが、これではまともに戦えん」

 

 4号機は胞子ビットを展開して弾幕を張り退避を始める。

 

「虫けら風情が……」

「陛下、これ以上の戦闘は避けるべきです」

 

 レギーナはレギーナライフルを連射し、レギーナビットを展開する。

 キングレギルスはビームバスターでシド・スレイヴを一掃して退路を切り開く。

 レギーナビットを機雷替わりに残しつつレギーナとキングレギルスも後退する。

 ディーヴァ、ネオ・ヴェイガン、ビシディアン、粛清委員会の全てのMSが後退を始めある程度、エンジェルから離れるとシド・スレイヴの攻撃や追撃はパタリと止んでエンジェルから一定の距離を保ったまま待機していた。

 

 

 

 

 

 

 コロニーの奥に進むリックとアンナは物資搬入用の通路を通っていた。

 MSが通るのには十分な広さがあり進む事が出来る。

 初めは順調に進んでいたが、やがて行き止まりにぶつかる。

 

「行き止まりかよ。一本道だったし、ぶっ壊すか?」

「待ってください。ここには何があるか分かりませんから不用意に壊すのは危険です」

 

 Gハウンドが壁にドッズライフルⅡBを向けるのをリックは止める。

 エンジェルの内部には何があるか分からない。

 下手に破壊して誘爆でも起こしたら自分達も巻き込まれかねない。

 

「んじゃどうすんだよ。港まで戻っても仕方がないだろ」

「あそこに扉があります。MSはここに置いて進みましょう」

 

 MSで進む事は出来ないが、通路の脇にキャットウォークがあり、そこには扉が見える。 

 そこから中に入る事が出来そうだった。

 

「仕方がねぇか……」

 

 不用意に破壊する危険性はアンナも分からないでも無い為、壁を破壊するのではなくMSを降りて移動する案にアンナも賛成し、機体のハッチを開けて外に出る。

 リックも機体から降りて扉の方に向かう。

 

「……お前……あの時の坊やじゃねぇか!」

「えっと……」

 

 扉のところで合流するが、アンナはリックの顔に見覚えがあり覗き込んで良く見ると思いだした。

 マッドーナ工房で絡まれていた少年であると。

 

「てめぇがガンダムのパイロットかよ!」

 

 アンナはリックのパイロットスーツに掴みかかる。

 

「ちょっと、待って下さい! 今はそんな事をしている場合では……」

「ちっ……後で覚えてろよ」

 

 アンナは捨て台詞を吐いてリックを解放する。

 リックは扉の横についているコンソールを弄る。

 

「開きそうか?」

「少し待って下さい……良かった。システムも生きてるし電気も通ってる。これなら……」

 

 エンジェルは何十年も前に破棄されているが、クライドが根城にしていた為、今でもシステムも生きている。

 電子ロックである為、システムや電気が通ってなければ最悪、MSを使ってこじ開ける必要があったが、システムが生きていれば強引な策を取る必要もない。

 リックはAGEデバイスを端末に繋ぐ。

 AGEデバイスはAGEシステムに必要な端末として使う以外にも使い道は多い。

 今回のように電子ロックの解除にも一役買う事も出来た。

 AGEデバイスの演算能力で電子ロックのパスワードを入力してロックが解除されて扉は開く。

 

「すげぇな。それ」

「これは僕の家に代々伝わる家宝なんです」

 

 扉が開き二人は先に進む。

 何が出て来てもおかしくは無い為、二人は慎重に進んでいる。

 

「あの……まだ、名前を聞いてませんでしたよね。僕はリック・アスノです。貴女は?」

「お前……アスノ家の人間かよ。アタシはアンナだ。キャプテンアンナ」

「貴女が海賊のキャプテンなんですか?」

「悪いか?」

 

 アンナは少し機嫌が悪くなり、リックもそれ以上は触れる事はしない。

 こういう時に下手に藪蛇を突けば手ひどいしっぺ返しに会うからだ。

 

「アンナさんはどうして海賊に?」

「んな事を普通に聞くのな」

 

 リックの質問にアンナは呆れている。

 海賊になった理由の大半は人に話して気分の良いものではない。

 それは大抵の海賊に当てはまる事で余り詮索をしないのが暗黙のルールでもあった。

 

「アタシの親父が前のキャプテンでな。アタシはその後を継いだだけだ」

 

 アンナの場合は特に重い理由があった訳でも隠す程の事でも無い為、素直に話した。

 

「そうなんですか? 後、どうして僕達を? 僕達は特に海賊に恨みを買う事はしてませんが……」

「別に……ただ、ディーヴァに新型のガンダムを搭載しているって噂を耳にしてよ。眉唾物だと思ってたところにディーヴァがいただけだ」

「そうだったんですか……でも、海賊だからって船を襲う事は駄目だと思います」

「おいおい。アタシ等は海賊だぜ? 寝ぼけてんのか?」

 

 海賊が海賊行為を行う事は至極当然の事でそれを平然と駄目と言ったリックをアンナは笑い飛ばす。

 だが、一方のリックはきょとんとしていた。

 

「海賊は宝物を探す事が目的ですよね。だったら、強盗なんかしないで秘宝を探すべきですよ」

「何言ってんだ?」

 

 アンナもリックと自分の間に何か、致命的な誤解があるように思えて来た。

 確かに海賊がお宝を探すと言うのは間違っている訳ではない。

 だが、海賊の仕事と言えば宝探しよりも海賊行為の方が正しい。

 

「だって僕のお爺ちゃんも昔は宇宙海賊ビシディアンを率いて地球圏を航海して宝探しの日々を送っていたそうですよ」

「は? お前……何言って」

「僕は小さい頃にお爺ちゃんからいろいろと聞きました」

 

 リックの海賊への認識の違いはそこにあった。

 アセムはリックがまだ小さい頃に海賊時代の話しを良くしていた。

 アセムはキャプテンアッシュとしてビシディアンを率いていた頃にはEXA-DBと言う秘宝を探して地球圏の至るところを航海していた。

 その時の話しを脚色を加えてリックに話していた。

 そこに連邦軍やヴェイガンを襲い物資や情報を奪っていた事は一切含まれずまるで冒険譚のように聞かせていた。

 今の時代、海賊は余り表に出る事は無い為、リックの中の認識と実際の海賊とはずれがあるのも当然だ。

 だが、そんな事よりもアンナはリックがさらりと重要な事を言っている事に食いついた。

 

「お前の爺さんがビシディアンを率いていただと?」

「ええ……当時はキャプテンアッシュと名乗っていたみたいですね」

「マジかよ……」

 

 アンナは言葉を失っていた。

 アンナも当然の事ながらキャプテンアッシュの名は知っている。

 素性や経歴に関しては知る者は今のビシディアンにはいないが、ダークハウンドを巧みに操って当時の新型のガンダムでさえ圧倒出来る程の腕を持っていた為、一説にはダークハウンドのベース機であるAGE-2のパイロットのアセム・アスノだったのではないかと噂されていた。

 それが本当であるのなら、ガンダムに乗るアスノ家の人間であるリックの祖父がキャプテンアッシュと同一人物であっても不思議ではない。

 

「で……お前の爺さ……お爺さんは今も健在なのか?」

「はい。今はディーヴァの指揮を執ってます」

 

 リックの言葉にアンナは顔を引きつらせる。

 キャプテンアッシュがディーヴァの指揮を執っている。

 つまりはアンナは畏れ多くもキャプテンアッシュに喧嘩を売ったと言う事になる。

 

「なぁ……リック、キャプテンアッシュはアタシ等の事をさ……怒ってたりはしなかったか?」

「特には……あれで諦めてくれるといいとは言ってましたけど」

「そっか……」

 

 アンナは一先ず安心できた。

 今のビシディアンを預かるアンナとしてはかつてのキャプテンであるアセムに喧嘩を売った事は一大事だったが、アセムの方は特にビシディアンに対して怒りを覚えていないと言うのであれば不幸中の幸いだ。

 そうこう話しているうちに二人は広い部屋に出る。 

 入って来た扉が閉まると部屋に空気が流れ込んでくる。

 

「空気が入ったようだけど……」

 

 リックとアンナはヘルメットを取って辺りを見渡す。

 部屋は広いが当たり一面にモニター類があり通路に続く扉は見当たらない。

 

「おい、リック。こっちに来いよ」

「どうしたんです?」

 

 アンナは部屋の中央にある人が入る程の大きさのカプセルを覗き込んでいる。

 アンナに呼ばれてリックはカプセルの中を覗き込む。

 そして、カプセルの中を見てそれが何かを理解すると顔を真っ赤にして視界を反らす。

 アンナはその反応が分かっていたのか笑いを堪えている。

 カプセルの中には一糸纏わぬ姿の少女が眠っていた。

 

「アンナさん……何ですか」

「こりゃ、コールドスリープか何かだろ……それにしてもでけぇな」

「何がですか!」

 

 コールドスリープで眠っている少女の胸を見てアンナは呟く。

 リックは余り耐性が無い為、少女を直視できない。

 

「たく……ガキかよ。お前は……けど、本当に生きてるのか? まるで人形みたいだな」

 

 眠っている少女は艶やかな黒髪に顔や体の造形がまるで人為的に作られたかのような美しさがあり、本当に人間なのか疑わしくも思えて来る。

 アンナはコールドスリープ装置を適当に触る。

 すると、コールドスリープ装置のハッチが開いた。

 

「おっ空いたぞ」

「アンナさん! 不要に触るのは危険ですって!」

 

 リックが叫ぶが時はすでに遅い。

 コールドスリープから目覚めて体を起こした。

 少女は目を開くとリックの存在に気付いたのはリックの方を見る。

 金と碧の目をした少女に見つめられてリックは顔を背ける事が出来ない。

 まるで蛇に睨まれているかのようだった。

 そして、少女はリックに対してニコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。