機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

142 / 155
第132話

 

 

 ディーヴァがインド洋に降下し、海賊の襲撃を受けてたが退ける事には成功した。

 しかし、リックの行方は未だ分からず、ディーヴァも下手に動く事は出来ない為、状況は未だに好転の兆しを見せてはいない。

 

「2号機の今回の偵察範囲はこの辺りです。この辺りにいないとなれば次は範囲を広げる必要がありますね。ただ、海中深くに沈んでしまっていては空中からでは発見する事は困難でしょう。例の海賊は恐らくはネオ・ヴェイガンの息がかかっていると思われます。ディーヴァも速やかに離脱する必要があります」

「それでも探すしかないだろう。EXA-DBに辿りつく為にはAGEデバイスが不可欠だそうだからな」

 

 リックの捜索に出したエイミーは少し前に帰投したが成果は得られなかった。

 今は代わりにアンナを捜索に出してはいるが、2号機程の行動範囲は無い為、成果は期待できない。

 空中からでの捜索はAGE-ZEROが海面に出ているが島にいないと見つける事は非常に困難だ。

 先の戦闘では水中型ジェノアスやアデル・ダイバーの他に旧ヴェイガンの水陸両用MSであるウロッゾが出て来た。

 ウロッゾはすでにデータを取った上で大半が廃棄処分となっている。

 ヴェイガンの技術者を連邦軍に取り入れたがヴェイガン系のMSを残すと言う事はしたくないと言う政府の思惑による物だ。

 その為、ウロッゾは一般には出回っておらずヴェイガン系のMSとも部品の互換性は少ない事もあり運用するにはそれなりの後ろ盾が必要になって来る。

 それを問題なく運用できていると言う事は襲撃して来た海賊はただの海賊ではないと言う事だ。

 今の情勢から考えるとそれが可能なのはネオ・ヴェイガンくらいだ。

 一度は退ける事は出来たが、何度も襲撃を受ければいずれは持たなくなる事は明白でローザは速いところここから離れる事を進言するが、EXA-DBを手に入れる為の次の目的地のアンバットに辿り付いたとしてもAGEデバイスがなければ意味がない。

 ローザにはそう説明するがそれ以上にアセムはリックの安否が心配だ。

 あれからすでに1日近くが経過している。

 訓練を積んだ正規のパイロットであればMSのコックピットの中で何日も過ごす事は訓練している為、可能だがリックはそこまでの訓練はしていない。

 AGE-ZEROの中にも最低限の水や食料は積んでいる為、餓死の心配はないがそれでもコックピットと言う閉鎖空間で長時間いるのは精神的な負担は大きいだろう。

 どこかの島にでも落ちていれば機体の外に出る事は出来るかも知れないがリックの置かれている状況が分からない以上、機体から出られると言うのは希望的憶測に過ぎない。

 

「それは理解しています。しかし、海賊を何とかしないと後々面倒なのも事実です。そこでこちらから打って出ると言うのはどうでしょう」

「具体的な案はあるのか?」

「すでに作戦の構築は終えています。後は艦長の承認を得て実行に移すだけです」

 

 ローザはアセムにデータディスクを渡す。

 あの戦闘の後、ローザはすぐに海賊に対する反撃作戦を考えていた。

 アセムはローザの立てた作戦に目を通す。

 

「流石と言ったところか……」

 

 作戦の内容を確認したアセムはローザの立てた作戦に素直に関心している。

 戦闘から数時間でそれも限られた戦力でここまでの作戦を立てられるのはそうそういない。

 

「だが、作戦の要は1号機だが、修理の方はともかくパイロットが負傷している為すぐには出せないぞ」

「承知しています。ですので1号機には私が乗ります」

 

 ローザの立てた作戦において必要不可欠な戦力が1号機だ。

 1号機は索敵能力に秀でている為、敵母艦を見つけるのは最も適している。

 敵母艦のおおよその位置は前回の戦闘で撤退した敵MSの撤退ルートからおおよその位置はすでに割り出している。

 そこから移動したとしてもこちらへの攻撃の意志がある場合はこの辺りの海域から大きく離れる事は無いだろう。

 1号機の索敵システムを使えば例え見えざる傘を使ったとしても位置を特定する事は十分に可能だ。

 敵も今は次の攻撃に備えての準備をしていると推測でき、敵がこちらを攻撃しようと準備をしているところにこちらから打って出れば不意を付く事も出来る。

 だが、問題はパイロットにある。

 作戦上、1号機は単機で敵母艦を強襲する事になる。

 その為、1号機のパイロットにはある程度の実力が要求される。

 単純な能力では搦め手でさえ来なければエリスは申し分ない。

 しかし、エリスは負傷で暫くはMSで戦う事は出来ない。

 他のガンダムのパイロットを宛がうにしてもディーヴァの防衛を手薄にする訳にはいかない。

 そこでローザは自分が1号機に乗ると考えていた。

 ローザの腕なら問題なく1号機を乗りこなせる事は出来る。

 ローザが乗って来たジェネシスカスタムは予備パーツが揃っていない事もあり出来るだけ温存したい為、ローザがパイロット不在の1号機に乗ると言う事は理に適っている。

 問題があるとすればエリスだ。

 1号機の正式なパイロットとなった訳ではないが、すでにエリスは1号機は自分の専用の機体だと言い張るだろう。

 そんなエリスを説き伏せるのは至難の業だ。

 どんなに論理的に説明しようともエリスは自分の感情を優先するだろう。

 感情で動く人間にはどんな理論も理屈も通用しない。

 

「好きにしろ」

 

 どうやってエリスを説得しようか考えていると医務室にいる筈のエリスがいつの間にかブリーフィングルームに入り込んでそう言う。

 片腕を三角巾で吊るし頭や腕、足などに包帯などの治療の後が見てとれる為非常に痛々しい。

 

「艦長。彼女が1号機の……」

「そうだ。エリス・アスノ。俺の従兄妹に当たる」

「彼女が……」

 

 アセムに紹介されるが、ローザも素直にエリスが1号機のパイロットだとは信じる事は出来ない。

 見た限りでは怪我さえなければ普通の少女にしか見えない。

 いつの間にか表舞台から姿を消した伝説の傭兵フォルス・マースカイザーやネオ・ヴェイガンの初代女帝としてその悪名を残したヴァニス・イゼルカントとしての記録は大量に残されているが、エリス・アスノとしての公式記録は一切残されてはいない。

 だが、アセムの紹介でエリスもまたアスノ家の人間であるのであればあれほどの戦いが出来るのも納得してしまう所がある。

 

「まぁ、そんな事はどうでも良い。私のガンダムを使いたいんだろ?」

「こちらとしても助かるが良いのか?」

「アレは中々の物だが、特段愛着がある訳ではないからな」

 

 1号機の性能はエリスが自分の搭乗機にするのには及第点を出しても良いが、他人に渡したくないと思える程の性能と言う訳ではない。

 これは1号機の性能が悪いと言う訳ではなく、かつてのエリスの搭乗機であるガンダムZERO Zの性能が今の時代においても破格の性能であるせいだ。

 

「そんな訳でアレを使いたくば好きにすれば良い。但し、壊してくれるなよ。ゼータに劣るにしてもアレは私のだ」

 

 1号機はZ程の愛着は持ってはいない為、他人に貸す事に抵抗はないがやはり自分の機体を失うと言うのは面白くはない。

 

「その代わりに私の方からも少しやりたい事がある」

 

 そう言いにやりとするエリスにアセムは嫌な予感しかしなかった。

 それから数時間後にはアンナが帰投し、再び2号機を出す用意が進められていた。

 

「本当に大丈夫なの?」

「気にするな。この程度はかすり傷だ」

「……かすり傷じゃないって……」

 

 2号機のコックピットにはエイミーだけでなくサブシートを取り付けてエリスも乗っていた。

 エリスがやりたいと言った事は自身がリックの捜索に出ると言う事だ。

 名目上はエリスのXラウンダー能力を使ってのリックの捜索だが、実際のところ負傷で直接MSに乗る事が出来ずに退屈していた為の退屈凌ぎだったが、アセムとしても少しでもリックを見つける確率が上がるのであれば今はエリスの真意など気にしている余裕はない。

 

「エイミー、エリス。リックの事は任せた」

「任せて下さい」

 

 2号機の出撃準備が整いディーヴァから2号機は射出されストライダー形態に変形した2号機はリックの捜索に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディーヴァが身を隠している無人島から遠く離れた小島に同じく地球に降下したガンダムAGE-ZEROが仰向けで倒れていた。

 地球に降下する時にスラスターを使って勢いを殺したが小島に落ちた衝撃でリックは今まで意識を失っている。

 降下から丸一日近くが経ってようやくリックは意識を取り戻した。

 

「ここは……地球?」

 

 モニターには見渡す限りの大海原が映されている。

 意識が戻ってもはっきりはしなかったが、次第に意識がはっきりして来る。

 機体の状態を確かめるが所々損傷が見られるが機体を動かす事は可能だった。

 次に周囲の確認を行うが、周囲は海しか見えずレーダーにもディーヴァを捕える事は出来ない。

 

「ガンダムは何とか無事みたいだけど……これからどうしよう」

 

 一先ず機体が動かせるがAGE-ZEROは大気圏内での飛行能力を持たない。

 スラスターを使ってある程度の時間は飛び上がる事は可能だが、ディーヴァや他の島を見つけてそこに到着するまで飛んでいられるとは限らない。

 水中での行動は可能ではあるが、陸上や宇宙に比べるとビーム兵器が使えない為、もしもの時には対処が出来ない。

 今のリックに出来る事はここで不用意に動く事はぜすに助けを待つ事だが、正規の訓練を受けていないリックには具体的に救助を待つ為にしなければならない事と言われてもピンとは来ない。

 

「とにかく、人がいないか探そう」

 

 現在リックがいる小島に人がいれば助けを求める事は可能かも知れない。

 場合によっては通信手段が確立されていればどこかしらに助けを呼ぶ事も出来るかも知れない。

 無人島である可能性も否定は出来ないが、今リックが思いつける事はこの程度しかない。

 だが、その希望はすぐに打ち砕かれた。

 AGE-ZEROで少し移動するだけですぐに対岸についてしまった。

 

「この島は余り広くないんだね」

 

 少し移動して対岸に付いた事からリックが落ちて来た小島は無人島である可能性が出て来た。

 だが、不意にリックはモニターの隅にある物を見つけた。

 

「アレは……5号機?」

 

 そこにはリックと戦いながら地球に降下したヴァネッサの5号機が同じようにこの島に落ちたのか倒れている。

 リックは警戒しつつ接近するが、5号機はピクリとも反応しない。

 

「先輩? 聞こえますか?」

 

 リックはオープンチャンネルで呼びかけるもヴァネッサは一切の反応を示さない。

 5号機にヴァネッサが乗っていると言う事は確かに感じるがヴァネッサは反応しない。

 リックは倒れている5号機の近くまで近づくと機体の手を5号機のハッチまで移動させると機体から降りる。

 幸い5号機も仰向けに倒れている為、ハッチの横に向かう事は簡単でリックでも十分に移動は出来た。

 ハッチの横で外部から強制的に5号機のハッチを開けるとリックはコックピットの中を覗き込む。

 

「先輩!」

 

 コックピットのシートにはヴァネッサが座っているが、力なくうな垂れている。

 パイロットスーツのヘルメットは強い衝撃を受けたのかヒビが入っており顔までは確認できないがヴァネッサである事は疑いようもない。

 その様子からヴァネッサは未だに意識を取り戻していないと言う事が分かる。

 リックはコックピットに入り込みヴァネッサからヘルメットを外す。

 レーアツァイトにいたころは眼鏡をかけていたが、かけていなくてもヴァネッサの顔を見間違える訳はない。

 ヴァネッサは意識を失っているが、頭を強く打ったのか額から血が流れているが出血の量から大した事は無いと思われるが、頭を打っているので余り楽観視も出来ないだろう。

 

「先輩! 大丈夫ですか!」

 

 リックはヴァネッサの肩を掴むとヴァネッサを揺らして声を掛ける。

 すると、ヴァネッサはうっすらを目を開ける。

 レーアツァイトにいた時はカラーコンタクトをしていたが、今はしていない為、リックはヴァネッサの両目の色が違うと言う事を気を取られる。

 その一瞬の内にヴァネッサも目の前にいる相手がリックであると認識していた。

 リックであると認識したヴァネッサは殆ど反射的に自分の肩を掴んでいるリックの片腕を掴んで捻りあげるとすぐにリックの向きを反転させて片腕を抑えつつ後ろから腕を掴んでいるのとは違う腕でリックの首を絞める。

 

「先、輩……」

 

 いきなりの事で戸惑うリックを余所にヴァネッサは周囲の状態を確かめている。

 

「地球に降下したようね」

 

 ヴァネッサも自分の置かれた立場を理解したようだが、リックの方はそれどころではない。

 華奢なヴァネッサからはとても想像できない力で首を締められている。

 何とか意識を保ってられているが、余り長時間は持ちそうにない。

 このままでは確実に窒息するが、その前にヴァネッサは腕を力を緩めてリックの背中を軽く蹴り機体の外に追い出した。

 

「ガンダムに乗れ」

 

 5号機から追い出されたリックはAGE-ZEROの掌に転げ落ちて咳き込む。

 ヴァネッサはリックを追い出すとハッチを閉めて機体を起動させる。

 

「状況は余り良くないか……だが、まだ戦いは終わった訳ではない」

「先輩!」

 

 5号機の状態は降下時の影響で余り良い状態とは言えない。

 しかし、目の前にガンダムがいる以上は戦闘は継続している。

 例えリックに戦闘の意志がなくてもだ。

 だからこそ、あのまま首をへし折ってリックを殺す事も出来たがそれをしなかったのはガンダムを倒す為にはリックを殺す訳にはいかないからでもあった。

 機体を起動させて5号機はAGE-ZEROから距離を取る。

 ヴァネッサが未だに戦う気でいると言う事を否応なく突きつけられてリックもAGE-ZEROに乗り込む。

 

「先輩! 今は僕達が戦っている状況では!」

「知った事か!」

 

 リックの話しに耳を傾ける事もなく5号機は両腕にビームサーベルを展開して切りかかって来る。

 AGE-ZEROは後ろに飛び退いて5号機の攻撃を回避するが、5号機は連続でビームサーベルを振るいAGE-ZEROを追い詰める。

 島全体が小さい事もあり、AGE-ZEROはすぐに島の端にまで追い込まれてしまう。

 

「これ以上逃げ場はない!」

 

 5号機がビームサーベルを振り下ろしAGE-ZEROはビームシールドを展開して受け止める。

 もう片方のビームサーベルを下から振り上げようとするが、それよりも速くAGE-ZEROはスラスターを最大出力で使い5号機に突っ込んだ。

 

「くっ!」

 

 そして、そのまま5号機を押し倒すように倒れ込んで取り押さえた。

 

「もう……止めて下さい。こんなところで戦っても無意味です!」

 

 リックは機体のハッチを開閉して身を乗り出す。

 今のリックに出来る事はこうして自分に敵意がないと言う事を示す事くらいだ。

 一度、動きを封じられて少しは頭が冷えたヴァネッサも敵を前にコックピットから出るリックの行動に戸惑っている。

 取り押さえられているとはいえ、5号機が胸部のビームバスターを放てばリックは一瞬に消し炭となるだろう。

 それが分かっていて出て来ているのはヴァネッサがそんな事をしないと信じているからだ。

 

「だから一度ちゃんと話しをしましょう。そうすればきっと……」

「今更、何を話すというのだ! 私はガンダムを倒しアスノ家を根絶やしにする! それ以外の事などどうでも良い!」

 

 5号機はAGE-ZEROに膝蹴りを入れるとAGE-ZEROは体勢を崩し、リックは機体から振り落とされないようにコックピットに戻りハッチを閉じる。

 AGE-ZEROが大勢を崩している隙に5号機はAGE-ZEROの拘束をすり抜けて距離を取る。

 そして、再びビームサーベルを展開して構える。

 

「先輩……」

「所詮は私もお前も戦う以外の道はありはしない」

「そんな事はないです! 戦わない道を選ぶ事だってできます! 今の世界だってそうです!」

「違うな。今の世界も戦いによって勝ち取られた世界に過ぎない!」

 

 それは見解の相違であった。

 リックからすれば今の世界は連邦軍とヴェイガンが共に共存して造られた世界だ。

 しかし、ヴァネッサからすれば自身の母であるヴァニスをキオが倒した事によって造られた世界であった。

 どちらの見解も正しい。

 

「お前が私が戦うのを止めたいと言うのであれば私を殺すしかない!」

「そんな事!」

 

 5号機はビームサーベルを振り下ろそうとするが別方向からビームが飛んで来た為、シールドライフルでビームを弾いた。

 

「リック! 生きてる!」

「エイミー!」

 

 それはリックを捜索する為にエリスと共にディーヴァから出て来たエイミーの2号機であった。

 リックが戦闘をしていた為、エリスもリックのXラウンダー能力を感じ取り易かった事もありディーヴァを出てすぐにリックの気配を感知する事が出来ていた。

 それによってすぐにリックの元まで来る事が出来た。

 

「乗って!」

 

 2号機がドッズライフルで5号機を牽制しつつ高度を下げてAGE-ZEROは2号機の背に飛び乗る。

 

「このままディーヴァまで逃げ切るわ! リックはアイツが追っかけて来るのを何とかしてよ!」

「……分かった」

 

 AGE-ZEROが乗っている為、ストライダー形態とはいえいつもの速度は出せない。

 その為、光波推進システムを搭載し重力下でも飛行可能な5号機を振り切る事は難しい事もありAGE-ZEROの協力も振り切る為には必要だ。

 

「逃がすか!」

 

 ヴァネッサも逃がす気は毛頭ないらしく、AGE-ZEROと2号機を追いかけようとするが光波推進システムが軽く爆発して煙を上げて出力が低下する。

 

「こんな時に……」

 

 元々、地球に降下した時に機体のいたるところに損傷があり決して万全の状態とは言えなかったが光波推進システムがこのタイミングで使えなくなるのはタイミングが悪いとしか言いようは無い。

 光波推進システムが使えない以上、5号機はスラスターを使っての移動が出来ず当然空中に浮く事も出来ない。

 飛べなくなった5号機は2号機に乗って離れていくAGE-ZEROをただ見逃すしかなかった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 AGE-ZEROを回収した2号機は速やかにディーヴァへと帰投した。

 幸いその道中で敵と出くわす事は無かった為、問題なく帰投する事が出来た。

 ディーヴァに着艦したAGE-ZEROと2号機は格納庫のハンガーに収容されるとリックは機体から降りて来る。

 

「リック! お前、心配させやがって!」

「アンナさん」

 

 リックの無事を知りいても経っても居られなかったアンナはリックが機体から降りるとすぐにリックの元に駆け寄りヘッドロックをかける。

 

「こいつは心配させたバツだ!」

 

 アンナ自身、リックに罰を与えると言っているが、実質的にはリックが無事に戻った事に対する嬉しさの表れでもある事は見た目の割にリックに対するダメージが少ない事からも伺える。

 そんな様子を2号機から降りて来たエイミーは少し面白そうでない表情をしている。

 

「その辺りにしては貰えないか?」

 

 リックの無事の知らせにいてもたっても居られないのはアンナだけではない。

 ブリッジで指示を出していたアセムもまたそうだった。

 今は艦長と言う立場もある為、不用意にブリッジを離れる事は出来ない事もあって最低限の指示を出して格納庫までやって来た。

 

「……キャプテンがそう言うなら仕方がねぇ……今日のところはこのくらいで勘弁してやる。次はこの程度じゃすまさねぇからな。覚悟しとけよ」

 

 アンナは渋々リックを解放する。

 

「お爺ちゃん」

「余り心配を掛けさせるな」

「ごめん」

「謝る事は無いさ。こうしてリックが無事に戻ってくればそれで良い」

 

 アセムの言葉にリックも少し安心した表情を浮かべるが、小島での戦闘でヴァネッサとまともに話せなかった事もあって余り浮かない様子をしている。

 

「いろいろあって疲れただろう。状況は後で伝えるから今はゆっくりと休め」

「……分かった。ありがとう。お爺ちゃん」

 

 そんな様子を地球に降下した事による疲れが出て来たと判断したアセムはリックを休ませる事にする。

 リックとしても今は一人でゆっくりとしたいと言う事もあってアセムの好意に甘えて今はゆっくりと休む事にした。

 そんなやり取りには興味が無いエリスは2号機から降りるとさっさと格納庫から出て行こうとするが、格納庫の隅でその様子を見ていたローザに気が付いた。

 

「アレが新たなガンダムのパイロットで不服か?」

 

 エリスの言葉にローザはムッとする。

 顔には出していないつもりではあったが、ローザがAGE-ZEROのパイロットであるリックを見て少し機嫌が悪くなっていると言う事をエリスは見逃してはいなかった。

 以前にマッドーナ工房に仕掛けた時にローザはリックと交戦し敗北している。

 確実に止めを刺せる状況にありながらリックは止めを刺さなかった。

 その時から一方的に敵意を持っているが、それだけではない。

 AGE-ZEROのパイロットについてはアセムの孫であると言う事はすでに知っている。

 アスノ家が歴代のガンダムのパイロットをしてヴェイガンとの戦争で多大な戦果を挙げたと言う事は連邦軍の軍人であれば常識でリックもアスノ家の血を引いているのであればあれだけの実力を持っていても納得は言った。

 だが、実際にリックを見てとてもリックがあれだけの戦いが出来るパイロットには見えない。

 

「見た目でパイロットをする訳ではないからな。まぁ、相手の命を奪う権利は勝者の物だ。その勝者が選んだ選択に文句を言う権利は敗者にはないさ」

「分かってるわ」

 

 ローザは軽くエリスを睨むと1号機の方に歩いて行く。

 ローザ自身もその事は理解しているつもりだ。

 戦場で敵と交戦した場合相手の命を奪うか否かは戦闘に勝利した方が選択する事が出来る。

 その大半は相手の命を奪うと言う選択をする事が大半だが、リックは奪わない選択をしなに過ぎない。

 その選択権は勝者の物で敗者には異を唱える権利などありはしない。

 それでも異を唱えたいのであれば自ら勝者がしなかった選択である敗者の命を奪う、つまりは自害するくらいしか反抗する事は出来ない。

 しかし、ローザはそれを選択する事は出来ない。

 自身で自身の命を奪う事で反抗したところで自分が敗北したと言う事実を変える事は出来ない。

 屈辱に耐えても生きてさえいれば再戦を行い次は勝利出来るかも知れないからだ。

 今は任務とは言えディーヴァに乗艦し、必要であればリックを守らないといけないと言う事は正直気が進まない。

 だが、任務である以上は私情を挟むと言う事は出来ない為、私情を挟まないように可能な限りリックとの接触を避けて任務に集中するしかない。

 ローザは次の作戦行動の為にエリス用の調整がされている1号機を自分用に調整する為に整備班との打ち合わせに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディーヴァのいた無人島から数キロ以上離れた海域に海賊を装っていたネオ・ヴェイガンの母艦が停泊している。

 全長が1キロの大型の戦艦だが見えざる傘を展開している為、ディーヴァのレーダーでは捉える事は出来ない。

 かつて、ヴェイガンが一掃蜂起した際に混乱の最中に地球に持ち込まれた海上母艦だ。

 地上での一斉蜂起に失敗した場合、連邦軍の水中戦力の乏しさから海に撤退すると言う手筈だった為に用意されていたが、結局奇襲は成功し地球の多くを制圧した事もあって前線で使われる事は無かった。

 しかし、今はネオ・ヴェイガンの海上でも母艦としてその性能をいかんなく発揮されている。

 

「ネッサはクリストが回収したとの報告が入った」

「それは何よりで」

 

 ヴァレンティナはカールに先ほど入った情報を伝えていた。

 カールの海上部隊とは別ルートからカールの兄であるクリストもヴァネッサの捜索に当たっていたが、クリストがヴァネッサの5号機を発見してヴァネッサの無事をヴァレンティナに報告していた。

 

「だが、ディーヴァに例のガンダムが戻ったと言う事になる」

 

 ヴァネッサからの情報でクリストと合流する前にAGE-ZEROが友軍機と合流したと言う事も報告されている。

 それはつまり、ディーヴァにAGE-ZEROが戻ったと言う事だ。

 先の戦闘はディーヴァにAGE-ZEROがいない事を言い事にAGEシステムを封じる為に先にディーヴァを仕留めたいと言う目論みがあったが、AGE-ZEROが戻った時点でその目論みは潰えた。

 

「お前だけで何とか出来るか? 何なら私も地球に降りて力を貸しても構わんぞ」

「それには及びませんぜ。先ほどディーヴァが無人島を離れたと報告されてるんですよ。戦場が海上であるなら俺のマリンクロノスで余裕ですぜ」

 

 すでにAGE-ZEROを回収したディーヴァは無人島を離れている。

 今はインド洋のど真ん中を航海している最中だ。

 無人島で仕掛けた場合は陸地があるが、今のディーヴァの周囲には陸地は無い為、ウェイボードを使っての空中戦は可能だが、海中からの攻撃に対しては無防備に近い。

 故にカールには例えAGE-ZEROがいても勝つ自信はあった。

 

「良いだろう。だが、相手はガンダムだ。油断はするなよ。ヴァレリからの指示もある。クリストの航空隊の一部を持って仕掛けろ」

「……分かりやした」

 

 カールは兄の部隊を借りると言う事は気が進まないが、ヴァレンティナの指示である以上は断る事は出来ない。

 例え部隊を借りたところでガンダムさえ仕留めてしまえばその功績は認められる。

 

「期待しているぞ」

 

 ヴァネッサはそう言って通信を問える。

 

「カール様」

 

 カールの後ろに控えていたダリウスは心配そうにしている。

 ただでさえ一度襲撃に失敗している今度は前以上に有利なフィールドで仕掛ける以上は失敗は許されない。

 

「次は俺も出る。兄貴の部隊が到着次第、俺達も仕掛ける! 奴らの船を見失うなよ!」

 

 カールの掛け声と共にクリストの部隊を待ちつつも、ディーヴァへと仕掛けるチャンスを伺い続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 AGE-ZEROを回収したディーヴァはAGE-ZEROの整備が終わるとすぐに無人島から離れて南極へと進路を取っていた。

 無人島を離れて暫くは問題なく航行していたが、やがてレーダーに多数の反応を捕えた。

 

「艦長! レーダーにMSと思しき反応を捕えました! 数は30!」

「30……多いな」

「水中にもMSが4機!」

 

 ディーヴァが動けば敵も動くと言う事は予測していた通りではあったが、敵の数は予想を遥かに上回っていた。

 そして、空中から接近するMS群の映像がモニターに写し出された。

 そこにはおおよそMSには思えないMSが多数映されている。

 パッと見ではガフランにも見えるMSはネオ・ヴェイガンが開発した無人攻撃用MSガフだ。

 ガフはガフランをベースに開発されたが、基本的にガフランの設計を流量されている。

 だが、ガフランとの大きな違いは下半身がないと言う事だ。

 上半身はガフランと大差はないが、無人機である為、頭部のコックピットは省略されている。

 ガフは完全に使い捨てを前提にされている為、徹底的に無駄を省いた結果下半身が丸ごと省かれていた。

 それ以外にも尾は格納庫などに置いておく為に両腕と尾をスタンドとして機体を支えるだけの役目しかない為、内部にはビームライフルの銃身などはないただの飾りと化している。

 両腕のビームバルカンはビームサーベルとしての機能を無くした腕でビームの出力が若干向上させている。

 それ以外の装備は機体下部に位置する拡散ビーム砲のみだ。

 機体の下半身がなくなった事で単純計算で重量が半分になったため、ガフランに比べて機動力は向上し、生産コストはダナジン1機分で10機のガフが製造できる。

 

「艦長……どうします」

 

 予想以上の数の多さにビビりながらエディはアセムの判断を仰ぐ。

 数こそは予想以上ではあったが、ガフはすでに何度も連邦軍との交戦記録は残されている。

 それによれば数こそは多いが性能的には1機当たりはガフランにも劣るとされている。

 

「ガンダムとGハウンドを出す。3号機は甲板にて接近する敵MSの迎撃を2号機とGハウンドは上空の敵に対処、ゼロには水中戦用の装備で水中からの敵に備えさせろ。アデル隊もいつでも出せるように準備をさせて置け。それと中尉に作戦の開始を伝えろ」

 

 数が多くとも対処出来ない数ではない。

 よってアセムはローザが立案した作戦の開始を決めた。

 すでに作戦の為にローザは1号機にて別行動をしている。

 アデル・ガーディアを出す必要は今のところ無い為、重力下での飛行能力を持つ2号機とウェイボードに乗ったGハウンドの2機でも十分に対処は可能で予備で3号機をディーヴァの甲板上から砲台代わりに使う。

 水中からの敵はカタログスペックでは水中戦も可能であるAGE-ZEROで抑えさせる算段だ。

 

「リック。水中戦は初めてだから余り無理をするなよ」

「分かったよ。お爺ちゃん」

 

 すでに機体で待機しているリックの事をアセムは心配していた。

 あれからリックも休んで体力的には問題はない。

 だが、AGE-ZEROは水中戦が可能と言っても水中戦用MSに比べたら自由に動く事は出来ない。

 あくまでもディーヴァの搭載機の中でAGE-ZEROだけが水中でもある程度は動けると言うだけの事で決してAGE-ZEROは水中戦が得意と言う訳ではない。

 基本装備も水中戦には対応していない為、今回は水中でも使えるバズーカとアデル用のシールドを装備させている。

 その上でリックは初めての水中戦だ。

 アセムも実際に水中戦を行った経験はないが、水中戦が宇宙や地上での戦闘とは違うと言う事は分かっている。

 それでも海中から敵が来る為、何かしらの対応はしなければならなかった。

 

「リック・アスノ。ガンダムAGE-ZERO……行きます!」

 

 AGE-ZEROが射出され次々とディーヴァからMSが射出されて先端が開かれる。

 射出されたAGE-ZEROは海へと降下する。

 

「機体が重い……」

 

 海に入った途端にリックはそう感じた。

 大気圏ギリギリのところで交戦した時も機体が重く感じたが、あの時は何かに引き寄せられる感覚だったが、今回は周囲から何かに圧迫される感覚を感じている。

 

「これが水中戦」

 

 水中での戦いを感じつつも敵は待ってはくれない。

 AGE-ZEROに水中型ジェノアスとアデル・ダイバーが接近する。

 水中型ジェノアスとアデル・ダイバーはマシンガンで攻撃して来てAGE-ZEROはシールドを掲げて防ぐ。

 

「そんなMSで!」

 

 AGE-ZEROはバズーカで反撃するが敵に当たる事は無い。

 水中型ジェノアスもアデル・ダイバーも陸地での戦闘能力は大して高くはないが、水中戦を行う為に開発されている事もあって水中での動きはAGE-ZEROとは比べ物にはならない。

 バズーカを回避したアデル・ダイバーはトライデントスピアを突き出す。

 AGE-ZEROはシールドで防ごうとするも、間に合わず胴体に直撃する。

 機動力は水圧で劣っても装甲では圧倒的にAGE-ZEROに分がある為、その程度の攻撃ではAGE-ZEROの装甲に傷をつける事は出来なかったが、その衝撃でAGE-ZEROは持っていたシールドを手放してしまう。

 これが宇宙なら慣性で動き、地上や空中であるのなら地表に落ちるのだが、ここは水中である為、シールドは海の底まで落ちていき自力で回収する余裕はない。

 

「思ったように動けない……でも!」

 

 初めての水中戦で機体を思ったように動かせなかったリックだが、少しつづ水中での戦いに慣れつつあった。

 AGE-ZEROはアデル・ダイバーに接近するとビームダガーを抜いてアデル・ダイバーの胴体に密着させた。

 そこからビームダガーのビーム刃を出す。

 水中では殆ど使えないビーム兵器だが、対象に密着させてフル出力であればアデル・ダイバーの装甲を焼く事くらいは出来た。

 ゼロ距離でビームダガーで胴体を焼かれたアデル・ダイバーは海の底へと落ちていきやがて爆散した。

 

「ようやく1機……」

 

 何とか1機撃墜するも敵はまだいる。

 AGE-ZEROはバズーカを水中型ジェノアスにバズーカを向けるもすぐには撃たない。

 バズーカはビーム兵器以上に弾数制限が厳しい為、先ほどのようにかわされては無駄に残弾を減らすだけになる。

 リックはXラウンダー能力を使って水中型ジェノアスの動きを先読みして水中型ジェノアスの動く先にバズーカを向けて放った。

 バズーカの砲弾はまるで水中型ジェノアスに吸い込まれていくように直撃して水中型ジェノアスは撃墜された。

 水中型ジェノアスを撃墜したすぐに別の水中型ジェノアスにも動きの先を読んでバズーカで撃墜しているとアデル・ダイバーがヒートクローで襲いかかるがリックはすぐに回避せずにギリギリのところまでアデル・ダイバーを引きつけて回避する。

 攻撃を回避してすぐにアデル・ダイバーにバズーカを放った。

 アデル・ダイバーは攻撃を回避された直後でまともに回避行動を取れずに直撃を受けて撃墜された。

 

「まだ来るのか」

「アスノ君! 敵の後続機が2機接近しています。1機は異常に速いです!」

 

 ディーヴァの方でも海中の敵が更に来ていると言う事は捉えており、リックもまだ敵が来ると言う事は感じ取っていた。

 その2機の内の1機は先の戦闘でも出て来たダリウスのウロッゾでもう1機はカール専用機であるマリンクロノスだった。

 マリンクロノスはクロノスをベースに開発された水陸両用MSだ。

 クロノスをベースにしているがヴェイガンの水陸両用MSウロッゾのパーツを多く流量している。

 無理やりウロッゾ同様の潜水形態を取る事を可能にし、両腕はウロッゾの物を改造してつけている。

 バックパックのクロノスキャノンはビームキャノンから高出力のビームガトリング砲に換装されており、潜水形態では邪魔にならないように折り畳めるようにもなっていた。

 

「まさか、自らこっちのフィールドに来てくれるとはな! ガンダム!」

 

 マリンクロノスはMS形態に変形すると腕に内蔵されているミサイルランチャーを放つ。

 AGE-ZEROはバズーカで迎撃しようとするが、バズーカの砲弾をミサイルはまるで生きているかのように回避する。

 マリンクロノスに搭載されているミサイルはただのミサイルではない。

 ビット兵器に使われている技術を応用し、パイロットのXラウンダー能力である程度は操作が可能となり、従来のミサイルとは別次元の追尾能力を持ついわばミサイルビットと言っても良い装備だ。

 

「ミサイルが!」

 

 ミサイルはAGE-ZEROに直撃するが、AGE-ZEROには大したダメージを与える事は出来てはいない。

 だが、それはカールも分かっていた事だ。

 リックがミサイルに気を取られている間にウロッゾがAGE-ZEROの後ろに回り込んでおりシグルクローで一撃を入れる。

 

「くっ!」

 

 AGE-ZEROは弾き飛ばされつつもウロッゾのバズーカを放つがウロッゾは回避してミサイルを放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディーヴァにネオ・ヴェイガンが仕掛けたと言う知らせをローザは1号機で受けていた。

 ディーヴァは無人島を離れる際に1号機は無人島に残して来ている。

 今回の作戦においてディーヴァは囮だった。

 ディーヴァが動けば敵の注意はディーヴァに向き無人島への注意は逸れると予測して1号機は無人島で待機していた。

 

「了解。これより作戦行動に入る」

 

 敵がMSを出して来たと言う事は母艦の守りは手薄になっている。

 前回の戦闘での敵の撤退ルートと今回の敵の侵攻ルートから敵の母艦の位置はある程度は割り出しており後は1号機の索敵システムを使い見つけるだけだ。

 無人島に隠れていた1号機がその姿を現す。

 今回は対艦戦用の装備をいくつか装備している。

 基本装備であるロングドッズライフルとシールドは今回は装備していない。

 今回は水中への攻撃も考慮してリニアバズーカを装備している。

 更に対艦攻撃用に肩にはシグマシスキャノンとミサイルポッドを装備し、両足にも同様にミサイルポッドが追加されている。

 バックパックのグラストロランチャーの横には1本つづロングソードタイプの高周波ブレードも装備している。

 追加装備によって重量の増加を抑える為に通常時の追加装甲を外している。

 1号機は大きく飛び上がると無人島から離れる。

 そして、海面ギリギリまで落ちるとスラスターを最大出力で使う。

 元々1号機のスラスターの出力はかなり高い。

 その為、最大出力であれば無理やり機体をホバー装甲させる事も可能になっていた。

 ホバー装甲で海面を進みながら敵母艦の捜索に入る。

 

「やはり敵は見えざる傘を使っていたようね。大した物ね。見えざる傘を使っていても敵母艦の位置を完全に捕捉しているわ」

 

 捜索に入ってすぐに1号機の索敵システムは見えざる傘を使っている敵母艦の位置を補足していた。

 敵も移動しており、無人島からは大して離れた位置ではなかったが、通常のMSであれば運良く見えざる傘の降下範囲内に入らない限りは見逃していただろう。

 だが、1号機の索敵システムは敵母艦を見逃す事はしなかった。

 敵母艦を補足し、見えざる傘の効果範囲内に入る頃には敵も1号機の存在に気が付いていた。

 

「気づいたようだけど、もうこっちの射程に入っているわ」

 

 1号機は肩と脚部のミサイルを一斉掃射する。

 敵母艦の迎撃システムで殆どが撃墜されてしまうが、何発かは敵母艦の甲板に直撃して敵母艦から火が上がる。

 だが、敵母艦からもMSが水中に放たれるが1号機に辿りつくまでにリニアバズーカにより撃墜される。

 そして、1号機は敵母艦の上まで高く飛び上がる。

 上空でミサイルポッドをパージした1号機は敵母艦に着地する。

 その後、リニアバズーカで敵母艦の甲板で防衛に当たっていた水中型ジェノアスやアデル・ダイバーを破壊して行く。

 やがてリニアバズーカの残弾は尽きた為、1号機はリニアバズーカを捨てる。

 その頃には甲板には敵母艦ないで待機していた予備戦力も甲板に出て来ている。

 

「良くもこれだけの数のMSを揃えたものね。軍内部にネオ・ヴェイガンに物資を横流しをしている内通者がいると言う噂もあながち嘘ではないよね」

 

 水中型ジェノアスはマシンガンを連射して1号機に突撃して来るが、追加装甲がなくとも1号機の装甲はびくともしない。

 1号機は高周波ブレードを抜くと水中型ジェノアスを一刀両断する。

 そして、そのまま近くのアデル・ダイバーを高周波ブレードで切り捨てる。

 

「索敵能力は見事だけれども性能を確かめようにもこの程度のMSでは話しにならないわ」

 

 1号機は頭部のビームバルカンを放ちつつ高周波ブレードで敵を切り裂く。

 ローザが自分が1号機に乗ると言ったのは作戦だけではない。

 新型のガンダムの性能を自分で実感する為でもあった。

 粛清委員会でも1号機の兄弟機に当たる4号機が配備されているが、4号機はXラウンダーが乗る事を前提に開発されているのでゼクスシリーズのガンダムの中でも頭一つ飛び抜けた性能を持っている為、余り参考には出来ない。

 しかし、ある程度は分かっていた事だが、水中型ジェノアスやアデル・ダイバーを水中以外で戦えば1号機1機でも一方的に戦えてしまう。

 

「終わらせるわ」

 

 これ以上の戦闘では1号機の性能を確かめる意味がないと判断したローザは決めに入る。

 1号機は飛び上がるとグラストロランチャーを放つ。

 その攻撃はアデル・ダイバーを破壊するだけではなく敵母艦への攻撃も兼ねていた。

 グラストロランチャーの直撃で敵母艦に大きな穴が開き、艦体のいたるところから火を噴いて沈んでいくのが分かる。

 1号機は追い打ちをかけるかのように別方向に対してグラストロランチャーとシグマシスキャノンの4門の砲門の一斉掃射を行った。

 

「任務完了。後はディーヴァと合流するだけね」

 

 最後の一斉掃射によって敵母艦は瞬く間に撃沈され海へと沈む。

 やがて、大きな水飛沫が上がり敵母艦が完全に撃沈したと言う事が分かった。

 1号機は周囲の敵を警戒しつつ再び海上を無理やりホバーをしつつディーヴァへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 母艦が撃沈されたと言う事は海中で交戦しているカールとダリウスもすぐに母艦の反応が喪失した事からも判断出来る。

 ウロッゾはミサイルを放ち、AGE-ZEROは左腕で機体を守る。

 

「カール様!」

「ちぃ! せめてガンダムだけでも落とすぞ!」

 

 マリンクロノスはシグルクローでAGE-ZEROに一撃を入れる。

 その一撃はギリギリのところで回避されるが、AGE-ZEROのバズーカを破壊した。

 

「母艦が落とされても戦うって言うの!」

「リック! 気を付けろ。こういう時の敵は捨て身だ!」

 

 すでに敵母艦が撃沈されたと言う事はローザからの通信と先ほどの水飛沫で確認されている。

 敵もその事を知っている筈でそれでも尚、撤退ではなく戦おうとしているのは敵には捨て身の覚悟を持っている事が多い。

 リック自身も敵から並々ならぬ敵意を感じ取っている。

 

「分かってるよ。お爺ちゃん! でももう武器が!」

 

 リックも敵が捨て身の覚悟を持っていると言う事は分かっている。

 だが、今のAGE-ZEROには水中で使える装備はビームダガーくらいしかない。

 そのビームダガーは間合いが短い上に水中ではAGE-ZEROの動きは制限されている上に相手は水中戦用のMSである。

 その上でマリンクロノスのパイロットはXラウンダーだ。

 この状況でビームダガーを当てるのは至難の業以前に不可能と言っても良い。

 

「リック!」

「ジン!」

「AGEシステムが新たに構築した武器が完成した! 今から投下する! こいつを使え!」

 

 装備の大半が使えない状況だが、格納庫のジンからAGEシステムが新たな装備を作ったと言う知らせが入る。

 ジンの言い方からその装備は水中でも使える物だろう。

 リックが返事を返す前に海中にコンテナが投下される。

 MSの背丈ほどの長さを持つコンテナはすぐに沈みだす。

 受け取り損ねては状況を打開する事は出来ない為、リックはすぐにコンテナの方へと向かう。

 

「逃がすかよ!」

 

 マリンクロノスとウロッゾは潜水形態に変形するとAGE-ZEROを追いかける。

 2機の速度とAGE-ZEROの速度では圧倒的な差があり、2機との距離はすぐに縮まって行く。

 

「貰った!」

 

 マリンクロノスが腕だけを前方に向けてAGE-ZEROに狙いを付ける。

 だが、海の外から強力なビームが海中に撃ち込まれてマリンクロノスの攻撃を遮る。

 

「アスノ! 俺が時間を稼ぐ!」

「先輩!」

 

 その攻撃はディーヴァの甲板から迎撃していた3号機のハイパーメガシグマシスバズーカによる物だった。

 元々、MSの火器としては破格の威力を持つハイパーメガシグマシスバズーカだが、水中で威力が落ちても十分な威力を持っている。

 一度使ってしまったため、暫くは使えないが甲板上からアームドキャノンを海中に撃ち込む。

 ハイパーメガシグマシスバズーカ程ではないにしても十分に高い火力を持つアームドキャノンも多少威力が落ちても時間を稼ぐ事は出来る。

 

「ダリウス!」

 

 3号機の援護を受けたAGE-ZEROはコンテナに接近する。

 3号機の援護攻撃の際に攻撃体勢を取っていたマリンクロノスは砲撃を回避する為にAGE-ZEROへの追撃を断念していたが、ダリウスのウロッゾは砲撃を掻い潜りAGE-ZEROの方へと一直線に進んでいる。

 それでも援護攻撃は功を奏してAGE-ZEROがコンテナに到着する方が早かった。

 コンテナは開閉して、そこからMSの身丈程もある大剣が出て来てAGE-ZEROは大剣を掴む。

 

「武器コード『ザメルブレイバー』……」

「落ちろガンダム!」

 

 AGE-ZEROの背後からウロッゾがMS形態に変形してシグルクローを振り上げている。

 AGE-ZEROは振り向きながらも大剣、ザメルブレイバーを振るう。

 だが、ザメルブレイバーは10メートル以上の大剣である事や水中と言う事もあり振るう速度は非常に遅い。

 このままではウロッゾに当たったところでウロッゾを切る事は出来ない。

 そう思われたがザメルブレイバーの刃の部分から刃の淵をなぞるように無数のシグルブレイドの刃が出て来る。

 そのシグルブレイドの刃はザメルブレイバーの刃を沿うように高速で動き出す。

 

「なっ!」

「これなら!」

 

 AGE-ZEROはウロッゾの懐に入りつつザメルブレイバーを振るう。

 そして、ウロッゾの胴体に高速で動くシグルブレイドの刃が触れた瞬間にシグルブレイドの刃がウロッゾの装甲を削り、やがてウロッゾを胴体から真っ二つに切断する。

 

「カール様!」

 

 両断されたウロッゾは爆発を起こして海の藻屑を消えた。

 

「凄い……これなら水中でも十分に戦える!」

「これが進化するガンダムだと言うのか!」

 

 ザメルブレイバーはAGE-ZEROの水中での戦闘データから開発した装備で満足に振る事が出来ずとも内部に仕込まれている無数のシグルブレイドを使って対象を削りながら破壊する装備だ。

 見た目は大剣ではあるが質量装甲の技術の応用で見た目からは想像できない程軽い為、重量の増加は最低限に抑えられる上に刃の表面には対ビームコーティングがされているので盾代わりにも使える。

 AGE-ZEROはザメルブレイバーを両手で持って構える。

 

「このまま引き下がる訳には!」

「撤退しろ。カール」

「兄貴!」

 

 カールは例え刺し違えてもAGE-ZEROを落とす気でいたが、兄クリストからの通信が入る。

 

「これ以上の被害を出す事は許さん。俺のところで拾ってやる。撤退しろ。マリンクロノスの足なら逃げ切れる」

 

 すでに母艦が撃沈されて、MSの多くが落とされている。

 例えここでAGE-ZEROを撃墜出来たところで貴重なXラウンダーを失う事はネオ・ヴェイガンにとっては大きな損害でしかない。

 故にカールに撤退を命令している。

 

「良いな。カール」

 

 クリストは凍りつくような冷たい視線をカールに送っている。

 有無を言わせないクリストにカールは文句を言う事が出来ず命令に従う他ない。

 マリンクロノスは潜水形態に変形すると戦闘宙域から離脱して行く。

 

「ふう……」

「油断するなよ。リック」

 

 マリンクロノスから敵意が消えた訳ではないが、撤退した事で気を緩むリックをアセムが釘を指す。

 カールとクリストのやり取りを知らないアセムからすれば捨て身の覚悟で向かって来たマリンクロノスがあっさりと撤退した為、何かあるかも知れないと勘ぐるのは無理もない。

 マリンクロノスが撤退して空中から攻撃を仕掛けて来たガフも撤退を始める。

 その後、1号機も合流してマリンクロノスとガフが完全に撤退したと言う事が確認されると出していたMSを回収してディーヴァは南極へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。