ディーヴァは南極でネオ・ヴェイガンの襲撃を受けるもキオを通してアセムがディーヴァに乗っている事を知っていたゼハートの救援によって窮地を脱していた。
その後、ディーヴァは南極基地のドックに停泊している。
独断行動の上に宇宙で粛清委員会と交戦しているがゼハートの口利きもあって問題なく南極基地に入る事が出来た。
先の戦闘で推進系に損傷を受けている為、ドックに入ってすぐに南極基地の人員を借りてディーヴァは全体的に修理を受けている。
その間にアセムは南極基地の司令室に足を運んでいた。
「久しぶりだな。アセム」
「まさか。お前が来るとは思ってなかったぞ。ゼハート」
司令室でアセムは直接ゼハートと再会していた。
お互いに時間を作る余裕も無かった為、こうして直接会うのは久しぶりの事だった。
「すでにディーヴァの修理にはこちらの人材や機器を総動員させています。修理にはさほど時間がかからないかと思われます」
そう言ったのは現在の南極基地の司令官であるフラムだ。
かつて、ゼハートの腹心の部下であるフラムは今では南極基地の司令官に就いている。
一見出世のように思える人事だが、実際はネオ・ヴェイガンの活動が活発になり始めた頃から、連邦内部の旧ヴェイガンの人間が内部工作を行わないようにと人事異動が行われた。
戦友同士を離すだけではなく、フラムのようにある程度の地位に付ける事で不満を解消すると言う手段も使われていた。
その結果、フラムも戦術的価値の低い南極基地の司令官に飛ばされたと言う訳だ。
アセムもその事は少し耳にしていた為、フラム自身とは付き合いは大してないのだが、最悪フラムのかつての上司であったゼハートの友人と言う立場を使って何とかしようとも考えていた。
尤も、ゼハートが南極基地にいたと言う事は予想外で基地ぐるみで手厚い保護を受ける事になるとは夢にも思っていなかった。
「助かる」
「さっそくだが、何があった?」
ゼハートも概ねの事情はキオを通じて聞いてはいるが、キオ自身全てを知っている訳ではない為、ゼハートに伝えられた情報も余り多いとは言えない。
「分かった。場所を変えよう」
「分かりました。この基地内では盗聴の恐れがあります。ディーヴァの方でお願いします」
フラム自身、基地司令と言う立場で部下も信用は出来るが、上層部から信頼を置かれて基地司令を任されている訳ではない。
その為、基地内のどこで監視の目があるか分からない。
アセムもある程度のフラムの事情も分かっている為、場所を変える事を提案した。
その後、ゼハートとフラムを連れてディーヴァへと戻るとアセムはこれまでの事を二人に話した。
クライドの遺産としてEXA-DBの捜索をしていると言う事をだ。
「EXA-DB……まさか、アレが関わって来ていたとはな」
「アレの使い方を間違えるとどうなるかはゼハート達には説明する必要はないだろう」
「そうだな……」
EXA-DBの中の情報によってもたらされた過去の戦争の事はゼハート達も当事者である為、今更説明の必要もない。
また、それの危険性もだ。
「次の目的地はアンバットか……一体クライド・アスノは何をさせたい?」
「それが分かれば苦労はしないさ。恐らくはアンバットにEXA-DBがある訳ではないだろうな」
「となると次の目的地はトルージンベース跡地かトルディア、ビッグリングの残骸にオリバーノーツ、ロストロウラン……上げるとキリがないな」
始めの目的地が天使の落日の起きたコロニーエンジェルで次が蝙蝠退治戦役の終結した最後の戦場である宇宙要塞アンバット。
その二つに共通しているのは歴史が大きく動いた場所と言う事だ。
そうなればフリット・アスノが異例の大出世をする事になったアーシュランス戦役の起きたトルージンベース。
今は基地は破棄されてる。
他にもアセムが初めてガンダムに乗ったコロニートルディアや旧連邦総司令部のビッグリング、キオが初めてガンダムに乗ったオリバーノーツ、ヴェイガンが大規模な攻撃を仕掛けたロストロウランと続く事になる。
「だが、そう考えるとオーヴァンが抜けている。あの場所はあの人にとっても因縁深い場所だからな。ここまで手の込んだ事をしておきながらオーヴァンを抜かすと言う事は考えられるか?」
始めの場所がエンジェルと言うのは戦争の始まりがエンジェルの崩壊である為、理解は出来る。
そうなるとそれから7年後に起きたコロニーオーヴァンの襲撃が次の目的地である筈だった。
オーヴァンの襲撃自体はクライドやフリットのように生存者もいた為、エンジェルの時程大きなニュースになった訳ではない。
それでもオーヴァンの襲撃によりクライドとフリットの兄弟は離れ離れになりそれぞれガンダムを作る事になっている為、歴史が動いた場所である事は疑いようのないことだ。
クライドの性格上、エンジェルとアンバットを理由があって選んだと言うのであればそのルールに反する事は自分に都合が悪くならない限りはしないだろう。
少なくとも自分の死後にEXA-DBを託すに足るのか試練を与えると言うのであればそんな事はしないだろう。
「考えても仕方がないか」
「そう言う事だ。あの人がそうルールを設定した以上はそのルールを破ればそれ相応のペナルティーがあるかも知れんからな」
EXA-DBへの道筋を推理して過程を飛ばすと言う事はクライドも想定していない筈もない。
自分の設定したルール通りに事が運びEXA-DBまで辿りつく事が出来たらクライドはEXA-DBを渡すだろうが、もしも、過程を飛ばしてEXA-DBを手に入れようとすればクライドは容赦なく何かしらの罠を仕掛けている可能性が高い。
それを回避して最も安全にEXA-DBに辿りつく道はクライドの思惑に乗るしかない。
「ですが、ロストロウランから宇宙に上がると言う事ですが……」
連邦軍の手が借りられない以上は連邦に属していないところから宇宙に戻るしかない。
ディーヴァがロストロウランを経由して宇宙に上がると言う事はすでに二人にも伝えている。
その事についてフラムは何か言い難そうにしている。
「何かあるのか?」
「アセムもあそこを反政府勢力が根城にしていると言う噂は聞いているな?」
「ああ、一部ではネオ・ヴェイガンの可能性もあるとか」
かつて、ネオ・ヴェイガンによってラ・グラミスのディグマゼノン砲が撃ち込まれたロストロウランの基地機能は大幅に低下して基地は廃棄されている。
そこを反政府勢力が根城にしていると言う噂は有名だ。
「現在、連邦軍はロストロウランを包囲しています」
「どういう事だ?」
「レーアツァイトでの一件で危機感が少なからず出て来たみたいでな。アルダン議員が強く推して連邦軍がロストロウランを根城にしている反政府勢力の一掃作戦を展開しているんだ」
連邦政府の議員の大半は戦争を知らない世代が多くなっている。
その為、余り危機感がなかったが、レーアツァイトがネオ・ヴェイガンを受けた事で少なからず危機感を持った議員も出て来ていた。
全体数から見れば少しでしかないが、レーアツァイトの一件を持ち出してせめて地球上の反政府勢力の一掃を名目にまずはロストロウランから始めると言う動きが出て来た。
すでに連邦軍が部隊を動かしてロストロウランを包囲している。
そこにノコノコを向かえば最悪、連邦軍の攻撃を受ける事になる。
「作戦としてはロストロウランの周囲を包囲して退路を断ち、近隣の基地からMSを搭載したロケットを撃ちだしてMSをロストロウラン上空から降下させると言う物です」
「その上、ロストロウランから宇宙に逃げる部隊を叩く為にロストロウランの頭上にもすでに部隊が配置されている。今、ロストロウランから宇宙に上がってもその部隊に叩かれる事になる」
一掃作戦は大部隊を投入して行われている。
まずはロストロウランを包囲する事で敵の退路を断っている。
その上で基地から打ち上げられたロケットに搭載されたMSがロストロウランに降下しつつ包囲網を狭めていくと言う物だ。
ロストロウランの打ち上げ施設が生きている事を想定して包囲網の唯一の逃げ道である宇宙にも部隊を配置する事で宇宙に逃げる事も封じていた。
仮に強硬策で宇宙に上がってもディーヴァは宇宙で待ち構えている部隊と交戦しなければいけないと言う事だ。
「だが、EXA-DBはネオ・ヴェイガンも狙っている。余り悠長な事はしてられない。多少、強引な策でもやるしかない」
すでにネオ・ヴェイガンにEXA-DBがどこかにあると言う情報は知られている可能性が高い。
今のところはクライドによってEXA-DBへの道のりが示されているが、ネオ・ヴェイガンが偶然にもEXA-DBを見つけると言う可能性もゼロではない。
急ぎ過ぎて事を仕損じる事も避けたいが、慎重になり過ぎて手遅れになっても意味はない。
どこかで強引な手を使ってでも前に進む必要はあり、それが今なのだろう。
「分かった。ここにもロストロウラン制圧作戦に参加するように命令が来ている。戦闘中のドサクサに紛れてディーヴァを宇宙に上げる」
「良いのか?」
戦闘になれば連邦軍の注意もロストロウランの敵に向くだろう。
その戦闘のドサクサに紛れてロストロウランの施設を使ってディーヴァを宇宙に上げると言う事は出来なくはない。
しかし、それは場合によっては独断行動を取って下手をすれば敵だと認識されているディーヴァに手を貸した事が政府や軍に知れ渡る事になる。
旧ヴェイガンの兵士であるゼハートがそんな事をすれば、その存在を良く思わない連中からここぞとばかりに叩かれる事になる。
そうなれば失脚どころでは済まないかも知れない。
「構わんさ。状況が状況だからな。それに自分の身を守る術くらいは俺にもあるさ」
ある程度の追及は回避は出来ないが、今の連邦軍にとってゼハートは切り捨てるには惜しいパイロットではある。
後は様々伝手を最大限に利用すればどうとでもなる。
もしも、どうにもならなかったとしてもアセムの為であるのであればゼハートは後悔しない。
「分かった。頼む。ゼハート」
どの道余り余裕が無い為、選択肢はそれしかなかった。
ロストロウラン包囲作戦のドサクサに紛れた強行策が決まり、ディーヴァは南極基地からロストロウランへと出航した。
その際に降下作戦に参加する1号機、2号機、AGE-ZEROはディーヴァからパイロットごと下されている。
3号機は重力下での行動には大きな制限がかけられており、Gハウンドは明らかに連邦軍のMSには見えない為、降下作戦では使えない。
ディーヴァから下された3機のガンダムとゼハートのドラグーンは打ち上げるロケットに積み込む前の最終調整が行われている。
「これがAGEシステムを搭載したガンダムか……」
「貴方は……あの新型のガンダムの人ですか?」
AGE-ZEROの最終調整を眺めていたリックにロイドが話しかける。
前回の戦闘では音声のみだった為、顔は分からなかったが声から6号機のパイロットが彼であると言う事はすぐに想像が出来た。
「ロイド・ガレットだ。一応、アスノ家とは遠い親戚だけど初めましてだな」
「そうですね。この前は助けてくれてありがとうございます」
「気にすんなって。言ったろ? うちの爺さんの命令だって」
ロイドは宇宙でディーヴァと交戦した粛清委員会の部隊長であるギルバートの弟に当たる。
ロイドの言う爺さんとはゼハートの事でゼハートから絶対にAGE-ZEROをやらせるなと言われていた。
ゼハートの指示を忠実に守っただけである為、ロイドからすれば礼を言われる覚えはない。
「それはさておき、前よりも少し変わってるな」
「ええ、地球での戦闘からAGEシステムが新しい装備を作ってそれを装備しているんです」
ロイドの指摘通りAGE-ZEROの両肩と脚部が少し違っていた。
肩にはAGE-3を思わせるくの字の装甲版が追加され、脚部にも膝の辺りに装甲が増設されている。
これはAGEシステムが地上での戦闘から設計した新装備だった。
肩と膝に追加された装甲は単純に装甲と機能する以上に光波推進ユニットとしての機能が大きい。
AGE-ZEROはウェイボードなしでは重力下の自由飛行が出来ない。
それを改善する為に4基の光波推進ユニットをAGEシステムは設計した。
これにより重力下での自由飛行が可能となっただけではなく、宇宙や水中での機動力の向上にも繋がっている。
だが、追加装甲の機能はそれだけではない。
両肩のくの字の追加装甲の表面には電磁装甲が採用されている為、そのままシールドとしても使え防御力が向上。
膝の追加装甲にはマイクロミサイルが多数内蔵されており、火力が向上している。
「それじゃ僕は調整がありますから」
ここの技術者もAGE-ZEROの整備関連の情報は得ているが最後の調整はパイロットのリックがいなければ始まらない。
リックはAGE-ZEROへと向かい、ロケットへの積み込み作業が進められた。
ロストロウラン、かつては連邦軍の地上での重要拠点だった基地だ。
ヴェイガンの一斉蜂起の際にも見つかる事なくビッグリング陥落後には総司令部ともなっていた。
だが、スパイによってその位置がヴェイガン側に露見した事でヴェイガンの大規模攻撃を受けるもキオの活躍によって守られた。
しかし、ヴァニスがイゼルカントの跡を継いだ後にラ・グラミスのディグマゼノン砲によって壊滅的な打撃を受け、やがて基地は放棄されている。
今は残された基地施設を反政府勢力が根城にしていると噂されている。
それはあくまでも噂の範囲で政府としても噂で軍を派遣する予算を出すと言う事はしなかった事もあり、今までは殆ど手を出すと言う事はしなかった。
コロニーレーアツァイトの一件もあり、政府も多少なりとも反政府勢力に対する危機感を見直しつつあった事やオーギュスト・アルダンの強い後押しもあり、連邦政府は重い腰を上げてようやく、ロストロウランに軍を派遣するに至った。
すでにロストロウランの周囲には連邦軍の戦艦がロストロウランの周囲を包囲している。
戦艦の周囲には敵の先制攻撃に備えてウェイボードに乗るアデルマークⅢが展開し、各戦艦からは主力であるクランシェⅢの出撃が始まっている。
連邦軍がMSを出すとロストロウランからも迎撃のMSが出て来る。
その大半がすでに軍でも使われる事がなくなっているアデルマークⅡだ。
そして、作戦が開始される前に作戦開始に合わせて計算して打ち上げられたロケットが軍の包囲網の上を通過してロストロウランの頭上でMSを投下して行く。
その中に南極基地から打ち上げられたロケットも混ざっていた。
ロケットから4機のガンダムとゼハートのドラグーンがロストロウランに降下を始める。
連邦軍もロストロウランの敵に集中し、相手が連邦系のMSである為、見た目よりも識別信号で敵味方を判断している事もあり、友軍の識別信号を出しているガンダムの事は気づかれてはいない。
「まずは第一関門はクリアか。各機、すぐに敵の迎撃が来るぞ」
この段階で本来は作戦にいない筈の6号機以外のガンダムの存在に気づかれて敵対される危険性もあったが問題はないようだ。
降下作戦も開始され、ロストロウランは対空用のビーム砲が降下部隊を攻撃を始める。
「対空砲の位置を送ります」
「ほう。大した物だ」
1号機から他の機体にビーム砲の位置情報や敵MS、連邦軍の位置や機種の情報が次々と送り込まれて来る。
これもまた1号機の高い索敵システムの賜物だ。
ロケットから降下してすぐに戦場全体の状況を把握し、友軍機に伝える事で作戦の成功率は大幅に向上する。
「各機は手筈通りに打ち上げ施設付近の制圧に入る。管制室はこちらの手の者を回してある。お前達はディーヴァが到着するまでに周囲の安全を確保するんだ」
降下作戦以外でも基地の自爆を防ぐ為と基地自体への損害を最低限に抑える為に特殊部隊が基地の制圧に動いている。
大部隊による包囲網と降下作戦で敵の目は上に向いている為、ウロッゾによる基地の下からのも部隊が展開されていた。
その中にゼハートが裏で手を回して自分の息のかかった兵士がディーヴァを宇宙に上げる為に必要な管制側の作業をさせる手筈となっている。
そして、機体重量の重い1号機と6号機が他の機体よりも先にロストロウランに着地する。
1号機は今回はオーソドックスな装備であるシールドとロングドッズライフルを装備して来ている。
6号機がガトリング砲を構えて迎撃に出て来たアデルマークⅡを蜂の巣にして破壊し、1号機がロングドッズライフルでビーム砲を撃ち抜いて破壊する。
「1号機と6号機はそのまま2号機の着地の援護と地上の制圧。ゼロは俺と共に空からだ」
ドラグーンは上空からビーム砲を破壊する。
2号機はストライダー形態ならば飛行は可能だが、今回はあくまでも基地施設の制圧である為、上空の敵は人型のままでも飛べるAGE-ZEROとドラグーンの役目だ。
1号機と6号機に遅れて2号機も着地してドッズライフルを放つ。
「ふぅ……何とか着地したけどさ……敵の数が多くない?」
「無駄口を叩いている暇はないわ」
1号機はシールドからビームソードを出してアデルマークⅡを両断する。
確かにエイミーの言う通り敵の数が予測していたよりも多い。
相手が反政府勢力である為、MSなどの機動兵器を持っている事は予測していた。
だから、連邦軍もMSを多く投入している。
しかし、数は想定していたよりもはるかに多い。
MSは旧式と言えども数を揃えて維持しようとすればそれ相応の金や設備、人員が必要となる。
その為、資金源等に乏しい反政府勢力では数は用意出来ないと考えていた。
不足の事態と連邦軍の力を見せつける為に圧倒的な数のMSを用意して作戦に挑んでいる為、ロストロウランから出て来るMSの数は多いが対処は十分に可能である事が幸いしている。
「けど、まっ……こんだけいてくれた方が戦場が混乱して助かるぜ!」
6号機はホバーで移動しながらガトリング砲で次々と敵を破壊して行く。
数は予測よりも多かったが、決して対応出来ない数ではなく、これだけの数を相手にしている為、当初よりも戦場は混乱している。
戦場が混乱していると言う事はそれだけディーヴァを宇宙に上げる事も容易になるだろう。
「そうだけど……流石に骨が折れるわ」
敵の攻撃をシールドで受け止めてロングドッズライフルで1号機は反撃する。
数は多いが、旧式のMSで機体差を覆す程のパイロットがいる訳でもお世辞にも連携が取れているとは言えない事もあって苦戦はしないが、数の多さは厄介だ。
だが、上空からAGE-ZEROがDCドッズガトリングでビーム砲ごと敵MSを破壊し、ドラグーンがビットの雨を降らせる。
「上空から僕達が援護します! みんなは施設に向かって!」
光波推進システムが追加された事で飛べるようになったAGE-ZEROはビーム砲の攻撃を回避しながらDCドッズライフルでビーム砲を破壊し、脚部のマイクロミサイルを放つ。
「分かったわ。大佐も援護をお願いします」
「ああ。分かっている」
上空から2機の援護もあり、6号機を先頭に打ち上げ施設の方へと向かう。
6号機がガトリング砲の弾幕を張り、1号機と2号機で弾幕を逃れようとする敵MSを撃ち抜いて3機のガンダムは打ち上げ施設に辿りつく。
「後はディーヴァが来るまでにここを抑えればいいんでしょ?」
「余り時間は無いわ。施設を破壊しないように気を付けなさい。特に6号機の中尉は注意して!」
「分かってるって!」
6号機は打ち上げ施設まで到着すると機体を反転させる。
6号機の火力は下手をすれば打ち上げ施設を破壊しかねない為、常に打ち上げ施設を背にして戦わないと危険だからだ。
レールガンで1号機と2号機を追って来た敵を破壊して1号機と2号機も打ち上げ施設に到着して施設の周囲の敵の掃討に入る。
「ここは死守するわ」
「ディーヴァが来るまで後どのくらい?」
「さぁな。そろそろ爺さんとリックが迎えに行っている頃だ!」
1号機がグラストロランチャーを放ち、6号機がレールガンとガトリング砲を放つ。
2号機は敵の攻撃が施設を破壊しないようにシールドで守りながらドッズライフルで応戦する。
すでにゼハートとリックは強硬突撃をするディーヴァの援護の為に3機の援護から外れている。
上空からの支援が途切れている為、ここが正念場だ。
「ベンジャミン中尉! 施設の制圧は完了しました!」
「ご苦労様。貴方たちは打ち上げの準備をお願い」
施設を守っていると水中から地下を使って施設に潜入した部隊から施設を制圧したとの報告が入る。
後はディーヴァの到着を待つだけだ。
「来た!」
施設の守りを始めて少しするとようやくディーヴァが到着する。
強引に突破して来たと言う事もあって今後は連邦軍の部隊も引き連れて来ている。
「施設の方はどうなっている?」
「すでに制圧は完了し、打ち上げの準備に入っています。艦長」
「了解だ。こちらもすぐに準備に入る。援護は頼んだぞ。ゼハート」
「ああ。任せておけ」
到着したディーヴァはすぐに打ち上げ施設からの打ち上げの準備に入る。
だが、すぐに打ち上げる事が可能と言う訳にはいかない。
「ここは俺の部隊で守る。中尉達はディーヴァに戻れ」
「頼みます」
1号機はロングドッズライフルを撃ちながらもディーヴァの方に後退する。
2号機も同様に後退を始めた。
ディーヴァを宇宙に上げても搭載機であるガンダムが残っていては意味がない。
すでにディーヴァの護衛につけて来たゼハートの隊がディーヴァと施設の守りに入っている。
「ロイドも行くんだ」
「行くって。こいつは地上用のガンダムだぜ?」
「それでもないよりかはマシだ」
「たく……今度は宇宙かよ。爺さんも人使いが荒いんだよ」
ロイドの6号機は地上での戦闘に主眼を置いたガンダムで宇宙戦は出来ない事は無いが得意と言う訳でもない。
6号機をディーヴァと共に宇宙に上げても戦力としては他のガンダムには劣るがそれでもいないよりかはマシだと言うのがゼハートの判断だ。
6号機はミサイルを放った後に反転してディーヴァへと向かう。
「リック。君のガンダムがEXA-DBへの道しるべとなるだろう。ここは俺に任せるんだ」
「分かりました。ここはお任せします」
AGE-ZEROもディーヴァへと向かう。
そして、ドラグーンはビームシールドを展開してAGE-ZEROの背中を守る。
「ゼハート隊各機に告げる。ディーヴァとガンダムは世界の平和の為にも宇宙に上げなければならない。必ず守り切るぞ!」
ガンダムが後退したが、それをゼハートの部隊が補う。
クランシェⅢがハイパードッズライフルとドッズランサーで敵を迎撃する。
ディーヴァを追って来た連邦軍とロストロウランのMSの三つ巴の戦闘が続く中、ディーヴァの打ち上げ準備が着々と進められていく。
「ゼハート。直に打ち上げの準備が終わる」
「そのようだな。意地でも守り抜く」
ドラグーンはドラグーンライフルとドラグーンキャノンで地上の敵を破壊する。
「必ずEXA-DBは持ち帰る。お前も無事でいろよ」
「当然だ。俺はまだ死ぬ訳にはいかんからな。アセムこそ無事に戻って来い」
「分かった。後は任せた。ゼハート」
ディーヴァとの通信を終えてドラグーンはドラグーンライフルをバックパックにマウントするとシールドについているドラグーンスピアーを構えて突撃する。
そして、ディーヴァの打ち上げ準備が終わり、ディーヴァは宇宙へと打ち上げられた。
「アセム……生きて戻って来い」
ゼハートは交戦しつつもディーヴァの打ち上げを見届けけた。
ディーヴァは無事に宇宙へと上がる事に成功したが、これで終わった訳ではない。
宇宙にはロストロウランから脱出して来た敵を抑える為の部隊が配置されている。
その部隊はロストロウランから打ち上げられたディーヴァを見逃す筈もなくすぐに見つかってしまう。
「最大船速で振り切るぞ!」
「連邦軍のMSが接近して来ます!」
ただでさえ、強引に突破して大気圏を離脱したばかりのディーヴァのダメージは少なくなく、搭載機もガンダムはすぐには出せずアデル隊も出したところで無意味に数を減らすだけでしかない。
残る戦力は地上での戦闘で使っていない3号機とGハウンドだ。
3号機の火力を持ってすれば突破口を開く事も可能ではあるが、相手は連邦軍。
できれば必要以上に交戦する事は避けたい。
「対ビーム拡散弾をばら撒いて対処しろ! 主砲で威嚇してMSを取りつかせるな!」
同胞である為、MSを撃墜したくはないが、向こうは最低でもディーヴァの動きを止めに来るだろう。
今は先に進まないといけない状況である為、選択肢は2つしかない。
多少は相手に被害を出してでも強引に突破するか素直に投降するかだ。
後者を選択できるのであればここまでの事はしない。
だからと言って前者を選択する事は今のアセムには出来ない選択だ。
ディーヴァの主砲で牽制してはいるが、クランシェⅢの接近を少し先延ばしにしたに過ぎない。
主砲を回避したクランシェⅢがディーヴァに取りつこうとするが、クランシェⅢは別方向からのビームに撃ち抜かれて撃墜された。
「艦長! ネオ・ヴェイガンのMSです!」
「ネオ・ヴェイガンだと! どういう事だ……」
この宙域には連邦軍の部隊が集結している。
そんな宙域に近づく事もだが、わざわざ攻撃を仕掛けて来ると言うのは不可解でしかない。
「そいつはまだ沈めさせる訳にはいかないからな」
ネオ・ヴェイガンの先陣をヴァレンティナのガンダムレギーナが駆ける。
その後方からヴァレリのキングレギルスが追いかけて来ている。
「まさか、ヴァネッサの回収に来たところにディーヴァに出くわすとはな……まぁ良い。あの船にはこんなところで沈んで貰っては困るからな。ついでに最近は暴れさせていないアレに暴れせておくか」
ヴァレリは一人そう呟く。
ヴァレンティナ達は連邦軍に仕掛ける為に来ていたと言う訳ではない。
ロストロウランの反政府勢力の一掃の為に部隊を動かしている隙をついて地上のヴァネッサ達を宇宙に上げてそれの回収の為に出張って来ていた。
無事に回収で来た後に元々、動きを監視していた軌道上の連邦軍艦隊のど真ん中にディーヴァが打ち上げられて来た事を知った。
ネオ・ヴェイガンとしてもこのままディーヴァが沈められるか連邦軍に投降する事は面白くは無い為、地上から上がったばかりのヴァネッサ達を先にグレート・エデンへと帰投させてヴァレンティナ達が連邦軍に仕掛けて来たと言う訳だった。
「艦長! 今なら離脱できます!」
ネオ・ヴェイガンの乱入はディーヴァにとってはチャンスでもあった。
かつての戦争で一線で活躍したディーヴァと未だにテロ行為を続けているネオ・ヴェイガン。
連邦軍からすればどちらを優先すべき敵と認識するかは明らかだ。
その上、ネオ・ヴェイガンにはヴァレンティナが自ら出撃して来ている。
連邦軍はネオ・ヴェイガンの相手をするので精一杯でディーヴァの相手をしている余裕はない。
今なら離脱する事は可能だった。
しかし、ここで新たな問題が出て来ている。
確かにここでこの混乱に乗じて逃げる事は可能だ。
だが、その後この戦力でヴァレンティナのガンダムレギーナとヴァレリのキングレギルスに2機と戦えばどれだけの被害が出るか分からない。
今は2機だけしかいないが増援の可能性も否定できない。
そうなれば最悪全滅もあり得る。
ここで離脱すると言う事はここの部隊を見殺しにする事と同義でもある。
EXA-DBを手に入れる事は重要ではあるが、同胞の命を見捨ててまで手に入れる価値があるかと問われれば首を傾げる。
EXA-DBを平和利用する事で戦争を無くして人が戦争で死ぬ事を無くそうと言うのに人の命を見捨ててEXA-DBを手に入れないといけないのは矛盾している。
「3号機とGハウンドを出す」
それがアセムの判断だった。
甘いかも知れないが、アセムには見捨てる事は出来なかった。
それにより自分達が不利になったとしてもここで見捨てて逃げてしまえば、自分の立場を危うくしてまで自分達を宇宙に上げたゼハートに合わす顔がないからだ。
「ですが!」
「分かっている。あの2機を追い払うだけだ。その間にディーヴァは可能な限り離脱する。2機を追い払った後にMSを回収して宙域を離脱する」
「その必要はない」
すぐに出せる2機を出してネオ・ヴェイガンの2機を追い払う間に可能な限り離脱する事で連邦軍を助ける事で起こるリスクを最小限の物にしようとするが通信は入る。
「ギルバート」
「ここは私の部隊で抑える」
ディーヴァに通信を入れて来たギルバートはそう言う。
すでに数機のジェネシスを引き連れた4号機がレギーナとキングレギルスへと向かっていた。
「我々の最大の任務はネオ・ヴェイガンの殲滅。それに勝る任務は存在しない。その間にネズミが逃げようとも我らの感知するところではない」
ギルバートは一方的に話して通信を終えた。
遠回しではあるが、ギルバートがネオ・ヴェイガンを抑えている間にどこにでも勝手に逃げろと言う訳だ。
「どうします? 艦長」
「決まっている。最大船速で現宙域を離脱する!」
粛清委員会の到着で状況は変わった。
ギルバートの4号機と粛清委員会のジェネシスが加われば連邦軍が全滅する事もないだろう。
後はギルバートに任せる事が出来るのであれば3号機とGハウンドを出す必要もない。
ディーヴァはMSの出撃を中止して宙域を離脱する為に反転する。
「ヴァレンティナ様。ディーヴァは無事に宙域を離脱できそうです。流石にアレを2機で相手をするのは得策ではありません。あの計画が控えていますのでここは撤退を進言します」
「良かろう。お前の判断に従おう」
ディーヴァが無事に離脱出来た以上、ヴァレンティナの目的は達成されている。
ヴァレリ的には残りの部隊を叩いても良かったのだが、粛清委員会が出て来ては話しは別だ。
ジェネシスはともかく4号機を相手にするのは2機だけでは厳しい。
今はEXA-DBを手に入れる為の作戦の準備が進められている以上無理は禁物だ。
ヴァレリが撤退を進言し、ヴァレンティナはそれが当たり前かのように受け入れる。
「少佐。ネオ・ヴェイガンが撤退して行きます。追いますか?」
「その必要はないだろう。まずは友軍の体勢の立て直しが先だ」
2機で仕掛けて来た以上、撤退の先に本隊が待ちかえている可能性が高い。
ネオ・ヴェイガンの殲滅が任務ではあるが万全を期していない状態で攻め込んでも無駄に被害を出すだけでしかない。
「ディーヴァを逃がす事が目的だったと言う事か」
仕掛けて来た目的はディーヴァを逃がす為で間違いはないだろう。
だからこそ、2機で仕掛けもしたし、ディーヴァが離脱したらすぐに引いたのだろう。
ネオ・ヴェイガンが完全に撤退した事を確認するまでは気が抜けないが、ネオ・ヴェイガンの襲撃で混乱した艦隊が体勢を整える事を確認したギルバートは部下と共に母艦へと帰投した。
その後、連邦軍によるロストロウラン制圧作戦は成功を収めた。