連邦軍によるロストロウラン包囲作戦はディーヴァの乱入で多少混乱したが、圧倒的な物量によりロストロウランは連邦軍の手に落ちた。
だが、ネオ・ヴェイガンはその隙にヴァネッサ達を宇宙に上げていた。
軌道上で待ち構えていた連邦軍の部隊を襲撃したヴァレンティナがグレート・エデンに帰投した頃には地球より戻って来たヴァネッサ達もグレート・エデンに合流していた。
「姉様」
「ネッサが無事で何よりだ。怪我の方は良いのか?」
「問題はないわ」
グレート・エデンに帰投し機体から降りたヴァレンティナをヴァネッサが出迎える。
ヴァネッサは地球に降下した際に負傷していた。
その後特に異常は見られなかったが、南極での戦闘時にCファンネルを使おうとした時に頭部に激痛が走った。
更に正確に言えばCファンネルを使う為にXラウンダー能力を使った時だ。
ヴァネッサの負傷は頭部を打った事による物でXラウンダー能力は脳のX領域が深く関わって来る。
その為、頭部の負傷との関係があると考えられて検査を受けたが、結果はヴァネッサの脳には異常は見られないと言う事だ。
「そうか……ならば、ネッサ。お前に重要な任務を頼みたい」
「大丈夫。行けるわ」
少し考える素振りを見せたヴァレンティナがそう言う。
それに対してヴァネッサは二つ返事で答える。
「助かる。これはお前にしか出来ない任務だ。詳細は追って伝える。この任務は我らの未来を決める重要な物だ。失敗は許されないぞ。だから万全を期す為に任務の準備が整うまで部屋で休んでいろ」
「分かったわ。姉様」
ヴァレンティナはヴァネッサにそう言ってヴァネッサと別れる。
ヴァネッサの方はヴァレンティナの言いつけどおりに部屋に戻る。
「さて……本当に大丈夫なのだな?」
「もちろんですよ。この任務にヴァネッサ様以上の適任はいません」
ヴァレンティナの問いにいつの間にかヴァレンティナの後ろに控えていたヴァレリが答える。
この作戦の立案はヴァレリによる物でヴァネッサが行うと言うのもヴァレリの進言による物だ。
「本当にヴァネッサの傷は大した物ではないのだな?」
「私が確認しました。戦闘中の頭痛は地球の慣れない環境から来る一過性の物です」
「そうか」
ヴァレリの言葉をヴァレンティナは何の疑いもなく受け入れる。
ヴァレリが直接確かめたと言うのであれば間違いはない。
今までヴァレリは自分の参謀としてさまざまな意見を具申してそれが裏目に出た事は無い。
今回もヴァレリの作戦は完璧だ。
「準備を急がせろ」
「はっ」
ヴァレリに命令だけするとヴァレンティナも自分の部屋へと戻って行く。
「ええ……アレはもう壊れてしまった。必要ないのですよ。貴女にはね」
ヴァレンティナの後ろ姿を見ながらヴァレリは誰にも聞こえない程度の声でそう言う。
大気圏を離脱して宇宙に上がったディーヴァが無事にアンバットへ向かう為の補給地点であるミンスリーに到着していた。
ミンスリーは中立のコロニーである為、堂々と港からコロニーに入る事が出来る。
ミンスリーに到着してすぐにコロニー内にビシディアンの元支援者が所有している別荘へと1号機と6号機が運び込まれている。
この別荘は支援者がビシディアンのMSを修理や整備を行う為の施設がディーヴァよりも揃えられているからだ。
6号機は陸戦用のガンダムである為、宇宙戦に合わせた調整が行われている。
そして、1号機も大気圏突入時の負傷が概ね治りようやくMSに乗る事が出来るようになったエリスに合わせた調整が行われている。
2機とも大幅な改良が必要無い為、改良自体は問題なく進められている。
「それにしてもさ。凄いよね。ここ」
「地球の環境を再現ってのがコロニーの売りらしいけどさ」
「余り地球じゃ見る事は出来ないよね。こういう自然はさ」
ミンスリーに停泊し、リック達はミンスリーの自然を楽しんでいた。
今まで激戦の中を航海し、パイロット達も疲労が溜まって来ている事は深刻な問題で特にガンダムのパイロット達はディーヴァの切り札である為、少しでも休ませておきたかった。
正規の軍人であるロイドやローザは特に問題がなく、来年には入隊予定で地球での戦闘に殆ど参加出来なかったハーマンも大して問題はない。
だが、リックとエイミーは地球での戦闘でも前線で戦い疲労も溜まっている。
二人が無茶をしないように二人の友人でもあるジンを付けてアセムからの艦長命令でミンスリーの町へと出かけることになっていた。
町を一通り散策して今はミンスリーの森を三人で歩いている。
「そなの?」
「俺らが育ったところはめっちゃ都会だったからな」
「ブルーシアだったっけ? 連邦首都の」
「そうだよ。僕もジンもずっとそこで育ったんだ」
ミンスリーは地球の自然を再現していると言う事が売りのコロニーだが、今まで地球で育ったリックもジンも余り自然にはなじみがない。
二人が生まれたのは連邦首都のブルーシアだ。
首都である為、自然がない訳ではないがやはり大自然と呼べるようなところは無かった。
尤も、過去のヴェイガンとの戦闘の終盤に地球が戦場となり自然の多くは戦闘で失われている。
戦後に自然を復興しようと言う動きはあるが、戦後の処理もあって後100年以上は完全に自然を修復するのは不可能とされている。
そんな事もあり、今の地球にミンスリーのような自然を見る事が出来るところは限られている。
「ブルーシアか……私は行った事がないな……どんなところ?」
「ガンダム記念博物館があるぜ」
「それ、私も知ってる! ヴェイガンでの戦争に使われた歴代のガンダムとそのパイロットに関する資料があるところでしょ。一度行って見たかったのよね」
ブルーシアの観光名所と知られているのがガンダム記念博物館だ。
博物館自体は世界的にも有名で何処のコロニーでも知れ渡っている。
エイミーも行った事は無いが、その博物館の事は知っており、ブルーシアで暮らしていたリックとジンも知らない訳がない。
ジンが自分の故郷の名所を自慢するかのようにしているが、リックは苦笑いで少し複雑な表情をしている。
ガンダム記念博物館には歴代のガンダムの事だけではなく歴代のガンダムのパイロットもガンダムとセットで展示されている。
ジンからすれば曾祖父の世代からの友人たちではあるが、リックからすれば身内だ。
フリットやクライドと言った世代は面識が無い為、写真や資料を見る分には自分の先祖が凄かったと言う印象しかないが、キオやアセムの事はそうはいかない。
家族で博物館に行った事は無いが、ジンと言った事は一度や二度ではない。
そのたび、自分の良く知る父や祖父の事が書かれている資料を見ると気恥ずかしく思える。
「てかさ。今は私達もガンダムのパイロットだからいずれは博物館に資料とかが展示されるって事?」
「どうだろうな。先生が言うにはゼクスシリーズの開発は極秘裏に進められてたガンダムだからこの一連の騒動が終わったら秘密裏に廃棄されてなかった事にされるかもって話しだぜ? 一機はネオ・ヴェイガンに奪われてるしな」
博物館に歴代のガンダムが展示されていると言う事は新しいガンダムであるゼクスシリーズも展示されてそのパイロットを務めた自分達もと言う淡い希望はあったが、現実はそんなに簡単な話しではない。
ゼクスシリーズ自体、一部では連邦軍の力を誇示する為に大々的に見せつけようと言う動きがあったが、公になる前にレーアツァイトの事件が起きて5号機がネオ・ヴェイガンに奪われている。
その為、今後大々的に公表すれば必然的に一機がネオ・ヴェイガンに奪われたと言う事も公になってしまう。
そうなれば連邦政府や軍の信用に関わって来る。
すでに公の存在となっているギルバートの4号機だけをガンダムAGE-Ⅵとして他の機体は公にして信用の傷がつくくらいなら存在その物をなかった物にしてしまえば5号機が敵に奪われたと言う事も記録上は無かった物になる。
当然、ゼクスシリーズが無かった事になればエイミーを初めとして他のゼクスシリーズのパイロットも記録上はガンダムに乗っていないと言う事になる。
エイミー達がガンダムに乗って戦ったと言う事実は消えないが、記録としてはなかった事になっている為、エイミーが博物館でガンダムのパイロットとして紹介される事はない。
「でも、正式にアスノ家の後継者でガンダムを受け継いだリックは博物館で紹介されるんじゃね」
「何かズルい」
「そう言われても……」
エイミー達はともかく、リックはアスノ家の生まれでAGEシステムを搭載した新しいガンダムであるガンダムAGE-ZEROのパイロットとしてガンダムを受け継いでいる。
この一連の騒動がどのような形で終わるのかは分からないが、今まで歴史の節目に活躍して来たアスノ家のガンダムは未だに英雄視する声は少なくない為、事件終結の後の事件解決におおいに貢献したとしてプロパガンダに使われると言う事も考えられる。
そうなれば博物館にAGE-ZEROとリックが新しく追加されてもおかしくはない。
リックとしては後の世界に自分の事が資料として紹介されて残ると言う事には気恥ずかしさから来る抵抗がある。
不満気にリックを軽く睨んでいるエイミーにリックは対応に困っていると不意に立ち止まる。
「この感じ……僕を呼んでいるの?」
「リック?」
エイミーとジンは突然立ち止まって少し様子のおかしいリックを心配そうに見ているが、そんな二人をお構いなしにリックは走り出す。
「おい! リック!」
ジンの静止を聞く事もなくリックは道を外れて森の奥へと走る。
当然の事に一瞬、反応が遅れて冷静さを取り戻した頃にはすでにリックは森の奥へと進んで見失っていた。
「はぁはぁ……この辺りから……」
エイミーとジンを置き去りにして森を走るリックはやがて森の中の大きな湖へと辿りついていた。
湖は広く、休日にはカップルや家族連れで賑わうだろう湖だが、今は誰もいない。
リックは息を整えつつ辺りを見渡すがやはり誰もいない。
三人で話している途中にリックは不意に何かを感じた。
誰かに呼ばれている。
そんな気がしたと思ったらじっとしている事が出来ずに走りだしていた。
だからこそ、ここまで来て何もないと言うのはショックも大きい。
誰もいない為、リックは引き返そうとするが振り向いた瞬間に視界が反転した。
何が起きたか理解する前にリックはうつ伏せに組み敷きられていた。
「先輩……」
「地球で戦った以来ね」
姿は見えないが声で自分を組み敷いているのがヴァネッサであると言う事は分かった。
体を動かすも、片腕が背中の方に曲げられてヴァネッサがリックに馬乗りになって体重をかけている為、動かす事が出来ない。
後頭部には冷たい感触があり、恐らくは銃口を突きつけているのだろう。
「質問に答えて。素直に答えれば危害を加える気は無いわ。EXA-DBはどこにあるの?」
「……そんな事教える事が出来る訳ないじゃないですか。それよりも……」
ヴァネッサはリックの言葉を遮るように頭に付きつけていた銃でリックの頭を押す。
ヴァネッサはリックと話しをしに来たと言う訳ではなく、EXA-DBの場所を聞く為にXラウンダー能力を使ってリックをここまで誘導した。
それがヴァレンティナから与えられた任務だ。
ネオ・ヴェイガンはディーヴァを泳がしてEXA-DBに案内させようとしている。
だが、EXA-DBの場所を知ればその必要もなくなる。
「EXA-DBの場所を教える気がないなら、多少強引な手段を使わざる負えないわね。私が命令を出せばコロニーを攻撃する用意があるわ」
「そんな! そんな事をしたら!」
「ええ……こののどかなコロニーが戦場になるわ」
ミンスリーの外にはヴァネッサがミンスリーに潜入する為に接近した母艦が見えざる傘を使って停泊している。
すでに引き連れて来たジェレミアとアビーはいつでも出撃が可能な状態で待機している。
半分は脅しではあるが、場合によっては見せしめの為にミンスリーを戦場にしても構わないと今のヴァネッサは思っている。
リックもヴァネッサが自分の返答次第では本当にミンスリーを戦場にする気であると感じ取っている。
「分かりました……」
「その必要はない」
リックは仕方がなくEXA-DBに辿りつく方法を話そうとするが、それは遮られる。
そして、二人のいる辺りが急に暗くなり上から1号機が落ちて来る。
「1号機! エリスさん!」
「リックよ。キャプテンから町で楽しんで来るように言われていたようだが、まさか、美人を森に連れて来んでよろしくやっていたとはな。少し見直したぞ」
外部スピーカーからエリスはそう言う。
ヴァネッサがリックを呼び出す為にXラウンダー能力を使っている。
それをリックが感じ取ったようにエリスもまた、それを感じていた。
そして、自分用に再調整をした1号機でここまで来たと言う訳だ。
1号機は装備して来たドッズガンをリックを組み敷いているヴァネッサに向けた。
「悪いがそいつを離しては貰えないだろうか。拒否する際は二人まとめて撃つ事になる。大人しくMSに乗るのであればその時間は待ってやる。わざわざコロニーに潜入するんだ。持って来ているのだろう? こういう時はMSを持ち込んで森になり湖になり隠しておくのは常識だろう。ちなみに、地下やトレーラーの中にMSを隠しておくと言うパターンも……」
エリスの話しを最後まで話し終える前にヴァネッサはリックを解放して湖の方に向かう。
リックを解放したとして、ヴァネッサだけを始末する可能性もあったが、不思議と1号機のパイロットはそんな事はしないと思えた。
どの道、生身では勝ち目が無い為、リックを呼び出す前に湖に隠していた5号機を起動させて乗り込む。
「ジェレミア、アビー。作戦変更よ。すぐにMS隊を出撃させてディーヴァを抑えて」
「了解です」
母艦に待機していたジェレミア達に指示を出していると、5号機に乗り込み機体を起動させた事を確認した1号機がドッズガンを撃って来る。
「エリスさん!」
「その内ロイドも来る。ロイドに拾って貰え」
1号機はドッズガンをシールドの裏に付けるとビームサーベルを抜いて5号機に切りかかり、5号機もシールドライフルからビームサーベルを展開して受け止める。
「久しぶりの戦闘だ。暴れさせて貰う!」
1号機はスラスターを最大出力で使い5号機を押し込む。
5号機ももう片方のシールドライフルにビームサーベルを出して振り上げて1号機に距離を取らせる。
2機のガンダムがビームサーベルで切り結ぶ様子をリックはただ見ているしかない。
「リック!」
2機が交戦を始めて少しするとエリスの言った通り、ロイドの6号機が到着する。
その手にはすでに回収されたエイミーとジンもいる。
「外からも敵が来てる! すぐにディーヴァに戻るぞ!」
「分かりました!」
リックも回収した6号機はすぐにディーヴァの方へと機体を返して三人が振り落されないように注意しつつも可能な限りの速度でディーヴァへと向かった。
ヴァネッサの命令が出た事でジェレミアとアビーが率いるMS隊がミンスリーに向けて出撃している。
エリスが何者かがXラウンダー能力を使ったと言う事を聞いていたディーヴァはすでにMS隊の出撃準備を整えていた為、慌てる事なく対応する事が出来た。
ディーヴァからはエリスが復帰した為、ローザはディーヴァに来た時のジェネシスカスタムで出撃し、3号機とGハウンドの3機が接近する敵部隊に対応に当たり、アデル隊は港に停泊中のディーヴァとミンスリーの守りに回されている。
「Xラウンダー専用機が2機……ギラーガとファルシア。他はダナジンか……」
「コロニー内に5号機が現れたと言う報告がありますが、どうします」
「そっちは1号機に任せればいいわ。私達は艦長の指示通り目の前の敵を抑える」
「何だっていいんだよ!」
GハウンドはドッズライフルⅡBを連射して突撃する。
ダナジンは散開してダナジンキャノンで狙いを付けようとするが、3号機のアームドキャノンで何機かは破壊され残った機体もジェネシスカスタムのハイパードッズライフルで撃ち抜かれる。
「連れて来たダナジンが全滅だと……」
「相手が3機なら問題ないわ」
ナイトギラーガとミラーファルシアはビットを展開して3機に差し向ける。
「気を付けてファルシアのビットはビームを反射するわ。3号機の火力で蹴散らして」
「了解!」
3号機はアームドキャノンを放つが、ミラービットは素早く動いて射線に入る事は無かった。
その隙に3号機をナイトギラーガのビットが襲いかかる。
だが、ジェネシスカスタムが腰のビームガンでビットを落とす。
「ビットを使って自分は安全なところにいやがって!」
ジェネシスカスタムと3号機がビットの相手をしている間にGハウンドはナイトギラーガとミラーファルシアに接近してスネークソードで切りかかる。
ナイトギラーガはギラーガアックスでスネークソードを受け止めてGハウンドを蹴り飛ばしてビームバルカンを向けるが3号機がアームドキャノンを放ち、攻撃を中止して回避する。
「まずはファルシアの方から仕留めて。ビームを反射させるビットは厄介よ」
「アタシに命令すんなよ!」
ジェネシスカスタムはミラービットの攻撃をシールドで防いでミラービットの合間を狙いミラーファルシアにハイパードッズライフルを放つがミラービットは易々を回避する。
そこをGハウンドに狙わせるつもりであったが、当のGハウンドはミラーファルシアの方ではなくナイトギラーガの方を狙っている。
「海賊風情が!」
ナイトギラーガはGハウンドを弾き飛ばすとビームバスターを放ち、Gハウンドの右腕を破壊してギラーガアックスを振り下ろす。
「糞ったれ!」
Gハウンドはギリギリのところでアンカーシールドで受け止めるが、受け止めきれずにシールドごと左腕が切り落とされる。
「言わんこっちゃないわ!」
「邪魔はさせない!」
ジェネシスカスタムはハイパードッズライフルでGハウンドを援護しようとする。
3号機の砲撃は連射が効かない為、今は自分で撃つしかなかった。
しかし、ジェネシスカスタムの銃口の前にミラービットが入り込んで別のミラービットがジェネシスカスタムを攻撃する。
攻撃コースが塞がれ自分の身を守る為にジェネシスカスタムはシールドを掲げながら回避する。
そして、ナイトギラーガは再びギラーガアックスを構える。
両腕を失ったGハウンドには反撃の手段は残されていない。
だが、後方からのビームがナイトギラーガとGハウンドの間を通り抜ける。
「お待たせ!」
「2号機!」
ストライダー形態の2号機は3号機とジェネシスカスタムを追い越してナイトギラーガとミラーファルシアの方へと向かう。
6号機に回収されてディーヴァに戻ったエイミーとリックはすぐに自分のガンダムにて出撃した。
リックとロイドはコロニー内の5号機の方に向かい、エイミーはこちらへと来たのだった。
「ライフルはダメよ。キャノンで応戦して」
「分かってます!」
2号機はシグマシスキャノンで2機を牽制する。
「1機増えたところで!」
「せっかくの休日を邪魔して!」
ナイトギラーガとミラーファルシアはビームバルカンで2号機を狙いが2号機は一気に加速してMS形態に変形するとミラーファルシアにシザーシールドで殴りかかる。
ストライダー形態で加速した2号機の一撃はミラーファルシアのシールドで受け止められたが、完全に勢いを殺し切れる訳も無く2号機のシザーシールドの先端がミラーファルシアのシールドの先端に突き刺さる。
「Gハウンドは今の内に後退しなさい! こっちで援護するから!」
「ちっ……すまねぇ」
粛清委員会のローザに助けられる事は気に入らないが流石に両腕を失った状態で戦闘を続けようとするほどアンナも馬鹿ではない。
2号機の突撃でミラービットの操作が疎かになっている間にハイパードッズライフルでナイトギラーガを牽制してジェネシスカスタムも前に出る。
「またお前か!」
「こっちは虫の居所が悪いっての!」
シールドで押し合う2機だが、2号機がシザーシールドを中央から展開させる。
ミラーファルシアのシールドに先端が刺さった状態で無理やりにシザーシールドを展開させた事でミラーファルシアのシールドが破壊され、2号機はミラーファルシアを蹴り飛ばしてドッズライフルを連射する。
ジェネシスカスタムと3号機の方にミラービットを使ったせいでミラーファルシアの周囲にはミラービットは残されてはいない為、シールドを失った状態では回避するしかない。
幸いエイミーの射撃は大して正確と言う訳ではない為、かわす事は出来たが防御力に特化しているファルシアで大火力の武器ならともかくドッズライフルを防御出来ずに回避するしかないと言うのは屈辱的だ。
「アビー。余り熱くなるな」
「分かってるわ」
ナイトギラーガがビットで2号機を攻撃して2号機は何とかシザーシールドで守る。
後方から3号機の砲撃が行われてジェネシスカスタムはビームアックスでナイトギラーガを攻撃する。
ジェネシスカスタムの一撃をナイトギラーガはギラーガアックスで受け止める。
2号機が外の増援に向かった頃、コロニー内にAGE-ZEROと6号機が増援に向かっていた。
すでに別ルートから数機のMSがミンスリーに侵入して5号機の援護に向かおうとしている。
「リック! 俺が雑魚を引き受けた。事情は分からんが5号機はお前に任せる!」
「ありがとうございます!」
ロイドも5号機のパイロットとリックの間で何があったかは知らないがリックの様子がいつもと少し違うと言う事には気づいていた。
だからこそ、自分が5号機以外を引き受けてリックには思う存分やらせようとしている。
AGE-ZEROは真っ直ぐ1号機と5号機が交戦している方に飛んでいき6号機は地上をホバー移動しながらミンスリーに入り込んだ敵の迎撃に向かう。
「コロニー内でガンダムの武器は強力過ぎる……」
1号機と5号機の戦闘は互いにビームサーベルで切り結びながらも次第にディーヴァが停泊している港とは別の港の近くまで移動している。
AGE-ZEROの装備はコロニー自体を破壊しかねない威力を持っている為、DCドッズライフルは使えない。
となれば、ビームブレードを使った近接戦闘しかない。
「先輩……」
AGE-ZEROは地上で追加装備された脚部のマイクロミサイルを使う。
マイクロミサイルは小型である為に威力も小さく直撃させればMSの装甲にダメージを与える事は出来るが致命傷には期待できない程度の威力しかない。
その為、コロニー内で撃ってもコロニーに対して損傷を与える事もほとんどない。
「ゼロか!」
「リック・アスノ」
2機は互いに飛び退いてマイクロミサイルを回避する。
そして、2機の間にAGE-ZEROが降りる。
「エリスさん。ここは僕に……」
「断る」
エリスにここは自分に任せて貰うように言おうとするもエリスは聞く耳を持たずに5号機に突撃してビームサーベルを振るう。
5号機は機体を後退させながらシールドライフルで応戦する。
シールドで5号機の攻撃を回避した1号機はビームサーベルを振るうも5号機は大きく飛んで回避する。
「流石に2対1は分が悪いわね。姉様は他にも策があると言っていたしここは一度引いた方が良いわね」
港が近かったと言う事もあり、5号機はシールドライフルで弾幕を張って港から宇宙に出る。
「ちっ……逃がすか!」
「エリスさん!」
それを1号機が追いかけてAGE-ZEROもそれに続く。
コロニーの外に出ると数機のドラドがビームバルカンを向けて待ち構えていた。
2機のガンダムが宇宙に出た瞬間にドラドが一斉にビームバルカンを放つ。
「雑魚に用はない!」
「こんな事に時間を使っている暇はないだ!」
ドラドの集中砲火をかわして1号機とAGE-ZEROは瞬時にドラドを切り捨てる。
「足止めにすらならないようね。ファンネル!」
ドラドが全滅した事で5号機はCファンネルを射出する。
地上で使った時とは違って今度は激しい頭痛もない。
5号機はCファンネルを展開して2機へと向ける。
「そんな小細工で私を止められると思うなよ!」
Cファンネルを無視して1号機が5号機に突撃するが、Cファンネルが行く手を妨害して5号機がシールドライフルを放つ。
「成程、こちらの動きを先読みしているのか。面白い」
Cファンネルの動きは常に1号機の動きの先を行っている。
恐らくはヴァネッサがXラウンダー能力で1号機の動きを先読みして動きを封じれるようにCファンネルを操っているからだろう。
5号機が1号機の相手をしている隙に距離を詰めようとしたAGE-ZEROだが、1号機に使っていないCファンネルが邪魔をする。
「僕の動きも先読みしている!」
AGE-ZEROと1号機は常に動きの先を呼んで攻撃して来るCファンネルと5号機の連携に完全に抑え込まれていた。
「先読みがお前だけの専売特許ではない事を教えてやる」
「くっ!」
Cファンネルが自分達の動きの先を呼んでいるのであれば自分達はその更に先をXラウンダーで読むしか現状を打破する手段は無かった。
それに対してヴァネッサもまた先を読んでいる先を読まれているのであれば更にその先を読んで対応する。
そうなれば二人もその更に先を読む。
三人は常に相手の先を読み続ける。
Xラウンダー能力による先読み合戦に入り、やがて相手の先を読む為と機体操縦に集中している為誰も気づいていないが、普段Xラウンダー能力を使って先読みをしているのは精々数秒後だが、今は数十分後の先まで読んでいる。
これは三人がXラウンダー能力を行使した事で互いに互いのXラウンダー能力と共鳴し合ってその能力が増しているからだ。
それ自体は何十年も前から研究によって明らかになっていることだ。
元々高いXラウンダー能力を持つ3人のXラウンダーがそれぞれの能力と共鳴し合うと言う今の事態を専門の研究者が知れば真っ青になるだろう。
Xラウンダーの研究は何十年と続いているが、完全にXラウンダーの事を理解できているとは言い難い。
Xラウンダーは人間の脳に関わって来る為、Xラウンダーの事をより知る為には生きたXラウンダーの脳を直接調べるしかない。
死んだXラウンダーの脳は完全にX領域も活動を停止している為、死体では意味がないからだ。
しかし、生きたXラウンダーの脳を調べると言っても限界がある。
直接頭を切り開くと言う事は非人道的である為、タブーとされている。
切り開く以外でも脳をスキャンするなりして調べてはいるが、Xラウンダー能力自体能力者によって能力に差がある為、その差がなぜ出来るのかと言う事も含めて未だに解明は出来てはいない。
そして、過去にはXラウンダー能力が共鳴して能力が跳ね上がると言う事は研究で分かっている。
だが、高レベルのXラウンダーが3人で共鳴すると言う事は過去に誰も実験を行った事が無い為、何が起こるか分からない。
「っ!」
「何だ……これは」
「先輩?」
そして、それは起きた。
突如、ヴァネッサの5号機の動きが止まる。
次の瞬間、エリスとリックは弾き飛ばされるような感覚を受ける。
実際に機体が弾き飛ばされた訳ではなくあくまでも感覚的な事だ。
「一体何が……」
エリスとリックは顔をしかめている。
先ほどまでは互いに共鳴していても気にも留めていなかったが、今はヴァネッサのXラウンダー能力と共鳴する事で苦痛となっていた。
「能力が暴走しているのか!」
Xラウンダー同士が共鳴する以外でも研究によって明らかになっている事は他にもあるその中の一つにXラウンダー能力の暴走だ。
Xラウンダーが自身のXラウンダー能力を制御できなくなった時に起きる現象でその名の通り能力が暴走し、能力者が自身でコントロールできなくなると言う物だ。
能力が暴走すると言う事はXラウンダーなら誰でもあり得るリスクではあるが、暴走するケースは稀でパイロットとしてXラウンダー能力を使い続けたところで生涯暴走しない事の方が圧倒的に多い。
能力者同士が共鳴したところで暴走すると言う事も稀であった。
暴走の理由として考えられている理由は脳に傷を負っているケースだ。
脳に傷害がある事で制御が利かなくなると言うのが主な理由だが、それで暴走するケースも稀であった。
大抵は傷害の影響で能力を使う時に激痛が走りそれ以上能力が使えない事か能力自体が弱くなったり使えなくなったりする方が多いからだ。
実際、ヴァネッサも地上でCファンネルを使おうとした時に頭に激痛が走りそれ以上能力を使う事が出来なかった。
それは傷が治らぬうちに能力を使おうとした事による物で時間が経つ事で傷も癒えてミンスリーでリックを呼び出そうとした時は問題なく能力を使う事は出来ていた。
しかし、リックとエリスと共鳴し、能力が上がった事で脳に傷を持っていたヴァネッサが真っ先に自身の能力が制御不能の状態、即ち能力が暴走したと言う事だ。
暴走したXラウンダー能力は一方的に他のXラウンダーにも干渉する事で付近のXラウンダーに苦痛を与える結果となる。
「どうすれば止められるんですか!」
「知らん。だがアイツを殺れば確実と止まる」
「駄目です!」
1号機は5号機にドッズガンを向ける。
5号機はただ漂っているだけで能力に干渉されて狙いが定まらないが十分に狙う事は可能だ。
だが、リックはそれを止める。
例え能力の暴走を止めて自分達への干渉を止める為とは言ってもヴァネッサを殺すと言う事はあってはならない事だからだ。
「ちっ……仕方がない」
エリスは自身もXラウンダー能力を使ってヴァネッサのXラウンダー能力に干渉を始める。
「暴走した程度でこの私にXラウンダー能力で勝てると思うなよ! 小娘が!」
「うっぐ……」
暴走するヴァネッサのXラウンダー能力に対してエリスのXラウンダー能力で強引に抑え込もうとする。
互いに互いのXラウンダー能力に干渉し合う事で互いに苦痛を与えあう。
「私の中に入って来るなぁぁぁぁ!」
「こいつ……どういう事だ」
能力同士が共鳴し合う事で互いに意識が共鳴し合い、ヴァネッサの意識の中にエリスが入り込む。
その中でエリスはヴァネッサの記憶の断片を見る。
そこには幼き日のヴァネッサの記憶が垣間見えた。
ヴァネッサと共に幼いヴァレンティナと共に女性に抱きかかえられている記憶だ。
腰まで伸びた長い髪に金と碧の瞳が特徴的な女性は優しそうに微笑んで双子の姉妹の頭を撫でる。
その女性の事をエリスは知っている。
「私だと……」
見間違う訳もない。
双子を抱いているのはエリスだ。
だが、エリスにはそんな記憶は全くない。
しかし、この記憶はヴァネッサの物だ。
実際にヴァネッサにはこの記憶を持っている。
「母様との思い出に土足で入るな!」
「ちっ!」
互いに意識を共有していたが、ヴァネッサのXラウンダー能力が更に強くなりエリスは押し返されるようにヴァネッサの意識から弾き飛ばされる。
そして、それに対抗するかのようにエリスも更に強い能力を使う。
「エリスさん! 先輩ももう止めて下さい! その力は危険です! これ以上使い続けたら先輩が先輩でなくなってしまいます!」
「私の中から出て行けぇぇぇぇ!」
リックの懸命な叫びもヴァネッサには届かない。
エリスとヴァネッサは互いに競い合うかのようにより強いXラウンダー能力を使い続ける。
このままではエリスの能力もまた制御を失いかねない。
エリスが暴走せずともこのままでは二人の脳が能力を使いづつける負荷に耐え切れなくなって壊れてしまうだろう。
「もう……止めて下さい!」
リックが叫び、それに反応するかのようにAGE-ZEROが青白く光りバーストモードが起動する。
「これは……」
バーストモードとなったAGE-ZEROの周囲ではXラウンダーはX領域の活動が沈静化されて一時的に能力を失う。
それは暴走した能力者も同様だ。
X領域が沈静化していればXラウンダー能力が全く使えない状態である為、暴走のしようがない。
「止まった?」
「そのようだな。まさか、そいつにそのようなシステムが組み込まれていたとはな」
以前もバーストモードを使った事はあるが、その時にはエリスは大気圏に降下していた為、バーストモードの効果範囲にはおらず、AGE-ZEROに関しては大して興味もなかった事もあってAGE-ZEROのバーストモードの事は今初めて知った。
「母、様……」
暴走をバーストモードで強制的に止められたが、暴走していた時に脳に多大な負荷をかけていた事もありヴァネッサはコックピットで意識を失う。
「そいつにはMSの機能を停止させる機能も備わっているのか?」
「そんな事は聞いた事はないですけど……」
AGE-ZEROのバーストモードはあくまでもXラウンダー能力の強制停止しか出来ないが、5号機は完全に機能が停止しているようにも見える。
「機体トラブルでしょうか?」
「知るか。で、そいつをどうしたい。気は進まないが殺しても構わんぞ」
機体の機能が停止しただけではなく、パイロットの敵意も完全に消えている。
本能的に気に入らない相手ではあったが、戦う意思のない相手を倒したところでエリスの気が晴れると言う事は無い。
その為、すでにエリスもやる気が失われている。
「駄目です。機体の機能が停止しているのなら、このままディーヴァに持ち帰ります」
「好きにしろ。私は疲れたから先に帰る」
エリスもかなり無理をしてXラウンダー能力を使っている為、表情には出さないが限界に近かった。
その為、さっさとディーヴァへと帰還して行く。
AGE-ZEROは機体の機能が停止して、動かずに宇宙を漂う5号機を回収してディーヴァへと戻る。
「ヴァネッサ様!」
「邪魔を!」
外で交戦していたジェレミアとアビーも先ほどまで暴走したヴァネッサの干渉を受けて劣勢に追い込まれていた。
今はAGE-ZEROのバーストモードで強制的に暴走が止められた事で干渉を受ける事がなくなったが、同時にヴァネッサの5号機が敵に鹵獲されたと言う事を知る事になる。
強引に突破してヴァネッサの救出に向かおうとするが、ジェネシスカスタムと2号機を突破する事が出来ずにジェレミアとアビーは焦りばかりが募る。
「ジェレミア、アビー。帰還しろ」
「ヴァレンティナ様! しかし、ヴァネッサ様が!」
「構わん」
ヴァレンティナは一切の躊躇いもなくそう言う。
その言い方からすでにヴァネッサの事は知っているようだ。
「ですが!」
「これも作戦の内だ。作戦は問題なく継続中だ」
ジェレミア達は知らされていない事だったが、この状況はヴァレンティナにとっては作戦の内で今の状況こそ目論見通りの展開であった。
その事を知らされていないジェレミアとアビーは動揺する。
「一体、どういう事なのですか?」
「それについては後で説明する。今はグレート・エデンまで戻って来い」
「……了解です」
まだ、納得はいかないが指導者であるヴァレンティナがそう言う以上はそれに従うしかない。
「聞いたな。アビー」
「ええ……」
ナイトギラーガはビットを大量に展開してばら撒く。
ジェネシスカスタムと2号機がビットの迎撃をしている間に2機は後退する。
「逃げんな!」
「深追いは必要ないわ。こっちも帰投するわ」
元々、迎撃戦で相手が撤退する以上は追撃の必要はない。
エイミーも渋々だがローザの指示に従い敵が戻って来ない事を確認しながらディーヴァへと帰投する。