機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第137話

 

 

 宇宙要塞アンバットでシドを倒し、クライドからと思われるメッセージデータを受け取ったディーヴァは速やかにデータのロック解除に入っていた。

 当初はクライドがロックを掛けたと思われるところからロックの解除はディーヴァ内では困難かと思われたが、思いのほか簡単にロックは解けた。

 

「これがリック君のガンダムに送られて来たデータです。内容はコロニーの位置座標のコロニー内の住所が記されているのみでした」

 

 メッセージデータの内容はシンプルだったコロニーの位置座標と住所。

 つまりは次にそのコロニーのその場所に向かえと言う指示なのだろう。

 そのコロニーの位置座標と住所を見たアセムは顔をしかめる。

 

「すぐに座標のコロニーと住所の場所を特定して貰うようにマッドーナ工房の方に依頼を出しておきます」

「その必要はない。この場所なら知っているからな」

 

 データには座標と住所しか記されていない為、場所を特定する必要があったが、アセムにはデータを見ただけでもそれがどこなのか分かった。

 その場所はアセムにとっては非常に馴染みの深い場所だったからだ。

 

「コロニーの名はトルディア、場所は旧アスノ邸だ」

 

 それはアセムが幼少期から軍に入隊する青年期までを過ごしたコロニートルディアの位置を示しており、住所はアセムが育った家の場所を指している。

 かつてはアセムが暮らしていたアスノ邸は今では誰も住んではいないが、そのままの状態で保存されていると聞いている。

 次の目的地はその旧アスノ邸だと言う事だ。

 

「まさか、次はここでシドと戦えって事ですか?」

「分からん。だが、いかない訳にはいかんと言う事だけは確実だ」

 

 エンジェルとアンバットではどちらにもシドが出て来た。

 そうなれば次の目的地でもクライドが自分達を試す為にシドを用意していていると考えるのが自然だ。

 今まではどちらも何十年も前に廃棄されて一般人が寄り付く事は無かったが、トルディアは今でも多くの一般人が普通の生活をしている。

 更にエンジェルとアンバットのシドではアンバットのシドの方が性能が上がっている。

 先に進む度にシドの性能が上がっていると言うのであれば次に出て来るシドは更に性能を上げられているだろう。

 そんな物とトルディアで交戦すればトルディアは甚大な被害を受ける事は確実だ。

 だからと言って今更いかないと言う選択肢を取る事も出来ない。

 

「とにかく、今の今までトルディアでシドが暴れていない事を考えると叔父さんがトルディアにシドを配置していない可能性もあるし、不用意に藪を突かなければいいのかも知れん」

 

 今までのパターンから目的地に接近すればシドが攻撃をして来る。

 本当にトルディアにシドを配置していたのであれば当の昔にトルディアは壊滅している。

 そうなっていない理由は2つだ。

 1つ目はシドが配置されていないと言う可能性。

 もう一つはシドが配置されていても起動していないと言う可能性だ。

 前者はシド自体がいない為、問題はないのだが後者の場合は何かしらの条件を満たさなければシドは起動しないと言う事だ。

 その場合は慎重に行動すれば少なくともシドが起動してトルディアを戦場にすると言う事はない。

 

「いつもの事だが、悠長な事出来ないから、すぐに進路をトルディアに向ける」

 

 シドの事もだが、ネオ・ヴェイガンの行動も気にはなる。

 その為、ネオ・ヴェイガンが動き始める前にトルディアに向かい次の目的地に向かう必要があった。

 その後、ディーヴァはトルディアへと進路を向けて次の目的地へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 トルディアに進路を向けたディーヴァだがアンバットのあるL2宙域からトルディアのあるL4宙域までは相当の距離がある。

 ミンスリーでの戦闘以降、不気味なまでにネオ・ヴェイガンとの接触は無かった。

 連邦軍の方はディーヴァを探しているらしく、時々接触しそうにはなるが何とかやり過ごしている。

 ネオ・ヴェイガンが全く動きがないと言うのは余りにも不自然である為、アセムはリックにヴァネッサとの面会の許可を出す事にした。

 ヴァネッサは数日前に意識を取り戻している。

 幸い暴れると言う事はないが、一切の聴取に黙秘を続けていた。

 少しでも情報を得る為にはやり方を変える必要があった。

 拷問などで吐かせる方法もあったが、やり方を間違えてヴァネッサを殺してしまえば意味がなく、今のディーヴァに専門的な知識と経験を持つ者はいない。

 その為、ヴァネッサと面識のあるリックに話しをさせて情報を得ようとしての判断だ。

 無論、逆にリックの方がヴァネッサに話しの中で情報を漏らす危険性がある為、二人の会話は筒抜けの状態となっている。

 

「先輩……」

「今度は貴方」

 

 ベッドに拘束されているヴァネッサはリックの方を見る事なくそう言う。

 事前に聞いてはいたが、ベッドに拘束されているヴァネッサを見てリックは顔をしかめている。

 だが、拘束と言っても動きを封じるだけで非人道的と言う程でもないと自分に言い聞かせる。

 ここで問題を起こしてしまえば折角、アセムから面会の許可を得た事も無駄になってしまう。

 リックは椅子に座って頭の中を整理する。

 こうしてMSに乗ってではなく、話しをする事の出来る機会を得たのだ無駄にする訳にはいかない。

 

「何をやっているんだろう……私は」

 

 リックが考えている間にヴァネッサは呟く。

 その声に今までのような力強さはない。

 

「私は姉様と共に母様の理想とする世界を実現する為に戦うと決めたと言うのにこの体たらく……」

「先輩……」

 

 自傷気味に言うヴァネッサは余りに痛々しいがリックにはなんと声をかけていいか分からない。

 

「姉様の邪魔になるくらいならいっそここで死を選ぶと言うのも一興ね……」

「そんな事!」

「それでは困るな」

 

 自殺を仄めかすヴァネッサに思わずリックは立ち上がるが、いつの間にか部屋に入り込んでいたエリスが割り込んで来る。

 

「姉様? 違う。誰?」

 

 一瞬、エリスの事をヴァレンティナと見間違えるが、すぐに別人だと気付いた。

 だが、ヴァネッサの言葉を無視してエリスは部屋の監視カメラを破壊し、内部の音声を拾っているマイクも全て破壊する。

 

「さて、これでゆっくりと話しが出来る。ああ、これは私の独断だから無駄な話しをしている時間は無い。お前は何だ? なぜ、お前の記憶に私が存在していた?」

 

 エリスは矢継ぎ早にそう言う。

 エリスの行動自体、アセムには独断での物だった。

 話しの内容自体は記録に残したくは無い為、監視カメラもマイクも破壊した。

 それはすぐに明らかになる事でそうなれば保安要員がすぐにでもここに駆けつけて来るだろう。

 そうなる前にヴァネッサに聞き出さなくてはならない。

 

「母様……なの?」

「私がヴァニス・イゼルカントだったと言うのであればそうだが、お前の母かどうかは知らん」

 

 ヴァネッサは直感的にそう感じた。

 見た目こそは双子の姉であるヴァレンティナに瓜二つだが、ヴァレンティナではない。

 ヴァレンティナでなければ母として信奉していたヴァニス以外には考えられなかった。

 エリスの方もその事実に関しては否定する気は無い。

 エリスの答えにヴァネッサだけでなく、リックも驚いているが時間が無い為、リックに構っている暇もない。

 

「私に子供がいた過去もましてやお前の記憶のような過去も存在しない。そもそも、私は理想の世界などどうでも良かった。私はただ世界征服がしたかったに過ぎない。どこでそんなデタラメを吹き込まれた」

 

 エリスにとってはヴァネッサとXラウンダー能力が共鳴した時に見た記憶には覚えがない。

 だが、あそこにいたのは紛れもなく自分である事も何となく確信があった。

 そして、エリス自身はヴァネッサ達の言う理想の世界などには興味はなかった。

 

「嘘よ! そんな筈はないわ! 母様は理想の世界の為にって! ヴァレリが!」

「ヴァレリ……アイツ、まだ生きていたのか。しぶといな……成程、そう言う事か。懲りないなアイツも」

 

 ヴァネッサは信奉していた母に今まで信じて来た物の全てを否定されて半狂乱になるが、そんな様子もなくエリスは自分の中で立てていた仮説に対してある確信を持つ事が出来た。

 

「私達は何の為に!」

「邪魔をしたな。用は終わった」

 

 聞く事は聞いたエリスは叫ぶヴァネッサをそのままにして部屋を出ていく。

 その後、事態を知った保安要員が駆けつけて半狂乱のヴァネッサを薬で眠らせた為、リックはヴァネッサとまともに話しをする事が出来ずに終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリスの行動でリックの面会は終わったが、事態はそれで終わった訳ではない。

 監視カメラには確かにエリスが部屋に入って来て監視カメラを破壊する様子が記録されていた。

 マイクも破壊されていた為、あの時部屋の中で起きた事は記録されていない。

 知っているのはあの時に中にいたリックとエリスだが、エリスの方が行動の理由も含めて事情を把握している為、アセムに艦長室に呼び出されている。

 無視したところで懲罰を与える事が出来ないが、エリスは素直に呼び出しに応じていた。

 一応は勝手な行動で呼び出されたのだが、当のエリスは悪びれる様子もなく艦長室のソファーに座り込んでいる。

 

「呼び出された理由は分かっているんだろうな」

「確認をしたかっただけだ」

「確認?」

「そうだ。あの女は私と遺伝子上の同一人物なのだろう? それに奴と共鳴した時に奴の記憶の一部を垣間見た。色々と心当たりがあってな。その確認だ」

 

 すでにエリスにもエリスとヴァネッサが遺伝子上の同一人物であると言う結果が出た事は伝えた、その直後にエリスは行動を起こしていた。

 それについてエリス自身は心当たりがあったらしく、それについて確認する為だったと言う。

 

「それで何か分かったのか?」

 

 多少、勝手な行動を取られたが何かしらの情報を得たのであるなら今は文句を言っている暇はない。

 

「ああ、あのヴァネッサとか言う娘が私の娘である事が分かった」

「前は否定していた筈だが?」

「あの時は知らんかったからな。だが、ヴァネッサの話しを聞いて確信したよ。ヴァネッサと恐らくはヴァレンティナも私の娘だ。私が保障する」

 

 流石にアセムも頭の中が混乱して来た。

 前にヴァレンティナとヴァネッサとの関係を問いただしたところ、エリスははっきりと関係を否定した。

 だが、今は逆に娘であると言う事を保障している。

 つまり、あの部屋の中で証言を翻す何かがあったと言う事になる。

 

「尤も私が産んだ娘と言う訳ではない。私は処女だからな。アイツ等は私の強化クローン人間と言ったところだろうな」

「強化クローン人間……以前にもイゼルカントが作り出したあれか」

「それだ。あの二人は私の遺伝子情報を基に生み出された強化クローン人間。私がアイツ等を前に妙にむかついたのは私自身とも言えたからだろうな。同族嫌悪みたいなものだろう。何、知って仕舞えば簡単な事だ。唯一無二の私がこの世に他に2人もいたんだむかつくのも当然だ」

 

 エリスは自分と遺伝子上の同一人物であると聞かされた時点である仮説を立てた。

 それが自分のクローンであると言う可能性だ。

 過去にフェザール・イゼルカントが自分のクローンであるゼラ・ギンスを作り出したように何者かが自分の遺伝子情報からクローンを生み出したと言う可能性だ。

 それなら自分と同じ遺伝子情報を持っている事にも説明が付く。

 

「そして、それをやったのが、ヴァレリ・アダモフ。かつて私の部下だった男だ。アイツなら私の遺伝子情報を手に入れるのも容易だ」

 

 ヴァネッサがヴァレリの名を出した事でエリスの仮定は確信に変わった。

 ヴァレリはかつて、エリスがヴァニスを名乗りネオ・ヴェイガンを設立した際に参謀に収まっていた男だ。

 その地位にいたのであればエリスの知らぬうちにエリスの遺伝子情報を手に入れる事も簡単に出来る。

 

「アイツは自分の才能を特別だと思い込んでいる。故に自分こそが影の支配者に相応しいと思いあがった奴でな。そんなアイツの事が気に入らなかったからUIEとの会談中に切り捨てて来たんだがな。ゴキブリの如くしぶといらしい」

 

 ヴァレリを切り捨てた最大の理由がそこにあった。

 当時のヴァレリは極秘裏にUIEとパイプを築き、ネオ・ヴェイガンとの仲介を行った。

 その際にエリスとUIEの指導者のフェオドールを婚約させてようと目論んでいた。

 表向きはネオ・ヴェイガンとUIEの結束の為などと名打っていたが、実際のところは二人の間に生まれるであろう子供の教育係となり自分に都合の良く意のままに操れる次期指導者を作ると言う物だった。

 自分を利用としていた事が気に入らなかったエリスはヴァレリの目論見を潰したついてに切り捨てた。

 だが、その時点でUIEの側に付くだけではなく、エリスの遺伝子情報も手に入れていたと言う事になる。

 

「そこまでした奴の事だ。あの決戦でUIEが敗北した時の事も想定していたんだろう。その上で私が高潔で世界の為に戦ったのだと吹き込んだ……いや、洗脳したと言う方が正しいだろうな。高潔である事は否定のしようもない事実ではあるが、私が世界の為に戦ったか……アイツも中々冗談が上手いな」

 

 ヴァニス・イゼルカントが世界征服をしようとしていた事が歴史上の事実として誰もが知っていることだ。

 それを信じずにヴァレリの言葉こそが正しい事なのだと今まで信じていたのはヴァレリの教育の賜物だろう。

 そして、その教育によって教えられたヴァニス・イゼルカント像が信じるである事を裏付ける為に記憶の一部を操作されていると見ていいだろう。

 幾ら、ヴァレリが母親は高潔だったと教えたところで一般的なヴァニス・イゼルカントが暴君であった事を耳にする機会は少なくはないだろう。

 始めは連邦政府がネオ・ヴェイガンとヴァニスを悪に仕立て上げる為のプロパカンダであると信じなくとも調べればそれが意図的に改竄された情報ではなく、真実であった事は分かる事だ。

 それでもヴァレリの偽りのヴァニス像を信じたのはそれを信じるに足る記憶があったからだろう。

 その記憶こそが共鳴の中で見た双子を抱くヴァニスの姿だ。

 その記憶があったからこそ、母は高潔な人間だと今まで信じて来たのだろう。

 

「つまり、今のネオ・ヴェイガンの本当の指導者はそのヴァレリと言う奴と言う事か?」

「だろうな。全く、人の娘に勝手な事をしおって奴は私が殺す。異論はないな」

「ネオ・ヴェイガンはいずれは何とかしないといけない事は事実だ。自分の目的の為にそこまで人の道を外れた奴を許す気もない。だが、今の俺達がすべき事はEXA-DBを見つけ出す事だ。分かっているな」

「分かっているさ。奴を殺すのはその後でも良いさ。まだ、もう一人の娘の方も残っている事だしな」

 

 アセムとしてもそこまで手段を選ばずに人道から外れたヴァレリを許す事は出来ない。

 しかし、感情的になってヴァレリを討つ事に拘っている余裕はない。

 今のアセム達にはEXA-DBを見つけると言う役目がある。

 ここまで来るのに少なからず犠牲は出ている。

 その犠牲を無駄にしてはいけない責任がある。

 

「それにしても意外だな。お前が自分の娘の為に本気になるとはな。そう言う事には無縁だと思っていた」

「失敬だな。私とて母親属性をみすみす捨てると言う事はしないさ。それに私がアイツ等の存在を否定する事など出来る訳がないだろう。それは私自身を否定する行為に他ならない」

 

 母親属性云々はさて置き、アセムはエリスの出生の事は知っている。

 だからこそ、ヴァネッサとヴァレンティナの存在を否定する事が出来ないと言う事は理解できた。

 エリス自身、クライドとエリーゼの間に生まれた子供と言う訳ではない。

 クライドがエリーゼの遺伝子データを元に生み出した強化人間だ。

 厳密にクライドに生み出されただけでクライドが父親と言う訳ではないが、エリスはクライドの事を実の父親だと思っている。

 つまり、双子の事を自分のクローンであって自分の娘ではないと言い切る事は簡単で自分の関与していないところで自分の知らないうちに生み出され、今の今まで面識すらなかった2人を娘と認めなくても誰も非難はしないだろう。

 しかし、それを認めないと言う事は自分がクライドの娘である事すらも否定する事もなってしまう。

 故にエリスはヴァネッサとヴァレンティナの事を自分の娘であると認めたと言う事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トルディアを目指して数日が経ちようやくトルディアが目と鼻の先までと言う宙域でディーヴァは身を隠していた。

 シドが起動するかも知れない条件で今のところ考えられる事はAGEデバイスの存在だ。

 前回のアンバットではAGEデバイスがセットされたガンダムAGE-ZEROにデータが送られて来たここまでの航海の途中でAGEデバイスがセットされたMSに対して送信されて来たと言う可能性が高いと言う事が報告されている。

 今回もシドを起動させる条件としてAGEデバイスがトルディアの近くに接近すると言う事が考えられるため、ディーヴァは必要以上にトルディアに接近せずに身を隠して待機して少数でトルディアに向かい旧アスノ邸の捜索を行うと言う手筈になっている。

 ディーヴァに積んである小型艇にて旧アスノ邸を良く知るアセムと護衛にロイドとエリスを連れてトルディアへと向かった。

 

「すんなりと入る事ができたっすけど、大丈夫なんすか?」

「小型艇一隻を沈める事は容易いんだ。わざわざ危険を冒す必要もないさ」

 

 小型艇は軍が管理している港に入港していた。

 入港は軍に追われているディーヴァからの小型艇とは思えない待遇を受けている。

 それだけ見れば妙な話しではあるが、実際のところアセムがいた事が大きな要因だった。

 アセムはトルディアの出身である為、トルディアでは名が知れており特にトルディア基地ではフリット・アスノに並ぶ英雄的な扱いもされている。

 それが幸いし、今の基地司令もトルディアの出身らしくアセムの事を特に詮索をする事なく港に誘導したと言う訳であった。

 基地ぐるみで小型艇の安全を確保して貰えた為、護衛の二人と共に旧アスノ邸を捜索に向かう事が出来た。

 

「このコロニーが爺さんと艦長が出会った場所なんすよね」

「そうだな。あの時は色々あったな」

 

 旧アスノ邸へと向かう車の中、アセムはここで日々を思い出す。

 始めはゼハートがヴェイガンのスパイである事を知らずに出会い友達となって友情を深めた。

 卒業式の日にその事実を知り敵となるが紆余曲折を経て元の鞘に収まっている。

 地球で自分達を宇宙に上げる為に無茶をしたゼハートの事を心配しつつも車は旧アスノ邸の前へと止まる。

 

「ここか……キャプテン、アレは何だ?」

「アレは馬小屋だな。昔はあそこで馬を飼っていた時期もあってな。今は何もいない筈だが、どうした?」

 

 車から降りたエリスは旧アスノ邸ではなく馬小屋の方を指刺した。

 かつてはフリットが藁の中にアセムの為にガンダムAGE-1を隠していた事もある馬小屋だ。

 

「あそこが……」

 

 エリスは馬小屋の方に歩いて行く。

 馬小屋に入ろうと戸に手をかけるがカギがかかっているのか古くなり立てつけが悪くなっているのか戸は開かない。

 少しして中々開こうとしない戸に業を煮やしたエリスが戸を蹴り飛ばして開ける。

 

「余り強引な事はしないでくれ。この家には思い入れがあるんだ」

「私にはないから知らん」

 

 エリスはさっさと馬小屋の中に入りアセムとロイドもそれに続く。

 馬小屋の中はアセムの言う通りすでに馬はおらず、埃まるけで蜘蛛の巣もいたる所に出来てとても長時間いられる場所ではない。

 

「艦長。ここに何かあるんすか?」

「いや……特に無いはずだが」

 

 二人の会話を横目にエリスは馬小屋の床を軽く叩いている。

 

「甘いな。あの父さんの事だぞ。極秘裏に地下室でも作ってそこにガンダムを隠しておくくらいはやってのけるぞ」

「幻のMSの噂か……あの噂の信憑性は余り高くないと言うのが最近の風潮らしいぞ」

「ん? キャプテン。どうやら私の読みの方が正しいかも知れんぞ」

 

 床を叩いていたエリスが床の叩いた時の感触が違う場所を見つけた。

 そして、そこを思い切り殴ると馬小屋の床が抜ける。

 エリスの腕が床に突き刺さり腕を引き抜くとそこには下に繋がる階段が見える。

 

「まさか、本当に地下室を作ってたのかよ。お前の親父さんは何もんだよ」

「天才技術者だ」

「いつの間に……」

 

 エリスの読みが当たった以上にアスノ邸の地下にこんな物があった事の方が驚きだ。

 アセムもここで10年以上も暮らしていたが、地下の存在には気が付かなかった。

 恐らくはアセム達が地球に暮らすようになって誰も居なくなった後にクライドが勝手に作った物でフリットも知らなかったのだろう。

 

「この先には何が待っている事やら」

 

 エリスは下に進みやすく床の板を剥いで地下に進む。

 この下に何があるのかを確認する必要もある為、エリスの後をアセムとロイドが追いかける。

 階段は以外と長く10分以上も降りてようやく行き止まりに辿りつく。

 

「行き止まりかよ」

「この先はまだ作られていなと言う事か?」

「いや……違う。そうじゃない」

 

 行き止まりには扉やパネルの類の物はない。

 試しにロイドが壁を軽く叩いたりするも何の反応もない。

 これでは先に進もうにも何もなければ進みようもない。

 ここまで作って断念したのかあるいは、クライドが死んだ為に作る事が出来なくなったのかは分からないが先に進めない為、引き返そうかと考えている矢先にエリスは行き止まりの壁の方に歩いて行く。

 

「誰かが私を呼んでいる。この先に何かある」

 

 エリスは壁に触れると壁は自動的に開いて行く。

 その先には広い空間が広がっていた。

 3人が入ると明かりがついた。

 

「お前か……私を待っていたのは」

 

 広い空間には1機のMSが置かれていた。

 その頭部からガンダムタイプのMSである事が分かる。

 『ガンダムZERO-EXA』これがこのガンダムの名であった。

 クライドが死の間際まで設計していたMSは決して作られる事がなかった訳ではない。

 クライドの死後も設計データを元に自動的に旧アスノ邸の地下にクライドが作った工廠にて作られていたのだった。

 ガンダムZERO-EXAはEXA-DBの中のデータを元にコロニー国家間戦争時のデータを多く使うだけではなくクライドがヴェイガンとの戦争の中で生み出して来た様々な技術を余すところなく注ぎ込んで完成させている。

 かつてガンダムZERO Zがクライドが生涯をかけて開発した最強のガンダムとされていたが、それで満足しなかったクライドがガンダムZERO Zを超えるガンダムとして生み出したのがガンダムZERO-EXAになる。

 動力にAGEドライヴを解析して新開発した動力炉を搭載している為、AGEドライヴ搭載機以上の出力を半永続的に使い続ける事が可能だ。

 そして、従来のMSと大きく違う点はその大きさにある。

 基本的にMSの大きさは18メートルから20メートル程が基本だ。

 しかし、ガンダムZERO-EXAはそれよりも小さく15メートル程しかない。

 小型化する事で単純に的が小さくなるため、被弾の確率が下がるだけでなく小さいが故に重量も大幅の軽くなり同じ推力でも高い機動性を確保する事が可能となる。

 装備は両腕の装甲に内蔵式のビームサーベルと右手に新開発のVSドッズライフル、左腕に小型シールド、頭部に4門のビームバルカン、胸部に2門の大口径ビームバルカンを装備している。

 小型化による攻撃力の低下を最低限に抑える為に両肩に2基つづ、バックパックに2基、腰に4基、脚部に2基つづ計10基のファンネルが装備されている。

 

「完成していたと言うのか……」

「こいつが私の新しい相棒と言う訳か。面白い!」

「艦長。やばいっすよ。連邦の奴らが俺達の目的地がここだって知られたらしくて基地の方に引き渡し要求が来てるみたいです」

 

 ロイドの通信端末にトルディア基地からの通信が入っていたらしい。

 ディーヴァがトルディアへと向かった事は連邦軍の方でも察知していたようで基地の方にディーヴァの引き渡しの要求が来ているようだ。

 わざわざ基地やコロニーに来ないで引き渡しを要求して来た事から基地ぐるみでディーヴァを匿っていると思われている為だ。

 基地ぐるみで匿っているのであれば不用意に基地やコロニーに入るのは得策ではないと言うのが向こうの指揮官の判断だ。

 だが、アセム達からすれば好都合だった。

 内部に入り込まれれば小型艇で来ている事がばれかねない。

 もしも戦闘になった場合はアセム側には戦力が無い為、トルディア基地に頼るしかない。

 そうなれば同士討ちをさせることになってしまう。

 

「ディーヴァの事は気が付かれてはいないんだな?」

「でしょうね。だったらコロニーに乗り込んで来る筈ですからね」

 

 外から要求を出してくると言う事は向こうもディーヴァがトルディアに入り込んでいると考えているからだ。

 コロニーの外にいればディーヴァが逃げる為に出航すればすぐに見つけて攻撃を開始するつもりなのだろう。

 

「基地司令にディーヴァにはその場を動くなと伝えて貰え。MSの出撃もさせるなよ」

 

 ディーヴァが下手に動いて見つかればすぐに戦闘になる事は確実だ。

 向こうの戦力が正確に把握できな以上は戦闘は避けたい。

 ただでさえ、エリスとロイドは戦闘には参加できず、艦長のアセムも居ない。

 今はローザに艦長代理をさせてはいるが、戦闘になれば彼女も出撃せざる負えない。

 

「さて……どうする」

「決まっている。この状況だ。私がこいつで出るしかあるまい」

 

 エリスは後ろのガンダムZERO-EXAを指さしてそう言う。

 エリスの1号機は持って来てはいないが、ここにはクライドの最後に設計したガンダムがある。

 このガンダムがガンダムZERO ZやガンダムAGE-ZEROを凌駕したガンダムである事は感じ取っている。

 ガンダムZERO-EXAならこの状況を打破できると言う事は確信できた。

 

「分かった。お前が出て状況を変えて来い。但し、相手は連邦軍だ。最低限の犠牲で済ませるんだ」

「最低限だと? 生温いな。私とこいつなら誰一人として死なさずに勝利して見せよう」

 

 エリスは自身満々に言い切る。

 それだけの事をやる事も十分に可能だと思わせるだけの力がガンダムZERO-EXAにはある。

 

「頼む。俺とロイドはいつでもディーヴァに戻れるように小型艇で待機する」

「任せとけ」

 

 エリスはそう言ってガンダムZERO-EXAへと向かう。

 ご丁寧にガンダムZERO-EXAのコックピットには専用のパイロットスーツが用意されていた。

 エリスの体系に完全に合わせてあり従来のパイロットスーツやノーマルスーツでは胸が締め付けられて息苦しかったが、このパイロットスーツにはそれもない。

 ガンダムZERO-EXAのコックピットはクランシェⅢやAGE-ZERO、ゼクスシリーズに近いが少し違った。

 全方位モニターとシートは共通しているが、計器やモニターの類は殆どない。

 機体の小型化に伴いコックピットもまた従来のMSよりも狭くなっている。

 その為、余計な物を省いているのだ。

 モニターは正面の一つでモニターを操作するボタンは無くタッチパネル式になっている。

 操縦桿もレバーではなくクライドが大昔に一度だけ採用したボール型の物になっている。

 エリスはボール型の操縦桿に手を置くと機体が起動して機体の状態やセンサー系の情報などがフォロスクリーンによる立体映像でコックピット内に映された。

 これも無駄を省く為に初めてMSに採用された方式である。

 ボール型の操縦桿で機体操縦と同時に情報を切り替える事を同時に要求される為、機体の操縦難度が格段に上がる事もあって一般兵の乗る量産機にはとても採用は出来ないがエリスなら問題なく乗りこなせるとクライドは判断したのだろう。

 

「使い勝手は少し違うが……まぁ、何とかなるだろう」

 

 機体の装備等を確認しながらそう言う。

 操縦方法が少し違うが根本的な部分に代わりが無い為、操縦に問題はない。

 

「これは……次の目的地、いやゴールか」

 

 機体情報の中に機体の情報以外の情報が一つだけあった。

 それはEXA-DBのありかの情報であった。

 次の目的地として旧アスノ邸を指定したのはこれを手に入れさせる為だったのだろう。

 恐らくはここにシドは配置されていない。

 ガンダムZERO-EXAを手に入れる条件はエリスがいる事だったのだろう。

 行き止まりの壁はロイドが触れたところで反応を示さなかったが、エリスが触れたら自動的に開いた。

 あの壁はただの壁ではなく生体情報を認識できるようになっていたのだろう。

 

「成程……ここにEXA-DBがあったのか」

 

 そのEXA-DBが隠されている場所は意外とも思えるが意外と言う程でもない場所だった。

 

「この事を伝えるのは後でも良いか。今はこいつで暴れたい気分だからな」

 

 通信でアセムにEXA-DBの場所を知らせる事は出来るが、エリスの気分はクライドが最後に設計したガンダムZERO-EXAの力を実戦で見たくてたまらなかった。

 

「エリス・アスノ。ガンダムZERO-EXA……出るぞ」

 

 エリスはクライドが残した最後のガンダムにて戦場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トルディア基地に対してディーヴァの引き渡し勧告を行うもトルディア基地はだんまりを決め込んでいた。

 それに対して連邦軍は強硬策に出る為、MSの展開を開始していた。

 量産型ディーヴァ級が3隻とクランシェⅢが10機以上も展開している。

 まずはクランシェⅢで突っついてトルディア基地の反応を確かめた上で基地を制圧する作戦だ。

 だが、コロニー側から放たれたビームがクランシェⅢの頭部を撃ち抜いた。

 

「さて……こっからは私のターンだ」

 

 トルディアから外に出たガンダムZERO-EXAはVSドッズライフルを放つ。

 放たれたビームはクランシェⅢの右腕を撃ち抜いて破壊する。

 そして、一気に加速して敵部隊に突撃する。

 

「小さいだけあって大した加速だ」

 

 ガンダムZERO-EXAの加速はガンダムZERO Zを遥かに上回っている。

 従来のMSよりも小型と言うだけあってクランシェⅢのパイロットにはガンダムZERO-EXAとの距離がまだ離れていると錯覚している為、更に速く感じるだろう。

 左腕のビームサーベルでクランシェⅢの右腕と頭部をすれ違いざまに切り裂いて別のクランシェⅢにVSドッズライフルで頭部と両腕を撃ち抜く。

 

「感度も良い。機体が手足のように動く」

 

 量産型ディーヴァ級からの砲撃を小型シールドから高出力ビームシールドを展開して防ぐ。

 その隙にクランシェⅢがドッズランサーで接近戦を仕掛けるが突き出して来たドッズランサーの槍の部分を掴む。

 そして、槍の部分を握り潰しながら頭部のビームバルカンでクランシェⅢの頭部を破壊して完全にドッズランサーを破壊した上でVSドッズライフルでクランシェⅢの腕を撃ち抜いた。

 

「次はファンネルだな」

 

 ガンダムZERO-EXAは全身の10基のファンネルを展開する。

 展開するのと同時にフォロスクリーンの方にもファンネルの位置情報が表示される。

 

「行け。ファンネル」

 

 その情報を見ながらファンネルを操作して行く。

 Cファンネルを発展させている為、俊敏に動くファンネルはクランシェⅢのパイロット達がファンネルの存在に気づく前に腕や頭部、スラスターを正確に撃ち抜いて行く。

 

「これでは余りにも一方的だ。つまらん」

 

 ある程度、ファンネルの感触を確かめたエリスはファンネルを戻す。

 

「たった1機のMSに何をしている!」

「ですが強すぎます!」

 

 量産型ディーヴァ級の旗艦で艦長が叫んでいる。

 多少の抵抗は予想されていたが、たった1機のMSにクランシェⅢ部隊が手も足も出ないと言う事は考えていなかった。

 

「こうなったら……ゼハート隊を出す」

「よろしいので?」

「構わん! 予備部隊も全て投入する! あの1機は何としても落とせ!」

 

 流石に艦長もこのままではまずいと思い次の手を打つ。

 想定外の事態も考慮して予備部隊は各艦に何機か残してある。

 その中にゼハートの部隊もあった。

 地上でディーヴァの打ち上げに協力した事で立場が危ういゼハートをディーヴァ追撃の部隊に加えて自らの行いの責任を取らせると言う物だった。

 当然、完全に信用されている訳ではない為、部隊の行動は常に監視され不審な行動を取れば内通者として処罰されると言う事は伝えてある。

 自分一人なら気にする事もなかったが、部下も連帯責任にされている為、ゼハートも従わざる負えない。

 すぐに量産型ディーヴァ級からゼハートの部隊が出撃する。

 

「大佐。どうします?」

「自分達は大佐の友人の為でしたらいつでも……」

「駄目だ。お前達を死なせる訳にはいかない」

 

 ゼハートの部下はいつでもゼハートの為に死ねる覚悟はしている。

 その友人であるアセムの為でもだ。

 だが、ゼハートはそれを良しとはしない。

 

「だが……この戦い方は……成程。向こうは殺す気は一切ないようだ」

 

 戦闘を続けるガンダムZERO-EXAからは一切の殺気は感じられない。

 つまりは殺す気がないと言う事だ。

 

「お前達は不用意に動くな。そうすれば向こうが勝手に戦闘不能に追い込んでくれる」

「大佐はどうするので?」

「俺はあいつの性能を見極める。これから先、ディーヴァを守り続ける事が出来るかどうかをな」

 

 ガンダムZERO-EXAはこちらのMSを戦闘不能に追い込むだけで撃墜はしていない。

 ならば、普通に戦ったところで部下達にアレとまともに戦う事は出来ないのは明白でさっさと戦闘不能にされてしまえば良い。

 流石に戦闘不能になれば戦闘継続が出来ない言い訳としては十分だ。

 そして、ゼハートはガンダムZERO-EXAと直接戦ってその性能を見極めようとしていた。

 これから先もディーヴァは狙われて続けるだろう。

 その戦いからディーヴァを守るだけの力があるのかを自らが戦って確かめたかった。

 

「あのMS……ドラグーンか。こいつの初陣には物足りないと思っていたところだ」

 

 ガンダムZERO-EXAはゼハート隊の方にVSドッズライフルを放つ。

 ドラグーンは回避しながら接近するが、クランシェⅢは回避しきれずに被弾する。

 

「それなら言い訳も付くだろう。お前達は下がれ」

「ご武運を!」

 

 被弾したクランシェⅢはゼハートの指示通りに母艦まで後退して行く。

 流石に被弾して後退する事まで許されないと言う事もなくゼハートの部下達は母艦に帰投する。

 そして、ドラグーンはガンダムZERO-EXAにドラグーンライフルを放つがビームシールドで防がれる。

 

「この攻撃を防いだと言うのか」

「手加減はしてやる」

 

 互いにライフルを持っていない方のビームサーベルを展開してぶつかり合う。

 小型のガンダムZERO-EXAの方が当たり負けしそうではあったが、見かけによらず高出力のガンダムZERO-EXAはドラグーンをパワーで圧倒する。

 

「何というパワーだ!」

「こいつの持ち味はパワーなどではないと言う事を見せてやろう」

 

 ドラグーンはドラグーンビットを展開してガンダムZERO-EXAに差し向けた。

 殺す気はないが、簡単に避ける事が出来ないようにビットを操作するが小さいが故にビットの隙間を軽々と抜けて回避する。

 頭部と胸部のビームバルカンで正面のビットを迎撃し、背後から迫るビットをVSドッズライフルで迎撃する。

 VSドッズライフルから放たれたビームは今までとは違いマシンガンのように放たれている。

 これがクライドが新設計したヴァリアブル・スピン・ドッズライフルの機能だった。

 ビームを回転させる事で貫通力を増しているドッズライフルのビームの回転数をVSドッズライフルはパイロットの任意で変える事が出来る。

 通常時はMSの装甲を貫通するのに十分な回転数を維持しているが場合によっては回転数を少なくする事で威力の低下の代わりにマシンガンのように連射する事や逆に連射速度を落として回転数を上げる事で貫通力を上げる事も出来る。

 今回はビットの迎撃の為に連射速度を優先しての射撃だ。

 

「だが!」

 

 ドラグーンは自分の周囲に高密度でビットを展開してビームバリアを展開した。

 ガンダムZERO-EXAもVSドッズライフルで応戦するが密度の濃いビームバリアを貫通する事は出来ない。

 

「やるな。だが、こいつならどうだ」

 

 今度はVSドッズライフルの回転数を限界まで上げて放った。

 ドラグーンのビームバリアを突き破りとっさにビームシールドを使うが、それをも突き破ってドラグーンの左腕を破壊した。

 

「それも想定の内だ!」

 

 左腕を破壊されつつも、ドラグーンはバックパックを展開したハイスピードモードで突っ込んで来る。

 ドラグーンライフルを捨ててビームサーベルを展開してガンダムZERO-EXAに突撃する。

 VSドッズライフルの回転数を限界まで上げて放ったガンダムZERO-EXAを完全に捉えたとゼハートは確信した。

 しかし、ドラグーンのビームサーベルはガンダムZERO-EXAを貫くと言う事は無かった。

 

「何が起きたと言うのだ!」

 

 Xラウンダー能力を使って動きを先読みもしていたそれなのにガンダムZERO-EXAの動きを見切る事は出来なかった。

 まるでその場から消えたかのようにガンダムZERO-EXAを見失った。

 そして、いつの間にか後ろに移動していたガンダムZERO-EXAのビームサーベルでドラグーンの下半身が切断される。

 

「これが新しいガンダムの力……これなら大丈夫の様だ」

 

 ゼハートには何が起きたのは理解出来なかった。

 まさに目の前から消えたとしか言いようがない。

 だが、それは正しかった。

 本当にガンダムZERO-EXAはゼハートの目の前から消えて見せたのだ。

 かつてガンダムZERO Zは瞬間的に光の速度まで到達した。

 そして、それを凌駕したガンダムZERO-EXAは光の速度をも凌駕する事が出来た。

 それがガンダムZERO-EXAのモードZEROの力だ。

 瞬間的に光の速度を超えるつまりは短距離ワープを行う事が行った。

 それによってドラグーンの攻撃を回避して背後を取ったと言う事だ。

 幾ら、Xラウンダーが先読み能力を持っていると言っても光の速度を超えてしまえば反応をする事は不可能だ。

 これこそがクライドが最後に作り上げた幻のガンダムの性能だった。

 

「大した物だが……少しキツイな」

 

 短距離ワープはパイロットに多大な負担を掛ける。

 それこそ、エリスでなければ一瞬で死に至るほどにだ。

 

「だが、まだ行ける」

 

 ガンダムZERO-EXAはファンネルを展開して次々とクランシェⅢを戦闘不能に追い込んでいく。

 クランシェⅢを全機戦闘不能にすると今度は母艦の方に向かう。

 

「戦艦を殺さずに戦闘不能にするのは骨が折れるな。だが、私とこいつなら不可能ではない」

 

 量産型ディーヴァ級の主砲を回避しながら取りついて主砲を蹴りつけて銃身を曲げる事で主砲の使用を封じた。

 他の2隻の量産型ディーヴァ級も同様に銃身を曲げて使用を封じた上で3隻ともメインスラスターのノズルも蹴って損傷させて回る。

 MSの護衛を失った量産型ディーヴァ級にはガンダムZERO-EXAを撃ち落す事が出来ずに結局、手も足も出せずに3隻ともが主砲をスラスターの使用を封じられた。

 

「後はトルディアの連中に頭でも下げて救援して貰うんだな」

 

 MSが全機戦闘不能で主砲とスラスターが使えない状況は本来なら海賊や反政府勢力の恰好の獲物となるが幸い近くには友軍のトルディア基地がある。

 少なくとも強引な手段を使おうとした事を謝罪すればトルディア基地の司令官もこのまま見捨てると言う事はしないだろう。

 

「キャプテン。終わったぞ」

「分かった。今からディーヴァへと戻る。エリスはそのまま俺達の護衛を行いつつ付いて来てくれ」

「了解した」

 

 連邦軍を無力化したが、ディーヴァに戻るまでにどんな危険があるか分からない。

 その為、エリスに護衛を任せた。

 アセムとロイドの乗る小型艇と合流したエリスは小型艇を守りながらディーヴァへと戻るのだった。

 そして、この戦闘における戦死者はエリスの宣言通り一人もいなかったと言う。

 

 

 

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