コロニートルディアの旧アスノ邸にてクライドが生涯最後に設計した幻のガンダム、ガンダムZERO-EXAを回収してディーヴァはトルディアの付近から離脱した。
トルディアでエリスが戦闘不能にして来た部隊はトルディア基地の方で救助される筈である為、救助はせずに追撃を逃れる事を優先していた。
「セカンドムーン……そこにEXA-DBがあると言うのか?」
「あのガンダムの中にはそうらしい」
ディーヴァに帰投して機体を整備班に任せたエリスは機体の中に記されていたEXA-DBの在り処をアセムに報告していた。
その場所はかつてヴェイガン本拠地でもあった火星圏のコロニー「セカンドムーン」であった。
今ではその役目を終えたコロニーではあったが、かつてはクライドがマーズレイの研究を行っていた場所でもあった。
今までの場所はエンジェル、アンバット、トルディアとクライドが個人的に手を出し易い場所がばかりだ。
そう考えればクライドの陣頭指揮で研究がおこなわれていたセカンドムーンはクライドがEXA-DBを隠すのにはもってこいの場所と言える。
尤も、ここまで手の込んだ事をしている為、普通に探したところで奇跡的な偶然が重ならない限りは見つからないようにしている可能性は非常に高い。
「散々地球圏を回らせて最後は火星圏か」
「そこにある事は確実だが、あの父さんが素直にEXA-DBをくれるとは思えないのが」
「だろうな。シドを複数用意したんだ。これが最後だと言うのであれば何を用意して来たのか俺にも分からん」
トルディアの時はエリスさえ入れば次の最後の目的地が分かるようになっていたが、エンジェルとアンバットの時はシドが配置されていた。
トルディアとの違いはすでに廃棄されており、戦闘をしたところで一般人への危険がないと言う事だ。
クライドが殊勝にも自分とは無関係の一般人の事を気にかけていたとは到底思えないが、最後のセカンドムーンもまた今は廃棄されたも同然のコロニーだ。
確実に何かしらの試練を用意している事は明らかで最後と言う事を考えると並大抵の物ではないはずだ。
「心配する事は無いさ。私とあの新型があれば大抵の事はどうにでもなる」
「だといいんだがな」
確かにエリスとガンダムZERO-EXAの組みわせの戦闘能力は圧倒的だ。
だが、どちらもクライドが用意した物だ。
その為、エリスとガンダムZERO-EXAが入ればどうとでもなる程度の試練で終わるとは思えない。
「しかし、怯えて止めると言う選択肢はないのだろう?」
「当然だ。ここで止めてしまえば全てが無意味に終わってしまう」
結局、最後はそこに収まる。
止める事は簡単な事だ。
だが、止めればここまでの道のりが全て無駄に終わる。
ここで止めて意味があるとすれば死んだと思われていたエリスの生存が確認されたくらいだ。
「結局、私達は父さんの掌で踊り続けるしかないと言う事だ。癪な事にな」
エリスは文句を言っているようだが、少し嬉しそうにもしている。
エリスにとっては今の状況は別れすら言えなかった父との最後の繋がりでもあった。
だからこそ、EXA-DBの事はどうでも良いが最後までやり遂げたいとも思って来ている。
「そうだな。いずれは文句の一つでも言ってやらないとな」
「当然だ。どうせ死んでるんだ。力の限り殴っても構わんだろう」
最後の目的地にしてEXA-DBが隠されているセカンドムーンへと最後の航海へと向かうのだった。
最後の目的地が判明した事でディーヴァは火星圏のセカンドムーンへと進路を取っている。
その道中でビシディアンと合流する手筈となっていた。
次が最後の目的地でその場所が火星圏である事をクルーに告げて地球圏から出ると言う事もあり、退艦を希望すれば何とかするとアセムは言ったが、誰一人として退艦を希望するクルーはいなかった。
クルーの大半はまともな訓練を受けていない学生だったが、ここまでの航海で少しは成長したのか皆が腹を据えたとまではいかないが誰もがこの旅を最後までディーヴァのクルーとして終える事を選んだ。
最後と言う事で艦内の空気も変わっている。
変わった事はそれだけではない。
ヴァネッサの素性がエリスによって明らかになった事でエリスの指示でヴァネッサの待遇が少し変わっている。
相変わらず部屋の外から出れず監視が続いているが、ベッドに拘束される事は無くなった。
安全面では非常に危険ではあったが、無下にすればエリスが暴れな兼ねなかった。
幸い、ヴァネッサはまだ本調子ではなく、自分の信じて来た物が崩れ去った事もあって大人しくしていた。
「セカンドムーン。まさか、そんなところに……」
「今、火星圏に向かっています。先輩の処遇に関しては全てが終わった後にするそうです」
自由に面会をする事が許可されたリックは時間を見つけてはヴァネッサの元に足を運んでいる。
「母様は?」
「エリスさんはトルディアにあった新型のガンダムの調整をしています。それが終わったらこちらに顔を出すって言ってました」
「そう……」
イマイチ、状況が分からないがエリスがヴァネッサの母親であると言う事は双方が認める事であるらしい。
ヴァネッサの方はまだ、心の整理がついていないらしい。
「私は今まで姉様と共に母様の理想の為に戦うと決めていた。それが間違っていたとなれば私は何の為に戦えば良いの……」
リックは何も言う事は出来ない。
今のヴァネッサは信じていた物が足元から崩れて何もない。
自分の進むべき道も信じる物も全て崩れた。
今となっては母の死に関しても本人が生きていた以上は自分の聞かされていた真実が間違っていたのだろう。
エリスが本人である事は直感的に感じ取っている。
リックも誤解である事を説明する事は無い。
今更言ったところで意味がないと言う事は理解しているからだ。
「僕には先輩に何かを言って上げる事は出来ないですけど、少なくとも先輩は一人ではないと思います。エリスさんは先輩の事を娘と認めているんですから」
確かにヴァネッサの信じていた物は崩れた。
しかし、全てを失ったと言う訳ではない。
今の今まで娘と認める事のなかったエリスだが、ヴァネッサとヴァレンティナの出生の予測を立ててそれが正しいと判断するとすぐに掌を返して二人を自分の娘であると認めた。
それは偽りではなく紛れもない真実だ。
「母様との記憶は偽りの物だった。それでも……」
「思い出が嘘だったなら。これから作ればそれは本当の思い出になると思います。だから」
「本当の思い出……」
今までの思い出は偽りだったのであれば新しく本当の思い出を作れば良い。
ヴァネッサは整理がつかないが少し、自分の道が見えた気がした。
トルディアでクライドが最後に設計したガンダムZERO-EXAはすぐに整備班によって解析作業が進められている。
クライドが設計したと言う事もあり、クライドの設計するMSに精通しているキャロルが陣頭指揮を執って進めている。
「新型のガンダムってどれだけいんの?」
「さぁな。けど。こいつはあのクライド・アスノの遺作って事らしいし、少しデータを見せて貰ったけど、至るところにオーバーテクノロジーが使われているらしくて解析が困難してるってさ」
新しいガンダムをエイミーとジンが眺めてそう言う。
ジンも整備班の一員としてガンダムZERO-EXAの解析データの一部を見ている。
クライドがEXA-DBの中のデータを使っているだけあって現代の技術では再現の難しい物が多い。
「全身のフレームにから装甲、コックピット、内部システムにまで独自の物を採用、ライフルなんて回転数が可変式、小型化されてんのに推力はAGE-ZEROと対等かそれ以上だって話だ」
「凄くない?」
「凄いってレベルやないって! これが10年位も前に設計された物だってんだからな!」
ジンは少し興奮してそう言うが、エイミーは軽く流す。
専門的な部分は分からないが、ガンダムZERO-EXAが凄いMSである事が分かればそれで良かった。
すると、調整を一段落終えたエリスが機体から降りて来る。
「リックは一緒ではないのか?」
機体から降りたエリスがそう言うとエイミーは少しムッとする。
その様子から大体の事は想像がついた。
「ネッサのところか。最近は多いな。実際のところリックとネッサはどういう関係だ?」
「何か、あの人がレーアツァイトに潜入した時に知り合ったみたい。それ以上は知らないわよ」
「成程……」
エイミーが投槍にそう言うとエリスは少し考え込む。
エイミーとしてはほぼ毎日のようにヴァネッサのお見舞いに行く事が気に入らないのだろう。
「それがどうかしたのか?」
「いや……事と次第によっては私は次の戦場でリックを後ろから誤射しなければならないかも知れないと思ってな」
つまり、エリスが気にしていたのはリックがヴァネッサに手を出していないかと言う事だ。
本当に手を出しているのだとしたら誤射として後ろから撃ちかねない。
ついこの前まではヴァネッサやヴァレンティナと戦場で出会うだけで何が何でも殺したがっていた事が嘘のようだ。
「次で最後なんだから流石にまずいっしょ」
「関係ないな。うちの娘に手を出すんだそのくらいは覚悟して貰わないとな」
流石に本気とは思えないが、本気でやりそうで少し怖い。
すっかり、ヴァネッサの母親である事が馴染んで来たエリスだが、今更驚くと言う事もない。
ここまでくればエリスの記憶喪失も二重人格も疑わしい。
ヴァネッサの事についても一部のクルーはエリスとの関係については聞いている。
その過程でエリスがヴァニスであった事も聞いている。
流石に歴史上、キオに敗北して戦死したと思われていたヴァニスが生きていた事は驚かれていた。
その中でも元ネオ・ヴェイガンでヴァニスを信奉していた両親を持ち、自分も少なからず信奉していたローザはエリス=ヴァニスである事実は何とも複雑な様子であった事は言うまでもない。
「さて……ネッサがリックの毒牙にかかる前に行くとするか」
調整を終えた為、ヴァネッサのところに向かおうとするが、エリスは足を止める。
「……何だ? これは……」
「どうしたの?」
不意に立ち止まったエリスは辺りを見渡した。
そして、片手で頭を押さえて膝をつく。
「Xラウンダー能力の共鳴? 私にではない……ネッサの方か!」
エイミーもジンもXラウンダーではない為、何も感じないがエリスはXラウンダー能力が何者かと共鳴していると感じていた。
それは戦場で共鳴する時とは違いミンスリーでリックに対してXラウンダー能力を意図的に共鳴させた時に似ている。
同時刻、ヴァネッサとリックもまた同じように共鳴していた。
「これは……先輩?」
「くっ……ね、様」
リックは軽く共鳴しているだけだが、ヴァネッサは頭を抱えて苦しんでいた。
ただでさえ、脳の傷でXラウンダー能力の使用に制限がかかっているところに強制的に共鳴させられているのだ当然の事だ。
「先輩! しっかりしてください!」
リックはヴァネッサの肩を揺するが反応は無い。
「どう、して……」
リックの言葉が耳に入っていないヴァネッサは途切れ途切れにそう言う。
艦内でヴァネッサやエリスが強制的にXラウンダー能力の共鳴が起きている事は艦内のXラウンダーとその周囲の人間しか気が付く事は無かった。
ブリッジではバロノークと通信で今後の事が打ち合わせされていた。
「Gハウンドの修理はもう少しかかるけど、合流するまでには間に合わせる手筈だ」
「次の目的地は火星圏だからな。戦力は出来るだけ欲しい。済まないが急いで欲しい」
バロノークはトルディアでGハウンドとアンナを回収して一番近い工房でGハウンドを修理していた。
マッドーナ工房で修理するのが一番速いのだが、その工房までの道のりに時間がかかってしまう。
その為、連邦軍との繋がりを持たない一般の工房で修理している。
連邦軍との繋がりを持たない工房は金さえ払えばどんなMSだろうと訳も聞かずに修理して貰えるが、その反面工房の技術者のレベルは連邦軍に声をかけられない時点でたかが知れている。
「うちのキャプテンが工房の方に怒鳴り込んでいる」
アンナの代わりにディーヴァとの通信に出ていたブルーノが苦笑しながらそう言う。
キャプテンであるアンナが出ずに副キャプテンであるブルーノが出た時点で何かあると思っていたが、アンナは作業を急ぐようにと何度も催促しているかららしい。
ちょうど、ディーヴァからの通信の入っている今もその最中と言う事だ。
「キャプテン!」
打ち合わせ自体はミンスリーを出る前と大して変わらない為、つつがなく終わると思われたが、格納庫から通信が割り込む。
「やられた! 連中にEXA-DBの位置が知られたかも知れん!」
「どういう事だ?」
「どうもこうもない! Xラウンダー同士の共鳴を利用した! それでヴァネッサと一時的に意識を共有して記憶の中を見たんだよ!」
「一体何を言っている?」
エリスの言っている事は余り要領を得ていない為、アセムには伝わらずブリッジクルーも何を言っているのか分からずに顔を見合わせている。
エリスの言っている事は要約するとXラウンダー同士の共鳴現象は場合によっては相手の記憶を覗き込むケースがある。
余り報告されている事例ではないが、エリスがヴァネッサの記憶の一部に触れたように事例としては稀にある。
そして、先ほどの共鳴現象はヴァネッサに対して遠く離れた場所からヴァレンティナが意識共有を図った物だった。
それにより強制的にヴァレンティナがヴァネッサの記憶の一部を除きこむ事でディーヴァ内部の情報を得たと言う事だ。
最悪な事にリックの口からEXA-DBの在り処をヴァネッサに伝えたのであればその情報はネオ・ヴェイガンに知られたかも知れないと言う事だ。
「とにかく! 悠長な事はしてられん! すぐに火星圏に向かうぞ! あの野郎にEXA-DBを渡すと言う事は我慢できん!」
「落ち着け。こちらも物資の補給の必要がある。その間に頭を冷やせ。話しはそれからだ」
「糞ったれ!」
エリスの怒号と共に格納庫からの通信が切られた。
「こっちもこの有様だ」
「お互いじゃじゃ馬には苦労させられていると言う事か」
「ああ、だが事態は急を装うと言う事だけは確かだ」
エリスの言っている事は要領を得ていなかったが、その様子からただ事ではないと言う事は分かった。
あそこまで切れていると言う事はEXA-DBの情報がネオ・ヴェイガンに漏れたと言うのも根拠があっての事だと考える事が出来る。
「取りあえず、こっちは先に火星圏へと向かう」
「こちらもGハウンドの修理が終わり次第、後を追う」
状態が変わった事で悠長にビシディアンの合流をしている余裕はなさそうであった。
補給が済み次第、ディーヴァは火星圏のコロニー、セカンドムーンへと向かう必要が出て来た。
「頼む。進路を変更する。ビシディアンとの合流は中止し、補給を優先するその後、本艦は単独で火星圏、セカンドムーンに向かう。各部署にその事を伝えろ」
進路変更はすぐに艦内に通達され、ディーヴァは補給へと向かう。
ヴァレンティナによるヴァネッサとの強制的なXラウンダー能力による共鳴が終わり、グレート・エデンでヴァレンティナはヴァネッサの記憶を除き終えた。
流石に長距離でピンポイントにXラウンダー能力を使った事でヴァレンティナにも疲労の色が見える。
「ご苦労様です。それでEXA-DBに関する情報は如何でしたか?」
「……EXA-DBはセカンドムーンにあるらしい」
「ほう……」
ヴァレリは疲労しているヴァレンティナの事よりもEXA-DBに関する情報の方が気になるようだった。
一度で情報を得られるとは思っておらず、何度も行うつもりであったが一度で場所が分かったのは幸運としか言いようがない。
何度も行えばヴァネッサとヴァレンティナの脳にかかる負担は大きく、ヴァネッサの方は傷の事もあって下手をすれば死に兼ねない。
ディーヴァ内部から情報を得る為に奪取した5号機を捨てて入り込ませたのだ情報を得る前に死んでもらっては困る。
最低でも捕虜で最悪はすでに殺されているか別の場所に移送されていると言う危険性もあった作戦ではあったが、思った以上の成果が出た。
しかし、ヴァレンティナはそんな事はどうでも良く、ヴァレリの胸倉を掴んだ。
「だが……どういう事だ! なぜ母上は生きている! 母上は連邦の卑劣な罠にかかったのではないのか!」
「一体何を……」
「ネッサの記憶を覗いた! ディーヴァには母上が乗っている! どういう事だ!」
ヴァネッサの記憶を除いて見た物は何もEXA-DBの場所の事だけではない。
些細な情報を見逃さない為にヴァネッサがディーヴァに収容されてからの情報は全て見た。
その中でエリスがヴァニスであると言う事は自分の記憶が間違いかも知れないと言う事も見てしまった。
ヴァネッサがエリスと直接対峙して母親であると言う事を否定できなかった事からヴァレンティナも母親であると言う事は疑いようもない。
つまりは、参謀であるヴァレリが自分達を欺いていたと言う事になる。
「そんな事は……(まさか……あの女が生きていたとでも言うのか!)
EXA-DBの情報を得た事は奇跡的な幸運であったが、エリスの存在はヴァレリも初耳でてっきり死んだとばかり思っていた。
「落ち着いて下さい。ヴァレンティナ様。その件に関しましては私の方でも調べておきます。ヴァレンティナ様は一度、お休みください。どの道、我らネオ・ヴェイガンの理想の為にはEXA-DBは必須。最後の戦いともなればヴァレンティナ様のお力は確実に必要となって来ます。心身共に万全の状態でいて貰わねば」
「……良いだろう。但し、納得の行く答えでなければお前とて容赦はしないぞ」
「肝に銘じておきます」
一時はどうなるかと思ったが、長年をかけて仕込んでおいた物は未だに効果がありヴァレリは内心では安堵していた。
本来ならば自分を欺いているかも知れないヴァレリの言葉など信じる事などあり得ないが、ヴァレリは長い年月をかけてヴァレンティナに自分の言う事は無条件に正しいと思いこませて来た。
エリスの存在でそれが揺らぎかけていたが、ヴァレリの言葉を聞いているところから見ると効力は残っている。
ここまでくれば後はどうとでもなった。
それから少ししてグレート・エデン内でもヴァネッサとヴァレンティナ、そしてヴァレリしか入る事が許可されていない2人専用ヒーリングスリープ装置の中でヴァレンティナは寝ていた。
表向きは警備の観点から、ネオ・ヴェイガンの主要人物の2人と親衛隊隊長のヴァレリしか入る事は出来ないと言う事になっいているが、実際は違った。
装置はヒーリングスリープ装置である事は事実だが、もう一つの顔があった。
もう一つの顔とは洗脳装置としても役目だ。
装置内で2人が眠っている間にヴァレリが記憶の一部を改竄する事で少しつづ自分に都合の良い2人を作り出していた。
「あの女が生きている事は想定内だったが、まぁ良い。扱い辛いあの女よりも私のヴァレンティナの方が使えるからな。ヴァネッサは使えなくなったが、壊れた欠陥品など必要はないか」
すでにヴァレリの中ではヴァネッサに価値は無かった。
元々、ヴァレンティナの予備で作ったに過ぎず、ヴァレンティナが正常に機能していれば今は必要はない。
また必要になれば作れば良いだけの事だ。
「流石にヴァネッサの存在は無かった事にする事は出来ない……だが、その存在を利用する事は出来る」
ディーヴァにエリスがいると言う事とエリスとヴァニスが同一人物である事はネオ・ヴェイガンの誰も知らない事である為、ヴァレンティナの記憶の中からディーヴァにエリスがいると言う事を消せばそれで問題はない。
だが、ヴァネッサの存在をなかった事にする事は出来ない。
ヴァレンティナの双子の妹であるヴァネッサの存在はネオ・ヴェイガンの兵士の大半が知っている事だ。
その存在をヴァレンティナの中から消してしまえば兵士との間で記憶に齟齬が生まれてしまう。
ただでさえ、ヴァネッサがディーヴァに捕まった戦闘の事でジェレミアやアビーが奪還作戦を申し出ている。
その為、ヴァレンティナの耳にヴァネッサの事が入らないと言う事はあり得ない。
「ヴァネッサは連邦兵士の手によって恥辱に塗れて殺されたとすればヴァレンティナの連邦への憎しみは更に膨れ上がり扱い易くもなるだろう」
消せないのであればそのヴァネッサが死んだと言う事にすればヴァレンティナもヴァネッサの救出作戦に乗り出すと言う事もしない。
元々、この作戦の最後にはディーヴァに入り込ませたヴァネッサを救出する事も作戦に含まれているとヴァレンティナには伝えてある。
情報漏洩を防ぐ為に作戦の概要に関しては直前までヴァレリの胸の内に隠すと言ってあったが、実際のところはその気は始めからなかった。
ヴァネッサはあくまでも予備であったため、仮に敵に捕まったとしても情報の漏洩は最低限に留める為にネオ・ヴェイガンの重要な情報は殆ど知らされてはいない。
本人もパイロットとして戦場に出る以上は敵の手に落ちると言う覚悟もあったため、必要以上の情報を知らされなくともそれがネオ・ヴェイガンのひいては姉の為であると思い聞かされない事に不満も疑問も持っていない。
つまり、ここでヴァネッサを救出せずともネオ・ヴェイガンにとっては新しく作れて代えの効くエースパイロットを一人失った程度でしかない。
寧ろ、救出するよりも放置すればヴァネッサはテロリストとして裁かれ、極刑はほぼ確実だ。
場合によっては連邦の力を見せつける為とネオ・ヴェイガンの戦意を挫く為に大々的に処刑の様子を公開するかも知れない。
そうなればヴァネッサを殺した憎しみをまとめ上げれば士気も高まるだろう。
尤も、それを待っている気は無く、ヴァネッサは死んだとヴァレンティナに思い込ませてその情報をネオ・ヴェイガンの内に流す気でいる。
余り表だって流れていないのも連邦軍が極秘裏にでも処刑を行ったと言う事にでもすればいい。
「最後の問題はあの女か……まぁ良い。EXA-DBは保険に過ぎない。アレが完成すればヴァニスなど恐れるに足りない」
ヴァレリにとってEXA-DBは大して重要ではなかった。
無論、EXA-DBが連邦軍の手に渡れば厄介な事にはなるが、ヴァレリにはもう一つの手が残されておりそれこそが本命でもあった。
それならば、エリスがいても問題はない。
ヴァレリは今後の事を思い浮かべながらヴァレンティナの記憶操作を続けた。
ディーヴァの補給は事前に予定していた事もあり、問題が起きる事なく終了した。
ネオ・ヴェイガンはおろか連邦軍と遭遇しなかったのはトルディアで確実に仕留めれると思っていた事やその部隊をたった1機のMSで全滅、それも死者を出さずに行った事も理由に含まれるだろう。
「
姉様が……」
「正確にはヴァレリだ」
セカンドムーンへの航海の途中でエリスは事の次第をヴァネッサに伝えた。
ショックを受けるかとも思えたが、意外と冷静に事実を受け止めていた。
ヴァネッサも部屋の中での自由は許されていたが、艦内を自由に行動する許可は出ていない為、出来る事は考える事くらいで、薄々と気が付いていた。
指導者の妹と言う立場でありながら重要な情報は殆ど知らされていない。
ヴァレリの言った機密保持で自分を納得させようとしていたのかも知れない。
結局、自分はいつでも切り捨てられる駒でしかなかったと言う事だ。
「でも、姉様は分かっていた」
「どうだろうな。下手に本当の事を教えるよりも都合の言い事で誤魔化した方が楽だからな」
ヴァネッサを切り捨てる事に関してヴァレンティナがどこまで関与しているかは分からない。
全てを知った上で行ったかも知れないし、何も知らされずに行ったのかも知れない。
それを確かめる術はエリスにもヴァネッサにもない。
「お前はこれからどうする?」
「分からないわ。私にはもう戦う理由は残されてはいないから」
「望めば普通に生きる道もある。私がそうして見せる」
このまま連邦軍に引き渡せばヴァネッサは確実に極刑になるだろう。
それだけの事をして来たと言う自覚はヴァネッサにもある。
それが母の意志を継ぐ事だと今までは信じて来たからだ。
今となっては全てが嘘だったと知りヴァネッサに戦う理由はなくなっている。
エリスは戦う以外での道もあると言う。
もしも、連邦軍がヴァネッサの命を狙うのであれば全てを敵に回しても構わなかった。
それが親なのだとエリスは考えている。
過ごした時間は少なくとも自分の娘と認めた以上は守らねばならない。
全てを敵に回そうとも戦うだけの力をエリスは持っている。
「普通……」
「私は生まれた時からガンダムのパイロットとして戦う道を定められていた。始めはそれが自分の存在理由だと定義してその為だけに存在し続けて来た。だが、そんな私を父は必要とはしなかった。父が必要とした最強のパイロットは自分の意志で自分の戦いを出来るパイロットだ。私はそれをキオ・アスノとの戦いで教えられた。だから、私はガンダムのパイロットとして戦う道を選んだ。ヴァネッサ、お前はお前の好きな道を選べばいい。世界を支配したいのならそれも良い。世界を滅ぼしたいのであれば力を貸そう。お前は自分で自分の道を選ぶ事が出来る。その道を選んだのであれば私が全力でお前を守る。それが、たぶん、親と言うものなのだろう。私の父が私の為に最強のガンダムを残してくれたようにな」
かつてのエリスも一度はクライドに自分の存在理由を全て否定された。
それによって様々な回り道を進んだ事もあった。
ヴァネッサとヴァレンティナが母と慕っているヴァニス・イゼルカントだった時もその道中だ。
結局、キオに敗北して死を覚悟したがクライドにより命を救われて、最後には自分の意志で戦う道を選んだ。
今のヴァネッサは昔のエリスと同じだ。
「尤もガンダムを設計したのは100%自分の趣味だって事は否定できんがな」
「私の意志で……」
ヴァネッサは静かに目を瞑る。
そして、考える。
自分がこれからどうしたいのかを。
自分は何がやりたいのかを。
「私は母様の理想を実現する為に今まで戦って来た……それがヴァレリの植え付けだったとしても私にはそれしかないと思う。私は母様と戦いたい」
「それはネッサの古巣のネオ・ヴェイガンと敵対して、敵であったディーヴァを守ると言う事だ。それでも戦えるのか?」
「姉様と戦えるかは分からない。でも、私がそうしたいと思うから……多分、それが私の意志」
迷いがない訳ではない。
割り切った訳でもない。
それがヴァレリによる植え付けかも知れない。
それでもヴァネッサにとってはそれが全てだった。
例え、今までが嘘でも今ここにいるエリスは本当だ。
「分かった。私の方で話しは通しておく。今は少しでも休め」
「うん……」
ヴァネッサが自分で決めた事ならエリスは何も言う事は無い。
後はエリスの仕事だ。
エリスは部屋を出てアセムの説得へと向かうのだった。
「キャプテン!」
艦長室についたエリスはアセムの返事を待たずに飛び込んで来た。
アセムは少し驚くも相手がエリスである為、気にした様子はなくため息をついた。
用事までは分からないが、この勢いで来ると大抵は面倒事を持ち込んで来る。
「お前に急がされてこっちは色々とやる事があるんだが」
面倒事である事は分かり切っている為、少し嫌味を含めるがエリスは気づいているのかいないのか嫌味に全く反応する事は無い。
「5号機の修理は終わっているんだよな。アレにヴァネッサを乗せる」
「藪から棒に……無理に決まっているだろう」
「無理でもなんでも関係ない」
エリスは完全にアセムの言葉に耳を貸さない。
こう言う時のエリスは手に負えない。
「まずは理由を話せ。話しはそれからだ」
流石に捕虜であるヴァネッサを5号機に乗せる事は無理ではあるが、無理だと言って今のエリスは聞かない事は明白だ。
取りあえず、理由を聞きそれから対処するしかない。
そして、エリスは先ほどのやり取りをアセムに話す。
「事情は分かった。だが、やはり無理な物は無理だ」
理由を聞いたところで結論が変わる訳ではない。
アセムの返答にエリスはあからさまに不満気な表情をする。
「今の待遇でも少なからず不満を持つクルーは少なくない。それなのにガンダムに乗せて戦場に出せる訳がないだろ」
現状でヴァネッサは部屋から出る事は出来ないが拘束をされずある程度は自由も許されている。
それに不満を持つクルーは少なからず出て来ている。
今のディーヴァのクルーの大半はレーアツァイトの生徒だ。
レーアツァイトでヴァネッサの率いる部隊の襲撃を受けて多くの犠牲者が出ている。
クルーの中には学友を殺された生徒も少なくない。
今のところヴァネッサの待遇にそれ程の不満を持っていないのはリックとその友人であるエイミーとジンを初めとした数人程度で殆どのクルーがこの扱いに疑問や不満を持っている。
流石に不満を爆発させると言う事はローザが目を光らせている為、起こる事は無いが流石のローザもヴァネッサを5号機に乗せると言う事には反対するだろう。
「知らん。大体、ここのクルーの大半はその内連邦軍に入る予定だったんだろう。兵士を訓練兵の時に始末するのは戦略としてあり得る事だ。そんな覚悟もなしに兵士になろうとしてる奴らの事など私の知ったところではない」
「お前の言いたい事は分かるが、今は戦争中じゃないんだ。それに理屈じゃないんだよ」
エリスの言う通り戦時中ならば、兵士が育つ前に叩くと言う事は十分にあり得る事で訓練兵も訓練課程が修了する前に戦場に送りだされると言う事はあり得ない事ではない。
だが、それはあくまでも戦時中の事でかつての戦争でもそのような事態は起きてはいない。
それなのにその覚悟を持てと言うのは酷な話だ。
仮にそうだとしても学友を殺されてそれを指揮していた相手を恨むなと言うのも無理な話だった。
理屈でヴァネッサも半ば洗脳されていた被害者だと理解していても、理屈で恨みがなくなれば戦争など起きる事もない。
「理屈じゃないか……分かった」
「ああ……」
最低でも何時間かは粘ると思っていたが、意外な程あっさり引き下がった事でアセムは拍子抜けだが、エリスが引き下がった以上は追及は出来ない。
エリスは意味あり気な笑みを浮かべながら艦長室から出て行った。
エリスがヴァネッサを5号機で出すとアセムに直談判を行いあっさりと引き下がった後も何かしでかすのではないかと思っていたが、不気味な程エリスが何かを起こすと言う事は無かった。
補給も済ませたディーヴァは火星圏へと向かい、トラブルや戦闘になる事もなく目的地の近くまで航海する事が出来ていた。
「艦長! 進路上にネオ・ヴェイガン艦隊と思しき反応があります!」
「やはり先を越されていたか……」
ディーヴァの進路上にはすでにネオ・ヴェイガンの艦隊が待ち構えていた。
恐らくは先に火星圏まで到達して網を張っていたのだろう。
「MS隊を発進させる。ガンダムに道を開かせる。バロノークの位置は?」
「見えざる傘を展開している為、位置の特定はできません」
すでにGハウンドの修理を終えたビシディアンもディーヴァの後を追って来ているとすでに連絡を受けている。
余計な敵を引き連れて来ないように見えざる傘を展開し、不用意な通信を避けている為、バロノークの位置は推測でしか分からない。
増援としてはバロノークはあてに出来ない為、ディーヴァの戦力だけで対応するしかない。
「ビシディアンの増援はあてにするなよ。ディーヴァの戦力だけで敵艦隊を突破してセカンドムーンに向かう」
「敵艦隊からMSの出撃を確認。数多数!」
ディーヴァの接近を察知したのか艦隊からはMSの発進が確認できるだけなく艦隊がディーヴァの方に集まって来ている。
「ガンダムを発信させろ。アデル隊は第一小隊を出撃させて第二小隊は待機、いつでも出られるように準備はさせて置け。これが最後の戦いだ。気を抜くなよ!」
アセムの最後の戦いと言う言葉でクルーの表情も引き締まる。
ネオ・ヴェイガン艦隊を突破すればすぐにセカンドムーンに到着する。
恐らくは艦隊を突破してそのままセカンドムーンに向かう事になる。
今のところネオ・ヴェイガンのMSはダナジンを中心としたMS隊でその中にXラウンダー専用機は確認できていない。
戦力を温存しているのか、先にセカンドムーンに向かったのかは分からないが戦いが続けば確実に戦う事になる。
ネオ・ヴェイガン艦隊の数は戦艦だけでも10隻以上でMSは100機を超えている。
その数から現在のところ推測されているネオ・ヴェイガンの総戦力に匹敵し敵も本気でディーヴァを沈めるか足を止める気でいる事が分かる。
この戦いがEXA-DBを巡る戦いだけけではなくネオ・ヴェイガンとの戦いに決着がつくかも知れない。
それだけこの一戦は重要な戦いだ。
ブリッジの空気が緊張する中、格納庫はすでに戦場と化していた。
搭載機の最終調整で整備兵が慌ただしく動き周りパイロットも自分の機体に乗り込んでいく。
「これが最後の戦い……」
「緊張しない! リックは今まで通りにやれば良いんだって!」
決戦を前に緊張した面持ちにリックの背中をエイミーが叩いて気合を入れる。
背中を叩いたエイミーの手が少し震えておりエイミーもそれなりに緊張していると言う事が伝わって来た。
ここにいるパイロットはレーアツァイトから何とか戦い抜いて来てはいるがここまでの大規模な戦闘は初めてである為、緊張していないパイロットはいないだろう。
実戦経験の豊富なローザとロイドもこの戦いの重要性はパイロットの誰よりも感じている。
唯一何とも思っていないのはもうすぐ出撃にも関わらず未だに格納庫に姿を見せないエリスくらいだろう。
「そうだね。僕も僕に出来る事をすればいいんだ。ディーヴァもみんなも僕が守る」
いつになく真剣な表情をしているリックに一瞬、エイミーは見とれてしまうがすぐに頭を振る。
「リックの癖に生意気」
「お前らいちゃつくのは後にしろよ」
「してない!」
二人の横をジンが通り抜けてそう言う。
エイミーが反論するが、整備班で忙しいジンは軽く二人の方を見ただけで別のMSの方に向かう。
リックとエイミーもジンが忙しいと言う事を理解している為、追う事はせずに自分のガンダムへと向かう。
「調整は済ませて置いたわ」
「助かります」
ローザはキャロルに礼を言って1号機に乗り込む。
エリスがトルディアでガンダムZERO-EXAに乗り換えた為、再び1号機のパイロットが不在となった。
その為、地球で1号機に乗った事もありローザが再び1号機のパイロットとなった。
「装備はロングライフルとシールド、バズーカの砲身をシールドに取りつけてあるから重心には気を付けて」
「了解」
ローザは毎回のように状況に合わせた装備を装備する為、今回の装備をチェックする。
今回はスタンダードな装備であるロングドッズライフルとシールドを装備している。
装備を確認している間に1号機を射出する為にカタパルトに移動する。
「宇宙戦用の調整は終わってんだな?」
「基本が陸戦用なので完璧ではないですが……」
ロイドは整備士に機体の確認をしている。
ロイドの6号機は元々が陸戦用のガンダムである為、大幅な改造無しでは完全に宇宙戦には対応できない。
「あっちの5号機は使えんだよな?」
「使えますけど、艦長の許可は出ませんよ」
「分かってるって」
6号機が宇宙戦に完全に対応していないのであれば5号機でとも考えるが流石にアセムの許可は下りない。
「ん? ようやく登場か。遅いぞ!」
「間に合ったんだ文句はないだろう」
本来ならば戦闘配備の時点でパイロットスーツ着用で待機すべきであったが、エリスはそんな事を気のする様子もなく格納庫に入って来る。
その後ろからはもう一人パイロットスーツの人物もいるが距離もある為、顔の判別が出来ないが、パイロットスーツの体のラインから女であると言う事は分かった。
ロイドはディーヴァにエリスとエイミー、ローザ以外に女性パイロットがいたかと思うが出撃しないといけない為、機体に乗り込む。
「ガンダム順次出撃しています」
ブリッジでは先方を務めるガンダムが次々と発進している様子がモニターに映されている。
すでにAGE-ZERO、1号機、2号機、3号機と出撃し、後は6号機とガンダムZERO-EXAの2機だけだ。
ガンダムの出撃を終えた後はアデル・ガーディアを出撃させればディーヴァも戦闘準備が整う。
「次は……え?」
「どうした?」
順調にガンダムの出撃をさせていたオペレーターが困惑した声を出している為、状況を確認する。
「艦長! 5号機は出さないんじゃなかったのか! てかパイロットは誰!」
サブモニターに6号機からの通信が入る。
ロイドも焦っているとうでアセムに対しての慣れない敬語が抜けている事からも焦りはかなりの様だ。
そして、その内容から5号機が出撃しようとしていると言う事が分かる。
「どういう事だ? 誰が乗っている!」
5号機は最悪の事態の時の為に動かせるようにはしてある。
だが、アセムは5号機の使用を許可した覚えはない。
「5号機にはネッサが乗っている」
「お前の仕業か……エリス」
今度はエリスのガンダムZERO-EXAからの通信だ。
そして、ここでようやくアセムも気が付いたエリスは諦めて引き下がった訳ではなかった。
許可が下りないというのであれば勝手に出撃するだけだと言う事だ。
この状況で5号機を止める術は無い。
すでに大半のガンダムは出撃しており、6号機は火力重視である為、5号機を取り押さえる事は出来ない。
それどころか5号機を取りさえるのに時間と労力を使えばネオ・ヴェイガン艦隊を突破する事が困難になる。
「艦長……」
「構わん! さっさと出せ!」
今すべき事はネオ・ヴェイガン艦隊を突破してセカンドムーンに辿りつく事だ。
少なくともエリスとヴァネッサはこちらに敵対する意志はない。
戦力としては5号機とヴァネッサは申し分はない事は自分達が良く知っている。
「良い判断だ。キャプテン」
したり顔のエリスに軽く殺意を覚えかけるが今はエリスの勝手な行動に構っている暇はない。
「行くぞ。ネッサ。私から離れるなよ」
「うん。母様」
アセムの心中を察する事もなくエリスとヴァネッサは出撃し、その後6号機も出撃し予定通りガンダムを先行させてアデル隊を展開する。
7機のガンダムはネオ・ヴェイガン艦隊へと向かいEXA-DBを巡る戦いの最終決戦、その前哨戦が開始される。