機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第139話

 

 EXA-DBを巡る旅の最後の目的地、それはヴェイガンの本拠地でもあったコロニーセカンドムーンであった。

 その事実はネオ・ヴェイガンの知るところとなり、EXA-DBを巡る戦いは最後の局面を迎えようとしていた。

 

「5号機? パイロットは誰?」

「ネッサだ。私が許可した」

 

 予定では5号機は最後の手段だった筈でそれがいきなり投入されている為、前線指揮を任されたローザは5号機のパイロットを確認しようとしていた。

 

「先輩がどうして?」

「私は母様と共に戦うと決めたわ」

「そう言う事だ。ネッサは私について来い」

 

 エリスのガンダムZERO-EXAは加速してネオ・ヴェイガン艦隊に向かう。

 それに遅れながらもヴァネッサの5号機がついて行く。

 

「で? どうすんの?」

「作戦は変わらないわ。予定通りに行くだけよ」

「了解だ。そう言う訳だ。ガキども」

 

 5号機の投入は予定外の出来事だが、見たところヴァネッサはこちら側に寝返ったと見て良い。

 その為、予定を変更する必要はないとローザは他のパイロットに伝える。

 だが、口ではそう言うが実際のところはヴァネッサの事を完全に信用した訳ではない為、不審な動きをすればいつでも狙撃出来るように見張る事は怠らない。

 口で予定通りと言ったのは単にチームの要の片方であるリックの事を考えての事だ。

 リックはヴァネッサと個人的な知り合いで信用もしている。

 故にここでヴァネッサを信用していない素振りをしては士気に関わりかねない。

 代わりに3号機のハーマンの方はその判断を素直に受け入れる事は出来そうにないが、エースパイロットと後方支援機のパイロットではどちらを優先するかは考えるまでもなかった。

 

「間違っても5号機を撃つような真似はすんなよな」

「分かってますって!」

「僕達も行くよ」

 

 先陣を切ったエリスとヴァネッサを追いかける為にリックとエイミーも機体を加速させる。

 

「数を揃えたところでな!」

 

 単機でネオ・ヴェイガン艦隊に突っ込んだガンダムZERO-EXAはファンネルを展開する。

 ファンネルを正確に操作してビームがネオ・ヴェイガンのMSの頭部を次々を撃ち抜いて行く。

 

「旧式のMSを相手にしてもつまらんな」

 

 数機を撃墜したところでファンネルを戻す。

 ダナジンがダナジンキャノンを撃ちながら突っ込んで来るが軽くかわしてVSドッズライフルで撃墜する。

 

「ティナのガンダムはいないのか?」

 

 攻撃を適当に回避しながら戦場のMSを確認するが、戦場のMSはダナジンを中心にドラドとレガンナー、ガフしかいない。

 後は戦艦だけしか戦場にはいない。

 恐らくはこの艦隊は足止めで本隊はすでにセカンドムーンの方へ向かっているのだろう。

 

「母様!」

「遅いぞ」

「この機体じゃ母様のガンダムには追いつけないわ」

 

 ガンダムZERO-EXAに引き離されていた5号機がようやく到着する。

 新しく到着したガンダムに敵の目が5号機に向かう。

 5号機はシールドライフルをドラドに向けるが、ヴァネッサは一瞬引き金を引く事を躊躇ってしまう。

 その隙にドラドはビームライフルを放ち、5号機はとっさにシールドライフルで防ぐ。

 

「私は……」

 

 引き金を引く事を躊躇うヴァネッサに容赦なくドラドはビームライフルを放つ。

 動きが鈍る5号機にドラド以外にもダナジンがビームバルカンで襲い掛かる。

 だが、ガンダムZERO-EXAがビームサーベルでドラドを切り裂いてVSドッズライフルでダナジンを撃ち抜く。

 

「躊躇うな。死ぬぞ」

「でも……」

 

 エリスと共に戦うと決めた反面、かつての同胞に銃を向ける事を未だにヴァネッサは割り切れた訳ではない。

 彼らもまた、自分と同じようにヴァレリの言う偽りのヴァニス像に踊らされている被害者だ。

 しかし、ヴァニスを慕っている気持ちは本物であった。

 彼らに今ここで真実を話しせばこちら側に付いてくれるのではないかと思ってしまう。

 そんな、ヴァネッサの心中を察する事もなく、ガンダムZERO-EXAは5号機の前でビームシールドを展開しながらVSドッズライフルで敵を撃墜して行く。

 

「ネッサは私と共に戦うと決めたのだろう。これが私の進む道だ。立ちはだかると言うのであれば何であれ力で捻じ伏せる。それが私の戦い方だ!」

「母様の戦い……」

 

 目の前に敵がいるのであれば実力を持って叩き潰す。

 それがエリスの戦いだ。

 例え、それがかつての自分を慕っている者達だとしても今は自分の行く手を遮る敵でしかない。

 それを討つのにエリスは一切の躊躇もない。

 

「先輩!」

「ようやく追いついた!」

 

 そうこうしている間にリックとエイミーも到着した。

 ストライダー形態に変形していた2号機はMS形態に変形してドッズライフルを放つ。

 リックのAGE-ZEROは5号機の横に来る。

 

「どこが怪我でもしたんですか?」

「何でもないわ」

 

 動きの悪い5号機を心配しての事だったが、ヴァネッサも覚悟を決めたようだ。

 5号機はシールドライフルからビームサーベルを展開してドラドのビームサーベルを片方のシールドライフルで受け止めてビームサーベルを振るい切り裂く。

 

「私はもう迷わない」

「それで良い。暴れて来い!」

 

 迷いを振り切ったヴァネッサは敵陣に突撃する。

 AGE-ZEROもそれに続く。

 

「て! エリスはどうすんのさ!」

「雑魚に興味はない。適当に逃げ回るさ」

 

 エリスはそう言って敵の攻撃を避ける事はあるが、積極的に反撃を行うと言う事はしない。

 エリスにとってはこの程度の相手など今更相手をする気も起きないと言う事だろう。

 だが、その事でとやかく言っている余裕もない。

 やがて後方から1号機、3号機、6号機が到着する。

 

「ディーヴァが来る前に少しでも数を減らすわ。ガレット中尉は弾薬の残弾を気を付けて。これで終わりじゃないのよ」

「分かってるけどよ!」

 

 6号機はガトリング砲でダナジンを撃墜する。

 この中にXラウンダー専用機はいない。

 最悪補給を受けずに交戦を続行する事も考えられる。

 実弾中心の6号機は火器の弾薬が尽きると補給に戻らねば戦力としては全く使えない。

 しかし、敵の数は多い為、弾幕を張って敵を掃討する事を得意とする6号機は弾薬を節約して戦う事も難しかった。

 

「EXAは当てに出来ないとなると……3号機頼むわ」

「了解」

 

 3号機はハイパーメガシグマシスバズーカを構える。

 ここに来るまでにすでにチャージを終えていた為、時間をかける事なく放つ事が出来た。

 3号機はハイパーメガシグマシスバズーカを放ち、射線上のMSと戦艦を一掃する。

 その後、この戦闘中にハイパーメガシグマシスバズーカを使う機会はない為、捨てた。

 

「3号機の火力を中心にMSを掃討、戦艦は無理に撃沈する必要はないわ。足を止めるだけで十分」

 

 6号機は弾薬の節約がある為、ビーム兵器主体で火力重視の3号機を中心としてローザは戦い方を決める。

 5号機がレイザーブレードで切り込み敵は散開するがドラド1機を切り裂き、散開したダナジンがダナジンキャノンで狙いをつけるがAGE-ZEROがDCドッズライフルで撃墜する。

 その後、ドッズブラスターキャノンでファ・ボーゼ級を撃沈させた。

 

「5号機との連携は出来そうね。2号機は3号機の援護。6号機は私が援護するわ。出過ぎないで」

「一々言わなくなって!」

 

 6号機は両肩のシールドで攻撃を防ぎ胸部のバルカンで牽制し、1号機がロングドッズライフルで仕留めた。

 1号機が6号機の前に入りロングドッズライフルで正確に敵機を撃ち抜いて行く。

 

「先輩、援護に入ります!」

「助かる」

 

 3号機はアームドキャノンを放つが、敵は散開してかわしてビームバルカンで反撃する。

 2号機がドッズライフルで3号機を狙う敵機の妨害を行い3号機が再びアームドキャノンを放つ。

 

「旧式ばかりだと言うのに!」

「ちょこまかと!」

 

 3号機の砲撃や2号機の射撃は中々当たらないがそれでも確実に数を減らしている。

 

「先輩! 後ろ!」

「問題ないわ」

 

 背後からビームサーベルで切りかかるダナジンの一撃を回避して逆に背後を取った5号機はレイザーブレードでダナジンを一刀両断する。

 そして、AGE-ZEROがドッズブラスターキャノンでドラドを2機撃ち抜く。

 ネオ・ヴェイガン艦隊と交戦状態に入ったガンダムは互いに連携し合いネオ・ヴェイガンのMSの数を減らしていく。

 元々が圧倒的な物量差がある為、多少数を減らしたところで艦隊の戦力を削ぐ事は難しい。

 交戦が始まり少しすると後方からディーヴァの砲撃支援が始まる。

 

「ディーヴァが来たわね。各機はこのまま戦闘を継続。だけど、フォトンブラスターの射線には入らないように」

 

 ディーヴァが主砲の射程に艦隊を捕えた事で砲撃支援が受けられるようになったが、本命はフォトンブラスターキャノンだ。

 今の時代でもフォトンブラスターキャノンは戦艦に搭載できる火器では最強クラスと言っても良い。

 射程は短いがフォトンブラスターキャノンでネオ・ヴェイガン艦隊に大打撃を与えて突破する事が狙いであった。

 その為にはディーヴァがフォトンブラスターキャノンの射程にネオ・ヴェイガン艦隊を捕えるまで時間を稼ぐ必要があり、それと同時に少しでも艦隊に大打撃を与える為にMSの数を減らす必要もある。

 だが、その反面ここで無理をする訳にもいかないと言う事も事実だ。

 エリスのガンダムZERO-EXAを除く6機のガンダムは2機づつで援護をしあい、数に圧倒されつつも交戦を続けついにはディーヴァがフォトンブラスターキャノンの射程にネオ・ヴェイガン艦隊を捕えた。

 

「ガンダム各機に通達します。速やかにフォトンブラスターキャノンの射程から退避して下さい。繰り返します……」

 

 ディーヴァからの通信が入り元々射線に入らないようにしていた為、混乱が起きる事なく6機は射線上から退避した。

 ガンダム全機が射線に入っていない事が確認されるとディーヴァはネオ・ヴェイガン艦隊にフォトンブラスターキャノンを撃ち込んだ。

 ディーヴァから放たれたフォトンブラスターキャノンは容赦なく射線上のMSや戦艦を破壊して行く。

 その様子に殆どのパイロットが息を飲んでいた。

 今まで何度も戦闘を経験して来たディーヴァ搭載機のパイロットだが、ここまでの兵器を資料等の映像データではなく実際に目の当たりにするのは始めての事だ。

 

「ぼやぼやしない。まだ序盤よ」

「ディーヴァが来るぞ!」

 

 フォトンブラスターキャノンの一撃を前に殆どのパイロットが息を飲む中、ローザの1号機、ヴァネッサの5号機、ロイドの6号機はすぐに戦闘を再開する。

 フォトンブラスターキャノンでネオ・ヴェイガン艦隊の中央に穴が開き、そこにディーヴァが突っ込んで来る。

 すぐにネオ・ヴェイガンのMSもディーヴァを沈める為に攻撃を再開する。

 

「とにかく足を狙わせないように! アデル隊は私達が撃ち漏らしたMSの対処を最優先に!」

 

 ディーヴァが突っ込みアデル隊と合流したが、今度はディーヴァを守らなければならない。

 フォトンブラスターキャノンで大打撃を与える事に成功したが、それでも元々の数で劣る為、ディーヴァを守りながらでは分が悪い。

 それでもぐずぐずしてはいられない為、強硬策で突破するのも致し方がない事だった。

 ディーヴァも対ビーム拡散弾をばら撒き主砲と副砲でMSを近づけさせないように牽制を行いつつも最大船速でネオ・ヴェイガン艦隊を突破しようとしている。

 ディーヴァの周囲をアデル隊で守りガンダムが道を切り開く。

 

「予想以上に数が多い……」

「どうすんの? 俺も全力で戦うか?」

「駄目よ。6号機の火力は必要になって来るから」

 

 ネオ・ヴェイガン艦隊を突破すれば今度はXラウンダー専用機と交戦しなければならない可能性が非常に高い。

 その中でもビームを反射する事の可能なビットを持つミラーファルシアは厄介なMSだ。

 他のMSは対処のしようは多いがミラーファルシアのミラービットは高出力のビームか実弾系の攻撃でしか対処は出来ない。

 高出力のビーム兵器を持つガンダムは多いが、実弾兵器の豊富な6号機の弾薬を節約しておけばその時に戦い方の幅が広がって来る。

 その為、6号機の弾薬を節約させたい。

 しかし、6号機は広範囲に弾幕を張っての殲滅戦を得意としている。

 ここでその能力をいかんなく発揮させれば艦隊を突破する事も容易になる。

 だが、ここで弾薬を使い切ってしまえば6号機は補給に戻らねば何の役にも立たなくなる。

 

「後々の事って事は分かってるけどよ! これじゃ突破できねぇぞ!」

「分かっているわ。今、考えているわ」

 

 ローザは戦闘を続けながらも頭をフルに回転させて状況を把握して打開策を考えている。

 フォトンブラスターキャノンを再度使うと言う手を考えるが、次の発射までは時間がかかる上に敵も一度使っている以上は射線に捉えるのは時間も手間もかかる。

 エリスが本気で戦って貰えればそれがベストだ。

 エリスのガンダムZERO-EXAは単体での戦闘能力は戦場に出ているMSの中では圧倒的な性能を持っている上にファンネルを使えば多くの敵を一気に撃墜する事も可能だ。

 その力を持ってすれば突破とは言わず後顧の憂いを絶つ意味でも艦隊を殲滅も可能だろう。

 しかし、当のエリスは完全にやる気を失っている。

 考えている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。

 するとディーヴァの後方からビームがネオ・ヴェイガン艦隊を襲う。

 

「何? 艦長」

「分からん。こっちのレーダーにも反応はない。1号機のレーダーでは何か捉えられないか?」

「こっちのレーダーには……見えざる傘が使われている? まさか……」

 

 何もないはずの空間からの攻撃。

 ディーヴァの方では何も反応を捉える事は出来なかったが、高性能の索敵システムを搭載している1号機の方では捉える事が出来ていた。

 見えざる傘を使って姿を隠しているようだ。

 そして、それは姿を現す。

 そこには遅れてディーヴァを追いかけて来たバロノークが砲撃を行っている。

 すでにMSが展開されており、こちらに向かって来ている。

 

「ビシディアンか!」

「遅れてすまねぇ! 遅れた分はきっちりと働かせて貰う!」

 

 ビシディアンの先陣を切るのはアンナのGハウンドだ。

 何とか修理を終えたGハウンドはドッズライフルⅡBを連射して突撃して来る。

 

「後ろはアタシ等に任せな!」

「頼む。中尉」

「了解」

 

 後方からビシディアンが参戦した事でガンダムが前方の敵に集中する事が出来る。

 Gハウンドの後ろからシャルドールローグ改も到着してバロノークの砲撃支援の元、ビシディアンのMSがディーヴァの後ろを守る。

 後方の守りが硬められたところでガンダムが前方の敵の対処に当たる。

 

「後方の守りを気にする必要はないわ。とにかく前方の敵を叩いて」

「分かりました!」

 

 AGE-ZEROがドッズブラスターキャノンでファ・ボーゼ級を撃沈し2号機と5号機が突撃して敵を散らした上で1号機がロングドッズライフルで仕留める。

 3号機はアームドキャノンでMSごと戦艦を吹き飛ばす。

 戦力が前方に集中した事や増援の到着で勢いに乗りやがてネオ・ヴェイガン艦隊をガンダムが突破してディーヴァがそれに続く。

 艦隊を突破する事に成功したが、艦隊の戦力はまだ残されている。

 ディーヴァが突破した事でネオ・ヴェイガン艦隊はディーヴァを追撃しようとする。

 しかし、後方からビシディアンのMSがそれを阻止する。

 

「野郎ども! 一機たりともディーヴァを追わすなよ!」

 

 ディーヴァを追撃しようとすれば、ネオ・ヴェイガン艦隊はビシディアンに背後から攻撃を受ける事になる。

 その為、ネオ・ヴェイガン艦隊はビシディアンの相手もしなくてならず、ディーヴァの追撃に戦力を回す事は出来ずにいた。

 

「ここはアタシ等ビシディアンが抑える! ディーヴァはそのままセカンドムーンを目指してくれ!」

「頼む。必ずEXA-DBは持ち帰る。それまで死ぬなよ」

「聞いたか? 野郎ども! あの伝説のキャプテンがお宝を持ち帰ってくれるんだ。それまで死ねないよな!」

 

 アンナの言葉にビシディアンのパイロット達は声を上げる。

 彼らの中にアセムがキャプテンをしていた時の世代はいない。

 それでも今や伝説とされているキャプテンアッシュことアセムがビシディアンの悲願でもあるEXA-DBを持ち帰ると言うのだ嫌でも士気は上がる。

 士気が最高潮な上にネオ・ヴェイガン艦隊は突破したディーヴァの追撃を行いたいと言う焦りもあり戦局はビシディアンに有利であった。

 

 

 

 

 

 突破したネオ・ヴェイガン艦隊をビシディアンに任せてディーヴァはセカンドムーンへと向かっている。

 ネオ・ヴェイガン艦隊はビシディアンが完全に足止めを行っている為、追撃される事は無かった。

 

「ようやくセカンドムーンが見えて来たか……ネオ・ヴェイガンの方はどうなっている?」

 

 すでにセカンドムーンはモニターに映されている。

 ネオ・ヴェイガンが艦体を敷いて待ち構えていたと言う事はすでに先に向かっていると言う事だ。

 

「レーダーにMSの反応を捕えました! 数は4! Xラウンダー専用機と思われます! その先のも2機のMSを補足!」

「ガンダムに情報を伝えろ。ディーヴァは最大船速を維持してセカンドムーンに向かう。リックにはディーヴァから離れるなと伝えろ」

 

 案の定、ネオ・ヴェイガンのMSがセカンドムーンに向かっていた。

 幸いなのは向かっている途中と言う事は艦隊を配置してから時間は差ほど経っていなかったと言う事だ。

 つまり、まだネオ・ヴェイガンもEXA-DBを手に入れていないと言う事になる。

 その情報はすぐにガンダムにも伝えられた。

 

「Xラウンダー専用機が4機と先行しているのが2機……」

「先行している奴は私とネッサで抑える。お前達は4機の方を任せた」

「好きにしなさい」

 

 今までやる気を失いまともに戦っていなかったエリスがいきなり仕切り出した事にローザは軽くイラつくが今はそんな事で時間を使っている余裕はない。

 エリスがやる気を出したと言うのであれば好きにさせた方が良い。

 下手に機嫌を損ねるのは得策ではないからだ。

 

「キャプテン、ウェイボードを射出してくれ。ネッサはそれで私について来い」

「分かったわ。母様」

 

 アセムに方でもまともに戦わなかった事に対して文句を言う気は今のところないらしくディーヴァからウェイボードが射出される。

 それに5号機が乗りエリスのガンダムZERO-EXAと共に先行する2機を追いかける。

 

「私達も行くわ。AGE-ZEROはディーヴァの守りをお願い。他は私に付いて来て」

「分かりました」

 

 リックが守りに残るのはいざと言う時にAGEシステムが作り出した新装備を受け取り易くするのとアンバットでAGEデバイスに次の目的地が送られて来たと言う事があったからだ。

 セカンドムーンでもAGEデバイスが必要になるかも知れない為、AGEシステムを搭載しているAGE-ZEROはディーヴァと共にセカンドムーンへと向かう。

 

「相手はXラウンダー専用機が4機。ここが正念場よ」

 

 1号機がロングドッズライフルで牽制を入れると向こうからもゼイドラ・ハンターが狙撃で返して来る。

 どちらも距離があり、牽制目的である為、精度は大した事は無いがそれが戦端を開く合図となる。

 2号機はストライダー形態に変形し、向こうもまた宇宙戦用に対応した改良がされているマリンクロノスが高速飛行形態に変形する。

 

「ちっ! あのガンダムがいないじゃないかよ!」

「こいつ……水中戦用の奴!」

 

 先行する2機は接触しMS形態に戻る。

 2号機がドッズライフルで応戦し、マリンクロノスがミサイルを放つ。

 ミサイルを迎撃するがミサイルは2号機のビームを回避して迫る。

 途中で何発かは撃ち落すが、全て撃ち落とし切れずに2号機はシールドで受け止めた。

 

「まずは!」

 

 ミサイルを防いで体勢の崩れている2号機をマリンクロノスが狙うが1号機の援護射撃が邪魔をする。

 

「雑魚が!」

「落ち着け。カール。奴らは我らの攻撃をここまで凌いで来たのだ。素人だと思ったままだとやられるぞ」

「腰抜けは引っ込んでろ!」

 

 ジェレミアの忠告を無視してマリンクロノスは突っ込むが1号機の射撃で抑え込まれる。

 

「言わんこっちゃないわね」

 

 ナイトギラーガと共に到着したミラーファルシアがミラービットを展開する。

 それを確認したローザは援護射撃を一度中断する。

 ロングドッズライフルでの支援はミラービットで反射されてしまうからだ。

 しかし、すでに対策は用意してあった。

 

「ガレット中尉!」

「今まで抑えてたんだ! 思いっきり行かせて貰うぜ!」

 

 今まで弾薬を節約していた6号機はここぞとばかりにミサイルを一斉掃射する。

 6号機の放った弾幕をナイトギラーガ、ミラーファルシア、マリンクロノスは迎撃して、後方からゼイドラ・ハンターも援護する。

 

「仲間の仇だ!」

 

 その間に3機のガンダムも2号機と合流して3号機がアームドキャノンを放つ。

 その砲撃で3機のXラウンダー専用機は散開する。

 

「ファルシアはガレット中尉が抑えて」

「分かってるよ!」

 

 6号機はガトリング砲を撃ちながらミラーファルシアに突っ込んでいく。

 

「ビームを反射するだけがミラーファルシアじゃないのよ!」

 

 ミラーファルシアはビームソードを抜いて6号機に接近する。

 6号機もガトリング砲で応戦するが、ミラーファルシアは回避する。

 

「こっちだってな!」

 

 ガトリング砲で追い払う事を諦めて6号機は唯一のビーム兵器であるビームサーベルを左手で抜いて迎え撃つ。

 ミラーファルシアのビームソードを受け止めると今度は胸部のバルカンを使う。

 バルカンが撃たれる前にミラーファルシアは距離を取って左腕のシールドを回転させてバルカンを弾く。

 バルカンを撃ちつつも距離を確保した6号機は両肩のシールドに内蔵されているレールガンを放つ。

 ミラーファルシアはシールドでレールガンを防ぐがその勢いで弾かれて体勢を崩す。

 

「Xラウンダーつっても兄貴や爺さん程じゃなければよ!」

 

 体勢を崩したミラーファルシアに追い打ちをかけるように6号機はガトリング砲を連射し、ミラーファルシアは防戦一方となる。

 

「向こうは中尉に任せればいいわ」

 

 面倒なミラーファルシアはロイドの6号機が完全に抑え込んでいる。

 後は他の3機を抑えれば良いだけだ。

 1号機はロングドッズライフルでナイトギラーガとマリンクロノスを引き離す。

 

「こんの!」

「落とす!」

 

 2機が分散したところで2号機がマリンクロノスに3号機がナイトギラーガにそれぞれ攻撃する。

 後方からゼイドラ・ハンターがゼイドラライフルで射撃支援を行い1号機がシールドで防ぐとロングドッズライフルで反撃する。

 

「後方の狙撃機が厄介だけど……無理をする必要はないわ。このまま戦局を膠着されば私達の勝ちよ」

 

 4機のXラウンダー専用機をここで抑える事が出来れば残りは2機だけだ。

 その2機もエリスとヴァネッサが向かっている。

 そちらはエリスとガンダムZERO-EXAがいる以上は気にする必要はないだろう。

 後はディーヴァがセカンドムーンに辿りつけばEXA-DBを手に入れたも同然だ。

 その為、ここでローザ達がすべき事は敵を撃墜するのではなく、確実に4機を抑えると言う事だ。

 無理に攻めて自分達に被害を出せばディーヴァの方に敵が向かってしまう。

 ディーヴァにはアデル隊とリックが守りについているが不安要素は少しでも減らしておきたい。

 だからこそ、ここは無理をせずに足止めに専念する事が最優先だ。

 

「膠着させるって言ってもさ……」

「フォローは私の方でやるわ。貴女は今まで通りに構わないわ。3号機は砲撃をセカンドムーンに当てないように注意さえしていればいい」

「了解」

 

 実戦経験を積んだとはいえ、エイミーやハーマンに全てを期待できる訳ではない。

 3人の中で唯一実戦経験が豊富で周囲の情報を常に把握し、判断が出来るローザが2人をフォローする事が現状における最善の手だ。

 2号機がドッズライフルを撃ちながら突っ込み、3号機がアームドキャノンで砲撃する。

 2機の位置と敵との位置を把握しつつローザが後方のゼイドラ・ハンターを牽制しつつ4機のガンダムはXラウンダー専用機との戦いを続けた。

 

 

 

 

 

 4機のガンダムと4機のXラウンダー専用機が膠着状態に入る頃、先行している2機にエリスとヴァネッサが追いつこうとしている。

 

「見えた。ネッサの奴とレギルス……ヴァレリの奴か」

「母様。姉様をどうするつもり?」

「教育的指導だ」

 

 ガンダムZERO-EXAはVSドッズライフルで2機に自分達の存在を教えるかのように2機の間を狙って放つ。

 当然、当たる事は無いが向こうもこっちの存在に気が付いた。

 

「新型のガンダム……それにネッサの5号機!」

「やはり、そう来たか」

 

 ヴァレンティナは情報にない新型のガンダムよりも5号機の方に驚く。

 そして、すぐに機体を5号機の方に向かわせる。

 

「姉様!」

「貴様! 良くもネッサのガンダムで!」

 

 レギーナはガンダムZERO-EXAに目もくれずに5号機にビームサーベルで切りかかる。

 5号機もビームサーベルで受け止めた。

 

「姉様! 私よ! ヴァネッサ!」

「ヴァネッサだと! ふざけた事を!」

 

 レギーナに通信を繋ぎヴァネッサは叫ぶ。

 それで話しを聞いて貰えるかと思いきや逆にヴァレンティナは激高する。

 

「貴様のようなどこの馬の骨かも分からぬ奴がネッサを騙ると言うのか!」

 

 レギーナは5号機を蹴り飛ばすとレギーナライフルを連射する。

 怒りの余りか狙いは大して正確ではなかったが、直撃コースを5号機はシールドライフルで防ごうとするがシールドライフルごと左腕が吹き飛ぶ。

 

「姉様……」

 

 通信を繋いだと言うのにヴァネッサが激高した事にヴァネッサは茫然としている。

 当然だ、話しさえできれば何とかなると思っていたが完全に逆の結果となっている。

 ヴァレンティナからディーヴァにエリスがいた時点でこうなる事はヴァレリにとっては想定の範囲内の事だ。

 ヴァネッサの存在を消せない以上は死んだ事にして連邦軍に対して憎しみを募らせると言う選択をヴァレリは取ったがそれには最大のリスクがあった。

 ヴァネッサが自身の生存をヴァレンティナに伝えると言う事だ。

 ヴァネッサがヴァレリの嘘に気が付いた理由に本物のヴァニスこと、エリスがいたようにヴァレンティナにヴァネッサの生存が知られると全てが崩壊する。

 それを防ぐ為に記憶を操作した際にヴァレンティナがヴァネッサの事をヴァネッサだと認識出来ないようにしてあった。

 これによりヴァレンティナはヴァネッサの声を聞いても顔を見てもそれがヴァネッサだと認識出来ない。

 記憶の中のヴァネッサと顔と声が同じだと言う事に気が付かないようになっている。

 今のヴァレンティナにはヴァネッサは妹を殺し機体を奪っただけではなく、妹の名を騙って自分を揺さぶりに来ている卑劣漢としか映っていない。

 

「ヴァレリの仕業か……ネッサ。お前は下がれ。私が2機をまとめて相手をする」

「でも!」

「適当に手を抜くからティナを殺す事は無い。どの道、その機体で長時間の戦闘をさせる訳にもいかんしな」

 

 どんな方法を使ったかまでは分からないがヴァレンティナの行動のおかしさはヴァレリのせいだとエリスは判断している。

 そして、片腕を失っている5号機では足手まといでしかない。

 

「分かったわ。姉様をお願い。母様」

「任せろ」

 

 損傷した機体ではエリスの足を引っ張る事しか出来ないと自分を納得させてヴァネッサはディーヴァの方へと向かう。

 

「逃がすか!」

「おっと。寂しいじゃないか。折角の親子の再会だ。もう少しゆっくりして行くと良い」

 

 5号機を追いかけるレギーナの前にガンダムZERO-EXAが立ちはだかる。

 

「新型は厄介です。2機がかりで先に仕留めます」

「良いだろう」

 

 先ほどまでの怒りはまだ冷めることはないが、素直にヴァレリの指示に従いガンダムZERO-EXAにレギーナライフルを放つ。

 ヴァレリのキングレギルスもビームマシンガンで攻撃を始める。

 

「親子の再会に無粋な奴だ」

 

 2機の攻撃をあっさりと回避したガンダムZERO-EXAはVSドッズライフルでキングレギルスの足を撃ち抜いてキングレギルスは体勢を崩す。

 

「お前は楽には殺さんよ」

「ヴァレリ! 貴様!」

 

 レギーナはレギーナライフルの下部の実体剣でガンダムZERO-EXAに切りかかるが、腕のビームサーベルで受け止めて弾く。

 

「流石は私の娘。だが……その程度でこの母に太刀打ちできる訳もない!」

 

 ガンダムZERO-EXAはファンネルを展開する。

 ファンネルはすぐさまレギーナの周囲に位置を取るとヴァレンティナが反応するよりも先に全方位からビームを放つ。

 

「ぐっ!」

 

 レギーナは一切の反撃を行う前にファンネルのビームでコックピットのある頭部のみが残されて撃ち抜かれている。

 ほんの一瞬でレギーナは頭部のみへと姿を変えてしまう。

 

「能力的には大した差はないはず……機体が違うと言うだけでここまでの差があると言うのか!」

 

 キングレギルスはレギルスビットを大量に展開してガンダムZERO-EXAに差し向ける。

 

「その程度が私に通用するとでも思っているのか」

 

 ビームシールドを使いつつもビットをVSドッズライフルとビームバルカンで撃墜して行く。

 ビットを全て撃墜させる頃にはキングレギルスはレギーナの頭部を抱えて逃げていた。

 

「くそ……これではティナまで巻き添えになるではないか」

「まだだ……EXA-DBなど暮れてやる。コレさえ残っていれば切り札はこちらにある」

 

 ヴァレリにとってはEXA-DBにそれ程の価値は無かった。

 無論、手に入れば有効活用が出来、連邦の手に渡ると面倒である事は事実だ。

 しかし、ここでヴァレンティナを失って程手に入れたい物でもない。

 ここまでヴァレンティナを手懐けるには相当の年月をかけた。

 ヴァニス・イゼルカントの娘として周りに浸透させてネオ・ヴェイガンの指導者に据える事に時間を費やした。

 ここで失えば代わりを用意する時間も必要となって来る。

 その為、ここはヴァレンティナを回収する事がヴァレリにとっては急務でEXA-DBを手に入れ損ねても連邦に勝つだけの切り札を持っていた。

 それさえあれば連邦がEXA-DBを手に入れたとて確実に勝つ事が出来ると言う確信を持っている。

 逃げるキングレギルスを撃ち落す事はエリスにとっては簡単な事だが、ここでキングレギルスを撃墜してしまえばその余波でレギーナのコックピットまで破壊してしまう。

 それではヴァレリを討つ意味がない。

 

「まぁ良い。チャンスはいくらでもある……それに何だこの感じは」

 

 ヴァレンティナが生きてさえいれば取り戻すチャンスはいくらでもあった。

 追撃してコックピットを奪ってヴァレリを討つと言う事も出来たが、エリスはセカンドムーンの方から何か尋常ではない力を感じていた。

 今までの戦場で感じた事のない力だ。

 その力の方が気になり、先にセカンドムーンへと接近しているディーヴァの方へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネオ・ヴェイガンのXラウンダー専用機を足止めさせているディーヴァはセカンドムーンに近づいていた。

 今まではクライドが何かしらの妨害を用意していた為、ネオ・ヴェイガンを足止めしていても警戒を解く事は出来ない。

 

「何か来る!」

 

 リックが叫ぶとセカンドムーンからビームが飛んでくる。

 AGE-ZEROがビームシールドで受け止めるがビームシールドでは完全に防ぎきれずにAGE-ZEROの左腕が破壊された。

 

「リック!」

「大丈夫です……」

 

 左腕を失いつつもAGE-ZEROは辛うじて体勢を崩さずにいた。

 そして、それは現れた。

 ライフルとシールドと言ったシンプルな装備にバックパックには翼を模した光波推進システム。

 

「あのガンダムは……Zだと言うのか!」

 

 そのガンダムを良く知るアセムは思わず艦長席から立ち上がりそうになる。

 セカンドムーンから出て来たガンダム、それはかつてクライドがその生涯をかけて開発した最強のガンダム……ガンダムZERO Zであった。

 クライドの死後、様々な技術者がZを超えるMSの開発を目指すが未だにそれを超えるMSの開発には至っていない。

 その最強のガンダムがクライドの用意した最後の試練であった。

 かつてのUIEとの戦いでエリスと共に行方知れずとなっていたZはクライドがエリスと共に回収して完全に修復していた。

 

「リック! そいつは危険だ!」

「分かってる。お爺ちゃん……でも、こいつを倒さないと駄目なら!」

 

 片腕を失いつつもAGE-ZEROはZへと向かって行く。

 AGE-ZEROはDCドッズライフルをを放つがZは回避してスタングルライフルで反撃する。

 一発目は回避できたが二発目は回避しきれずに右足に被弾する。

 

「速い……それにこの動き!」

「リック!」

 

 ディーヴァと合流していた5号機がシールドライフルを放つがやはりZには当たる事は無い。

 Zはビームセイバーを抜くとAGE-ZEROに向かう。

 DCドッズガトリングで迎え撃つもシールドで防がれる。

 そして、Zはビームセイバーを振るいAGE-ZEROはDCドッズライフルを手放して頭部のビームバルカンでDCドッズライフルを狙いDCドッズライフルはZを巻き込んで爆発を起こす。

 しかし、爆風から飛び出して来たZは傷一つついていない。

 

「くっ!」

 

 AGE-ZEROは迫るZに対してビームブレードで向か撃つ構えを取る。

 2機の剣がぶつかり合うがすぐに出力の差からAGE-ZEROのビームブレードのビーム刃がZのビームセイバーのビーム刃に切られやがてAGE-ZEROの右腕が肩から切り裂かれた。

 両腕を失ったAGE-ZEROに止めを刺す為にZはビームセイバーを振るおうとするが5号機がシールドライフルで牽制する。

 Zが距離を取ったところでAGE-ZEROはドッズブラスターキャノンを放つもやはりZを捕えることは出来ない。

 

「あのガンダム……強い!」

 

 Zの圧倒的とも言える性能の前にリックもヴァネッサも打開策を見つけることが出来ずにただ相手の攻撃に対処して撃墜されないように耐えることが精一杯であった。

 その上でAGE-ZEROは両腕と右足を失い5号機も左腕を失っている。

 対するZは全くの無傷と言う絶望的な状況だ。

 

「ずいぶんと楽しそうな状況ではないか」

「母様!」

「エリスさん!」

 

 そこにヴァレリを取り逃がしたエリスが到着する。

 エリスが感じた力こそが二人の目の前にいるZである事は確認するまでもない。

 

「姉様は?」

「済まん。逃げられた。それにしてもZか……新たな力を手にした今では懐かしく感じるな」

 

 エリスにとってはZはかつての愛機であった。

 今は新しい愛機を手に入れている為、エリスの感覚では数か月にも満たないが大昔に感じている。

 

「アレとやれるのは私だけだ。リックとネッサはディーヴァと共にセカンドムーンに迎え。アレは私がやる」

「でも!」

「母様、あのガンダムの力は異常よ」

「分かっている。問題はない」

 

 リックとヴァネッサは身を持ってZの力を体感している。

 だが、エリスはそれを知らない。

 当然だ。

 エリスはその力を体感させる方にいたからだ。

 しかし、その性能は誰よりも知っている。

 

「そいつはエリスに任せろ。お前達はディーヴァと共にセカンドムーンに向かってくれ」

「お爺ちゃん! でも!」

「お前達のガンダムでは足手まといにしかならん」

「行こう。リック」

「分かりました……」

 

 リックは一応は納得し、ヴァネッサと共にディーヴァの方に戻って行く。

 そして、ガンダムZERO-EXAはZの前に立ちはだかる。

 

「かつての愛機を撃墜すると言うのは複雑だが……これも私の為だ」

 

 エリスはかつての愛機を前に新たなガンダムで立ち向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Zの相手をエリスに任せてリックとヴァネッサはディーヴァに帰投していた。

 セカンドムーンに試練として配置していた物はガンダムZERO Zのみらしくネオ・ヴェイガンも完全に足止めをしている為、ディーヴァの進路を遮る物は何もなかった。

 細心の注意を払いながらもディーヴァはセカンドムーンの宇宙港に入る。

 トラップの類はないらしく問題なく港に入る事が出来た。

 

「リック! 大丈夫かよ!」

「僕は平気。ガンダムの修理は任せたよ。ジン」

 

 ディーヴァに帰投したリックは機体をハンガーに戻して機体から降りる。

 機体が損傷していた為、リックの身を案じたジンがコックピットまで来るがリックはすぐに機体をジン達整備班に任せてた。

 リックとヴァネッサが戻った頃にはブリッジから格納庫にノーマルスーツを来たアセムと艦内の保安要員が到着していた。

 

「お爺ちゃん!」

「これからセカンドムーンの捜索に入る。ヴァネッサも良いな?」

 

 リックと同様にディーヴァに着艦して機体から降りていたヴァネッサも頷く。

 これからセカンドムーン内部の捜索に入る。

 アセムはその陣頭指揮を執る事になっている。

 当初からAGEデバイスを持つリックは捜索に加わる事は予定していたが、何が待ち構えているか分からない以上はエリスとほぼ同等の身体能力を持つヴァネッサはこれ以上もない戦力だ。

 本来ならば正規の訓練を受けてある程度は白兵戦をこなせるローザかロイドを呼び戻す予定だったが、ヴァネッサが入ればその必要もない。

 アセムはリックとヴァネッサ、保安要員を連れてセカンドムーンへと向かった。

 セカンドムーンはかつてはマーズレイの治療研究の最前線だったが、今では火星圏に新設したマーズレイの受けないコロニーで行われている為、何年も前に廃棄されている筈のコロニーだ。

 しかし、内部に入ると内部には未だに空気が循環しており、ノーマルスーツなしでも問題なく行動する事が出来た。

 コロニー内のシステムは生きており、進むのも簡単だった。

 保安要員がトラップの有無を確認しながら進むが、トラップは一切発見できず、それどころか電子ロックの類は全て解除された状態でまるでご自由に入って来いと言わんばかりだ。

 

「ここか……」

 

 セカンドムーンを進みまずはクライドの研究室に到着した。

 今回の一連の出来事で訪れた場所は比較的クライドが手を出し易い場所にある事は明白だ。

 その為、真っ先にセカンドムーンで調べるべき場所の一つがセカンドムーン内のクライドの研究室だ。

 ここでクライドはマーズレイの研究と同時にガンダムZERO Zの設計を行っていた場所だった事もあり、EXA-DBに関する情報が残されている可能性が高い。

 研究室の前に到着すると保安要員が前に出て扉を挟みいつでも突入出来る体勢を取る。

 

「私が行くわ」

「頼む」

 

 捜索隊の中で最も身体能力に優れているヴァネッサが申し出る。

 そして、ヴァネッサが研究室に入ると保安要員も研究室に雪崩れ込んで周囲を安全確認を行う。

 

「大丈夫よ」

 

 安全が確認されるとアセムとリックも研究室に入る。

 研究室には大型のモニターやコンソールなどがあるだけで変わったところは何もない。

 

「余り迂闊に触れるなよ。何があるか分からんからな」

「お爺ちゃん。これって……」

 

 用心しながらも研究室の捜索を行っているとリックが何かを見つけた。

 そこにはコンソールにAGE-ZEROのコックピットにあるAGEデバイスの挿入口に良く似たスロットがある。

 

「リック、AGEデバイスを貸してくれ」

「うん……」

 

 リックはアセムに言われるままにAGEデバイスをアセムに手渡しする。

 そして、アセムは周りを手で制してコンソールから離れさせるとAGEデバイスをスロットに挿入する。

 AGEデバイスと規格があっていたのかAGEデバイスはすんなりとスロットに入る。

 すると、研究室ないの電気が復旧して大型モニターが付いた。

 突然の事に回りを警戒するがモニターが付いた事以外は何も起こる事は無かった。

 

「アレは……叔父さん」

 

 モニターが映りアセムはポツリと零す。

 そこには生前のクライドが映されていた。

 年齢は若いとは言えず寧ろ、年を取り死ぬ直前くらいの年齢の時だろう。

 

「うぉほん。私がクライド・アスノである」

 

 いきなりの出来事に頭の中を完全に整理する前にクライドが話し出す。

 当然の事ながらクライドは死んでいる為、映像は生前に撮られた物でこちらの都合などお構いなしだ。

 話し出したクライドは普段は使わない一人称で話すあたり芝居がかっていた。

 

「この映像を見ていると言う事は私が残したデータを辿りここまで来たと言う事だろう。何世代後かは分からんが流石はアスノの血を引く者だと言わせて貰おう。だがEXA-DBを期待して来たのであると言うのであれば残念だが、EXA-DBはすでに私が廃棄した」

「馬鹿な……」

 

 クライドが口にした事はここまでの全てを無意味にする言葉だ。

 しかし、映像が終わっていない為、クライドは話しを進める。

 

「しかし、安心したまえ。EXA-DBはあくまでも行動を起こさせる為のきっかけに過ぎない。ここにはそれ以上の秘宝を用意してある」

「EXA-DB以上の秘宝だと? 一体、叔父さんは何がしたいんだ」

 

 わざわざEXA-DBの名を出してまでクライドは何をさせたかったのか理解できる者はこの場にはいないだろう。

 理解する為にはこのままクライドの言葉を聞くしかない。

 少なくともクライドはEXA-DB以上の物を用意していると言うのだここまで来た以上は聞かないと言う選択は出来はしないのだから。

 

「その前に目を閉じて思い出して欲しい」

 

 そう言ったクライドは目を閉じる。

 

「ここまでの航海で様々な出来事があっただろう。時には方針を巡り対立し、時にはロマンスが生まれ、時には信じていた仲間に裏切られる。時には戦いで仲間を失い、時には進むべき道を見失った事もあるだろう」

 

 前置きが無駄に長く保安要員の中にもイラついている者も出て来ている。

 幸い、アセムはクライドの事を知っている為、この程度では一々反応する事はしない。

 

「だが、思い出して欲しい。今、君たちの隣にいる者の事を。君達は共に苦難を味わい協力して乗り越えて来た。その絆こそがEXA-DBや金銀財宝とは比べものにならない財産で究極の秘宝だのだよ!」

 

 映像の中のクライドは立ち上がりそう言う。

 そして、映像が終わった。

 映像が終わってすぐは誰も……アセムすら何も言う事は出来なかった。

 映像が終わったと言う事はクライドからのメッセージはこれで終わりと言う訳だ。

 旅路の果てにクライドからのメッセージ、それはここまで航海して来た者達を絶望に落とすには十分だった。

 

 

 

 

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