機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第六部 エリス編
第141話


 A.G.201年、EXA-DBを巡る戦いから7年が経過していた。

 歴史上、表沙汰になる事もなく終結した戦いは世界に大きな変化を及ぼしていた。

 それによってディーヴァを私物化して連邦軍から離れて勝手に行動していたアセム達の行動も有耶無耶にされ、公的には一連の事件はネオ・ヴェイガンがコロニー「レーアツァイト」を襲撃しただけのテロ事件として歴史に刻まれた。

 極秘裏に回収されたEXA-DBは解析されクライドがある物を残していた事が判明した。

 EXA-DBの中にはクライドやフリットが設計したガンダムを初めとしてヴェイガンやUIEとの戦いの中で投入された兵器のデータも新しく更新されていた。

 更にはクライドが研究を進めていた火星圏のマーズレイを無効化するシステム『イヴァースシステム』は世界を変えるのに十分な物であった。

 尤もイヴァースシステムは基礎理論だけの物でその理論を実現させる為に7年の年月を必要としていた。

 この7年の間にネオ・ヴェイガンはただの一度も行動を起こしてはいない。

 連邦軍もネオ・ヴェイガンが解散されたとは考えてはおらす地球圏や火星圏を捜索するも一向にネオ・ヴェイガンの尻尾を掴む事は出来なかった。

 地球圏最大の反政府勢力が動かなかった為に地球圏は束の間の平和が訪れていた。

 

 

 

 

「ガンダム、帰投しました」

 

 

 連邦政府が多額の資金を投入して造ったコロニーにガンダムAGE-ZEROは帰投する。

 AGE-ZEROは一切の武装を解いた状態だが、戦闘に出ていた訳ではない。

 イヴァースシステムを完成させるにあたり、マーズレイの情報を取る為にAGE-ZEROに搭載しているAGEシステムを利用している。

 AGEシステムの特徴の一つに搭載されたガンダムの経験を解析する事がある。

 その経験を解析する事で特定の敵やパイロット、環境などに適応させていたが、それを利用してAGEシステムにマーズレイを解析させてデータを取ると言う事だ。

 今まで火星圏での戦闘は殆どなくAGEシステムがマーズレイを取る事は殆どなかった。

 

「お疲れ。アスノ少尉」

「データは上手く取れましたか?」

 

 AGE-ZEROから降りたリックはそう言う。

 あの戦いかた7年が経ち、リックは少年から青年へと成長していた。

 今では連邦軍に入隊し正式にAGE-ZEROのパイロットとしてマーズレイの研究チームの一員として働いている。

 

「上々と言ったところかな。マーズレイの研究が進んでよりマーズレイの強いところでも人体への影響が出ないようになったことでデータ収集は大きく捗っているからね。アスノ家のお陰だな」

「僕は何もしてませんよ。僕の曾祖父たちが凄いんですよ」

 

 クライドが生きている時にすでにマーズレイによる病は死病ではなくなっていたが、研究が進みMSや戦艦、コロニーもマーズレイを完全に遮断できるところまでになっていた。

 後はマーズレイを完全に無効化する事が出来れば火星圏は人が安全に住める場所となるだろう。

 それにより更にマーズレイの強いところにAGE-ZEROを送り込みデータ収集を行う事も可能となり、そのデータはイヴァースシステムの完成に大きく役立っている。

 

「この調子だと年内はと言わず1、2か月位でシステムその物は形になりそうだ」

「そうなれば慰霊式典で発表が出来そうですね」

 

 イヴァースシステムの完成まではすでに時間の問題となっている。

 完成の目途が経てば来月に行われる天使の落日の慰問式典でイヴァースシステムの事を大々的に公表する事が出来る。

 今は無用な期待を一般市民に与えないように公表は控えているが公表する事でヴェイガンの血を引く一般市民たちにも新たな希望を与えることが出来る。

 特に今年の慰問式典は天使の落日からちょうど100年目の節目になる。

 イヴァースシステムの完成により火星圏が安全な地になれば本当の意味でヴェイガンとの戦争が終結する。

 100年目の節目に世界に希望を見せると言う意味では程相応しい物はない。

 

「そうだな。後はこっちの仕事だ。少尉は休暇で地球だろ?」

「ええ、久しぶりに友人と会う約束があります」

「彼女か?」

「違いますって」

 

 データはある程度取れている為、後は取ったデータをAGEシステムで解析するだけだ。

 その仕事にパイロットのリックは必要無い為、この機にリックは休暇を取り地球圏に戻る予定だ。

 地球圏ではエイミーやジンと会う約束をしている。

 すでにエイミーとジンもそれぞれの道に進み会う機会もめっきり減っている。

 今回も何か月も前から連絡を取り合い互いに予定を合わせてようやく会う機会を作ったくらいだ。

 

「そう言う事にしといてやるよ」

 

 今回のデータをAGE-ZEROから取り終えた研究者がリックを茶化しつつデータを持ってコロニー内の研究所へと戻りリックは苦笑いをしながらそれを見送る。

 

「彼女か……」

 

 それを見送ったリックは地球圏に戻る為の準備をする為に自分の部屋へと向かいそうつぶやく。

 この7年でエイミーとの関係は全くと言って進んではいない。

 元々、仲の良い友人と言う認識だった為、進むも何もない。

 7年前の旅でいろいろと励まして貰った事もあって数年前から少し意識をする程度で二人の関係が分かったと言う事も当然ない。

 研究者に茶化された事でエイミーと会った時にどうしようかと考えつつもリックは自分の部屋へと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 7年間、尻尾を掴む事の出来なかったネオ・ヴェイガンの尻尾をようやく掴んだ連邦軍は艦隊を派遣していた。

 艦隊がネオ・ヴェイガンの本拠地であるグレート・エデンを包囲しその包囲網を縮めていく。

 

「さっきから動きがないんだけどさ」

「油断するな。罠の危険性があるからな」

 

 包囲する艦隊の中にエイミーとハーマンの所属する部隊も混じっている。

 エイミーとハーマンもまた今は連邦軍のパイロットとなっている。

 元々才能があったエイミーはこの7年で軍のエースパイロットの一人となり、ハーマンも小隊長となっている。

 二人が7年前に乗っていたガンダムは戦いの後に極秘裏に廃棄処分が決まり廃棄された。

 その為、二人ともクランシェⅢに乗っている。

 エイミーの機体は近接戦闘重視のドッズランサーを装備したタイプでハーマンの機体は火力重視のハイパードッズライフルを装備したタイプだ。

 包囲されたグレート・エデンは気味が悪い程に動きがない。

 本拠地でありすでに包囲網はグレート・エデンの防衛圏に入り、向こうもそれに気づいているはずだ。

 それなのに全く動きがないと言う事は明らかにおかしい。

 

「何か嫌な予感がすんだけど……」

 

 動きが無い為、包囲網の最前線が一気にグレート・エデンに取りつこうと試みる。

 クランシェⅢが飛行形態に変形してグレート・エデンに取りつくがやはりMSはおろか、グレート・エデンの迎撃システムすら動く事は無い。

 

「やばいでしょこれ」

「ああ……」

 

 流石にここまで動きがないのは何かしらの意図がある事は確実だ。

 取りついたクランシェⅢがグレート・エデンの一部を破壊して内部に突入する。

 内部に突入して数分が経つとそれは起きた。

 突然、グレート・エデンの至るところから爆発が起きてやがて大爆発を起こす。

 

「爆発した!」

「やはり罠か!」

 

 大爆発を起こしたグレート・エデンは周囲に破片を飛ばす。

 それによりグレート・エデンの周囲を包囲していたMSや戦艦が破片の激突を受けて次々と破壊されていく。

 グレート・エデンからある程度離れた場所に配置されていたハーマンとエイミーの隊まで破片がかなりの数が飛んで来ている事を考えるとただの自爆ではなく周囲に破片を飛ばして周囲を包囲していた連邦軍に大打撃を与えるように計算しての自爆だろう。

 

「冗談じゃないっての!」

「ブラック小隊各機は連携して破片の対処に当たれ!」

「言うのは簡単だけどさ!」

 

 爆発の勢いで破片の速度は速く、直線的な動きだろうと避けるのは簡単ではない。

 エイミーのクランシェⅢがドッズランサーのドッズガンと頭部のビームバルカンで飛んで来る破片の対処に当たるが威力の低いドッズガンとビームバルカンでは精々、破片の速度を落とすくらいの効果しかない。

 それでも速度が落ちれば避けるのも少しはマシになる。

 ハーマンのクランシェⅢもハイパードッズライフルで破片を撃墜する。

 爆発で飛ばされた破片はやがてなくなるが、その頃には包囲していた連邦軍艦隊の半数以上が爆発の破片とそれにより破壊された戦艦による二次被害で破壊されていた。

 

「終わったけど……これって……」

 

 ネオ・ヴェイガンの本拠地のグレート・エデンは破壊された。

 しかし、その代償として艦隊がほぼ壊滅させられている。

 この戦いは明らかに連邦軍の敗北であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連邦軍艦隊がグレート・エデンの自爆により大打撃を受けていたころ、ラグランジュ3のコロニー「エンジェル」の跡地のシドとシド・スレイヴが交戦状態に入っていた。

 7年前からこの辺りの宙域は立ち入り禁止宙域となっている。

 その理由はクライドが残したシドとシド・スレイヴだ。

 安全の為に排除すると言う事も考えられていたが、シド・スレイブの数とシドの性能から今の今まで放置されて来た。

 そこに1機のMSが接近して来た事で再びシドが動き出した。

 

「ここに来るのも久しぶりだな」

「母様。一人で無茶はしないで」

 

 接近していたのはエリスのガンダムZERO-EXAだった。

 あれから7年、エリスもまた連邦軍に籍を置いていた。

 尤もリック達とは違いエリスの立場は連邦軍の特別遊撃部隊の隊長と言う肩書だ。

 表向きは緊急時に対応する為の特殊部隊となっているが、実際のところはエリスが好き勝手する為に設立された部隊だ。

 部隊を運営する資金は全て政府や軍からではなくアスノ家の資産が使われ、部隊員も隊長のエリスの下にヴァネッサがいるだけだ。

 ヴァネッサも今はイゼルカント性ではなくアスノ性を使い戸籍上はエリスの娘と言う事になっている。

 ヴァネッサはヴァレンティナとは違いメディアへの露出が少なくエリスと瓜二つな容姿もしていた為、大した問題もなくエリスの娘と書類上でもなっている。

 尤も書類上は親子でも見た目はエリスが余りにも若すぎる為、姉妹にしか見えず一部では連邦軍の七不思議の一つとなっている。

 シド・スレイブの群れに突撃したガンダムZERO-EXAはファンネルを展開する。

 そして、VSドッズライフルと頭部と胸部のビームバルカンを使って次々とシド・スレイブを撃墜して行く。

 

「さて……親玉が出て来たか」

 

 シド・スレイヴを撃墜して行くとシドも前に出て来る。

 シドはガンダムZERO-EXAにビームを放つ。

 ガンダムZERO-EXAは回避しようとするもシドのビームは曲がり追尾して来る。

 

「面倒だ。一気に終わらせる!」

 

 ガンダムZERO-EXAが足を止めて追尾して来たビームがガンダムZERO-EXAを貫く瞬間にガンダムZERO-EXAはその場から姿を消した。

 次の瞬間にはシドの背後に現れていた。

 ビームが直撃する瞬間にガンダムZERO-EXAはモードZEROを起動させてシドの背後を取っていた。

 背後を取ったガンダムZERO-EXAは次はモードZEROからバーストモードに切り替えた。

 青白く光り左腕のビームサーベルでシドの翼を切り裂く。

 そして、シドが修復の時間を与えることもなくVSドッズライフルを至近距離で撃ち込んだ。

 流石のシドもバーストモードを起動させているガンダムZERO-EXAのVSドッズライフルに耐えることが出来ずに装甲は撃ち抜かれ装甲のナノマシンにより再生するよりも早くビームが撃ち込まれている為、装甲を再生する間も与えられずに蜂の巣となって爆散した。

 

「親玉がやられるとこいつらの機能も停止するのか……」

 

 シドが撃墜されるとシド・スレイヴも糸が切れたかのように動きを止めて漂っている。

 シドが撃墜されようやくヴァネッサも到着する。

 ヴァネッサの5号機も廃棄処分となっている為、エリスが粛清委員会に無理を言って譲渡させたジェネシスカスタムに乗っている。

 ジェネシスカスタムも高速戦闘を可能だが、ガンダムZERO-EXAの機動力とは圧倒的な差があったため、到着が遅れてしまっている。

 

「後処理は正規軍に任せれば良いだろう。私達の任務は終わりだ。帰投するぞ」

 

 ヴァネッサが到着したが、すでに戦闘は終わった為、エリスはすぐに帰って良く。

 すでにシド・スレイヴは完全に機能を停止している為、後の処理は正規軍でも十分に可能であった。

 エリスが帰って行き、ヴァネッサもエリスを追って宙域から離脱して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 エリスとヴァネッサはエンジェルから一番近い連邦軍の基地に帰投していた。

 基地に帰投したヴァネッサは機体を整備兵に任せるとすぐにエリスを探した。

 この7年でヴァネッサも肉体的には成長はしていないが、エリスの真似をして髪を伸ばしている。

 元々、エリスとの違いは髪の長さくらいで髪を伸ばしたヴァネッサはエリスと外見は全くと言って良い程変わらず言動くらいでしか二人を見分けることは出来ない。

 基地の中を少し探してようやくエリスを見つけることが出来た。

 

「母様!」

「ネッサか帰ったか」

 

 エリスは立ち止まり素っ気なく答える。

 連邦軍の制服を動き易く改造しているエリスは左目に眼帯を付けていた。

 これはヴァネッサが髪を伸ばした事で見分けが付かなくなったことでエリスが見分けが付きやすいようにと左目を覆う眼帯を付けた。

 これによりエリスの左目は完全に見えなくなるが、それでもMSの操縦には影響がなかった。

 

「今から任務の報告がある。用事なら後にしてくれ」

「次の任務はすぐなの?」

「さぁな」

 

 ここ数年のエリスはずっとこうだ。

 ヴァネッサに対しても素っ気ない態度で常に任務で戦場を渡り歩いている。

 ネオ・ヴェイガンが姿を消したとはいえ、地球圏では宇宙海賊やテロリストがいなくなったわけではない。

 その為、地球圏を探せば戦場はどこにでも見つけることは出来る。

 エリスはまるで戦いを求めるかのように戦場を探しては部隊の権限を使って戦場に向かっている。

 

「たまには休んだ方が良いよ。ずっとまともに休んでないでしょ? そろそろ休暇を使って地球にでも降りて買い物とかしよ? リックも地球圏に帰って来るみたいだし」

「買い物か……そうだな。たまにはいいかも知れんな」

 

 エリスはそう言って少し微笑む。

 だが、その微笑みはどこか儚くすぐにでも消えそうである事にヴァネッサは気が付かない。

 

「私は報告に行くから、ネッサは休暇の申請でも出しておいてくれ」

「分かった。約束だからね」

 

 ヴァネッサは久しぶりにエリスと休暇を取れることを喜び休暇の申請を出しに向かう。

 そんなヴァネッサの後ろ姿を見送ったエリスは任務の報告に向かう。

 

 

 

 

 

 

 エリスが向かったのは基地の司令官の元ではない。

 エリスは特殊部隊として行動し、エリスの望みで戦場を渡り歩いているが一応は指令を受けたと言う形になっている為、任務後にはその報告が必要となっている。

 ついたのは基地内の士官室の一つだ。

 そこは今は士官ではなく政府の議員が使っていた。

 

「ご苦労だった。意外と速かったではないか」

「私の任務は確実に終わらせた。文句を言われる筋合いはない」

 

 エリスは士官室のソファーに座り込む。

 その対面には連邦政府の議員であるオーギュスト・アルダンが座っている。

 彼がエリスの上司に当たる。

 今の政府はネオ・ヴェイガンが姿を消した為にキオを中心とした穏健派が主流となっている。

 オーギュストとしても強硬派ではあるが、戦争をしたい訳ではない為、敵がいない今の状況で表だっては強硬的な姿勢を取る事は無い。

 しかし、対極的に見れば平和な世の中だが小規模な戦闘やテロは完全に消えた訳ではない為、独自に動けある程度の力を持った部下は必要でエリスも戦いの場を見つける為にはオーギュストの立場は利用価値があると言う互いの利害の一致から今の関係が出来上がった。

 

「だろうな。お前の実力は分かっている。次の任務だが……」

「悪いな。次の任務は少し先にする。少し休暇を取る」

 

 オーギュストとしてはすぐに次の任務にエリスを送りたいところだが、エリスの行動に文句を言わないと言うのが手を組んだ時の条件の一つだ。

 

「それは構わんがグレート・エデンの方はどうなっている? 戦闘が膠着しているなら今から私が出ても構わんぞ」

 

 グレート・エデンが見つかった場所と基地の場所は大した距離ではない。

 ガンダムZERO-EXAがモードZEROを使えばすぐにでも向かう事は出来る。

 今回は任務のタイミングと重なり確実に強い敵の出て来るエンジェルの方に向かったが、戦闘が継続しているのであればエリスはグレート・エデンの方に向かってそちらでも戦う気がある。

 その話しが出るとすでに事の顛末を独自のルートから得ていたオーギュストは苦い顔をする。

 

「戦闘はすでに終わっている。奴らはグレート・エデンを自爆させて艦隊に大打撃を与えよったわ」

「自爆? 何の為に」

 

 ネオ・ヴェイガンが意図的に姿を隠している事は明らかであった。

 追い詰められての自爆と言う訳でもないのであれば何かしらの理由がある筈だ。

 

「知らんよ。奴らは本拠地を自爆させてこちらの艦隊に大打撃を与えた。これが全てだ」

「このタイミングで動いたと言う事は何かしらの狙いがある筈だが……」

 

 来月には天使の落日の慰問式典であるそれが近づいたこのタイミングでのネオ・ヴェイガンが動いたと言う事に何かしらの作為を感じてはいる。

 だが、肝心の狙いがまるで分からない。

 

「式典が狙いにしては早すぎるか……」

「そうだな。グレート・エデンを囮に使っての自爆にしては時期が早い。一月もあればある程度の持ち直しが利く」

 

 グレート・エデンを囮に使い自爆させて戦力を削いだ上で式典を狙うにしても一か月もあれば戦力を立て直す事は可能で大した意味はない。

 

「嫌な感じだな……作為と言うレベルではない。もっと……直接的な敵意を感じる」

 

 エリスは今の状況から漠然とそう感じていた。

 すると士官室に備え付けられている端末が鳴り、オーギュストが出る。

 

「何だと? どういう事だ!」

 

 何かの報告を受けたらしく、オーギュストは怒鳴りつけた。

 

「お前では埒が明かん! 司令部に向かう! それまでに状況を説明できるように用意しておけ!」

 

 端末を叩き付けてオーギュストは立ち上がる。

 最後の言葉から直接司令室に向かうと言う事はすぐに分かる。

 エリスは何も言わずにオーギュストと共に司令部へと向かった。

 司令部に到着すると基地の司令官や司令部の兵たちは困惑した様子で二人を迎え入れた。

 

「これが数分前のラ・グラミスの映像です」

 

 司令官は司令部の大型モニターに現在の連邦軍の総司令部ラ・グラミスの映像を映し出した。

 これが何なのかオーギュストが司令官を追い詰めようとした瞬間、モニターが光る。

 モニターの光が収まるとそこには宇宙だけが映されていた。

 

「どういう事だ?」

「先ほど、ラ・グラミスとの通信の一切が途絶しました」

「まさか……」

 

 先ほどの映像とラ・グラミスとの通信が途絶した事からある事が導き出される。

 

「あの光か……」

 

 エリスはポツリと呟いた。

 あの光の後に映像には宇宙しか映されなくなった。

 映像が切り替わった訳ではないとしたら答えは一つだ。

 あの光によってラ・グラミスは残骸すら残らず消滅させられたと言う事だ。

 それこそが、エリスが感じた悪意の正体で天使の落日から100年が経った節目の年に起きた最後の戦いの始まりを告げる破滅の光でもあった。

 

 

 

 

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