連邦軍によるコロニーレーザー攻略作戦は熾烈を極めている。
連邦軍艦隊とネオ・ヴェイガンの防衛部隊がぶつかり合うも連邦側の切り札であるガンダムの大半が戦列を離れ、ネオ・ヴェイガンの親衛隊も殆どが落とされている。
それにより戦闘は泥沼を化している。
連邦軍が一点突破で勢いを持って防衛部隊の突破を図るもネオ・ヴェイガンもどこから攻めて来ても良いようにとコロニーレーザーの周囲に配置した部隊を連邦軍艦隊に差し向けている。
その為、連邦軍艦隊は背後からもネオ・ヴェイガンの攻撃を受けることとなり、もはや前進してコロニーレーザーを叩くしか生き残る術は残されていない。
前進の中心となっているのがハーマンの3号機改だ。
元から高い火力を持つ上に更に火力が強化されその火力は大軍を相手に遺憾なく発揮されている。
しかし、火力の強化に伴い、機動力の大幅な低下を招きすでにいくつも被弾している。
「まだ……まだだ!」
ゼイ・ドルグのドッズライフルの直撃を受けて体勢を崩しながら腕のシグマシスキャノンを放つ。
周囲のクランシェⅢがハイパードッズライフルで援護射撃を行い3号機改は体勢を整えてアームドキャノンで敵を一掃する。
圧倒的な火力を持つ3号機改の砲撃で一気に敵MSを撃墜するも数が多い為、すぐに増援の部隊や予備部隊の投入で戦況に影響はほとんどない。
「くそ!」
ハーマンは中々前に進めず悪態をつきながらも砲撃の手を緩めない。
だが、数の暴力は次第に周囲の友軍機の数を減らしていく。
それに伴い3号機改への攻撃も激しさを増してとてもではないが前に進む事は出来はしない。
「なら!」
前に進む事が困難であると判断したハーマンは覚悟を決めた。
3号機改のバックパックに装備されているツインハイパーメガダイダルキャノンを前方に展開する。
3号機改の新装備のツインハイパーメガダイダルキャノンはガンダムAGE-FXのダイダルバズーカを基にマリィが開発した武器だ。
その威力は一門でハイパーメガシグマシスバズーカをも超え、2門装備する事でラ・グラミスのディグマゼノン砲に匹敵する火力をMS単体に持たせる事に成功している。
尤もその威力が故に戦闘中には1度しか撃てず、撃てば砲身が焼け切れ機体もオーバーロードを起こして破棄せざる負えないと言うMSに搭載するには致命的とも言える欠点も持っている。
その為、使うか否かはパイロットの判断に任せられている。
3号機改はツインハイパーメガダイダルキャノンのチャージに入る。
ツインハイパーメガダイダルキャノンをチャージする為には機体の動力炉のリミッターを解除して火器に回すエネルギーの全てをツインハイパーメガダイダルキャノンに回す必要がある。
そのせいでチャージ中は3号機改は完全に無防備となる。
足を止めてチャージに専念する3号機改は敵にとっては恰好の的だ。
ゼイ・ドゥやゼイ・ドルグは3号機改に集中砲火を浴びせる。
見た目の重装甲に反して防御力の差ほど高くない3号機改は今までの被弾と合わせ機体は限界に近い。
コックピットでは警告のアラートが鳴るがハーマンはアラートを切る。
今更警告をされずとも分かっている。
どの道、今の状態ではディーヴァや近くの友軍艦に帰還するのは無理だ。
機体を破棄したところでこの乱戦の中を生身で出たところで回収される前に流れ弾か戦闘中のMSや戦艦とぶつかって死ぬしかない。
被弾する3号機改の援護にアデルやジェノアスⅡが3号機改の前に出て守ろうとするがすでに旧式であるアデルやジェノアスⅡでは数秒の時間稼ぎにしかならない。
「あのガンダム……まずいな」
その様子を後方から狙撃で連邦軍のMSを撃墜していたクリストのゼイドラ・ハンターが見つける。
元々3号機が高火力の機体である事は7年前の戦いから情報を持っている。
それが3号機改となり更に火力が向上しているとなるとその火力は戦局を左右しかねない。
ゼイドラ・ハンターは3号機改にライフルを向けてチャージが終わる前に狙撃しようと試みる。
3号機改を狙撃するも、射線上にアデルが入り込み3号機改ではなくアデルを撃墜する。
「ちぃ!」
「仲間の仇だ!」
乱戦である以上、特定の敵を狙撃するには向かず3号機改を狙撃しきれずにいるうちに3号機改はようやくツインハイパーメガダイダルキャノンのチャージを終える。
そして、ツインハイパーメガダイダルキャノンが放たれる。
MSの火器としては破格の威力を持つツインハイパーメガダイダルキャノンの一撃は射線上のMSや戦艦を容赦なく消滅させていく。
「馬鹿な!」
ゼイドラ・ハンターはすぐに射線上より退避しようとするが、周囲にはARISUシステムが搭載された友軍機が多く展開されている。
無人機が故に例え撃墜される危険性があっても戦い続ける為、3号機改のツインハイパーメガダイダルキャノンの脅威も気にすることはない。
それ故にこの砲撃から逃げようともしない為、逃げようとするクリストにとっては邪魔だった。
無人機が邪魔となり、ゼイドラ本来の機動力を活かせぬままゼイドラ・ハンターはツインハイパーメガダイダルキャノンの攻撃によって跡形もなく消滅する。
そして、ビームはコロニーレーザーに直撃した。
だが、ツインハイパーメガダイダルキャノンの威力の反動で3号機改も限界を超え機体は爆発を起こした事でツインハイパーメガダイダルキャノンの掃射は終わりを迎えた。
射線上の敵部隊の大半は消滅し直撃を受けたコロニーレーザーにも穴が開いている。
距離が離れていた事もあり、コロニーレーザーへの損傷はその程度で使用には殆ど影響がなかった。
「ゼハート大佐!」
「分かっている。3号機の犠牲を無駄にするなよ!」
3号機改の最後の一撃で敵の防衛線に大きな穴を空けることには成功している。
ネオ・ヴェイガンもその穴を埋める為に予備部隊を更に投入して来る。
しかし、連邦軍はそれよりも先に一気にコロニーレーザーへと突撃を慣行する事になる。
3号機改の決死の一撃はネオ・ヴェイガンにとっても大きな打撃を与えることになる。
それによりその穴を埋める為に司令部は大慌てだ。
「やってくれたな……」
「ヴァレリ様! 第98部隊が壊滅! ガンダムの進行を食い止めることが出来ません!」
モニターの一つに再出撃したエリスのガンダムZERO-EXAが次々とネオ・ヴェイガンのMSを破壊する様子が映されている。
3号機改の砲撃で開いたところに連邦軍のMSが一気に攻め込んでいるがエリスの進行を止めることもままならない。
「使えない奴らだ……」
切り札であるガーディアン5はすでにアビーを残して全滅している。
後は旧式の有人機の部隊とUIEの無人機の部隊だが勢いは完全に連邦側にある。
コロニーレーザーの攻撃が失敗した事も手痛い。
様々な要素が重なり数と機体性能の優位はもうないに等しい。
このままではコロニーレーザーを守り切れずに落とされるのも時間の問題だ。
「私がネオ・ヴェイガンギアで出る」
「しかしアレは……」
「状況を打開するにはそれしかあるまい」
ヴァレリは指揮を適当な兵に任せると司令室を出て格納庫へと向かう。
パイロットスーツに着替えたヴァレリは格納庫に到着する。
そこには1機のMSが置かれていた。
全長100メートルをも超えている為、もはやMSと呼んでも良いのかすら分からない。
それこそがネオ・ヴェイガンの最後の切り札であるネオ・ヴェイガンギアだ。
かつてヴェイガンのMSで最古であるヴェイガンギアをベースに同レベルの技術力で作られたシドを合わせて設計されている。
100メートルを超える巨体を持ちバックパックには巨体に合わせたシドの翼が追加され両手の指には戦艦の主砲に匹敵する口径のビームバルカンが内蔵されており、腹部には超高出力の拡散ビーム砲が内蔵され、尾には小型化されたディグマゼノン砲が装備されている。
頭部は従来のヴェイガン機と同じスリット状のセンサーにガンダムレギルスと同様にビームバルカンが付いている。
シドの翼にはシド同様に湾曲可能なビーム砲が付いており、たった1機のMSで敵軍を殲滅する事を目的に開発されていたのがこのネオ・ヴェイガンギアだった。
「これさえあればあの小娘など必要はない。この戦いに勝利すれば世界は俺ものだ! ヴァレリ・アダモフ。ネオ・ヴェイガンギア。出るぞ!」
ヴァレリはネオ・ヴェイガンギアにて出撃をしてネオ・ヴェイガン最強の悪魔が戦場に投入された。
戦場にてかつての部下を戦う事になったヴァネッサはミラーファルシアに通信を繋いだ。
アビーも死んだと聞かされていたヴァネッサが生きていた事に動揺を隠せない。
「ネオ・ヴェイガンはヴァレリに利用されているだけよ!」
「今更!」
アビーは自身の中の迷いや躊躇いを振り捨てるかのように5号機改にビームソードを振り下ろす。
「今更、戦いを止める訳にはいかないのよ!」
「分かってるわ。でも、私達は本当に戦わないといけないのはヴァレリなのよ。ヴァレリのせいで同胞達には地球圏や火星圏での居場所はなくなっているのよ」
「だから、私達が勝ち取るしかないんですよ!」
アビーにもヴァネッサの言っている事は理解は出来る。
世界は平和へと進みヴェイガンの民も地球圏で安心した生活を送れるようになっている。
その為、ただ平和を乱すだけのネオ・ヴェイガンに居場所はない。
そう仕向けたのはヴァネッサの言う通りヴァレリだとしてももはや止まる事は出来なくなっている。
「この戦いに勝つしかないんです! ヴァレンティナ様の為にも!」
ミラーファルシアはミラービットで5号機改を攻撃する。
5号機改はシールドライフルで確実にビームを防いでビットによる反射攻撃を防ぐ。
「でもその先にヴェイガンの未来はないわ」
ビットの包囲網を突破してミラーファルシアに接近する。
ミラーファルシアは拡散ビーム砲で5号機改の接近を許さない。
5号機改はビットの動きに注意しながらもミラーファルシアの攻撃を回避している。
するとコロニーレーザーの方から強力なビームが連邦軍のMSを襲う。
「増援? まだこれだけの数を残していたのね」
「ネオ・ヴェイガンギア……アレを投入したの?」
ヴァネッサはその火線から敵の増援は大軍であると思っていたが、実際はヴァレリのネオ・ヴェイガンギア一機だけだった。
そして、ネオ・ヴェイガンギアはその圧倒的な火力で連邦軍の戦艦やMSを次々と撃墜して行く。
「何なのあのMSは……」
「友軍機を巻き添えに……
圧倒的な火力を持って敵を殲滅するだけでなく、ゼイ・ドゥやゼイ・ドルグを巻き込む事を全く気にしないネオ・ヴェイガンギアの戦い方に友軍である筈のアビーも戦慄している。
連邦艦隊に大打撃を与えているネオ・ヴェイガンギアは新たな獲物を見つけたかのように5号機改の方を見る。
その瞬間にヴァネッサはネオ・ヴェイガンギアの脅威を感じとりすぐに臨戦態勢を取る。
脚部のミサイルを一斉掃射するが、ネオ・ヴェイガンギアは指に内蔵されているビームバルカンで簡単にミサイルを全滅させた。
戦艦の主砲クラスのビームを連射出来るビームバルカンはミサイルの迎撃だけには留まらず5号機改をも攻撃する。
「化け物ね!」
ただのビームバルカンだが、口径が大きい為、普通のMSであるなら一撃で致命傷となり得る威力を持っている。
シールドライフルで防いだところで意味は無いだろう。
「ヴァネッサ様!」
ネオ・ヴェイガンギアの圧倒的な攻撃力やその戦い方の異常性からアビーはとっさに機体を動かしていた。
ビームバルカンによる攻撃で次第に5号機改も回避しきれずに直撃を覚悟した。
しかし、直撃するかと思われたビームはミラーファルシアのミラービットが5号機改を守っていた。
「アビー?」
「私達の役目はヴァレンティナ様とヴァネッサ様をお守りする事……最後にヴァネッサ様の事を守る事が出来て……」
5号機改にミラービットの全てを回していた上にいざと言う時は自身を盾にしてでも5号機改を守ろうとしていたミラーファルシアは5号機改の近くまで接近していた。
例え敵側に付こうとも親衛隊としてヴァネッサを最後に守ろうとしたのはアビーの親衛隊としての矜持がそうさせたのだろう。
そして、ミラーファルシアは5号機改に近づき過ぎたが故にネオ・ヴェイガンギアのビームバルカンで下半身が吹きとばされていた。
ミラービットを全て5号機改の守りに回していた為、ミラーファルシアは自身をビットで守る事が出来なかったのだ。
5号機改を守ったミラービットもビームバルカンを反射できずに破壊されるが、5号機改が回避するだけの時間は稼げた。
「アビー!」
ヴァネッサの叫びも届く事は無く、ミラーファルシアは下半身を吹き飛ばされただけに留まらず機体が次々とビームバルカンの直撃を受けて破壊された。
「ヴァレリ!」
「ちっ……所詮は捨て駒の分際で最後に邪魔をして」
部下を自らの手で殺したと言うのにヴァレリはその事よりも邪魔なガンダムを撃墜し損ねた事の方で苛立っていた。
ヴァレリにとっては親衛隊の部下ですら自分の駒に過ぎなかった。
その駒が自分の邪魔をしたと言う認識しか持っていない。
5号機改はシールドライフルを連射してネオ・ヴェイガンギアに向かうが5号機改の攻撃など気にする必要もない。
ビームが直撃したところで全身を電磁装甲と質量装甲の二重装甲で出来ているネオ・ヴェイガンギアにとっては意味はないからだ。
「煩い蠅だ」
ネオ・ヴェイガンギアは蠅を追い払うかの如く片手のビームバルカンだけで5号機改に対処する。
5号機改はシールドライフルで防御するがあっさりとシールドライフルは破壊され頭部や右腕、脚部に被弾して易々と破壊されていく。
「失敗作如きが」
「くっ……」
被弾しボロボロになって行く5号機改だが完全に破壊される前にネオ・ヴェイガンギアにビームが掠る。
そのビームはネオ・ヴェイガンギアの装甲を傷をつけた。
「やはり最後はお前が俺の邪魔をするか!」
「人の娘を誑かして次は傷物にする気か! 三下が!」
「母様!」
ガンダムZERO-EXAはVSドッズライフルを最大回転数で放つ。
流石のネオ・ヴェイガンギアもその攻撃を受ければ無事では済まない。
その為、5号機改を無視してガンダムZERO-EXAへと標的を絞った。
「ネッサ。ティナは回収してディーヴァに連れて行った。その損傷ではもう戦えんだろう。お前もディーヴァに戻ってろ! こいつは私がやる」
「母様……無事に帰って来て」
「当然だ」
ガンダムZERO-EXAはVSドッズライフルの回転数を通常に戻してネオ・ヴェイガンギアに攻撃するが通常回転では効果的なダメージを与えることが出来ない。
その間に5号機改は離脱して行く。
「三下の小悪党の癖に大層な機体に乗っているじゃないか! ヴァレリ!」
「お前さえ始末出来れば!」
「世界を手に入れて神にでもなる気か? だとしたらずいぶんと薄っぺらい野望だな!」
ネオ・ヴェイガンギアはバックパックのビーム砲を使ってガンダムZERO-EXAを狙う。
湾曲するビームをエリスの常人離れした反応速度で回避する。
そして、全てのファンネルを展開する。
「貴様さえいなければ!」
ガンダムZERO-EXAのファンネルをビームバルカンで次々と破壊して行くがその隙をついてガンダムZERO-EXAは接近してビームサーベルを振り下ろす。
だが、ネオ・ヴェイガンギアの装甲を切り裂くには至らずに電磁装甲に弾かれる。
「ちっ……全身が電磁装甲か。雑魚の癖に贅沢な」
ネオ・ヴェイガンギアからビームバルカンを撃ちながら距離を取ってガンダムZERO-EXAは機体をコロニーレーザーの方に向ける。
「悪いがお前は後回しだ。先にコロニーレーザーを潰させて貰う」
「逃がすか!」
ネオ・ヴェイガンギアはビームバルカンを連射しながらガンダムZERO-EXAを追いかける。
ガンダムZERO-EXAは3号機改の最後の一撃で開いた穴からコロニーレーザーの内部に突入する。
ヴァレリにとってエリスの存在その物が邪魔である為、コロニーレーザーへの損害を気にすることなくガンダムZERO-EXAを追ってコロニーレーザー内部に入る。
巨体である為、ネオ・ヴェイガンギアの通れる程通路は広くなく強引に追いかけることになる。
「余程、私の事が気に入らないらしい。無茶をする」
後ろからビームバルカンを撃ちながら追いかけて来るネオ・ヴェイガンギアを見てもエリスは冷静さを保っている。
通路はMSや戦艦が通る事も想定している為か小型のガンダムZERO-EXAが動きまわるには十分な広さだが、ネオ・ヴェイガンギアは通路の壁に体を擦りながらも強引に先に進んでいる。
その為、地の利はガンダムZERO-EXAにあるだけでなく、ネオ・ヴェイガンギアの攻撃を回避するだけの破壊工作にもなる。
寧ろ、ガンダムZERO-EXAの攻撃よりも効果的にコロニーレーザーを破壊してくれる。
それほどまでにヴァレリにとってエリスは目障りな存在だった。
「ちょこまかと!」
中々攻撃が当たらない事に次第にヴァレリのイライラも頂点に達して腹部の高出力拡散ビーム砲で一気に勝負に出る。
流石にある程度自由に動けるとはいえ閉鎖空間である事には変わりはなく、ガンダムZERO-EXAは完全にはかわし切れずにVSドッズライフルに被弾してライフルを捨てる。
「形振り構わずか……」
何とかビームシールドを使いつつ攻撃をライフルを失うだけで回避しきったガンダムZERO-EXAは通路を抜けてネオ・ヴェイガンギアが出撃して来た格納庫へと出る。
この格納庫はネオ・ヴェイガンギアを置けるだけあり、相当な広さがある。
「ここならこちらも動ける」
ネオ・ヴェイガンギアも格納庫に出るがその瞬間にガンダムZERO-EXAが視界から消えた。
そして、一瞬の内に背後を取られていた。
ガンダムZERO-EXAはネオ・ヴェイガンギアが格納庫に入った瞬間にモードZEROを起動させてネオ・ヴェイガンギアの背後を取った。
背後を取るとすぐにバーストモードに切り替える。
VSドッズライフルを失った今のガンダムZERO-EXAにはバーストモードで攻撃力を底上げしなければネオ・ヴェイガンギアの装甲に対しては無力だ。
ただ、逃げ回りコロニーレーザーを破壊して回るのはエリスの性には合わない。
バーストモードを起動したガンダムZERO-EXAはビームサーベルを最大出力で使いネオ・ヴェイガンギアの翼の片方を切り落とす。
「小娘がぁぁぁ!」
ネオ・ヴェイガンギアは尾のディグマゼノン砲でガンダムZERO-EXAを攻撃するが機動力も向上している為、当たる事は無い。
「所詮、お前は小物なんだよ。自分の身の丈に合わない野望は自身の身を滅ぼす事だと知れ!」
ガンダムZERO-EXAはネオ・ヴェイガンギアの下の回り込んで片足を切り裂くとネオ・ヴェイガンギアは体勢を崩して膝をつく。
だが、頭部のバルカンを無茶苦茶に撃ちまくるネオ・ヴェイガンギアの攻撃が右足に直撃してガンダムZERO-EXAも体勢を大きく崩す。
「やってくれるな!」
「落ちろ! 落ちろ! 落ちろぉ!」
体勢を崩すガンダムZERO-EXAを畳み込むようにネオ・ヴェイガンギアはビームバルカンを連射する。
「私のガンダムを舐めるなよ!」
ガンダムZERO-EXAはバーストモードからモードZEROに再び切り替えるとネオ・ヴェイガンギアの懐まで短距離ワープを行う。
懐に入るとまた、バーストモードに切り替えた。
そして、右腕のビームサーベルを最大出力で展開する。
「俺が世界を手に入れるんだよ!」
懐に入り込まれた為、ビームバルカンでは狙えないが腹部の超高出力拡散ビーム砲で迎撃する。
ガンダムZERO-EXAはビームシールドで胴体と右腕を庇いながらネオ・ヴェイガンギアに突撃する。
超高出力拡散ビーム砲でガンダムZERO-EXAの頭部が吹き飛ばされて左腕も方から破壊されてビームシールドも使えなくなるが強引にビームを突破する。
「終わりだ! ヴァレリ! 人の娘を良いように利用してくれた罰を受けるが良い!」
ガンダムZERO-EXAは最大出力のビームサーベルをネオ・ヴェイガンギアの胴体部に突き刺した。
「馬鹿な……この俺が……俺がぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヴァレリは己の敗北を受け入れる事が出来ないが、ネオ・ヴェイガンギアは至るところから爆発が起こる。
そして、ガンダムZERO-EXAに覆いかぶさるように倒れ込んで爆発を起こした。
ネオ・ヴェイガンギアの爆発は格納庫を吹き飛ばす程の物だった。
それをゼロ距離で受けたガンダムZERO-EXAもただでは済まなかった。
爆発によりあちらこちらで火災が発生する中、ガンダムZERO-EXAだった物が落ちている。
すでに被弾していた事や爆発の衝撃で残骸となっているがコックピットのある胴体部が残っているのはまさに奇跡としか言いようがない。
しかし、それでも胴体部は外から見ても分かる程に変形している。
「相変わらず……死神に嫌われて……いるようだ」
コックピットの中でエリスは呟く。
あれほどの爆発をゼロ距離で受けていながらも死なないでいるのだそうも思いたくはなる。
だが、爆発の影響でコックピットも押しつぶされて変形している。
エリスは自分の状態を確認しようとする。
すでに下半身は完全に感覚が無い為、ついているかも分からない。
左腕は感覚はあるが、変形したコックピットに押しつぶされているのか全く動く事は無い。
動かす事の出来るのは首と右手くらいなものだが、ヘルメットのバイザーには血が付着しており視界が悪いが目が霞んでいる為、見えたところで意味はないだろう。
「悪いな……ネッサ、キオ……約束は守れそうにないな」
ヴァネッサとは戦いの後に買い物を行くと言う約束がキオとは必ず生きて戻ると約束していた。
しかし、今の状況では自分が助からないと言う事は考えるまでもない。
普通の人間ならとっくに死んでいるだけの傷を受けいる。
それでも普通ではないエリスはまだ生きている。
だが、この傷では長くは持たない事は明らかだ。
幸いにもすでに痛覚も麻痺している為、痛みも全く感じていないので頭の中は非常に冷静を保っている。
「私の最後の道連れになって貰うぞ」
エリスは動かせる右手でコンソールに触る。
機体がこんな状態でも最低限のシステムが生きている辺りガンダムZERO-EXAの性能が伺える。
本来ならこんな状態でシステムを操作出来たところで意味はないが、今に限り役に立っている。
エリスは機体のメインシステムのブラックボックスにアクセスを行う。
EXA-DBのデータはすでに吸い出してあるが、システムトラップはそのまま残されていた。
下手に外す事も危険だと言う判断で下手にシステムを弄らなければ安全だからそのままにされていた。
だから、エリスはシステムを操作しようとしている。
そうする事でシステムトラップを作動させる事が目的だ。
機体のシステムを操作できる時点で動力炉はまだ生きている。
システムトラップを起動させれば動力炉を暴走させて機体が自爆するようになっている。
それがエリスの最後の足掻きだ。
その自爆ならばコロニーレーザーに致命的な打撃を与えることが出来るからだ。
システムを操作しているとエリスは自分の右手が震えている事に気が付く。
それと同時に殆ど失う感覚の中で自分が涙を流している事に気が付いた。
「今更……何、を……恐れる……」
その感情は恐怖であった。
今まで自分の死に場所を求めて戦って来たエリスだが、いざ死ねるとなると死ぬことに対して恐怖していた。
「ネッサ……ティナ……どうやら……お前達……母は……お前た……の思っている、ような勇……も……で、はないようだ……」
死を感じた事でエリスは死を恐れた。
今までに2度も死に直面したが、心のどこかではまだ死なないと思っていたのか恐怖は感じてはいなかったが、今回は違う。
明確に死を意識した事で死ぬことを恐れて生きたいと願った。
ようやく、ヴァネッサとヴァレンティナと共に残りの余生を平和な世界で過ごす事が出来たかも知れない。
ヴァレンティナは許されない事をやったが、それも家族と共に乗り越えることが出来る。
しかし、もはやそれも叶わない。
エリスは誰もが夢見た平和な世界を見ることも娘と共に残りの余生を過ごす事が出来ない。
そう思うと怖くてしょうがない。
それは、ヴァネッサやヴァンティナが慕った勇猛果敢な母親からはかけ離れているだろう。
最後の最後に娘の期待を裏切ってしまう事に罪悪感も感じている。
「だから……最後くらい……は」
エリスは死の恐怖に抗いながらシステムを弄る。
するとシステムトラップが作動して動力炉が暴走を始める。
警告のアラートすらも流れずに動力炉が暴走し、確実に死期が迫って来るエリスは走馬灯のように思い出していた。
クライドに生み出されて傭兵として戦い、一度はクライドに存在理由と否定され宇宙海賊を通じてヴェイガンに身を寄せることになった。
イゼルカントの娘としてヴェイガンを率いて連邦軍と戦い、ネオ・ヴェイガンを設立してキオに負けた。
UIEとの決戦ではキオと共に戦い地球を守り、長い眠りの果てにEXA-DBを巡る戦いに巻き込まれた。
たった十数年の人生の大半は戦いだったが、後悔はしていない。
初めは自分の役目として戦っていたが、いつしか自分で戦うと言う道を選択して戦っていた。
そんな戦いの人生には悔いは残されていない。
たった一つの悔いがあるなら、ディーヴァに残して来たヴァレンティナの事だ。
この7年でヴァネッサとは親子をする事が出来たが、ヴァレンティナとは最後に間違いを正したくらいしか親らしいことはしていない。
戦いが終わった後はヴァレンティナも大変だと言うのに傍にいてやれない事が最後の悔いだが、ヴァレンティナは一人ではない。
ヴァネッサもいるし、キオやアセムも悪いようにはしないだろう。
心残りはあるが、後は残された者達を信じることしかエリスには出来ない。
そして、動力炉は限界を迎えコロニーレーザーをも巻き込んで自爆した。
その瞬間を感じていたエリスは戦いから解放されて穏やかな笑みを浮かべていた。
コロニーレーザー周辺の戦闘はネオ・ヴェイガンギアが居なくなったことで連邦側が押していた。
ネオ・ヴェイガンも指導者と参謀、そして親衛隊を失った事でまともな指揮が取れずに無人機の隊列もそろわずに総崩れだ。
それに対して連邦軍はディーヴァを中心に陣形を取っている。
前線はゼハートの部隊を中心にまとまり、ディーヴァの付近も4号機と6号機改によってまとまっている。
すでに4号機も6号機もボロボロだが、残っているガンダムは2機しかいない為、何とか持ち堪えている。
「艦長! コロニーレーザー内部に高熱源帯が!」
「また撃つと言うのか!」
コロニーレーザー内部での熱源帯と言う事からアセムはそう思ったが、そうではない。
内部のガンダムZERO-EXAの動力炉が自爆した事による爆発でコロニーレーザーの内部が大爆発を起こした。
「ガンダムZERO-EXAの識別信号が消失しました……」
「今が好機だ! 全艦、全MSはコロニーレーザーに集中効果を浴びせる! フォトンブラスターを撃ち込め!」
ガンダムZERO-EXAの識別信号がロストした事を遮るかのようにアセムは叫ぶ。
あの爆発を内部から起こせるのはガンダムZERO-EXAの自爆しかない。
そうなればエリスがどうなったかは考えるまでもない。
だが、そんな感傷に浸っている時間は無い。
自爆で大打撃を与えてコロニーレーザーの使用は出来ないがこんな物を残しておけばまた地球を脅かす事になる。
ここで完全に破壊する必要があった。
ディーヴァはコロニーレーザーにフォトンブラスターキャノンを撃ち込み、周囲の連邦軍戦艦も主砲を次々とコロニーレーザーに撃ち込む。
十分に接近していた為、コロニーレーザーへの被害も大きい。
周囲のMS隊もコロニーレーザーに火力を集中し、コロニーレーザーはところどころから火が上がり、誘爆を繰り返していく。
そして、遂にはコロニーレーザーは完全に陥落した。
コロニーレーザーの陥落をリックはエリスと共に遠巻きに見ていた。
完全に壊れたAGE-ZEROでは戦線に復帰する訳にはいかず、命に別状はないが弱り切っているリックを2号機改に乗せる訳にもこの場に残しておく訳にもいかず、エイミーも戦線に戻る事なくリックに寄り添っていた。
「コロニーレーザーが……」
「うん。私達の勝利よ」
コロニーレーザーが陥落して行く様子は二人の位置からでも十分に見ることが出来る。
それは戦いに勝利した事を示す事だが、リックの表情は暗い。
「でも……多くの人が死んだよ」
リックはXラウンダーが故に人が死ぬ様子を感じ取っていた。
その中には7年前の戦いで共に戦ったローザやハーマンもいる。
戦いには勝ったが余りにも多くの命が失われた。
「そうね……でも、私達は生き残ったのよ。だからこれからも生きなきゃいけないのよ」
「そうだね……エイミー。僕達は生きないといけないんだよね」
多くの命が失われたが、リックもエイミーもまだ生きている。
生きていると言う事は生きなければならないと言う事だ。
少なくとも戦場で散った兵士達は死を望んでいた訳ではないのだから。
リックは散って行った命に対して涙を流しエイミーを抱きしめる。
エイミーも涙を流しながらリックを強く抱きしめた。
この日、ネオ・ヴェイガンのコロニーレーザーは陥落しネオ・ヴェイガンとの戦いにも終止符が打たれた。
次のエピローグでようやく完結です。