機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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エピローグ

A.G.101年の天使の落日から始まった連邦とヴェイガンの戦争は実質的に100年も続きA.G.201年に木星圏にて行われたコロニーレーザーを巡る戦いにて終結した。

 その戦いから一か月が経過していた。

 ネオ・ヴェイガンの宣戦布告によるゴタゴタで天使の落日の慰問式典の予定がずれこそはしたが、艦隊を送り出した政府は勝利を信じて準備は進められていた。

 連邦軍が戦いに勝利し、戦いを生き延びた兵たちが地球圏に帰還した事で慰問式典は始まる事になった。

 

「それにしてもさ、凄いよな。少し前にあれだけの戦いがあったとは思えないよな」

「仕方がないよ。僕達の世代は戦争を知らなかったんだしね。このくらい盛り上げないとさ」

 

 ジンは町の様子を見てそう言う。

 町は式典の為に普段は見られない露店などが並びまるでお祭り騒ぎだ。

 ジンの言う通り一か月前までは木星圏で大規模な戦闘が行われていた。

 だが、それを払拭するかのように盛大に式典が行われている。

 

「で、なんでジンもいるのよ?」

「せっかくの式典なんだし、約束してたしさ」

「そう言う事だ」

 

 エイミーはジンがいることが少し不服であった。

 あの戦いで失った物は多かった。

 連邦軍も大打撃を受け、投入したガンダムもエイミーの2号機改以外の全てが戦闘中に喪失もしくは中破以上の被害を受けた為、回収できたガンダムも2号機改以外は破棄するしかない有様だ。

 その2号機改も先日破棄されている。

 今回は以前のようにマリィが独自に回収する事は出来ないように政府の要人や軍の上層部の立会の元、ディーヴァと共に確実に破棄されている。

 リックもかなり衰弱していたが、今では出歩けるまでに回復している。

 ようやく、医者の方から出歩ける許可を出て式典に出かけようと言う話しになるも、二人きりではなくジンはエイミーにとっては余計なおまけでしかなかった。

 

「それよりヴァネッサさんは結局」

「うん……先輩も誘ったんだけどね」

「あの人のところは色々と複雑だし仕方がないって」

 

 リックはジンだけではなくヴァネッサも誘っていたが、結局断られていた。

 あの戦いから多少の連絡は取り合っていたが、リックが入院していた事もあり一度も顔は合わせていない。

 聞いた話しによればエリスが回収して来たMSの頭部で意識を失っていたヴァレンティナはディーヴァの医務室で意識を取り戻した。

 その後もヴァレリによる記憶の改竄の後遺症などで苦しんだらしいが、ヴァネッサとの二人三脚でどうにか乗り越えているらしい。

 ヴァレンティナの処遇に関してはヴァレンティナ・イゼルカントはコロニーレーザー攻防戦にて戦死したと言うのが表向きで今はアスノ家の管理下に置かれていると聞いている。

 

「木星圏か……あの人達、マジで行くつもりなのかな?」

「だと思うよ」

 

 そして、ヴァネッサとヴァレンティナは近々木星圏へと旅立つ事らしい。

 ネオ・ヴェイガンとの戦いが終わり当面の敵がいなくなったことで連邦政府は軍縮を進める動きが強くなっている。

 元々、連邦軍はヴェイガン、同時のUEに対抗する為に設立された軍事組織である以上、そのヴェイガンとの戦いが完全に終わった以上は縮小されるのも当然の流れだ。

 しかし、そうなった場合、軍で働く兵の再就職先を用意しなければ兵が政府の対応に不満を持ち反政府勢力に鞍替えす危険性がある為、様々な事業を打ち立てた。

 その中の一つに木星開発の事前調査があった。

 戦争が終わった事で地球圏の人口は増加すると見込まれ、マーズレイの影響を無効化するイヴァースシステムにより火星圏への移住も可能となった。

 だが、何世紀か後になり、火星圏ですら人口を賄う事が出来なくなった時に新たに移住先を用意する必要があると考えられた。

 その候補が木星圏だ。

 かつての火星移住計画「マースバースディ計画」は連邦政府の調査不足で失敗に終わり移住者が火星圏に取り残されると言う事態を引き起こしそれがこの100年の戦争の原因となっている。

 同じ轍を踏まない為にも調査は早く始めることに越したことはないと言うのがこの時期からの木星圏の調査だ。

 尤も、グレート・エデンの一件からラ・グラミスの消滅、木星圏でのコロニーレーザー攻防戦で多くの兵が戦死した事で連邦軍は軍縮以前に人手不足の方が深刻だった。

 そのせいもあって木星開発の調査も人員割れを起こしている。

 ヴァネッサはヴァレンティナと共にその調査隊に志願していた。

 地球圏には未だにネオ・ヴェイガンとの戦いの爪痕が残されており、ヴァレンティナにとっても精神的には余り良くはないと言う事と木星圏は二人の母であるエリスが眠る地でもあるからだ。

 木星圏に調査に向かえばトラブルが起きて戻らない限りは数十年は地球圏には戻って来ないらしい。

 つまり、リック達はこれがヴァネッサとの今生の別れとなるかも知れなかった。

 

「そっか」

「大丈夫だよ。先輩たちなら。きっと」

 

 リックは確証はないが、そう思えた。

 ヴァネッサもヴァレンティナも一人ではないからだ。

 どんなに辛くても苦しくても二人で支え合ってこれからも生きていくだろう。

 リックはそう思いながら、二人がいるであろうコロニーのある宇宙を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 式典で連邦大統領が演説を行っているが、政府の一議員であるキオは式典に最後までいる必要もなかった。

 その為、式典を抜け出してアスノ家代々の墓参りに来ていた。

 キオの祖父フリットも眠る墓には新しくエリスの名も刻まれていた。

 

「少し遅くなりましたね」

 

 キオは墓に手を合わせる。

 前はオリバーノーツに墓を作った事もあったが、本人が生きていたので撤去されていた。

 過去に2度も同じような事があったが、今回はエリスが戻って来る事は無いと漠然と確信があった。

 だが、不思議な事に悲しさは湧いては来なかった。

 最後に生きて帰ると約束した時にその約束が果たされる事は永遠に無いと心の底では感じていた。

 そして、エリスは最後まで自分のやりたいように生きて笑って最後を迎えたと信じていた。

 だからこそ、アセムからエリスの戦死の報告を受けてアスノ家の墓にエリスの名を刻んだ。

 

「爺ちゃん。エリスさん。戦争は終わったよ。ヴェイガンの人達も安心して暮らせるようになったよ。問題は山積みだけど、それも僕達がいずれは解決させる。だから見ていて」

 

 戦いが終わってもすぐに平和が訪れる訳ではない。

 当面の敵がいなくなっただけで未だに宇宙海賊や反政府勢力も残されている。

 流石に自分達の欲望の為に略奪や破壊を行う彼らに同胞の為に戦って来たヴェイガンの民のように共存する事は不可能だろう。

 ある程度は彼らの不満を解消する事しか出来ず、最後は武力行使となるだろう。

 それでもようやく世界は平和になると言うのだ諦める訳にはいかない。

 その為にキオは政治家として戦う道を選んだ。

 

「次にいつ来れるか分からないけどまた来るよ。でもこれはもう、必要ないと思うからここに置いておくよ」

 

 キオは墓前にAGEデバイスを置いた。

 AGE-ZEROは完全に機能を停止したため、木星圏で乗り捨てて来た。

 その際にAGEデバイスだけはエイミーが回収して来たが、最後に無茶をさせたせいで完全に壊れており修復は不可能となっていた。

 アスノ家が代々受け継いで来たAGEデバイスだが、完全に壊れてしまいAGEシステムもガンダムも今の世界にはもう必要のない物でもあった。

 だからこそ、二度とガンダムの必要とならないようにすると言う決意も込めてアスノ家の墓にAGEデバイスを戻しに来た。

 キオは祖先の墓の前で決意を新たに式典へと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連邦首都ブルーシアに建てられたフリットの銅像の付近は人は殆どいなかった。

 皆、大統領の演説や出店の方に言っているのだろう。

 

「また死にそびれたよ。父さん」

 

 フリット像にアセムが語りかける。

 木星圏の戦いが終わってアセムもようやくお役御免となっている。

 

「地球はリックが守ってくれたよ。流石は俺の孫だ」

 

 フリットが亡くなり自分が同じ立場になっていろいろとフリットの気持ちが理解できるようになった。

 今なら若い頃とは違って変な意地を張る事なく素直に話す事も出来ると思うがすでにフリットがこの世にいない以上は不可能だ。

 

「今の世界は不安定ではあるが、平和になったよ。良いもんだな。平和な世界って言うのも」

 

 アセムが生まれた時から世界は戦争をしていた。

 幼少期は平和と言えば平和であったが、いつ戦火に巻き込まれるか分からない状態の中での平和だが今は違う。

 もう、戦争は終わったのだ。

 だからと言って世界が大きく変わった訳ではない。

 それでも戦争の中の平和な日常しか知らなかったアセムにとっては戦争の無い平和な世界と言うだけで世界が変わって見えた。

 

「父さん。俺もそう遠くないうちにそっちに行くと思う。その時は酒でも飲みつつゆっくりと話そう。それまでは待っていてくれ」

 

 アセムはそう言ってフリット像に背を向ける。

 これからゼハートやロマリー達と最後になるかもしれないMSクラブの同窓会がある。

 フリットとはいずれ自分が死んだ後にあの世でゆっくりと語り得る時間はある。

 だが、アセムはまだ生きている。

 生きているから、生きている友人と共に余生を平和な世界で謳歌しようと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 A.G.201年、連邦政府は火星圏におけるマーズレイを無効化するシステム「イヴァースシステム」の存在を大々的に公表した。

 その後は多少の混乱や小競り合いが行われたが、戦争状態になる事は無く世界は落ち着きを取り戻し平和な時代が到来する事となった。

 それからはガンダムが歴史上の表舞台に出ることはなくなり、100年に渡る戦いの中で生み出されて来た多くのガンダムは救世主「ガンダム」の一部となり後世に語り継がれ続けた。

 

 

 

 

 





今回を持って完結しました。

書き始めて2年……にじファンの閉鎖などいろいろありましたが完結させる事が出来ました。

散々叩かれ続けたAGEでしたけど、個人的にはかなり楽しめましたので完結出来た事は幸いです。

この2年でAGEの原作も完結して新作のビルドファイターズの放送により心移りにより心が折れそうになったり、財団Bの策略にはまり大量にガンプラを購入する事となったりといろいろとありました。

ちなみに次回作を期待している人はいないとは思いますけど、次回作はビルドファイターズで行く予定です。

現在はすでに大まかな流れを考え後は本編の流れによる微修正と主人公機の制作に取り掛かっている次第です。

これまで長く付き合ってくれた読者の方々には感謝しきれません。

本当にありがとうございました。
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