内部で三つ巴の戦闘が開始される頃、コロニーの外でも戦闘が開始されている。
ブラッドにアブディエルからのMSを対応させて、セリアとデシルはコロニーに接近していたがアリスのデスドールが行く手を阻みデシルのゼダスと交戦になり、セリアはデスドールの相手をデシルに押し付けてすでにコロニー内に侵入していた。
「変わったMSだけど、遊んで貰うよ」
デシルのゼダスは腕のビームバルカンを放ち、アリスのデスドールはかわしながらビームスプレーガンで応戦している。
「あはははっ! そんなの当たんないよ!」
本来なら直撃を受けたところで、ダメージはないのだがデシルはそれではつまらないと思い敢えて避ける。
そして、両手にビームサーベルを展開して切りかかる。
デスドールはビームサイズに持ち替えて受け止める。
「へぇ……カッコイイ武器持ってるね! でもさぁ!」
ゼダスはデスドールを蹴り飛ばして腹部のビームキャノンを連射する。
「ほら、頑張って避けないと当たっちゃうよ!」
「遊んでいるんですか……」
デシルは相手がかわせるかギリギリのところを狙い攻撃し、デスドールは何とかゼダスの攻撃をかわす。
攻撃を被弾ギリギリの紙一重でかわしつつ、攻撃と攻撃の隙をついてデスドールは接近してビームサイズを振るう。
「残念! そんな攻撃じゃ当たんないんだよね!」
ゼダスはギリギリのところでデスドールの一撃をかわして、ビームバルカンを放つ。
「相手が遊んでいるのなら、そのまま引き付けさせて貰います」
アリスはゼダスをこの場に引きとめる為の戦い方に変える。
「俺があのデカブツを叩く。シャルはUE、ジゼルとレオは連邦を抑えつつ、退路を確保してくれ」
クライドはそう言って、飛び上がりアラクネーにビームライフルを放つ。
ガンダムZERO Nの放ったビームはアラクネーに直撃する前に霧散する。
「アンチフィールドか! もう展開してやがる!」
すでにアラクネーはアンチビームフィールドを周囲に展開しているため、ガンダムZERO Nのビームはアラクネーに当たる事はない。
「展開前に仕留めたかったんだがな……」
アンチビームフィールドが展開された以上、ガンダムZERO Nのビームライフルはフィールドの発生装置を破壊するまでアラクネーに対しては無意味となり、設計上の発生装置の位置は現在の位置からでは狙い得ない。
アラクネーは背部のレールキャノンをガンダムZERO Nに放ち、ガンダムZERO Nは空中でシールドを使ってガードするが、空中では踏ん張りもつかず吹き飛ばされる。
「シールドがなかったらまずかったな」
アラクネーのレールキャノンは非常に威力が高く、直撃が一回でガンダムZERO Nのシールドがその威力で破壊され、殆どシールドの役割を果たせそうにない。
これが通常のシールドならば一撃でシールドごと機体が吹き飛ばされていたであろう。
クライドがシールドの強度に助けられた事を安堵する暇を与える事なく、アラクネーはスプレッドミサイルを放つ。
放たれたミサイルは空中で爆発すると、周囲に鉄球の雨を降らせる。
「正気か! そいつを市街地で使うか! 普通!」
ガンダムZERO Nはシールドを使って鉄球の雨を防ぐが、レールキャノンの一撃でその機能を失っているシールドに鉄球の全てを防ぐだけの力もなく、シールドは破壊されてガンダムZERO Nの装甲を削る。
「あの機体のXラウンダーに人間性を失わせるってのは事実のようだな」
クライドも半信半疑であったが、今の攻撃でそう確信する。
アラクネーのスプレッドミサイルは内部に大量の鉄球が仕込まれており、発射後空中で爆発することにより広範囲に鉄球の雨を降らせると言う武器だ。
広範囲の敵を殲滅する為には有効な武器だが、弱点として範囲を絞る事が出来ない。
今回のように対象が一機の場合では範囲が広過ぎて敵が避け難いと言う利点もあるがそれ以上に必要以上に被害が出る。
この戦闘はヴェイガンによって突発的に起きている為、コロニー内の一般市民の避難は全く出来ていない。
その為、今の攻撃はガンダムZERO Nのみならず周囲の一般市民をも巻き込んでいる。
これが普通のパイロットならば、一般市民への被害を考えて使う事を控えるだろうが、アラクネーは何の躊躇いもなく使っている。
「となれば……コイツを野放しにはできないよな」
ガンダムZERO Nはアラクネーにビームライフルを放つが、当然アンチビームフィールドに阻まれて効果がない。
「やっぱ、常に展開してるよな……なら接近戦に持ち込めば!」
ガンダムZERO Nは接近戦に持ち込む為にアラクネーに接近を試みるが、機体の至るところに装備されているビーム砲が火を噴き、シールドの破壊されているガンダムZERO Nはビームをかわすためにビルの影に隠れるが、大した時間稼ぎになることなくビルは破壊され、移動を余儀なくされる。
「機動性はあの巨体だ。大した事がないがあの火力と防御力は厄介だよ。全く……」
クライドは攻撃をかわしながら、アラクネーの能力を分析するが、現状の装備では近接戦闘を仕掛けるしかアラクネーを仕留める術はなく、アラクネーの火力を前に接近することも困難である。
「どうしたもんかな……」
アラクネーの火力と防御力を前に成す術がなく、打開策を練っているとアラクネーの突起物が機体から離れる。
そして、離れた突起物は自ら飛行し、ガンダムZERO Nに向かって来る。
向かって来た突起物はアラクネーの攻撃の死角に隠れているガンダムZERO Nに内蔵されているビーム砲で攻撃する。
「あの突起物は誘導兵器か!」
ガンダムZERO Nはビームをかわして飛び上がるとビームライフルで飛んでいる突起物を狙うが突起物はまるで生きているかのように縦横無尽に動いてビームを回避する。
「ちっ! 素早い!」
ガンダムZERO Nは何度もビームを放つも突起物はまるで攻撃が何処に来るのか分かっているかのように動く。
そして、ガンダムZERO Nの動きが読めているかのようにビームを放つ。
ビームの威力は決して高くないが、確実にガンダムZERO Nの装甲を削る。
「動きが読まれてるな……あの機体はXラウンダーの能力を引き上げるシステムが組み込まれていたが、そのせいか……」
こちらの動きや攻撃が完全に読まれている理由がその辺りだと予測するが、それが分かったところでどうしようもないが、少しでも攻撃の手を緩めさせるのは攻撃を行い避けさせるくらいしかない。
クライドが突起物とアラクネーの攻撃を何とか凌いでいると、コロニー内に新たな反応が現れる。
「新手か? あの機体は……また新型機か」
コロニー内に新たに侵入して来たのはヴェイガンの試作MS「ドラーズ」である。
「何なの……あの巨大なMSは……聞いてないわよ」
セリアは事前に聞かされていないアラクネーの存在に驚くが、アラクネーの事を見ている暇もなく、アラクネーは機体の上部についてい
るビーム砲をドラーズに向けて放つ。
「撃って来た!」
ドラーズはビームをかわして、地上に降りると地上を走る。
重武装にも関わらず、陸戦を重視しているドラーズの速度は速く、ビーム砲では追いつけない為、ガンダムZERO Nに向けていた突起物の
半分をドラーズに向ける。
「ビット兵器まで装備しているの? でも、その武器の対処法は知ってるわ」
ドラーズは肩のドラーズガンとドラーズキャノン、腹部の拡散ビーム方を一斉に放つ。
突起物も回避しようと動くが、攻撃の範囲が広く避けきることが出来ずに落とされていく。
「成程……素早く動いたところで攻撃を点ではなく面で攻めれば避ける事は出来ないと……」
クライドはドラーズが突起物に対処する様子を見ていたが、ガンダムZERO Nの武装では同じ事が出来ない為、あまり参考にはならない。
「邪魔をするなら、ここで破壊させて貰うわ」
ドラーズは尾のロングビームライフルを展開して、アラクネーに放つがアラクネーに当たる前にアンチビームフィールドで阻まれる。
「弾かれたの?」
「弾いた……連中のMSのビームはメガ粒子って事か……」
クライドが見た設計図ではアラクネーのアンチビームフィールドはガンダムZEROなどのビーム兵器に使われているメガ粒子のビームに対
しては圧倒的な防御力を持つが、ジェノアスのビームスプレーガンのような荷電粒子のビームには全く効果がない。
ドラーズの攻撃がアンチビームフィールドで防がれたと言う事はヴェイガンのMSのビームはメガ粒子が使われている事が高いと言う事になる。
これは今後の戦いに対しては非常に有効な情報と言える。
「とは言っても……俺がここで死んだら意味がないか……」
「厄介なMSね……」
ドラーズはビームガンを撃つが、やはりアンチビームフィールドで阻まれる。
「何かしらの防御フィールドを展開している可能性が高いわね。これはどうかしら?」
ドラーズは左腕の小型シールドに内蔵されている小型ミサイルを放つ。
ミサイルはアラクネーに直撃するが、ダメージを負っているようには見えない。
「無効化出来るのはビーム兵器のみのようだけど……ミサイルじゃ威力が小さいわね」
「あの新型の実弾系の武器はあれだけか……あんだけ重武装なのに使えないな……」
「仕方がないわね……アレの相手をする必要もないから、アレの相手はガンダムに任せて先に任務を優先させて貰うわ」
セリアは任務とは関係ないであろう、アラクネーをクライドに押し付けると交戦を避けて研究所の方に走る。
「おいおい……あの新型、コイツを戦わない気か?」
ドラーズが研究所に向かうと、アラクネーの攻撃はガンダムZERO Nに集中する。
ドラーズの介入で突起物の数は半分に減っているが、それでも市街地への被害を無視した無差別攻撃はガンダムZERO Nを追い詰める。
「ちっ……連邦の奴らUEもいんのにこっちばかり狙うなっての!」
ジゼルのジェノアス・キャノンとレオナールのジェノアス改はマシンガンを放ち、特殊部隊用のジェノアスの足を止めようとしている。
だが、通常のジェノアスよりも装甲が厚くビームカービンを装備しているジェノアスを止めるのは容易ではない。
「あのジェノアスはデータでは特殊部隊用の機体です。乗っているのは恐らくは特殊部隊です」
「んなもん知るか! とにかく撃ちまくれ!」
ジゼル達は二機の大して相手は十機近くのいるため、数で圧倒されれば勝ち目はない。
その為、囲まれないように弾幕を張っている。
「しぶとい!」
ジェノアス・キャノンはビームキャノンを放ち、戦闘のジェノアスを撃破する。
だが、ジェノアス・キャノンのビームキャノンの威力を見た連邦軍は狙われないようにビームカービンを放ちながら散開して行く。
「囲まれますよ! ジゼルさん!」
「わぁってるよ!」
ジェノアス・キャノンはマシンガンのマガジンを交換しながら、ビームキャノンを放ちマガジンの換装を終えるとシールドのミサイルを放つ。
「今までの連中とは動きが違う!」
「これが特殊部隊の力って事ですね……」
今までの敵は戦術と言える程の戦い方をして来る相手は殆どいなく、大抵は機体性能で力押しでどうにかなっていたが、相手は連邦軍の特殊部隊で、機体性能ではジェノアス改やジェノアス・キャノンの方が勝っているがそれを戦い方で補い押されている。
「だからって……アタシ達は死ぬ訳にはいかないんだよ!」
ジゼルが必死に抵抗していると不意に先ほど、研究所近くで感じたアレクの気配を感じた。
「アレク……?」
「ジゼルさん?」
「アレクが居る!」
ジゼルはそう言って、アラクネーの方に向かっていく。
「あのデカブツ……無差別に攻撃しているのか?」
コロニー内に侵入しているガフランをビームサーベルで両断しながら、ガンダムZERO Nと交戦しているアラクネーの戦闘をシャルルは横目で見ている。
おおよそ、戦闘行為とは言えないアラクネーの戦い方に憤りを覚えながらもガフランもまた、コロニー内を無差別に攻撃している為見逃すことも出来ず、クライドの指示通りにガフランを撃破する。
「まさか本当にUEを倒せるとはね」
「デューク……」
シャルルの前にサイコ・ジェノアスに乗ったデュークが立ちはだかる。
サイコ・ジェノアスは頭部はジェノアスの物を使い、それ以外のところはガンダムZEROに酷似しているが全身が黒く塗装されている。
武装は特殊部隊用のジェノアスのビームカービンとシールドを装備している。
「そのMSは……」
「これがサイコ・ジェノアスだ」
「デューク! すぐにそのMSから降りるんだ! でないと!」
「生憎とUEとテロリストの排除の命令が出ている。軍人としてはそれには従わないといけないのはお前も知っている筈だ」
サイコ・ジェノアスはビームカービンをGレックスに放つ。
Gレックスは小型シールドでビームを防ぐ。
「デューク!」
「UEよりもそれを倒せるお前たちの方が現状では優先すべき敵だ!」
デュークはシャルルの言葉を聞く事なくビームカービンを連射する。
ビームカービンの威力はビームスプレーガンに比べると高いが、Gレックスの装甲を破壊することは出来ないが少しづつ装甲を削っていく。
「UEは俺達共通の敵の筈だ!」
「だが、今のお前は連邦の敵だ。それは分かっている筈だろう」
シャルルもそれは分かっている。
だが、偶然かシャルルがパラダイスロストに加わり今日まで一度も連邦軍とは交戦していない。
その為、シャルルはかつての所属していた軍と戦うのは今回が初めてだ。
更にタイミングが悪く、その相手が知人だったと言う事もあり、Gレックスの攻撃の手は明らかに落ちている。
「それは……」
「分かって決めた事なら躊躇う事も無い筈だ! 俺はお前にとっての敵だ! シャルル!」
「くっ!」
Gレックスは両手にビームサーベルを持って、サイコ・ジェノアスに切りかかる。
サイコ・ジェノアスはGレックスのビームサーベルを紙一重でかわす。
「これがこのMSの力だ! お前の動きは全て見える!」
Gレックスは何度もビームサーベルを振るうが、サイコ・ジェノアスは全てを紙一重でかわす。
そして、サイコ・ジェノアスはシールドに装備されているビームサーベルを抜いて、Gレックスの胴体と左肩の関節部を切り裂く。
「っ! デューク……」
「悪いな、シャルル……お前が軍を離れて戦う道を選んだ様に俺は軍で戦う道を選んだ……」
サイコ・ジェノアスがビームサーベルを振り下ろそうとするが、サイコ・ジェノアスの動きが止まる。
「デューク?」
「ぐっぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
シャルルはこの状況で攻撃を止める理由がない為不審に思っているとデュークの悲鳴が聞こえる。
「デューク! どうした!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
通信越しに聞こえる声はデュークの悲鳴しか聞こえない。
そして、サイコ・ジェノアスはビームカービンを無作為に撃ちだす。
「止めろ! デューク!」
シャルルが叫ぶがサイコ・ジェノアスが止まる気配はない。
「どうしたってんだ!」
シャルルは現状が飲み込めないが、サイコ・ジェノアスにはパイロットを強制的にXラウンダーの能力を引き出す「サイコメット・ミューセル」の試作品が使われている。
それは完成品とは程遠く、パイロットの脳に負担をかける為、それによりデュークの意識は錯乱した状態となっている。
「くそ! あの機体のせいか!」
シャルルはサイコ・ジェノアスを止めようとするが、サイコ・ジェノアスはビームカービンを乱射しながら後退して行く。
Gレックスもサイコ・ジェノアスを追おうとするも、アラクネーの無差別攻撃に阻まれる。
アラクネーの攻撃を何とかかわしたが、すでにサイコ・ジェノアスはGレックスから遠く離れていた。
アラクネーとの戦闘を避けたセリアは脳科学研究所まで辿りついていた。
「予想外な事はあったけど、何とか来れたわね」
セリアは研究所につくと回線を開く。
「おお……ようやく来たかね」
回線を開くとアドルフが通信に出て来る。
「頼んでおいた物のデータは?」
セリアは長々と話す気がない為、すぐに本題に入る。
「気が早いな」
「あまり時間を使ってられない」
「まぁ良い」
すぐにドラーズに研究所からサイコメット・ミューセルのデータが転送されて来る。
「……確かにデータは取れている様ね」
セリアはデータの中身を大まかに確認するが、ぱっと見では不備はないように見える。
「当然だ。それで、約束通り、私を君たちの陣営に加えてくれるのだな?」
アドルフがそう言っているとドラーズは両手を研究所に向ける。
「これはどう言う事かね? 研究結果を渡せば私をヴェイガンに入れてくれる筈だったが?」
行き成り銃口を突き付けられ、先ほどまでとの態度とは違い少し怯えた様子でセリアにそう言いセリアは逆に冷ややかに答える。
「イゼルカント様は貴方様な人は必要ないと言っている。なので、我々の事を知り過ぎている貴方はここで始末させて貰う」
セリアがそう言い放つとアドルフはすぐに逃げようとするが、逃げる事などは出来る訳も無く、ドラーズのビームバルカンで研究所は破壊される。
「これで終わりね」
研究所が完全に破壊され確実にアドルフの始末を確認するとドラーズは飛び上がる。
「散々利用するだけ利用して、必要が無くなれば始末するか……」
セリアは任務であれど利用するだけ利用して切り捨てると言うやり方に素直に賛同は出来ないが、任務を完了した為、コロニーから離脱するために移動を開始する。
「アイツ……研究所の破壊が目当てだったのか? 何で研究所を……」
クライドは遠目でドラーズが研究所を破壊するのを見てそう思う。
ヴェイガンの行動目的が分からない以上、仮定の立てようがないが、無意味な行動で新型機やブラッドを投入するようには思えない。
だが、そんな事を考えている余裕すらない。
「お前らのボスはやられたんだ。そろそろ止まって欲しいが……」
アラクネーは研究所が破壊されても全く気することなくガンダムZERO Nを狙う。
「ちっ……無茶苦茶だな!」
アラクネーはレールキャノンを放ち、射線上のビルなどを破壊し、弾丸はガンダムZERO Nに向かいガンダムZERO Nは大きく飛び上がりビームライフルをアラクネーに放ち回避する。
「コイツの何処が理想の兵器だ! ただの殺戮マシーンじゃないか!」
ガンダムZERO Nのビームはアラクネーには届かず、攻撃の手を緩める事すら出来ない。
アラクネーは残っているスプレッドミサイルを放つ。
「またアレか! そう何度もやらせるかよ!」
ガンダムZERO Nはビームライフルで放たれたスプレッドミサイルを狙撃する。
放たれてすぐのスプレッドミサイルは本来よりもだいぶ早く爆発し、鉄球の雨はアラクネーの近くで振り、アラクネーも自身も鉄球の雨に晒される。
「アレク!」
鉄球の雨で思わぬダメージを追わせる事が出来て反撃に出ようとすると、ジゼルのジェノアス・キャノンがアラクネーに接近していた。
「ジゼル! 何やってんだ!」
「あれにはアレクが乗ってんだ! アタシにはわかんだよ!」
「そんなこと言ってる場合か!」
クライドは叫ぶがジゼルは聞く耳を持たないでアラクネーに接近する。
ジゼルには直感的にアラクネーのパイロットが自分の探しているアレクだと分かっているらしい。
だが、だとしたらすでに己の意思すらなくアラクネーのパーツとなっている。
「そいつは危険だ! お前の知るアレクじゃない!」
機体の設計図を見ているからこそ、クライドはそう言えるが、ジゼルにとってはそれはどうでも良い。
すぐそこにアレクが居ること自体が重要なのだ。
アラクネーはビーム砲をジェノアス・キャノンに放つ。
ジェノアス・キャノンはシールドで防ぎながら、速度を緩める事なくアラクネーに向かうが、やがてシールドの強度がビームに耐えられなくなり、シールドは破壊されジェノアス・キャノンにビームが直撃する。
幸いコックピットへの直撃はないが、機体の脚部のランドローラーの一部が破損した事で機能が停止し、勢い余ってジェノアス・キャノンはうつ伏せに転倒する。
「ジゼル!」
クライドはすぐに援護に向かおうとするも、突起物がビームを放ち邪魔をする。
ガンダムZERO Nの装甲もすでにかなりのダメージを負っている為、無茶な行動を取る訳にも行かず、ビームライフルを放ちながら、回避するしかない。
そして、ガンダムZERO Nが引いている間にアラクネーは大型のヒートクローでジェノアス・キャノンを掴む。
「くそ! 離せ! アレク! アタシだ! ジゼルだ!」
アラクネーはヒートクローでジェノアス・キャノンを掴むと機体の向きを変える為に移動を始める。
そして、大きく向きと変えると機体に埋め込まれているハイパーメガ粒子砲を放つ。
アラクネーのハイパーメガ粒子砲はガンダムZERO Nとは全く違う方向に放たれるとコロニーの外壁に穴をあける。
「コロニーの外壁に穴を開けやがった! なんつー威力してんだよ!」
人類が宇宙に出てすでに百年以上が経ち、その間にもコロニー開発が進み今ではMSの戦闘くらいではコロニーの外壁に穴が開くなどそうそうあり得る事ではない。
だが、アラクネーはそれをやってのけた。
コロニーの外壁に穴が開いた為、コロニー内の空気が外に急激に漏れ始める。
「こいつは不味いだろ!」
コロニーに穴が開き空気が漏れた以上、このコロニーの住人は避難用のシェルターに避難している人以外は全滅するのは時間の問題だ。
戦闘自体が突発的だったため、戦闘開始から避難出来た住民は殆どいないと見て良い。
つまりはコロニーの住人の大半がここで死ぬ。
それはもはやクライドにどうこう出来るレベルの問題を超えている。
コロニーの空気が抜けるなか、アラクネーは掴んでいたジェノアス・キャノンを開いた穴の方に放り投げる。
―――――ジゼルは生きて―――――
「アレク!」
アラクネーに投げられてコロニーの外に出る直前にジゼルには確かにそう聞こえた。
だが、アレクが正気を取り戻したのかを確かめる術も時間もなく、ジェノアス・キャノンは宇宙に放り投げられる。
「どう言う訳だ……」
クライドにはアラクネーの行動の真意が理解しかねた。
先ほどの行動はコロニーを犠牲にしてもジゼルを助けようとしていたように見えた。
大型のヒートクローで捕らえた時点でジェノアス・キャノンを破壊することは容易だ。
にも関わらず破壊せずにコロニーに穴を開けて外に放りだした。
「だが……退路は確保が出来た。シャル! レオ! お前たちは開いた穴から離脱しろ!」
「でも、アレを野放しにしたら……」
「アイツは俺がやる」
「……了解」
シャルルは納得がいかないが、機体を損傷している自分ではクライドの足手まといにしかならない上に母艦の防衛もある為、引き下がる。
Gレックスとジェノアス改は連邦軍やヴェイガンとの交戦を避けつつコロニーの外に退避する。
「さて……このコロニーは終わりだ。ついでにお前も終わらせてやるよ」
ガンダムZERO Nはアラクネーと対峙する。
コロニーの回転が止まったのか、コロニー内の疑似重力が無くなり無重力となり周囲の瓦礫などが浮き始める。
ガンダムZERO Nも軽く地面を蹴り上げて浮く。
アラクネーはレールキャノンを放つが、重力が無くなり宇宙と同じ感覚で動けるようになったガンダムZERO Nには当たらない。
「宇宙と同じで戦えるならこっちの方が有利だ!」
ガンダムZERO Nはビームライフルを放つ。
アラクネーは先ほどの鉄球の雨のダメージでアンチビームフィールドの発生装置が故障しているのか、ガンダムZERO Nのビームを防ぐ事なく被弾する。
「ビームが効いた……ならこっちのもんだ」
ガンダムZERO Nは左手にビームサーベルを持たせるとアラクネーに突っ込む。
アラクネーも突起物で応戦しようとするが、突起物のスラスターはコロニー内の様な重力下を想定した調整がされている為、無重力下では上手く動く事が出来ない。
「調整はちゃんとしとかないとな!」
クライドは先に突起物を仕留める為に接近し、ビームサーベルで突起物を切り裂き、別の奴をビームライフルで撃ち落とす。
まともにコントロールの効か無くなった突起物はガンダムZERO Nにあっさりと全機が落とされる。
「後は本体を叩くのみだ。ジゼルには悪いが俺はお前の存在を認めない」
アラクネーはレールキャノンやビーム砲を総動員してガンダムZERO Nを撃ちおとそうとするが、アラクネーは宇宙戦の調整がされていない為、照準も上手く合わせる事が出来ずにガンダムZERO Nの進路を阻む事が出来ない。
ガンダムZERO Nはビームライフルを腰に付けると右手にもビームサーベルを持つと、アラクネーの足の一本を切り裂く。
切り裂かれたアラクネーの足は爆発し、その反動でアラクネーの巨体はゆっくりと宙に浮き始める。
アラクネーは大型ヒートクローでガンダムZERO Nを捕らえようとするが捕らえる事は出来ず、逆にビームサーベルでヒートクローと機体とを繋ぐアーム部分を切り裂かれる。
ヒートクローを破壊したガンダムZERO Nは頭部のビームバルカンを撃ちながら距離を取り、ビームライフルの一撃を入れる。
ビームライフルはアラクネーに直撃し、アラクネーの機体の一部が爆発を起こす。
「この後で最大級に面倒な奴を相手にしないといけないんだ……もう、終わらせて貰う」
ガンダムZERO Nは両手にビームサーベルを持ち、アラクネーにビームサーベルを突き刺す。
二本のビームサーベルをアラクネーに突き刺すと、ビームサーベルを手放し、至近距離で何発もビームライフルを撃ち込んだ。
ビームを何度も撃ち込まれたアラクネーは動きが止まり完全に沈黙する。
「…………」
クライドはそれを確認すると、コロニーの外に向かう。
コロニー内での戦闘が終結に向かう頃、コロニーの外の戦闘も動きが出て来た。
目的を達したセリアがコロニーの外に離脱し、撤退をするように指示を出した。
デスドールとの戦闘に飽きて来たデシルは素直に撤退に応じるが、ブラッドはそれを聞くつもりはない。
せっかく、クライドが近くにいると言うのに前座のジェノワーズとの戦闘だけでは満足できないと言う。
その為、クライドが出て来るまで離脱する気は無いと言い張り、一機だけで戦場に残っていた。
対するパラダイスロスト側だが、コロニーから離脱した三機はレオナールのジェノアス改以外は損傷している為、エリーゼはブラッドのギラドを相手にするのは無理とレオナールも実力的に無理と判断し、アブディエルに帰還している。
残っているジェノワーズとデスドールがギラドと交戦している状態となっている。
すでにユーリアのジェノワーズはギラドとの戦闘で所々が被弾しているが、ブラッドがクライドが来るまでの前座として見ていた為、本気で落とす気がなく、ユーリアの実力を持ってすれば落とされないだけは出来ていた。
「やはり……この機体は手ごわいですね」
デスドールはビームサイズを振るうが、ギラドは回避して掌のビームガンを放つ。
「ほらほらぁ! クライドが出て来るまで持たせて見よろなぁ!」
デスドールは何とかギラドのビームを避けるが、次第にビームが掠るようになっていく。
「これは少し不味いですね……」
「私が援護する」
ジェノワーズがビームライフルでギラドを狙い、ギラドも攻撃を避けながら掌にギラドソードを付けてジェノワーズに切りかかる。
ジェノワーズもビームサーベルで受け止めるが、ジェノワーズとギラドのパワーの差は明らかで押しのけられる。
「多少は楽しめたがこの辺りで仕舞いだぁぁ!」
ギラドは体勢を崩しているジェノワーズに突っ込むがビームが間に割り込む。
「この感じは……ようやく来たかぁぁぁ! クライド・アスノォォォォ!」
ブラッドはようやく待ちわびたクライドの参戦に歓喜の声を上げる。
クライドはコロニー内の戦闘でノーマルアーマーの装甲はかなりのダメージを負った為、一度アブディエルに帰還し、すぐにブリーズアーマーに換装し再度出撃して来ていた。
「クライドが来た以上、前座に用はないなぁぁ!」
ギラドはビームガンを放ち、ジェノワーズの右肩を吹き飛ばす。
背後からデスドールがビームサイズを振るうが、ギラドはかわしてギラドソードでデスドールの腕ごとビームサイズの柄を切り裂く。
「アリスとユーリアは撤退しろ。コイツは俺が抑えて時間を稼ぐ」
「それしかなさそうですね」
「……後は任せた」
アリスとユーリアもこれ以上の戦闘継続は無理なので、大人しくアブディエルに撤退する。
「今日は青い装甲か! そいつにはゼダスの借りがあったなぁ!」
ギラドはガンダムZERO Bに尾のビームライフルを放つが、ガンダムZERO Bには当たらない。
そして、一気に距離を詰める。
ギラドはギラドソードを両手に付けて応戦する。
「今日も楽しませて貰うぞぉぉぉ! クライド・アスノォォォ!」
「今日は早く済まさせて貰う」
ギラドはギラドソードを振るうが、ガンダムZERO Bはその一撃を回避して背後に回り込んでロングソードを振り下ろす。
だが、ギラドはすぐに振り向いてギラドソードで受け止める。
二機がぶつかり合うとすぐにガンダムZERO Bはギラドとの距離を取る。
以前の戦闘でギラドは近接戦闘に特化しているガンダムZERO Gと互角以上に戦っている。
それから考えてもパワー勝負でなら、ガンダムZERO Bには勝機はないが、機動力でならガンダムZERO Bの方が勝っている。
その為、クラウドはギラドとは正面からぶつかる事を避けて機動力で勝負する方法を選んだ。
「はっ! 上等だ!」
ギラドはビームライフルを放ちながら、ガンダムZERO Bを追いガンダムZERO Bは回避しつつもチャンスを窺う。
ガンダムZERO Bはビームを回避しながら、ウイングスラスターのビームキャノンでも反撃を行う。
ギラドはそれを翼の電磁装甲で防ぐと隙が生まれ、ガンダムZERO Bは一気に加速して接近する。
ガンダムZERO Bはギラドに接近するが、突如ギラドの翼を突き破りギラドソードが出て来る。
「なっ! コイツ!」
ブラッドは機動力で勝るガンダムZERO Bを自分の距離におびき寄せる為に敢えて、ビームを翼の電磁装甲で受けて隙を作った。
そして、クライドはその隙を見逃す筈もなく、ブラッドの思惑通りに接近して来た。
ガンダムZERO Bが加速し接近して来る事さえ分かれば、カウンターを決めるのも容易だ。
自分の機体の翼をブラインド代わりに使い、ギラドソードをガンダムZERO Bに対して突き刺す。
トップスピードに乗っているガンダムZERO Bにその一撃をかわすのは非常に困難だ。
クライドが反応出来ても気づいた時には、すでにギラドの間合いに入り攻撃が放たれている。
だが、クライドもそう簡単にやられる訳ではない。
ブラッドのカウンターに反応したクライドはとっさに機体を横にずらした。
それによって、ブラッドがコックピットを串刺しにしようとしていた一撃はガンダムZERO Bの左肩に突き刺さる。
「はっ! やるじゃねぇかよ!」
ガンダムZERO Bの左腕は肩から破壊され、ガンダムZERO Bは右肩のウイングスラスターのビームキャノンと頭部のビームバルカンを放ちながら後退する。
「くそ……してやられた」
「お前には随分と楽しませて貰ったからな……その礼に一撃であの世に送ってやるよぉぉぉ!」
ギラドは後退するガンダムZERO Bを追撃する。
損傷と先程にフル加速してしまった為、ガンダムZERO Bは思うように加速が出来ずギラドとの距離が次第に縮まっていく。
「これで終わりだぁぁぁ!」
ギラドはギラドソードを突き出すが、その一撃がガンダムZERO Bに届く前にサイコ・ジェノアスがギラドにシールドでタックルする。
「てめぇ!」
「アイツ……」
突然の横槍でブラッドは反応出来てなかったので、ギラドはサイコ・ジェノアスに吹き飛ばされて、サイコ・ジェノアスのビームカービンを自分で貫いた翼とは逆の翼で防ぐ。
「何だか知らんが、時間は十分に稼いだ。この場は撤退するしかないようだな」
シャルルとの戦闘中にパイロットのデュークが不調を起こして一時的に撤退していたが、デュークの回復とともに再び参戦し、最も厄介
と思われるギラドを優先的に仕留める為にデュークは戦いに割って入って来た。
クライドの戦闘目的はアブディエルが安全圏まで撤退するための時間稼ぎである。
すでに十分に時間を稼いでいる為、これ以上の戦闘行為に意味はない。
正直なところ、クライドとしては自分の設計図が無断で使われているサイコ・ジェノアスを野放しにするのは気に入らない。
ここでサイコ・ジェノアスを仕留めるのはブラッドのギラドを仕留めるよりも容易だ。
しかし、その後にはギラドとの戦いの続きが待っている。
そして、今のガンダムZERO Bの状況でギラドに勝てるとは到底思わない。
となれば、出来る手段は一つしか残されていない。
クライドは撤退を決めるとすぐに後退を開始する。
「ちっ! 逃げる気が!」
ブラッドは撤退を始めるガンダムZERO Bを追撃しようとするが、サイコ・ジェノアスがビームサーベルを振るう。
「お前は行かせない!」
「邪魔なんだよ! 雑魚がぁ!」
ギラドはギラドソードでサイコ・ジェノアスの右腕を切り裂く。
そして、サイコ・ジェノアスを蹴り飛ばすと腹部の荷電粒子砲のチャージを開始する。
「俺とクライドの戦いを邪魔したんだ。ただで死ねると思うなよ! この偽物がぁ!」
荷電粒子砲のチャージが完了すると、蹴り飛ばされて体勢の崩れているサイコ・ジェノアスに放つ。
「シャルル……お前は……」
デュークは最後の言葉をシャルルに言う事なく、ギラドの荷電粒子砲により機体ごと一瞬で消滅した。
ギラドの放った荷電粒子砲はサイコ・ジェノアスを消滅させて、そのまま後方のルカインに直撃するとルカインを貫通する。
荷電粒子砲の直撃を受けたルカインはそのまま崩壊して行く。
「ちっ……クライドには逃げられたか……まぁ良い。これでもう一度奴と戦える機会が出来た」
先ほどのクライドとの戦いに満足し、ブラッドはアブディエルと追撃することなく母艦へと帰投して行く。