機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第2話

 白い装甲を身にまとったガンダムZERO Nで出撃したクライドはガフランを撃墜すると戦場の状況を確認する。

 コロニー内に侵入したガフランは報告によれば全部で三機。

 すでにクライドが一機を撃墜しているため、伏兵や増援がなければ残りは二機と言う計算になる。

 

「ジゼル、生きてるな」

「何とかな……」

 

 普通に返事を出来ることから、ジゼルも負傷はしていないと判断する。

「そうか。アリス、もうこっちに来させても構わないぞ」

 

 すでにガンダムZEROが起動しているため、アリスが敵の目を引き付ける必要はすでに無い。

 

「了解しました」

 

 ガフランと交戦していたアリスのデスドールは、ビームスプレーガンで牽制のビームを放ちつつ、ガフランと距離を取り建物の影に身を隠す。

 

「そんじゃ、残り二機を片づけますか」

 

 ZERO Nはビームサーベルを持ったまま、ガフランに突っ込む。

 ガフランは両手のビームバルカンを放つがZERO Nはシールドで防ぎながら突っ込む。

 対UE戦を目的に設計されているジェノアス改のシールドは通常のジェノアスのシールドよりも強度が高く、ZERO用に改良されているシールドは更に高い為、ガフランのビームバルカンの直撃程度ではびくともしない。

 ガフランはビームサーベルを展開して、突き出すがZERO Nはシールドで弾くと、ビームサーベルでガフランの右腕を切り落とし、そのままビームサーベルの横一閃でガフランの胴体を両断する。

 

「二機目……」

 

その様子をレオナールはジェノアス改の中から見ており、戦闘が継続してるにも関わらず、その戦いを見入っていた。

 

「次で最後か……っと!」

 

 二機目のガフランを撃墜するが、アリスのデスドールを見失ったことで狙いをZEROノーマルに変えた最後のガフランがドラゴン型と呼ばれる形態に変形し、上空からガンダムZERO Nにビームバルカンを放つ。

 

「ちっ!空からか……面倒だな」

 

 ZERO Nはビームサーベルをバックパックに戻して、腰のビームライフルを手にする。

 敵が上空にいる以上、ビームサーベルで交戦するのは間合いが届かず、ZEROには重力下での飛行能力はない為、適さないと判断したからだ。

 

「だったら……コイツで仕留める」

 

 ガフランにZERO Nはビームライフルの最大の威力を使えば下手をすればコロニーに穴をあける可能性がある為、威力を絞り放つがガフランは回避する。

だが、ZERO Nは一撃目のビームを放つと同時にビームライフルの銃口の方向を変えていた。

 一撃目のビームライフルは当たれば儲けもんだが、回避されることを前提として放っていた。

 その為、放つとすぐに銃口の向きを変え、一撃目のビームをかわしたガフランは自分からZERO Nのビームライフルの前に出る結果となる。

 ZERO Nはビームライフルを放ち、一発目はガフランの翼を撃ち抜き、バランスが崩れたところを腕や足を撃ち抜かれて、最後の腹部の拡散ビーム砲を撃ち抜かれて爆散した。

 

「凄いわね。あれがガンダムの力なのね」

 

 その戦闘を地下の格納庫に避難したエリーゼはリゼットに見せていた。

 直接、UEを倒せることを見せた方が今後の支援も容易に進むと判断したからだ。

 

「ええ……クライドはあのMSをガンダムZEROを名づけました」

「ガンダムZERO……」

 

 こうして、サマーウォールのUE襲撃は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるじゃねぇかよ!」

 

 戦闘を終えて、地下格納庫に戻って機体から降りたレオナールの元にジゼルが駆けつけて、レオナールの頭を小脇に挟むと頭をクシャクシャに撫でてそう言う。

 

「ちょっ……止めて下さいよ」

「さっきは腰抜けとか言ったが取り消すぜ。少しは骨があるじゃねぇか」

 

 本当に腰抜けならば、人類が一度として勝利していないUEにMSで挑むことはない。

 レオナールはUEにやられそうになり、クライドに救われたがUEに立ち向かった勇気はジゼルは素直に評価している。

 

「そんなことよりも止めて下さい……」

 

 ジゼルはレオナールの言葉を流して続ける。

 

「あれって、リゼットの弟か? 何でジェノアス改に乗ってたんだ?」

 

 そんな様子を遠目で見ていたクライドがそう呟く。

 戦闘中は誰がジェノアス改に乗っているかを確認している時間も無く、クライドは初めてレオナールがジェノアス改に乗っていたことを知る。

 

「クライドさん、弟を助けていただきありがとうござます」

 

 リゼットがクライドの元にやって来て頭を下げる。

 クライドはジェノアス改に乗っていたのがレオナールだと今さっき知った為、戦闘ではレオナールを助けたつもりはなかったので、どう答えようかとしていたが、リゼットと一緒に来たエリーゼが視線で訴える「適当に話を合わせろ」と……

 偶然の産物でクライドがレオナールの命を救い、スポンサーであるリゼットがクライドに感謝しているのだ、それを受け取らない理由はない。

 

「まぁ……うん」

 

 その適当な返しにエリーゼは若干引き攣るが、リゼットは気にした様子はなかった。

 

「それにクライドさんはUEを倒したこともこの目で確かめさせて貰いました。今後も支援を惜しまな事をお約束します」

 

クライドからすれば、UEの襲撃もレオナールを救ったことも完全に予想外の事態だが、その結果としてリゼットの信用を勝ち取ることが出来たのは運が良かったとしか言いようがない。

 

「それはどうも……俺達も精々、アンタの期待を裏切らないようにするさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クレマン邸での会談を終えたクライドはアブディエルに戻るとクライドの自室に戻って来た。

 大抵、クライドとエリーゼがクライドの部屋に二人きりになる時の理由は二つだ。

 一つ目はクルーの目の無いところでいちゃつく為、もう一つは他のクルーに聞かれたくない密談をする為に分けられる。

 

「それで、情報は?」

 

 今回は後者の他のクルーに聞かれたくない密談の為のようだった。

 その内容はクライドが地下格納庫にいた時にエリーゼがリゼットとの会談で得た情報の確認。

 

「ウィンターガーデンに可能性を持つ人物の情報があったわ」

 

 エリーゼの言う可能性とはクライド達はUEと戦うに当たり、とある能力に目覚めた者、またはその素質を持つ可能性を持つ者を探している。

 その能力とは人の脳の中で普段は使われていない領域……X領域が活性度が高い者を指す。

 一般的にその能力者をXラウンダーと呼ばれている。

 クライドもまた、5年程前にXラウンダーの能力に目覚めかけ、現在では完全に使いこなしている。

 またジゼルもクライドに比べれば物凄く劣るがその素質を持っている為、パラダイスロストにスカウトされた。

 クライドが先の戦闘でガフランの動きを呼んでいたのもXラウンダーの能力のお陰である。

 それがなければクライドはZEROの能力を知り尽くして動かせるだけの2流パイロットでしかない。

 

「へぇ……」

「ウィンターガーデンの闇バトル闘技場のリトルエンジェルって闘士が連戦連勝でその動きがまるで敵の動きを予め予測出来てるかのようだって……」

「闇バトルね……あそこは黒い噂があったが……」

 

 『闇バトル』それはモビルスタンダードバトル……通称「MSバトル」と呼ばれる競技でMS(モビルスタンダード)を使用した格闘技の一種とされている。

 定められたルールの元、MSを駆使して戦うスポーツだが、闇バトルは戦闘用のMS(モビルスーツ)を使い互いの命をかけて戦う事を闇バトルと言われている。

 当然の事ながら、敗者は命を落とすため、違法とされている。

 闇バトルでは賭けとセットで行われることが多く、そのたびに多くの金が動いているとされる。

 この時代、個人で戦闘用のMSを持つこと自体、『銀の聖杯条約』に基づき違法行為とされ、連邦軍がその辺りに無関心であっても大っぴらに行っているケースは少ない。

 そして、その場所とされているコロニー『ウィンターガーデン』はそのコロニーの特性上、いろいろと黒い噂が流れている。

 

「年齢、素顔、闇バトルに参加する前の情報が一切伏せられているのよ」

「まぁ、闇バトルはいろいろと恨みを買いやすいからな。リトルエンジェルなんて、明らかにリングネームだしな」

「小さい天使なんて可愛らしいリングネームじゃない」

「闇バトルのリングネームでなければな」

 

 命のやり取りを行っている闇バトルとはとても似つかわしくないリングネームと言える。

 

「だが、行って見る価値はあるか……そいつをMS越しでも一目見れば俺なら当たりかどうかは分かる。外れでもそれだけの腕があればスカウトするのも悪くない。俺達なら闇バトル以上の報酬を用意することも出来そうだしな」

 

 例え、Xラウンダーで無くとも高い能力を持ったパイロットはクライドにとって価値は高い。

 現状ではパラダイスロストのパイロットの数は絶対的に不足している。

 高いXラウンダー能力を持つが技術者と兼任しているクライドに、Xラウンダーとしての能力が低く直感で戦うジゼル、愛想意外は家事から情報収集、破壊工作までそつなくこなすスーパーメイドのアリスの三人しかいない。

 三人ともが一般的なMSパイロットに比べれば優秀だが、パイロットが三人ではUEとの戦いに勝つことは不可能である事は考えるまでも無い。

 その為、クライドはXラウンダーで無くとも優秀なパイロットを欲している。

 闇バトルで戦っている以上、まともな境遇で無いことは確実でクレマン家の後ろ盾が強固になった今、多少の報酬を用意することも出来、闇バトルでは扱っていない高性能のMSを提供することも可能だ。

 

「楽観的ね。幾ら、リトルエンジェルなんて可愛らしいリングネームでも闇バトルに参加しているような奴がまともな可能性はないのよ。高い能力を持っているのは確実なんだし、その力が私達向けられる可能性もあるわ」

 

 相手が操縦技術に長けていると言う情報以外、何の情報もな以上エリーゼの言う可能性も否定出来ない。

 まともな境遇でないと言う事はまともな人間でない可能性もある。

 単に金が目当ての相手ならまだしも、単に殺し合いが好き、強い相手と戦いたいと言った戦闘狂ならクライド達に敵対する恐れをエリーゼは指摘している。

 

「その時は俺とゼロで何とかするさ……幾ら戦闘用って言っても俺のゼロ以上のMSは存在しないだろ」

 

 クライドは自分の能力と自分の設計したガンダムZEROに絶対的な自信を持っているためそう断言する。

 実際、UEを倒すために設計されたガンダムZEROの基本性能は高く、通常のMSでは大抵は歯が立たない。

 その上、パイロットのクライドはXラウンダー能力者でZEROの最大限の能力の引き出し方を熟知しているので、クライドの発言はあながち驕りと言う訳ではない。

 

「その時は本当に頼むわよ」

 

 クライドがそう断言する以上、何を言っても無駄なことをエリーゼはこれまでに付き合いで知っているため、それ以上は何も言わない。

 話が纏まった頃にタイミングが良く自室内の通信機がなりクライドが取る。

 

「どうした?」

「クライド、悪いけどすぐにブリッジに来れないかい? 少し面倒なことが起きた」

 

 通信でアルフレッドがそう言う。

 アルフレッドがアブディエルでは副長を任されている為、大抵の事はわざわざクライドやエリーゼの判断を仰ぐ必要はない。

 そんなアルフレッドが自室で二人きりのクライドとエリーゼをブリッジに呼び出すとは余程の事の可能性が高い。

 

「分かった。すぐに上がる」

 

 クライドはそう言って通信を切る。

 

「どうしたの?」

「なにかトラブったらしい。話も切りが良いから、ブリッジに上がるか」

「そうね」

 

 すでに話も纏まっている上に厄介な事態の可能性がある為、二人はブリッジへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリッジに上がった二人が待っていたのは困り果てたアルフレッドに、ロープでグルグル巻きにされたレオナールにその縄を持っているジゼルだった。

 

「これは……どういう事だ」

 

 事態が全く理解できないクライドは呼びだしたアルフレッドに尋ねる。

 

「どうやら、彼が勝手にアブディエルに乗り込んだところをジゼルが捕縛したみたい」

 

 アルフレッドの話を要約するとこうだ。

 レオナールがアブディエルに密航しているところをジゼルが発見、相手を確認する前に捕まえて拘束したと言う事だ。

 相手が只の密航者ならそれ相応の仕打ちである為、アルフレッドでも十分に判断を下せるが、相手がレオナールとなれば話は別になる。

 レオナールはリゼットの弟でまだ未成年である為、クレマン家の資産はリゼットが管理しているが、実際はレオナールの資産と言う事になる。

 もしも、この一件でレオナールの機嫌を損ねてそれがきっかけでリゼットが資金援助を打ち切れば、間違いや笑い話では済まされない大打撃を受けることになりかねない問題となる。

 

「本当か?」

 

 クライドは取り合えず、事実確認から入る。

 事実を確認し、相手側に非があることを証明出来れば、何とか和解に持ち込む可能性も出て来る。

 

「済みません……」

 

 レオナールはあっさりと自分の非を認めて謝る。

 

「理由は?」

「その……僕の両親はUEに殺されました」

 

 クレマン家の先代の夫婦……つまり、レオナールとリゼットの両親は数年前に不幸にもUEの襲撃で命を落としている。

 そのことはすでにクライド達も知っている為、嘘は付いていないことになる。

 

「それで……さっきの戦闘で貴方がUEを倒したのを見て僕も……僕もUEを倒したい。父さんと母さんの仇を討ちたい……そう思って……」

 

 今まではUEを倒すなど無理だと思っていたが、目の前でクライドがUEを倒すところを見てしまったレオナールはその考えを改めた。

 

「それで密航ね……」

 

 直接、頼んだところで何の経験も無いレオナールを仲間にして貰えないと思い、アブディエルに密航しサマーウォールを出港してしまえば追い出されることはないと考えていた。

 中にはその身一つで宇宙に放りだされる可能性も考えられたが、温室育ちのレオナールにはそこまでの事がされる可能性まで思い至ってはいない。

 

「はい……」

「こうも簡単に密航出来るなら、艦の警備を考える必要があるわね」

 

 エリーゼが気にした事はレオナールの事情よりもアブディエルの警備の状況の方だった。

 MSや物資の搬送のドサクサに紛れたとはいえ、素人のレオナールに艦内への侵入を許したと言う事は潜入工作のプロならば、艦内で重要なデータや最悪はガンダムを奪取される恐れも出て来る。

 だが、どんなに策を講じようともエリーゼのクライドも軍人と言う訳でも無くクルーも素人の為、事実上は警備を強化しても変わらない。

 

「そん時はアタシがまた捕まえてやるよ。姐さん」

 

 ジゼルがそう言うが、敵に侵入されてから捕まえては遅い場合もある。

 捕まえた時が敵が艦内の情報を奪う前なら良いが、奪い仲間に送った後では捕まえても意味はない。

 

「そんなことよりも、コイツをどうするかだろ?」

 

 クライドがそう言うと視線がレオナールに集まる。

 艦の警備の薄さは今更どうすることも出来ないが、レオナールの処遇を失敗すれば、警備の薄さで頭を悩ますことも出来ないかも知れない。

 

「お願いです! 僕も戦わせて下さい! 僕もUEを倒したいんです!」

 

 レオナールは地面に頭がつく勢いで頭を下げて懇願する。

 レオナールには相手を納得させるだけの話術も無ければ、交渉の材料も殆ど思いつかない為、頭を下げて懇願することしか出来ない。

 

「なぁ、アニキ……良いんじゃないか?アタシからもお願いするからさ……」

 

 縛られた上に頭を地面に付きそうなところまで下げているレオナールを哀れに思ったのかジゼルがそう言いだす。

 

「……仕方がないな」

 

 クライドはそう結論を出す。

 レオナールの戦う理由はクライドにも痛い程理解出来る。

 尤も、若干のベクトルは違うだろうが、それは些細な問題になる。

 

「本当ですか!」

 

 クライドがそう言うとレオナールが頭を上げる。

 

「ジゼルは俺が使っていたジェノアス・キャノンを使う予定だからそれまでジゼルが使っていたジェノアス改を予備機として一機余ってるからそれを使え、それと当分はジゼルが面倒を見ろよ」

 

 クライドはガンダムZEROが完成するまではパイロットの訓練も兼ねて、ジェノアス改の上位機種に当たるジェノアス・キャノンを使っていた。

 今後はクライドがガンダムZEROに乗り換える為、ジェノアス改よりも若干高性能なジェノアス・キャノンを使わない手はなく、ジゼルが乗る予定となっている。

 それに伴い、ジゼルが使っていたジェノアス改の一機を予備戦力としてアブディエルに置いておくつもりだった。

 クライドはそのジェノアス改をレオナールに使わせることにした。

 

「アタシが?」

「そうだ。お前がコイツの肩を持ったんだろ。だったら、最後まで責任を持てよ」

 

 クライドはそう言うが、実際はレオナールに死なれては困るからだ。

 戦力としてはそこまで期待していなくても、死なれればその戦死にクライド達の非がなくても、弟を失ったリゼットがどのような行動に出るかは考えたくもない。

 少なくともクライド達に利益がある可能性はゼロだからだ。

 そう言う意味ではレオナールは爆弾を言える。

 それも爆発すれば一発でパラダイスロストを吹き飛ばしかねないレベルの……

 だから、爆発させないためにジゼルとツーマンセルを組ませることにした。

 ジゼルは直感で戦う事が多く、レオナールとは見た感じでは正反対の性格に見える。

 そんな二人を組ませることで互いの短所を補ってくれることをクライドは願っている。

 

「でもなぁ……」

 

 ジゼルとしては、先の戦闘でレオナールを見直したとは言え、命を預けて戦えるかと言うのは別問題だが、クライドの指示である上は無下には出来ない。

 

「それに、お前が面倒を見ると言う事はコイツはお前の弟分だ。俺もお前の兄貴分としてお前を信用してコイツを任せるんだ」

 

 クライドは敢えて「信用」を強調してそう言う。

 ジゼルはクライドに信用されたり、当てにしていると言う言葉に物凄く弱い。

 基本的にクライドには従順だが、その手に言葉を使われるとジゼルはまず、首を縦に振る。

 

「そっか……そうだよな。アタシはアニキの一番の妹分だよな。そう言う事なら分かったぜ! アニキの信用に答えて、コイツを一人前のパイロットに鍛え上げてやる! 行くぞ!」

 

 クライドはそこまでは言ってないが、ジゼルのやる気に水を差すつもりも無い。

 ジゼルはレオナールの縄を解いて連れて行く。

 

「単純だなぁ……」

 

 クライドはジゼルとレオナールがブリッジから出て行くとそう言う。

 エリーゼやアルフレッドは何かを言いたげだが、下手なことを言って自分にも面倒なことを押しつけられることを嫌い何も言わない。

 

「さてと……後はジゼルに任せて次の目的地が決まった。次はウィンターガーデンだ」

「ウィンターガーデンか……次もまた厄介なところに行くんだね」

 

 アルフレッドもウィンターガーデンの噂を知っている為そう言う。

 ウィンターガーデンはサマーウォールと並ぶリゾート系のコロニーだが、クライドがわざわざ遊びに行く訳がないので黒い噂の方に関わることは明白だ。

 

「それだけの価値があるかも知れないからな」

 

 クライドはそう言うが、殆どのクルーがクライドの真意を知っている訳ではないが、アルフレッドはここで詳しい説明を求めてもそれ以上は言わないのも分かっているため、この場では追求しなかった。

 結局のところ、パラダイスロストはクライドが結成した組織で、クライドに最高決定権がある。

 それに意見出来るのはアブディエルの艦長のエリーゼや副長のアルフレッドくらいなもので、意見したからと言ってクライドが自分の意見を変えることも多い訳ではない。

 今回の目的に不服がある訳でもないため、無用な争いを避ける意味もあり、アルフレッドは敢えて意見はしない。

 

「分かったよ。準備が出来次第、ウィンターガーデンの向かうよ」

 

 アルフレッドはすぐに各部署にそれを伝える。

 アルフレッドの指示でアブディエルの艦内は慌ただしくなる。

 その1時間程で出港の準備が整う。

 その間にレオナールがアブディエルに乗艦する旨をリゼットに報告し、許可を得たクライド達はコロニー『サマーウォール』を後にして、コロニー『ウィンターガーデン』へと向かう。

 

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