機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第21話

コロニー「アーヴィン」の付近で二機のMSが対峙している。

 一機は白い装甲のMS「ガンダムZERO N」ともう一機は黒い装甲のMS「ナイトルーパー」だ。

 二機のMSは共通した模擬戦用の武器のマーカーショットを持ち、それ以外の火器は装備していない状態になっている。

 ガンダムZERO Nは左腕にシールドを装備しているが、対するナイトルーパーは元からシールドを装備していないのか右手のマーカーショットしか持っていない。

 

「この勝負に乗ったことを後悔させてあげるよ」

「そうだな。そのMSが俺の予想以上に大したことがなくてエリーゼを賭けるに値しなくて後悔することの無いことを願うよ」

 

 クライドとドミニクは皮肉を言い合う。

 

「二人とも準備は良いな」

「良いですよ」

「いつでも」

 

 アーヴィンの管制室でパトリックがそう言い二人が答える。

 すでに二人とも戦闘準備を終えて、後は開始の合図を待つだけになっている。

 

「それでは開始だ」

 

 パトリックがそう宣言すると二機は一気に機体を加速させた。

 

「まずは様子見だ」

 

 先制攻撃でガンダムZERO Nはナイトルーパーにマーカーショットを放つ。

 だが、ナイトルーパーはその巨体に合わない機動力を見せて回避する。

 

「成程……機動力は悪くないな」

 

 クライドはそう言いつつマーカーショットを連射する。

 クライドは模擬戦に勝利するだけでなく、この模擬戦でナイトルーパーの性能も同時に確認しようとしている。

 

「それでこの僕に当てれると思っているのかい?」

 

 ナイトルーパーはガンダムZERO Nからのマーカーショットを回避しマーカーショットで反撃する。

 

「旋回性能も高いな……それに射撃精度もまずまず……格闘能力も見たかったんだが、格闘戦が出来ないのが残念だな」

 

 今回の模擬戦では手持ちのマーカーショット以外の武器の使用は認められていない為、互いの機体に装備されているビームサーベルの使用はルール違反に当たるから使う事は出来ない。

 ガンダムZERO Nもナイトルーパーのマーカーショットをかわして反撃する。

 

 

 

 

 

 

 

「信じられないわ」

 

 二機の模擬戦を見てエリーゼはそう呟く。

 エリーゼの予測ではこの模擬戦はクライドの一方的な展開になると予測していた。

 エリーゼが知る限り、クライドの設計したガンダムZEROの性能は地球側のMSを遥かに凌駕し、機体性能で互角に戦えるのはヴェイガン側の限られた機体だけだと思っていた。

 だが、目の前でガンダムZERO Nとナイトルーパーは互角の戦闘を繰り広げている。

 クライドがナイトルーパーの性能を自分の目で見ようとしていることやルカインでのギラドとの損傷が完全に直って無い事を差し引いても、エリーゼの予測を裏切る展開となっている。

 その上、パトリックはナイトルーパーはクライドの父が設計したと言っていた。

 エリーゼもクライドの両親がオーヴァン襲撃時に死亡していることは聞いている。

 つまり、ナイトルーパーはオーヴァン襲撃前に設計されたことになる。

 ガンダムZEROが完全稼働したのは1年程前だと言う事を考えると、クライドの父親がクライド以上の技術者だと言う事をエリーゼは改めて認識させられている。

 

「あのMS……クライド君が独自に設計したものかね?」

「そうだけど……」

「成程……あの若さであれほどの機体を設計するとは……血は争えないと言う訳か……」

 

 パトリックはクライドのガンダムZEROを見てそう言うがエリーゼはあまり良い気がしない。

 パトリックがそう言うガンダムZEROは数年前に製造されたMSと互角の戦闘をしている。

 

「でも、あの機体は何年も前に製造されているんでしょ?なんか凄い性能だけど」

「あのMSの性能は恐らく、クライド君のMSよりも劣るだろうな」

「あれで?」

 

 目の前で互角の戦闘が繰り広げれている以上、流石にナイトルーパーの性能がガンダムZERO Nに劣っているとは考え難い。

 考えられる可能性はドミニクの技量とクライドの技量が機体性能の差を埋めているくらいだが、高いXラウンダー能力とガンダムZEROを熟知しているクライドがそうそう機体性能の差を埋められるとは考えたくはない。

 

「パイロットの腕も経験も才能もクライド君の方が上だろう」

「それはあり得ないわ。機体性能もパイロットの腕も劣っているのにどうして互角に戦えるのよ」

 

 機体性能で劣っているなら、パイロットの腕で補う、パイロットの腕で劣るなら機体性能で補う、どちらも劣るなら戦術で補うしかない。

 一対一で尚且つ、使える武器が両者ともにマーカーショットのみの模擬戦で高度な戦術が使えない以上、機体性能もパイロットの腕も劣っているドミニクがクライドと互角に戦えるなどあり得ない。

 模擬戦を見る限りでは性能差やパイロットの技量差を埋めるシステムや武器を使っている訳でもない。

 

「エリーゼはあの白いMSに乗って戦えるかね?」

「無理よ。そんなのゼロはクライドにしか扱えなかったわ」

 

 エリーゼは質問の意図は分からないが即答する。

 エリーゼのみならず、パラダイスロストでガンダムZEROをまともに操縦出来るのはクライドくらいしかいない。

 それは機体性能を突き詰めた結果、非情に操縦が困難となり機体の事を知り尽くしているクライドにしか扱えないMSとなってしまっていた。

 

「だが、そんなお前でもあのナイトルーパーならば、ある程度の戦闘は可能だろう。それが答えだ」

「訳わかんないわ。私はMSの操縦なんて無理よ」

 

 エリーゼもパラダイスロストの結成時には一通りの適正を見るためにいろいろと試した。

 MSの操縦もその中の一つにある。

 だが、その結果は散々で技術者であった当時のクライドの方がよっぽど戦力として数えられる程だった。

 

「確かに、クライド君の白いMSは優秀だ。だが、あのMSを扱えるのが彼だけだと言うのなら、それが今の彼の限界だ。しかし、ナイトルーパーは操縦方法さえ覚えれば誰でもある程度は戦える。その上、ある程度の能力を持っていれば、見ての通り機体性能もパイロットの能力で上回る相手と互角に戦える。その差を埋めるところが今のクライド君とアスノの差と言う訳だ」

 

 つまりはナイトルーパーは確かに高性能だが、それ以上に機体の操縦性能に秀でていることだ。

 素人が乗ってもある程度は戦え玄人が乗ればエース機になる。

 量産を目的とすればクライドのガンダムZEROよりも理想的なMSと言えるだろう。

 

「だとしても、クライドは負けないわ」

 

 例えそうだとしてもクライドにはXラウンダーの能力があり、今までヴェイガンとの激戦を行きぬいた経験がある。

 その為、エリーゼはそう断言して二人の戦いを見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外にやる」

 

 クライドは当初はナイトルーパーの性能を確かめる戦い方をしていたが、ある程度の性能は理解したため勝負を付けに行ったが、思うように行かない。

 

「性能はこちらが上の筈……」

 

 戦いの中でナイトルーパーの機動力や旋回性能、加速力などは把握している。

 直線的な加速や速度では若干ナイトルーパーが上回っているが旋回性能ではガンダムZERO Nを下回り総合性能ではガンダムZEROの方が上だと判断しているが、現実は一向に勝負を付けることが出来ずにいる。

 

「何か特殊なシステムを積んでんのか……それともパイロットの差か……どちらにせよ、少し強引な手を使わせて貰う」

 

 クライドはそう言って機体をナイトルーパーに突っ込ませる。

 

「無駄だよ。変わったMSだけど僕には勝てないことを知ったらどうだい?」

 

 ナイトルーパーはマーカーショットを連射して、ガンダムZERO Nはシールドで防ぎつつ速度を緩めない。

 そして、シールドを掲げてホロサイクロプスに激突した。

 

「ぐっ! 卑怯な!」

「ルールには反してないぜ」

 

 ルール上マーカーショットのみを武器として使用することが出来る。

 クライドのとった行動は一見、ルール違反に見えるがシールドは防御用として装備している上にクライドの行動は単に相手に突っ込んだだけで攻撃した訳ではないと言い張ればルール違反に取られることはない。

 その代わりにマーカーショットによる攻撃ではないため、ポイントには加算されず勝負には影響しない。

 だが、ガンダムZERO Nの体当たりで体勢を崩したナイトルーパーにマーカーショットを撃ちこんだ。

 

「まずは一発」

 

 クライドは続けてマーカーショットを放とうとするが横槍が入り断念し飛んで来るビームをシールドで防ぐ。

 

「何だ!」

 

 その攻撃はナイトルーパーやガンダムZERO Nの物でもなく周囲のMSを配置させていない。

 その上、下手をしたらどちらにも当たる攻撃であった為、どちらかの伏兵と言う訳でもない。

 

「あれは……UE!」

 

 二人が攻撃の主を探すとビームライフルが構えたガフランが三機、二人の方に向かって来ていた。

 

「あれが……UE……」

 

 ドミニクは初めて見るガフランに今までニュースなどで報道されていたヴェイガンの被害を思い出して、少しビビっている。

 

「こっちには出ないんじゃなかったのか!」

 

 クライドはそう言いながらも機体をアーヴィンに向ける。

 どう言う訳かこの辺りにヴェイガンが出現することはない為、ドミニクのようにヴェイガンのMSをニュースなど以外で見た事のある人は少ない。

 

「何処に行くつもりだ?」

「決まってんだろ。逃げる」

 

 クライドはそう言い残してアーヴィンの港に向かう。

 

「所詮は腰抜けか……」

 

 逆にドミニクのナイトルーパーは三機のガフランに向かっていく。

 

「今までは余所で好き勝手に暴れてたみたいだけど、この僕を相手にそうはさせない」

 

 ナイトルーパーはマーカーショットをガフランに放つ。

 ガフランは腕で防ぐが、マーカーショットの着弾時に流れる微量の電撃ではガフランには効果がない。。

 

「無傷か……だからと言って警備隊隊長の僕が逃げる訳にはいかない!」

 

 ナイトルーパーはマーカーショットを捨ててバックパックのロングビームサーベルを抜いた。

 ナイトルーパーに装備されているロングビームサーベルはガンダムZERO Nのビームサーベルに比べて攻撃力は小さいがその分、ビーム刃の長さが長く形成されている為、間合いが長い。

 ナイトルーパーはロングビームサーベルでガフランに切りかかるが、ガフランは散開してビームバルカンで応戦する。

 ナイトルーパーの装甲はジェノアスなどに比べて厚い為、ガフランのビームバルカンの直撃ではそうそう破壊されない。

 

「これが……UEなのか……」

 

 だが、ナイトルーパーの装甲も無限ではなく、ビームバルカンの集中砲火で次第に装甲が削られていく。

 成す術も無く死を待つばかりだったが、一機のガフランをビームが貫き爆発する。

 

「生きてるな」

「アスノ……」

 

 ナイトルーパーのモニターにはビームライフルとビームサーベルを装備して来たガンダムZERO Nが映されている。

 クライドは単に逃げた訳ではなく、装甲の修理が万全でないのでビームサーベル二基でガフランを相手にするのを避ける為に一度戻ってビームライフルを装備して戻って来た。

 

「後は俺の任せとけ」

 

 ガンダムZERO Nは残りのガフラン二機にビームライフルを放ち牽制する。

 ガフランはビームをかわしながら、攻撃対象をナイトルーパーからガンダムZERO Nに切り替えてビームライフルで反撃を開始する。

 ガンダムZERO Nはビームをかわしながら、ビームライフルで二機目を撃墜する。

 そして、ガンダムZERO Nはビームサーベルを抜いて最後の一機に接近する。

 ガフランは拡散ビーム砲を放つが、ガンダムZERO Nはシールドを掲げて防ぎながら更に接近する。

 ガフランはビームサーベルを展開して向かえ撃つが、ガンダムZERO Nはビームサーベルを展開していた腕をビームサーベルで切り裂き、そのまま横 に一閃してガフランを両断した。

 

「終わったようね」

「ああ……どうやら、三機だけのようだ」

 

 クライドは増援や伏兵がないか警戒するが周囲に敵の気配はない。

 今回の襲撃はガフラン三機で行われたようだ。

 クライドは先の戦闘でもギラドが出て来たが、今回は出て来なかったので心底安心した。

 流石にまたギラドと戦いたくはない。

 

「そう……こうなった以上、模擬戦は中止ね。二人とも戻って来て」

「そのようだな」

 

 こうして、模擬戦はヴェイガンの介入により中断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさま」

 

 模擬戦が中止されて、クライドとドミニクはアーヴィン内の警備隊のMS格納庫に機体を戻して機体から降りて来た。

 

「全くだ」

 

 クライドは軽口と叩くが、ドミニクの顔は暗い。

 模擬戦ではクライドと互角に戦ったが、その後のガフランとの戦闘ではまるで歯が立たなかった上にそのガフランをクライドはビームライフルを装備して来たとはいえ、いとも簡単に落として見せた。

 クライドを見下していたドミニクとしては屈辱的だったが、その事実を認めない程ドミニクも愚かではない。

 

「取り合えず、俺の勝ちで良いよな」

 

 クライドはドミニクにそう言い、ドミニクも返すことが出来ない。

 模擬戦自体は中止でもクライドはガフランを3機撃墜し、自分はただ攻撃を耐える事しか出来ていない。

 その結果からも負けを認めるしかないが、素直に負けを認めたくもない為、黙っている。

 

「決まりだ。約束通りコイツは俺が貰っても良いよな?」

「ああ……約束だったからね」

 

 ドミニクに代わりパトリックが答えると、クライドは新しい玩具を与えられた子供のようにはしゃぐ。

 

「おっしゃ! 性能も中々だったし、改造のし甲斐もある。どうするかな……」

 

 クライドが手に入れたナイトルーパーをどうするかで、一人ははしゃぐ。

 

「ところでさ、この機体……父さんが設計したんだよな?」

 

 クライドは突然、我に帰るとパトリックに質問する。

 

「そうだが」

「コイツの他に父さんが設計したMSはあるのか?」

 

 父が設計し、自分の知らないMSがここに存在することは他にも自分の知らないMSがあってもおかしくはない。

 

「私は聞いた事がないな……」

 

 それを聞いてクライドは落胆するが、新しいMSを手に入れた事だけで良しとした。

 パトリックが知らなくとも存在する可能性がない訳でもなく、その可能性があるだけで今後の航海の楽しみにもなる。

 

「さて……エリーゼ争奪戦も落ち着いたところで、話を大きく戻す。私が強引な手段を使ってでも君の行方を捜していた理由だ」

「そう言えば……」

 

 二人は屋敷に乗りこんで、誤解を解こうとした時にパトリックがクライドと速く見つける必要があったと言っていたことを思い出す。

 

「実は君に届ける物がある。ついて来なさい」

 

 パトリックはクライドとエリーゼを連れて、MS格納庫を出て行く。

 そして、二人はコロニーに地下に連れて行かれる。

 地下には膨大な数の倉庫が並んでいる。

 アーヴィンの地下にはブランシャール運送が預かっている荷物が管理されている倉庫街があり二人はそこに案内されていた。

 

「本来は6年前の偶然にも今日に君に届ける筈だった」

 

 倉庫街の一つの倉庫の前でパトリックは立ち止まるとクライドにそう言う。

 

「6年前の今日?」

 

 偶然にもアーヴィンに戻った日と配達の日が重なっている事に運命的な物を感じつつもクライドはなぜ、今日に届けるのかを考える。 

 

「そうだ。オーヴァンがあんなことになり結局、届けることが出来ないと思っていたが、ようやく届けることが出来たよ」

 

 パトリックにとって、請け負った仕事が果たせないままでいたが6年も伸びたがクライドに荷物を届けることが出来て満足そうにそう言う。

 

「クライド、6年前の今日って何がある日だったの?」

「6年前が特別に何かある訳じゃないが、よくよく考えると今日って22の誕生日だわ」

 

 クライドの中で今日が何の日かを考えると自分の誕生日くらいしか思いつかない。

 その荷物がクライド宛てだと言う事を考えるとその荷物がクライドへの誕生日プレゼントだとすれば説明がつく。

 尤も、それをブランシャール運送に配達させるように手配していたのかまでは謎のままだ。

 クライドがあっさり言い、エリーゼはクライドに詰め寄る。

 

「どう言う事よ! 私は知らないわよ!」

「言ってないし、聞かれなかったからな」

 

 クライドはやはりあっさりと言う。

 実際、クライドにとってオーヴァン襲撃のあの日以降、誕生日を祝う事も無くアーヴィンを出てからもそこまでの余裕はなかった。

 

「今日で22だから6年前と言うと16の誕生日か……」

「開けるぞ」

 

 パトリックが倉庫のロックを解除して、倉庫を開けると中にはMSのパーツらしき物が多数置かれている。

 

「凄い数ね……」

「ああ……ここは宝の山か……」

 

 クライドは中を見て興奮気味にそう言う。

 エリーゼは何が良いのか分からないが、クライドにとってここにあるパーツの一つ一つがまるで宝のように思える。

 

「この倉庫はアスノ家が所有している。君宛の荷物はこっちだ」

 

 パトリックは倉庫の中を更に進み、エリーゼも続きクライドは目を輝かせながら周りをキョロキョロと見ながら続く。

 

「これだ」

「これが……」

 

 二人が連れられて来たところは何かのパーツが置かれている。

 

「バラバラよ」

「預けられた時からこうなっている。コイツがこれの設計図らしいが、いろいろと抜けているところがあるらしい」

 

 パトリックがパーツの近くに置かれている端末をクライドに渡すとクライドは端末を確認する。

 

「そこには確かに設計図が書かれているが、ところどころが書かれていない」

「バグ?」

「違うな……確かにこの設計図は何かが足りない。だけど、抜けている場所は他の場所と部品を見れば埋めることは可能だ……つまり、父さんはこの設計図を見てコイツを組み立てろ。その位出来ないとコイツを受け取る権利はないって言いたいんだろうな」

 

 クライドの言う通り素人目には分からないが、MS鍛冶としての知識があるのなら抜けている場所は推理することは不可能ではない。

 何らかの理由で設計図の一部のデータが壊れたにしては壊れた個所が都合が良過ぎる為、始めから書かれていないと見た方が自然で、その理由はクライドのMS鍛冶としての能力を試すためと思われる。

 

「出来そうなの?」

「当たり前だ。社長さん、ここの機材を使わせてくれ」

「構わんよ」

 

 パトリックの許可が出た為クライドはすぐに組み立てに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クライドが組み立てに入り数日が経っている。

 その間にクライドの指名手配が冤罪であったことが、正式に各コロニーに伝えられパラダイスロストも無事にアーヴィンに入港している。

 

「出来た……」

 

 クライドはこの数日殆ど不眠不休で作業をしていたがようやくそれが形になった。

 

「出来たの。クライド」

「エリーゼか……ああ、コイツだ」

 

 クライドの目の前には数日前まではただの部品だった物が三つの塊に変化している。

 大きさはMSと比べれば差ほど大きくないが、MSとは形が違い武器のようにも見えない。

 

「これ何?」

 

 エリーゼにはそれがただの塊にしか見えない。

 

「コイツはMSに搭載する動力炉だ」

「これがね……」

 

 そう言われてもエリーゼには実感がわかない。

 MSの動力炉と言っても従来のMSに搭載されている物すらエリーゼは良く見た事はない。

 

「そうだ。コイツは凄いぞ! 従来のMSと比べて出力が格段に高い!」

「なんか凄そうね」

 

 クライドの興奮振りからするに相当な代物である事だけはエリーゼにも分かる。

 

「でも、その凄いのを組みたてたクライドも相当凄いのよね」

「まさか……父さんはコイツを16の俺の送るつもりだったんだ。22の俺が組み立てられない訳がない。それに組み立てながら、コイツの構造とかも調べたが、周囲の構造はともかく、コイツの核……コア部分の構造も理論もさっぱりだ」

 

 クライドは首を横に振りながら悔しようにそう言う。

 ナイトルーパーと言い、この動力炉「AGEドライヴ」と言い、クライドの父は数年前に開発している。

 特にAGEドライヴの動力炉のコア部分はクライドでも良く分からない。

 あれから数年経つが未だに父を超えていない事を改めて実感させられる。

 

「だから、このAGEドライヴは周囲のパーツはともかく、コア部分の量産は現状では不可能だ。つまり、この三基が全部壊れたらお終いって訳だな」

「それで、この……AGEドライヴだっけ? これをどの機体に搭載するの?」

「そうだな……取り合えず俺のゼロに搭載する。残りの二基は予備だ」

「他の二基は搭載しないの?」

「まずはAGEドライヴを搭載したMSのデータが欲しい。そのためにも全てをMSに搭載して事故とかで全てを失う訳にはいかないからな」

 

 クライドにとってAGEドライヴは未知の動力炉であり、まずはそのデータ収集が先決とされる。

 その過程で事故が起こる可能性はクライドでも全く予想が出来ない。

 だから、全てのAGEドライヴを使う事は避けたかった。

 

「その辺りの判断はクライドに任せるわ」

「さてと……AGEドライヴも完成したことだ。さっそくコイツをゼロに搭載するか……ついでにここの物も使ってゼロの完全修理をさせてもらうとするか……」

 

 この倉庫内の物は全てアスノ家の所有している物であり、アスノ家の跡取りでもあったクライドはすでにパトリックから倉庫内の物を自

 

由に使う許可も得ている。

 クライドがここに来るまでに見た限りではここに置かれている物は相当な代物ばかりでそれを使えばガンダムZEROを修理だけでなく強化することも十分可能と踏んでいる。

 これからの戦いでパラダイスロストのエース機であるガンダムZEROは幾ら強化しても困ることはない。

 そのため、AGEドライヴを組み立てながらも、ガンダムZEROの強化プランも練っていた。

 

「さぁて……ここからが本番だ。エリーゼ、エミリオを呼んで来い。ここからが本番だ」

 

 クライドはここ数日間の作業の疲れを見せることなく、これ以上ないハイテンションでエリーゼにそう言い、ガンダムZEROの改良を始め

 

た。

 

 

 

 

 

「見つけたのか?」

 

 ブラッドはアブディエルを発見した可能性があると聞き、戦闘艦のブリッジに上がって来た。

 

「可能性のレベルよ。数日前にアーヴィンに送った斥候のガフラン三機の信号がロストしたわ」

「つまり、奴らにやられたと言う事か」

 

 ガフランの信号がロストしたと言う事は破壊された可能性が高く、それが可能で尚且つアーヴィン方面にいる勢力はアブディエルである可能性が非常に高い。

 

「そう言う事ね。それでどうする? すでにギラドの修理は終えてるわよ」

「そうだな……二週間くらい待つ」

 

 ブラッドから返って来た言葉は以外な言葉だった。

 セリアはてっきり、今すぐにでもブラッドは出て行くと思っていた。

 

「どう言う風の吹き回し?」

「そんなのは決まっているだろ。前の戦闘でかなりの損傷を与えたあれだけの損傷が数日で完全に直せる訳がない。だから、直す時間を与えるんだよ」

 

 ブラッドにとっては完全な状態でないガンダムZEROとクライドを倒しても意味はない。

 だから、完全に出来るまで待つと言う。

 セリアからすればガンダムZEROが手負いの内に始末しておきたいが、それをすればブラッドが黙っていない。

 

「分かったわ……好きにして頂戴。私は私でやる事もあるから」

「やることな……どうでも良いが、クライドとの戦いの邪魔になるのなら……お前でも殺すぞ」

 

 ブラッドなら冗談ではなく本気でやりえる為、セリアも気が気ではないが、やることとはクライドとは無関係とは言えないが、直接関係する物でもない。

 

「そんなことは分かってるわ。貴方の邪魔はしないわよ」

「だったら良い」

 

 ブラッドはそれ以上、現在の状況に興味はないのか、ブリッジで出て行く。

 

「ハァ……あの性格はどうにかならないかしらね」

 

 セリアはそう呟き行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

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