機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第22話

ガンダムZEROの改修作業が始まり一週間が経っている。

 その間にルカインで損傷したMSは大破したジゼルのジェノアス・キャノン以外の修理を終えている。

 そして、ガンダムZEROはアーヴィン内の施設で改修作業が続いている。

 このアーヴィンにもマッドーナ工房には劣るが充実した機材が揃っており、改修作業だけなら十分に可能となっている。

 

「随分と大がかりな作業をしてるわね」

 

 作業に集中していたクライドにエリーゼが声をかける。

 クライドはこの一週刊の間アブディエルには戻らずにここで作業をしている為、度々エリーゼが様子を見に来ている。

 今はガンダムZEROのフレームに手を言われている為、ガンダムZEROの装甲が取り外されている。

 

「今はフレームを弄ってる。これが終わればゼロの駆動系の反応が計算では1.5倍程早くなる」

 

 エリーゼは何をしているかは分からないが、クライドの口ぶりからするにガンダムZEROの性能の向上に繋がると言う事だけが分かれば良い。

 

「ふーん」

「それけか?」

 

 クライドはエリーゼの反応に不満を持つ。

 すでにガンダムZERO自体はMSとしての性能はある種の限界にきている為、大き改造をすることなく機体性能を向上させる事がどれほど凄い事なのかエリーゼは理解していないからだ。

 

「それって凄い事なの?」

「まぁな……コイツのお陰だ」

 

 クライドはAGEドライヴとは別にパトリックから渡された端末を見せる。

 

「何それ?」

「これはな。兵器技術のデータが詰まってる。それもコロニー国家間戦争時に使われた技術だ」

「コロニー国家間戦争の? そんなに古いデータが役に立つの?」

「立つよ。あの戦争後に銀の聖杯条約で兵器のデータの大半が廃棄された。MS鍛冶の間で技術の継承やビッグリングにその時のデータが残されているが、それは当時の技術のほんの一端に過ぎない。この中のデータにはそれとは比べ物にならない技術が残されていた」

 

 クライドの物言いから緊張感が漂って来る。

 つまりはそれほどの技術がその端末に記されていると言う事だ。

 

「それは全て再現すれば、UEとの戦いに勝つ事が出来るんじゃないの?」

「出来たらな……幾ら、データがあってもそれを再現出来る技術や機材、材料がなければ意味がない。少し目を通したが、今の技術で再現出来るのは1割にも満たない。それにこの中の兵器の技術を全て再現して使えば世界を何度も滅ぼせる。良くもまぁ、こんな兵器を開発して昔の連中は滅びなかったもんだよ」

 

 クライドは軽く言うが内容はとんでもない事を言っている。

 今は再現することが無理でも一度は可能だったと言う事はいつかはその当時の技術に追いつくこともあり得る。

 そうなった時、クライドが持っている端末は恐ろしい価値となるだろう。

 

「これはアスノ家が代々、受け継いで来た物の一つだろうな。全く……面倒な物を受け継がされたよ」

 

 アスノ家には代々受け継がれている物がいくつかある。

 クライドの知る限りではアスノ家の代々の研究成果などが記録されているメモリーユニット『AGEデバイス』くらいだが、AGEデバイスはいずれはクライドが受け継ぐ筈だったのだが、その前にオーヴァンが襲撃にあい、AGEデバイスは行方知れずとなっている。

 そして、この端末には過去の戦闘で開発された兵器のデータが記録されている。

 

「まぁ、そのお陰でゼロの強化が可能だったんだけどな」

 

 クライドは端末の中からここの設備でも再現可能な技術を選び、ガンダムZEROに使っている。

 その甲斐もあってAGEドライヴを搭載するだけでなく、基本性能を全体的に向上させる事に成功した。

 

「MSに使える技術はともかく、戦略兵器のデータとかはいらないんだけどな……」

「だったら、いらないデータは消しちゃえば?」

「それが出来たら苦労はない」

 

 エリーゼの言っている事は尤もだが、それが出来ない理由があった。

 クライドの持っている端末は外からの干渉は内部のデータの表示以外の干渉一切受けないようになっている為、特定のデータのみを消すと言う事が出来ない。

 その為、内部のデータを消すためには端末自体を破壊しなければならない。

 だが、それをしたら他のデータも消える。

 他の端末にデータを残そうとしても、クライドが必要なデータの量が膨大過ぎる為、移すには時間もかかりそれだけのデータ量を残しておけるコンピュータを用意すると相当な大きさになってしまう。

 それ以上のデータを蓄積しているこの端末は相当なレベルの技術で作られていると言っても良い。

 少し見た限りではAGEドライヴのコアと同じく現在の技術を大きく超えたオーバーテクノロジーが使われている可能性が高く、端末を破壊すると言う事はその技術を失わせると言う事になる。

 技術者としてはその技術の解析が終わる前に端末を破壊することはあり得ない。 

 例え、端末の存在が世界の命運を分けるかも知れなくなる可能性を孕んでいてもだ。

 

「まぁ、それの扱いはクライドに任せるわ。この様子だと外に出る気はないようね」

「ない」

 

 クライドは考える事なく即答する。

 今のクライドにとって、世界の命運よりもガンダムZEROの改修作業の方が優先されるであろう。

 

「分かってたけどね……」

「どこか行くのか?」

「久しぶりの故郷だからね。色々とね」

 

 クライドにとっては面倒事の発端のコロニーだが、エリーゼにとっては生まれた故郷のコロニーだ。

 当時は社交性ゼロでコロニー内に特定の友人や知人のいないクライドとは違い、コロニーに友人や知人もいるだろう。

 

「まぁ、好きにしたら? 俺はゼロの改良で忙しい」

 

 エリーゼはクライドの興味のないような素っ気ない言い方にイラっとする。

 

「私さ、結構男友達とかもいるのよ」

「友達が多いのは良い事だ」

 

 『男友達』を強調して言うがクライドは反応しない。

 

「久しぶりだから、連絡とって見ようかな」

「良いんじゃないか」

 

 それでもクライドは反応しない。

 

「昔と違ってお酒も飲めるしね」

「ほどほどにな」

「ひょっとしたら飲み過ぎて朝帰りになるかも」

「相手方にあまり迷惑をかけるなよ」

 

 流石にここまで無反応になるとそれ以上は何も言わずにエリーゼは出て行く。

 

「何だったんだ?」

 

 若干、怒り気味で出て行ったエリーゼを見て首を傾げる。

 

「あれは流石に師匠が悪いですよ」

 

 事の一部始終を見ていたエミリオがそう言う。

 エミリオにはエリーゼがどうして欲しかったのかは何となく分かる。

 

「どう言う事だ?」

「つまり艦長は師匠にやきもちを焼いて欲しかったんですよ」

「やきもちねぇ……」

 

 エリーゼがやたら男友達を強調したのも、自分がクライド以外の男に会うと言う事でクライドにやきもちを焼いて欲しかったが、クライドは全く反応しないのだ、エリーゼが怒るのも無理はない。

 

「師匠も艦長が別の男に取られるのは嫌じゃないんですか?」

「別の男ね……それ以前にあの暴走女とまともに付き合える男は宇宙広しといえども、俺くらいだぞ? 多分UEでも無理だな」

「自分で言いますか……」

 

 エミリオは一点の迷いも無く、そう言い切るクライドに清々しさすら覚えた。

 要するにクライドはエリーゼを他の男に取られる事など微塵も感じていないからやきもちを焼かなかったと言う事だ。

 尤も、だからと言ってエリーゼの乙女心とは別の話だ。

 その辺りの事は天才的なMS鍛冶のクライドでも分からない領域なのだとエミリオはしみじみと感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ジゼルさん……そろそろ出て来た方が……」

 

 レオナールはジゼルの部屋の前でそう言う、ルカインを脱出してすでに一週間以上が経つが、ジゼルは部屋に籠ったままだ。

 定期的に食事を運ぶがジゼルと顔を合わす事なく、一言二言声をかけるだけでレオナールは部屋の前から立ち去っている。

 少しすると部屋の前に置いておいた食事がなくなっている事から、ジゼルは食事を摂っている事は確かだが、いつまでもこのままにしておく訳にも行かない。

 頼りのクライドはガンダムZEROの改修作業で忙しいらしく、ジゼルの元を一度も訪ねてはいない。

 ジゼルを気にする様子のない態度が少し冷たい気もするが、クライドはクライドが今すべきことをしているのだと自分に言い聞かせ、レオナールは根気強く、ジゼルに扉越しで話かける。

 それがレオナールの今すべきことなのだと考えたからだ。

 

「僕はアレクさんの事は分かりませんが、ジゼルさんがこのままではいけない事は分かります」

「うっせぇよ……」

 

 部屋の中からジゼルがそう言うが、いつもとは声の雰囲気が違いまるで覇気がない。

 

「アレクが死んだらアタシの戦う理由も生きる理由もないんだよ……」

「そんなことないですよ……ジゼルさんが居なくなったら僕はどうするんですか……」

「んなもんはお前の理由だろ……アタシには関係ない」

 

 レオナールは沈んでいるジゼルを立ちなおせる方法など思いつかない。

 下手に取り繕っても、ジゼルの心には届かない。

 

「関係大ありですよ! ジゼルさんはクライドさんに僕の事を任されたんじゃないですか! 僕はまだ一人前のパイロットとはとても言えませんよ! このままじゃ、僕は皆の足を引っ張りますよ! だから! 僕にはジゼルさんが必要なんです!」

 

 レオナールはとにかく叫んだ。

 後半辺りは自分でも何を言っているかは覚えてないがとにかく叫んだ。

 叫ぶしか今のレオナールには出来ないからだ。

 

「僕が言いたい事はそれだけです!」

 

 レオナールは一通り叫ぶとジゼルの部屋の前から顔を真っ赤にして走り去る。

 

「アタシにどうしろってんだよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 アーヴィンの町の一画でユーリアは困り果てていた。

 エリーゼが町に出るに辺りユーリアも一緒に町に出て来ていた。

 エリーゼは友達を会うと言っていたが、その間ユーリアはエリーゼから重要な任務を任されていた。

 それはアブディエル内で必要な物資の調達である。

 その物資とは甘味である。

 それの長い後悔でも腐らない物を買って来るように頼まれている。

 エリーゼは長い航海では精神的な負荷を軽減するために甘い物を摂る事があり、ユーリアも度々ともに食べる事がある。

 糖分を摂る事は頭を使う艦長職では重要な事で、最悪アブディエルのクルーの生死にかかわると言われている。

 それを調達することは非常に重要な任務と聞かされていた。

 ユーリアはそれを真に受けているが実際はエリーゼのおやつの買い出しであることをユーリアは気づいていない。

 ユーリアはMSパイロットとしては非常に優秀だが、それ以外の一般常識は片寄りが激しい。

 それを解消するためにエリーゼはユーリアにお使いを頼んだのだった。

 

「……何処?」

 

 そうとは知らず、ユーリアは幼いながらも使命感に燃え、任務を遂行しようとしていたが、町に出て様々な障害が発生している。

 エリーゼに頼まれた物を買う事の出来る店の場所は地図を書いて貰っていた。

 だが、肝心のユーリアは地図の見方など知る訳も無く、大通りに出て立ち往生していた。

 普通なら、周りの大人に聞くなりすれば良いが、ユーリアはこれを重要任務と思っている為、下手に大人に聞いて任務の情報を漏らす訳にはいかないと思い聞けずにいた。

 

「どうしたの?」

 

 不意の背後から声がしてユーリアは声の方を見る。

 そこにはユーリアと同い年くらいの赤毛の少年が立っている。

 

「迷子にでもなったの?」

 

 少年はユーリアにそう尋ねるがユーリアは首を横に振る。

 

「地図の見方を知らないから、目的の場所に辿りつく事は出来ないだけ」

 

 一般的にそれを迷子と言うのだが、少年はユーリアの地図を覗き込む。

 

「この場所なら僕知ってるよ。案内しようか?」

 

 少年はユーリアにそう言う。

 ユーリアは情報漏洩の危険性を考えたが、相手は少年である為敵性はないと判断してコクンと頷いた。

 そして、ユーリアは少年の案内で無事にエリーゼに頼まれていた物を手に入れる事が出来た。

 

「良かったね。買えて」

「うん」

「それでまだ時間ある? 良かったら僕ともう少し遊ばない? 折角友達になったんだしさ」

「友達……」

 

 ユーリアにとってそれは初めての事だった。

 当然の事だが、アブディエルにユーリアと同年代は乗っていない。

 今までは闇バトルで戦う事しか出来なかった為、ユーリアには同年代の友達はいないのは当然の事だ。

 クライドに拾われてからの航海でもコロニー入港しても騒ぎの連続でまともに友達を作る機会はなかった。

 つまり、彼がユーリアにとって初めての友達と言う事になる。

 

「僕、面白い遊びを知ってるからさ……君も気にいると思うよ」

 

 少年がそう言うが、ユーリアは首を横に振る。

 

「……駄目。船に変えるまでが任務だから」

「そっかぁ……だったら、また別の日なら遊べるんだよね?」

「……うん、いつまでいるか分からないけど」

 

 クライドがいつまでアーヴィンにいつかはユーリアには分からない為、少年の言う別の日にユーリアが居るかは不明だ。

 

「じゃぁ、また遊ぼうよ。僕はデシル。君は?」

「ユーリア」

「それじゃ、ユーリア、また遊ぼうね」

「うん……またね」

 

 アブディエルに戻ろうとするユーリアにデシルは手を振り、ユーリアも慣れない手つきで手を振りながら帰っていく。

 

「そう……また、すぐに会えるよ。その時はいっぱい遊ぼうね」

 

 そう言うデシルの顔を先程までの年相応の少年らしい笑顔ではなく、酷く歪んだ笑顔だった。

 

「随分と楽しそうだったわね」

 

 完全にユーリアが見えなくなると、セリアが出て来る。

 セリアはいざと言う時の為に二人を尾行していた。

 デシルがユーリアに声をかけたのは決して偶然ではなく、以前にウィンターガーデンに行った時は一足違いだった為、ユーリアに接触を

 

試みた。

 その際にセリアよりも歳の近いデシルの方がユーリアも警戒しないと考えてデシルを接触させた。

 その後はそれとなく連れ出すつもりだったが、それは失敗に終わった。

 

「まぁね。ユーリアは結構かわしいしね」

「ああ言う娘が好みなの?」

「さぁね。でも、ユーリアとだったら、きっと楽しい戦いが出来ると思うな」

 

 デシルはそれが楽しみにして無邪気な顔をするが、それが逆にセリアを不安にさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブラッドが与えた猶予期間が終わるころ、アーヴィンに数隻のダーヴィン級の戦艦が接近していた。

 無論、連邦軍の戦艦ではない。

 すでにMSが展開している為、それを察知したアーヴィン側でも非常事態が発令されている。

 

「全機、奴らの目的が分からない以上、油断はするなよ」

 

 ドミニクはMSに乗り、部下にそう言う。

 ドミニクはクライドとの賭けでナイトルーパーを失っている為、専用にカスタムしたジェノアスに乗っている。

 クライドがガンダムZEROの改修作業の息抜きにカスタムしたジェノアスである。

 通常のジェノアスに右肩にキャノン砲を装備し、左肩にはミサイルポッド、手持ちの火器には大型のガトリング砲、左腕には通常のシールドを装備、機体の全体に追加の装甲を追加したクライド命名でフルアーマージェノアスだ。

 アーヴィンの防衛隊のMSと所属不明のMS隊との間に緊張が走る。

 そして、所属不明の一団のダーヴィン級からミサイルが放たれた事から所属不明の一団は敵性勢力だと判断された事により戦端が開かれた。

 

「全機迎撃! 奴らをアーヴィンに近づけさせるな!」

 

 ドミニクの掛け声とともに放たれたミサイルを一斉に迎撃する。

 ミサイルは全機迎撃され、MS戦に突入する。

 

「アスノにUEの次は所属不明のMSの襲撃! どうなってるんだ!」

 

 ドミニクはそう言いながらもガトリング砲を放ち、近くのジラは蜂の巣になる。

 

「だが、UEに比べればお前たちなど!」

 

 クライドとの模擬戦で初めてUEとの戦いを経験したドミニクにとってジラの機体性能の性能差は驚異に感じられなくなっていた。

 それ故に落ち着いて対処が出来、敵をアーヴィンに接近する前に撃墜が出来ている。

 

「隊長! 敵の中に一機だけ強い奴がいます!」

「あのジラか!」

 

 ドミニクは敵のジラの中に一機だけ異様に強いジラを見つける。

 両肩にL字のシールドを搭載し、武器は両手のヒートホークだけだが、防衛隊のジェノアスの攻撃を簡単に避けて接近するとヒートホークの一撃で撃破している。

 ドミニクはそのジラに左肩のミサイルポッドからミサイルを一斉掃射する。

 火器を持たないジラはミサイルから逃げるが途中で他の機体や友軍機に当たりミサイルはジラに届く事なく全滅した。

 

「アイツ……狙ったのか!」

 

 そのジラは火器を持ってない為、迎撃することが出来ないがミサイルを上手く誘導して自分以外の別の何かに当てる事でミサイルに対応したとなれば、あのジラのパイロットは相当な腕を持っている。

 

「アイツが隊長機か……」

 

 それだけの腕を持っているとなれば敵の隊長機である可能性は高く、そうでなくともあのジラは自分でないと抑える事は出来ないだろう。

 FAジェノアスはキャノン砲を放ち、ジラに向かう。

 

「ほう……重装甲タイプのジェノアスか……金を持ってるところは装備も良いもん持ってんじゃねぇか……」

 

 ゲルマンはそう言って、キャノン砲を回避し、FAジェノアスに突っ込む。

 

「悪いがクライアントの要望でね。アンタ達には恨みはないが、準備運動をさせて貰うさ」

 

 ゲルマンのジラはFAジェノアスに接近すると、ヒートホークを振るう。

 ヒートホークはFAジェノアスのガトリング砲を切断し、FAジェノアスはガトリング砲を手放してヒートステックを抜いた。

 

「くっ……コイツ!」

 

 FAジェノアスはヒートステックを突き出し、ジラはヒートホークで受け止める。

 

「少しは出来るようだな……だが、ここまでだ」

 

 ジラはFAジェノアスを蹴り飛ばす。

 そして、止めの一撃を入れようとするが、戦場全体にビームの雨が降り注ぐ。

 

「何だ……敵の増援か?」

「伏兵が居たのか?」

 

 ゲルマンもドミニクも自分達の友軍でない為、敵だと思っていたが、それは違った。

 攻撃はどちらに加勢することなく、両軍に攻撃を加えている。

 

「隊長! UEです! UEが攻撃を!」

「ボス! UEが出やがった!」

 

 それは最も最悪な報告だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「UEが出たの?」

 

 アブディエルにもその報告は来ていた。

 相手が所属不明の部隊だった為、アブディエルには関係のない事だと言われてMSの出撃はしていなかったが、最悪の事態に備えて戦況を常に確認して待機はしていた。

 

「数は戦場が混乱していて不明ですが、例の赤い奴がいます!」

「最悪ね……」

 

 敵の中にブラッドのギラドの存在はすでに補足している。

 エリーゼはどうして、ヴェイガンと遭遇するたびにギラドが居るのかを呪いたくなる。

 単体で圧倒的な戦闘能力を持つギラドとは出来れば戦いたくはないが、ギラドの戦闘能力は嫌と言う程知っている。

 

「どうします……」

 

 オペレーターが不安げにエリーゼに指示を仰ぐ。

 ギラドが出た時点でブリッジの士気は低下している。

 今まではクライドのガンダムZEROが居ればヴェイガンのMSを相手にも十分に戦えると思っていたが、ギラドの戦闘能力は通常のMSとはケタ違いで切り札のガンダムZEROも二度敗走している。

 

「どうもこうもやるしかないわ。MSの状況は?」

「ゼロは最終チェックを終えてません。それ以外はジェノアス・キャノン以外の全機が出せます!」

「出せる機体は全部出して! ゼロも準備出来次第に出撃させて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ! いるのは雑魚ばかりじゃねぇかよ!」

 

 ギラドはビームガンで戦場のMSを手当たり次第に撃墜して行く。

 

「だったらさぁ……勝負しようよ。どっちが多く敵を落とせるかさぁ」

「生憎と雑魚を幾ら落としたかなんて興味ないんだよ」

 

 ギラドはギラドソードを右手に付けてジェノアスを切り裂くとビームガンを連射する。

 

「ちぇ……つまんないの」

 

 ゼダスはビームキャノンで射線上の敵を一掃する。

 

「まぁ、僕一人で遊んでるから良いけどさ。早く来ないかなぁ……」

「全く……」

 

 ゼダスがビームサーベルでジラを破壊し、ドラーズがロングビームライフルでジェノアスを狙撃していると、ガフランの反応が消えて行

 

く。

 

「出て来たわね」

 

 それは考えるまでもなく、アブディエルのMS隊である事は明白だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い乱戦ですね」

「UEが出て来たというのに何をしてるんだ!」

 

 アブディエルからクライドとジゼルを除く4機が外に出ると大乱戦となっていた。

 ゲルマン達はヴェイガンと防衛隊の両方を攻撃し、ヴェイガンもゲルマン達と防衛隊の両方を攻撃し、防衛隊は必然的にゲルマン達とヴェイガンの両方を相手にしないといけなかった。

 

「こんな戦いをしている場合じゃないだろ!」

 

 Gレックスはビームライフルでガフランを撃墜する。

 

「俺達の相手はUEだろうに!」

 

 シャルルが叫ぶがゲルマン達には届く事はない。

 

「……なら私達が止めるしかない」

「それしかないですね。レオは所属不明機を相手して、防衛隊の援護を頼みます」

「分かりました」

 

 レオナールのジェノアス改にはガフランを倒せる攻撃力がない為、防衛隊の援護に回る。

 ジェノアス改はマシンガンを連射して、ジラを牽制するとFAジェノアスがヒートステックを突き刺して撃墜する。

 

「援護に来ました!」

「アスノのところか……感謝する」

 

 正直なところクライドの部下に借りを作るのは癪だが、ヴェイガンまで出て来た以上防衛隊の戦力でアーヴィンを守り切る事は不可能なのはドミニクにも分かっている為、今はプライドを捨ててレオナールの援護に感謝する。

 ジェノアス改はミサイルで弾幕をありヒートランスで接近するジラを切り裂く。

 

「ジゼルさんが居ない分、僕が!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなタイミングで仕掛けて来て!」

 

 Gレックスはビームサーベルでガフランを両断し、ビームライフルを放つ。

 

「お前たちのせいで戦場は混乱している!」

「あれは……サザーランドポートの時の奴ね」

 

 ドラーズはGレックスにビームガンを放つ。

 Gレックスはビームをかわしつつ、ミサイルを一斉掃射する。

 

「砲戦仕様の新型か! コロニーはやらせない!」

「その程度の弾幕が!」

 

 ドラーズはバックパックのドラーズガンを連射してミサイルを全て撃ち落とした。

 だが、ミサイルの爆風をGレックスが突っ切りビームサーベルを振るう。

 

「ミサイルは囮! だけど!」

 

 ドラーズは左手にビームサーベルを展開して受け止める。

 

「接近されたからと言って何も出来ない訳じゃないのよ!」

 

 ドラーズは至近距離で腹部の拡散ビーム砲を放つ。

 Gレックスは両手の小型シールドを使い、ビームを防ぎながらキャノン砲を撃つ。

 

「やってくれるわね……」

「まだやれる!」

 

 ドラーズの拡散ビーム砲はGレックスのシールドで殆どが防がれたが、至近距離だった為、完全に防ぐ事が出来ずGレックスの装甲を削りG

 

レックスのキャノン砲はドラーズに直撃するが、ドラーズに手傷を与える事は出来ないが衝撃は受ける。

 

「アーヴィンは守る」

 

 ジェノワーズはビームライフルでガフランを撃墜する。

 

「友達がいるから……」

「見つけたよ」

 

 デシルのゼダスはジェノワーズにビームバルカンを連射する。

 ジェノワーズはシールドで受け止め、ゼダスはMS形態に変形して左手のビームバルカンを連射しつつ右手にビームサーベルを展開して、

 

ジェノワーズに接近する。

 

「遊ぼうよ! ユーリア!」

「……何? この感じ……」

 

 ジェノワーズはビームサーベルを抜いて受け止める。

 ゼダスはジェノワーズを蹴り飛ばして両手のビームバルカンを放ち、ジェノワーズはシールドで防ぎながらビームライフルで応戦する。

 ゼダスはビームをかわすと飛行形態に変形する。

 

「ほら! こっちだよ!」

「行かせない」

 

 ジェノワーズはビームライフルを連射して、ゼダスを追う。

 

「素早い」

「ほらほら! 良く狙ってよ! 僕はこっちだよ!」

 

 ジェノワーズのビームをゼダスは機体を左右に振ってかわす。

 

「シャルルとユーリアが抑えられている以上、私が頑張らないといけないようですね」

 

 デスドールはビームサイズでガフランを数機纏めて両断する。

 

「敵の数からしてUEの戦力は中隊クラス……しかし」

 

 デスドールは背後から斬りかかって来たジラをかわしてビームスプレーガンを連射する。

 デスドールの撃ったビームはジラに直撃し、ジラは爆散する。

 

「所属不明機もこちらを攻撃してくるから面倒ですね」

 

 デスドールはヒートナイフを投擲し、ジラのメインカメラに突きささる。

 メインカメラが破壊され、一瞬動きが止まったところにガフランがビームサーベルを突き刺していると、デスドールは二機に接近し、ジ

 

ラごとビームサイズでガフランを両断する。

 

「ならば、この乱戦を最大限に利用させて貰います」

 

 

 

 

 

 

「戦闘が起きてるのか……」

 

 ジゼルは自室の中で漠然とそう感じていた。

 部屋の外の慌ただしさから、敵がヴェイガンである可能性が高いと思うが、ジゼルには戦う気力が湧いてこない。

 ジゼルはクライドと出会ったあの日から、拉致されたアレクを探すためにアブディエルに乗艦して戦って来た。

 そのアレクを見つけたと思った矢先にアレクが死んだ。

 見つけたと言う喜びがあった為、その後の失意は大きい。

 

「アタシにはもう関係ない話だ……」

 

 もう、ジゼルの戦いは終わった。

 だが、ふとジゼルは思い出した。

 数日前にレオナールは自分にはジゼルが必要だと言っていた。

 そのレオナールも戦場で戦っているだろう。

 レオナールの機体ではガフランを倒す攻撃力はない為、後方支援に回されているだろう。

 いつもはレオナールがガフランの動きを鈍らせて自分が決めると言うのが自分達の戦い方だった。

 生まれも育ちも全く違う二人だったが、戦場では意外と息が合っていた。

 そこまで、見越して自分達を組ませたのならクライドは凄いと思う。

 そのレオナールは相方が居ない状況では戦い辛いだろう。

 何せ、今までは自分が前衛でレオナールを守っていたのだから……

 

「そう言えばアイツ……似てたな」

 

 ジゼルは何気なくそう思う。

 アレクも決して気が強い訳ではなく、いつも自分の後に隠れていた。

 ジゼルはそんなアレクを放っておけなくて、何かと世話を焼いていた。

 だから、あの時アレクを守れなかった事を後悔し、今もまた守れ無かったことを後悔している。

 あの時守れなかったからこそ、アレクと似た雰囲気を持つレオナールの事を気にかけていたのかも知れない。

 

「今後は……今度こそは……」

 

 自分は二度もアレクを守る事が出来なかった。

 だからこそ、今後は失いたくはない。

 自分を必要としてくれたあの少年の事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

「アニキ!」

 

 そう思い立ったジゼルはすぐに行動を起こした。

 戦闘になっているのなら、自分もすぐにMSで出撃する。

 すぐにパイロットスーツに着替えて格納庫にやって来た。

 だが、格納庫で見たのはルカインで大破したままのジェノアス・キャノンだった。

 あの状況では戦場に出たところで足手まといになる。

 行き成り出先を挫かれたが、ジゼルは格納庫で作業をしているクライドを見つけた。

 戦闘になっているのにエースのクライドが出撃していない事を今は気にしてられない。

 

「ジゼル……お前」

「すんませんでした!」

 

 ようやく出て来たジゼルにクライドは驚いていたが、ジゼルは格納庫中に響き渡るような大声でそう言って頭が地面につきそうな勢いで

 

頭を下げた。

 2週間以上、部屋に閉じこもって周りに迷惑をかけていた事はジゼルも重々承知だ。

 その為、何をおいても先にクライドに謝る。

 

「そんなことは良い。どうしてここに来た?」

「アタシも出ます! 使えるMSは!」

 

 クライドはアレクを失い自棄でもなく自分の様な憎しみでもない、ジゼルの戦う決意の籠った目を見て一先ず立ち直った事を確信する。

 

「丁度良い。コイツを使え」

 

 クライドはジゼルをナイトルーパーのところに連れて行く。

 ナイトルーパーは若干の改良を加えられており、ガンダムZERO Nのビームライフルをシールドを装備し、腰にはジェノアス・キャノンのビームランスが装備されている。

 すでに改良を終えてアブディエルに搬送されており、パイロットの不在の予備機となっていた。

 ジゼルのジェノアス・キャノンを修理するのは時間と手間がかかる為、後回しにされ最悪ナイトルーパーはジゼルに使わせる事を想定し、ジゼル用の調整もされている。

 

「こんな機体……いつの間に……」

「お前が引きこもっている間にな。コイツならすぐにでも出せるぞ。どうする?」

「愚問だぜ。アニキ……出るに決まってんだろ」

 

 

 

 

「くっ……UEと所属不明機の両方を相手にするのはきつい……」

 

 FAジェノアスはキャノン砲の残弾が尽きた為、キャノン砲をパージし全弾撃ち尽くしてからとなったミサイルポッドもパージした状態となっている。

 火器を全て失った為、撃墜された友軍機が持っていたビームスプレーガンを拾いそれで対応している。

 だが、ヴェイガンの主力のドラーズとゼダスを抑えられているとは言え、ガフランに決定打を与える事が出来ない上にゲルマンの部下もアーヴィンに取りつこうとしている為、押されている。

 

「諦めないでください! 持ち堪えすれば……」

 

 ジェノアス改はマシンガンを連射して弾幕を張っていたが、ガフランのビームライフルの流れ弾で右腕ごと撃ち抜かれる。

 そして、ガフランはビームサーベルを展開して、ジェノアス改に突っ込んでくる。

 ジェノアス改はシールドのミサイルで応戦するが、ガフランに効果はない。

 ドミニクのFAジェノアスもビームスプレーガンで牽制しようとするが、それも効果がなくガフランの接近を許してしまう。

 ガフランがビームサーベルを振り上げて、レオナールは死を覚悟するがガフランは横っ腹にビームが直撃し破壊される。

 

「たく……お前はアタシが居ないとまともに戦えないんだな」

「ジゼルさん!」

 

 ナイトルーパーにて出撃して来たジゼルはビームライフルを放ちながら、ジェノアス改の前に出る。

 

「ジゼルさん……」

「何も言うな。お前はアタシの援護でもしてろ、そのくらいは出来るだろ?」

 

 ジゼルは今まで沈んで引きこもっていた事でこっぱずかしくなり、ぶっきらぼうにそう言ってビームライフルで接近するジラを撃墜する。

 

「分かりました!」

 

 戦闘の様子からジゼルは完全に復活した事が分かり、レオナールの士気も上がる。

 ジェノアス改はバックパックに装備して来た長距離キャノン砲を構えてジゼルの援護を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦況はどうなってる?」

 

 ジゼルをナイトルーパーに乗せて送り出して、ガンダムZEROの最終チェックをしているクライドがブリッジに尋ねる。

 すでにガンダムZEROの改修作業とAGEドライヴの搭載は完了しているが、最終調整が終わっていない為、出撃はしていないが、クライドに

 

はブラッドが来ている事が感じる事が出来るので戦況が気が気ではない。

 

「何とか防衛しているけど、あまり良くないわね。敵のエース機の内二機をユーリアとシャルが抑えてるけど、赤い奴を抑える事が出来ないわ」

 

 ジゼルの参戦である程度は戦況も立て直したが、それはあくまでも最終防衛ラインの話でそれ以外のところは今でも押され気味だ。

 ギラドはクライドが居ない為、本気を出していないがそれでも圧倒的な性能を持つギラドは脅威となり、それを何とかしなければ戦いに勝つ事は出来ない。

 

「分かった。俺が出る」

「ゼロは出せるの?」

「分からん。ぶっつけ本番だ」

 

 クライドはそう言ってガンダムZERO Nに乗り込む。

 

「頼むぞ……ゼロ。動いてくれよ……」

 

 クライドはガンダムZERO Nのメインシステムを立ち上げる。

 だが、サブシステムは立ちあがるが、メインシステムが立ちあがらない。

 

「メインシステムが起動しない? どう言う事だ?」

 

 クライドはすぐにその原因を探すと、メイン動力のAGEドライヴが動いていない事が原因だった。

 

「AGEドライヴが動いていない……どう言う事だ……俺は設計図通りに組み立てた筈だ。どこか間違えたのか? それともAGEドライヴと機体のマッチングに問題があるのか?」

 

 クライドはすぐにあり得る問題を探すが、どれも理論上では何の問題も無いと言う結論に達する。

 

「だとすれば、解析の出来なかったコア部分の問題か?」

 

 そして、問題があるとすれば、クライドでも理論や構造の分からなかったAGEドライヴのコア部分に問題がある可能性が非常に高い。

 これが普通の時ならば時間をかけてでも問題を解決するのだが、今は戦闘中でガンダムZEROを出さないと勝てない状況まで追い詰められている。

 

「不味いな……」

 

 時間がないが、とにかく考えた。

 だが、幾ら解決策を思いついても次の瞬間にはそれでは意味がないと結論が出る為答えが出せない。

 

「くそ……こんな時に……」

 

 頭をフルに回転させても、一向にまともな解決策が出ない事にクライドは焦り、イラついて行く。

 そして、それが遂に限界に達した。

 

「動けよ! 俺の理論は完璧の筈だ! 問題はない筈だ!」

 

 クライドは操縦桿を無茶苦茶に動かすが当然、機体はウンともスンとも反応しない。

 

「動けってんだよぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 クライドが力の限り叫ぶと、どう言う訳がAGEドライヴが起動し機体のメインシステムが起動した。

 流石にそれで動くとは思ってなかったクライドは突然の事態に唖然とするが、すぐに機体の状況をチェックするが、先ほどまでの事が嘘

 

のように機体の何処にも異常は見られない。

 

「何だか知らんが、今は気にしてられないな」

 

 AGEドライヴの起動した理由は分からないが問題なく動いている為、今はこの戦闘を終結させる方が優先である。

 

「エリーゼ! すぐに出る!」

「本当に行けるの?」

「当たり前だ」

「分かったわ」

 

 エリーゼのところにもガンダムZEROのAGEドライヴが起動出来ないと言う事は伝わっていたが、いつの間にか起動しておりクライドが出る

 

と言っている上にこの状況を打開するためにはガンダムZEROの力が絶対に必要な事もありエリーゼはすぐに出撃の準備をさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ……いつまで待たせる」

 

 ギラドはギラドソードでジラを切り裂きながら、ブラッドは未だに戦場に出て来ないクライドに苛立ちを募らせていた。

 

「こうも雑魚ばかりの相手をさせられてたんじゃつまらないな」

 

 背部の二本のビームライフルを連射していると、ゲルマンのジラが突っ込んでくる。

 

「お前は中々骨があるようだな。この俺を楽しませてくれるのか?」

 

 ジラはヒートホークを振り下ろすが、ギラドはそれを避ける事なく、腕で受け止める。

 ヒートホークはギラドの腕を全く傷付けることなく、受け止められた。

 

「俺の一撃を受け止めるとは楽しませてくれそうだな」

「ちっ……コイツも雑魚か……雑魚を相手にしている程、俺は物好きじゃないんだよ」

 

 ギラドは纏わりつく虫を払うかのようにギラドソードを軽く振るいゲルマンのジラを胴体から真っ二つに両断してジラは爆発を起こした。

 

「出てきないってんなら、炙り出してやるよ」

 

 ギラドは腹部の荷電粒子砲の発射体勢を取るが不意に殺気を感じて機体を動かすと、機体が居た位置にビームが横切り自分の近くに居たガフランが落とされる。

 

「この感覚……来やがったな……クライド・アスノォォォ!」

「ちっ……外したか……だが、ライフルの威力も上がってるな」

 

 ガンダムZERO Nはギラドにビームライフルを連射する。

 AGEドライヴの搭載や受けついた技術を用いて改良されたガンダムZERO Nのビームライフルの威力は今までよりも明らかに向上している。

 そして、向上しているのは火力だけではない。

 スラスターの出力も以前に比べて上がっている。

 ギラドがビームガンを放つが、ガンダムZERO Nはビームを回避しビームサーベルを持ち接近する。

 

「装甲は白だが、今までよりも性能が上がってるな……そうじゃないと面白くないなぁ!」

 

 ギラドはギラドソードで受け止める。

 ガンダムZERO Nはギラドを押しのけるとシールドのビームガンで追撃する。

 ビームガンの威力も向上しギラドの装甲に致命傷を与える事は出来ないが、手傷を負わせる程度の威力にはなっている為、ギラドは翼を盾にして防御する。

 

「行ける……コイツなら行ける!」

「面白れぇ……面白れぇじゃねぇか! なぁ! クライドォ!」

 

 ガンダムZERO Nとギラドは何度も互いの剣でぶつかり合う。

 

「これなんだよ! 俺はこんな戦いがしたかったんだよ!」

 

 思いの寄らないガンダムZERO Nの性能の向上にブラッドは戦いながら歓喜の声を上げる。

 ブラッドにとって自分の実力と拮抗した相手との戦い程嬉しい物はない。

 

「性能の上がったゼロと互角に渡り合えるのかよ……見た目通りの化け物だよ!」

 

 だが、逆にクライドからしてみれば、過去の技術を使って性能を上げたガンダムZERO Nと互角に戦えるギラドとは戦いたくない相手だ。

 ガンダムZERO Nとギラドの切り合いは激しさを増していく。

 その中でクライドとブラッドの二人のXラウンダーの感覚は互いに共鳴し合っているかのように鋭さを増していき、それは戦闘にも表れて行く。

 ギラドは両手にギラドソードを付けて、ガンダムZERO Nに片方のギラドソードを振り下ろすとガンダムZERO Nはそれをビームサーベルで弾き、ビームサーベルを突き出す。

 ギラドはビームサーベルをギラドソードで払うと右手のギラドソードを振るう。

 ガンダムZERO Nはそれをビームサーベルで受け止めて鍔迫り合いに持ち込む。

 二人にとって敵の攻撃が全てスローモーションのようにゆっくりと見えている。

 

「こうでないとなぁ! 最高だなぁ!」

「さっさと終わらせる!」

 

 ガンダムZERO Nは一瞬機体を引き、ギラドは若干バランスを崩したところを蹴り飛ばして、ビームライフルを連射する。

 ギラドは蹴り飛ばされながらもビームを回避し、二本の尾を合体させたビームキャノンで応戦する。

 

「ブラッド! 聞こえる!」

「五月蠅い! 黙ってろ!」

 

 クライドとの戦闘で興奮するブラッドはセリアからの通信に苛立つ。

 だが、セリアも通信を繋いだ時点でこうなる事は予測出来ており構わず続ける。

 

「これ以上の戦闘の継続は無理よ」

「ふざけるな」

 

 その答えも予測している。

 今回の戦闘は今までとは明らかにガンダムZEROの性能は向上し、ヴェイガンの技術力の結晶でもあるギラドと互角に戦っている。

 そんな相手を前にブラッドは戦闘を中止し撤退することはあり得ない。

 

「お願いだから、今は引いて。ガンダムとの決着はここよりも相応しい場所がきっとあるわ」

 

 正直な話、これでブラッドが引いてくれるかは賭けだ。

 ブラッドはクライドとの決着を付けたいと言う願望もあるがそれ以上にクライドと戦っていたいと言う願望も持っている。

 セリアの通信で戦いに水を刺された以上、別の場所……クライドとの決着を付けるに相応しい場所での戦いの為に引いてくれる事を願いそう言う。

 

「……ちっ……良いだろう。お前の口車に乗ってやる」

 

 セリアは何とかブラッドが乗ってくれた事に安堵するが、ブラッドは前にガンダムZEROに繋いだ通信コードでガンダムZERO Nに通信を繋いだ。

 

「おい。クライド・アスノ」

「通信? ブラッドか」

「今日のところは幕引きだ。だが……次にお前と会う時は俺達の因縁に決着を付ける。アンバットで待っている」

 

 ブラッドはそれだけ言いクライドの返事を待つことなく撤退する。

 ブラッドが引いた事でセリアやデシルも撤退を開始し、ヴェイガンは完全に撤退を始める。

 アーヴィンの防衛隊にもクライド達にもそれを追撃するだけの余裕はなく、その後は運良く生き残っていたゲルマンの部下の残等を始末し戦闘は終結した。

 

「アンバットか……行きたくないな」

 

 クライドは勝手に決着の場を指定されるが、出来れば二度とブラッドとは戦いたくない為、心底嫌そうにそう言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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