機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第25話

「我々、エウバ・ザラム連合は正式に君たちの行おうとするアンバット攻略作戦に参加することを表明しよう」

 

 ファーデーン防衛戦後、無きドン・ボヤージにザラムの兵を預かったラクトはグルーデックにそう宣言する。

 その場にはディーヴァの主だったクルーだけでなく、グルーデックと手を組んだクライドとエリーゼも同席している。

 

(アンバット攻略作戦? マジかよ……)

 

 クライドもグルーデックと手を組むことを決めたが今後の事を話合う前に敵の大軍の侵攻でそれどころではなかった。

 その為、グルーデックを始めとしたディーヴァのクルーが宇宙要塞アンバットを攻める気でいた事を始めて知ることになった。

 そして、そにアンバットでクライドをブラッドが待っている。

 行けば確実にブラッドは自分を狙って来る事は明白だ。

 AGEドライヴの搭載でブラッドのギラドと互角に戦えるだけの性能をガンダムZEROは得たが、あくまでも互角に戦えるレベルだ。

 確実に勝てる訳じゃない。

 

「ボヤージの葬儀を済ませた後、他のコロニーに駐留している艦艇を率いて合流地点であるミンスリーへと向かう。では後日の再会を希して……」

 

 ラクトはそう締めて通信を切る。

 

「聞いた通りだ」

「ミンスリーへは、連邦軍と出くわさない安全なルートを通っても2週間はかかるわね」

「出くわす可能性のあるルートを通れば短縮は出来るんだけどな……」

 

 ファーデーンからミンスリーへはそれほどの時間はかからないが、連邦から追われる立場のアブディエルやディーヴァは成るべく連邦軍と出会わないルートを選ぶ必要がある。

 それに関してはアブディエルは連邦軍から逃げる為に幾つかの安全なルートは用意してある。

 その中でも最短のルートを使用しても2週間はかかり、通常の最短ルートを使うよりも大きな時間のロスになる。

 

「だが、連邦軍と遭遇し戦闘になった時の戦力の消費に比べたらマシだ」

 

 アブディエルとディーヴァの二隻はファーデーンやマッドーナ工房で武器や弾薬を十分に仕入れたが、それでも無限ではない。

 出来ればアンバット攻略戦まで温存出来るのがベストだ。

 

「だがなぁ……アンバットにどれだけの戦力があるのか分かっているのか?」

「その物言いだと、お前はアンバットのUEの戦力を把握しているのか?」

 

 相手の拠点が分かっても戦力が分かっていると分からないのとでは攻略作戦の成否に大きく関わって来る。

 

「私達はアンバットがUEに占拠される時にその場所に居ました」

「海賊の縄張り争いに片方に雇われてな」

 

 クライド達は以前にドレイク海賊団に雇われてアンバットに攻め入っている。

 その時にヴェイガンの横槍が入っていた。

 その後にアンバットは放棄され、ヴェイガンの拠点として今も使われていたのだろう。

 

「その時の戦力は少なく見積もってもMS型が最低でも100機はくだらないな。今ではそれ以上の戦力を用意していると考えた方が良い。それに要塞の防衛システムは生きていた。占領後にUEに改良されている恐れもある。俺達はその時に敗走している」

 

 クライドの言葉がディーヴァのクルーに重くのしかかる。

 クライド達、パラダイスロストの戦力は先の戦闘でディーヴァのクルーも見ている。

 それにディーヴァの戦力とエウバとザラムの戦力が加わればアンバットでも落とせると思い始めていたが、それは甘いと痛感している。

 

「でも……それでも僕達は行かないと……」

 

 重い空気の中、フリットがそう言う。

 

「UEをこのまま野放しにしていたら、また僕達の様な人が大勢出て来る。兄さんだって分かってる筈だよ。もうオーヴァンやノーラの様な事を繰り返しちゃいけないんだ。例え、兄さん達が行かなくても僕は行くよ」

「フリット……別に俺は行かないなんて一言もいって無いぜ。それに敗走も過去の話だ。俺達は技術と同じで日々進歩している」

 

 あの時とは違いガンダムZEROにはAGEドライヴが搭載され、ジゼルは新しい機体のナイトルーパーに乗り換えている。

 クライド自身もブラッドとの戦闘でXラウンダー能力が向上している。

 それ以外でもパイロットもアブディエルのクルーも様々な戦いを潜りぬけている為、パラダイスロストの戦力はその時よりも間違いなく向上している。

 それ以上にクライドは自分の作ったガンダムZEROが敗走した事を根に持っておりやり返す気は満々だ。

 

「だから、アンバットに戻ってやられた分の借りは何倍にしても返してやるつもりだ。オーヴァンの分も利子を付けてな」

 

 明らかに戦力不足なのは分かっているが、アンバットを攻め落とす気でいるクライドにエリーゼは内心ため息をつくが、この状況で勝てないから行くなとは言えない空気だ。

 フリットとクライドの言葉でグルーデック以外のクルーもその気になっている為、この流れを止める事は出来ない。

 

「二時間後、本艦はコロニー『ミンスリー』へと向かう」

 

 これによりアブディエルもディーヴァとともにアンバット攻略作戦への参加が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディーヴァのクルー達の覚悟も決まり、アンバット攻略作戦の為にディーヴァやアブディエルがミンスリーへの航海の準備をしている頃、クライドはフリットにと共に艦長室に来ている。

 

「成程……ファーデーンで会った子供の顔が……」

 

 フリットはそこでグルーデックとクライドに先の戦闘でゼダスと交戦中にデシルの顔が浮かんだ事を二人に話していた。

 

「はい……戦っている時にデシルの顔が見えました。恐らくあの黒いMS型のパイロットはデシルです。そう感じるんです」

 

 フリットは自分でも突拍子の無い上に非科学的な事を言っている事は分かっている。

 ゼダスとは通信をしていた訳でもゼダスが小型MSの有視界操縦と言う訳ではない為、ゼダスのパイロットの顔など分かる訳もない。

 

「だとすると……異星人は少なくとも我々と同じ人の姿をしている事になるな……」

 

 グルーデックは敢えて相手を異星人と呼ぶ。

 ゼダスのパイロットと言われたデシルが少年の姿をしている事はUEと呼ばれている敵は異星人ではなく、自分達と同じ人類である可能性も示唆している。

 だが、グルーデックがその可能性に触れないのはフリットの士気を気にしての事だ。

 相手が異星人と言うのと相手が人間とでは大きく違うからだ。

 それはクライドとエリーゼがヴェイガンの事をクルーに話していないのと同じ理由である。

 

「奴らはどんな姿をしていても人間ではない」

 

 混乱するフリットにグルーデックはそう断言する。

 

「……そうです。人間だったら、あんなに惨い事は出来る筈はない」

 

 先の戦闘でヴェイガンのMSは戦う力を失いまともに動く事すら出来ないMSを平気で破壊した。

 フリットはもしも、UEが人間ならそんな酷い事はしない。

 即ち、それが出来るUEは人間ではないと結論付けた。

 

(だが、それ以上に惨い事が出来るのも人間なんだよ。フリット)

 

 クライドも口には出さないが、クライドは人間がそれ以上の事を出来る事を知っている。

 幼い子供もその無邪気さ故に小さな虫などを生きたまま、手足を毟る。

 戦争ともなれば、大量殺戮兵器や毒ガス、細菌兵器の類も過去の戦争で使用されたと聞いている。

 クライドが受け継いだデータ端末の中にもそれらしい兵器のデータが多数眠っていた。

 だが、この場でその事をフリットに言わないのはクライドはフリットに自分が人を殺していたかも知れないと言う罪の意識を植え付けたくはなかった。

 クライドは復讐を誓ったあの日から、その為なら障害となる物は全て排除する覚悟は出来ている。

 故にクライドにとっては障害が人間なら人を殺す事など、復讐を捨てるよりも容易なことだ。

 そして、すでにクライドの手は血で汚れ過ぎている。

 

「相手が人間かどうかなんて関係ない。UEが俺達の生活を脅かしている」

 

 例え、相手が人間だろうとヴェイガンはコロニーの平和を脅かしている。

 それがはっきりしている以上、戦う理由はそれだけで良い。

 

「兄さん……」

「奴らは俺達の敵だ。今はそれで良い……良いんだよ。フリット」

 

 フリットは敵が人間である可能性で迷いかけるが、クライドの言葉でその場は納得する。

 

「流石は兄弟と言ったところか」

 

 フリットが艦長室を出て行きグルーデックはクライドと二人きりになるとそう言う。

 敵が人間である可能性が出て迷いが生じたフリットをあっさりと納得させてたところはフリットを良く知る兄だからこその事だ。

 

「そんなんじゃないさ……俺達は戦争をしてるんだ。相手が何処の誰だろうとな……相手の事なんて必要以上に知るもんじゃない。敵だと言う事を認識出来ればそれで良い」

 

 戦場において敵の事を知れば対策も取れるが必要以上に知り過ぎれば相手に対し何らかの情が湧き戦いに支障が出るケースも出て来る。

 

「そんなことよりも本気か? アンバットに仕掛けるってのは?」

 

 クライドはブリッジではああ言ったが、実際のところ勝算は殆どなく、ブラッドが待っている事を考えると今は仕掛けたくはない。

 

「無論だ。奴らの拠点を掴んだんだ。そこを叩かない手はない」

「それは理解出来る。だが、勝てない戦いをしたってしょうがないだろ?」

「強制はしない。攻略戦に参加しないと言うのであれば、我々はそれでも構わない」

 

 グルーデックのその物言いからどんな説得をしようともアンバットに仕掛けるつもりでいる事は明白だ。

 

「例え、どんな手段を取ろうとも私はUEを根絶やしにする」

「……俺もアンタと同じだよ。その為なら悪魔に魂を売ろうとも家族や故郷の仇を取るさ……でも生憎とまだ悪魔に魂を売って無くてね。だから、弟が死地に向かうのを手を振って送る訳にも行かないんだよね」

「それは我々と共に来ると言う解釈で良いんだな?」

「そう言う事になるな……」

 

 ディーヴァやエウバ・ザラム連合の戦力ではアンバットのヴェイガンとの戦力差は埋めようがなく、行けば確実に全滅するのは目に見えている。

 だが、アブディエルの戦力をクライド達が今までの旅で得た物を全て注ぎ込めば勝機は見えて来る。

 グルーデックも強制はしないと言っておきながらも、クライド達の戦力は当てにしているのだろう。

 クライドは利用される事を知りつつも、フリットがディーヴァで戦う以上、それを無視は出来ない。

 

「協力に感謝する」

「良く言うぜ。フリットを出汁に俺達を引きずり出す気満々な癖によ」

「否定はしない」

「まぁ、俺もアンタの指揮能力を利用しようとしてんだ。お相子にするさ」

 

 クライドとグルーデックの間で協力関係が完全に固まり、アンバット攻略戦へと動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニー「ミンスリー」

 

 地球の環境を再現したコロニーで最も美しいコロニーと言われている。

 アンバットに近いコロニーの中でも、ミンスリーは連邦軍の介入を拒み中立を保っている。

 その上、ルーアンのように治安が悪い訳でもない為、アンバット攻略戦の戦力を集める為の合流ポイントとなっている。

 2週間の航海で連邦軍やヴェイガンと遭遇することなく無事にミンスリーに到着していた。

 そして、ミンスリーに居るドン・ボヤージの旧友アルザック・バーミングスの屋敷へと向かう事になっている。

 

 ディーヴァからはグル―デックにミレース、ラーガン、そしてフリットが向かいアブディエルからはエリーゼとシャルルが、エウバ・ザラム連合からは二隻よりも短いルートで先に到着していたラクトが合流している。

 一同はクルーザーにて川を進みバーミングスの屋敷へと向かう。

 

「流石は最も美しいとコロニーと言われるだけはあるわね」

 

 エリーゼはクルーザーからミンスリーを見てそう言う。

 ミンスリーの中は他のコロニーに比べて自然が豊富だ。

 他のコロニーでは今、自分達が渡っている様な大きな川も無く木々が生い茂っているコロニーも珍しい。

 

「あの……エリーゼさん達は兄さんとは付き合いが長いんですか?」

 

 自分達が追われている事を忘れてしまいそうな穏やかな時間が流れているが、フリットは意を決して今まで気になっていた事を訪ねる。

 フリットにとってはアブディエルのクルーは自分の知らない兄の人間関係である為、ずっと気にはしていた。

 

「俺もここ一年以内に仲間になったばかりだからな……エリーゼは長いんだろな?」

「そうね。私はパラダイスロストの創設前からの付き合いで創設の立役者なんだから」

 

 エリーゼはそう言うが、実際は自分で組織を作らなければならない状況に追いやった張本人である。

 

「そうなんですか……兄さんは今までどんな事をして来たんですか?」

「そうね……クライドの頭の中には常にMSの事しかなかったわね」

 

 アーヴィンを出てからいろいろな事があったが、一番の問題はクライドの頭の中にはMSの事しかなかった事だ。

 その為、服装も必要最低限でリーダーとして人前に出る事など考えられなかった。

 それだけでなく、他人と接するのも面倒だと言っていた頃もあった。

 エリーゼとアリスはそんなクライドの性根を何とか今のクライドに持って行った。

 それ以上にクライドのエリーゼに対する態度が面倒な女や厄介な女と言う認識がされていたので、扱いが悪かった。

 夢を語るクライドにエリーゼも少しはトキメキはしたが、自分よりもデータを優先した事やその態度が気に入らないかったが為にあの手この手でクライドに自分を意識させようとしている内にクライドに意識される事に成功したが、それ以上に自分の方がクライドに夢中になってしまうと言う結果になってしまった。

 

「兄さんらしいな……」

「それよりも、私はオーヴァンにいた頃のクライドの事が聞きたいな。クライドってば自分の過去の事は殆ど話さないから」

 

 エリーゼはクライドが復讐の為に戦っている事は知っているが、それを知ったのはパラダイスロストが結成され、付き合うようになってからだいぶ後の事だ。

 肉体関係が出来た頃にクライドがうなされる事が多々ある事を知り、それが気になったエリーゼは強制的にクライドに聞き出しすまではヴェイガンと戦う理由など一切話す事はなかった。

 クライドに弟が居る事も今回初めて知った程だ。

 それくらいクライドは自分の事を話す事はない。

 

「そうですね……兄さんは昔から凄い人です。MSの事はもちろん、他の勉強も出来てスポーツも万能で優しくてかっこよくて……」

 

 フリットは次々とクライドの事を話す。

 クライドの事を知らないミレースやラーガン、ラクトはクライドが凄く良い兄であると思っているが、クライドを知るエリーゼとシャルルは一瞬、誰の事を言っているか分からないくらい、自分達の知るクライドとはかけ離れている。

 MS関連の事、認識のずれはないが、クライドの運動神経は一般的な同年代の平均よりかは上だが、それでも優秀と言う訳ではない。

 かっこいいは弟から見ればそうなのかも知れないが、優しいと言うのは全く合わない。

 クライドは完全に非情と言う訳ではないが、ユーリアを仲間に引き入れた時はカジノを一つ潰し、シャルルが仲間になった時は自称反乱軍が罠にかけられた事を気づいても何を言っても無駄だと判断して見捨てようとしている。

 エリーゼとシャルルは知らないが、フリットが言っている事も間違いではなかった。

 今でもそうだが、クライドはフリットの前では見栄を張り完璧な兄を演じていた。

 それが7年の歳月を経てフリットの中では更にクライド像が美化されてるてそうなっている。

 

「まぁ……そうよね」

 

 認識の祖語があるが、子供の夢を壊す事もないため、エリーゼは適当に相槌を打っている。

 

「中立とは言え、何処に連邦や敵の目があるのか分からん。気を抜くなよ」

 

 穏やかな風景で気が緩みかけていたところをグルーデックによって気を引き締められる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成程な……このライフルはDODS効果を応用しているのか……だから、この出力でもあれだけの威力を確保出来たのか……」

 

 エリーゼらがバーミングス邸に向かっている頃、クライドはディーヴァを訪れていた。

 そして、ディーヴァでガンダムAGE-1のデータを見ている。

 基本的な構造はともかく、AGEシステムが作り出したウェアや武器は理論事体は昔の確立した技術だが、それをMSの武器として実用化した例はない為、クライドから見ればガンダムAGE-1の武器はバーミングス邸での作戦会議よりも重要であるったので、会議をエリーゼに全て任して自分はディーヴァに来ている。

 

「タイタスもスパローに使われている技術も……面白い。コイツは次のゼロに使えるな……」

 

 クライドはデータを見ながらその技術が次のゼロに使えるかを頭の中で組み立てている。

 

「お前……フリットの兄貴だっけ? 何してんだ?」

 

 データを見ながらブツブツ呟いていると、暇を持て余していたウルフがクライドを見つけて声をかける。

 

「ん? ああ……ウルフか……フリットのガンダムのデータを見てたんだよ。とんでもないMSだよ全く」

「そうか? お前のガンダムや俺のGエグゼスだって十分凄いと思うが」

「何言ってんだよ。コイツに使われている技術はまだ実用化されて無い技術が使われている。AGEシステムはそれを可能にするって事だ。それがどう言う事か分かってんのか?」

 

 興奮気味なクライドにウルフは少し引くがウルフからしてみれば実戦で使えればそれに使われている技術などどうでも良い。

 

「そうか……それよりもクライドもGエグゼスの製造に関わったんだって?」

「まぁな。つっても俺がした事はGエグゼスの基本設計のベースを提供したに過ぎないさ……」

 

 本来はGレックスの戦闘データを組み込むつもりが先にガンダムAGE-1のデータを使った為に結局Gレックスの実戦データは使われる事はなかった。

 だが、GエグゼスはムクレドがクライドのガンダムZERO Nの設計データをシャルドールに流用し、独自の技術を使いそこにガンダムAGE-1のデータを使い完成させたMSである為、クライドが製造に関わっていたと言う事も強ち間違いではない。

 

「おやっさんが言ってたぜ。Gエグゼスを作るきっかけは若造が持ち込んだデータだってな。そう言う意味ではお前は恩人って訳だ」

 

 ムクレドがクライドのガンダムZEROに触発されていなければ、Gエグゼスを作る事もなくウルフがガンダムAGE-1を超えるMSを必要とした

 

時にこれほど早く最高のMSに出会う事も無かった。

 

「そう思うなら、Gエグゼスを少しばかり見せて欲しいな」

「構わないぜ」

 

 クライドがウルフの許可を得てGエグゼスに乗り込む。

 機体のメインシステムを立ち上げると顔を顰める。

 

「おいおい……これは……」

「何か問題があったのか?」

 

 システムを見てクライドが顔を顰めていたので、ウルフは機体に問題があったのかと思ったが、クライドはすぐに呆れ顔になる。

 

「いや……まぁ、問題と言えば問題か……良くもまぁこんなピーキーな機体に乗れたもんだよ」

 

 クライドが顔を顰めたのはGエグゼスの操縦性が著しく悪いからだ。

 この機体には普通のパイロットでは機体に振りまわされてまともに戦う事は愚か、動かす事も苦労するだろう。

 尤も、クライドのガンダムZEROも似たようなものである。

 

「けど……性能は流石マッドーナ工房製ってところか……」

「だろ?」

「まぁ、俺のゼロの方が凄いけどな」

「言ってろよ」

 

 結局のところクライドもウルフも自分の愛機が一番だと思っている。

 

「おーい! そこにいたか!」

 

 Gエグゼスのシステムを見ていると、バルガスがクライドを探していたらしく、Gエグゼスのところに居たクライドに大声で呼ぶ。

 

「出来たのか! バルガス爺さん!」

 

 クライドもGエグゼスのコックピットから乗り出して大声で答える。

 

「ああ!」

「すぐに行く! そう言う訳だ」

 

 クライドがGエグゼスを降りてバルガスの方に行くとウルフも話の内容に興味があったのか勝手に付いて行く。

 二人の話の内容からクライドがバルガスに何かの製造を頼みそれが出来たようだ。

 

「もう出来たのか? 早いな」

「とんでもないもんを作りおったわい」

「コイツは……」

 

 クライドがバルガスから端末を受け取り内容を確認する。

 そこにはMSの武器と思われる設計図が映されている。

 

「何だ? それ?」

「コイツはゼロの過去の戦闘データを元にAGEシステムが作ったゼロの新しいアーマーだよ」

 

 クライドは今までの戦闘データをフリットの開発したAGEシステムに入力することで新しいアーマーの製造の実験をしていた。

 そして、上手くいったらしくAGEシステムはガンダムZEROの新アーマーの設計図を作り出しており今はそれを高速形成しているところらしい。

 

「へぇ……AGEシステムがね……ガンダム以外にも使えたんだな」

「そのようだな」

 

 クライドもバルガスも実際にやって見るまではどうなるか分からなかったが、実際にやっているとガンダム以外でも可能だったようだ。

 

「それでそんな武器が出来たんだよ?」

 

 ウルフは好奇心からそう聞く。

 今までもトンデモ兵器を作ったAGEシステムがガンダムAGE-1とは比べ物にならない程の戦闘データから作り出した武器となれば相当な代物だろう。

 

「待ってろ……アサルトアーマー……対大軍戦闘用のアーマーか」

 

 設計図を見ると多数の火器を装備した大軍を相手にする為のアーマーだと言う事が分かる。

 火器の数だけでなく武器の一つ一つも強力な武器を装備することになる。

 

「アンバット攻略前に大軍戦用のアーマーか……丁度良いな」

 

 ガンダムZEROのアーマーには大軍との戦闘を前提としたアーマーはない。

 ガンダムZERO自体、後の為のデータ収集機であるたので本格的な戦闘を想定したアーマーは設計されてい。

 他のアーマーでも大軍と戦おうと思えば可能で、尚且つガンダムZEROの基本性能が高い為、大軍用の武装は必要はなかった。

 そして、今まで以上の大軍との戦闘が予想されるアンバット攻略戦では心強い戦力となる。

 AGEシステムはそこまで見越してアサルトアーマーを設計したのかも知れないが、それは神のみぞ知るところだろう。

 

「だが……コイツを装備するとなればゼロの調整が必要だな」

 

 アサルトアーマーには今までもガンダムZEROのアーマーにはなかった新装備も含まれている為、機体の方の調整も必要となって来る。

 

「仕方がないか……バルガス爺さん、こっちは任せるから出来次第アブディエルに運んでくれ」

「任せておけ」

「そう言う訳だ。俺はアブディエルに戻るよ」

 

 クライドはウルフとバルガスと別れるとアブディエルに戻りガンダムZEROの調整に入る。

 

 

 

 

 

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