「へぇ……中々のお屋敷ね」
バーミングス邸に到着し、エリーゼがそう言う。
バーミングス邸はコロニー内の山の頂上に立てられていおり、その外観は一般的な家とは違い豪邸と言っても良い。
それ程の屋敷を見た事のないシャルルやラーガン、ミレースは豪邸に圧倒されるが、実家が同じくらいの豪邸であるエリーゼには豪邸馴染み深い。
同じく豪邸に住んでいた事のあるフリットは山道で別れている為、ここにはいない。
一同は豪邸に入ると屋敷の使用人が並び出迎えてやがて屋敷の主のアルザック・バーミングスが出迎える。
「ボヤージは残念だった。アイツは殺しても死なない奴だと思っていたが……」
バーミングスは旧友で今はなきドン・ボヤージの事を思い出して顔を伏せる。
「我々は彼の勇敢な行動によって救われました」
敵の撤退のタイミングを考えるにエース機のゼダスの敗退だけではなく、ボヤージの特攻での旗艦のダメージも含まれていると考えられる。
あのまま、撤退しなくても勝算はあったが、その分自軍の損害もあったため、ボヤージの死は結果的に自軍の損失を最低限に抑えた事になる。
「私は全面的に協力することにしたよ。ボヤージの気持ちを受け継いだ君たちのな」
「感謝します」
バーミングスの協力が得られる事が決まり、バーミングス邸を拠点としてアンバット攻略作戦の作戦会議が始まる。
その頃、山道にて一同と別行動をしているフリットはノーラで出会った少女、ユリンと再会していた。
「私ね。ミンスリーに引き取られて来たの」
トルディアに行った筈のユリンが何故、ミンスリーに居るのかをフリットに話す。
ユリンはすでにUEによって両親と弟を殺されている為、身よりがないので施設に預けられた。
その後、アルザック・バーミングスはユリンを養子として引き取る事になった。
だが、ユリンは新しい家族をすぐには認める事が出来ずに施設を逃げだした。
そんな時にノーラが襲撃を受けて、偶然にもフリットに出会ったと言う訳だった。
フリットはただ、それを黙って聞いている。
そんなユリンが自分の境遇と重なっている。
「僕も同じ何だ……僕も父さんと母さんをUEに殺された……だから戦う事にしたんだ。母さんの残してくれたガンダムで……」
「そう……」
二人の間に重い空気が流れるが、次第に話の内容が変わっていき、それまでの重い空気が和らいで行く。
「おお! アンタか、地球圏一のMS鍛冶と言うあのマッドーナか」
バルガスはミンスリーの宇宙港でムクレド・マッドーナを出迎えていた。
バルガスはガンダムZEROにもAGEシステムが使える事が確認された為、以前よりグルーデックに頼まれていたディーヴァの強化にもAGEシステムを使った。
その結果、ディーヴァに新たな形態と新装備のデータが作られたが、ミンスリーの滞在期間中に仕上げるのは人手が足りなかったが、エミリーの紹介でマッドーナ工房に手伝って貰う事になった。
「話は大体聞いている。確かに無謀な改造だ。普通に考えればどうやっても間に合わんな」
「そうなんじゃ……」
ディーヴァの改造プランはプロから見ても時間がかかる事は明白だ。
それ故にバルガスも困り果てていた。
滞在期間がなければ可能だが、連邦軍に追われている以上、長居をすることも出来ない。
「だけど、それを何とかするのが面白いんだよな。おやっさん」
「クライドもいたのか」
ガンダムZEROの調整に目処が立ったクライドもムクレドが来ると聞き出迎えに来ていた。
「まぁね。それでどうすんの? マッドーナ工房の工房長ともあろうおやっさんが無茶で無謀だと言って止めとくか?」
「若造が言ってくれるじゃねぇか。こんな普通じゃない仕事は普通じゃない俺にしか出来ない仕事だ」
「うちの連中も総動員させれば出来ない事もないだろうしな」
アブディエルのメカニックは日々ガンダムZEROをはじめとしたワンオフのMSを扱っている為か、エミリオ以外でもそれなりの腕を持つメカニックを抱えている。
その全てをディーヴァの改造に駆り出す事は出来ないが、手伝いに使えば効率の向上する。
「助かる。お前ののところのメカニックはうちにも分けて欲しいくらいだからな」
「それはおやっさんでも出来ない相談だな。そんじゃ後で何人かいかけるから、こき使ってくれ。俺はゼロの調整を済ませたら手伝いに行くからさ」
「その頃には終わらせてやるよ」
クライドはムクレドと軽口を叩きながら、アブディエルに戻りガンダムZEROの調整を再開する。
ディーヴァとアブディエルが入港し、ザラム・エウバ連合の戦力も集まり、日々作戦会議が続いている。
エリーゼがドレイク海賊団経由で手に入れたアンバットの見取り図を取り寄せたりして、作戦は順調に練られている。
たまに感情的になり口論になる事も多々あったが、それもまたアンバットを攻略するために必要な事を言い合っているので、口論の後に冷静さが戻り議論すれアンバット攻略成功へと繋がっている。
その日も朝から会議を行っているがいる。
「これが宇宙要塞アンバットだ。かつて連邦軍が廃棄した要塞をUEが巣にしている」
「この見取り図はそれ以前にアンバットを根城にしていた宇宙海賊から提供のあった物です。UEによって内部が弄られている可能性もありますが、基本的な構造は変わらないと思って間違いはないです」
立体映像でバッカニア海賊団から送られて来たアンバットの見取り図を出す。
ヴェイガンによって改良されている可能性も否定は出来ないが、攻撃目標の見取り図があるとないとでは大きく違ってくる。
「それでUEとはどう言う生物なんだ?」
「説明は後にして貰う。これより作戦を説明する」
グルーデックは有無を言わさずに作戦の説明に入る。
「我々の現状を考えれば戦力を温存しつつ、艦隊の集中砲火で戦力を分断し前進するしかない」
現在の戦力は戦艦が数隻にMSも100機にも満たない。
それに対してアンバットの戦力は最低でも100機以上はMSが居る上に大型母艦のファ・ボーゼもいると予測される。
MSの性能では圧倒的に自軍が不利な上に数でも劣るとすれば、出来る作戦も限られて来る。
「全MSは艦隊の攻勢に乗じ、要塞内部に侵入する」
要塞内部に入りこんでしまえば数の優位は外で戦うよりかは無くなる。
その為、艦隊で道を切り開き、MSで要塞を内部から破壊すると言う作戦を大まかな作戦を決めた。
「それじゃ艦隊の防衛は? これじゃ敵のMS型の良い的だ」
作戦会議の為にディーヴァから呼び出されたウルフが作戦の欠点を付く。
この作戦では要塞内部にMSを突入させる為にMSが艦隊から前に出る必要がある。
戦艦が下手に前に出過ぎればアンバットの防衛圏に入ればアンバットの火力の集中砲火を浴びる事になり、ある程度は距離を保たなければならない。
だが、MSと離れ過ぎればMSの格好の的になる。
「艦隊の防衛は必要最低限のMSで行う」
「つまり……」
「ディーヴァのMS隊だ」
必要最低限の数で艦隊を防衛するためにはそれ相応の性能を持ったMSが必要となり、必然的にディーヴァかアブディエルのMS隊が担当することになる。
「そうなれば、私達のMS隊が前衛を務めると言う訳ですね」
「そう言う事になる。君達のMS隊はディーヴァのMS隊よりもUEとの戦闘経験が豊富な上に突破力がある。それを利用し最前線で敵の数を減らして貰う」
アブディエルは今まで何度もヴェイガンとの戦闘を経験し、MSの性能も他の艦のMS隊とは質が違う。
となれば、その性能と経験を活かして最前線で戦う事は必然と言える。
「分かりました」
そして、会議は更に付き詰めた作戦を練っていく。
「どうにか纏まりましたね」
作戦会議が終了し、各々がミンスリーからアンバットへ向かう為の準備に取り掛かっている。
港に戻る為のクルーザーの用意をしている間、グルーデックとエリーゼはコーヒーで一息ついている。
「そうだな……それで正直なところ、君はどう見る?」
「そうですね……はっきり言って勝ち目は薄いですね」
エリーゼのこの場にグルーデックしかいない為、はっきりと思っている事を話す。
「根拠は?」
「何と言っても数ですね。戦力差があり過ぎて作戦だけでは補い切れません」
只でさえMSの性能差があり、数で劣っている。
MSでもヴェイガンのMSと互角以上に戦える機体は数機しかいない。
「武装面ではマッドーナ工房で作られている新兵器を使えばある程度は何とかなりますけど、MSの数はどうにもなりませんね」
「君たちの方で戦力の宛ては?」
グルーデックはすでに連邦軍から追われる身である為、連邦軍に増援の依頼は出せない。
ザラムとエウバの戦力もすでに可能な限りかき集めている。
それでも足りないとすれば、エリーゼ達パラダイスロストの繋がりを使うしかない。
「無くはないんですけどね……」
「ほう……」
「ドレイク海賊団なら、前に借りを作ってありますし、彼らにとってアンバットは因縁深い地ですから、士気も問題はないですね」
アンバットはヴェイガンが占領する前はバッカニア海賊団が使っていた。
そして、バッカニア海賊団と宿敵のドレイク海賊団との決戦時にヴェイガンが襲撃を行った。
その際にバッカニア海賊団のリーダーがヴェイガンの攻撃で戦死している。
その為、アンバット攻略戦は彼らにとってもバッカニアの弔い合戦と言える。
「ですけど、彼らは今結構離れたところに居るみたいですからね……」
敗走後にはルーアンに居たドレイク海賊団だが、今はルーアンを離れている。
その為、アンバット攻略戦までに戻る事は難しい。
「どうにか、戻って来る手段があれば……もしかしたら……」
「何か手があるのか?」
「ええ……少し心当たりがあります」
エリーゼはそう言って席を立ち、少しでも戦力を確保するために奔走する。
「ご協力感謝します」
クルーザーの用意が整い、一同は母艦に戻り、ミンスリーを後にしようとしている。
戦力を集めるのや、作戦会議の場所を提供してくれたバーミングスにグルーデック達は敬礼をして感謝を示している。
バーミングスもまた、彼らに勝利の期待を込めてクルーザーを見送る。
フリットは川を進むクルーザーの中で森をボーっと見ていると木々の中でユリンを見つける。
「ユリン!」
フリットは思わず、クルーザーから身を乗り出す。
ミンスリーの滞在中にフリットは時間を見つけてはユリンといろんな事を話していた。
ノーラに居た時の話、それぞれの両親の話、フリットの兄、クライドの話、そして、戦いが終わった時には再び出会う事を約束して別れた。
「戦いが終わったら、また会いに来るから……」
フリットは自分に言い聞かせ、戦いを行きぬく事を胸に刻みながらクルーザーが川を進んで行く。
「何か様子が変だ……」
一見、行きと同じで穏やかだったが、グルーデックは何か違和感を感じていた。
それは何者かに監視されているかの様な嫌な感じだった。
そして、それは的中する。
グルーデック達を乗せたクルーザーを遮るように一隻のクルーザーが現れる。
それと同時に森に隠れていた二機のジェノアスが出て来る。
「見つけたぞ! 反逆者グルーデック・エイノアよ!」
クルーザーの戦闘に立ち拡声器でストラー・グアバランがそう言う。
その言い方から敵は連邦軍だと判断出来る。
「速やかに投降しろ!」
ジェノアスがビームスプレーガンをクルーザーに向けた事で拒否すれば、即座にジェノアスによってクルーザーが沈められることは容易に予測は出来る。
その為、グルーデックは抵抗することなく投降する。
「さぁ、乗るんだ」
グルーデックは手錠をかけられてグアバランの方のクルーザーに移動させられる。
「で……何で私まで捕まる訳?」
その後ろにはエリーゼもグルーデック同様、手錠をかけられている。
「お前たちにはウィンターガーデンやサザーランドポートでのテロ行為やルカイン崩壊の嫌疑その他諸々がかけられている」
ウィンターガーデンの一件はともかくサザーランドポートやルカインの件はエリーゼ達も巻き込まれただけだが、言い訳をしたところでグアバランが聞く訳もなさそうな上連邦軍から見れば今までの行いはテロ行為そのものな事もしている為、言ったところで無意味であるので、エリーゼも素直にクルーザーを乗り移る。
「調べさせて貰ったよ。家族を殺された恨みを晴らそうと言うのか? 得体の知れない異星人を相手に」
「得体が知れないのは連邦軍の方だ。連邦軍はUEの正体を隠蔽している」
グルーデックの言葉をグアバランは信じることはなかったが、エリーゼは顔にこそ出さないが内心は驚いている。
彼らが組織として動きている事はエリーゼも知っているが、連邦軍がそれを知っていたのは驚きだ。
「何を言っている」
「さぁな」
グルーデックは思わせぶりにそう言い、グアバランはその言い方にイラつく。
その半面、グルーデックは余裕の笑みを浮かべている。
すると、クルーザーに大きな影が移り上空から巨大な塊が落ちて来て、その時に発生した波でクルーザーが揺れる。
「呼ばれて来てみれば、面白い状況になってるじゃないか」
落ちて来たのはガンダムZERO Gだった。
クライドがアブディエルでアサルトアーマー装備時の調整を終わらせていると、残されて来たフリット達からグルーデックとエリーゼが
連邦軍に捕まったと言う知らせを聞き、修理の終えたグラディウスアーマーの調整がてら出撃したのだった。
「エリーゼ、新しい趣味に目覚めたのか? 流石にそこまでのプレイは俺には無理だぞ……」
「馬鹿なこと言ってないで助けなさい!」
「了解」
ガンダムZERO Gはジェノアスの方を向く。
ジェノアスもそれに対してビームスプレーガンを向ける。
「余り派手にやり過ぎると後が面倒だな」
ガンダムZERO Gは両腕の装甲からビームソードを展開する。
そして、ジェノアスに突っ込む。
ジェノアスはビームスプレーガンを放つがガンダムZERO Gはシールドで防ぎながら、接近するとビームソードでビームスプレーガンを破壊して、ジェノアスの両足を切り裂いてジェノアスは川に仰向けに倒れる。
「次だ」
ガンダムZERO Gはもう一機のジェノアスの方を向く。
ジェノアスはビームスプレーガンで応戦するが、ガンダムZERO Gは攻撃を避ける事なくゆっくりと前進する。
ジェノアスの攻撃はガンダムZERO Gに当たるもガンダムZERO Gの装甲を傷つけることは出来ない。
ゆっくりとジェノアスに接近したガンダムZERO Gはビームソードを振り下ろす。
ジェノアスはシールドで防ごうとするが、ガンダムZERO Gの一撃はシールドを簡単に両断しジェノアスの左足を切り裂きジェノアスは倒れる。
「さてと……形勢逆転ってところか……大人しくその二人を解放しろ。しないと分かってるな?」
クライドはガンダムZERO Gの頭部のビームバルカンをクルーザーに向けてグアバランを脅す。
グアバランは何とか、二人を渡さないようにするが後から追って来たフリット達のクルーザーに追いつかれて銃を突きつけられて形勢は完全に逆転した。
グアバランは大人しく二人を解放し、グルーデック達は急いでディーヴァに戻る。
「まさか、アレで終わりだと思っていないだろうな」
グルーデックがディーヴァに戻り、港が抑えられる前に出港するが、その前にグアバランが率いるダーヴィン級戦艦が三隻待ち構えていた。
「そう簡単には逃がさんよ。反逆者ども」
グアバランはこれから始まる艦隊戦の次の手を考えながらチョコバーをかじる。
ディーヴァはゆっくりと前進し、ミンスリーから出る。
グアバランはディーヴァが動く前に制圧することも出来たが、敢えてそれをすることなく待ち伏せしている。
グルーデックもその意図に気づいてミンスリーから出て艦隊戦に挑む。
「そう、そう、そうでなくっちゃな。誰一人逃がさんよ。そのままその船を牢獄にしてやる」
「それにしても素直に出て来ましたね」
グアバランの副官はディーヴァ側はもう少し抵抗するかも思っていたが、その様子は見られない。
「自信があるんだろう。グルーデックは優秀なコンピュータエンジニアと言うだけでなく、参謀としての作戦立案能力にも長けているからな」
グアバランもすでにグルーデックの経歴には目を通している。
グルーデックは参謀としての能力を買われてアリンストン基地で副司令の地位にまで登り詰めている。
だからこそ、このディーヴァの行動はグルーデックが艦隊戦で勝つ自信の表れだと思うとグアバランはうれしく思う。
「はやり軍艦乗りはこう言うシュチュエーションじゃ燃えねぇよな」
先の事はグアバランのやり方とは言えない。
だが、今度は自分の得意とし、最も望むやり方でグルーデックをやり合う事が出来る。
その事にグアバランは闘志を燃やしている。
「燃えるのは結構ですが、艦長……食べ過ぎには注意してください」
「ほっとけ! フル稼働の俺の脳がチョコを欲してんだよ!」
副官は先ほどからいくつものチョコバーの袋を開けているグアバランに注意するが、当のグアバランは気にする様子はない。
「さて……どう動く、グルーデック・エイノア」
「MS部隊に伝えろ出撃準備だ」
グルーデックも艦隊戦に備えてMS隊の出撃を準備させる。
ディーヴァのカタパルトハッチが開き、Gエグゼスとジェノアスがカタパルトに移動される。
ラーガンのジェノアスはミンスリーに滞在時に装甲が二重に強化され、マッドーナ工房製の新兵器のドッズガンを装備している。
ディーヴァがMSを射出する前に連邦軍が閃光弾を放つ。
放たれた閃光弾が爆発し、強い光を放つ。
その光が収まった時にはディーヴァのカタパルトやブリッジの前にジェノアスがビームスプレーガンを構えている。
グアバランは閃光弾の発射と同時にMSを出して、閃光で出来た隙にディーヴァのカタパルトとブリッジを抑えていた。
それによりディーヴァは下手に動く事が出来ない状況に持ち込まれた。
目暗ましからの強襲は古典的な策だが、ディーヴァ窮地に立たせるには絶好の策となった。
「私は地球連邦軍第8宇宙艦隊特別分遣隊司令官のストラー・グアバラン中佐だ」
グアバランはディーヴァに回線繋いで警告を始める。
「貴様らは完全に包囲された。速やかに武装解除をして投降しろ。さもなければ敵対勢力として攻撃を開始する」
グアバランは未だにグルーデックらを敵とみなしていない様な口ぶりだが、銃口を向けている以上敵と見なしていると同義だ。
「待って下さい!」
状況が最悪な中、アダムスが立ちあがる。
「誰だ貴様は?」
「自分はディーヴァの航行統括のアダムス・ティネル少尉であります。我々には連邦軍と敵対する意思はありません」
元々、連邦軍を離れたのはヴェイガンと戦う為であって連邦軍を裏切る意思はない。
だからこそ、話せばそれが理解して貰えると思ってアダムスはグアバランにそのことを話す。
「グルーデック艦長は独自に調査を行い海賊が使っていた要塞にUEが潜んでいる事を付きとめました。我々は今こそUEに反撃すべきと考えます。この作戦が成功すればUEに大打撃を与える事が出来ます。ですから、グアバラン中佐……第8宇宙艦隊にもご協力を……」
連邦軍と敵対する意思がない以上、第8艦隊の戦力も加えることが出来るかも知れない。
そう考えるが、グアバランの答えはそう上手くは行かない。
「成程……面白そうな話だ。だが、貴様らは凶悪なテロリストと手を結んでいる。そんな奴らの事を簡単に信用することは出来んな」
連邦軍からすればパラダイスロストは凶悪なテロリストだ。
先ほど、パラダイスロストの幹部のエリーゼとディーヴァの艦長のグルーデックが一緒に居る事はグアバランに知られている。
その為、アンバットへの攻撃はともかくとして、連邦軍に敵対する意思が無いと言ったところで説得力にかけていた。
「それは貴様も軍人なら分かるはずだ。そして、私の任務はあくまでも反逆者のグルーデック・エイノアの拘束だ」
グアバランも軍人である以上、上からの任務を全うしなければならない。
それが敵軍への大打撃を与えるかも知れない作戦を妨害することとなっても、立場的には上の指示を仰ぐ事なく独断で作戦を決行しようとしている彼らに非があるからだ。
「さて……返事はどうする?」
グアバランだけでなく、ディーヴァのクルーもグルーデックの返事を待つ。
だが、グルーデックは何も言わずに静寂が流れる。
「答えんか……ならば仕方がない。好みではないが力ずくで行かせて貰う」
それは交渉の決裂を意味した。
グアバランの合図でジェノアスがビームスプレーガンを放とうとして緊張が走るが、ジェノアスのビームスプレーガンが放たれる事は無かった。
その前にビームスプレーガンがビームで撃ち抜かれたからだ。
「どうした!」
突然の事で他のジェノアスのパイロットが動揺している内にジェノアスとGエグゼスが出撃し、ジェノアスを弾き飛ばすとビームスプレーガンを破壊する。
「良くやったぜ! フリット!」
ミンスリーの影からフリットのガンダムAGE-1Nがドッズライフルを構えて出て来る。
グルーデックは最悪の事態を想定し、ミンスリーを出る前にガンダムAGE-1Nだけ先に出撃し、ミンスリーの影に隠れさせていた。
「グルーデックさん! 今の内に逃げましょう!」
「いや……恐らく無理だ」
グルーデックはグアバランがこの程度で逃がしてくれる相手ではないと思っている。
その証拠にすでに敵艦の主砲に補足され、敵MSに包囲されている。
今からでは対ビーム拡散弾を使う前に敵艦の主砲の餌食になる。
ガンダムAGE-1Nの投入で窮地を脱したが、状況が好転した訳ではない。
「さぁ……どうする? グルーデック」
もしも、グルーデックが反撃をしても落とせる戦艦が一隻で、すぐに他の二隻の戦艦でディーヴァを沈めることが出来るため、グアバランは自軍が優勢だと思っているがグルーデックは状況は優勢だと思っている。
その自信の根拠はミンスリーの別の港に停泊していたザラム・エウバ連合とアブディエルの存在だ。
ブリッジとカタパルトさえ抑えられて居なければ、艦隊をザラム・エウバ連合とアブディエルで挟撃出来るからだ。
連邦軍を挟撃するためにエウバ・ザラム連合とアブディエルが連邦軍に攻撃を開始する。
本気で沈める気がないため、火力を抑えているがダーヴィン級の戦艦の装甲では被害は間逃れない。
だが、すぐにその砲撃が終わる。
「なぜだ! なぜ砲撃を止める! よもや同じ連邦軍だからと言って温情をかけたのではあるまいな?」
せっかく、不意を付いて攻撃を開始したが、グルーデックの指示で砲撃が止められた為、ラクトがグルーデックに理由を問いつける。
「そうではない。我々はこれからアンバットを攻略するのだ、弾薬の消費や艦への損害は出来るだけ抑えたい」
これから先は補給を受けられる訳ではない。
その為弾薬を節約し、艦の被害を抑えておきたい。
この戦闘で大事なのは敵を全滅させる事ではなく、この場を切り抜けてアンバット攻略戦に向かう事だ。
つまり、こちらの戦力を見せ付けてグアバランの艦隊を引かせれば勝利と言える。
だが、グアバランも任務で来ている以上、戦力を見せ付けたところで引くと言う選択肢はあり得ない。
連邦軍とディーヴァが睨み合っているとダーヴィン級の一隻の一部が爆発する。
「何だ!」
「艦隊後方よりも攻撃です! 詳細は不明!」
「あいつらまさか他にも戦艦を!」
副官はグルーデックが全ての戦力を出したように見せかけて不意打ちをしたと思ったが、それは間違いである事がすぐに分かる。
ダーヴィン級の索敵システムは何も捉えてはいない。
そして、後方からヴェイガンの戦闘艦と多数のガフランが現れた。
後方から出て来たヴェイガンは問答無用で戦闘に入り、連邦軍も応戦する。
だが、連邦軍のジェノアスではガフランとでは相手にならない為、次々とジェノアスが撃破されていく。
グアバランはディーヴァより先にガフランの相手をするもMSの性能差を埋める事が出来ないで戦力が失われていく。
ヴェイガンの襲撃によって連邦軍が一番窮地に立たされている。
主砲をディーヴァに向けていればディーヴァを抑える事は出来るが、ヴェイガンを抑える事が出来ない。
逆にヴェイガンに向けたらディーヴァに背を向けてしまう。
「どうすんの? グルーデック艦長? この隙に逃げちゃう?」
クライドはガンダムZERO Gの中から通信をディーヴァに繋いでそう言う。
このままでは最悪、ミンスリーが崩壊の危機にあるが、連邦軍に敵を押しつけて逃げるのは容易だ。
「これは好機だ。連邦軍の相手はUEに任せ、我々はこの宙域を離脱してアンバットに向かおう」
「馬鹿な! 同胞を見捨てと言うのですか?」
アダムスや他のクルーは連邦軍の軍人として敵と撃つために行動を起こしている為、敵対していたとは言え、連邦軍を見捨てる事に反感を覚える。
「違う。同胞ではない。あいつらは敵だ」
だが、ラクトがそれを一蹴する。
彼らからすればディーヴァは共に戦う同胞と認めたが、連邦軍を同胞と認めた訳ではないため助ける理由はない。
「艦長も言っていたではないか……弾薬の消費や艦への損害は避けたいと……これは千載一遇のチャンス!」
ラクトの言っている事の方が合理的だが、感情論では友軍である筈の連邦軍を身捨てたくはない。
「しかし!」
「それとも、敵を助け反逆者として捕まるつもりなのか?」
相手は連邦軍とは言え、グルーデックを反逆者として捕らえに来ている。
助けたところでその後に見逃して貰えるとは限らない。
寧ろ、先程のグアバランの態度から考えれば再び戦闘になる可能性が高い。
そうなれば無駄に戦力を消費することになる。
そして、その判断は艦長のグルーデックに任された。
「……主砲発射準備! MS隊は目の前のUEを叩け!」
「了解だ。こっちからは俺一人で十分だ」
グルーデックの決断はこの場でヴェイガンを叩くと言う事だった。
グルーデックの指示でディーヴァのMS隊は交戦に入り、アブディエルからもクライドがガンダムZERO Gで出撃した。
「連邦相手じゃ物足りないと思ってたんだよな」
ガンダムZERO Gはミンスリー滞在時に製造していた予備のドッズライフルを装備している。
「試し撃ちにはお前たちの方が良い」
ガンダムZERO Gはドッズライフルを放つ。
放たれたビームはガフランを貫く。
「って……いつもの奴が相手じゃノーマルのビームライフルとの比較が出来なかったな……」
ノーマルアーマーのビームライフルもガフランの装甲なら一撃で破壊出来る威力がある為、ドッズライフルとの威力の比較は出来そうにない。
「まぁ、良いか」
だが、クライドは気にすることなくドッズライフルを放ってガフラン落とす。
「下がって下さい! ここは僕達が!」
ガフランに落とされそうだったジェノアスを助けてフリットがそう言う。
ジェノアスのパイロットは機体が破損している為、大人しくフリットに従う。
「おらおら! アンバットの前哨戦としては丁度良いな!」
Gエグゼスはガフランのビームバルカンを避けてビームライフルでガフランを落とす。
「俺だって!」
ラーガンのジェノアスは新兵器のドッズガンを連射する。
ガフランは回避していたが、避けきれずに被弾する。
ドッズガンはガンダムAGE-1Nのドッズライフルの簡易量産をしたライフルでドッズライフル程の威力はないが、ガフランの装甲を貫く威力は持っている。
ガフランは直撃を受けてバランスを崩すとジェノアスはドッズガンを何度も撃ち込んでガフランは遂には爆散する。
ガンダムAGE-1Nはガフランにドッズライフルを放つが思うように当たらない。
「僕達は……」
ガフランがビームサーベルを展開して切りかかりガンダムAGE-1Nはシールドで受け止める。
「アンバットに行ってUEを叩くんだ! こんなところでやられる訳にはいかないんだ!」
「この感じ……フリットか?」
クライドは不意にフリットの感覚を感じる。
そして、フリットにはノーラでの戦いの時のように敵の動きの先が見えていた。
その先にドッズライフルの銃口を向けてビームを放つ。
ガフランは自らビームに当たりに行ったかにように撃墜される。
フリットはその様子に驚くが、考えている暇はない。
ガフランがビームサーベルで切りかかり回避する。
攻撃を回避するとビームサーベルでガフランを両断する。
別のガフランがビームライフルを放つが、ガンダムAGE-1Nは避けてビームサーベルを投げるとガフランの頭部に突き刺さり、ドッズライフルで止めを刺した。
「どうして、僕にこんな事が出来たんだ……敵の動きが見えるようだった……」
「やはり、フリットも俺と同じ……Xラウンダーの素質を持っているのか」
フリットは一連の自分の動きに驚くが、クライドは今の動きでフリットがXラウンダーであることを確信していた。
「良い腕だな……ディーヴァのパイロット達は」
ディーヴァの参戦で戦闘は楽になった為、グアバランはディーヴァのMS隊の動きを見る余裕が出て来た。
「艦長! ディーヴァ急速接近! 熱源センサーが主砲の充電を確認!」
だが、助けられた事を喜んでいる暇も無かった。
ディーヴァが前進して主砲をこちらに向けている。
すでに状況は連邦軍の不利になっている。
「まさか! 相打ち覚悟でこちらに向かって来ているのか!」
「……いや違うな」
副官はディーヴァが相打ち覚悟であると思ったが、グアバランにはグルーデックの真意が理解出来た。
「最大船速でディーヴァ主砲射線上から離れろ! 奴らに道を開けるんだ!」
グアバランがそう叫び、ダーヴィン級はすぐにディーヴァに道を開けた。
そして、ディーヴァは速度を落とす事なくグアバランの搭乗艦の横を通っていく。
「撃てぇぇ!」
ダーヴィン級の横を抜けるとディーヴァの主砲がヴェイガンの戦闘艦に放たれる。
ディーヴァの主砲は戦闘艦に直撃する。
戦闘艦を沈める事は出来ないが、動きと止める事は出来る。
「全く……俺達を敵への目隠しに使うとはな」
グルーデックは敵に攻撃を悟られないようにグアバランの船をブラインドとして使った。
それに気づいていたからこそ、グアバランもグルーデックに道を開けた。
「ヘイローズ、ウォーデンに回線開け! こちら艦隊司令、全艦急速左回頭、射撃システムの相互リンク確認、目標UE艦に変更! エネルギー充填準備……一斉砲撃!」
三隻のダーヴィン級から一斉砲撃が開始され、ディーヴァの主砲も含めて戦闘艦に集中砲火が浴びせされる。
四隻からの集中砲火を浴びせ戦闘艦は後退し、残っていたガフランも撤退する。
「やれやれ……何とかなったか」
敵が後退しグアバランは一息つくが、ディーヴァからの通信が入る。
「助けられたな。我々を見捨てば楽に逃げられた物を」
「私はUEと戦っただけだ」
「そうか……次に会う時は一緒に酒でも飲みたい物だな。勝利の美酒って奴を……反逆者グルーデック・エイノアは我々がUEとの交戦中の混乱に乗じて逃亡した。それが今日、ここで起きた事だ」
それはつまり、グアバランはこの場を見逃すと言う事だ。
副官も驚くがそれをグアバランが納める。
そんなグアバランにグルーデックは敬礼をし、グアバランも敬礼を返す。
「健闘を祈る。勇敢な反逆者よ」
グアバランはグルーデックがパラダイスロストと手を組んだ事も全てがアンバットを攻略するためだと割り切り、軍を離れてもヴェイガンとの戦いをやり遂げようする勇敢な反逆者であるグルーデックの勝利を願い彼らを見送った。