機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第27話

コロニー「ミンスリー」を出港し、数日が経ちその間に敵と遭遇することなく無事にアンバットの防衛圏内に接近していた。

 戦列は旗艦のディーヴァを中心として、前衛にアブディエルが配置され、左右にエウバ・ザラム連合が配置される形となっている。

 アンバット攻略戦を前にアブディエルのクライドを除くパイロットがブリーフィングルームに集まっている。

 以前の戦闘でアンバットの戦力を身を持って知っている。

 その上、この作戦では自分達が一番槍になる事は決定している。

 作戦と戦力を考えると妥当だが皆の表情は硬い。

 

「そう言えば、決戦が終わったらどうする?」

 

 作戦前に堅くなっている皆の緊張をほぐすために年長者のシャルルが話題を切り出す。

 

「何だよ。急にさ」

「いや……なに、次の戦いが山だと思ってね。厳しい戦いになるのは分かってる。だから、その後の事を考えれば少しは希望が持てると思ってね」

 

 この戦いで地球とヴェイガンの戦いが終わるだけではないが、戦いが終わった後の事を考えれば少しは緊張がほぐれると思って切り出した。

 

「んで、言い出しっぺのシャルから話せよ」

「俺? 俺は娘に会いに行くよ」

 

 シャルルはそう言ってデータ端末を出す。

 端末には赤ん坊を抱いているシャルルの妻、ローザが映されている。

 

「産まれたんですか?」

「ああ……ミンスリーに居る間にな」

 

 シャルル達がミンスリーで作戦会議をしている間にシャルルの娘が生まれていたが、その知らせを聞いたが、状況的に娘に会いに行く事が出来なかった為、サザーランドポートから妻と娘の画像データを送って来て貰っていた。

 

「名前はシャルロット、将来はローザに似て美人になるだろうな」

 

 シャルルは少し照れながらもそう言うと娘に会う前から親馬鹿全開のシャルルに自然と笑みが零れる。

 

「会えると良いな……んじゃ、次はアタシだな。アタシは……別にないんだよな、アレクも死んじまったし……いつまでもアニキについて行くって訳にもかなねぇしな」

 

 ジゼルは拉致されたアレクを探すために戦っていたが、ルカインで死んだ為、戦う理由はすでに失われている。

 今はレオナールの為に戦っているが、戦いが終わればそれも終わる。

 

「でしたら……その……僕とずっと居て下さい!」

 

 ジゼルが今後の事を考えているとレオナールが意を決して叫ぶようにいる。

 

「…………は?」

 

 突然の事態にジゼルは目を点にしている。

 

「それってプロポーズだよな。俺も思い出すよ。ローザにプロポーズをした時をな」

「それで、返事はどうするんですか? 男にここまで言わせて置いて、何も答えませんよ女が廃りますよ」

 

 思考が完全に停止しているジゼルに追い打ちをかけるようにシャルルとアリスがそう言う。

 そう言う二人は心無しか、状況を楽しんでいるように見える。

 

「……プロポーズ?」

「そうです。男女が将来を近い合う事を言うんですよ。ユーリア」

「へ? いや、僕はそんなつもりで……」

「違うんですか? だとしたら酷いですね。女性に思わせぶりは事を言って」

 

 うろたえるレオナールもアリスが追撃を加えた。

 レオナールは顔を真っ赤にしていたが、覚悟を決めた。

 

「分かりました! ジゼルさん! 僕と結婚して下さい!」

「おっおう……」

 

 レオナールの気迫に押されてジゼルは頷くが、自分が何を言われたのかに気づくと顔を真っ赤にする。

 

「まぁ……お前が生き残ったら考えなくもない……そんでアリスはどうすんだよ!」

 

 この空気に耐えられなかったジゼルはまだ、今後の事を言っていないアリスに話しを振る。

 

「私は昔も今もこれからもアスノ家に使えるだけです」

 

 アリスは考える事なくそう告げる。

 

「私は……エリーゼにうちの子にならないかって言われている」

 

 最後に残ったユーリアがポツンとそう言う。

 ユーリアは以前からエリーゼに自分の養子にならないかと持ちかけられていたが、家族と言う物を知らないユーリアにはすぐに答える事

 

が出来ずに保留となっていた。

 

「艦長がね。良いんじゃないか? ユーリアくらいの歳の子供は戦場に居るよりかは親に甘えて普通に暮らすのが一番良い」

 

 娘が生まれて父親になった今のシャルルだからこそ、そう言える。

 

「……うん」

 

 ユーリアも少し嬉しそうにコクンと頷いた。

 

「どちらにせよ。全ては生き残らないとな」

 

 シャルルがそう締めてアブディエルのパイロットは生き残る為に一致団結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に強いよ……お前らは」

 

 その会話をクライドはブリーフィングルームの外で盗み聞きをしていた。

 クライドが集めた仲間はこの状況でも前を向き笑って未来を語っている。

 復讐と言う過去の為に戦い、未来ではなく過去を向いて戦っている自分には眩しい光景だった。

 

「何してるの?」

 

 後ろからブリーフィングの為にやって来たエリーゼが声をかける。

 

「中でみんなが未来について話してんだよ」

「へぇ……クライドは?」

「俺?」

「そう。クライドの未来は?」

 

 エリーゼもクライドが未来の為ではなく過去の為に戦っている事は知っている。

 だが、敢えて質問する。

 そうする必要があるからだ。

 

「俺は今まで、復讐の為に……過去の為に戦って来たからな……父さんや母さんの仇が討てればそれで良いって思っていた。だから、正直な話し復讐の先の話しなんてどうでも良かった。でも……今はMSを弄って生きていければそれ良いって思ってる」

「そこに私は含まれているの?」

「さぁな……それよりお前はどうなんだよ?」

 

 クライドが逆にエリーゼに聞くとエリーゼは待ってましたと言わんばかりの顔をする。

 

「私はね。まずはユーリアを私の娘にするの。その後はクライドと結婚して、子供は……何人でも良いわ。そんでもってどっかの平和なコロニーで暮らすの」

「それは良い未来だ。一応聞いて置くがそこに俺の意思はあるのか?」

「無いわよ」

 

 クライドはさも当然のように言うエリーゼにうんざりしながらも内心ではエリーゼに感謝していた。

 未来の事を殆ど考えていない自分の代わりにエリーゼが自分の未来まで考えてる。

 なら、自分は自分の納得のいくまで戦う事が出来る。

 クライドはそのエリーゼの強引さにいつも助けられていた。

 思えば、初めて会った時もエリーゼが強引に付いてこなければクライドはここまで来る事も無かったろう。

 

「そうだな……エリーゼの人生に付き合うのも悪くない」

「でしょ」

 

 エリーゼは満足げな顔をして二人はブリーフィングルームに入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……今回の作戦は聞いての通り私達が一番槍を務めるわ」

 

 ブリーフィングが始まり、先ほどまでの空気から元の重い空気になるが、先ほどまでとは違い、パイロットは皆緊張よりも生き残る為の決意が見える。

 

「事前情報では敵の数は前にアンバットで戦闘した時よりも多いと見て良い。だが、そんな事は関係ない。俺達の選択肢は二つ、勝つか戦わないかだ。そして、俺達は戦う道を選んだ。つまり、この戦いは勝利しかない」

 

 クライドの話しを皆は黙って聞く。

 クライドの言う通り戦う以上は勝つしか道はない。

 だからこそ、皆の心は一つだ。

 戦いに勝つ。

 そして、皆でまたアブディエルに帰って来る。

 それだけだった。

 

「全員生きて帰れよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンバットの防衛圏内に入ります」

「光学カメラが敵要塞を捉えました」

 

 ブリーフィングを終え、全艦が戦闘体勢に入ると一番戦闘のアブディエルがアンバットの防衛圏内に入る。

 モニターには敵の母艦やMSらしき物は映されてないが、ヴェイガンは高いステルス技術を持っている為、映像に映らずレーダーに反応がなくてもそこに居る事は間違いない。

 

「MS隊発進後、敵要塞に対して砲撃を開始します」

 

 エリーゼがそう言いアブディエルのカタパルトハッチが開閉する。

 そこにはすでにガンダムZERO Jとデスドールが準備している。

 今回ガンダムZEROはジェノサイドアーマーを装備している。

 デスドールもバックパックにビームサイズを二本に増やしており、右手にドッズガン、左腕にシャルドール用のシールドを装備し、シールドには新型のビームサーベルが装備されている。

 

「クライド、任せるわ」

「ああ……了解した。エリーゼ……愛してる」

「私も愛してるわ。クライド」

「クライド・アスノ……ガンダムZERO J、出る」

 

 ガンダムZERO Jが射出されると次はデスドールの射出準備が始まる。

 

「アリス、クライドを頼むわ」

「分かっています。アリス・バッセル……デスドール、出撃します」

 

 デスドールが射出され、カタパルトにジゼルのナイトルーパーとレオナールのジェノアス改が移動して来る。

 ナイトルーパーは両手にガンダムZERO N用のビームライフルを持っている。

 バックパックに装備されていたロングビームサーベルは新型のビームサーベルに代えられている。

 一方のジェノアス改はマシンガンの代わりにドッズガンを装備し、シールドにはマシンガンの予備の弾装の代わりに新型のビームサーベルを装備している。

 

「ジゼル、レオナールとの約束を守る為に帰って来なさいよね」

「分かってるって、姐御。ジゼル・エストレ……ナイトルーパー、出るぜ!」

 

 ナイトルーパーが射出され、今後はジェノアス改の準備が始まる。

 

「レオ、ジゼルに告った男気をUEに見せて来なさい!」

「はい! レオナール・クレマン……ジェノアス改、行きます!」

 

 二機が射出され、残っているGレックスをジェノワーズがカタパルトに移動する。

 Gレックスとジェノワーズの二機の武装は通常時のままだ。

 

「せっかく、娘が生まれたんだから、死んだら駄目よ」

「そのつもりだ。シャルル・ラファルグ……Gレックス、出るぞ」

 

 Gレックスが射出され、最後はジェノワーズの番だ。

 

「ユーリア、帰って来たらあの話の返事を聞かせて貰うわ」

「……うん。行って来る。ユーリア・ミルワード……ジェノワーズ、出撃します」

 

 アブディエルのMSが全機出撃し、ディーヴァをはじめとした全戦力が展開すると、戦闘の準備が整う。

 今回の戦闘でエウバ・ザラム連合のMSもドッズガンと新型のビームサーベルを装備し、ヴェイガンのMSに対しても十分な攻撃力を持ってアンバット攻略戦に臨んでいる。

 

「では、作戦通りに頼む」

「分かりました。私達が責任を持ってディーヴァの道を開きます。全砲門を開け! 目標、敵要塞!」

 

 アブディエルは全砲門での一斉掃射をアンバットに集中砲火をかける。

 全艦をもっても一斉掃射が収まるが、アンバットに変化はない。

 

「怖いくらいに静かね……」

 

 アンバットに敵がいる事は間違いはない。

 だが、この砲撃に対しての動きはまだない。

 まるで嵐の前の静けさのようだ。 

 

「艦長! 要塞に動きありです!」

 

 そして、その嵐がやって来る。

 アンバットに光学迷彩を使い潜んでいたヴェイガンの部隊が現れる。

 

「敵戦力は大型母艦が1、戦闘艦が推定10隻以上、MS型は測定不明です!」

「向こうも準備は万端で待っていてくれた様ね……」

 

 アンバットの前方に展開しているヴェイガンの部隊はファ・ボーゼを中心として戦闘艦が10隻以上にガフランやバクトが合わせて約200機以上が展開している。

 その戦力にヴェイガンとの戦闘経験の豊富なアブディエルでも戦意を喪失仕掛けるが、クライドのガンダムZERO Jが前に出る。

 

「まだ、こっちの予測の範囲内だ。作戦通りに行く」

 

 ガンダムZERO Jはハイパービームランチャーを構える。

 

「まずは出来るだけ一掃する」

 

 クライドは引き金を引いてハイパービームランチャーを放つ。

 戦闘自体は始まっている訳ではないため、射線上には敵しかいない為、友軍を巻き込む心配はない。

 その為、先制の一撃を入れる為にガンダムZERO Jは大火力のジェノサイドアーマーを始めに装備している。

 ハイパービームランチャーの一撃は射線上の敵機を容赦なく吹き飛ばしていく。

 

「ちっ……フルパワーは予想以上だ」

 

 設計時にはAGEドライヴを搭載していないため、最大威力はクライドの予想を遥かに超えていた。

 

「不味いな……」

 

 ガンダムZERO Jはハイパービームランチャーを投げ捨てるとランチャーは爆発を起こす。

 威力が強すぎた為にランチャー自体が最大威力に耐え切れなくなっていた。

 だが、その一撃は敵の数を大きく減らし、戦闘艦も何隻がを沈める事が出来ている。

 

「まぁ、それなりの戦果は出たから良いか」

 

 ガンダムZERO Jの一撃は当初の予定よりも与える打撃こそは少なかったが、その圧倒的な火力は一般機のパイロットに自分達でも勝てる

 

のではないかと言う意識を植え付ける事には成功している。

 

「後はお前たちに任せる。俺が戻るまで持たせよろ」

 

 クライドはそう言って、アブディエルに向かう。

 ハイパービームランチャーを失った今のガンダムZERO Jには頭部のバルカン以外の武器は装備していない為、戦いが始まったばかりの戦場では何の役にも立たない。

 その為、アブディエルに戻り別のアーマーに換装する必要がある。

 だが、ガンダムZEROが抜けたところで戦闘が中断する訳ではないので、クライドが戻るまでの時間をアブディエルの他のMSが稼ぐ手筈になっている。

 

「任せとけよ! アニキが戻る前に全滅させてやるよ!」

「それ、無茶です」

 

 ジゼルのナイトルーパーが飛び出して両手に持っているビームライフルを連射する。

 ナイトルーパーの後方からレオナールのジェノアス改がドッズガンで援護する。

 

「おらおら! さっさと落ちろよ!」

 

 ナイトルーパーの攻撃で次々とガフランが撃墜されていくが、バクトが電磁装甲でビームを防ぐ。

 

「ちっ……邪魔なんだよ!」

 

 ナイトルーパーは左手のビームライフルを捨てると、ビームサーベルを抜いてバクトの両腕を肘から切り裂く。

 両手の両断されたバクトをジェノアス改がドッズガンで仕留める。

 

「やるね。あの二人、俺も負けていられないな」

 

 Gレックスはビームライフルを腰のバインダーに収めるとバインダーキャノンでガフランを撃ち抜く。

 

「シャルロットの為にも俺は負ける訳にはいかない!」

 

 Gレックスは両手にビームサーベルを抜いて小型シールドに装備しているガトリング砲で牽制しながらビームサーベルでバクトを切り裂いて破壊する。

 バクトを破壊すると、数機のガフランのビームバルカンの集中砲火を浴び、キャノン砲を撃ちながら回避する。

 キャノン砲の砲弾はガフランに直撃し、動きが止まるとユーリアのジェノワーズがビームライフルでガフランを撃破する。

 

「助かった!」

「……次来る」

 

 前方からガフランが押し寄せて二機はビームライフルで応戦する。

 

「くそ……数が多い!」

「……でも負けない」

「当然です」

 

 アリスのデスドールが敵の攻撃をかわしながら、ドッズガンで的確にガフランを落としていく。

 ガフランもビームライフルで応戦するも、デスドールはかわして、接近するとビームサーベルで次々とガフランを撃破する。

 

「流石アリスだな……」

「うん……私達も負けてはいられない。私達は勝つ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディーヴァ、強襲揚陸モードに移行開始!」

 

 戦闘が始まり、一番槍のアブディエルのMS隊の奮闘もあり、ディーヴァが強襲揚陸モードへの変形するだけの余裕が出来ている。

 作戦の肝のディーヴァの新装備のフォトンブラスターキャノンを放つ為には強襲揚陸モードへの変形が必要となる。

 変形中はどうしても無防備となりディーヴァのMS隊だけでは防ぎ切れない可能性がある為、出来るだけ早くアブディエルのMS隊が敵の数

 

を減らす必要がった。

 グルーデックの指示でディーヴァは強襲揚陸モードへの変形を開始すうる。

 ディーヴァの機首が中央から真っ二つに割れるとカタパルトが90%回転する。

 艦の翼が纏められて強襲揚陸モードへの変形が完了する。

 

「これよりディーヴァはフォトンブラスターの誘導射程圏内に一気に突っ込む! MS隊は道を切り開け!」

 

 フォトンブラスターキャノンで敵に大打撃を与える為には有効射程範囲内で撃つ必要がある。

 だが、その距離まではまだ足りない。

 その為、全MSが一団となって敵の数を減らす。

 

「ちっ……アブディエルの連中を抜けて来た奴の数が増えて来やがる」

 

 ウルフが愚痴を言いながらも機体の両手にビームサーベルを持ち敵を落とす。

 ウルフの言う通り、アンバットに接近すればするほど、敵の数も増えアブディエルのMS隊だけでは手が足りずにディーヴァに取りつこうとする敵機が増えて来る。

 

「それにこっちの被害も出て来ている」

 

 ラーガンのジェノアスはドッズガンを連射する。

 戦闘が激化している為、ザラム・エウバ連合のMSも奮戦しているが確実に数が減らされている。

 

「それでも僕らは必ず勝つ! お前たちが好き勝手出来るのも今日で終わりだ!」

 

 ガンダムAGE-1Sはシグルブレイドでガフランを切り裂く。

 ディーヴァのMS隊も前線に加わりディーヴァの道を切り開く為に敵の数を減らす。

 そして、この戦場で活躍しているのは主力の二隻のMS隊だけではない。

 対ビーム拡散弾をばら撒いて敵からのビームを軽減しつつ、ザラム・エウバ連合も敵の数を減らすのに貢献している。

 その先頭にはドン・ボヤージに部下を託されたラクトのエルメダだ。

 

「ラクト様、UEの大部隊が来ます」

「右は俺達ジラ隊に任せろ。早さじゃエウバには敵わないが力で押し留めてやる」

「了解した。武運を祈る」

 

 ジラとゼノは二手に分かれて迎撃する。

 MS単体での性能は劣るが、友軍同士が連携を取り合い戦えば決してやられるばかりではない。

 

「ボヤージ……お前の死は長きに渡る我らの歴史を変えた。私もお前のようにこの命を貫きたいと思う!」

 

 ラクトのエルメダはドッズガンでガフランを撃ち抜き、爆発する前に蹴り飛ばす。

 

「あの世であったら、酒でも酌みかわそうぞ! 宴の用意をして待っておれ!」

 

 そして、その宴はヴェイガンとの戦いに勝利した祝杯にする為にラクトはエルメダを駆って敵を撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

「フォトンブラスターの有効射程まであと120!」

「MS隊はまだ、道を切り開けんのか!」

 

 予想以上に厚い敵の防衛網に思うように進む事が出来ずにグルーデックは声を荒げる。

 前線ではアブディエルのMS隊が未だに激戦を繰り広げてはいるが、突破するのは至らない。

 だが、戦力で劣る自分達には長期戦は無理だ。

 

「こう言う時のガンダムだよな。グルーデック艦長」

「クライドか……」

 

 ようやく装甲の換装を終え、ブリーズアーマーで再出撃して来たクライドがディーヴァに通信を繋ぐ。

 

「俺とフリットで道を切り開く。付いて来れるな。フリット?」

 

 クライドはそう言って敵陣に突っ込みフリットのガンダムAGE-1Sもそれに続く。

 

「フリット、ちゃんと付いて来いよ」

「分かってるよ……兄さん」

 

 二機のガンダムは敵陣に突っ込むと高速で敵陣を駆け抜ける。

 すぐに二機のガンダムは敵に囲まれて集中砲火を浴びる。

 だがガンダムZERO Bはその機動力を活かして、ガンダムAGE-1Sはその俊敏性を活かして攻撃を回避する。

 

「この感覚……あの時の……」

「この感じフリットか……」

 

 クライドとフリットは互いのXラウンダー能力に共鳴し合い互い感じている。

 そして、二人には敵の位置や攻撃のタイミングが見ている。

 ガンダムAGE-1Sは膝のニードルガンを上手く使いシグルブレイドで敵の数を減らし、ガンダムZERO Bは縦横無尽に駆け回りロングソードで敵を切り裂く。

 二機のガンダムは瞬く間に敵の数を減らす。

 

「侵攻ルート上の敵戦力、大幅に低下!」

 

 二機のガンダムが暴れたお陰で進路が開けた。

 

「フォトンブラスターキャノン! 砲撃準備! ディーヴァ最大船速!」

 

 道が開けた事でディーヴァはフォトンブラスターキャノンの砲撃準備に入る。

 艦内では砲撃の為にAGEビルダーをフォトンブラスターキャノンに接続し、充填に入る。

 ディーヴァがフォトンブラスターキャノンの砲撃準備に入り、MS隊の士気も上がっていく。

 残るは有効射程に入るだけだ。

 

「何としてもディーヴァを守り抜くのよ!」

 

 それまではアブディエルがディーヴァの盾をなる。

 敵MSやファ・ボーゼからの砲撃をありったけの対ビーム拡散弾を使い防ぎ最大船速でアンバットに向かう。

 その間にもMS隊も全機が必死にディーヴァに敵を取りつかせないように戦う。

 

「フォトンブラスターキャノンの充填率92%!」

 

 残り僅かな時間も永遠のように長く感じる。

 だが、充填は確実に進んでいる。

 

「敵艦! 有効射程内に入りました!」

 

 それは皆が待ち望んでいた一言だった。

 

「良し! エリーゼ!」

 

 後はディーヴァの前方でディーヴァの盾となって守っているアブディエルがどけばフォトンブラスターキャノンを敵に撃ち込む事が出来る。 

 

「アルフ!」

「ああ! 任せて!」

 

 アルフレッドは力の限り艦の操舵を回し、ディーヴァの前からどうこうとする。

 遂に有効射程内にディーヴァが入った事でアブディエルはその道を開ける為に大きくバレルロールを行う。

 アブディエルが完全に逆さになった頃にはディーヴァはアブディエルとすれ違い前に出る。

 

「目標! 敵UE艦! 撃てぇぇぇぇぇ!」

 

 ディーヴァに搭載されたフォトンブラスターキャノンが発射される。

 ガンダムZERO Jのハイパービームランチャーをも上回る一撃は射線上の敵機をあっと言う間に破壊し、ファ・ボーゼをも撃ち抜いた。

 ファ・ボーゼを撃ち抜いたフォトンブラスターキャノンはそのままアンバットを貫通する。

 フォトンブラスターキャノンに撃ち抜かれたファ・ボーゼは轟沈するが、戦闘艦の一部が離脱して、ディーヴァに向かう。

 

「UE巨大艦から分離した一部が急速接近しています!」

「緊急回避!」

 

 だが、回避行動も空しく戦闘艦はまっすぐディーヴァに向かって来る。

 

「特攻か!」

 

 その速度から考えるに特攻である可能性が高い。

 戦闘艦一隻で旗艦を沈める事が出来れば戦局は大きく傾く。

 戦闘艦を射程に捉えているMSが戦闘艦を攻撃するが、直撃を受けても破壊も出来ず進路を変えることも出来ない。

 

「駄目です! 避けきれません!」

「私が行く」

 

 友軍機がいる事もお構いなしの戦闘艦の前方にはラクトのエルメダが向かっている。

 

「あの船は私が止める。推進部にMSごと突っ込めば行動不能にすることくらいは出来る筈だ!」

「ラクトさん!」

 

 フリットが叫ぶが、ラクトは止まらない、現状で出来うる手段はこれしかなく、それを出来るのは位置的に自分しかいない。

 ならば、自分が行くしかない。

 ファーデーン防衛線で人類の意地を見せて死んだ、旧敵のドン・ボヤージに様に……

 

「ボヤージ……名誉の為ではない。仲間を生かすために私は逝くぞ」

 

 かつての自分はエウバの騎士としてザラムと戦い名誉の為に戦い死ねれば良いと思っていた。

 だが、今はその名誉の為ではなく、仲間を生かすためにその命を使おうと覚悟を決めた。

 

「お前のようにな……」

「駄目だ! ラクトさん! 死ぬなんて絶対に駄目だ!」

 

 フリットの言葉が届かずに死を覚悟したが、エルメダが戦闘艦に突撃する前に強力なビームが戦闘艦に直撃し、ラクトの特攻を防ぎ戦闘

 

艦を沈めた。

 

「こちら、ムクレド・マッドーナだ。我がシャルドール部隊はディーヴァに加勢する」

 

 戦闘艦を破壊したのはムクレドの赤いシャルドールだった。

 ムクレドのシャルドールは赤と白のツートンでツインアイをしている。

 ムクレド機には巨大なメガランチャーを装備し、他の8機のシャルドールはドッズガンにGエグゼスと同タイプのシールドを装備している。

 

「良いタイミングで出て来たな。おやっさん」

「まぁな。それと来たのは俺達だけじゃないぜ」

 

 ムクレドがそう言うとヴェイガンのMSにビームが降り注ぐ。

 

「あれは……ドレイク海賊団か?」

 

 それはエリーゼが呼んでいたバッカニア海賊団の生き残りとドレイク海賊団だった。

 海賊団のMSは前の様なジラやゼノ、ジェノアス、シャルドールの混合部隊でフランのグレートパイレーツ、エドウィンのゼノカスタム、シドウのカスタムシャルドールを先頭にほぼ全機がドッズガンと新型のビームサーベルを装備している。

 

「野郎ども! バッカニアの弔い合戦だ! アイツの墓標をいつまでも宇宙人どもに好き勝手させるなよ!」

 

 ヘンリーの掛け声と共に海賊も戦闘に加わる。

 バッカニアの戦死した場所であるだけに海賊の士気は非常に高い。

 そして、増援は海賊だけではない。

 

「エリーゼの奴……あいつらまで呼んでいたのか……」

 

 海賊とは別方向からいくつもの輸送船が接近してきている。

 その前にはMS隊が展開している。

 

「君にばかり良い格好はさせてはいられないからね」

「お前は……誰だっけ?」

「君は人を怒らせる天才だな!」

 

 冗談ではなく、本気でドミニクの事を忘れているクライドに激怒しながらも、今はクライドと争っている場合でない事くらいはドミニクにも分かっている。

 FAジェノアスはガトリング砲の代わりに装備して来たドッズガンを連射する。

 エリーゼは海賊団だけでなく実家のブランシャール運送にも声をかけていた。

 海賊がこれほど早くアンバットに来れたのもブランシャール運送が全力を持って送り届けたからで普通なら間に合う事はなかっただろう。

 そして、ブランシャール運送はアーヴィンに最低限の戦力を残して防衛隊をアンバット攻略戦の為に送り届けて来た。

 ドミニクのFAジェノアス以外はコロニー「サマーウォール」のクレマン邸の地下に隠してあった予備のジェノアス改を全機持ちだしている。

 ドッズガンや新型のビームサーベルには数に限りがある為、全てのMSに行きわたる事は出来なかったが、ジェノアス改は元々、対UE戦に置いて援護を前提にクライドが改良を加えている。

 なのでドッズガンや新型のビームサーベルを装備していなくとも、十分に戦力として数える事が出来る。

 

「MS各機! ブランシャール運送防衛隊の力を見せるぞ!」

「では、ドミニク、私は工房と合流し物資を届ける。MS隊の指揮は君に任せる」

「了解しました。社長」

 

 エリーゼの父、パトリックの乗った輸送艦を先頭にして輸送艦はマッドーナ工房にMSの弾薬や修理用の部品を届けるために戦場を迂回して行き、ブランシャール運送の防衛部隊も戦線に加わる。

 

「まさか、ここまでの戦力となるとはな……」

 

 マッドーナ工房、海賊、ブランシャール運送の参戦で大きく友軍の戦力が増強された。

 数の上ではファ・ボーゼを沈めたとは言え、アンバットの防衛力は健在で完全に優位にたった訳ではない。

 だが、開戦当初の圧倒的な戦力差から考えると戦力差はかなり埋まっている。

 それだけではなく、圧倒的な戦力を前にガンダムの力で繋ぎとめていたザラム・エウバ連合の士気もここに来ての増援で上がっている。

 UEに戦いを挑むのは自分達だけじゃない。

 その思いが兵の心を決して折れない。

 

「艦長! 後方より熱源です!」

 

 今度はディーヴァの背後から砲撃が飛んで来る。

 

「これは……連邦軍第8宇宙艦隊の物です!」

 

 ディーヴァの後方にはミンスリーで交戦したストアー・グアバラン率いる第8艦隊がMSを展開している。

 

「こんな時に……」

 

 第8艦隊のMSはディーヴァに接近するが、ディーヴァを攻撃することなく、通り抜けてガフランやバクトにビームスプレーガンを放つ。

 その行動にディーヴァのクルーも少なからず驚いている。

 第8艦隊と言う事は自分達を捉えに来た筈だ。

 しかし、第8艦隊のMSはディーヴァを狙う事はない。

 

「どうします? 艦長」

「今は友軍と見て良い」

 

 グルーデックはその行動から今だけはそう判断する。

 ディーヴァを沈めるチャンスをありながら、ヴェイガンとの戦いを優先している第8艦隊を敵と判断する必要は少なくとも今はない。

 

「よろしかったのですか? 今なら、ディーヴァを沈める事が出来ます」

 

 グアバランの搭乗艦で副官がそう言う。

 今のディーヴァは全戦力を前方のアンバットに向けており、後からは格好の的だ。

 

「構わん。たかが反逆者と人類の敵の巣……どっちを優先すべきか考えるまでもないだろ?」

「そうですが……」

「我々第8艦隊は逃亡した反逆者、グル―デック・エイノアを追撃中にUEの巣と遭遇、人類の敵であるUEから世界を守るために連中の戦力を利用し、これを攻撃……と言うのが筋書きってところだ。中々良い筋書きだろう?」

 

 グアバランは得意げにそう言いチョコバーをかじり副官は曖昧に頷く。

 結局のところ、グアバランも上からの任務に背く事なく、グルーデックらに力を貸したのも同様だ。

 それらしい理由を付けてもどこまで上が納得するかは分からない。

 だが、グルーデック達が軍を離れてまで戦っている以上、軍に属している自分達が敵を目の前に優先順位を間違えてはいけない。

 連邦軍は元はUEと戦う為に組織された軍隊だ。

 その敵が目の前に居る以上、それを無視することは連邦軍であることに反する。

 

「まぁ、その辺りの事はこの戦いに勝利した後にゆっくりと考えるさ」

 

 言い訳も考えるのも適当な理由をでっち上げるのも全ては戦いに勝利しなければ意味がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファ・ボーゼが沈められたね」

「侮ってはならないと言う事か地球種め……だが、圧倒的優位は変わらん」

 

 アンバットの司令部では指揮官のギーラ・ゾイが息子のアラベル・ゾイと共に戦闘の状況を見ている。

 敵の予想外の攻撃でファ・ボーゼが沈み戦力も半分近くが失っている。

 だが、ヴェイガンは未だにエース機を温存している上、数でもまだ優位に立っている。

 

「だが、侮った結果がこの失態だ。ギーラ・ゾイ」

 

 要塞の総司令であるギーラに対して、初老の男ナーガはそう言う。

 

「分かっています。Xラウンダーを投入すればすぐに終わりですよ」

 

 ギーラが物腰の低い態度で接する辺り、ナーガの組織での地位は彼よりも上であることは間違いないようだ。

 

「なら言いがな……場合によっては私がゼファーラで出ても良いぞ」

「貴方様の力は借りる必要はないですが一応の準備をしておいてくれると助かります」

 

 ギーラとしても敵を侮った結果がここまでの戦果と言える。

 それけでなく、総司令の自分よりも地位の高いナーガがここに居られて指揮に口を挟まれても正直な話邪魔でしかない。

 ならば、切り札の新型機で待機して貰った方が良い。

 

「良いだろう。ここはお前に任せるが、万が一の失態はお前で何とかしろ。その為にデファーズも持って来ていると言う事を忘れるなよ」

 

 ナーガはギーラに釘をさして、指令室を出て行く。

 

「フン……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラッド……私達に出撃命令が……」

 

 アンバットの一室でセリアが出撃命令が出た事をブラッドに伝えに来ていた。

 クライドと引き分けたあの日からブラッドは怖いくらいに大人しかった。

 だが、クライドと戦いに行きたいと言う欲求を最高の舞台で戦うと言う欲求で無理やり抑えたに過ぎない。

 戦闘が開始され、クライドの気配を遠くから感じた時にはその欲望が暴走仕掛けたている。

 それを何とか沈めていたが、ようやくそれを我慢しないで済む時が来た。

 セリアは欲望を抑える必要がなくなり、野に放たれた野生の獣の様なブラッドに圧倒された。

 

「ああ……アイツが来てるんだろ?」

「ええ……クライド・アスノのガンダムは来ているし、まだ落とされて無いわ」

「当たり前だ。アイツを殺す事が出来るのは俺だけだ。他の奴には無理だ」

 

 ブラットは心の底から楽しそうな笑みを浮かべるがそれを見ても恐怖心しか湧いてこない。

 セリアの動物としての本能が今のブラッドが圧倒的な強者であることを告げているのだろう。

 敵に回せば死しかあり得ないとまで思わせる絶対的な強者。

 

「そうね。ギラドの整備が終わり次第、出撃よ」

「ようやくだ……ようやく決着の時だ。クライド・アスノ」

 

 そして、戦局はヴぇイガンがエース機を投入しての新たな局面を迎える。

 

 

 

 

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