機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第28話

圧倒的な戦力差から始まったアンバット攻略作戦も中盤戦に突入している。

 序盤戦は戦力差をひっくり返すためにガンダムZERO Jとディーヴァの砲撃で数を減らし、マッドーナ工房を始めとした増援で戦局はディーヴァ側に傾きつつあるが、ヴェイガン側もファ・ボーゼを失うも、戦闘艦が数隻にアンバットの防衛力も残っており、アンバットに配備していた戦力も残っている為、未だに油断が出来ない状況での攻防が繰り広げられている。

 

「何だ……この感じは……」

 

 クライドは近くのガフランを両断して撃破していると、不意に背筋が凍りつくような感覚を覚える。

 周囲の敵に狙われている訳ではない。

 だが、直感的に無視が出来る感じでもない。

 

「ドミニク、少し持たせてろ」

 

 クライドは近くで戦闘をしているドミニクにそう言ってアブディエルに戻っていく。

 

「何処に行くつもりだ! アスノ!」

「戻って装甲を換装する」

 

 本来なら、ブリーズアーマーの損傷は殆どなく、装甲を換装する必要はないが、クライドにはどうしてもこの背筋の凍る気配を無視することが出来ずに、アーマーの換装をすると決めた。

 

「アブディエル、今から戻る。すぐにグラディエーターの用意をしておいてくれ」

「どう言う事?」

「説明してい時間はない。頼んだ」

 

 理由が漠然とし過ぎている為、説明をしたところで納得をして貰うには時間がかかる。

 だが、この気配の相手が出て来るのには差ほど時間がかからないように思えた。

 エリーゼも事態は良く分からないが、クライドの剣幕で理由を聞いている暇がないと判断し、すぐにグラディエーターアーマーへの換装準備をさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おらおら! あの時の借りを一億倍にして返してやりよ!」

 

 フランのグレートパイレーツは装備して来たドッズガンを連射する。

 命中精度は決して高くないが、敵の数を減らす事には貢献している。

 グレートパイレーツは鉄球がヴェイガンのMSに対して効果がないが、直撃すれば動きくらいは止められる為、今回の戦闘でも装備してい

 

る。

 グレートパイレーツが鉄球を振りまわしてガフランに直撃すると、ガフランはバランスを崩し、そこにドッズガンを何度も撃ち込んで破壊した。

 

「だから……出過ぎだよ。全く……だけど、僕も前に出ないといけない理由がある」

 

 エドウィンのゼノカスタムは今回の戦闘ではシールドを装備し、ドッズガンとビームサーベルを装備している為、殆どエウバもゼノと変わらない。

 ゼノカスタムはドッズガンを放ってガフランを撃ち落とす。

 

「父さんの仇は撃たせて貰う!」

 

 エドウィンにとってこの戦闘は父親の仇討ちでもある為、自然に熱が入っている。

 そのせいもあって、ガフランが背後からの接近を許してしまい、ガフランはビームサーベルを振り下ろすが、その前にシドウのカスタム

 

シャルドールがビームサーベルでガフランを両断する。

 

「助かった。シドウ」

「油断大敵だ」

 

 カスタムシャルドールはドッズガンを装備していない代わりにビームサーベルを二基装備している。

 そして、シールドはヴェイガンのMSの攻撃に対して差ほど効果のある訳でもないため、外している。

 シドウのカスタムシャルドールは両手にビームサーベルを持ち、ガフランのビームサーベルで両断する。

 

「海賊ばかりに好き勝手に暴れさせるなよ。我らアーヴィン防衛隊の底力を宇宙人どもに見せつけるぞ!」

 

 FAジェノアスがビームサーベルでガフランを切り裂いて、ドミニクが部下を鼓舞しながら戦う。

 部下達もそれに合わせてマシンガンや各種火器で敵の動きを止めると、ドッズガンやビームサーベルを装備しているMSが敵を落とす。

 

「俺達も負けてられないな」

 

 ウルフのGエグゼスはビームライフルでディーヴァに取りつこうとしているガフランを撃ち落とす。

 増援の到着で戦闘に余裕が出て来たが、戦力の主力の自分達が休んでいる訳にはいかない。

 Gエグゼスの背後からガフランがビームサーベルを展開して接近するが、ガンダムAGE-1Sがシグルブレイドで切り裂く。

 

「すまねぇ!」

 

――――――凄いね。お兄ちゃん――――――

 

「この声……」

「何してる! 狙われるぞ!」

 

 フリットの頭の中に再び、デシルの声が響き、足を止めてしまう。

 GエグゼスはガンダムAGE-1Sの背後をカバーするように位置取りをしながらビームライフルを連射する。

 ガンダムAGE-1Sはそのままディーヴァから離れて行く。

 

「おい! フリット!」

 

 突然の行動にウルフは驚くが敵機の攻撃を機体のシールドで受け止めてビームライフルで反撃して、敵を落とす。

 

「くそ!」

 

 フリットを追おうにも、ウルフまで持ち場を離れてしまえばディーヴァの防衛はラーガンのジェノアス一機で守らればならない。

 そして、旗艦であるディーヴァが沈めば勝機は一気にゼロに近づく。

 その為、ウルフは動こうにも動けない。

 

「……私が行く」

 

 たまたま近くで戦闘をしていたユーリアがそう言ってフリットの後を追う。

 ウルフはディーヴァの防衛を優先して、ユーリアを見送る。

 

「隊長! あの赤い奴……がぁ!」

「どうした!」

 

 ドミニクが交戦している宙域で次々と友軍機のシグナルが消失している。

 

「ちっ……雑魚がうようよしてやがる」

 

 それは出撃命令が出たのでクライドと決着を付けるべく出撃して来たブラッドのギラドの仕業だ。

 ブラッドは出撃すると否や圧倒的な力を持って手当たり次第に敵機を撃墜して行く。

 その過程で敵の近くに居た友軍機にも構う事なく攻撃するため、すでにギラドの周りからは友軍機が撤退している。

 

「相手は一機だ! 集中砲火で仕留めろ!」

 

 ギラド一機に対して、隊の火力を総動員して攻撃するもギラドは火線をかわして確実に撃墜数を増やしている。

 

「化け物が!」

 

 FAジェノアスはギラドにドッズガンを連射するが、ギラドは両手にギラドソードを装備しFAジェノアスに接近してFAジェノアスの両腕を切り裂いて止めを刺そうとする。

 だが、ギラドはFAジェノアスに止めを刺す前に大きく機体を引かせると二機の間にビームが割り込んで来る。

 

「時間稼ぎ御苦労。後は俺がやる」

 

 それはグラディエーターアーマーに換装して来たガンダムZERO Gだった。

 ガンダムZERO Gは今回もドッズライフルを装備している。

 

「あぁぁ……感じる。ビンビン来るなぁ! クライド・アスノ!」

 

 ブラッドはFAジェノアスや他のMSの存在を忘れたかのようにガンダムZERO Gに向かっていく。

 

「やっぱ、俺を狙うか……今日はお前との面倒事にケリを付けさせて貰う!」

「この日をどれだけ待った事か……今日はどちらかは死ぬまで戦って貰うぞ!」

 

 ガンダムZERO Gとギラド、クライドとブラッド、二人のXラウンダーが再び激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラッドはガンダムと交戦を開始した様ね。もう一機のガンダムの方はデシルが行った……ならば、母艦は今の内に落とさせて貰うわ」

 

 セリアは出撃し、ディーヴァに向かう。

 敵の旗艦と思われるディーヴァを沈める事が出来れば、戦局は一気に傾くからだ。

 セリアのドラーズはビームガンで邪魔な敵機を落とす。

 だが、敵も今まで見たいに黙ってやられてくれる訳もなく、ドッズガンで反撃を受ける。

 

「あの新装備は厄介だけど……防げないレベルじゃないわ」

 

 ドラーズは左腕のシールドでドッズガンの攻撃を防ぎながら、ドラーズガンとドラーズキャノンで敵を落としていく。

 周囲の敵を粗方撃墜すると、ドラーズはディーヴァに向かう。

 

「何だ……新型機か?」

 

 ウルフはドラーズの接近にいち早く気づくとビームライフルを放つ。

 ドラーズはビームをかわすとドラーズガンを連射する。

 

「ガンダムもどき……邪魔はさせない!」

「やばいな……見た感じだと相当な火力を持ってそうだ」

 

 Gエグゼスはビームライフルを放ちながら、ドラーズに向かう。

 

「相手がガンダムでないのなら!」

 

 ドラーズはビームガンをGエグゼスに放ち、Gエグゼスはシールドで防ぎながらビームサーベルを抜いて接近する。

 ドラーズは左手にビームサーベルを展開して受け止める。

 

「火力が高いなら、接近戦に持ち込むだけだ!」

「厄介な機動力ね……」

 

 ドラーズとGエグゼスは一旦離れるが、ドラーズはドラーズキャノンを放つが、比較的近距離で撃っているにも関わらず、Gエグゼスには当たらない。

 

「素早い!」

「悪いが、今日は遊んでいる暇がないんでね! さっさと終わらせてやるよ!」

 

 Gエグゼスは両手にビームサーベルを持ち、ドラーズに接近する。

 ドラーズはビームバルカンで牽制するが、Gエグゼスは上手くかわしてドラーズの右腕を切り裂く。

 そして、そのまま二本のビームサーベルでドラーズの胴体を真っ二つに両断した。

 

「自爆装置が起動しない?」

 

 ヴェイガンのMSは機密保持の為に自爆装置が内蔵されているが、Gエグゼスの攻撃で装置に不備が発生したらしく、機体が真っ二つになっても機体が爆発しなかった。

 

「運が良いのか悪いのか……でも、ここは引くしかない」

 

 セリアは機体が大破したためにこれ以上の戦闘は出来ないと判断して、撤退して行く。

 

「逃げるのか……ちっ、こっちも追える状況じゃねぇな」

 

 ドラーズを追って確実に仕留める事は簡単だが、それではディーヴァの守りが甘くなる為、ウルフはディーヴァの防衛に専念する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場から少し離れたところでフリットは神経を集中させて、デシルの気配を感じ取ろうとしている。

 そして、ようやくデシルと思われる気配を感じる事が出来たが、すでにデシルのゼダスがガンダムAGE-1Sの真横まで接近していた。

 

「この間の借りを返しに来たよ。お兄ちゃん」

「デシル! そのMSに乗っているのはやっぱりデシル何だな!」

 

 ファーデーン防衛戦で漠然とゼダスに乗っているのがデシルだと思っていた事がようやく確信に変わる。

 

「そうだよ。一緒に遊ぼう!」

 

 ゼダスはガンダムAGE-1Sを蹴り飛ばす。

 そして、ゼダスソードを装備してガンダムAGE-1Sに切りかかる。

 フリットも戸惑いながらもガンダムAGE-1Sのシグルブレイドでゼダスソードを受け止める。

 

「君たちは何者なんだ! 君の様な小さい子供が何故!」

 

 フリットですら戦場に出るには若すぎる。

 フリットにはUEと戦う理由がある為、戦場に出ている。

 だが、自分よりも幼いデシルが戦場に出る理由などフリットには想像出来ない。

 フリットの兄のクライドの部隊にもデシルと同年代のユーリアがパイロットをしているが、フリットも詳しい事情までは聞いてないが、入り組んだ事情があることは知っている。

 だが、ユーリアのケースは少々特殊な為、同じケースとは考え難い。

 

「理由なんてどうだって良いよ。僕はお兄ちゃんに負けたままなのが嫌なんだよね!」

 

 ゼダスはガンダムAGE-1Sの腕を掴んで投げ飛ばす。

 ガンダムAGE-1Sは何とか体勢を整えるが、ゼダスがゼダスソードで何度も切りつけて来るため、ガンダムAGE-1Sはシグルブレイドで防ぎ防戦一方になる。

 

「僕達を行かせないつもりなら……君を倒すしかない!」

 

 例え、デシルが敵に与していようともフリット達にも引けない理由がある。

 アンバットに拠点を構えているヴェイガンを叩く為にここまで来た。

 連邦軍から追われる立場になってまで来た以上、ここで大人しく引く訳にはいかない。

 それが知り合いの少年を討つ事になってもだ。

 ガンダムAGE-1Sは一度距離を取って、ゼダスに接近して二機は互いの腕を抑えて組み合いになる。

 だが、ゼダスはその状態から胸部のビームキャノンを放つが、ガンダムAGE-1Sはかわしてゼダスを蹴り飛ばして距離を取る。

 ゼダスもそれを追い、二機の高機動戦闘型MSは高速でぶつかり合う。

 

「デシルだって、本当は無い筈だ!」

「何でさ? こんなに楽しいのに?」

「命のやり取りなんだぞ! 負ければ死ぬんだ!」

「知ってるよ。だから戦いは楽しいんじゃない」

 

 フリットの言葉もデシルには届かない。

 デシルは純粋に戦いを楽しんでいる。

 フリットにはそれが理解出来ない。

 戦えば人は傷つき死に至る。

 ここまでの戦いでも大勢の人が死んだ。

 戦死者にも家族や友人、恋人がいただろう。 

 戦いはそれらから大切な人を奪う。

 

「今日の戦いにはもっと面白い物を用意してるんだ」

 

 ゼダスはビームバルカンを連射してガンダムAGE-1Sはビームをかわす。

 攻撃をかわしていると、不意に別の気配を感じる。

 

「来るよ……僕の秘密兵器!」

 

 突如飛来したのたもう一機のMSだった。

 ピンク色をし台座の様な補助装置に乗っている「ファルシア」だ。

 それこそがデシルがフリットへの仕返しの為に用意した秘密兵器であった。

 

「新型!」

「フリット」

 

 フリットは新型機のファルシアの乱入に驚くがそれ以上にその機体からの通信に驚く。

 フリットにはその相手の声を良く知っていた。

 

「……そんな……その声は……ユリン」

 

 それはノーラで出会い、ミンスリーで再開し心を通わせていた少女、ユリン・ルシェルだった。

 そのユリンが敵MSに乗りフリットの前で出ている。

 その事実にフリットはただ茫然とするしかない。

 

「やっと会えた……」

「どうして……どうして……ユリン!」

 

 そんなフリットの問いに答える前にファルシアはバックパックに装備している5基のファルシアビットを射出し展開する。

 展開されたファルシアビットからビームが放たれて、フリットはとっさに回避する。

 

「ユリン、どうして君がこんなところに居るんだ! どうして君が戦わなくちゃいけないんだ!」

 

 ユリンはミンスリーに居た筈だ、なのに今ここに居る。

 フリットは知るよしもなかったがミンスリー近辺での連邦軍との戦闘中に乱入して来たヴェイガンのMSはミンスリーでデシル達がXラウンダーであるユリンを連れて行く為の陽動だった。

 その時にユリンはミンスリーから連れ去れていた。

 

「こうするしかなかったの!」

 

 デシル達について行かなければ、自分も自分の周りにも被害が出る。

 自分でそれを何とかする力の無い以上、ユリンにはデシル達に従う以外の選択肢はなかった。

 

「こうしなきゃ二度とフリットに会えないって!」

 

 最後にフリットとユリンは再び会う約束をかわしている。

 

「どう? 僕の秘密兵器は? 気に行って貰えた? これからもっと楽しくなるよ!」

 

 デシルは悪戯が成功したかのように無邪気にそう言う。

 デシルがそう言うとファルシアはユリンの意思とは関係なく動く。

 ファルシアはゼダスから遠隔操作で動かされている。

 それなのにユリンがファルシアに乗っている理由それはXラウンダーは複数いるとそれだけ能力が向上する。

 その為だけにユリンはここに連れて来られている。

 ファルシアビットがガンダムAGE-1Sの周囲に展開し、全方位からビームを放ち、ガンダムAGE-1Sはそれを何とかかわすが、ゼダスへの警戒を疎かにしてしまう。

 

「二対一でずるい? でも違うよ。だってファルシア僕の武器でしかないんだから!」

 

 ゼダスがゼダスソードを振り落とそうとすると二機の間にビームが割り込む。

 

「フリット……生きてる?」

 

 それはフリットが戦線を離脱する際にフリットを追って来たユーリアのジェノワーズだった。

 一度はスパローの機動力において行かれて見失ったが、戦闘がはじまり駆けつけて来た。

 

「ユーリアも来たんだ」

「……デシル? どうしてここに?」

 

 ユーリアも無表情ながらもデシルがいる事に驚いている。

 アーヴィンで出会い友達になったデシルが敵機に乗っていれば流石のユーリアが驚くのも無理はない。

 

「前に言っただろ? 今度は楽しい事をしようって」

 

 ゼダスはジェノワーズにビームバルカンを放ち、ジェノワーズはシールドで受け止める。

 

「これが?」

「そうだよ。ユーリアも楽しいだろ?」

 

 ガンダムAGE-1Sにファルシアビットのオールレンジ攻撃で足止めをしているうちにゼダスはゼダスソードでジェノワーズに切りかかる。

 ジェノワーズはゼダスの一閃をかわすとビームライフルで応戦する。

 

「……そんな訳がない」

「嘘だね。だから、ユーリアも戦ってるんだろ」

「違う」

 

 ユーリアはそれを否定する。

 ユーリアが戦う理由はそれしか知らないからだ。

 物心付いた時から戦い以外の道を用意されていなかった。

 親も知らず戦い続けた。

 だが、今はエリーゼが、クライドがアブディエルの仲間がいる。

 あの船に居る為には仲間の役に立つには戦うしかない。

 

「ユーリア!」

 

 ファルシアビットの攻撃を掻い潜って来たガンダムAGE-1Sがシグルブレイドでゼダスに切りかかり、ゼダスは受け流すとジェノワーズのビームが飛んで来る。

 

「このくらいのハンデがあった方が面白いよね!」

 

 ゼダスはビームをかわし、ジェノワーズにファルシアビットの攻撃が飛んで来る。

 ジェノワーズはシールドで確実に攻撃を防ぎ、ビームライフルでファルシアビットを狙うが小さい上に俊敏な動きのファルシアビットには簡単には当たらない。

 

「素早い……だったら」

 

 ユーリアはファルシアビットを狙うのを止めて直接本体のファルシアにビームライフルの銃口を向ける。

 

「駄目だ! ユーリア!」

 

 フリットが叫び、ジェノワーズの動きが一瞬止まった事をデシルは見逃さない。

 その隙を付いてゼダスがジェノワーズの右足を切断する。

 

「隙を見せちゃ駄目だよ」

「……面倒」

 

 ジェノワーズはビームサーベルを抜いてファルシアに向かう。

 ユーリアは事情を知らないが、ファルシアのパイロットを殺さないように注意すればフリットも止めはしないと判断しビームサーベルで

 

近接戦闘に切り替えた。

 ファルシアもビームバルカンで応戦するが、シールドで防いで接近する。

 ファルシアは尾のファルシアソードで受け止める。

 

「余所見している余裕はあるの? お兄ちゃん!」

 

 ユリンの方に気を取られていたフリットにデシルが遅いかかる。

 ゼダスソードを振るいガンダムAGE-1Sはシグルブレイドで受け止める。

 

「フリット!」

「……今行く」

 

 ジェノワーズはファルシアを蹴り飛ばすと、ガンダムAGE-1Sとゼダスの方に向かう。

 シールドに内蔵されているミサイルを放ち、ゼダスを牽制するが、ファルシアビットの邪魔でフリットの援護にまでは行けない。

 

「あははっ! 面白くなって来たね!」

 

 デシルは無邪気に笑い、ガンダムAGE-1Sとゼダスはぶつかり合う。

 

「もう止めろ! デシル!」

「どっちかが死ぬまで続けるのがこの遊びのルールでしょ?」

 

 デシルはあくまでも戦いを遊びと捉えている。

 フリットも懸命に叫ぶも遊びとしか捉えていないデシルにとっては遊びをつまらなくするものでしかない。

 

「もう良いよ。そんなに終わらせたいなら、終わらせて上げるよ!」

 

 ゼダスはガンダムAGE-1Sを弾き飛ばす。

 そして、ファルシアがジェノワーズに拡散ビーム砲を放ち、牽制するとファルシアビットがガンダムAGE-1Sを襲う。

 その攻撃でガンダムAGE-1Sは体勢を崩して決定的な隙が生まれた。

 

「楽しかったよ。お兄ちゃん! これで僕の勝ち!」

 

 ゼダスはゼダスソードを構えてガンダムAGE-1Sに突っ込む。

 ジェノワーズは援護に向かおうとするが、ファルシアビットの攻撃に阻まれる。

 

「駄目ぇぇぇぇ!」

 

 ゼダスの一刺しは確実にガンダムAGE-1Sを捉えるかのように思えたが二機の間にファルシアが割りこむ。

 ゼダスの制御化に置かれていたファルシアだったが、幸か不幸かジェノワーズとの戦闘中に機体に遠隔操作の制御装置に不具合が発生したのかファルシア側からも動かす事が出来てしまった。

 間に割り込んだファルシアにゼダスソードが突き刺さる。

 

「何!」

「え……」

 

 フリットとデシルの二人は予想外の出来ごとに驚く。

 フリットは無意識の内にコックピットの中でユリンに手を伸ばすが、その手がユリンを掴む事はない。

 

「フリット……生きるのって難しいね……」

 

 それがユリンの最後の言葉となりファルシアは爆散した。

 

「ユリィィィィン!」

 

 フリットは叫び、茫然とするが次第に目の前で起きた事実がジワジワと襲いかかって来る。

 ユリンは死んだ。

 自分を庇って死んだ。

 フリットはその事実を受け入れる事が出来ないが、幾ら否定しようとも事実は何一つ変わらない。

 

「命拾いしたね。でも二度目はないよ」

「デシル……なぜ、ユリンを……何でユリンが死なないといけないんだ……」

 

 聞いたところでユリンが生き返る訳でもない。

 だが、フリットは言わずにはいられなかった。

 

「意味なんてないよ。盛り上げてくれる遊び道具が一つ減っただけだ」

 

 デシルはそう言って、ガンダムAGE-1Sに接近する。

 デシルのユリンの命を遊び道具と言いきった為に、遂にフリットの怒りが限界を迎えた。

 

「命は……玩具じゃないんだぞぉぉぉぉ!」

 

 フリットの叫びと共にガンダムAGE-1Sは全身のスラスターで加速する。

 ゼダスはゼダスソードを振るうがガンダムAGE-1Sを捉える事が出来ない。

 そして、一瞬の内にゼダスの背後を取る。

 ゼダスはビームサーベルで背後のガンダムAGE-1Sを攻撃するが回避される。

 ガンダムAGE-1Sはその機動力を活かして、ゼダスを翻弄する。

 その圧倒的な機動力にデシルも離れたところで見ているユーリアでも追う事が出来ない。

 シグルブレイドの一閃がゼダスの両足を切断する。

 

「そんな……」

「デシルゥゥゥゥ!」

 

 ガンダムAGE-1Sはゼダスの両腕を一気に切り裂いた。

 

「何だよ! どうして!」

 

 デシルには一体何が起きているのか分からない。

 だが、背後から強い衝撃を受けてモニターに叩きつけられて背後を見るとガンダムAGE-1Sがそのツインアイを光らせていた。

 その時に初めてデシルは戦いで恐怖した。

 だが、そんなデシルに構う事なくガンダムAGE-1Sはゼダスの首にシグルブレイドを突き刺す。

 

「負けてない……僕は負けてなんか無いんだ……」

 

 決定的な敗北だが、デシルにはそれを受け入れる事が出来ない。

 ゼダスからシグルブレイドを抜くとゼダスはゆっくりと流れて行く。

 フリットはデシルに止めを刺す事なくその場を後にする。

 

「僕は負けてなんか無いんだ……」

「違う。貴方の負け」

 

 未だに敗北を受け入れる事の出来ないデシルにユーリアが現実を突き付ける。

 

「そんな筈はないんだよ。僕は特別なんだ……」

 

 ヴェイガンではXラウンダーは特権階級を与えられる。

 その為、幼いながらも戦場で活躍の機会を与えられるデシルにとって自分は特別な存在なのだと信じて疑わない。

 

「それも違う。デシルは特別じゃない。デシルはデシル。それだけ」

「そんな事はないんだ……そうだ……ファルシアが悪いんだ。あんな邪魔をしなければ僕が勝っていたんだ」

 

 敗北を受け入れる事の出来ないデシルは恰好の勝機を邪魔したファルシアに責任を向ける。

 そんなデシルを悲しそうな目をしてユーリアは見ている。

 

「そうなんだよ。そうでなきゃ僕がフリットなんかに負ける訳がないんだ。ねぇ、ユーリア、今度は僕とチームを組んでフリットと戦おうよ。今度は僕もゼダスよりも強いMSを貰うからさ」

「駄目……デシルは少し反省しなさい」

 

 ユーリアはそう言って戦線に戻ろうとする。

 デシルのゼダスはフリットとの戦闘で大破している。

 すでに戦闘能力はなく、助けても良いと思うが、それではデシルのためにならないと思った。

 宇宙を漂流して、少しでも生きると言う事がどう言う事なのか理解出来たらと思う。

 最悪、回収されない事もあるかも知れないが、それはデシルの犯した罪の結果だ。

 だが、生まれて来て戦う事しか知らず、戦い続けて来たユーリアもクライド達に救われた。

 ひょっとしたら、デシルもヴェイガンではない誰かに拾われて救われるかも知れない。

 その一分の可能性を信じてユーリアは戦闘宙域から流れて行くゼダスを見逃す。

 

「どうしてだよ! 僕達は友達だろ!」

「友達だから……」

 

 友達だからこそ、間違った事をしているデシルを間違ったままで助ける事は出来ない。

 ユーリアは心を鬼にして、自分に助けを求めるデシルを無視して戦場に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだよ……これだなんだよ! 俺はこの戦いを待ち望んでたんだよ!」

 

 ブラッドはドッズライフルを回避しながら、歓喜の声を上げる。

 クライドとの戦いはブラッドの心を満たしてくれる。

 今までどれほどの敵を落としてもこれほどまで心を満たしてくれる事はなかった。

 

「相変わらず厄介な相手だよ! お前は!」

 

 一方のクライドは厄介な敵を前にイラつき気味だ。

 クライドは生粋のパイロットでは無いため、戦う敵は弱ければ弱い方が良い。

 ブラッドが自分とガンダムZERO以外でも対処が可能なら、喜んで別の人にブラッドの対処を任せていたであろう。

 だが、この戦場でブラッドに対抗出来るのは自分しかいないため、クライドが相手をしなければ、この戦いで勝利することは無理だろう。

 その為、クライドがブラッドの相手をしなければならない。

 

「さっさと終わらせたいんだがね……」

 

 ガンダムZERO Gはドッズライフルを放つが、ギラドは回避しビームガンで反撃をし、ガンダムZERO Gは肩のシールドで防いでドッズライフルで反撃する。

 これはさっきから繰り返している。

 だが、ガンダムZERO Gがドッズライフルをギラドに向けようとするとギラドのビームガンがドッズライフルに当たり、爆発する前に投げ捨てる。

 

「ちっ……」

 

 唯一の火器を失った事でガンダムZERO Gは両手にビームソードを展開して突っ込む。

 対するギラドも両手にギラドソードを付けて迎え撃つ。

 

「今度は白兵を楽しもうぜぇぇぇ!」

 

 ガンダムZERO Gとギラドは激しくぶつかり合う。

 ぶつかり合う二機は一度距離を取るとギラドは尾のビームライフルを合体させたビームキャノンを放ち、ガンダムZERO Gは左肩のシールドで防ぐがシールドが吹き飛ぶ。

 だが、ガンダムZERO Gは臆することなく両足の先端からもビームソードを展開してギラドに突っ込む。

 

「面白い! 面白いなぁ! クライド・アスノ!」

 

 ガンダムZERO Gはギラドに切りかかり、ギラドが受け止めると足のビームソードを蹴り上げる。

 ギラドは機体を引かせたが、胸部の荷電粒子砲に掠る。

 

「浅いか……だが、これで胸の武器は使えないだろう」

 

 致命傷にはならないが、荷電粒子砲の使用を出来なくするのは大きい。

 これで、荷電粒子砲による艦隊への攻撃を注意したまま戦う必要がなくなる。

 

「はっ! 荷電粒子砲なんて無くてもなぁ!」

 

 ギラドは両手のギラドソードで連続攻撃を行い、ガンダムZERO Gは両手のビームソードを使って連続攻撃をいなす。

 ギラドの連続攻撃にガンダムZERO Gは防戦一方になる。

 ガンダムZERO Gは一旦距離を取るが、ギラドはギラドソードを戻してビームガンで攻撃する。

 ガンダムZERO Gは右肩のシールドで防ぎつつ、頭部のビームバルカンで反撃するもビームバルカンではギラドに直撃しても効果がなく、ギラドの攻撃は容赦なくガンダムZERO Gの装甲を削り取っていく。

 

「不味いな……どうする?」

 

 攻撃を耐えながらもクライドは今までのブラッドとの戦闘を思い出しながら、対応策を考える。

 ブラッドの今まで戦いから考えられるブラッドの性格は非常に好戦的なのは間違いない。

 戦闘時に自分を優先的に狙って来る事から、ブラッドは自分に強いライバル心を持っていると考えられる。

 そして、自分にアンバットで待つと言った事から、自分との決着は決戦と言う最高の舞台で付けたいと思っている。

 つまり、ブラッドを突き動かしているのはパイロットなら誰しも少なからず持っている、好敵手との最高の戦いをブラッドは望んでいる。

 クライドはブラッドの今までの言動や戦い方からそこまで予測する。

 その予測が当たっているなら、戦い様も見えて来る。

 ガンダムZERO Gはバックパックに装備している対艦刀「バルムンク」を持ち構える。

 

「さぁ……乗って来い。お前の好きなシュチュエーションだろ?」

「成程な……互いの最高の一撃で決着を付けようってか……面白い!」

 

 ギラドもビームガンによる射撃攻撃を止めて両手にギラドソードを付けて構える。

 それによりクライドはブラッドが自分の策に乗った事を確信する。

 クライドはバルムンクを構える事で決闘の決着時の約束事とも言える最後は互いの全てを乗せた一撃に戦いを持って行った。

 それにより、火器を持っていないと言うガンダムZERO Gの不利な状況を変える事に成功する。

 この状況ならば、一撃の強さが勝負を分ける。

 ガンダムZERO Gのバルムンクは本来、戦艦を攻撃する物でMS相手には武器自体が大きいので取り回しが悪いため、使い辛いがこの状況でブラッドは小細工を使う可能性は限りなくゼロに近い。

 

「これで俺とお前の因縁にもケリを付ける」

「これで俺がお前を殺してやるよ!」

 

 ガンダムZERO Gとギラドはまっすぐ互いに突っ込んで行く。

 二機は加速しながらも互いの剣を突き出す。

 二機の剣はぶつかり合うが質量で圧倒的に勝るガンダムZERO Gのバルムンクがギラドソードを砕き、ギラドの腹部に突き刺さる。

 だが、ギラドももう片方のギラドソードをガンダムZERO Gの右肩に突き刺す。

 それにより、ガンダムZERO Gのコックピット内で小さな爆発が起き、右側のモニターにヒビが入り映像が消える。

 それだけでなく、その爆発はクライドのパイロットスーツのヘルメットのバイザーを破壊し、破片がクライドの顔に突き刺さりクライドは頭から血を流している。

 

「流石に……これは予想外……だ」

 

 クライドは二機の激突で勝利することまでは予想の範囲内だったが、その後のブラッドの反撃は予想外の展開だった。

 クライドの予想ではその一撃でギラドの腹部に突き刺さる事でブラッドを殺すか致命的な傷を負わすつもりでいた。

 だが、クライドの計算違いはギラドのコックピットは腹部ではなく頭部にある事だ。

 それによりクライドの目論見は外れて反撃を許してしまう。

 ヴェイガンのMSが頭部にコックピットがあることはマッドーナ工房に持ち込まれたゼダスのデータから知っていたが、ブラッドとの戦いのデータにばかり気を取られていたためにその事を失念してしまっていた。

 

「だが……俺の勝ちだ……」

 

 目論見が外れて手痛い反撃を食らうが、ギラドの腹部にバルムンクを突き刺した時点でクライドの勝利は確定したも同然だ。

 後は勝手にギラドが爆発を起こし、ブラッドを殺すだろう。

 クライドはギラドの爆発に巻き込まれないように機体の右腕を切り離して距離を取る。

 クライドは意識が朦朧とする中、ギラドから離れて行く。

 

「俺が負けたのか……」

 

 ガンダムZERO Gがゆっくりと離れて行くなら、ブラッドは己の敗北を確信していた。

 だが、不思議とイライラ感はなかった。

 それはクライドと納得のいくまで戦い、最後は自分の全てを乗せた一撃を完全に砕かれて敗北したからだろうか。

 ブラッドの中には敗北感よりも妙な清々しさが残っている。

 

「アイツと……心行くまで戦って負けた……」

 

 ブラッドはこれ以上ない満足感を胸に己の死を受け入れようとするが、コックピット内に衝撃が走る。

 

「貴方は死なせないわ」

 

 それはギラドが爆発を起こす前に機体を大破させながらもブラッドのところに来たセリアのドラーズがコックピットと胴体を切り離してギラドの頭部を抱えた衝撃だった。

 

「セリアか……何の用だ?」

「ブラッド……」

 

 セリアは駆けつけた時のギラドの状態やブラッドの弱弱しい声から何も聞かずともブラッドはクライドと戦い敗北した事を理解する。

 だが、セリアはそんなブラッドを励ます事はしない。

 長い付き合いから、ブラッドに下手な励ましは彼のプライドを傷付ける事になる事を知っているからだ。

 セリアは今はただ、ギラドの頭部を優しく抱きながら、戦闘宙域から離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「180秒後にアンバット、強行接舷に到達!」

 

 各地でエース機同士の戦闘にケリが付く頃には艦隊の支援を受けてディーヴァがアンバットに取りつくことが可能な場所まで辿りついて

 

いた。

 すでにザラム・エウバ連合の戦艦が一隻が沈み、多くのMSが撃墜されている増援の艦隊がなければここまで辿り着く事は出来なかっただ

 

ろう。

 

「陸戦隊、戦闘準備、一気に蝙蝠どもの巣に乗り込むぞ!」

 

 だが、取りついたからと言って喜んでばかりもいられない。

 寧ろ、作戦はここからが本番と言える。

 歩兵をアンバット内部に侵入させて、アンバットの司令部を掌握しなければならない。

 内部の見取り図はすでに入手しているが、どこまで当時のままか分からない上にこちらは敵の対歩兵用の兵器との交戦データがないため、内部で何が出て来るのかは分からない。

 しかし、ここまで来た以上は作戦を成功させなければ今日の戦闘やここまで来るために死んだ者が浮かばれない。

 

「フリット、お前とガンダムに任せる。要塞への入り口をこじ開けろ」

 

 デシルとの戦闘を終えたフリットがディーヴァに接近すると、グルーデックはそう言う。

 アンバットに接近しても未だに突入口が出来ていない。

 その為にガンダムAGE-1を使っての強硬策を取る事にする。

 フリットはそれに返事をすることなく黙っていたが、ディーヴァからタイタスのウェアが射出されて、それに換装する。

 

「リミッター解除……磁気旋光システム最大出力……」

 

 ガンダムAGE-1Tの磁気旋光システムのリミッターが外されてガンダムAGE-1Tの両腕、両肩、両膝にビームを最大出力で形勢してアンバットに突っ込む。

 ガフランやバクトがビームバルカンでガンダムAGE-1Tを止めようとするも厚い装甲を持つガンダムAGE-1Tを止める事は出来ない。

 ガンダムAGE-1Tは敵に構う事なく突っ込んで行く。

 その道中の敵を破壊してガンダムAGE-1Tはアンバットの入り口のシャッターに激突する。

 突撃により、僅かな隙間が出来、ガンダムAGE-1Tはその隙間に入り込み、シャッターを力づくで押し開けようと持ちあげる。

 3つのウェアの中で最も高いパワーを持つタイタスのパワーでシャッターを抉じ開ける事に成功するが磁気旋光システムのリミッターを外して無理をした事が祟りガンダムAGE-1Tの右足と左足が壊れる。

 だが、タイタスの最低限の役目を果たし、ディーヴァは後方のアブディエルの援護を受けつつ、アンバットに接舷することが出来た。

 

「おい! フリット! 返事をせんか! 怪我はしとらんのか?」

 

 アンバットに接舷し、グルーデックを始めとした陸戦隊がアンバットの内部に侵入を開始するのと同時にフリットも要塞内部を破壊する

 

ためにディーヴァの最後のウェアのノーマルに換装して出撃しようとしている。

 その際のフリットの様子がおかしかったため、バルガスはフリットを呼びとめるがフリットは答えない。

 

「UE……僕はお前たちを許さない!」

 

 フリットはユリンを殺された悲しみを怒りに変えて最後の戦いに赴く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼロが帰還します!」

 

 ディーヴァがアンバットに接舷したため、一時的に指揮系統がアブディエルに譲渡され、動けないディーヴァが狙われないように支援し

 

ているアブディエルにクライドが帰還した事が報告される。

 モニターには機体のところどころが破損し右腕を失っているガンダムZERO Gが映されている。

 

「クライド……」

「行ってきなよ。ここは僕がやるから」

 

 その状態にエリーゼは一瞬艦長であることを忘れてクライドを心配するがすぐに頭を切り替えようとするがアルフレッドがエリーゼにク

 

ライドのところに行く様に言う。

 

「アルフ……ここは任せたわ」

 

 エリーゼはアルフレッドに指揮を任せて、ガンダムZERO Gが収容された格納庫に向かう。

 格納庫では帰還したガンダムZERO Gから、クライドが降りて来る。

 ヘルメットのバイザーが顔の刺さり血を流している為、整備班は驚きエミリオがクライドの元に駆けつける。

 

「師匠! すぐに手当てを!」

「俺の事は良い。お前はすぐにゼロの修理をしろ。それとアサルトアーマーを付けろ」

 

 それはクライドが再び戦場に戻ると言う事を意味する。

 クライドが後方で支援をしているマッドーナ工房ではなく、アブディエルに帰還した理由はそこにある。

 ミンスリーでAGEシステムが作りだした新しいアーマーのアサルトアーマーはアブディエルにしかない。

 

「でも……」

「良いかからやれ」

 

 軽傷ならともかく、クライドの傷は素人目でも重傷であることはエミリオでも理解出来るが、クライドも分かっている筈だが、機体を修理をさせようとする。

 このままでは例え、修理していない状況でもクライドは戦場に戻る気迫だったためにエミリオはすぐにガンダムZEROの修理に取り掛かる。

 機体の修理をエミリオに命令してクライドは医務室で治療を受けている。

 アブディエルに正規の免許を持っている船医はいないが、クライドの傷の状況を見てすぐに確信出来る。

 バイザーの破片はクライドの右目のところに深く突き刺さり、破片を取ったところでクライドの右目はもう使い物にならない事は明白だ

 

 クライドは戦場に向かう気でいるため、船医はその事を言ったところで止まる気がないのは分かっている。

 その為、右目が使いものにならない事をクライドに言う事なく止血を続けるがその事はクライドにも分かっているだろう。

 

「クライド!」

 

 止血が終わるころに、医務室にエリーゼが飛び込んでくる。

 船医もクライドの止血が終わっている為、席を外す。

 

「エリーゼ……艦の指揮はどうした?」

「アルフに任せて来たわ。それよりもまだ戦うの?」

 

 エリーゼは心配そうにそう言う。

 それは先ほどまでの艦長としてはなくクライドの恋人として言った。

 

「ああ……まだ、戦いは終わった訳じゃない。動ける奴は動かないとな」

 

 クライドはそう言うが、ガンダムZEROは軽くない損傷をしている上にクライドが右目が使えない状況だ。

 その動ける奴にクライドは含まれる訳がない。

 

「それに……今、戦わないと俺の戦いは一生終わらない気がする。だから、俺はまだ戦わないといけないと思う」

 

 エリーゼにはその戦いが終わった時にクライド自身も終わってしまう気がしてならない。

 クライドを止めようとするもエリーゼにはクライドを止める方法が分からない。

 

「安心しろ……俺は帰って来るさ……お前は俺の目的の為にここまで来てくれたんだ。次は俺はお前の為に生きる番だ」

 

 クライドはエリーゼを抱き寄せる。

 エリーゼは確かにクライドの為にここまで来た。

 だが、それはクライドの為だけではない。

 初めて会ったあの時にクライドが子供のように語った夢を聞き、エリーゼはクライドに心惹かれた。

 だからこそ、エリーゼはここまでクライドにために尽くして来た。

 それは自分がそうしないと思ったからに他ならない。

 

「約束だ。俺は勝ってお前のところに帰って来る」

「約束だからね……」

 

 二人は約束をかわしてキスをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「要塞内に侵入を許したか……所詮はギーラ・ゾイもこの程度か」

 

 ナーガはゼファーラの中で戦況を確認しながらそう言っている。

 ヴェイガンがアンバットに持って来た新型機の内の一機がこのゼファーラだ。

 新型と言ってもゼファーラ完全に新型と言う訳ではない。

 ゼファーラはガフランに追加の強化ユニットを装備した状態の事を指す。

 機体の下半身には円盤状の大型スラスターユニットを装備し、大型のサブアームが4基にバックパックに大型の翼状のスタビライザーが装備されている。

 機体全体はガフランと同じ赤で統一されている。

 武装はガフランのビームバルカンと拡散ビーム砲の他に大型のサブアームの先端にはビームソードの展開可能なビームガトリング砲にな

 

っており、大型スラスターユニットにはメガビームキャノンが二門装備されている。

 スタビライザーにはファルシアに装備されていた物と同系統のビットコンテナが二基搭載され、その中に5基つづ、計10基のゼファーラビットが内蔵している。

 ガフランの尾のビームライフルは強化ユニットのせいで使用出来ない状態にあるが、それ以上に高い火力を持ち、強化ユニットには電磁装甲が採用されているので防御力も高い。

 このゼファーラは高い火力と機動力を使い宇宙戦に特化した対艦、要塞攻略用の大型MSである。

 

「要塞内に侵入した地球種はギーラ・ゾイにデファースで始末させるとして、私はブラッドを倒したXラウンダーを始末するか……」

 

 要塞内部に侵入して敵は陸戦用に開発された新型機のデファースが相手をすればどうにかなる。

 限定された空間での戦闘はゼファーラには向いていない。

 その為、内部の敵は地球侵攻用の陸戦用MSのデファースに任せれば問題なく排除出来るだろう。

 宇宙戦に特化したゼファーラは外の敵を討ち侵入した敵の退路を断つ。

 その為にナーガはゼファーラに乗りアンバットの外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 医務室でエリーゼと別れたクライドは格納庫に戻る。

 エリーゼの元に戻ると約束をし、エリーゼも自分の役目を全うするためにブリッジに戻っている。

 格納庫ではエミリオ達整備班がフルに動いて短時間でガンダムZEROの修理を終えている。

 修理が終わったと言っても右腕を新しい物に変えて、フレームも必要最低限の補強しかしていないが、戦える状況に持って行ければクライドは満足だ。

 そして、すでにガンダムZEROの新アーマーのアサルトアーマーが装備されている。

 アサルトアーマーは大軍戦用のアーマーで武装は右手にはノーマルのビームライフルにガンダムAGE-1のドッズライフルの技術を転用した事でガンダムAGE-1のドッズライフルの1.5倍の威力を持ち、ビームサーベルの柄が銃身の下部に内蔵されているスーパードッズライフルに左手にはノーマルアーマーのシールドに折りたたみ式の大型のシグルブレイドの付いたシールドが付けられ、大型のビームバズーカを担いでいる。

 バックパックにはノーマル同様にビームサーベルが二基付いており、右肩には小型のビームガン、両肩の横には対艦用の4連装大型ミサイルポッドが装備されている。

 両腕の装甲にはグレネードランチャーが二基つづ装備され、腰には誘導兵器のファンネルが横に2基つづ、腰の後ろに2基と計6基装備されている。

 全体的にノーマルアーマー同様の白を基準としたカラーと高い火力を持つだけでなく、脚部の装甲にはスラスターが内蔵されている為、機動力も確保出来ている。

 それだけではなくアーマーの表面には特殊な対ビームコーティングをされている為、ある程度の防御力も確保している。

 

「師匠! 機体の修理は大体出来ましたけど、モニターの方は……」

「気にするな。どうせ、右側は見えん」

 

 コックピットのモニターで三面の内右側はギラドとの戦闘でヒビが入り使えないが、クライドは冗談半分で自分も右目が使えないから必要ないと言うが流石に笑えるような冗談ではない。

 クライドは機体に乗り込むと機体のシステムを立ち上げる。

 右側のモニター以外に不備の出ているところはないため、戦える事を確信するとクライドはレバーを握り一息つく。

 

「クライド・アスノ……ガンダムZERO、出る!」

 

 クライドも過去との決着を付けるべく最後の戦いに出撃する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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