機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第29話

アンバット攻防戦は佳境に入り完全にディーヴァ側に戦局が傾いている。

 すでにエース機のゼダスとギラドが二機のガンダムに敗北し、ガンダムAGE-1にはアンバットに侵入まで許している。

 だが、ヴェイガンも黙ってやられている訳ではない。

 アンバットからナーガのゼファーラが出撃し、その力を遺憾なく振るっている。

 

「何だ! あの赤い奴は!」

「敵の新型か!」

 

 戦場で通常のMSよりも巨大なゼファーラはすぐに見つかるが関係ない。

 4基のサブアームのビームガトリング砲が火を噴き敵を撃墜して行く。

 

「この野郎!」

 

 ゼノやジラがドッズガンを撃つが、その巨体に似合わない速さで戦場を駆け抜ける。

 そして、メガビームキャノンを放ち、エウバのカルセドニー級巡洋艦を轟沈させる。

 

「他愛もない。このゼファーラの力を持ってすれば、地球種など恐れるに足りんわ!」

 

 ゼファーラはビームガトリング砲を連射し敵の数を減らす。

 

「片目が使えないと操縦もやり難いな……」

 

 アブディエルから出撃したクライドはギラドとの戦闘で右目を負傷して為、いつものようにガンダムZEROを動かせなかったが、だいぶ片目の操縦にも慣れて来た。

 

「さっきからなんか嫌な気配を感じる……」

 

 ガンダムZERO A(アサルト)は両肩の4連装対艦ミサイルを全弾をヴェイガンの戦闘艦に発射する。

 放たれた対艦ミサイルは途中で何発かは戦闘艦の対空射撃で落とされたが、何発かは直撃し、戦闘艦に多大な被害を出し、ビームバズーカで完全に轟沈する。

 

「大した火力だ……」

 

 大軍を相手にすることが前提のアサルトアーマーがこの局面で大きな力を発揮することになる。

 ガンダムZERO Aは腰のファンネルを展開する。

 ルカインでの戦闘でのアラクネーの誘導兵器との戦闘データをAGEシステムが誘導兵器をガンダムZERO用に改良したファンネルには小型のビームガンが内蔵している。

 それによりオールレンジ攻撃や複数の敵を同時に攻撃することが可能となっている。

 機体からパージされたファンネルは戦場を縦横無尽に飛び周る。

 このファンネルは一見、ランダムな動きをしている様に見えるが実際はクライドがミンスリーでアサルトアーマーの設計図を見て誘導兵器のファンネルがある時点で機体のOSに改良を加えた。

 ファンネルはオールレンジ攻撃を行うため、戦闘時には見えない砲台として使う事が出来る。

 それはMS戦に置いて大きなアドバンテージとなる。

 だが、ファンネルを使用時にはファンネルと自機の両方を同時に操作することが要求される。

 クライドも出来ない訳ではないが、確実に自機やファンネルの操作に支障が出ると判断し、ファンネルの操作はオートで行えるようにOSに改良を加えた。

 そのパターンの数を膨大にすることで敵にファンネルの軌道を読ませないようにし、クライドはその全てのパターンを記憶している為、自分で操作していなくてもファンネルの動きは手に取るように分かる。

 そして、ファンネルはガフランにビームを放つ。

 ファンネルに内蔵されているビームガンでは威力が低いため、ガフランに損傷を与える事は出来ないが、それでも足を止める事は可能で足を止めた時にガンダムZERO Aがスーパードッズライフルで仕留める。

 

「ファンネルも以外と使えるな……」

 

 ガフランを仕留めるとファンネルは次の敵へと向かい、クライドもそれに続く。

 ビームバズーカを構えてバクトに放ち、接近して来たガフランをスーパードッズライフルに内蔵されているビームサーベルで両断する。

 

「この感じ……やはり面倒な奴がまだいる」

 

 クライドはその感覚のする方に機体を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「弱い。弱過ぎる……この程度の相手に追い詰められるとは……」

 

 ゼファーラは圧倒的な火力を持ってアンバットを攻略しようとする敵を撃破している。

 ディーヴァ側のMSはドッズガンと新型のビームサーベルを装備して攻撃力と言う点ではガフランを倒す事は可能となっているが、MSの装甲やその他の基本性能ではヴェイガンに大きく劣っている。

 只でさえ、攻撃を直撃を受ければ防ぐ手段の無いディーヴァ側のMSではゼファーラの圧倒的な火力を防ぐ術はない。

 

「あのデカブツ、やべぇだろ!」

 

 ジゼルのナイトルーパーはゼファーラにビームライフルを放つがゼファーラは回避する。

 

「でかい癖に早ぇ!」

「僕が牽制します」

 

 レオナールのジェノアス改がドッズガンをシールドのミサイルで牽制し、ナイトルーパーは左手にビームランスを持って突撃する。

 

「多少はXラウンダーの素質を持っているようだが、その程度ではな」

 

 ゼファーラはサブアームのビームガトリング砲からビームサーベルを展開させて、受け止める。

 ジェノアス改が援護に向かうが、ビームガトリング砲の一基でジェノアス改を攻撃する。

 ジェノアス改はシールドで防ぐがビームガトリング砲の威力は高く、シールドがボロボロになり殆ど使いものにならなくなる。

 そして、ゼファーラは別のビームガトリング砲の先端からビームサーベルを展開し、ナイトルーパーの左腕を切断する。

 

「やべぇ……アタシ死んだか……」

 

 最後の一基のビームガトリング砲の先端からビームサーベルをすでに展開しており、ナイトルーパーを貫こうとしている。

 だが、それがナイトルーパーを貫く事はなく、サブアームがビームで撃ち抜かれる。

 

「ジゼル、生きてるな?」

「アニキ……怪我してんのかよ!」

 

 クライドの介入で助けられただけでなく、クライドが参戦した事でジゼルは一瞬、喜ぶがモニターに映るクライドを見てそれ以上に驚く。

 モニターのクライドはアブディエルで予備のヘルメットを付けているが、そこから見えるクライドは左目と口や鼻意外は殆ど包帯が巻かれている状態でとても軽傷には見えない。

 

「問題ない。お前たちは下がってろ」

「けどよ!」

「下がってろ」

 

 クライドの有無を言わさない圧力にジゼルは黙り、その場をクライドに任せる。

 レオナールのジェノアス改もジゼルと共にアブディエルの防衛に向かう。

 

「あのMS型……あの時の奴だ……」

 

 クライドにはゼファーラに使われている赤いガフランに見覚えがある。

 それはこの7年間、忘れる事の出来ず、未だにその時の事を悪夢に見る事にある機体。

 

「ようやく見つけた……ようやくだ」

 

 それこそ7年前にオーヴァンを襲った赤いガフランであることは疑い用の無い事実だ。

 

「オーヴァンの……故郷の仇、とらせて貰う!」

「ガンダムか……イゼルカント様の理想の邪魔をお前如きにさせる訳にはいかん!」

 

 クライドはようやく見つけた故郷と家族の仇を見つけ、己の最後の戦いを開始する。

 ナーガもまた、今まで多くのMSを葬って来たガンダムZEROを計画の最大の障害を判断し排除にかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンバット内部に侵入したガンダムAGE-1Nは予定通りにアンバットの動力部へ侵攻している。

 当時にグルーデックらもアリスの先導でアンバットの司令部を目指している。

 陸戦隊は道中で敵の陸戦隊や防衛用のセュリティシステムの妨害を受けるが、アリスがことごとく無力化し、順調に侵攻している。

 

「こちらガンダム、ルートF48より要塞中心部に移動中」

 

 フリットは定期的に自分の現在位置をグルーデックに報告している。

 今のところは内部の構造は見取り図のままで問題なく侵攻出来ている。

 

「そうか……では改めて作戦を確認する。こちらが指令室を制圧し、動力炉のゲートを開ける」

「開いたところで動力炉をガンダムで破壊する」

「そうだ」

 

 現在の状況は全て事前の想定内である為、作戦に変更はない。

 グルーデック達が敵の司令室を抑えて動力炉までの道を開いたところでフリットがガンダムAGE-1Nで動力炉を破壊する。

 それによりアンバットは事実上陥落した事になる。

 そうなれば、こちらの勝利となる。

 だが、ガンダムAGE-1Nがアンバット内部の通路を進んでいると敵と遭遇する。

 通常のMSよりも巨大な体を持つがその脚部が異様に大きい。

 これこそがナーガがアンバットに持ち込んだ二機の新型MSの一機であるデファースだ。

 宇宙用に特化したゼファーラと対を成し、デファースは地球侵攻用の陸戦型MSとなっている。

 陸戦用なために宇宙での戦闘には対応していないが、要塞内でならある程度は戦えるため、アンバットの指揮官のギーラ・ゾイが搭乗している。

 そして、今回ギーラ・ゾイは己のパイロットとしての能力を補うためにサイコメット・ミューセルが搭載されたヘルメットを使用している。

 サイコメット・ミューセルはルカインでセリアが回収したデータを元に試作された物を使い、Xラウンダーとしての能力を疑似的に再現することが出来る。

 

「コイツは!」

 

 出会いがしらに遭遇したデファースの巨体に驚く間もなく、デファースは足に比べると小さく見える本体の腕に内蔵されているビームサーベルを展開し、ガンダムAGE-1Nに襲いかかる。

 ガンダムAGE-1Nはビームサーベルを避けてドッズライフルで応戦するが、巨体に合わせて電磁装甲が使われているデファースには効果が薄い。

 デファースは尾のビームキャノンを放ち、ガンダムAGE-1Nのドッズライフルを破壊する。

 ガンダムAGE-1Nはドッズライフルを投げ捨てるとビームサーベルを抜いて接近し、デファースもビームサーベルで応戦する。

 

「デシルを倒すとは大した物だ。しかし!」

 

 デファースはガンダムAGE-1Nを押しどける。

 デファースの方が巨体である為、ガンダムAGE-1Nよりも遥かに高いパワーを持っている。

 

「お前が親玉か!」

「まぁ、そんなところだ」

 

 デファースは巨大な足でガンダムAGE-1Nを踏みつぶそうをするがかわされて接近を許してしまう。

 ガンダムAGE-1Nはデファースにビームサーベルを突き刺すが、刺さりどころが悪かったのか致命傷にはならず、デファースは拡散ビーム砲を放つ。

 

「ちっ……やるな! Xラウンダー!」

 

 デファースのビームをかわしたガンダムAGE-1Nをこの場で相手をするのは分が悪いと判断したギーラは戦いの場を変えるべく後退する。

 

「逃がすもんか!」

 

 フリットはその思惑に気づく事なく、敵の指揮官であるギーラを追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンダムZERO Aとゼファーラの戦闘は互いにビームを撃ち合いから始まる。

 どちらも大軍を相手にすることが前提である為、高い火力を持ってる。

 ガンダムZERO Aがビームバズーカを放てば、ゼファーラは避けてメガビームキャノンを放つ。

 そして、どちらも高い機動力を持っている為、砲撃に当たる事はない。

 

「撃ちあいでは拉致が開かないな……ならば!」

「このままじゃジリ貧だ。行って来い。ファンネル」

 

 ゼファーラはゼファーラビットを射出し、ガンダムZERO Aもファンネルを使う。

 二機が射出した誘導兵器は互い全方位から攻撃するが、二機は確実にビームをかわす。

 

「もう、そう言う類の攻撃は前に見てるんだよ」

 

 ガンダムZERO Aは両手のビームバズーカとスーパードッズライフル、両腕のグレネードランチャー、シールドのビームガンとミサイル、頭部のビームバルカンと持てる火器を全てを一斉に乱射する。

 これは以前にルカインでセリアがアラクネーの誘導兵器に対応した時と同じ事をやっている。

 あの時は火力不足で出来なかったが、今は十分に可能だ。

 ゼファーラも三基のビームガトリング砲を使いファンネルを落としていく。

 

「この程度で私を止められると思うなよ! ガンダム!」

「やってくれるな!」

 

 ガンダムZERO Aはスーパードッズライフルの先端からビームサーベルを展開し、接近して切りかかる。

 ゼファーラはビームガトリング砲のビームサーベルで受け止めて別のビームガトリング砲にビームサーベルを展開してガンダムZERO Aに

 

突き出し、ガンダムZERO Aは機体を引かせて至近距離からビームバズーカを放つ。

 ゼファーラはかわすと、拡散ビーム砲を放つ。

 ガンダムZERO Aはそれをシールドで防ぐ。

 

「流石はガンダムと言ったところか」

「でかい癖に良く動く!」

 

 ガンダムZERO Aはビームバズーカとスーパードッズライフルで撃つタイミングを少しずらしながら撃つがゼファーラを捉える事が出来ない。

 

「クライド! 援護する」

「シャルか……頼む」

 

 アブディエルの防衛に戻ったジゼル達にクライドがゼファーラと交戦している事を知ったシャルルは機体も殆ど損傷していないため、クライドの援護に前線まで出て来た。

 クライドは一瞬、シャルルの援護を断ろうとしたが、今は確実にゼファーラを仕留める事が優先である為、援護を受ける。

 

「雑魚が増えたところで!」

 

 ゼファーラは拡散ビーム砲をGレックスに放つ。

 Gレックスはかわしながらビームライフルで応戦するがビームがビームライフルに掠りGレックスはビームライフルを捨てる。

 

「ライフルが……クライド、俺が接近する。援護を任せる」

 

 Gレックスはビームサーベルを抜いてゼファーラに接近する。

 

「ちっ……仕方がない……」

 

 シャルルが突っ込んだため、自分まで突っ込む訳にも行かず、クライドは援護に回ろうとするが、ガフランやバクトがビームバルカンでガンダムZERO Aを襲う。

 

「邪魔を!」

 

 ガンダムZERO Aはビームバズーカでバクトを撃ち落とし、ビームサーベルを展開して接近するガフランをスーパードッズライフルのビームサーベルで受け止めてそのまま、ビームサーベルごと押し戻してガフランを切り裂く。

 だが、数機のガフランがビームバルカンを放ちながらガンダムZERO Aに突っ込んでくる。

 

「纏わり付くな!」

 

 ガフラン達はまるで自分が落とされる事が構わないかのように突っ込んで来るため、ガンダムZERO Aも対処に時間がかかる。

 それだけでなく、アサルトアーマーの欠点で多数との敵と交戦するために火力を強化されているが、近接戦闘をする為にはある程度の火器を捨てる必要がある。

 大火力のゼファーラを相手にする為には火器を捨てる訳にも行かないので、予想外の苦戦を強いられることになった。

 

「シャル! 悪いが……シャル!」

 

 ガフランやバクトに手間取り、すぐに援護に向かえない事をシャルルに伝えようとするが、クライドは自分の思っている以上に状況が悪い事に気がつく。

 Gレックスのビームサーベルをゼファーラがサブアームのビームガトリング砲の先端のビームサーベルで受け止めているが、Gレックスのビームサーベルが二本に対して、サブアームは一基はすでに破壊したが、残りは三基残っている。

 ビームサーベルを受け止めても残り一基が残る計算になる。

 こう言う場合の為にシャルルはクライドに援護を任せた。

 

「こっからでも!」

 

 ガンダムZERO Aはスーパードッズライフルを敵同士の隙間からゼファーラを狙って撃つが、ゼファーラに当たる前にバクトが間に入りこんでビームはゼファーラまで届かない。

 

「くそったれ! シャル! すぐに離れろ!」

 

 クライドがシャルルに言うが、Gレックスが引く前にビームサーベルがGレックスの横っ腹に突き刺さる。

 

「シャル!」

 

 そして、止めにガフランの両手のビームサーベルがGレックスの胴体に突き刺される。

 

「シャル……ロット……ローザ……済まな……」

 

 通信越しにシャルルの言葉がそこまで聞こえたが、機体が爆散し途切れた。

 

「シャル……お前は……お前は俺からまた!」

 

 目の前でGレックスが落とされた事で、今までは冷静さを保つために抑えていたナーガへの怒りと憎しみが抑える事が出来ずに爆発する。

 それと同時にガンダムZERO Aを黒いオーラの様な物が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギーラを追うフリットは不意に開けた空間に出る。

 ガンダムAGE-1Nが完全に入りこむとシャッターが下りてガンダムAGE-1Nの退路を塞ぐ。

 そして、そこにはガフランやバクトが待ち構えていた。

 ガフランとバクトは一斉にビームバルカンでガンダムAGE-1Nを攻撃する。

 

「このくらい!」

 

 ガンダムAGE-1Nは攻撃を耐えながら、ビームサーベルで一瞬の内に敵を全滅させる。

 

「何!」

 

 そして、敵を全滅させた勢いのまま、デファースに飛びかかる。

 

「なぜだ! なぜユリンを巻き込んだ!」

「たった一人の犠牲で騒ぐな!」

「ただの一人じゃない!」

 

 ギーラにとってはユリンは不特定多数の一人でもフリットにとってはユリンは世界でたった一人の存在だった。

 それをギーラ達が戦いに巻き込んでユリンは死んだ。

 その元凶が目の前に居る。

 フリットはユリンを失った怒りと悲しみを目の前の敵に向ける。

 ガンダムAGE-1Nとデファースのビームサーベルは激しくぶつかり合う。

 

「ユリンなんだぞ! 戦争なんかに出て来るような娘じゃなかったんだぞ!」

「知った事か! 私達の故郷ではもっと容易く人は死ぬ!」

「だからってユリンを巻き込んで良い理由になるかよ! ユリンを……ユリンを返せ!」

 

 フリットは怒りのままビームサーベルを振るい、デファースは両手のビームサーベルを使いガンダムAGE-1Nの猛攻を凌ぐ。

 だが、ガンダムAGE-1Nはデファースの両腕を切り落とした。

 

「何のぉぉぉ!」

 

 デファースは腹部の拡散ビーム砲を乱射する。

 ガンダムAGE-1Nはシールドで防ぎつつ、近接戦闘を仕掛けるがデファースのビームにシールドが耐え切れなくなり破壊される。

 

「ここまでだ未熟なXラウンダー!」

 

 シールドが破壊されて機体を守る物を失ったガンダムAGE-1Nにギーラは勝利を確信するが、ビームの横槍が入る。

 

「フリット!」

 

 それは要塞内部に突入したウルフのGエグゼスの攻撃だった。

 決定的なチャンスを潰され、ガンダムAGE-1Nは左腕を破壊されながらもビームサーベルをデファースの腹部に突き刺す。

 今度はその一撃が致命傷となり、ギーラは機体を捨てて脱出する。

 ギーラが脱出するとデファースは爆散する。

 フリットは機体を捨てて脱出したギーラを見つけた。

 

「あれは……UE!」

 

 フリットは逃げるギーラを追い銃を持って機体から降りる。

 

「逃がさない……」

「おい! 待て! フリット!」

 

 ウルフの制止を聞く事なくフリットはギーラを追って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ……一体何がガンダムに起きたと言うのだ!」

 

 Gレックスが落とされてクライドの怒りと憎しみを抑える事が出来なくなった時にガンダムZERO Aが黒いオーラに包まれた。

 それと同時にそのオーラが伸びてゼファーラに向かう。

 ナーガは何が起きたのか分からないが、そのオーラに触れるのは不味いと言う事は分かる。

 その為、オーラに触れないように回避する。

 回避したオーラはゼファーラの後に居たバクトを貫いた。

 

「アレがガンダムに搭載されている武器だとでも言うのか!」

 

 MS開発でヴェイガンは地球側よりも優位に立っているが、あのような武器の存在などナーガは知らない。

 だが、目の前でガンダムZERO Aはそれを使っている。

 未知な武器だが、ここで仕留めなければイゼルカントの計画に大きく支障が出るのは間違いはない。

 

「お前はここで倒す! ガンダム!」

 

 ゼファーラはガンダムZERO Aから延びて来る黒いオーラを避けながら、メガビームキャノンを放つ。

 オーラの動きは厄介だが、かわせない程ではなく、当のガンダムZERO Aはオーラを放出しているが微動だにしないため、攻撃を当てる事は容易い。

 だが、直撃したビームはオーラによって完全に阻まれた。

 

「あのオーラは攻撃だけでなく防御も出来ると言うのか!」

 

 只でさえ、オーラの軌道はビームやミサイルとは違い身切るのは難しい上にバクトの装甲ですらも易々と破壊出来る攻撃力を持っている。

 ゼファーラの装甲も直撃を受ければ危険だ。

 その上、メガビームキャノンの直撃ですら防ぐ防御力も同時に持っている。

 攻撃も防御で出来ない以上、勝算は限りなくゼロに近い。

 唯一可能性があるとすればオーラを出していられる持続時間だが、それもどのような理論で作られた武器かも分からない以上、最悪いつまでも出し続ける事も可能なのかも知れない。

 

「だからと言って引く訳にも行かない!」

 

 ゼファーラはオーラをビームガトリング砲で攻撃しながら、とにかくオーラに触れないようにするが、伸びたオーラの数が増え、ゼファーラの進路を塞ぐように先回りをするなど、次第に追い詰められていく。

 そして、遂にゼファーラの下半身の大型のスラスターユニットを捉える。

 それによりバランスを崩したゼファーラに次々と伸びたオーラがゼファーラを捉える。

 

「……一体……どう言う事だ?」

 

 ゼファーラに攻撃が辺り遠目で爆発を確認すると、クライドは今までの一連の戦闘が明らかに常軌を逸していた事に気がつく。

 

「シャルが落とされて……それから……アイツは死んだのか?」

 

 Gレックスが落とされて以降の事はクライドもぼんやりとしか覚えていない。

 だが、遠目でゼファーラに黒いオーラが襲いかかり爆発が見えた事は何となく思えている。

 あの爆発がゼファーラの物ならば、ナーガは死んだのだろう。

 だが、意識が朦朧としている内に復讐を遂げていたので、クライドにはイマイチ達成感を持てない。

 

「これで……俺の戦いも終わりか……終わって見ると呆気ないもんだな……」

 

 達成感を持つ事が出来なかったため、感慨にふけることも出来ず、ただ復讐を終えた事実のみを確認することしかない。

 だが、不意のクライドは背後から気配を感じるが、対応する前に機体に衝撃が走る。

 

「何だ!」

「まだだ……まだ終わらん!」

 

 スピーカーからナーガの声が聞こえて来る。

 

「貴様は……ガンダムは……いずれイゼルカント様の計画の妨げになる……」

 

 ガンダムZERO Aの背後には機体の至るところが破損している赤いガフランが取りついている。

 先ほどの爆発はゼファーラの強化ユニットの爆発でガフランは損傷こそはしているが何とか動く事は出来た。

 

「お前が! オーヴァンを!」

 

 モニターには至近距離の赤いガフランが映されており声の主がオーヴァンを襲撃したナーガである可能性が高い。

 

「貴様だけは私が連れて行く……」

 

 撃墜こそはされなかったが、ガフランの損傷はかなり酷くすでに機密保持の自爆装置も作動している。

 この状況でほぼ無傷な上に特殊な武器を持つガンダムZERO Aを倒すのは不可能だ。

 その為ナーガはガンダムZERO Aを道連れにする手段を取った。

 自爆装置は機密保持の為、爆発の威力は大きい。

 至近距離で防御体勢が取れない以上、相手に与える被害も尊大だ。

 取りついている位置が機体の胴体である為、この位置で爆発すればコックピットへのダメージは最も大きくなり、幾ら頑丈な装甲を持とうとパイロットを確実に殺す事は出来る。

 

「ふざけんな! 誰がお前と心中するかよ!」

 

 ガンダムZERO Aはガフランを離そうとするが、AGEドライヴの出力が異様に低下し、出力が上がらない。

 

「俺は死ぬ訳にはいかないんだよ!」

「ヴェイガンに栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 クライドの抵抗も空しく、ガフランはガンダムZERO Aを巻き込んで自爆した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「動くな! 全員武器を捨てて投降しろ!」

 

 アリスによって死者を出す事も無駄に時間を使う事もなく、グルーデック達は指令室に辿り付き、指令室の敵兵に銃を突き付けて投降を勧告する。

 

「動力炉のゲートを開けろ!」

 

 グルーデックは敵兵に命令するが、敵兵は誰一人としてグルーデックの言う事を聞くどころか、敵が指令室まで乗り込んでいるとは思えないくらいに反応がない。

 それがかえって不気味に思える。

 

「聞こえないのか! 動力炉のゲートを開けるんだ!」

「無駄だよ。この者どもは死など恐れてはいない」

 

 グルーデック達は自分達と敵とは言語が根本的に違うため、言葉が通じていないのかと思い始めていたが、ギーラによってそれは違うと言う事が証明された。

 ギーラの後からフリットも指令室に入って来た為、グルーデックらを驚かせる。

 本来ならフリットはガンダムAGE-1Nで動力炉を破壊する役目であるので指令室に来る訳がない。

 そんな事を差し置いてギーラはヘルメットを脱ぐ。

 

「人間!」

「そうだ。我々が化け物の様なエイリアンだとでも思っていたのか?」

「思っていたさ! お前たちは人間じゃない! どんな姿をしていても人間なんかじゃない! あるもんか!」

 

 ギーラが自分達と同じ人間の様な形をしていた事に驚きを隠せないがフリットはギーラが人間であることを否定する。

 

「罪のない人を巻き込んで……母さんだって……ユリンだって……お前たちが殺したんだ!」

「フリット、落ち着いて! 銃を下しなさい」

「嫌です」

 

 怒りと憎しみに囚われて我を忘れているフリットをミレースがなだめようとするも、フリットの怒りは収まらない。

 

「武器を与えれば殺し合う。はやり地球の民は愚かだな」

 

 ギーラはフリットや地球の人々を見下しながらそう言い捨てる。

 

「黙れ。ヤーク・ドレ」

「少しは私の事を知っている奴がいるようだな」

「お前は闇の商人、ヤーク・ドレとして地球圏全体に武器の情報を流して内乱を誘発したのだ」

 

 ヤーク・ドレの名は裏社会ではそれなりに名の通った武器商人だ。

 エウバやザラムのMSも設計データはヤーク・ドレから買い取った物でそれ以外でも様々なところで武器の販売に関わっているとされている。

 それにより、海賊行為やテロ行為が横行し始める事になった。

 

「しかも、それだけではない。私はお前たちUEの調査を独自に行った。その中でヤーク・ドレと言う男のもう一つの記録を発見した。14年前……天使の落日の時、破壊されたエンジェル付近で一人の男が救助された……それがお前だ! お前は味方のMSをコロニー内に誘導して襲撃させた」

 

 それが事実であれば、目の前のヤーク・ドレこそがグルーデックの妻子を殺した張本人と言える。

 

「エンジェルには私の家があった。家族がいた……私は全てを奪われたんだ!」

 

 グルーデックはギーラに憎しみを吐き出すかのように言う。

 

「私は復讐の為にここに来た。お前たちをこの手で殺すために……」

 

 グルーデックはその為だけに軍に入り、軍ではそれが叶わないと思うと軍を離れてここまで来た。

 

「復讐? そんなつまらない感情の為にか……悲しい男だな」

「ならば! お前たちの戦う理由は何だ!」

 

 自分の全てを否定されたグルーデックは感情を露わにする。

 今までその事だけの為に生きて来て、復讐の相手にそれを否定されればグルーデックが感情的になるのも当然だ。

 

「私達の戦う理由? 教えてやろう。貴様達がUEと呼ぶ我々の正体を! 呪われた人類の歴史を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……」

 

 ディーヴァがアンバットに接舷して後は、アブディエルは敵MSがディーヴァに取りつかないようにディーヴァの防衛戦を続けているが、戦況を常時確認しているオペレーターが不意にそう漏らす。

 

「どうしたの! 何か動きがあったの?」

 

 エリーゼが半ば怒鳴ると、オペレーターは何度もコンソールを確認する。

 

「それが……ゼロのシグナルがロストしました……」

 

 その報告にブリッジの空気が止まる。

 ガンダムZEROのシグナルがロストしたと言う事は即ちガンダムZEROが落とされたと言う事になる。

 クライドがそうそう落とされるとは思ってないが、ガンダムZEROの修理は必要最低限で尚且つ、クライドは片目を使えないと言う状態で出撃したため、あり得ない話ではない。

 その少し前にはGレックスのシグナルもロストしている。

 シャルルまでやられた以上、他に誰がやられても不思議ではない。

 

「何度も確認しました! でも見つからなくて!」

「もう良いわ」

 

 半ば半狂乱になっていたオペレーターをエリーゼが宥める。

 表面上は冷静を装っているが、ガンダムZEROのシグナルがロストした事で一番、動揺しているのは間違いなくエリーゼだろう。

 だが、エリーゼはそんな事を表に出す事なく指揮を執り続ける。

 クライドの事は気にはなるが、もしも取り乱してアブディエルが沈みでもしたら、クライドの帰って来る場所がなくなる。

 今のエリーゼがどう足掻いてもクライドの事はどうすることも出来ない。

 出来る事はクライドの帰って来る場所を守る事だけだ。

 

「今はディーヴァの防衛を最優先に! それと……この事は前線のパイロットには伝えないでね」

 

 戦場でエース機が落とされば確実に士気に影響が出る。

 戦場では少しの事が命取りに繋がる。

 その為、ガンダムZEROのシグナルロストは前線のパイロットには伏せねばならない。

 

「……了解しました」

 

 

 

 

「くそ! まだかよ!」

 

 ナイトルーパーはビームライフルを連射してガフランを撃墜する。

 すでに左腕だけでなく機体のところどころが被弾している。

 

「もう少しです。きっと……」

 

 ジェノアス改もドッズガンで応戦するが、レオナールに疲れが出ているのかドッズガンの命中精度が確実に落ちている。

 

「ああ! もう少しの辛抱だ!」

 

 ラーガンのジェノアスもドッズガンでウルフの抜けた穴をカバーしているが、ガフランのビームライフルの流れ弾が左肩に直撃し、左腕が吹き飛ぶ。

 そして、ガフランがビームサーベルを展開して振りかぶっている。

 

「ここまでか……」

 

 だが、ガフランをラクトのエルメダがビームサーベルで切り捨てる。

 

「済まない!」

「礼は良い。騎士は同士を見捨てはしない!」

 

 エルメダはジェノアスの左方向をカバーするように位置取りをする。

 戦闘が佳境に入り、戦場が徐徐にアンバットを中心に狭まり、完全にヴェイガンが押される形となっている。

 すでに海賊や連邦軍、アーヴィンの戦力も集まり戦いは掃討戦へとなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「150年前、増えすぎた人口を地球圏に抱え切れなくなり、そこで打ち立てられたのが火星移住計画『マーズバースディ』だ。地球連邦政府は実験的に16基のコロニーを火星圏に建造して人を移住させた。当初火星圏は資源も豊富で広々とした新天地だと思われていた……しかし、それは間違っていた。火星の磁気嵐が引き起こすマーズレイによって人口の20%が死病に侵された。それが火星圏の現実だ。計画は失敗だったのだ!」

 

 そこまではグルーデック達も歴史の授業で習っている。

 

「そして、結局死病の蔓延を食い止める事が出来ずに住民は全滅した」

 

 それが歴史の授業で習うマーズバースディの最後だった。

 

「いいや! 火星圏には多くの人間が取り残されていた! 地球連邦政府は自分達の調査不足の過失を隠蔽し火星圏に残された人々を身捨てたのだ!」

 

 もしも、連邦政府が火星圏の事を良く調べていれば、移住計画は計画の段階で見送られる事になった。

 だが、連邦政府はそれを怠った。

 それは人口が増え過ぎて一日でも早く火星に移民計画を遂行し、地球圏の人口を減らしたかったのかも知れないが、結果としては計画は失敗に火星圏に移民した者達は皆死亡したとされて身捨てられた。

 

「その後は蔓延する死病との恐怖と戦いながら地球への帰還を夢見て、火星圏に新たな国家を作り上げた。それが我々『ヴェイガン』だ。地球圏でぬくぬくと暮らすお前たちに私達の叫びが聞こえるか? 故郷に帰りたいと願う魂の叫びが!」

「だから、お前たちコロニーを破壊して多くの人間の命を奪ったというのか! お前たちのやった事は報復戦争……つまりはただの復讐だ!」

「違う! イゼルカント様の志はそんな低次元の話しではない! イゼルカント様の計画はお前たちになど理解は出来ない! 理解出来る筈がない!」

「ええ……理解など出来はしません。貴方方の行いは戦争ですらないただのテロ……人殺しに過ぎません。その様な低俗で自己満足など理解するに値しません」

 

 今まで黙っていたアリスが今ままでは考えられない様な辛辣な言葉を口にする。

 そして、銃をギーラに向ける。

 

「貴方方が餓鬼のように喚こうと私には一切関係ありません。どうぞ、好きなだけ汚らしく喚いて下さい。ですが、オーヴァンを襲撃しアスノ家を壊滅させた事、クライド坊ちゃんとフリット坊ちゃんの未来を変えてしまった罪は貴方ヴェイガンの死を持って償って頂きます」

 

 アリスが銃を撃つ前にグルーデックが引き金を引いた。

 

「……イゼルカント様にお前たち如きが歯向かう事など出来ない……我々の目的は必ず果たされる。果たされねばならんのだ!」

 

 ギーラはそう良い、指令室のコンソールを操作するが、グルーデックがギーラを撃つ。

 

「我々が……魂になれば……地球に帰れる……イゼルカント様……そうですよねぇ……私もこれで……地球に……」

 

 そして、ギーラの息の根は止まるがそれと同時に、アンバット内部で爆発が起こる。

 ギーラの最後の足掻きでアンバットの自爆装置が作動しているからだ。

 

「父さん……この警報はまさか……」

 

 その声に一同は銃を構えて警戒する。

 それはギーラの息子のアラベルの物だった。

 司令室に入って来たアラベルはグルーデック達を見て驚くがすぐに父のギーラの遺体を発見する。

 

「父さん……父さん!」

 

 アラベルはギーラの遺体に飛びつく

 

「そんな……返事をしてくれよ……父さん!」

 

 その様子を見て一同は唖然としている。

 今まで宇宙人として人類の敵として見ていた敵がまるで自分達と同じ人間に見える。

 アラベルの姿は家族を失い悲しむ人間その物だ。

 グルーデックは黙ってアラベルの方に歩いて行く。

 

「この地球種め!」

 

 アラベルはグルーデックに憎しみの目を向けながら、ギーラの持っていた銃を向ける。

 だが、あっさりとグルーデックが銃を叩き落とす。

 

「私の名はグルーデック・エイノアだ。お前の父親を殺したのはこの私だ。お前は私と同じだ。復讐と言う亡霊に取りつかれて悲劇的な人生を歩め」

 

 グルーデックはそうアラベルに言い残して指令室を出て行く。

 そして、ディーヴァや内部に侵入していたガンダムAGE-1NとGエグゼス、デスドールもアンバットを脱出しアンバットは自爆装置により大爆発を起こす。

 この日までの戦いを後に蝙蝠退治戦役と呼ばれ長きに渡るヴェイガンと地球との戦争のはじまりとなる。

 

 

 

 

 

 

 

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