機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第32話

「エリアルド・アスノ入ります」

 

 ヴェイガンの襲撃の翌日、未だに戦場となった町の補修作業や軍の警戒が続く中、エリアルドは警備の任務から外れて、アルフレッドに呼び出されていた。

 

「それで自分に用とは?」

「楽にしても良いよ。ここには君と僕しかいないからね」

「そう言う訳にもいきません」

 

 アルフレッドはエリアルドが生まれた時から知っている。

 その為、他に誰もいない時くらいは楽にしても良いと思っているが、エリアルドはアルフレッドに上官に対する態度を崩さない。

 

「まぁ良い。それでだ、君をここに呼んだのは他でもない。昨日の戦闘の事でだ」

「昨日、居住区のヴェイガンのMSを撃退した所属不明のMSの事が分かったんですか?」

「ああ……その上で昨日の戦闘で居住区のヴェイガンを撃退したのは君であると我々は発表するつもりだ」

「市民に対して嘘の報道をするつもりですか?」

 

 昨日の戦闘でエリアルドが現場に到着した時にはすでに戦闘は終結していた。

 それを居住区での戦闘に関わっていないエリアルドの戦果として報道しようとしている。

 それは明らかに事実を捻じ曲げた報道だ。

 

「そう言う事になるね」

「理由を教えて下さい」

 

 エリアルドも情報操作の必要性は理解している。

 事実を公表し、市民の不安を煽るような真似をするくらいなら嘘の報道で安心させた方が良い。

 だが、連邦軍の戦果を挙げるために意図的に情報を隠し、操作することは軍人として許せる事じゃない。

 

「昨日、居住区で戦闘を行ったのはガンダムだよ」

「ガンダム……」

「そう。パイロットはアセム・アスノ……君の従兄妹だね」

「アセムが!」

 

 その事実にエリアルドは驚く。

 すでにマリィやアセム達の無事は確認していたが、まさかガンダムで戦っていたとは夢にも思って無かった。

 

「彼は民間人の……学生と言う立ち場でありながら、軍の保有しているMSを使い戦闘に介入した」

 

 ガンダムAGE-1は表向きは特研で保管している事になっている。

 軍が所有しているMSを民間人が使い戦闘を行った場合は罪を着せられる場合がある。

 少なくとも軍事機密に触れたとして、軍に拘束を受ける。

 それが総司令の息子でもだ。

 

「少なくとも学生ではいられない。それは分かるね?」

「はい……」

「だから、彼がガンダムに乗って戦闘行為を行ったと言う事実を隠蔽することで彼に学生を続けさせる。それにガンダムの事を公にすれば、トルディアはヴェイガンに真っ先に狙われるからね。そうなれば、昨日の戦闘の非じゃない。今までまともな戦闘経験の無いトルディアが戦火に巻き込まれたら多くの被害が出る」

「だから、情報操作をすると?」

「そう言う事になるね」

 

 情報を操作することでアセムが今まで通りに学生で居られる事とガンダムがある事でトルディアが戦火に巻き込まれないようにする事に繋がるならとエリアルドは情報操作に納得し、挙げてもいない戦果を受け入れる事にする。

 

「分かりました。自分が戦果を挙げたと言う事で口裏を合わせてば良いんですね」

「そう言う事、それと基地の第7格納庫に君のMSとアルベルトのMSを移動させておいたから」

「俺達のMSをですか?」

「そこにはガンダムも置かれているからね。第7格納庫は関係者以外は立ち入り禁止になっている。君も格納庫のガンダムの事は誰にも言わないでくれよ」

 

 すでに昨日の時点で今では使われて無く倉庫代わりとなっていた第7格納庫にガンダムAGE-1を収容している。

 先の戦闘でヴェイガン側にガンダムの存在が知られた可能性があり、狙われた場合アスノ邸では居住区での戦闘になりかねないため。軍の基地に隠しておけば隠し場所がばれても戦闘は軍の施設になる。

 基地周辺なら連邦軍に地の利があり、民間人の多い居住区での戦闘が極力避けられる。

 

「了解しました。それでは自分はこれで失礼します」

 

 エリアルドは敬礼し持ち場に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日起きましたヴェイガンによる襲撃事件の続報です……」

 

 つい昨日、トルディアは戦場となったが、すでに住民は日常生活に戻っている。

 アセムやマリィの通う学校も授業こそは臨時で休校となるが、MSクラブは大会を来週に控えている為、学校のガレージに集まっている。

 ガレージには来週の大会で使うためにアセム達が日々試行錯誤を繰り返している競技用のMSやそれに使う部品や工具が置かれている。

 

「昨日からこの話題で持ち切りだね」

 

 MSクラブの部員のマシルがラジオから流れる昨日の戦闘の報道を聞いてそう言う。

 コロニー内で敵軍と戦闘が起きたのだ、それくらいは当たり前と言える。

 

「しょうがないよ。ヴェイガンが攻めて来たんだ」

「でも、またやって来てもまた、アスノ中尉が撃退してくれるよな」

 

 すでに報道では昨日の戦闘でエリアルドがヴェイガンを撃退した事を大々的に報道している。

 エリアルドはトルディア基地のエースパイロットでビッグリングの司令官のフリットの甥で特研の所長のクライドの息子と言う事もあり、一躍トルディアを守った英雄のように報道されている。

 アセムもガンダムで戦った事を知られては今までの様な生活が出来ないかも知れないと口止めをされている為、その報道の真偽をとやかく言うつもりはない。

 その報道もあってかトルディアでは戦闘後に目立った混乱も起きていない。

 

「残念だったな。アセム、昨日の戦闘が見れなくてさ。すっげぇ迫力だったんだぜ」

 

 シャーウィー達は避難の時に遠目だったが、エリアルドの戦闘を見る事が出来て興奮気味だ。

 命のやり取りとしていたとは言え、戦争に関わる事もない学生で尚且つ、MSに興味があればMSの実戦を遠くから見る分には自分達とは違う世界の出来ごとだ。

 しかし、その戦闘に関わっているアセムはすでに違う世界の出来ごとではないのだと実感している。

 

「そう言えば、ヴェイガンを撃退したアスノ中尉ってマリィのお兄さんなんだよね」

 

 マシルが思い出したかのようにそう言う。

 自分の名前が出て来たため、小型のMSを弄っていたマリィが会話に興味を示す。

 

「そだけど?」

 

 だが、あまり興味がある訳でもなく、作業の片手間で会話する。

 

「じゃさ、サインとか貰えないかな?」

「は? サイン?」

 

 流石に予想もしていない事にマリィは手を止める。

 元からエリアルドはエースパイロットでトルディア内ではある程度の知名度はあったが昨日の戦闘の報道でトルディア内では一躍有名人となっている為、マシル達がエリアルドのサインを欲しがるのは分かるが、マリィからすればエリアルドは普通の真面目で口五月蠅い兄でしかない。

 

「そんな訳に行くかよ。兄さんは今も警戒中で昨日から帰ってないからな」

「それでなくても殆ど帰って来てないけどね」

 

 エリアルドは基本的に家に帰る事は少ない。

 普段から基地に滞在し、訓練を行い有事に備えて待機をしている事が殆どだ。

 尤も、トルディアは昨日までは戦争とは無縁の平和なコロニーであったため、スクランブルはコロニーの警戒宙域に海賊や所属不明の戦艦が接近した時くらいで殆ど出番があった訳じゃない。

 

「そっかぁ……」

 

 当てが外れて落ち込むシャーウィーとマシルを見てマリィは呆れる。

 だが、すぐに二人は復活する。

 

「あっ! ロマリー!」

 

 それはガレージの入り口にロマリーが入って来たのが見えたからだ。 

 MSは油臭いなどの悪いイメージが付いている為、女子からは嫌煙されがちであるため、彼らにとって女子と関われる機会は貴重だ。

 尤も、シャーウィーもマシルもMSクラブに入部した時に女子部員がいた事に喜ぶが、数日でそれが淡い夢であった事を思い知らされている。

 

「誰?」

 

 それを見たマリィが本気でそう言う。

 実際は昨日、馬小屋でアセムが怪我をしたロマリーを連れて来ていたのだが、マリィは対して興味もなく完全に忘れていた。

 

「何でロマリーを知らないんだよ?」

「有名人なの?」

 

 流石に呆れるしかないが、マリィは基本的に興味の無い相手の事は覚えていない。

 自分達もMSクラブに入部した時は中々顔を名前を覚えて貰えず苦労していたため、学園のアイドルとも言えるロマリーの事を知らなくても無理はない。

 ガレージに入って来たロマリーは真っ直ぐアセムの元に歩いて来る。

 

「昨日の御礼を言いに来たの」

「えっと……その事なんだけど……」

「分かってる。内緒なんでしょ?」

 

 ロマリーはアセムの耳元でそう言う。

 昨日アセムがガンダムで戦った事を話されると面倒なことになっていたが、その心配はなかった。

 

「じゃぁ、頑張ってね」

 

 ロマリーはそう言ってガレージを出て行くが、シャーウィーとマシルはアセムに疑いの眼差しを向ける。

 アセム達がロマリーとまともに話たのは昨日くらいで何故か、ロマリーが訪ねて来るまでに発展している。

 MSクラブの活動に精を出し、色気の無い学生生活を送っている二人からすれば由々しき事態だ。

 

「お前、いつの間に仲良くなったんだよ」

「別に仲良くなんて……」

 

 アセムは弁解するが、先ほどのやり取りと見る限りでは説得力がない。

 

「良いか……青春は友情と恋とMSだ!」

 

 シャーウィーはそう言って熱く語りだす。

 だが、あまりにも突然の事でアセムは面を喰らう。

 

「ここに友情はある。MSもある。後は恋だけだ!」

「何だよ……行き成り」

「とにかくそう言う事なんだ……」

 

 アセムはどう言う事なんだと言いたいが、最後の一つを除いては分かる気もする。

 だが、それに猛烈に異を唱える物がいた。

 

「何言ってんのよ! 馬鹿どもが!」

 

 マリィがMSの上に仁王立ちして三人を見下ろすようにして指を突き刺してそう叫ぶ。

 

「青春はMSと火力と重武装でしょ! パパがそう言っていたわ!」

 

 実際にはそこまでは言っていない。

 だが、クライドにとって機械弄りが青春どころか人生である事は間違いはない。

 

「友情? 恋? そんなもんは青春には必要ないのよ」

 

 マリィはそう言い切る。

 幼い頃より、クライドを見て来てそれに影響されてMSにどっぷりハマり切っているマリィにとってはMSを弄る事が青春の全てのようだ。

 

「アセム……今始まったんだな。お前の青春は……」

 

 だが、それはいつもの事なので今更驚く事もなくシャーウィーもスルーする。

 

 

 

 

 

 

 

 ロマリーが帰って少しするとMSクラブには珍しい来客が再び現れる。

 ゼハート・ガレットだ。

 ゼハートは昨日の戦闘でガンダムが現れたと思われる地域にアスノ邸がある事を知った。

 アスノ家はかつて二機のガンダムを作った家でMS鍛冶としても非常に有名だ。

 その為、昨日のガンダムに何かしらの関与をしている可能性が高く、アセムとマリィが入っているMSクラブに入部を希望していて接近し

 

ようと心見ている。

 

「誰?」

「誰って……ああ、そう言えばマリィは昨日サボってたっけ……」

 

 アセムはロマリーの時と同じ反応をするマリィに呆れるが、昨日ゼハートが転校して来た事をマリィが学校をサボっていたため知らず、今日も授業がなかったため、ゼハートと顔を合わす機会がないので知らないのも当然だった。

 

「ゼハート・ガレット、昨日ウチのクラスに転校して来た転校生だよ」

「ふーん」

 

 マリィはアセムの説明を聞くが対して興味を持った様子もない。

 クラスの女子はゼハートの外見から自己紹介の時に浮かれていたが、色恋に興味の無いマリィにはゼハートの外見など興味の範囲外に事らしい。

 

「うーん……何で上手くいかないのよ」

 

 それよりもマリィは自分が弄ったところが上手く動かない事の方がよっぽど重要なようだ。

 マリィが独断で勝手に改造し、その為に今は不調となっていた。

 

「だから、俺もMSクラブに入れて欲しんだ」

「この前は入らないって言った癖に……」

 

 昨日、ゼハートはトルディアへの侵入経路を確保するために学校をうろついていた時にガレージを通りかかった時にシャーウィーにMSクラブに勧誘されたが「興味ない」の一言で一蹴している。

 それが翌日には掌を返したかのように入部を希望している。

 それも昨日の冷たい態度とは一変してさわやかな友好的な態度でだ。

 シャーウィーからすれば余り面白い話ではない。

 

「俺なら君たちの役に立てると思うな」

 

 その数分後、学校のグラウンドでMSの稼働テストが行われていた。

 ゼハートが自信満々で役に立てると言っていたため、シャーウィーも少しムキになりゼハートの実力を見るために入部テストと称して少しゼハートにMSを弄らせた。

 MSクラブ内でも優秀なマリィでもお手上げに近い状態のMSを弄らせる事でゼハートの入部を拒む理由を作ろうとするが、それは見事に失敗に終わる。

 ゼハートがプログラムを少し弄る事でマリィが弄りまくって上手く稼働しなかった部分が完全に動くようになっている。

 

「凄い! 凄いよ! ゼハート、プログラムを少し弄っただけで!」

「ちぇ……分かったよ。入部を認めてやる」

 

 実力を見せた以上、シャーウィーもそれ以上文句の良いようも無くゼハートの入部を認めるが、そのゼハートが弄ったプログラムをマリィがじっと見つめて少し震えている。

 その様子を見たシャーウィー達は悪い予感しかない。

 

「俺は少しプログラムを弄っただけだよ。このMSは凄く良く出来ている。学生でここまで出来るとは正直思ってなかった」

 

 行き成り、プログラムを弄って上手く動かせた事がマリィのプライドを傷つけた可能性を考えて、今後の事も考慮しMSを褒めてマリィの機嫌を直そうとするが、マリィは無言で俯きながら、ゼハートのところまで来る。

 顔を上げたマリィは目が据わっていたため、周囲の空気が凍りついて行く。

 

「結婚して!」

「は?」

 

 だが、そんな空気をマリィが一撃でぶち壊す。

 マリィはゼハートの手を握り締めてそう言う。

 一同は一瞬、マリィが何を言ったのか理解出来なかったが、理解して驚く。

 

「一体どういう事なのか分からないんだが……」

「私が求めていた物はこれなのよ! アレが上手くいかなかったのはプログラムの方に問題があったからなのよ! 私は良くパパからお前はハードの方に片寄りがちだって言われていたの。そんで上手くいかなかったのをゼハートのプログラムが解決してくれた! これは運命よ。だから結婚しましょう!」

「マリィ、いろいろとすっ飛ばしてるぞ。それにマリィはゼハートの事が好きな訳じゃなくて、ゼハートが組んだプログラムが気に行ったんだろ? それなのに行き成り結婚とかおかしくないか?」

 

 アセムの言う事は非常に正論だが、興奮状態のマリィに正論は意味を成さない。

 

「じゃぁ、ゼハートの事も好きになったから結婚ね」

(この女……一体なにを考えている。まさか、俺の正体に感づいているのか? だから、意味不明な言動で揺さぶりをかけた上で俺を監視する口実を作っているのか? 下手に断ればMSクラブに居辛くなる。だが、結婚を了承すれば任務に支障が出る……そこまで考えた上での行動か! だとしたら、流石クライド・アスノの娘……見かけは普通の女だが侮れない)

 

 ゼハートはあまりにも突然で意味不明な行動を取るマリィの行動を深読みしている。

 実際はゼハートの正体など気にも全く感づいてなどいる訳もなく、単にゼハートの組んだプログラムに惚れこんでいるだけだったりする。

 

「マリィだったよね。俺達は今日会ったばかりだから、お互いの事は何も知らないだろ? だから取り合えず友達から始めよう」

「面倒だから嫌よ」

 

 ゼハートの無難な返しも今のマリィに通用することはなかった。

 

「マリィ、その辺にしとけって、大体ゼハートは俺達と同い年だろ? 結婚は年齢的に出来ないだろ」

「ちっ……まぁ良いわ」

 

 流石のマリィも法的な問題まではどうすることも出来ないため、納得がいかないが納得する。

 

「助かったよ」

「気に済んなよ。マリィは今はああだけど、いつもはサボっていない事も多いし、たまにしかああはならないから安心しても良いよ」

「それは何よりだ。これからもよろしく頼む」

 

 こうして、マリィが騒ぎを起こすがゼハートは正式にMSクラブの部員となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼハートがMSクラブに入部して数日が経ち、その間にも大会の為の作業をしている。

 マリィも相変わらず、気分で学校やMSクラブの活動をサボるが心なしか以前よりもサボる回数が減った気がする。

 その間に入部当初はゼハートの事が気に入らなかったシャーウィーもゼハートの事を受け入れてMSクラブは本当の意味での一つのチームへと纏まっていた。

 更にはロマリーもちょくちょくMSクラブに顔を出し、実質的なマネージャーに近くなっている。

 

「必要なパーツはこれで全部か……」

 

 ゼハートはMSクラブで必要な部品を町のジャンク屋まで買いに向かい、その帰りにふと公園の方を見るとそこには自分の見知った相手がいた。

 それを確認したゼハートは先ほどまでの学生ではなくヴェイガンの戦士としての目つきに変わる。

 

「調査は進んでいるのか?」

 

 ゼハートは公園のベンチに座り一人ごとのように言うが、実際はベンチの後にある木にもたれ掛かっている顔の傷が特徴的な男、ダズ・ローデンに言っている。

 ダズはゼハートがトルディアに潜入する際に付けられた補佐だ。

 ゼハートが学生としての生活をしている間に動き情報を収集している。

 

「はい。一か所を除いては該当地域を隈なく探しましたが結果は見つかりませんでした」

「一か所?」

 

 一か所を除いては探して見つからないと言う事はその場所にあると判明しているも同然だ。

 

「アスノ家です。アスノ家の敷地内にガンダムが隠されている事はまず間違いありません……ですが、あの家の警備は厳重で……」

 

 連邦軍の総司令部の司令官の自宅ともなれば、いつ敵に狙われてもおかしくはないため、民家としては異常と言って良いレベルの警備がされている。

 

「そちらは私が行く」

「よろしいので?」

「ああ」

 

 警備が厳重だが、今のゼハートの立場を利用すればアスノ家の敷地に入る口実を作る事は容易い。

 

「分かりました。それではお願いします」

 

 ダズはそう言って一目に付かないように立ち去る。

 

「私はこんな事をする為に来た訳じゃない……急がねば」

 

 ゼハートはMSクラブでMSを弄るためにトルディアに身分を偽って潜入して訳ではなく、イゼルカントの計画に支障をきたす可能性のあるガンダムを奪取、もしくは破壊するために来ている。

 その為、ゼハートの任務によってはヴェイガンの民の未来にも関わる重要な任務だ。

 ゼハートはMSクラブで緩みかけた気を引き締めてMSクラブのガレージへと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ? 俺の家に?」

 

 ガレージ戻りいつも通りの作業に戻ったゼハートは機会を見てアセムにアセムの家に行きたいと告げる。

 理由は簡単だ、アセムの父親はビッグリングの司令でクライドのせいで余り目立つ事はないが技術者としても優秀で、フリットの書斎には技術的な専門書も多数あると言う事で大会で使うMSの強化に使えないかとの提案だ。

 

「父さんの物だがら無断で見せる訳には……」

 

 幾ら、息子とは言えフリットの書斎に無断で入る訳にも行かないため、アセムは渋る。

 黙っていればばれないが、だからと言って勝手に入るのも気が引ける。

 

「ならさ、私の部屋に来る? 私の部屋にも伯父さんの書斎程じゃないけどいろいろとMS関連の資料はあるしさ、ここに持って来るのは面倒だからパスさせて貰うけどね」

 

 渋るアセムにマリィがそう言う。 

 マリィもクライドに度々ねだりMS関連の資料などを取り寄せて貰っている為、そこいらの図書館よりはMS関連の資料は豊富に揃っている。

 

「そう言えば、マリィのお父さんは連邦の技術者だったよね」

「そっ、特別技術開発局の局長なんだから」

 

 マリィはクライドの事を自分の事のように自慢する。

 特研は軍内部からは嫌われている傾向が強いが、MS開発の最先端の技術を扱っている為、技術者ならば誰しも憧れる職場だ。

 その研究所のトップが自分の父である事はマリィにとっては一番の自慢だ。

 

「じゃあ、決まりだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁここが私の部屋よ」

 

 マリィが勢いよく自分の部屋のドアを開けると皆は絶句する。

 シャーウィーやマシルは一瞬はマリィとは言え、女子の部屋に上がる事に緊張したが、それは期待のし過ぎである事を思い知らされた。

 マリィの部屋にはMS関連の資料が山積みとなっており、とても女子高生の部屋とは思えなかった。

 その上、衣類などは部屋の隅に纏まって積まれている。

 

「マリィの部屋は久しぶりだけど相変わらず汚い部屋だな」

「大きなお世話よ」

 

 アセムも昔は良く、お互いの部屋を行き来していたが、今では部屋を行き来することはなくなったが昔と対して変わっていない。

 変わったところと言えば資料の数が増えたくらいで体の成長もあってか記憶よりも狭く感じる。

 

「その辺に詰まれているのが全部がMSの資料ね。勝手に見ても良いから……だけど、私の下着とかには絶対に触らないでよ。触ったりしたら殺すから」

「別にマリィの下着なんて興味ないよ」

「全くだ」

 

 今更マリィの女子としての期待など一切していないシャーウィーとマシルはさっさと資料を漁りにかかる。

 

「アンタらねぇ……まぁ、良いわ」

 

 普通にスルーされた事はムカつくが異性として見られたところでどうでも良いため、マリィはそれ以上言う事もない。

 

「それにしても……凄い量だな」

「かなりマニアックな資料もあるね……何に使うんだろう?」

「まぁね。その辺のはパパに頼んで貰ったのよ。基本的にパパは一度見たら大抵は覚えてるからね」

 

 マリィの部屋の資料の大半はクライドが特研の経費から買った物が多く、読んだ後にマリィにあげる事もある。

 

「マジかよ……この全部覚えてるのか?」

「見たいよ。まぁ、パパは興味のある事には熱心だけど、それ以外の興味の無い事には全く興味を示す事もない全然覚える気もないから困ったものよ」

 

 マリィはヤレヤレと首を振るが、シャーウィー達もマリィは確実にクライドの血を引いていると確信する。

 マリィもまた、興味のある事に対しては暴走するが、興味の無い事には一切の感心がいかない。

 

「そんな事よりも、早いとこ使えそうな資料を探したらどうなんだ? もう時間も余り残って無いんだからさ」

 

 アセムがそう言い、MSの強化に使えそうな資料を片っ端から探し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンダムを隠せそうなのはこの辺りしかなさそうだ……」

 

 ゼハートは資料探しを始めてタイミングを見計らいトイレに行くと言い、アスノ家に隠されていると思われるガンダムの捜索をしている。

 軽く見たところでは屋敷の中にMSを一機隠せるスペースもないが、敷地内に馬小屋がある事を発見した。

 その馬小屋はMSを一機なら横にすれば十分に隠せる大きさがある為、ゼハートは直接確認に向かった。

 馬小屋の中には馬数に比べて明らかに量の多い藁が置かれている。

 その藁の量は十分にMSを覆い隠せる量はある。

 

「この中にガンダムを隠しているのか?」

 

 ゼハートは藁の中を確認しようとする。

 

「こんなとこにいたの?」

 

 不意に背後からマリィがそう言いゼハートは身構える。

 だが、ここで騒ぎを起こせば自分がヴェイガンの工作員である事がばれてしまう。

 そうなれば、ガンダムを探すどころではない。

 その為、ここは穏便にやり過ごす必要がある。

 

「ああ……馬小屋は珍しいからね。つい入ってしまったんだが、入ったら不味かったか?」

 

 馬小屋は農業系のコロニーなら差ほど珍しくはないが、トルディアのような一般的なコロニーではあまり見かける事はない。

 その為、珍しくてつい入ってしまったと言うのは無理がない言い訳だ。

 

「別に問題はないわ。でも、こんなとこはつまらないでしょ?」

「そんな事はないよ。それにしてもこの馬小屋は大きいね。MSでも隠せそうだ。アスノ司令の家だからいざって時の為にMSが隠してあったりしてな」

 

 ゼハートは敢えて冗談を言ったように見せかけてマリィの反応を窺う。

 マリィはキョトンとするが、すぐに大笑いする。

 ゼハートも何故、大笑いするのか理解出来ないが、様子を見ているとマリィの笑いも収まっていく。

 

「そんな、燃える展開がそうそうある訳ないじゃん」

「そうだな。ある訳ないよな」

 

 ゼハートも冗談で済まそうとする。

 マリィの反応を見る限りではガンダムがここに隠される可能性はあまり高くないが、マリィが上手く隠しているのかマリィ自体は知らない可能性が高いため、一応は確認をしておきたいので、ゼハートはマリィをどうやって追い返そうか考える。

 

「まぁ、あるんだけどね」

「っ……へぇ……」

 

 マリィを追い返す方法を考えていると予想外の事を言ったため、ゼハートは動揺を見せないようにする。

 

「本当にMSを隠してあるのか?」

「少し前までは藁の中にガンダムが隠してあったのよ」

 

 そして、ゼハートが探しているMSの名まで口にする。

 

「ガンダム? 聞いた事の無いMSだけど?」

 

 マリィはガンダムの事を知っている口ぶりな為、慎重に情報を集めようとする。

 MSクラブに所属している以上、知らないMSの名前が出てくれば興味を持ってその事を聞いても不自然ではない筈だ。

 

「ガンダムってのはすっごい高性能のMSの事。25年も前に作られたのに少し改良しただけでこの前のヴェイガンの襲撃でドラドを2機も破壊しんだよ。それもド素人のアセムが乗ってね」

「アセムが?」

 

 予想はしていたが、アセムがガンダムに乗っていた事を知ると、ゼハートは自分でも思っている以上に動揺しているが、本人は気づいていない。

 

「そっ、あっと……でもね。報道じゃうちのお兄ちゃんの戦果って事になってるから、あまり言いふらさないでよ。私が話した事がばれるとお兄ちゃんに怒られるし、トルディア基地の司令官はパパの古い友達見たいで私とも顔見知りなんだよね。だから、どっちからも何か言われそうだし」

「分かった。秘密にするよ。その代わりにそのガンダムってMSを見ても良いかな?」

 

 これはまたとないチャンスと踏んでゼハートはマリィに頼む。

 

「私としては構わないんだけどさぁ……その戦闘の後にヴェイガンに狙われても良いようにって軍の基地に隠しちゃったんだよね。その場所までは私にも教えてくれないしさぁ……」

 

 マリィもガンダムが基地の何処にあるかをバルガスやエリアルドに聞いたが、どちらも教えてはくれなかったため、それを思いだしていじける。

 

(遅かったか……すでにガンダムは連邦軍の基地に搬送されている。連邦軍の基地に仕掛けるにはトルディアに隠している戦力では厳しいか……)

 

 先の戦闘で破壊された5機のドラド以外にもゼハートのゼダスRやドラドが数機、トルディアに隠しているが連邦軍の基地に仕掛けるためには戦力が不足している。

 外からMSを持ちこむにしても先の戦闘でトルディアの警戒体勢は完全に解かれている訳でもなく、高いステルス技術を持つヴェイガンでも確実に運び入れるのは難しい。

 最悪戦闘になり無意味に戦力を減らす事になる。

 あまり時間をかけて良い任務ではないが、焦って失敗しては元も子もない。

 

「それは残念だな。そろそろ戻そうか。余り遅いとアセム達も心配するかも知れない」

 

 下手にガンダムを見たいとせがめば疑われかねないと判断し、ゼハートはここは引く事にする。

 少なくともガンダムの隠してある場所は把握した。

 今回の潜入はそれだけでも意味がある。

 今日のところの収穫はそれで良しとし、本来の目的である資料探しに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼハートがガンダムの所在を掴んでから数日が経ち、その間ゼハートは特に動く事は無かった。

 場所が分かれば後は襲撃するための手筈を整える事が先決であるため、下手に動けば連邦軍に悟られる危険性があるからだ。

 そうして数日が経つと遂に大会の当日となる。

 

「今日は余裕で間にあったな」

 

 エリアルドは大会の会場に到着すると、時間を確認する。

 すでに会場は開いている為、それなりに人は集まっているが十分に良い席が取れる時間だ。

 今日はアセムの誕生日の時のような事もなく、無事に会場に辿りつく事が出来ている。

 だが、不意にエリアルドは何かを感じる。

 

「あれは……」

 

 辺りを見回しているとファムを見つける。

 ファムは大会会場の中を覗きこむようにしている。

 

「ファム? どうかしたのか?」

 

 若干、不審な行動とも取れるが知り合いである為、エリアルドはファムに声をかける。

 

「エリアルド? また会ったわね」

「ああ……そう言えば、君のところは大丈夫だったのか?」

「ええ……私のマンションの辺りは戦闘があった場所から離れていたから被害はなかったわ」

 

 先のヴェイガンの襲撃でファムに被害がなかった事にエリアルドは内心ホッとする。

 

「それにしても災難だったよな。トルディアに来て次の日にヴェイガンの襲撃があるなんてさ」

 

 仕事でコロニーに来た次の日に敵の襲撃がある確率を考えれば相当低い。

 だが、その低い確率が当たった事は喜べる事ではない。

 

「そうね。それよりも、ここで何があるの?」

 

 ファムがそう言い、先ほどまでのファムの不審な行動にも納得がいく。

 ヴェイガンの襲撃もありトルディアはいろいろとゴタゴタしていた。

 エリアルドもようやく大会を観戦する時間だけ持ち場を離れる事が出来たくらいだ。

 少し前にコロニーに来たばかりのファムにはここで何があるのか知らないのも当然だ。

 その為、人が集まり何かイベントがある事が分かったが、その内容までは知らないので中を覗いて何が行われるかを確認していたと言う事らしい。

 

「MSバトルコンテストって言って、MSバトルの学生向けのアマチュアの大会だよ。俺も昔参加した事がある」

「そうなの?」

「一応、何度か優勝した事もあるんだ」

 

 エリアルドは過去の実績を自慢する見たいで照れ臭いが、ここぞとばかりにアピールする。

 

「そうなの? 凄いわね?」

「興味があるなら、一緒に見る?」

 

 また、興味があるとは一言も言っていないが、駄目もとで誘って見る。

 

「そうね……今日は仕事も予定もないし、それも良いわね。ご一緒しても良いの?」

「ああ……構わないよ」

 

 内心では物凄く舞い上がっているが、敢えて冷静であるように見せる。

 下手に舞い上がっているところを見せれば下心があると思われるからだ。

 

「それじゃ行こうか」

 

 エリアルドは会場に入ると、大会が見易い場所を確保する。

 会場内には見物人がチラホラ見える。

 会場には競技用のMSが戦うリングが二つ設置されており、一度の二人の試合を同時に行う事が出来る。

 

「結構、人が入るのね」

「コロニーでは娯楽が少ないからな」

 

 昔に比べると他のコロニーとの繋がりがあるとは言え、コロニー内では大きな行事がそんなになく、MSバトルコンテストの大会の様な行事には意外と人は集まる。 

 会場に来れない人の為に試合はテレビでトルディア全体に生中継もされる程だ。

 

「そうね……人が生きて行くにはある程度の娯楽も必要よね……」

 

 ファムはどこか遠い目をしてそう言うが、エリアルドはファムを誘えた事で気分が上がり気づいていない。

 

「そろそろ始まるようだ」

 

 そして、MSバトルコンテストの大会が開始される。

 参加チームは全部で48チームにも及び、試合ごとに次々とその数が減らされていく。

 

「最近の学生は凄いわね」

「そうだな。俺がいた時よりもレベルが上がっているな」

「次が決勝戦よね?」

 

 すでに残す試合は最後の一試合となり、その試合に勝った方が大会の優勝チームだ。

 

「ああ……アセム達は順調に勝っているな」

「知り合いがいるの?」

「決勝の片方が俺の学校の後輩なんだ。そこに妹と従兄妹が大会に出てね。今までMSを動かしていた方が従兄妹でリングのそばで常に怒鳴っていたのが妹だ」

「家族か……良いわね。そう言うの」

「ファム……君は……」

 

 エリアルドはファムが家族に対して何かあるのかと思うが、決勝のゴングと共に歓声が上がり、聞く事が出来なかった。

 試合は終始MSクラブの優勢で終わった。

 ゼハートの加入でマリィの改造で出た問題が解決し、性能が大幅に上がっただけでなく元より学生レベルでは非常に優秀だったアセムもヴェイガンとの実戦を経験した事で更に実力を付けた為、当然の結果と言える。

 大会が終わり、優勝したMSクラブは大会主催者から優勝のトロフィーを授与され、優勝の喜びを仲間達と分かち合っている。

 

「良いよな。ああ言うの……青春って感じで」

 

 エリアルドもこの大会で三連覇したがアセム達のように喜びを仲間と共に分かちあった事はなかった。

 エリアルドにとって大会は軍人となる為のステップの一つでしかなく、幼少期よりMSに触れる機会の多かったエリアルドにとって勝って当たり前の試合でしかなかった。

 

「そうね……」

 

 ファムにも思うところはあるようだ。

 彼女にも仲間と言える者がいるが、ファムは周りと比べると飛びぬけて優秀であったため、仲間と共に何かを成し遂げると言う事は今まで無かった。

 二人がしんみりしている内に大会の閉会式も終わり大会はMSクラブの優勝で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ……それではMSクラブの大会二連覇を祝して……」

 

 大会が終わりアセム達はMSをガレージに戻すとジュースや菓子類を買って来てささやかな祝勝会を開いている。

 部長のシャーウィーがそれらしく言っているがすでにマリィが菓子の袋を開けて先に始めている。

 

「話長すぎよ。去年も優勝したんだから別に喜ぶ事じゃないでしょ」

「けど、二連覇なんだぜ? 来年も優勝すればアスノ中尉の時と同じ三連覇になるんだ」

「あっそ」

 

 マリィは優勝には全く興味を示す事はない。

 すでに菓子を食べながらも大会のデータを見て来年の課題を探している。

 

「マリィが周りに合わせないのはいつもの事だろ? ほっといて始めようぜ」

「そうだな……マリィだもんな、それじゃ気を取り直して乾杯!」

 

 マリィを放っておいて祝勝会が始まる。

 

「そう言えば、アセムはいつ練習したんだよ?」

「まぁ……いろいろな」

 

 シャーウィーはアセムは今まで以上に操縦が上手かった事を思いだす。

 ガンダムでヴェイガンと戦った事は秘密である為、適当に濁すしか出来ない。

 

「それにしても凄かったね。去年も凄かったの?」

 

 今までは大会に興味がなく、テレビでも見たことの無かったロマリーが試合を間近かで見て凄い迫力だったため、今までの大会もそうだったのかと疑問に思っていた。

 

「今年は去年よりも凄かったな。アセムも腕も上げたしさ」

「俺だけじゃないさ……ゼハートが入部してマリィが勝手に改造したMSをまともに動かせるようにしてくれたお陰だよ」

 

 実際、ゼハートが居なければ大会の初戦も勝てたかどうかは怪しい。

 

「そう言えば、そのゼハートは何処に行ったんだろう?」

 

 ふと今までゼハートが会話に参加していない事に気づくか、ガレージにはゼハートの姿が見えない。

 

「マリィは知らないか?」

「知らないわよ。何で私に聞くの?」

 

 マリィは不機嫌そうにそう言う。

 今日の大会は優勝こそしたが、マリィ的にはアセムにいろいろと言いたい事が山ほどあり、試合中もアセムに怒鳴り続けていた。

 

「ああ……ほら、マリィはゼハートに惚れてるんだろ? 何処にいるかくらいは知らないのかなって?」

「そうなの?」

 

 例の結婚話の時にいなかったロマリーはマリィがゼハートに惚れていると言われて今まで殆ど話す事の無かったマリィと話すきっかけになると思ったが、当のマリィは対して気にした様子もない。

 

「別に私はゼハートの事を何でも知っている訳じゃないわ。ゼハートが普段はどこで何をしていようとも私には関係もないし、興味もないわ」

「そうなんだ……」

「気にするなよ。ロマリー、マリィは機嫌が悪いだけだ。いつもはもう少しマシな筈だ」

 

 マリィの取りつく暇も与えない態度にロマリーは落ち込むがアセムがフォローを入れる。

 だが、普段のマリィもお世辞にも愛想が良いとは言えないため、余り確信的な事は言えない。

 

「どうせ、そん内来るんじゃない?」

 

 マリィが投げやりにそう言い、微妙な空気の中祝勝会は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガレージで微妙な空気で祝勝会をしている頃、ゼハートは公園でダズと接触している。

 

「ダウネスのマリアン司令より指令です。ガンダムの鹵獲の為にマリアン司令自ら動くそうです」

「指令自らか?」

 

 すでにガンダムが連邦軍の基地に隠されている事をマリアンに伝え、襲撃の為の戦力の打診をダズにさせていたが、その返答はゼハートの予想を超えていた。

 ある程度の戦力を送ってくれれば良かったが、まさか指令自ら動くとまでは思っていなかったが、それだけこの作戦が重要と言う事になる。

 

「ええ……その為に戦力を確保しているそうです。我々はその作戦の為にこのままトルディアに潜入し機会を待てだそうです」

「了解した」

 

 戦力を確保すると言う事はマリアンは大規模な作戦を展開するつもりであると言う事だ。

 ガンダムの奪取を任されておきながら、司令であるマリアンの手を煩わせてしまった事は悔やまれるがより確実にガンダムを奪取することが最優先だ。

 その為には自分のプライドなど安い物だ。

 

「それでは……」

 

 ダズは要件を伝えると早々に立ちさる。

 ダズが立ち去るとゼハートは一息つく。

 だが、ゼハートはすぐにハッとした。

 

(なぜ、私は今安心した……)

 

 ゼハートはそのため息の中に自分が安心している事に気付いた。

 本来なら任務に力不足で上の助力まで受けなければならなくなっている。

 それは恥ずべき事だ。

 なににゼハートは心の中で潜入が続く事を安心してしまっていた。

 それは自分でも気付かない内に今の学生である自分に居心地の良さを感じているからである事まではまだ気づいてはいない。

 ゼハートはそんな自分に戸惑いを覚えつつも祝勝会が行われているガレージへと足を向け行く。

 

 

 

 

 

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