機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第34話

文化祭も2日目に入り、1日目を超える客が集まり、中にはコロニーの重役なども顔を出すため、警備に連邦軍も駆り出されている。

 学校を始めとし、コロニーの主要な機関には軍のMSが配置され警備に当たっている。

 

「それにしても俺も行きたかったよな……」

 

 アルベルトはエリアルドに通信で愚痴っている。

 エリアルドとアルベルトは学校の卒業生と言う事もあり、学校の地理にも詳しいため学校の警備を担当している。

 二人がいるのはMSの運搬用のトレーラーの中で有事に備えてパイロットスーツの着用でトレーラーの中で待機している。

 トレーラーにはMSが一機しか搭載出来ないため二人は別のトレーラーにMSを積み込んで待機中だ。

 

「エリアルドは良いよな。昨日来たんだろ?」

「まぁな」

「それよりも、誰と行ったんだよ? アセムはチケットを二枚贈ったって言ってたが、女か? 女だよな? マリィも少し前にエリアルドに彼女が出来たって言ってたしな。俺にも紹介してくれよ」

「そんなんじゃない」

 

 エリアルドはしつこく聞いて来るアルベルトに内心うんざりしている。

 ファムとは出会って数カ月が経つが未だに進展と言える進展はまるでない。

 ヴェイガンの襲撃もあり軍では警戒態勢を強化した事もあるが、エリアルド自体異性と付き合った経験など全くない。

 その上、その事を相談するにしても同僚にそこまでプライベートの事を話せる相手はいないし、アルベルトは論外、アセムには何となく聞けない、その他身内の女性陣には言えばからかわれたり面白がられたりするのが分かり切っている。

 フリットには総司令と言う立ち場にいると言うのにそんな事で相談など出来はしない。

 クライドに限っては相談したが最後、クライドにとって面白い方向に話を持って行かれるに決まっている。

 そんな事もあり、ファムとは仕事の合間に連絡を取り合うのが精一杯だ。

 昨日も何とかデートに誘う事が出来たが、学園祭を一緒に周るだけでその後は普通に解散して終わりだ。

 

「そんなくだらない話をしている暇があったら少しは警戒でもしてろ」

 

 エリアルドはアルベルトの追及を避けるために通信を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 トルディア郊外の倉庫地帯にある倉庫の中に二機のゼダスが隠されている。

 

「そろそろ時間だけど、アイツは手筈通りに動いてんのか?」

 

 ゼダスの中で機内の時計を見てリカルド・ウルタードがつまらなそうにしながらそう言う。

 

「大丈夫だよ」

 

 もう一機のゼダスに乗っているセラフィナ・トルエバが緊張した面持ちでそう言うがリカルドは不満そうにしている。

 

「これでミスってたら良い笑いもんだな」

「作戦前に縁起でもない事言わないでよ……」

 

 リカルドの言葉にセラフィナが不安そうになり、一層緊張が強まる。

 

「知るかよ……時間だ。行くぞ」

 

 リカルドはそう言い機体を起動させる。

 セラフィナも機体を起動させて彼らの作戦が開始される。

 二機のゼダスが格納庫から出ると警戒態勢を取っていた連邦軍にすぐに発見される。

 ゼダスが見つかるとトルディアに警報が鳴り響き民間人の避難と共にゼダスの迎撃が開始される。

 

「警報?」

 

 その警報はアセム達の学校にも届いており、辺りは騒然として、学園祭どころじゃない。

 

「またヴェイガンが攻撃して来たのか!」

「みたいね。どうする? アセム。連邦軍が対応しているから、私達も避難しとく?」

「そう言う訳にはいかないだろ! 俺もガンダムで!」

 

 アセムはそう言って避難する客の流れに逆らいガンダムが隠してある基地に向かう。

 

「だよね……」

「マリィ、アセムはどうした?」

「ガンダムのところに行ったわ。私達は避難しましょ。ゼハートもぼうっとしていないで避難するわよ」

「ああ……」

 

 マリィはそう言いゼハートと共に軍の避難誘導に従う。

 ゼハートとしてはアセムを追ってガンダムの隠し場所を付き止めたいが、状況的に避難をしないでアセムを追うのはおかしい。

 それだけでなく、ゼハートは何も聞かされていない。

 状況からするにヴェイガンの襲撃と思われるが、トルディアに潜入しているゼハートには一切の連絡が来ていない。

 これがマリアンの策なのかは知らないが、下手に動く事も出来ずにゼハートもマリィと共に避難する。

 

 

 

 

 

「状況はどうなっている?」

 

 トレーラーからMSを出してエリアルドはオペレーターに状況を確認している。

 少なくとも敵の襲撃である事は明白だが、敵の狙いが分からない以上、下手に動く訳にはいかない。

 

「敵はXラウンダー専用機が2機です。現在は倉庫街にてMS隊と交戦中です」

「それだけか?」

 

 幾ら、Xラウンダー専用機のゼダスとは言え、二機でコロニーを攻撃するとは考え難い。

 となれば伏兵や増援の可能性も十分にあり得る。

 

「今のところはその他の敵機は確認出来ません」

「どうする。エリアルド? 俺達も援護に向かうか?」

「敵の狙いが分からない以上、迂闊には動けないだろ……」

 

 エリアルドは周囲を警戒しつつも状況を確認する。

 敵はゼダスが二機。

 それ以外の敵影は今のところ確認出来ていない。

 トルディアの襲撃が目的なら、警備の厳重な今日を避けるのが普通だ。

 だが、敵は今日襲撃をかけた。

 それは偶然今日だったと考えるよりは今日である必要があったと考えるべきだ。

 いつもと今日との違いは学園祭だ。

 学園祭でトルディアの警備体制は通常時よりも厳重となっている。

 それにより必然的に基地の防衛が薄くなっている。

 

「まさか……」

 

 そこから考えだされる可能性はトルディア基地だ。

 今日基地の警備はいつもよりも薄いため、基地に仕掛けるのには絶好の日と言える。

 そして、基地にはガンダムAGE-1だけでなくクライドが開発した新型のガンダムもある。

 そのどちらか、或いは二機ともが狙いである可能性が非常に高い。

 

「アルベルト! ここは任せた!」

「どう言う事だよ! エリアルド!」

 

 敵の狙いがガンダムである可能性が高いと分かるとエリアルドはその場をアルベルトに任せて基地に急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

「リカルドとセラが動いたようね」

 

 警報によって二人が動いた事をトルディア基地内でファムが知る。

 ファムは私服ではなく連邦軍の制服を着て顔を見られないようにゴーグル型のサングラスで素顔を隠している。

 その手には小型の端末が握られており、端末には基地の正確な見取り図に監視カメラの位置や警備状況が映されている。

 耳にはインカムを付けており、そこからは各MS隊への指示がリアルタイムで聞こえている。

 

「私も方も動かないとね」

 

 ファムは端末を操作すると、基地の見取り図の一部が赤くなるのと当時に基地で爆発が起こる。

 爆発が起こると基地内は混乱し、その混乱に乗じてファムは目的の格納庫に走る。

 基地の混乱が収まる前にファムは目的の格納庫に辿りつく。

 そこにはクライドが開発した新型MS「ガンダムZERO Ⅲβ」が置かれている。

 格納庫には整備班はおろか、誰もいないため、ファムは何なく機体に乗り込む事が出来た。

 ファムが機体に乗り込むとコックピットのハッチを締めて機体のシステムを立ち上げる。

 システムが立ち上がると周囲がクリアになり外の状況が映される。

 

「凄いわね……これが操縦桿ね」

 

 ファムは手元の球状のコントローラーステックに手を置く。

 

「マニュアル通りにやれば問題はないわ」

 

 ファムは事前に機体の操作方法のマニュアルは頭に叩き込んでいるため、従来のMSとは違う操縦系統にも対応出来る。

 そして、ガンダムZERO Ⅲβを格納庫の外に出す。

 初めは操縦に慣れるためにもゆっくりと歩いているが、爆発で混乱していた基地も落ち着いて基地で待機していたMS隊も臨戦態勢を取っているが、ガンダムZERO Ⅲβが奪取されている事に気づいていないためガンダムZERO Ⅲβは全く警戒されていない。

 

「始めるわよ」

 

 ゆっくりと歩いていたガンダムZERO Ⅲβは両手の掌からビームサーベルを展開すると、走り出して近くのシャルドール改に接近する。

 シャルドール改は突然の事態に対応出来ずに機体の頭部と両足をビームサーベルで切り裂かれて倒れる。

 それにより、ようやくガンダムZERO Ⅲβに乗っているのが友軍でない事に気づいてジェノアスⅡとシャルドール改はガンダムZERO Ⅲβにドッズガンを向けて連射する。 ガンダムZERO Ⅲβは腕のビームシールドで攻撃を防ぐ。

 ビームシールドは試験段階中である為、MSの腕に装備出来るサイズでは出力が低いがそれでもドッズガン程度の攻撃力の武器を防ぐ事は可能だ。

 攻撃を防ぐとバックパックのビームガンを放ち、ジェノアスⅡの頭部や腕を撃ち抜く。

 そして、その運動性能を見せつけるかのように攻撃をかわして、ジェノアスⅡの両腕をビームサーベルで切り裂く。

 

「大した性能ね。私に十分について来る」

 

 ファムはカタログスペックではかなりの高性能である事は知っていたが、実際に乗って見るとガンダムZERO Ⅲβの性能を肌で感じると共に新しい操縦系統も自分に合っていると確信する。

 ガンダムZERO Ⅲβはその性能を振るい次々とジェノアスⅡやシャルドール改を無力化して行く。

 

「この感じ……」

 

 粗方の敵を無力化すると、後方に気配を感じるが、衝撃と共に機体が後から付き飛ばされる。

 ガンダムZERO Ⅲβは機体を振り向かせながら体勢を整えて付き飛ばした相手と対峙する。

 

「ガンダム……ガンダムAGE-1タイタス」

 

 ガンダムZERO Ⅲβを付き飛ばしたのはガンダムAGE-1Tだった。

 クライドは何もガンダムZERO Ⅲβだけをトルディアに持ち込んだ訳ではない。

 それ以外にもユーリアの専用機のジェノバースやガンダムAGE-1用のドッズライフルやシールド、タイタスとスパローのウェアも持って来ていた。

 その中でタイタスのウェアの換装テスト中に事態が起きた為に基地に到着したアセムにはタイタスを換装した状態で出撃させていた。

 

「新型のガンダム……何でこんなことになってるんだよ!」

「良いか、アセム……相手はクライドの開発した新型のガンダムだが、パワーはタイタスの方が上じゃ! 組み付いて押し倒してしまえば新型機とは言え何も出来ん!」

 

 バルガスがアセムにそう言う。

 タイタスは25年前に作られた物だが、ガンダムAGE-1同様に改良が加えられている。

 元より装甲とパワーに特化している分、ガンダムZERO Ⅲβとは言え純粋なパワーではタイタスには劣ってしまう。

 

「丁度良いわ。このガンダムの性能を試させて貰うわ」

 

 ガンダムZERO ⅢβとガンダムAGE-1Tの二機のガンダムは対峙しガンダム同士の交戦が始まる。

 

「新型のガンダムが奪取されたの?」

 

 対峙する二機のガンダムを、見ながらユーリアはそう呟く。

 ユーリアは車両にて自分のMSが置かれている格納庫に向かっている。

 

「アスノ大尉!」

「私のジェノバースは出せる?」

 

 ユーリアが格納庫に到着し、ジェノバースで出ようとしているが、格納庫は瓦礫と化している。

 ファムが起こした爆発はジェノバースの格納庫で起きた物だ。

 ファムとしても操縦方法を事前に把握しているとは言え、初めての機体でユーリアとジェノバースと交戦するリスクは非常に高くそれを

 

避けるために爆発はジェノバースの格納庫で起こしていた。

 

「今、瓦礫を撤去していますが、時間がかかります!」

「っ……急いで」

 

 別のMSで出るにしても乗りなれていないMSで出ても性能差を埋める事は難しいため、ユーリアは瓦礫が撤去されるの待ちながらアセムが

 

持ち堪えるにを祈るしかなかった。

 

「このぉぉぉ!」

 

 ガンダムAGE-1Tはビームラリアットで突っ込むがガンダムZERO Ⅲβは翼状のスタビライザーを展開して空中に回避する。

 

「悪いけど、タイタスを相手に真っ向勝負をするつもりはないわ」

 

 ファムもタイタスのパワーにガンダムZERO Ⅲβでは対抗出来ない事は十分に承知している。

 その為、真っ向勝負は避ける。

 ガンダムZERO Ⅲβは両手のビームバルカンでタイタスを攻撃し、タイタスは両腕でガードする。

 

「流石……頑丈に出来ている」

 

 ガンダムZERO Ⅲβの攻撃をタイタスは無傷で耐え切る。

 タイタスは元より厚い装甲を持つが改良により更に強固な装甲を得ているためにビームバルカン程度では傷一つ付ける事は出来ない。

 

「厄介な装甲を持っているわね……」

 

 ガンダムZERO Ⅲβは両手のビームサーベルを展開して急降下する。

 そして、そのままビームサーベルを振るいタイタスを攻撃する。

 

「コイツ!」

 

 タイタスも腕で攻撃を受けながらも空いている腕で殴りかかるがガンダムZERO Ⅲβは回避し空ぶる。

 

「パワーはあってもこちらの動きには対応は出来ないようね」

「動きが遅い!」

 

 タイタスはパワーと装甲を重視しているせいで機動力に欠けている。

 25年前もそれでゼダス相手に苦戦している。

 その為、近接戦闘でもガンダムZERO Ⅲβの運動性能を活かせばタイタスと真っ向勝負をすることなく戦う事が出来る。

 タイタスは大きく殴りかかり、ガンダムZERO Ⅲβはタイタスの懐に潜り込んで膝のニードルガンをタイタスに放つ。

 

「うぁぁぁ!」

 

 ニードルガンでもタイタスに目に見えるダメージを与える事は出来ないが、その衝撃はアセムの体力を奪う事は出来る。

 タイタスは膝のビームニーキックでガンダムZERO Ⅲβに距離を取らせる。

 

「落ち着くんじゃ! アセム!」

「分かってる……分かってるけど!」

 

 アセムも何とか落ち着こうとするが、戦闘自体はまだ二度目で初陣はドラドが二機でガンダムの性能で何とか出来る相手だったが、今回はガンダムの性能だけではどうしようもない上にパイロットの技量は明らかに相手の方が上だ。

 何とかタイタスの防御力で持ち堪えてはいるが、タイタスの装甲も無限ではないため、いずれは装甲に限界が来るだろう。

 タイタスのパワーならバルガスの言った通り、組み合って抑え込めばガンダムZERO Ⅲβを抑える事が可能だが、相手の動きにアセムが対応出来ない以上、それは非常に難しい。

 それが出来ないなら、取り押さえるのではなく撃破すれば良いが、まともに一撃を与えれば勝機が見えるがその一撃すら与える事が出来そうにない。

 状況は明らかに不利でそれを打開する策を考える程アセムに実戦経験はない。

 

「ハァハァ……どうする……」

「打つ手がないなら、もう終わりにさせて貰う」

 

 ガンダムZERO Ⅲβは空中に飛び上がり尾のバスタードッズライフルを構える。

 

「いかん! アセム!」

 

 その威力を知っているバルガスは叫ぶが、ファムは引き金を引いてバスタードッズライフルを放つ。

 大型のドッズライフルであるバスタードッズライフルの威力は通常のドッズライフルの比ではない。

 タイタスは両腕にビームリングを展開してバスタードッズライフルを正面から受け止める。

 タイタスのビームリングがガンダムZERO Ⅲβのビームを弾くが、タイタスの両腕がビームの威力に耐える事が出来ずに両腕が吹き飛ぶ。

 両腕が吹き飛んでタイタスは尻もちをつくが、バスタードッズライフルの攻撃も終わり、結果として両腕を失いだけで耐え切る事が出来た。

 だが、ガンダムZERO Ⅲβはゆっくりと着地するとビームサーベルをタイタスに向ける。

 それはガンダムZERO Ⅲβの完全な勝利を表している。

 

「この一撃を耐え切るのは流石だけど、ここまでね」

 

 ガンダムZERO Ⅲβはタイタスに向けているビームサーベルを下す。

 

「今回のミッションでは誰も殺すなと言われているから見逃して上げる」

 

 タイタスを無力化したところで基地から離脱しようとするが、ファムはまた別の敵の感覚を察知して機体を飛び上がらせる。

 

「エリアルド……」

 

 それはガンダムZERO Ⅲβにドッズライフルを向けなながら向かって来るエリアルドのGエグゼスだ。

 

「あれは……アセム! 無事か!」

 

 GエグゼスはドッズライフルでガンダムZERO Ⅲβを牽制しながらタイタスの前に出る。

 

「何とか……」

「アセムとガンダムはこちらで回収する! エリアルドは奪われた新型を頼む!」

「任せました!」

 

 アセムとガンダムの事はバルガスに任せて、エリアルドはスラスターを全開にして飛び上がりドッズライフルを放つ。

 ガンダムZERO Ⅲβはビームをかわしながら、着地すると同じく着地したGエグゼスにビームサーベルを展開して突っ込む。

 Gエグゼスもビームサーベルを抜いて応戦する。

 だが、Gエグゼスは弾き飛ばされる。

 

「なんてパワーだ!」

 

 ガンダムZERO Ⅲβはタイタスにこそパワーでは叶わないが、パワーではバクトと互角のGエグゼスを吹き飛ばす程のパワーは持っている。

 Gエグゼスは腰のミサイルを放ちながら体勢を整える。

 だが、ガンダムZERO Ⅲβは頭部のビームバルカンでミサイルを撃ち落として両手にビームサーベルを展開して、距離を詰める。

 ガンダムZERO Ⅲβは連続でビームサーベルを突き出すが、Gエグゼスは何とかかわして大きく後に飛んで距離を取った。

 

「かわした……」

「これが父さんの作った新型機の性能か……デタラメだ」

 

 エリアルドはガンダムZERO Ⅲβの高い性能に驚くが、ファムも相手を殺す気がなかったとは言え、連続攻撃をかわされた事に驚いている。

 並みのパイロットなら確実に戦闘不能に持ちこめた筈の攻撃を全てかわされた。

 

「余り時間を使う訳にはいかないから、本気で行かせて貰うわ。エリアルド」

 

 ガンダムZERO Ⅲβは両手の掌に腰のシグルブレイドを付ける。

 そして、一気に突っ込む。

 Gエグゼスはドッズライフルで応戦するが、ガンダムZERO Ⅲβは紙一重で回避して、シグルブレイドを突き出す。

 Gエグゼスはシールドを掲げるがシグルブレイドはシールドを貫通してGエグゼスの左肩に突き刺さり、そのままシグルブレイドを横に振ってシールドを切り裂きGエグゼスの頭部を切り落とした。

 

「まだだ!」

 

 Gエグゼスはドッズライフルを投げ捨ててビームサーベルを抜いてそのまま振り下ろす。

 ガンダムZERO Ⅲβは機体を半歩下がって回避するとGエグゼスの右腕を肘から切り落とす。

 そして、止めにGエグゼスに膝蹴りと当時にニードルガンをGエグゼスの脚部に撃ち込むとGエグゼスは跪く。

 Gエグゼスの戦闘能力が失われた事を確認するとファムは飛び上がり基地から離脱する。

 

「逃げるのか!」

 

 離脱するガンダムZERO Ⅲβを追おうにもGエグゼスの脚部の一部は破損し歩く事は出来ず、武器も残されていないため追う事が出来ない。

 

「くそ!」

 

 ガンダムZERO Ⅲβをみすみす奪われて増援の足止めすら出来なかったエリアルドはコンソールを思いっきり殴るが、ガンダムZERO Ⅲβ

 

を奪われれた悔しさを紛らわす事など出来はしない。

 

「エリアルド」

 

 ガンダムZERO Ⅲβが基地を完全に離脱した頃にようやく瓦礫を撤去したユーリアのジェノバースが出て来るがすでに時は遅し。

 ユーリアのジェノバースは蝙蝠退治戦役時のユーリアの搭乗機のジェノワーズにガンダムZERO Aのデータを反映させた後継機でRGシリーズの一機だ。

 機体の全体はユーリアのパーソナルカラーのピンクで統一され頭部はガンダム同様のツインアイを採用している。

 ジェノバースの後継機だが、その面影は機体のカラー以外には殆ど残っておらず、どちらかと言えばガンダムZEROに近くなっている。

 武装は手持ちの火器にビームサーベルを廃止したスーパードッズライフルに左腕には折り畳み式のシグルブレイドを装備した専用のシールド、両腕にはグレネードランチャーが内蔵され、両腰にはビームサーベルが装備されている。

 バックパックにはアサルトアーマーのファンネルを改良したドッズファンネルが4基搭載され、誘導兵器としてではなく機体の固定砲台としても使う事が出来る。

 コックピットにはガンダムZERO Ⅲβに採用された全方位モニターとアームレイカー方式の試作品が使われているが、操縦桿は従来のレバーになっている。

 

「姉さん……」

「奪われたガンダムは?」

「港の方に逃走した」

「分かった」

 

 ユーリアは敗北し、気落ちしているエリアルドに最低限の情報を聞くと逃走したガンダムZERO Ⅲβの捜索と追撃に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユーリアが追撃に入るが、見つかる事なくファムはトルディアの地下に逃げ切っていた。

 そこは連邦軍が保有している倉庫だが、今は使われていない。

 ファムが倉庫に入ると陽動でトルディア内で連邦軍を引きつけていたリカルドとセラフィナのゼダスもすでに逃げ込んでいる。

 ファムは機体を倉庫内のMSハンガーに置くとガンダムZERO Ⅲβから降りる。

 

「フゥ……」

 

 ファムは機体から降りると顔を隠すためにしていたサングラスを取って一息ついた。

 ここまで逃げ込めば今回の作戦は成功と言える。

 

「何だよ。思ったよりお疲れじゃねぇかよ。なんならガンダムの操縦は俺が変わろうか?」

 

 一息ついていたファムにリカルドが悪態をつく。

 リカルドは何かとファムに対抗意識が強く、良くファムに絡んでくる。

 それはいつもの事なので、ファムも特に相手にすることはしない。

 

「リカルド君、そんな事言わないの。ファムちゃんだって緊張してたんだよ」

「気にしてないわ。セラ」

 

 セラフィナがリカルドのフォローに入る。

 良く、ファムに絡んで突っかかって来るリカルドのフォローを入れるのがセラフィナだ。

 

「ちっ……」

 

 軽く流された事で、リカルドはあからさまにつまらなそうにする。

 昔からこれが三人の関係だ。

 一人特出した能力を持つファムにそれに対抗意識を燃やすリカルド、リカルドがファムに絡むとそれをフォローするセラフィナ。

 

「はいはい。喧嘩は余所でしねよ。すぐにベータのメンテがしたいからさ」

 

 そう言ったのはエミリオだ。

 かつてはクライドの弟子として勉強していたエミリオは今ではファム達の行動を共にしている。

 

「メンテってコイツ新型ですよね。エミリオさんはメンテが出来るんですか?」

 

 先ほどまでとはうって変わった態度でリカルドが尋ねる。

 

「まぁね。コイツを開発したのは僕の師匠だからね。最新の技術を使っているけど、基本的なところは変わないからね」

 

 エミリオからすればクライドの開発したMSならマニュアル無しでも完璧に整備出来ると自負している。

 若干16歳でクライドにガンダムZEROの整備を任されていた技術は今でも健在どころか更に磨きがかかっている。

 

「だから散った散った」

「私は着替えて地上に戻ります」

 

 ファムは基地に潜入するために連邦軍の制服を着ているのでそのまま外に出れば目立ってしまう。

 その為、前もって倉庫に自分の私服を持ちこんでいる。

 ファムは私服に着替えると地上に戻り何食わぬ顔をしてトルディアの市民に紛れ込んで避難所に入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか……引き続き捜索を続けるが、この機に更なる大部隊で攻撃を受ける危険があるから、周囲の警戒も怠らないように」

 

 アルフレッドは指令室で部下に指示を出すと通信機を置いてため息をつく。

 部下からの報告はユーリアの追撃の甲斐もなくガンダムZERO Ⅲβと二機のゼダスを見失ったの事だった。

 

「恐らく、逃走ルートも確保していたんだな。用意周到で恐れ入るね」

 

 指令室のソファーに座るクライドがそう言うが、その物言いに自分が設計した新型機を奪われた事に何も感じてないように思える。

 

「全くだよ。ここまで君の筋書き通りに進むとはね。いっそ、技術者から脚本家に転職することを勧めるよ」

「まさか……俺の予測ではそれなりに死人も出る計算だったが、怪我人だけ済んだのは計算外だよ」

 

 アルフレッドは久しぶりに会ったと思ったらとびっきりの面倒を持ちこんだクライドに皮肉を込めて言うが当のクライドは気にした様子はない。

 クライドの計算では死人も出るかも知れなかったが、軍の避難誘導により大きな混乱もなく市民にも死人が出る事なく怪我人だけで済んでいる。

 

「捜索は適当なところで打ち切ってくれ。あの場所も絶対に見つからない保証はないからな」

「簡単に言うね……」

 

 捜索を打ち切るには明確に外に逃げたと言う事にするが、クライドがそれを良しとしない。

 打ち切るにしても唐突に打ち切ってしまえば部下に不信感を与えてしまう。

 だが、部下達が納得するまで捜索をすれば地下に隠してあるガンダムZERO Ⅲβが見つかる恐れも出て来る。

 その為、部下に不信感を与えずに捜索を打ち切るのは至難の業だ。

 

「それに新型機がトルディアで奪われたとなると責任問題は僕に来るんだよ。僕もこれでも妻子持ちなんだけどな」

「ベータが奪われた事に関する責任問題はない。なぜなら、特研でガンダムZERO ⅢβなるMSは建造されていないからな」

「アレの存在そのものを消すって事か……」

 

 強引な方法だが、ガンダムZERO Ⅲβの製造記録を削除すればこの世からガンダムZERO Ⅲβと言うMSは作られたと言う事実が消える。

 作られていないMSの奪われた責任問題は起こりようがないと言う事だ。

 物凄く強引だが、最後はフリットに頼んで終わらせる算段なのは明白だ。

 

「僕に責任が問われなければ良いけど……クライド、君が何故この様な事態を引き起こしたのかを聞く権利は僕にはあると思う」

 

 今回アルフレッドは基地の警備情報や監視カメラの位置などの機密情報、ファムのサイズにあった軍服などを用意しているため、その事実が公になれば破滅だ。

 

「EXA-DB」

「EXA-DB? 何だいそれは?」

 

 クライドはアルフレッドが聞き慣れない単語を口にする。

 

「EXA-DBってのはコロニー国家間戦争時の兵器のデータとかを保管したデータベースの事だ」

「それって……」

 

 クライドが説明するEXA-DBの説明にアルフレッドは似たような話を知っている。

 

「そう……俺が父さんから受け継いだデータディスクと同じだ」

 

 それは25年前にクライドがAGEドライヴと共に父から受け継いだデータディスクにもコロニー国家間戦争時の兵器のデータなどが入っていた。

 

「俺はヴェイガンのMSの技術の出所を探していた」

 

 クラウドはヴェイガンの高いMS開発における技術力の出所を研究の合間に探していた。

 

「その結果、そのEXA-DBが関わっているところまでは掴んだ。そいつが地球圏のどこかに隠されていると言う事もな。今回の事はそいつを探すために騒ぎを起こしてそれに乗じてエリーゼ達にEXA-DBを回収させるのが騒動の目的だ」

「エリーゼ達にね……」

「グノーシスは正規軍に属していないが、勝手に動く事も出来ない。だから、ガンダムZERO Ⅲβ奪還と言う大義名分を得ればベータのいそうな場所に向かう事が出来る」

「そうしたら、『偶然』にEXA-DBを見つけて回収すると……」

「そんなところだ」

 

 特研が保有している唯一の戦艦のグノーシスは正規の命令系統には入っていないが、独自で動ける訳でもない。

 グノーシスを自由に動かせる口実を作るために今回の騒動をクライドは引き起こした。

 

「呆れるね。コロニー国家間戦争時の兵器データは君も持っているのにここまでしてEXA-DBとやらが欲しいのかい?」

「手に入れる必要はないな。俺はEXA-DBを破壊するつもりでいる。破壊さえ出来れば回収する必要もない」

 

 クライドならこの手の物は欲しがると思っていたが、破壊を前提にしている事にアルフレッドは少なからず驚いている。

 

「意外だね。君なら多少、強引な手を使ってでも手に入れたいと思ってたのに」

「すでにデータは俺の手にある。だけど、同じデータがこの世に二つと存在することは気に入らない。データは俺の手の中にだけあれば良い」

 

 クライドは技術を広める気は毛頭なく、コロニー国家間戦争時の兵器データも自分の手の中にだけあれば良いと考えており、自分の手の届かないところにあるEXA-DBの存在が気に入らないため破壊しようとしているだけだった。

 その事を隠す事なく公言するところは適当な事でエリーゼ以外に本心を隠して組織したパラダイスロストの時から変わったとアルフレッドは実感するが、それが良い事だとは余り思えない。

 せめて、危険なデータを野放しに出来ないとくらいは言って欲しかったが、クライドなのでそこまでは期待していない。

 

「全く君と言う人は……」

「そんな訳だ。暫くはベータはトルディアに隠しておく。俺はオーヴァンに戻ってアルファの完成を急ぐ。ベータは適当なところでトルディアから脱出させるけど、それまでは頼む」

 

 クライドはアルフレッドに頼むが、すでに拒否出来る状況ではない。

 

「嫌だとは言えないだろ……」

「まぁな。こんな事を頼めるのはお前くらいだよ。アルフ」

 

 クライドにしては殊勝な態度だが、面倒事を持ちこまれるアルフレッドとしてみれば嬉しくもなんともないが、これからそれ以上の面倒に巻き込まれるエリーゼとグノーシスのクルーに比べればかなりマシかも知れない。

 

「分かったよ。どうせすでに共犯者だからね。僕も僕の保身のために出来る事はするさ」

「感謝する。その代わりと言っては何だが、うちのユーリアはしばらくトルディアに滞在させる。好きに使ってくれ」

「それは助かるよ」

 

 トルディアにはガンダムAGE-1も隠してある上にヴェイガンを装ってガンダムZERO Ⅲβの強奪劇まで起きている。

 今回の一件ではMSパイロットに死者は出ていないが、MSの多くが大破ないしは戦闘不能にされている。

 特にエースパイロットのエリアルドのGエグゼスの中破は正直戦力的には痛い。

 ユーリアとジェノバースはその穴を埋めるのは十分な戦力だ。

 

「俺の方でも出来る限りのフォローはするつもりだ。後は任せるよ。アルフ」

「善処するよ。クライド」

 

 ガンダムZERO Ⅲβの捜索が続く中、翌日にはクライドはトルディアを発ちオーヴァン戻り、クライドの計画は次の段階に入る。

 

 

 

 

 

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