ガンダムZERO Ⅲβの擬装強奪から数カ月が経ち、季節は冬になっていた。
事件後はコロニー内をくまなく捜索するも、捜査状況は筒抜けであったため、隠し場所を転々を変える事でガンダムZERO Ⅲβとゼダスを連邦軍が発見することが出来ず、戦力もガンダムZERO Ⅲβとの戦闘で戦死者こそは出さなかったが、MSの被害も甚大で戦力の補強とトルディアの防衛を最優先として奪われたガンダムZERO Ⅲβの捜索は必要最低限の戦力で続いている。
そんな中、ゼハートはダズからの連絡を受けていた。
「ダウネスのマリアン司令より連絡が来ました」
この半年近くはゼハート達は動く事なく、トルディアに身を潜めてマリアンの指示を待っていたが、ようやく行動を起こす時が来たようだ。
「明日の夜に指令率いる部隊がトルディアへの攻撃を開始し、連邦軍のMS隊をトルディアの外に誘き出して我々は内部から行動を起こし基地を襲撃、ガンダムの奪取を行えと」
連邦軍とすればコロニー内での戦闘は極力避けたいため、ヴェイガンがわざと連邦軍に見つかる様にトルディアに接近したとしても連邦軍としてもそれがあからさまに誘いだと分かっていてもコロニーの外で対応せざる負えない。
「もしも、ガンダムを投入した場合は指令の指揮下の部隊で鹵獲、もしくは破壊を実行するそうです。その時は我々は基地の制圧を行います」
「そうか……」
マリアンの指揮下の部隊となれば、エルピディオも出て来るだろう。
エルピディオは指揮官の側近と言う立ち場が与えられるだけあってその技量は高いと聞いている。
ガンダムの性能頼りで戦っているアセムでは勝機は薄い。
より確実にガンダムを鹵獲か撃墜が出来れば今後の戦力に憂いがないが、ガンダムのパイロットがアセムだと知っているゼハートは素直に喜べないでいた。
すでにアセムがガンダムのパイロットである事は確定しているのに、未だにその事をマリオンの報告すらしていない。
上に報告する時はいつも何かと理由を付けてアセムの事までは報告する必要はないと自己完結していた。
「新型のガンダムを奪取した部隊については?」
「指令に確認したところ、クライド・アスノの開発した新型機がトルディアに持ち込まれる情報は指令の方でも把握していたようですが、強奪の指示はどこの部隊にも出していない上の独自に動いた部隊もなかったそうです」
「だとしたら、あのゼダスは一体……」
強奪時に陽動を行っていたMSがヴェイガンのゼダスである事はゼハートも確認していた。
その為、どこの部隊の作戦行動なのかを調べるためにマリオンに確認して貰うようにダズに指示を出していたが、その答えは謎を深くする物でしかなかった。
「ゼダスの設計データが流れたと言うのか?」
ゼハートはそう考えるも、その可能性を否定する。
ヴェイガンのMSは敵に情報が漏れないように徹底している。
それでも漏れたところで地球側の技術力ではゼダスを完全に再現することは出来ない筈だ。
「恐らくは……以後はそのゼダス二機と新型ガンダムも敵として対処、新型ガンダムの方も可能ならば鹵獲、それが叶わないのならば破壊しろと……」
マリオンの指示は簡単に言っているがゼダスはともかく、ガンダムZERO Ⅲβを鹵獲、撃破は容易ではない。
クライドが設計したとなれば従来のMSを遥かに上回る性能を持っていると見て間違いはない。
それにゼダスRではどこまで対応できるかは怪しい。
「了解した。すぐに準備に取り掛かる」
明日は12月の25日だ。
クリスマスと言う事でアセム達と約束がある。
作戦の時間までには解散になる筈だが、その後に準備に取り掛かっては作戦には間に合わない。
今更、用事が出来たと言って断る訳にもいかない。
ゼハートはマリアンからの指示を聞くとすぐに準備に入る。
翌日、トルディアはクリスマスムード一色になっていた。
この日は一年で唯一、コロニー内に雪が降る日になっている。
その為、トルディアの街は雪によっていつもとは違う街並みだ。
街中がクリスマスムードの中、アセム達は集まっている。
だが、シャーウィーとマシルは家族でクリスマスパーティーをすると言う理由で来ていない。
実際のところは家族でクリスマスパーティーをして喜ぶような年でもないが、今年はロマリーやゼハートが加わった事で、事前とアセムとロマリー、ゼハートとマリィの組み合わせになる事が多く、それがいつもなら気にならないがクリスマスと言う日に限っては猛烈に負けた気になるのが目に見えている。
結局、集まったのは4人しか集まっていない。
集まった4人は特別に何をする訳でもなく、
雪の降るなか街を歩いていつものように雑談をしている。
「そう言えば、私達も来年は受験だね」
「そう言えばそうだな」
話の流れが途切れた時にロマリーがふとそう言う。
彼らは来年は3年生に進級し、卒業後の進路を決める時期に入っている。
「みんなは進路は決まってるの?」
すでに学校の方でも進路調査は始まっている。
ロマリーは興味本位から三人に尋ねた。
「私は技術系に行きたいんだけどねぇ……」
「何か問題があるの?」
「パパは私が技術系に進むのは大歓迎なんだけどさ、ママは私にはMSを弄るよりも普通の女の子になって欲しかったみたいなんだよね。まぁ、お姉ちゃんもお兄ちゃんもパイロットだから分からないでもないんだけどさ」
クライドはマリィが技術系の進路に進む事は大歓迎しているが、エリーゼとしては女の子らしくマリィを育てたかった。
その為、技術系に進んでMSに関わる事を余り良しとしていない。
「まぁ、ママも本気で私がやりたいのなら反対はしないと思うけどね。そんで卒業したら、連邦軍かな。パパの知り合いの工房に推薦してくれるって言ってたけど、私としてはコネのある軍の方が都合が良いしね」
クライドはマッドーナ工房にマリィを推薦しようとしていたが、マリィとしては連邦軍の方が身内が軍の上層部にいるため、何かと融通が聞き易いと踏んで卒業後は連邦軍の技術部に進むとすでに進路調査に書いている。
「コネって伯父さんに名前に頼る気か?」
「まぁね。私はアセムと違ってそう言うのには気にしないからね」
マリィも軍の入れば確実にクライド・アスノの娘と言う肩書が付いて周り必然的に期待されるのは目に見えているが、マリィは周りの評価も期待にも興味はない。
「そっか……マリィらしいね。アセムもやっぱり軍人になるの?」
「どうだろうな……父さんは俺を軍人にしたいらしいけどな」
「そうなのか?」
「まぁ……な」
アセムの父、フリットはアセムを軍人にしたいらしく、スライスレインズ士官学校に推薦状を送るくらいだ。
当のアセムは未だに明確に自分が何をやりたいかなどは決めていないが、ヴェイガンの襲撃やガンダムZERO Ⅲβの強奪事件でトルディアが戦場となりいろいろと思うところがあるくらいだ。
「そう言う言い出しっぺのロマリーは卒業したらどうすんのさ?」
「私はまだ決めてないんだよね。だからみんなの事も聞いてみたの」
ロマリーは卒業後の進路は特に決めていない。
マリィのように熱中して打ち込める事がある訳でもなく、アセムのように思うところもない。
その為、参考までにとこの話題を持ちだした。
「まだ、2年の冬だからな。将来の事なんて明確に決めている方が少ないだろうな」
「そう言うゼハートはどうなのさ?」
「俺は特に決めてないな。強いて言うなら大学に進学と言ったところだ」
恐らくはガンダムの奪取、もしくは破壊を持って任務は完了しトルディアを去る事になるが、その事は言える訳がない。
潜入が長引いても高校を卒業したら、トルディアを去るのは間違いない。
その為、差し障りの無い回答をする。
「進学ねぇ……なんか普通」
「そう言うものだろう? マリィのように自分の進路が決まって無い限りは」
「そっかぁ……みんないろいろと考えてるんだ」
「まだ時間はあるんだ。ロマリーも自分の納得のいく進路を決めれば良いんじゃないか?」
「そうだね」
アセム達はそれぞれの進路について考えつつも、遅くならないように解散して帰路につく。
アセム達が解散する頃、エリアルドはファムを誘い街を歩いていた。
あの事件以来、ファムとは連絡をたまにかわすくらいで殆どの時間を訓練に当てていた。
幾ら、機体性能に差があったとは言え、みすみす敗北しガンダムZERO Ⅲβを奪われてしまった。
アルフレッドはエリアルドだけのせいではないと言って特に処罰を与える事は無かったが、エリアルドの気が収まらずにもしも次に見つけた時は自分の捕まえる気で訓練をしている。
その為、まともに休暇を取って無かったのでアルフレッドが上官命令で強制的に休暇を取らせた。
クリスマスと言う事もあり、エリアルドはファムを誘って見た。
ファムのOKを貰ってからは、クリスマスデートに備えて空いた時間に基地の女性に片っ端から声をかけてはクリスマスデートで生きたい店を聞いて周りその中から一番多く上げられた店にファムを連れて言った。
その店はトルディアでも1、2を争う程の店でエリアルドの給料の大半が飛んで行ったが、どの道余り給料を使う事もないので気にすることもない。
「今日はどうだった?」
「余りこう言う経験がなかったから楽しかったわ」
中々の好感触の様でエリアルドは給料の大半が飛んで行っただけの甲斐はあったと確信する。
だが、所詮はその程度でしかない。
それだけでは二人の関係は何も発展しない。
エリアルドとファムが出会って半年近くが経つが、未だに一緒に出かけると言う仲でしかない。
エリアルドの中ではそれをデートと位置付けているが、ファムは単に男友達と出かける程度にしか思ってないのかも知れない。
このまま、ダラダラと今の関係を続けていても進展がいつになるのか分かったものではない。
ファムは仕事でトルディアに来ていると言っていた。
つまりはいつかは仕事で他のコロニーに転勤するかも知れないと言う事だ。
そうなれば軍人としてトルディア基地に勤務しているエリアルドとの接点は一気に無くなる。
この状況を打開するためには自分から行動を起こさなければ手遅れになる可能性がある。
戦場でも無茶を分かっていても戦局を打開するためには無茶をしないといけない事がある。
それが今なのかとエリアルドは今までの経験から確信している。
「ファム!」
エリアルドは思いきって状況を打開するために手を打つ事を決めた。
ファムの両肩に手を置き、ファムをまっすぐ見つめる。
ファムも突然のエリアルドの行動に驚いている。
「俺は……君の事が……」
エリアルドがそこまで言うと休暇中でも常時身に付けている通信機がなる。
「出ないの?」
「……済まない」
流石にこの状況でその先を言えば撃墜の可能性がある為、エリアルドは通信に出る。
「何だ」
告白のタイミングを見事に邪魔されて、エリアルドは珍しく苛立ちながら通信に応じる。
「デート中に悪いが、エリアルド、すぐに戻ってくれ」
「何があった?」
通信の相手はアルベルトでこちらの状況を知りつつも戻って来いと言う。
流石にアルベルトがデートの邪魔をする為に通信を寄こした可能性はないので何か問題が発生し、休暇中のエリアルドに召集がかかったと見た方が良い。
「トルディアにヴェイガンが接近してるんだよ。今すぐに基地に戻って待機しろってさ」
「分かったすぐに戻る」
敵が来た以上、デートをしている訳にも行かない。
「済まない。ファム……」
「何かあったんでしょ? 私の事は良いから行って来て」
「ああ……ファム、俺がトルディアを……君を守る」
エリアルドは決意と共の基地に戻るとファムの方でも通信機がなる。
「はい……分かりました。すぐに戻ります」
トルディアに接近するヴェイガンに対してトルディア基地も防衛線の構えを見せている。
ヴェイガンはファ・ボーゼ級の大型戦艦が2隻とMSが数十機だが、その大半はガフランやバクトと行った旧式機が殆どで主力量産機のドラドは数機しか確認できない。
これは陽動である程度の被害を受ける事が前提である為、ドラドを大量に投入すれば今後の戦争に支障が出るとマリオンが判断したからだ。
しかし、被害を極力減らすために地球侵攻軍の司令官のマリオン自らが指揮を執っている。
対する連邦軍はトルディアに駐留していた戦艦が数隻とMSで対応しようとしている。
この接近が陽動である可能性を考慮してトルディアに戦力を残してはいるが、旧式ばかりとは言えトルディアを落とすには十分な戦力を投入しているため、戦力の大半を注ぎ込んでいる。
「たくよ。何で今日なんだよ。ヴェイガンも空気読めってんだよ」
アルベルトはアデルの中で愚痴を零す。
ヴェイガンの襲撃や強奪事件によってトルディアにもアデルは何機か配備されたが、ジェノアスⅡやシャルドール改に比べれば数が少ないため、アルべルトも防衛戦の重要な戦力だ。
「だからだろう。クリスマスでコロニー全体の危機感が緩んでいるところを狙って来たんだろうな」
自身がそうだったため、エリアルドはそう予測している。
「愚痴は後で幾らでも聞く。来るぞ!」
ヴェイガンのMSが防衛ラインに接近し、先端が開かれる。
ヴェイガンのMSは隊列を組みながらビームライフルを放ち、下手に回避すればトルディアに当たりかねないため、連邦軍は回避よりもシールドで防ぐ事を優先しつつ応戦を開始する。
「こんなクリスマスプレゼントは御免被るな!」
アルベルトのアデルはシールドで防御しながらドッズライフルを放つ。
ここ数カ月はエリアルドの訓練に付き合わされたため、アルベルトの腕もヴェイガン襲撃時よりも上がっているので比較的簡単にガフランに当てる事が出来る。
「今更そんな旧式でやれると思ってんのかよ!」
アデルはドッズライフルを連射して、敵をトルディアに向かわせないようにする。
アデルの放ったビームはガフランを貫くが、別のガフランがビームサーベルを展開して接近するがエリアルドのGエグゼスがドッズライフルで落とす。
「相手が旧式でも数があるから油断するな」
Gエグゼスはドッズライフルでガフランを撃墜すると、ビームサーベルを抜いて近くのバクトに接近する。
バクトはビームバルカンで応戦するが、Gエグゼスはシールドで防いでビームサーベルでバクトを両断する。
そして、すぐに近くのガフランを切り裂く。
「何としても守り抜く!」
「今日はいつにも増して気合入ってるな。エリアルドの奴」
アルベルトもエリアルドに負けじとドッズライフルを放つ。
エリアルド達から少し離れた場所ではユーリアのジェノバースも交戦している。
ジェノバースはRGシリーズの一機であるだけあって他の連邦軍のMSとは明らかに性能の違いを見せつけている。
スーパードッズライフルはバクトの装甲をも易々と撃ち抜いて撃破し、シールドに装備している折り畳み式のシグルブレイドを展開し、すれ違いざまにドラドを切り裂く。
「ファンネル」
ジェノバースはバックパックに装備している4基のドッズファンネルを射出する。
ドッズファンネルはアサルトアーマーが装備していたファンネルを改良し、動きはさらに俊敏さを増しただけでなく、機械制御ではなくユーリアによる遠隔操作になっている。
その上、銃身にはドッズガンの物を流用しているため、ヴェイガンのMSに対しても十分な攻撃力を持っている。
ドッズファンネルは縦横無尽に動いて敵機の死角に回り込んではビームを放ち撃墜する。
それを何とかかわしながら、ドッズファンネルを撃ち落とそうとすると本体のジェノバースがスーパードッズライフルに撃ち抜かれる。
連邦軍とヴェイガンが交戦するなか、ファ・ボーゼ級の片方にはマリアンが乗艦し、指揮を執っている。
「戦況はどうか?」
「予定通り、敵の戦力の大半は我らにかかりきりになっています」
マリアンの横でメデル・ザントが報告する。
すでに予測されているトルディア基地の戦力の殆どが防衛線に投入されているため、陽動としては成功していると言える。
「所詮は、この程度の奴らなんですよ。地球種は」
「そうやって敵を侮ってアンバットを落とされたのがギーラ・ゾイである事を忘れるなよ。エルピディオ」
作戦が順調に進んでいるために敵を侮りかけているエルピディオをマリオンは窘める。
かつてギーラ・ゾイも敵を侮り敗北している。
それを繰り返さないためにも決して油断はすべきでない。
「指令! 我が軍のMSの撃墜数が20を超えました!」
「ほう……敵の中に出来る奴がいるな……Xラウンダーは二人……片方は大した能力者ではないが、もう片方は相当なレベルの能力者だな」
マリオンは戦場にいるXラウンダーの気配を感じ取っていた。
片方のエリアルドは脅威に値しないレベルだが、もう一人のユーリアは十分に脅威に値するレベルである事は感じる事は出来る。
「エルピディオ、お前も出撃しろ、白いガンダムもどきはお前に任せる。もう片方のガンダムもどきには極力手を出すな。被害が増えるだけだ」
「了解しました」
マリオンはGエグゼスなら、エルピディオで十分に抑える事が出来るがジェノバースはエルピディオでは荷が重いを判断した。
その為、ジェノバースを無視し、Gエグゼスを抑えれて被害を最小限にすることにした。
「ゼハート隊にも連絡を入れて動かせろ」
敵の食いつきあ十分である為、本命のゼハート達に指示を出して作戦を開始させる。
トルディアの外で戦闘が始まる頃にはファムはトルディアの隠れ家の一つに呼び出されていた。
以前とは違い今回はファムもパイロットスーツを着用している。
ファムのパイロットスーツはヴェイガンの物で紫で統一されているが、ガンダムZERO Ⅲβは指先の細かい動きで機体を制御しているため、グローブは改造され、指が細かく動かせるようになっている。
「僕達はこの戦闘に乗じてトルディアを離脱する。リカルドとセラフィナは僕と一緒に見つからないように裏から外に出る。ファムは連邦軍に見つかるように戦闘宙域の近くを通って離脱してくれ」
エミリオはファム達にそう伝える。
今までトルディアに隠れていたのはこの日の為だった。
ヴェイガンがいずれは大規模な戦闘を仕掛けて来た時にそれに乗じてトルディアを離脱、その時にヴェイガンの攻撃の目的があたかも自分達を逃がすために仕掛けたと思わせる事で自分達をヴェイガンだと擬装するためだ。
「離脱……もうトルディアには戻らないんですよね」
「そうだね。離脱後は僕達には新しいミッションが与えられる筈だからね。大丈夫。ファムは明日付けで転勤になったと言う事になっているから、突然君が消えても周りは突然の転勤で挨拶の暇がなかった程度にしか思われないように手は打ってあるらしいから」
「そうですか……」
その心配もあったが、エリアルドときちんと別れを言う事が出来ない事は心残りではあったが、自分とエリアルドとの道が違う方向に向いている事は当に分かっていた事だ。
ファムにはまだやるべき事がある。
それを成すためにトルディアに潜入しガンダムZERO Ⅲβの強奪まで行った。
その為、心残りがあろうとも立ち止まる訳にはいかない。
「それじゃ、そろそろ開始するよ。皆手筈通りにね」
トルディアに潜む、ファム達も行動を開始する。
「ゼハート様、マリアン司令より作戦開始の指示が出ました」
トルディアの外で交戦が始まり暫くすると、トルディア内部で待機していたゼハートにも指示が下る。
ゼハートはトルディア内で戦闘になった時の為にゼダスの改修機であるゼダスRを持ちこんでいる。
その他にはダズが搭乗しているドラドを含めて5機のドラドが待機している。
「了解した。これより作戦を開始する。ダズはドラドを率いて連邦軍の予備戦力を抑えろ。私は基地に向かいガンダムを鹵獲する」
「分かりました。それではご武運を」
ダズは5機のドラドを率いて連邦軍の陽動に向かう。
「アセム……お前が出て来る前に決める」
ゼハートはポツリと呟く。
出来ればアセムとは戦いたくはない。
ならば、アセムがガンダムで出て来る前にガンダムを鹵獲してしまえば、ガンダムと交戦することなく任務を達成出来アセムと戦う事もなくなる。
「ゼハート・ガレット。ゼダスR……出る」
ゼダスRは飛行形態に変形するとトルディア基地に向かう。
ゼハートがトルディア基地に接近している頃、アセムはトルディア基地で待機していた。
格納庫のガンダムAGE-1は高速戦闘用のスパローに換装してある。
「バルガス、外では戦闘になってるんだろ? 俺はここにいて良いのか?」
「馬鹿を言うな! アセムは宇宙戦の経験も友軍との連携経験もないじゃろ。幾らガンダムでも足手まといじゃ」
自分の連邦軍に加勢しようとするアセムとバルガスが止める。
アセムはガンダムZERO Ⅲβ強奪事件でガンダムZERO Ⅲβに敗北してから、時間を見つけてはシミュレーターで訓練をしているが、宇宙での戦闘経験はシミュレーターでしかなく、友軍との連携訓練も同様だ。
今のアセムが戦場に出たところでいらずらに戦場を混乱させるだけだ。
その為、アセムはトルディア基地で待機し、コロニー内に敵が侵入した時の単機での迎撃要因に回されている。
「アセム! どうやら、ヴェイガンのMSに侵入されたらしい! 連邦軍の予備戦力では手が足りん!」
バルガスに基地の司令部で指揮を執っているアルフレッドから連絡が入る。
「バルガス! 俺もガンダムで出るよ!」
「仕方がないか……気を付けるんじゃよ!」
敵が侵入した以上、ガンダムを狙って来る可能性が高い。
敵がガンダムの隠し場所を把握していれば基地に誘いこんで戦闘を行えば市街地への被害は避けられるが、もしも把握していない場合はトルディア全体を無差別に攻撃しかねない。
そうなる前に姿を出して敵を引きつけた方が良い。
「分かってる! アセム・アスノ! ガンダム、行きます!」
格納庫のハッチが開きガンダムAGE-1スパローは出撃する。
「作戦通り、予備戦力はダズ達が抑えているか……後はガンダムを見つけるだけだ」
連邦軍の予備戦力をダズのドラド部隊で引きつけている間にゼハートはトルディア基地に接近していた。
ゼハートのゼダスRの接近に気付いた基地もドラドの迎撃に当たらせている部隊を呼び戻すがドラド6機を相手に苦戦しているため、すぐには戻って来れない。
基地はその時間を稼ぐために対空砲でゼダスRを迎撃するもゼダスRの機動力とゼハートの腕を持ってすれば当たる事はない。
対空砲をかわしたゼダスRはMS形態に変形して両腕のビームバルカンで対空砲を破壊する。
そして、ビームキャノンでトルディア基地の格納庫を破壊して行く。
「何処だ……何処に隠されているガンダム」
ゼハートはガンダムが隠されている可能性の一番高い格納庫を手当たり次第に破壊することでガンダムを炙り出している。
もしも、ガンダムが隠されている格納庫を破壊してしまってもガンダムさえ破壊出来れば何の問題もない。
だが、ゼハートは不意に背後に気配を感じて機体を動かすと、ニードルガンが横切り、ガンダムAGE-1スパローがシグルブレイドを持ち、ゼダスRに突っ込んで来ていた。
「よくも基地をこんなに!」
「ガンダム! アセムか!」
ゼダスRはゼダスソードでシグルブレイドを受け止めて弾きスパローは着地してシグルブレイドを構える。
「アセム……」
ゼハートはアセムが戦場に出て来た事で一瞬迷うが、すぐに切り替える。
本来ならば、アセムとは戦いたくは無かったが、ガンダムで出て来た以上は戦って倒すしかない。
「迷う訳にはいかない! 私には成すべき事がある!」
ゼダスRはゼダスソードを構えてスパローに突っ込む。
スパローもシグルブレイドでゼダスソードを受け止める。
「これ以上、お前たちの好きにさせない!」
「このガンダムはデシル兄さんを倒したガンダム……だが、パイロットがフリット・アスノでなければ!」
ゼダスRはスパローを蹴り飛ばしてビームキャノンを放つ。
スパローは体勢を立て直してビームキャノンを回避する。
スパローはビームキャノンを回避するが、避けられたビームはスパローの背後の格納庫を破壊する。
「くっ……この!」
ゼダスRに射撃武器を使われるとかわせば基地が破壊されるが、スパローは俊敏性と機動性を重視したウェアな為、タイタスの様な防御力は持っていない。
その為、敵の攻撃を受け止めて基地への被害を抑えると言う事が出来ない。
だから近接戦闘を仕掛けて火器を使わせる訳にはいかない。
「甘い! その程度の攻撃が私に通用すると思うな!」
ゼダスRはシグルブレイドの一閃を上空に飛んでかわし、ビームバルカンをスパローに浴びせる。
スパローは敵に狙いを絞らせないために動きつつもゼダスRを基地から引き離そうとする。
コロニー内でアセムとゼハートの戦闘が行われている頃、トルディアの外の戦闘でも動きが出ている。
マリオンはエルピディオのゼダスSを投入した。
エルピディオのゼダスSはエルピディオの指揮するストラグル7の専用機で機体事態はゼハートのゼダスRと同型機だが、エルピディオのゼダスSは全身を白で統一されている。
ゼダスSは戦場に投入されると次々と連邦軍のMSを撃破して行く。
そして、エリアルドのGエグゼスへと向かっていく。
「この感じ……」
エリアルドは戦闘中に妙な感覚を覚え、攻撃をシールドで防ぎながら、周囲を見渡す。
「あれは……」
するとモニターの隅にガンダムZERO Ⅲβの機影を見つける。
「この混乱に乗じて逃げる気か!」
「どこ行くんだよ! エリアルド!」
エリアルドはアルベルトを半ば無視し、ガンダムZERO Ⅲβを追おうとするが、ゼダスSのビームキャノンが邪魔をする。
「見つけたぞ! ガンダムもどき!」
ゼダスSはビームサーベルを展開してGエグゼスに突っ込んでくる。
Gエグゼスもビームサーベルを抜いて応戦する。
「邪魔をするな!」
「お前は私が落とす! マリオン司令の為にも!」
ゼダスSはもう片方の掌からもビームサーベルを展開して振い、Gエグゼスは機体を引いてドッズライフルを放ち牽制しガンダムZERO Ⅲβを追撃しようとするもゼダスSを振り切る事が出来ない。
戦闘宙域から離れたところに一隻の戦艦が戦闘宙域に接近していた。
特研が唯一保有している戦艦「グノーシス」だ。
グノーシスはアブディエルの後継艦として設計されている。
ディーヴァの強襲揚陸形態の設計も反映させているが、二基のカタパルトの中央のディーヴァではフォトンブラスターキャノンが搭載されたいたところには新たにもう一基のカタパルトが増設されている。
艦全体は黒で塗装され、攻撃力を犠牲に艦の航行速度と防御力、索敵能力、隠密能力、MS運用能力を重視したのがグノーシスだ。
「アスノ大佐、すでに戦闘が開始されているようですね」
グノーシスの艦長席の横に座るアーノルド・ダウナーがそう言う。
「みたいね」
艦長席に座るエリーゼ・アスノがそう返す。
エリーゼは現在はグノーシスの艦長となっていた。
40代後半だが、未だにその若さを保っているが、視力が落ちたのかクライドが学生時代に使っていたのと同じデザインのメガネを付けている。
「MS隊の準備はどうなってるの?」
「ムラサメ少佐はすでに待機していますが、ラファルグ中尉とクレマン曹長がまだ……」
その報告を聞くとエリーゼは頭を抱えたくなる。
グノーシスは機密保持からクライドの身内や個人的に付き合いのある者の身内が多いため、自然と艦内の空気が緩くなる傾向にある。
これがアブディエルの時は特に気にすることでもないが、今は正規の指揮系統に無くとも正規軍である事には変わりがないため、余り良い傾向ではない。
「すぐに待機させなさい」
「ラファルグ中尉とクレマン曹長はすぐにMSにて待機をお願いします。繰り返します……」
艦内放送が流れるなか、グノーシスの通路を二人の女性がレバーを持って進み格納庫に向かっていた。
長身短髪の女性がシャルロット・ラファルグだ。
シャルロットはかつてパラダイスロストでMSパイロットをしていたシャルルの娘だ。
父の事は母のローザやクライドやエリーゼから聞かされており自らも軍人と言う道に進んでいた。
もう片方の背が低く真っ赤でウェーブの髪の少女はレオーネ・クレマン、レオナールとジゼルの娘だ。
「こりゃ、艦長も怒ってるわね」
「当然ですよ。戦闘待機の指示が出てだいぶ経っているのに待機をしてないんですから……」
大して気にした様子の無いシャルロットにレオーネは呆れ気味だ。
「てか、私達って意味の無い稼働データの収集はしばらく無いって話だったわよね」
「そうですね。所長もそのような事を言っていましたわ」
「だから、私達はトルディアに上陸した時の予定を部屋で立ててたのよね」
「そうですね」
二人が遅れていた理由はそこにあった。
グノーシスはここ数カ月は稼働データの収集を行っていたが、今更取るデータなど殆ど無い。
その為、シャルロット達は少なからずストレスが溜まっており、データ収集を中断しトルディアに向かうと聞いた時はシャルロットは速やかに休暇を申請しレオーネを連れて部屋で休暇の計画を練っていた。
「だけど何で戦闘中なのよ」
「私に聞かれても……」
「レオも久しぶりに愛しのエリアルドと会えるかも知れないからって浮かれてたでしょ」
シャルロットにはばれないようにしていたが内心を見透かされていたため、レオーネは顔を赤くする。
「知りません」
「その再会が戦場になるってどういう事よ」
レオーネはシャルロットを半ば無視すると、格納庫に到着する。
格納庫には予備パーツや予備の武装以外に三機のMSが置かれている。
クライドが開発したRGシリーズの三機だ。
三機はガンダムZERO Ⅲβ同様にウェア換装システムを採用し、胴体部が共通している。
メインカメラはツインアイ、頭部にはビームバルカン、バックパックにはビームガンとしても使えるビームサーベルを二基装備している。
その上でガンダムZEROの各アーマーの色で塗装されている。
青い機体がブリーズアーマーをベースとしたRGライダーだ。
ブリーズアーマーの高機動力を継承し、ブリーズアーマーの時には出来なかった可変機構を完全とし、飛行形態はストライダー形態と呼称されている。
両肩にはストライダー形態時の主翼となるウイングを一基つづ搭載している。
武装は右手にストライダー形態時の機首になるソードライフル、左腕には小型のシールド、機体のふくらはぎには小型ミサイルが内蔵されている。
この機体がシャルロットの搭乗機だ。
その横の緑の機体はグラディエーターアーマーの格闘戦能力を継承したRGブレイドだ。
両肩には大型シールドを搭載し、両腕と両足にはビームソードが内蔵されている。
右手にはドッズライフルを装備し、両腰に刀型のシグルブレイドを二本装備だれている。
この機体にはかつてバッカニア海賊団で雇われていたシドウ・ムラサメが搭乗する。
シドウはバッカニア海賊団がある程度は持ち直すとクライドに雇われて連邦軍の軍籍を得ている。
少佐相当の権限を与えられMS隊の隊長を任されている。
最後の一機はレオーネの搭乗機のRGキャノンだ。
RGキャノンは黒で塗装され、他の二機とは違い頭部には精密射撃用のスコープが装備され、コックピットにも同様のスコープが追加されている。
武装はバックパックの右側の大型の砲門のハイパードッズランチャーを装備し、手持ちの火器としてドッズガンに長距離射撃用のバレル、エネルギーパックにフォアグリップなどを追加したスナイパードッズライフルを装備し、左肩にはスナイパードッズライフルを付ける事の出来る大型シールドが付けられ、両肩の装甲にはミサイルが内蔵されている。
ジェノサイドアーマーでは一撃の砲撃で戦線を離脱しなければならなかったが、RGキャノンは後方からの火力支援に特化している。
「お前ら! 何やってんだ! 戦闘配備中だぞ!」
二人が格納庫に来ると否や格納庫中に怒声が響く。
「申し訳ありません。お母様」
シャルロットがRGライダーに搭乗する中、レオーネは律義に謝罪する。
怒号の主はレオーネの母親のジゼルだ。
ジゼルは本来ならクレマン家の当主夫人だが、ジゼルの性格上、華やかな世界を苦手としグノーシスで整備班長をしている。
「んなことは良い。さっさと乗れ!」
ジゼルはレオーネの背中を押して、RGキャノンに乗せる。
「遅い」
二人が機体に乗るとシドウが一言そう言う。
「仕方がないじゃないですか。私達は休暇のプランを練ってたんですから」
余りにも言い訳にならない言い訳をしているが今は怒っている暇はない。
「すでにトルディアに侵攻したヴェイガンと交戦状態にある。我が隊は戦線に合流後、ラファルグはエリアルド・アスノを回収し一度帰還。俺とクレマンはそのまま戦線に加わりヴェイガンの侵攻を止める」
「私はエリアルドのアッシーですか」
シャルロットは自分の役目に不満を言っているが、機体特性上その役目は自分しか出来ない事も理解している。
シドウが作戦を説明している中グノーシスはMSの射出準備に入っていた。
三基のカタパルトの内中央以外の二基のカタパルトが開閉する。
そして、カタパルトには円形上の台座が置かれている。
それはクライドがMSを円滑に運用するために開発したサブフライトシステムだ。
これによりMSの行動範囲は飛躍的に高まるが、戦場で乗り捨てる事が前提である為、特研でデータ収集中の試作品だ。
「私はこれよりも直接行った方が早いんだけどな」
「少しでも推進剤の節約の為に我慢ですよ」
サブフライトシステムを使うよりもストライダー形態のRGライダーの方が断然早いが後々の事を考えれば推進剤を節約した方が良い。
「分かってるわ」
そして、三機のMSはサブフライトシステムを使い戦場に向かう。
「ちっ……」
「意外と粘るじゃないか! ガンダムもどき!」
Gエグゼスはドッズライフルを放ち、ゼダスSは回避し、ビームサーベルで切りかかりドッズライフルを切り裂く。
そして、もう片方のビームサーベルを振るいGエグゼスはシールドで防いでビームサーベルを抜いて接近する。
GエグゼスとゼダスSの二機はビームサーベルがぶつかり合う。
「お前の相手をしている暇はないのに……」
すでにガンダムZERO Ⅲβは戦闘宙域を抜けたのか、レーダーには捕捉出来ていない。
「大したXラウンダー能力を持たない癖に!」
ゼダスSはもう片方のビームサーベルも使いGエグゼスを弾き飛ばし、追撃しようとするが、二機の間にビームが割り込みゼダスSは追撃を中止して止まりビームをやり過ごすがそのビームはガフランを撃ち抜いた。
「レーダーに反応がない……どこからの攻撃だ!」
レーダーに敵影の反応がない事にエルピディオは苛立ちながらも再度ビームが飛んで来る。
それをかわすと別の機体が撃ち抜かれる。
「相変わらずの腕ね」
「これが私の取り柄ですから」
戦闘宙域から離れたところでサブフライトシステムに乗ったRGキャノンがスナイパードッズライフルを構えていた。
先ほどのゼダスSへの攻撃はRGキャノンがゼダスSのレーダーの範囲外からの狙撃だった。
RGキャノンの狙撃は回避こそされたが、それを見越して狙撃時にはゼダスS以外の敵機が射線に入る位置の時に狙撃していた。
それによってゼダスSがかわしてもゼダスSがブラインド代わりとなり敵機を撃墜することが出来た。
「さぁて……そろそろ良いですよね。隊長」
「構わん。行って来い」
「そう来なくちゃ」
RGライダーはサブフライトシステムを乗り捨てると機体をストライダー形態に変形すると一気に加速しする。
「何だったんだ……だが!」
ゼダスSはビームバルカンを放ち、Gエグゼスはシールドで防ぎながらバルカンで応戦する。
ゼダスSが距離を詰めていると二機の間に高速で飛行するRGライダーが通り抜ける。
RGライダーはMS形態に変形するとソードライフルでゼダスSを牽制する。
「新型のガンダムもどきか!」
ゼダスSはビームバルカンをRGライダーに放つがRGライダーはストライダー形態に変形してかわす。
「生意気な! Xラウンダーでも無い癖して!」
ゼダスSは飛行形態に変形してRGライダーを追いながらビームガンを放つが、RGライダーは機体を左右に振ってかわす。
そして、MS形態に変形し、急制動をかけるとゼダスSの後についてストライダー形態に変形する。
背後を取ったRGライダーは機首のソードライフルとビームガンを放つ。
「振り切れない! このゼダスSが!」
機動性能はRGライダーの方が高く振り切るどころか、距離を縮められる。
そして、遂にはゼダスSに並び追い越される。
機動力の差を見せつけるとRGライダーは旋回してGエグゼスの方に向かう。
「エリアルド、久しぶりのところ悪いけど、付いて来なさい」
「シャル! お前がその機体に乗っているのか?」
「良いから付いて来なさいって」
シャルロットにそう言われてRGライダーにすれ違いざまに捕まるとRGライダーは戦線を離脱しグノーシスの方向に向かう。
「逃がすかよ!」
ゼダスSは離脱するRGライダーを攻撃しようとするが、戦線に到着したRGブレイドとRGキャノンが到着しゼダスSにビームを放ちゼダスSは回避する。
「どこに向かってるんだ。シャル」
戦闘宙域から離れて少し落ち着くとエリアルドはそう言う。
「美人サンタからのクリスマスプレゼントってところね。見えて来たわ」
RGライダーの進行ルートにグノーシスが見えて来た。
「艦長、エリアルドを連れて来ましたよ。私の役目はこれで良いんですよね」
「ええ……貴女はすぐに戦線に戻って頂戴」
「母さんの船か……」
RGライダーはGエグゼスを下すと旋回して戦線に戻っていく。
「どう言う事なんだ。母さん」
「エリアルドはすぐにグノーシスに着艦して。クライドから貴方に渡す物があるわ」
「俺に?」
戦闘中に連れ出された何を渡すかと思ったが、戦闘中に連れ出してまで自分に渡そうとしている事からそれだけ重要な物だと思いエリアルドはグノーシスの開いているハッチから艦内に入る。
艦内に入るとGエグゼスに片膝をつかせてハッチを開いて機体から出る。
「来たか、エリアルド、付いて来い」
「ジゼルさん」
「良いから来いって」
エリアルドは状況が掴めないままジゼルに別の格納庫に連れて行かれる。
「コイツがアニキからお前に預かって来たもんだ」
「これが……」
格納庫には一機のMSが置かれていた。
全身を白で塗装された純白のMSだ。
「このガンダム……似ているな」
そのMSは頭部からガンダムタイプだとすぐに分かるがエリアルドはこの機体が奪われた機体と似ている事に気が付く。
「そうだ。コイツはトルディアで奪われたガンダムと同型機だ。違うのは別のウェアになってるってところだな」
ガンダムZERO Ⅲβと良く似たこの機体はガンダムZERO Ⅲα。
β同様ガンダムZEROの流れを汲む機体だ。
胴体部はβ同様にコアファイターをしても使う事が出来、武装も共通だが、コックピットは全方位モニターを使ってはいるが、従来のMS同様になっている。
四肢のウェアは一切の武装が付いていないが、αはガンダムZEROのアーマー換装システムも継承している。
ガンダムZEROではアーマーを装備してない状態ではまともに戦闘が出来ないと言う欠点を持っていたがαは装甲を武装を追加する方式にし、基本武装としてバックパックのビームサーベル、ジェノバースと同タイプのスーパードッズライフル、ミサイルとビームソードの展開が可能なビームキャノンを内蔵した専用シールドを装備させる事で補い、その武装を各アーマー装備時にも装備することでどのアーマーでもある程度の汎用性も確保している。
「まだ、アーマーの調整は終わってないが、コイツにはお前の今までの戦闘データが反映されているお前専用のガンダムだ。その性能はアニキのお墨付きだぜ」
「俺専用のガンダム……」
「基本武装のみでならすぐに出せるがどうする? 不安なら止めとくか?」
ジゼルはエリアルドの答えを半ば分かっているが敢えてエリアルドに聞く。
「行きます」
「それでこそアニキの息子だ」
エリアルドはガンダムZERO Ⅲαに乗り込みシステムを立ち上げる。
「凄い……コイツならアイツとも戦える」
「エリアルド、アルファのアーマーは使えないけど、通常戦闘は可能よ。今までのMSとは性能が違うから無理はしないでよ」
ブリッジからエリーゼがあエリアルドに通信を入れる。
「分かってるよ。母さん、このガンダムでトルディアを守り切って見せる」
エリアルドは場合によっては躊躇う事なく無茶をしそうだったが、エリアルドの性格上止めても無茶をするのは分かり切っている。
そうしている内にグノーシスの中央のカタパルトにガンダムZERO Ⅲαが設置される。
グノーシスの中央カタパルトはガンダムZERO Ⅲαのアーマー換装システムに対応しているガンダムZERO Ⅲα専用のカタパルトだ。
カタパルトに設置されるとスーパードッズライフルと専用シールドが装備されて射出準備が完了する。
「エリアルド・アスノ。ガンダムZERO……出る!」
エリアルドは父より受け継いだ新たなガンダムZEROと共に出撃した。