ガンダムZERO Ⅲαで出撃したエリアルドは戦場に一直線に向かっていた。
ガンダムZERO Ⅲαの接近に気が付いたガフランやバクトはガンダムZERO Ⅲαにビームライフルを放つがガンダムZERO Ⅲαは回避し、スーパードッズライフルで敵を落とす。
「凄い反応速度だ……それにいつもより敵の動きが見える」
ガンダムZERO ⅢαはかつてのガンダムZERO同様にAGEドライヴを搭載している上に全ての性能が現在の技術水準でも高いレベルで確立している。
更にはエリアルドのXラウンダー能力を最大限に向上させるXブーストシステムが機体に組み込まれている。
Xブーストシステムは25年前にシャルルがデュークから受け取ったサイコ・ジェノアスに搭載されていたサイコメット・ミューセルのデータをクライドが独自に改良をした物だ。
サイコメット・ミューセルはXラウンダー能力を持たないパイロットに強制的にXラウンダー能力を開花させる物で下手をすればパイロッ
トの脳を破壊する危険性があったが、Xブーストシステムはすでに開花しているXラウンダー能力を最高レベルまで引き上げるシステムになっている。
高いXラウンダー能力を持っているパイロットには脳に負荷を与える危険性がある為、元から高ランクのXラウンダーには使えないが、エリアルドはXラウンダーとしての素質は高くは無いので脳に負荷をかける事なく高ランクのXラウンダーと対抗に渡り合える能力を得る事が出来る。
更にガンダムZERO Ⅲαは高ランクのXラウンダーの反応速度に対応出来る。
そこにエリアルドが日々の鍛錬とピーキーな操縦特性を持つGエグゼスの操縦で培った高い操縦技能があれば追加装備の無い状態でも十分に戦う事が出来る。
「やれる! このガンダムなら!」
ガンダムZERO Ⅲαはシールドにビームソードを展開してバクトを切り裂く。
「マリオン司令! 戦場にガンダムを思しきMSを確認! 映像に出します!」
ファ・ボーゼ級のブリッジのメインモニターに映像が映される。
そこには戦闘中のガンダムZERO Ⅲαが映されている。
「ゼハートの報告のガンダムと似てはいますが……」
「新しいガンダムか」
映像のガンダムZERO Ⅲαはゼハートが入手したガンダムZERO Ⅲβと塗装の違いから印象が違って見えるが、胴体部などは共通している。
「ゼハートがトルディア内部でガンダムと交戦に入ったとの報告があります。こちらのガンダムはどうしますか?」
「そうだな……あのガンダムもガンダムである以上、無視する訳にはいかんな」
ガンダムは機体性能だけでなく、戦争で圧倒的に優位にいたヴェイガンとの戦力差を一気に縮めたMSだ。
当時のガンダムではないとは言え、連邦軍がガンダムを所有していると言う事実はヴェイガンにとっては余り良い事ではない。
「デメル。私のティアーズは積んで来ていたな」
「ええ。指令のティアーズはロールアウトしましたので、こちらの艦に積んで来ていますが、稼働テストすらしていません……まさか、出撃なされるつもりですか?」
「無論だ。あれが本物のガンダムかどうかは私が直接確かめて来る。後の指揮はお前に任せる」
「ですが……」
マリオンのパイロットとしての実力はデメルも知っているが、相手がガンダムで万が一の事があれば戦いに大きな影響が出る。
「察しろ。私にもガンダムを倒す理由があるのだよ」
マリオンの兄、ブラッドは25年前のアンバット攻防戦でガンダムZEROに敗北し、その後の消息は掴めてはいない。
すでにヴェイガンではブラッドは戦死扱いになっている。
その為、マリオンがガンダムを倒す理由は兄の敵討ちと言うところだろう。
無論、マリオンも当時のガンダムZEROのパイロットのクライドが前線から退いてMS開発を行っている事は知っているため、ガンダムを倒すと言う事はクライドへの憎しみを晴らすのではなくマリオンの気持ちの問題なのだろう。
「それに私はガンダムに負けるつもりは毛頭ない。奴の首を抱えて帰るさ」
マリオンはそう言いブリッジを離れて行く。
「ガンダムもどきが!」
ゼダスSはRGブレイドにビームマシンガンを放つが、RGブレイドはシールドで防ぐ。
そして、RGブレイドの背後にはRGキャノンがスナイパードッズライフルを構えている。
「クレマン!」
「了解です。隊長」
RGブレイドが射線から退くのと同時にRGキャノンがスナイパードッズライフルを放つ。
ゼダスSは回避するがRGキャノンの攻撃をいつまでもかわす事も出来ずに腕にビームが掠り装甲が焼ける。
「この! 地球種が!」
ゼダスSがビームサーベルを展開して、RGキャノンに突っ込むが間にRGブレイドがビームソードを展開してゼダスSにビームソードを振るう。
ゼダスSは両手のビームサーベルをクロスさせて受け止めるが、機体出力はRGブレイドの方が上である為、押し戻され気味だ。
「幾ら、Xラウンダーとて単機で勝てる程戦場は甘く無いぞ」
RGブレイドはゼダスSを押し戻すとドッズライフルを放つ。
ゼダスSは避けきれずに肩を撃ち抜かれる。
「くっ! 地球種が……」
エルピディオは幾ら高性能機を相手でもXラウンダーですらない相手に機体損傷を受けて屈辱で腸が煮えくり返るが今ここで死ぬ訳にも行かないため、屈辱を抑えて撤退して行く。
「あれ……もう終わってる」
エリアルドをグノーシスに送り届けて戦場に戻って来たシャルロットだったが、途中でユーリアを拾って来た為、戻るのに時間がかかり戻って来た時にはゼダスSを撃退していた。
「お久しぶりです。隊長」
「これでシドウ隊が勢ぞろいですね」
「お前たち、油断するな。戦いはこれからだ」
本来RGシリーズは4機での運用が前提である為、ユーリアのジェノバースが戻って初めて隊として機能する。
隊が揃いシドウ隊はトルディア防衛戦に本格的に参加する。
「あれが新型ガンダムか……」
マリオンはファ・ボーゼを出撃しガンダムZERO Ⅲαに向かっていた。
マリオンの搭乗機はヴェイガンがゼダスに代わるXラウンダー専用機として開発した新型MSの一機を使っている。
機体名はティアーズと名づけられている。
青を基調とし、頭部はヴェイガン系のMSに共通しており、両腕の掌にはビームサーベルを展開可能なビームバルカン、胸部にはゼダスのビームキャノンを改良し威力が大幅に向上したビームバスターが内蔵されている。
両手には銃身の内蔵された実体剣のティアーズガンブレイドを持っている。
すでにMS単体での長距離移動の必要性が薄れているため、ティアーズはかつてのドラーズ同様に可変機構を廃止し、同じように非可変機のドラドに比べると装甲も厚くなってどっしりとしている。
マリオンの戦闘スタイルに合わせて近接戦闘を重視したマリオンの専用機となっている。
「さぁ……見せて貰うぞ。ガンダム!」
ティアーズはガンダムZERO Ⅲαに向かい両手のティアーズガンブレイドを放つ。
ガンダムZERO Ⅲαは不意撃ちにも関わらずシールドで防ぐ。
「防いだか……この程度の攻撃を防げないようでは話にならんがな」
「あのMS……新型か!」
ガンダムZERO Ⅲαはティアーズにスーパードッズライフルを放つが、ティアーズは難なくかわす。
そして、ガンダムZERO Ⅲαの射線を掻い潜りティアーズガンブレイドを振るう。
「早い!」
ガフランやバクト、ドラドに比べて圧倒的に早いティアーズに圧倒されるも何とか回避し、シールドに内蔵されているビームキャノンでティアーズを牽制する。
「そんな気の抜けた攻撃で私と戦うと言うのか!」
ティアーズはビームをかわしてビームバスターを放つ。
ガンダムZERO Ⅲαはビームバスターをかわすが、ティアーズは機体の向きを変えながらガンダムZERO Ⅲαを狙う。
このままではいずれは避けきれないと判断したエリアルドはビームサーベルを抜いてティアーズにビームバスターをかわしながら突っ込んで行く。
「この私に真っ向勝負を挑むか! 面白い!」
ティアーズは突っ込んでくるガンダムZERO Ⅲαに正面から受け得て立ち、ビームサーベルをティアーズガンブレイドで受け止める。
二機はそのまま押し合いになる。
「押しきれない!」
「私のティアーズとパワーは互角か。ならばパイロットの技量が物を言う!」
ティアーズはガンダムZERO Ⅲαを蹴り飛ばすとティアーズガンブレイドを連射しながら追撃する。
ガンダムZERO Ⅲαはティアーズの攻撃をシールドで受け止めつつ、頭部のビームバルカンとバックパックに残っているビームガンで牽制するもティアーズの足を止める事すら出来ない。
ティアーズはティアーズガンブレイドで切りかかり、ガンダムZERO Ⅲαは何とか避けるが、ティアーズはすぐに方向転換し、ガンダム
ZERO Ⅲαに体勢を整える暇を与えない。
「どうした! ガンダム! その程度か!」
「この新型……強い!」
ティアーズの斬激をかわしながら、ガンダムZERO Ⅲαはビームサーベルからスーパードッズライフルに持ち替える。
ティアーズはティアーズガンブレイドを振るいガンダムZERO Ⅲαはシールドのビームソードで受け止める。
「この距離なら!」
ガンダムZERO Ⅲαは至近距離からスーパードッズライフルでティアーズを狙う。
だが、ティアーズは至近距離にも関わらずスーパードッズライフルをかわす。
「至近距離で私を撃つために敢えて近接戦闘を挑んだのは良い……が、それで落とせる私ではない!」
ティアーズはガンダムZERO Ⅲαを強く蹴り飛ばす。
ガンダムZERO Ⅲαは懸命に体勢を立て直すが、それが致命的な隙を生む事となる。
ティアーズは両手のティアーズガンブレイドの柄を合わせると両端からビームソードが発生し、ティアーズガンブレイドのツインランスモードとなる。
「機体性能は高い様だが、パイロットがその性能を活かしきれていないようだな。お前はここで仕留めておく!」
ティアーズはツインランスを構えてガンダムZERO Ⅲαに止めを刺すべく突っ込む。
「俺は……俺は!」
確実に止めをさせるとマリオンは確信していたが、ガンダムZERO Ⅲαは最小限の動きでティアーズの一撃を回避する。
そして、すぐにスーパードッズライフルを連射する。
止めの一撃をかわされてもマリオンは取り乱すことなく状況を把握していたため、直撃は受けなかったが、胴体にビームが掠めた。
「ほう……この私のティアーズに攻撃を掠らせる事が出来るか……やはり、お前はここで仕留める」
ティアーズがツインランスモードのティアーズガンブレイドを構えるが、ファ・ボーゼ級のデメルからの通信が入る。
「マリオン司令、我が軍の損失が多くこれ以上の作戦継続は不可能です。予備戦力を投入しますか?」
マリオンがエリアルドと交戦している間にもシドウ隊の活躍でヴェイガンは大打撃を受けていた。
そのせいですでに確保してある予備戦力まで投入しなければならない状態になっている。
「……作戦を中止し撤退する。ゼハート隊にも通達しろ」
現在の状況を考えれば予備戦力を投入してまで作戦を継続することはない。
予備戦力を投入したところでガンダムZERO Ⅲαはマリオンにしか抑える事が出来ず、そうなればシドウ隊を抑える事が出来ないくなり、敗北は必至だ。
ガンダムを仕留める事は今後の戦局を左右する重要な事だが、それに拘り過ぎて結果としてイゼルカントの計画を破綻させる事になってしまえば元も子もない。
その為、ここは撤退を決めた。
「ガンダム……この決着はいずれ付ける。この私の手で……それまで生きながらえた命を大切にするが良い」
マリオンのティアーズが撤退を開始し、残っていたMSも撤退を始める。
「流石にしんどいんだよ……」
アルベルトのアデルはシールドでガフランのビームライフルを防ぎ、ドッズライフルで応戦しているが、長時間の激戦で体力が限界を迎えつつある。
だが、体力が限界に達する前に、敵は攻撃をしながらも緩やかに後退して行く。
「何だ? 今更逃げんのかよ」
「アルベルト!」
「その声……エリアルドか? 何だよそのMSは?」
アルベルトは敵の撤退である程度余裕が戻り、軽口を叩いているとエリアルドのガンダムZERO Ⅲαがアルベルトと合流する。
「説明は後だが……敵は後退しているのか?」
「みたいだな」
ヴェイガンは攻撃こそして来るが、明らかに勢いが無い。
「何とか守り抜いたな……」
「全くだ……こりごりだぜ。こんな規模の戦闘はよ」
完全に撤退するまでは気は抜けないが、次第にヴェイガンはトルディアの防衛圏外まで撤退して行った。
トルディアの外で戦闘が終息に向かう頃、トルディア内部で戦闘は続いている。
アセムはゼハートと戦いながらも何とか基地の外に出る事に成功している。
基地の外に出ては良いが、基地の外には雪が積もっているため、足場が悪い。
スパローはゼダスRに飛びかかりシグルブレイドを振るうが、上空を自由に動けるゼダスRは易々とかわしてスパローの着地に合わせてビームバルカンで攻撃する。
スパローも着地と同時に移動し、ゼダスRに的を絞らせないようにするが、足場が悪いため思うように動けないでいる。
「ゼハート、マリオン司令より作戦は中止するとの事だ」
「中止だと?」
「そうだ。連邦軍の増援に戦力の大半がやられたこれ以上の戦闘は無意味に被害を出すだけだ。我々はトルディアの防衛圏外に離脱する。
お前たちは引き続きトルディアに潜入し指示を待て」
「……了解」
このまま行けばガンダムに勝つ事も可能だが、マリオン達が引き上げてしまえば、鹵獲したガンダムを移送する手段はない。
破壊したとしても外には連邦軍がいるため、自分達は逃げる事が出来ない。
ガンダムが鹵獲、破壊されたとすれば連邦軍の追手は今まで以上に厳しくなるのは分かり切っている。
その為、ここはガンダムに止めを刺す事なく撤退するのが最善の手だとゼハートは判断するが自覚は無いが、そこにはアセムを殺したくないと言う思いが少なからずある。
「アセム……命拾いしたな。ダズ、作戦は中止だ。我々も撤退するぞ」
ゼハートは陽動のダズに通信を入れて機体を飛行形態に変形させて撤退して行く。
「撤退した……のか?」
「アセム! 外の戦闘は連邦軍の勝利じゃ! アセムはすぐに格納庫に戻って来い!」
アセムはゼダスRの方が有利だったのに撤退した事が腑に落ちなかったが、バルガスが外での戦闘に連邦軍が勝利したと聞き得心が行った。
余りガンダムの存在を公にすることが出来ないため、防衛戦や陽動部隊の迎撃に出ていた連邦軍が戻って来る前にアセムは格納庫にガンダムを戻した。
マリオン達がトルディアの防衛圏内まで撤退し、ゼハート達も完全に連邦軍の追撃を撒くとクリスマスのトルディア防衛線は連邦軍の勝利で幕を閉じた。