機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第37話

トルディアから離れたデブリベルトにトルディアを離脱したガンダムZERO Ⅲβは訪れていた。

 ガンダムZERO Ⅲβがデブリベルトに接近すると先ほどまでデブリベルトの中には何も無かった筈だが、突如戦艦が姿を現す。

 それはかつて、クライドが率いていた私設組織「パラダイスロスト」の母艦として使われていた戦艦『アブディエル』だ。

 アブディエルはグノーシスの完成と共に廃艦処分になっている。

 しかし、それは表向きで実際はこうして光学迷彩などを搭載し、改修されて未だに運用されている。

 カタパルトが開閉し、ガンダムZERO Ⅲβがアブディエルに着艦する。

 格納庫のハンガーに機体を入れるとファムは機体から降りる。

 

「お疲れさん」

「整備をお任せします」

 

 ファムはすでにアブディエルに到着していたエミリオに整備を任せる。

 その後ファムはパイロットスーツから私服に着替えるとブリッジに上がる。

 

「ただいま。母さん」

 

 ブリッジに上がるとファムは艦長席のセリアにそう言う。

 ファムとセリアは良く見ると良く似ており、実の親子である事が窺える。

 セリアは蝙蝠退治戦役時にブラッドを連れて戦闘宙域を離脱した後にはヴェイガンと合流せずにさまざまな経由を経てアブディエルの艦長となっていた。

 

「任務、御苦労さま。ファム」

「艦長、秘匿回線で通信が入っています」

 

 数カ月ぶりにアブディエルに戻り、直接娘と話す時間を取る事なく通信が入りセリアはうんざりするが、ファムが戻ったと言う事は今まで連邦からもヴェイガンからも隠れていた自分達が動く時である為、仕方がない。

 

「繋いで」

 

 ブリッジのメインモニターにクライドが映されて、セリアもようやく動く時が来たのだと確信する。

 

「久しぶりだな。セリア、それにファムも」

「お無沙汰していました。クライド小父さま」

「俺の与えたベータはどうだった?」

「流石ですね。予想以上でした」

 

 ファムの感想にクライドは心底満足そうにする。

 ファムは幼少期から高いXラウンダーの素質を見せてパイロットとしても高い技術を叩きこまれている。

 それ故にファムが満足する程の性能を持ったガンダムZERO Ⅲβは高い完成度と言う事だ。

 

「それで、私達の任務は?」

 

 このままではクライドとファムは世間話でいっこうに話が進まないと踏んだセリアは話に割り込む。

 

「相変わらずせっかちだな。お前は無駄に時間をかけて地球を侵略しようとしているヴェイガンの一員だったとは思えないな」

「茶化さないで貰える?」

 

 セリアはクライドの人を小馬鹿にした態度に次第にイラついて行く。

 ブラッドのように感情的で直情的な相手のなら心得ているが、クライドの様な屁理屈を捏ねるタイプはセリアは苦手だ。

 理論的に話を進めようとしても、屁理屈で自分のペースに持って行かれるためセリアとの相性が悪い。

 

「冗談の通じない女だな。まぁ良い。お前たちにはこのままベータと積んでブリッシュ公国に向かって欲しい」

「ブリッシュ公国……また、面倒なところに行かせるわね」

「面倒なところだから行かせるんだよ」

 

 セリアはクライドの言うブリッシュ公国がどんなところなのか分かっているが、ファムは分からずに首をかしげている。

 

「小父さま。そのブリッシュ公国とは一体どんなところなんですか? 母さんの反応を見る限りでは余り良いところではなさそうですが」

「ブリッシュ公国ってのは今では地球圏では珍しい独立国家だよ」

「独立国家ですか?」

「そっ、ブリッシュ公国は複数のコロニーからなるコロニー群の総称ってか自称だな。そのコロニーを纏め上げているコロニー『ブリッシュ』のトップが王を名乗っててな。数年前に王が病死したとかで、今はその娘が王の座を引き継ぐとかって話になっているらしいな。そんで連邦政府でも便宜上、そのコロニー群をブリッシュ公国と呼称している」

「はぁ……」

 

 何やら込み言った話になって来てファムは適当に相槌をうっている。

 

「それは分かりましたが、そこに私達が向かう理由は?」

「ファム達も俺の目的は分かっているよな?」

「過去の戦争の兵器関連のデータベースですよね」

 

 だが、クライドの探しているEXA-DBとそのブリッシュ公国との繋がりが見えてこない。

 

「そのブリッシュ公国はコロニー国家間戦争終盤に出来たコロニーでな。それから今の今まで独自の戦力を保有して中立を保っている」

 

 ブリッシュ公国は地球をヴェイガンの戦争でどちらに加担することもなく、中立を保っている。

 

「その戦力はあるそれなりでヴェイガンのMSにもある程度は対抗は出来る。そんなところがありながら、連邦政府はブリッシュ公国に手を出したがらない」

「何か裏があると?」

 

 連邦政府は天使の落日からの14年間のようにヴェイガンのMSに対してある程度は対抗出来るようになっているが、未だにMSの性能差は一部の機体を除いて埋める事が出来ていない。

 それなのにブリッシュ公国を野放しにしているのは引っかかる。

 

「理由としては政府がブリッシュ公国の戦力を全く当てにしていないのか……それか手を出せない理由があるのかだ」

 

 ブリッシュ公国は独立国家と行ってもヴェイガンの様な戦力を保有している訳ではない。

 その為、連邦がブリッシュ公国と戦争をすれば物量の差で確実に勝てる。

 政治的な方法を使えば戦力の損失無く取り込むのも可能だろう。

 だが、政府がブリッシュ公国の戦力を過小評価し、取り込んだところで時間の無駄と判断して邪魔にならない限りは放置を決め込んでいると言う可能性も考えられる。

 もう一つの可能性は連邦政府は何らかの理由でブリッシュ公国に武力でも政治的にも手が出せない理由があると言う可能性だ。

 

「手が出せない理由があるとすると、戦って勝てないと言うのはまずあり得ない。今の王は父が王だったからそれを引き継いだ小娘だ。政治的な方法なら容易に取り込むことが出来る」

「となると、ブリッシュ公国には連邦政府に対する抑止力的な何かがあると言う事ですか……それがEXA-DBだと?」

「可能性の一つだな。過去の戦争の兵器関連のデータは上手く使えば世界を手に入れる事も破滅させる事も可能だ。それを持っているなら恐ろしくて手は出せんだろうな。下手に刺激するくらいなら中立を決め込んでいてくれた方がマシだ」

 

 もしもクライドの探しているEXA-DBをブリッシュ公国が保有していれば、それを盾に連邦政府に独立国家である事を認めさせることも出来る。

 政府としても独立国家として中立にいてくれるのであれば敵に回るよりかはマシとなる。

 

「しかし、連邦政府がブリッシュ公国の戦力を当てにしていないと言う可能性は?」

「無くはない。だが、ブリッシュ公国には国を守る古代兵器の伝説が残されているんだよな」

「古代兵器ですか……随分と突拍子もない物が出て来ましたね」

「だが、その古代兵器がコロニー国家間戦争時の兵器だとした面白いだろ? そうでなくてもお前たちの任務はその古代兵器の有無の確認と存在するなら奪取が任務だ」

 

 ようやくクライドの目的とブリッシュ公国が繋がる。

 要するにクライドはあるかどうかも分からない宝探しをして来いと言っているのだ。

 

「これはお前たちにしか出来ない任務だ」

「そりゃそうでしょうね。正規軍では国際問題になりかねないわ」

 

 ブリッシュ公国が独立国家として認められている以上、地球連邦政府直轄の軍隊の地球連邦軍は無断でブリッシュ公国の領内で作戦行動を取る事は出来ない。

 その理由が古代兵器の捜索と確保となれば確実にブリッシュ公国からの許可は下りないだろう。

 だからこそ、セリア達に任せるのだろう。

 もしも、下手をした場合は自分達を切り捨てれば良いし、ゼダスなどを運用している事から、ヴェイガンの罪をなすりつける事も可能だ。

 そうなれば、ブリッシュ公国を連邦政府の傘下に取り入れる事も出来るかも知れない。

 

「分かったわ。その任務は受けるけど、クライド……私との契約は忘れないでね」

「お前が生きている限りは覚えているように努力する」

 

 セリアがかつての敵のクライドの下についているのにはクライドとの契約があるからだ。

 クライドに従う事でクライドの力を借りてセリアの目的を果たす事が出来る。

 だが、クライドからすれば自分達は絶対に必要な戦力と言う訳でもなく、どんな無茶な命令も断る事は出来ない。

 

「ハァ……それよりももう少しMSを回して欲しいんだけど。どうにかならないの?」

 

 現在、アブディエルに搭載されているMSはゼダスが二機にガンダムZERO Ⅲβの三機だ。

 ブリッシュ公国の領内に入り込めばクライドからの補給が望めないため、今の内に戦力を確保しておきたい。

 

「無理だな。ゼダスの予備パーツも正規のルートでは作れないからな」

 

 ゼダスはクライドが極秘裏に建造しているため、機体も予備パーツも大量に生産することが出来ない。

 

「だから、ベータを渡してエミリオを貸してんだろ。大変だったんだぞ。色々ともみ消すのはさ。元からうちは嫌われてるからな。俺の事を良く思わない連中はここぞとばかりに叩いて来やがった」

 

 ファムにガンダムZERO Ⅲβの擬装強奪でクライドは避難や責任問題を問う声があったが、クライドはそれをいろいろとコネを使い何とか鎮めたが、クライドや特研に対する風当たりは強いままだ。

 

「そんな訳だから、今の戦力で頑張ってくれ。それじゃな」

 

 クライドはそう言い、これ以上セリアの話を聞く事なく通信を終わらせる。

 

「全く……」

 

 結局、クライドの指示を一方的に言われるだけでこっちの意見は何一つ通る事は無かった。

 恐らくは初めから聞くつもりはなかったのだろう。

 

「でも、やるしかないわね」

 

 クライドが自分との契約を守るかは分からないが、他に選択肢がないため、セリアはアブディエルをブリッシュ公国へと向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トルディア防衛戦が終わり、一休みしたエリアルドはアルベルトと共に基地の指令室に呼び出されていた。

 すでにエリアルドは戦闘の報告書は提出しているため、呼び出される理由は思いつかない。

 逆にアルベルトは心当たりが多いらしく、指令室に来るまでいろいろと言い訳を考えていた。

 

「君たちに来て貰ったのは他でもない。君たちは本日付けで転属の命令がビッグリングより来ている」

「自分達にですか?」

「そうだよ。転属先はすでにトルディアに入港している特別技術開発研究所所属の戦艦『グノーシス』だ」

 

 流石に予想外の展開だったが、アルフレッドも基地の主力の二人を転属させる事は余りよろしくない様だが、総司令部からの正式な辞令である以上、無視することは出来ない。

 

「エリアルドは先の戦闘で使用した新型機のテストパイロット、アルベルトはその補佐としてグノーシスに乗艦して貰う」

「俺も?」

 

 エリアルドは防衛戦でガンダムZERO Ⅲαに乗り戦闘を行っているため、継続してテストパイロットとなるのは分かる。

 だが、その補佐でアルベルトまでも転属させる意味が分からない。

 特研には優秀なスタッフがいるため、補佐にアルベルトを転属させる必要もない筈だからだ。

 

「その通りだ。司令部はアルベルトもグノーシスに乗るように言って来ている。アデルも込みでね」

「了解しました」

「……了解」

 

 エリアルドはアルフレッドの敬礼し、アルベルトも渋々転属命令を受領した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日付けで本艦に転属となりましたエリアルド・アスノ中尉です」

「同じくアルベルト・レクセル少尉っす」

 

 グノーシスに乗艦したエリアルドとアルベルトはこれから同僚となるグノーシスのパイロットに挨拶をしている。

 

「グノーシスのMS隊の隊長のシドウ・ムラサメ少佐だ。お前たちを直接指揮する訳ではないが、働きに期待している」

「自分達は誰の指揮下に入るので?」

「さぁな。その辺りも含めて艦長が局長に話を聞いているところだ」

 

 少なくともシドウや他のパイロットとは別の小隊となるが、グノーシスは特研の所属である為、敵と遭遇戦以外での戦闘は殆どないので、なぜ自分達が転属になったのか明らかにはなっていない。

 

「それでは失礼する。後はラファルグ達に任せる」

 

 シドウはそう言いブリーフィングルームを出て行く。

 シドウがいなくなり、ユーリアもブリーフィングルームを出て行き、シャルロットとレオーナが二人に近づく。

 

「まさか、エリアルドと同じ船に乗る事になるなんてね」

「でも、エリアルド君が一緒なら心強いです」

「エリアルド、知り合いだったのか?」

 

 シャルロットとレオーネはエリアルドと親しげに話かけて来たため、アルベルトはエリアルドに尋ねる。

 

「まぁな。二人とも父さんの古い知り合いの娘でな。小さい頃から何度も会った事がある」

「それって幼馴染って奴かよ!」

「そう言う事になるのか」

 

 エリアルドがそう言うとアルベルトは心底悔しそうにする。

 アルベルトもエリアルドとは幼馴染と言う間柄だ。

 二人がエリアルドの父の古い知り合いの娘と言う事は自分の父の知り合いであった可能性もある。

 昔からアルベルトはアルフレッドが古い知り合いに会いに行くと言う時は付いてくるかと聞かれても面倒だからとトルディアに残っていた。

 もしも、その時について行けば、シャルロットとレオーネを知り合いになれたかも知れないと思うと激しく後悔する。

 だが、アルベルトはすぐに頭を切り替える。

 グノーシスに配属と言う事は当分の間は同じ船で寝食を共にすることになる。

 

「俺はアルベルト・レクセル。よろしく!」

 

 アルベルトは出来うる限り、愛想よく名乗るがレオーネは若干引いている。

 

「よろしくお願いします……」

「ねぇ、君年幾つ? 君見たいな子もパイロットをしているの?」

「アルベルト、止めろ。レオーネは余り人と話すのが苦手なんだ」

 

 エリアルドはアルべルトとレオーネの間に割って入る。

 レオーネはエリアルドの行為に顔を赤らめるとアルベルトはレオーネがエリアルドに対して好意を持っているのだと感づく。

 その事に気がついたシャルロットはアルベルトの腕を引いてブリーフィングルームの隅に連れて行く。

 

「今のやり取りで分かったと思うけど……」

「あの娘ってエリアルドに?」

 

 ブリーフィングルームの隅で話す二人の会話の内容まではエリアルドとレオーネには聞こえない。

 

「そう言う事よ。尤も、エリアルドはレオーネの事は妹のように思ってるみたいだけどね」

「まぁ、気持ちは分からないでもないっすね」

 

 レオーネはパイロットはおろか、軍服を着ていなければ軍人にも見えない。

 その上、母とは違い人見知りも相まって、何処となく保護欲をかき立てられる。

 根が真面目な上に幼い頃からレオーネを知るエリアルドがレオーネを妹のように思っていても不思議はない。

 幼い頃から何かと、レオーネをエリアルドが守っていたのは彼を良く知るアルベルトには容易に想像がつく。

 

「けど、エリアルドには彼女がいますよ」

「本当に? エリアルドの癖に生意気ね」

 

 それはアルベルトの誤解だが、シャルロットにそれを知りえない。

 エリアルドがファムと出会い数カ月が経つが、未だに告白すら出来ていない事をアルベルトは知らず、学園祭やクリスマスにデートに誘

 

っている事からてっきり二人は付き合っている物だと勝手に思っている。

 

「まぁ良いわ。その方が面白いしね」

「さっきから何を話してるんだ?」

「何でも無いわ」

 

 若干、気にはなるが、下手に追求すると地雷を吹きかねないので、追求しない。

 その後はシャルロットとレオーネが簡単にグノーシス内を案内して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘データは見させて貰った。初陣にしてはなかなかの戦果だったな」

 

 グノーシスの艦長室でエリーゼはオーヴァンのクライドに秘匿回線を繋いでいる。

 すでに先の戦闘でのエリアルドのガンダムZERO Ⅲαの戦闘データはクライドの元に送っている。

 

「でも、敵も新型機を投入して来たわ」

「見させて貰ったが、新型機はXラウンダー専用機だと思われる。追加装備を無しであれだけ喰らい付く事が出来たんだ。上出来だな」

「あのまま戦闘が続いていたら危なかったわ」

「だが、次はエリアルドが勝つ」

 

 クライドはそう言い切るが、戦いに絶対はない。

 言いきれる根拠は自分に作ったガンダムZERO Ⅲαに絶対の自信を持っているからであろう。

 

「それで、クライドの言う通りにエリアルドに新しいゼロを渡したけど、また無意味なデータ収集に戻るわけ?」

「いや……お前たちには奪われたベータの奪還の任務を与える」

「奪還ねぇ……」

「責任問題は何とかしたが、野放しにも出来んだろう。アレに対抗出来るのは兄弟機のアルファだけだ」

 

 確かにクライドの言う通り高性能機のガンダムZERO Ⅲβに対抗出来うるのは同型機にガンダムZERO Ⅲαくらいだ。

 そして、グノーシスにはガンダムZERO Ⅲαの装甲換装システムに対応している。

 つまりはガンダムZERO ⅢβにガンダムZERO Ⅲαをぶつけるのであれば、自分達が捜索に当たる事になる。

 その中で二機のガンダムZERO Ⅲ同士の戦闘データも収集することも出来、全てはクライドの思い通りの展開になっているとしか思えない。

 

「分かったけど、うちの戦力はRGシリーズの4機とゼロとアルベルトのアデルを含めて6機よ」

「それについてはすでに司令部を掛け合い、増員を手配している」

「増員ねぇ……」

 

 余りにも手を打つのが早すぎる。

 まるでこうなる事をすでに分かっていたの様な対応の早さだ。

 

「そっ、丁度ウルフが新しい部隊に転属になるって話だったから、俺が直接話を付けて快く1年程、ウルフを借りられるようにしておいた」

「何でまた……」

 

 エリーゼもウルフの実力は良く知っている。

 蝙蝠退治戦役から今まで現役でパイロットを続けており、Xラウンダー能力こそはないが実戦経験と実力は連邦軍でもトップクラスだ。

 だが、問題は性格にある。

 余りにも型破りな性格な為、上司との衝突や問題を起こしては部隊を転々としている。

 パイロットとしての能力も高く、何だかんだで面倒見も良いため、部下からは慕われる事が多いが、指揮官としては余り歓迎は出来ない。

 恐らくは転属先もウルフの事は聞いており、クライドがウルフを借りたいと言って来た時には渡りに船と借りる事を了承したのだろう。

 だが、元よりグノーシスは機密保持などからクルーの主力はクライドの身内や個人的な知り合いで構成された身内人事である為は明白で、ウルフは蝙蝠退治戦役からクライドと親交もある事から今回の増援で引っ張って来たと言うところだ。

 副長のアーノルドのようにクライドと縁もゆかりもなくグノーシスに配属されるには相当の不運が必要となる。

 

「すでにウルフには転属の辞令が行って、補給と共にグノーシスに乗艦する手はずだ。エリーゼ達はその戦力を持ってトルディアを攻撃したヴェイガンの部隊に対して攻撃を仕掛けてくれ」

「また、無茶な事を……」

 

 幾ら、増員があり敵もトルディア戦で戦力を消費していたとしても、まだ、向こうには予備戦力もあるだろうし、何より新型のティアーズも出て来るだろう。

 確かに戦闘中にガンダムZERO Ⅲβがどさくさに紛れて、トルディアを離脱しているのはエリアルドの報告とGエグゼスのミッションレコーダーから確認している。

 状況的に離脱したファ・ボーゼ級に回収された可能性が高いが、MS7機で攻撃するのは無茶としか言いようがない。

 

「まぁ、適当に突いて出る気配がなければ引いて構わない。今回はな」

 

 だったら、無理に攻撃する必要もないと言いたいが、言ったところで無駄なのはエリーゼが全宇宙の誰よりも知っている。

 

「分かったわ」

「そんなよろしく」

 

 クライドが通信を切ると、エリーゼはため息をつく。

 ここのところ、クライドは独自に何かを企んでいるのは分かっている。

 クライドがそう簡単に尻尾を掴ませる訳もなく、エリーゼ個人の調べではそれが何なのかまでは分かっていない。

 流石に故意に身内を危険に晒す事はしないと思うが、未知の技術が絡み出すと途端に見境がなくなるところは昔から何一つ変わっていない。

 それどころか、若い頃とは違い公的な権力も持っているため更に性質が悪くなっているかも知れない。

 そして、結局のところ、どんな無茶を頼まれても断る事が出来ずに聞いてしまうのはクライドの惚れた弱みだ。

 次の任務の事を考えるとはやり、クライドに文句の一つも言いたくなっていると、艦長室の呼び出し音が鳴る。

 

「誰?」

「久しぶりなんだが、随分と機嫌が悪いな」

 

 エリーゼは若干、イラつき気味に答え、ウルフが艦長室に入って来る。

 つい先程、ウルフがグノーシスに乗艦することを聞かされて数秒後にウルフが艦長室を訪れたと言う事はその事を聞いている時にはすでにウルフはグノーシスに乗艦していた事になる。

 余りにも遅い伝達にクライドに次会った時は文句の一つでも言ってやりたい気分となった。

 

「別に……」

「取り合えず、今日からこの船に乗る事になった」

「聞いてるわ。ウルフにはエリアルドとアルベルトを指揮して貰うけど良いわね?」

 

 エリアルドをウルフの下に預けるのは不安があるが、シドウ隊に入れる訳にもいかない。

 

「ああ、エリアルドにはMSの扱いから女の扱いまで教えてやるから安心しな」

「出来る訳ないでしょ! エリアルドに変な事は教えないで!」

 

 ウルフは軽い冗談のつもりで言ったが、機嫌の悪いエリーゼには冗談が通じない。

 

「おー怖……つってもエリアルドはもう23だろ? それなのに女の一人も知らないってのは親としては心配だろ?」

「大きなお世話よ」

「いい加減に子離れしとけって」

 

 基本、放任主義のクライドとは反対でエリーゼは子供に対して教育的な面が大きい。

 ウルフも人の家庭の教育方針に口を出すつもりはないが、エリアルドもそろそろ女を覚えておいた方が良いと思っている。

 エリアルドは良くも悪くも真面目過ぎるため、ウルフの見立てでは女で破滅するタイプだ。

 だが、これ以上言うとエリーゼが本気で切れそうなので、これ以上エリーゼをからかう事は止めておく。

 

「取り合えず、着任の挨拶はした。期間限定だが、よろしく頼む」

「ええ……期待しているわ」

 

 グノーシスはエリアルドやウルフを加え、ガンダムZERO Ⅲβ奪還の任務の為に動き出す。

 

 

 

 

 

 

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