機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第40話

ブリッシュ公国に属するコロニー『リッデル』の周囲にブリッシュ公国の主力戦艦、キャヴァリアー級戦艦が3隻警備に当たっている。

 キャヴァリアー級戦艦は連邦軍のダーウィン級宇宙戦艦を独自の改造をした戦艦だ。

 航行速度よりも火力と装甲を優先している。

 追加武装のハイパーメガ粒子砲などの火器によってその射程はダーウィン級の比ではなくなっている。

 その周囲にはブリッシュ公国の主力量産MS『ナイトルーパーⅣ』が周囲を警戒している。

 ナイトルーパーⅣは25年前にジゼルの搭乗機であったナイトルーパーの第4世代のMSだ。

 ナイトルーパーの時からの重装甲や脚部やスカートアーマーのスラスターを受け継ぎ、腹部に拡散ビーム砲、バックパックには新型のロングビームサーベルが装備されている。

 手持ちの武器として4門の実弾式のマシンガンが内蔵されている大型ランスを装備している。

 このコロニー『リッデル』はブリッシュ公国の食糧やMSなどの生産プラントが置かれている重要拠点だ。

 その為、クーデター派はここリッデルの守りを固めている。

 今はキャヴァリアー級戦艦が3隻とMSが十数機の防衛だが、次期の増援が来る手筈となっている。

 そんな中、リッデルに3機のMSが接近していた。

 1機はトルディアで強奪されたガンダムZERO Ⅲβ、残りの2機はゼダスだ。

 

「敵はキャヴァリアー級とか言うのが3隻と重MSが10機ちょいか……」

「私が外の敵を抑えるから、リカルドとセラは中を任せるわ」

「お前が仕切るなって」

 

 リカルドはファムが現場を仕切る事に不満を零すが、その作戦自体は出撃前にセリアから言われている事なので、文句はいつもの事だとファムは聞き流す。

 

「ファムちゃん。大丈夫? あの重MSって連邦軍のMSよりも性能は良いらしいよ」

「問題ないわ。セラ、私のガンダムはそれ以上だから」

 

 ナイトルーパーはジゼルが乗っていた初期型の時でも蝙蝠退治戦役時には高性能機とされていた。

 それから4世代も後であるナイトルーパーⅣの性能は現在の連邦軍の主力機のジェノアスⅡやシャルドール改よりも高いだろう。

 だが、ファムはそれ以上に自分のガンダムの性能の方が高いを確認している。

 

「そこまで言うなら、俺達は一切手助けしないぞ」

「構わないわ。リカルドこそ、私に余計な仕事をさせないでよ」

「言ってろ」

 

 リカルドは喧嘩腰で言いファムも挑発的に返すが、普段はリカルドはファムをライバル視しているが、それだけファムの能力を認めているとも言える。

 だからこそ、ファムがこの程度でやられるとは微塵も思っていない。

 2機のゼダスは飛行形態に変形すると、リッデルの防衛軍が防衛体制を取る前に防衛線を突破する。

 すでに出撃しているナイトルーパーⅣがゼダスを追おうとするが、ガンダムZERO Ⅲβが掌のビームバルカンで牽制する。

 3機目のMS存在に気がついた公国軍はガンダムZERO Ⅲβを抑えつつも、リッデルに向かったゼダスを追おうとするも、ガンダムZERO Ⅲβがそれを妨害し、ガンダムZERO Ⅲβとリッデル防衛部隊は交戦する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 防衛隊を抜けたリカルドとセラフィナはリッデルの宇宙港から内部に侵入している。

 途中に邪魔な外壁をリカルドがビームキャノンでぶち抜いた時はセラフィナも肝を冷やしたが、あれから少し経つがコロニー内に異変がない事から、すでにコロニー側で対応し大事にはならなかったと思われる。

 

「こっから二手に分かれるぞ」

「うん……気を付けてね」

「誰に言ってんだよ。この程度の任務はさっさと終わらせてやるよ」

 

 2機のゼダスは散開し、目的の場所に飛んで行く。

 セラフィナのゼダスはリッデルの農業区域に到着する。

 この農業区域はブリッシュ公国の食糧の大半を作っている区域だ。

 そこには一面に田畑が広がり、家畜の飼育小屋も連なっている。

 

「御免さない」

 

 ゼダスはビームバルカンで農業区域の田畑を攻撃する。

 それにより田畑は一面火の海と化す。

 ゼダスは田畑に火をつけると家畜小屋にもビームバルカンを撃ち込む。

 田畑を家畜小屋に火を放つと消化の為にリッデル内の騎士団が消火作業に入る前に機体を飛行形態に変形すると、農業区域から離脱する。

 セラフィナと別れたリカルドは工業区域に来ている。

 工業区域ではブリッシュ公国の主力機のナイトルーパーⅣの部品や武器などを製造している区域だ。

 

「んじゃ、とっとと破壊するか」

 

 ゼダスはビームキャノンを工場に撃ち込む。

 ビームキャノンで工場を破壊していると工場のナイトルーパーⅢがゼダスにマシンガンやバズーカ、ビームライフルを放つが、ゼダスは回避してビームバルカンで反撃する。

 ナイトルーパーⅢはナイトルーパーⅣのベースとなった機体で基本的な性能はⅣと同じだが、腹部の拡散ビーム砲や大型ランスを装備しておらず、マシンガンやバズーカ、ビームライフルを装備している。

 Ⅳと比べて攻撃力が決定的に低いので前線にはⅣの不足している穴を埋めるために配備されている以外では工場の様な後方に回されている事が多い。

 

「ちっ……ファムは戦艦と主力機が相手だってのに俺は旧型が相手かよ」

 

 ゼダスはビームキャノンで工場を破壊しつつ、ナイトルーパーⅢを破壊する。

 ナイトルーパーⅢとⅣは脚部やスカートアーマーにスラスターが内蔵されているため、陸戦ではホバー走行で高い機動力を持つが移動が平面に限られているため、上空の敵に対してはその機動力を生かす事は殆ど出来ない。

 一機のナイトルーパーⅢが大きく飛び上がり、ロングビームサーベルでゼダスに切りかかるが、ゼダスは簡単に避けて降下して行くナイトルーパーにビームバルカンを撃ち込んで撃墜する。

 

「飛べない癖によ……」

 

 ゼダスが地上のナイトルーパーⅢをビームバルカンで破壊しながら工場を破壊して行くとところどころが誘爆する。

 

「そろそろ。良いだろ」

 

 工場もある程度が破壊されたため、ゼダスは飛行形態に変形すると工業区域から離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リカルドとセラフィナをリッデルに向かわせたファムも防衛部隊と交戦している。

 ガンダムZERO Ⅲβは両腕のビームバルカンで周囲のナイトルーパーⅣを牽制する。

 ナイトルーパーⅣはガンダムZERO Ⅲβを包囲しながら、大型ランスのマシンガンを放つが、ガンダムZERO Ⅲβはビームシールドを使い防ぐ。

 

「なかなか素早い……だけど、動きが直線的過ぎる」

 

 ナイトルーパーⅣは機体の構造上、宇宙でも高い機動力を持つがそれも直線的な動きに限られている。

 それを複数機で編隊を組み、互いの死角を補う事でカバーしている。

 ガンダムZERO Ⅲβはビームバルカンで牽制しつつ、ビームサーベルを展開して近くのナイトルーパーⅣに接近する。

 ナイトルーパーⅣは大型ランスを突き出すが、ガンダムZERO Ⅲβはその一撃を機体を大型ランスの位置よりも下にしてかわし、すれ違い様にビームサーベルでナイトルーパーⅣを胴体から真っ二つに切り裂く。

 重装甲のナイトルーパーⅣだが、最新の技術を使って作られているガンダムZERO Ⅲβのビームサーベルを防ぐには至らなかったようだ。

 

「悪いけど、今回は殺すなと言う命令は受けていないわ」

 

 トルディアでの戦闘では敵機を戦闘不能に持ち込んでパイロットを絶対に殺すなと言われていたが、今回は言われていない。

 その為、敵に対して手加減をすることなく戦う事が出来る。

 友軍機が撃墜されて、頭に血が上ったのか、1機のナイトルーパーⅣがガンダムZERO Ⅲβに突っ込んでくる。

 ガンダムZERO ⅢβはナイトルーパーⅣの大型ランスを掴むと、ナイトルーパーⅣの胴体に至近距離から膝のニードルガンを撃ち込む。

 ニードルガンは機体を貫通することはなかったが、胴体に突き刺さり、ナイトルーパーは動かなくなる。

 ガンダムZERO Ⅲβは動かなくなったナイトルーパーⅣから大型ランスを奪い取り構える。

 ナイトルーパーⅣは拡散ビーム砲を放つが、ガンダムZERO Ⅲβは回避して、ナイトルーパーⅣに大型ランスを突き刺す。

 大型ランスはナイトルーパーⅣの装甲を簡単に貫いた。

 

「成程……良い武器を使っているわね」

 

 大型ランスでナイトルーパーⅣを破壊すると、ファムは強い気配を感じ機体を引かせる。

 すると、今までガンダムZERO Ⅲβのいたところにビームが横切る。

 

「あれは……小父さまのカスタムしたタイプの機体ね」

 

 そこにはナイトルーパーⅣを騎士長用、つまり指揮官用、エース用にクライドがカスタムしたMSナイトルーパーⅤが接近している。

 ナイトルーパーⅤはⅣをベースに両腕の装甲にビームガトリング砲を内蔵し、腹部の拡散ビーム砲が大型ドッズキャノンに変更され攻撃力が強化されている。

 更にはバックパックはGバウンサーと同タイプのテールバインダーをナイトルーパーⅤ用に改良し、機体の各部に姿勢制御用のスラスターも追加され、直線的な機動力はⅣ以上で尚且つ、俊敏性も向上している。

 バックパックの変更に伴い、ロングビームサーベルは腰に変更され、右手には大型の高出力ヒートソードを持っている。

 ナイトルーパーⅤはガンダムZERO Ⅲβにビームガトリング砲を連射しながら、突っ込み高出力ヒートソードを振るう。

 ガンダムZERO Ⅲβはその一撃をやり過ごしてビームバルカンで応戦する。

 ビームバルカンはナイトルーパーⅤに直撃するも、余り効果がない。

 見た目はナイトルーパーⅣと大差なくともナイトルーパーⅤの装甲も大幅に強化され、ビームバルカン程度の攻撃力ではビクともしない。

 

「流石は、小父さまがカスタムしただけの事はあるわね。改良機と言うよりもまるっきり新型機と言っても良いわね」

 

 クライドによって手の入れられたナイトルーパーⅤはすでにナイトルーパーⅤとは別次元のMSとなっている。

 しかし、ファムとて、ここで引く訳にも行かない。

 今、引けばリッデル内にいるリカルドとセラフィナの物にナイトルーパーⅤが向かう事になるからだ。

 ファムの任務はコロニーの外の敵戦力の殲滅、最悪でも足止めをしなければならない。

 

「でも……私のガンダムの敵ではないわ」

 

 ガンダムZERO Ⅲβはバックパックのスタビライザーを展開し、高速戦闘モードになる。

 ナイトルーパーⅤはビームガトリング砲で攻撃するも、高速戦闘モードのガンダムZERO Ⅲβには当たらない。

 ガンダムZERO Ⅲβは腕のベータソードを装備し、すれ違いざまに振るう。

 ナイトルーパーⅤはかわそうとするがナイトルーパーⅤの左腕が切り落とされる。

 しかし、それはファムの予測の範囲内だ。

 ガンダムZERO Ⅲβは腰のバスタードッズライフルを構える。

 ナイトルーパーⅤはすぐに射線上からどこうとするが、バスタードッズライフルの射線上には自分だけでなく、母艦のキャヴァリアー級戦艦もある事に気づく。

 かわす事は出来なくもないが、キャヴァリアー級戦艦は今から方向転換しようと、バスタードッズライフルの発射までに射線からどく事は不可能だ。

 ナイトルーパーⅤは高出力ヒートソードを盾の代わりに使い母艦を守ろうとする。

 ファムが引き金を引きバスタードッズライフルは放たれる。

 その一撃はナイトルーパーⅤの高出力ヒートソードを易々と撃ち砕き、ナイトルーパーⅤをも貫き後方のキャヴァリアー級を轟沈させた。

 ナイトルーパーⅤが落とされた事で公国軍は明らかに士気が低下している事が分かる。

 その後、バスタードッズライフルで残りの2隻のキャヴァリアー級戦艦を沈め、母艦を失ったナイトルーパーⅣを全て撃墜し、戦闘が終わる。

 

「任務完了……」

 

 周囲の敵影もなく、暫くは増援が来ない事も事前に確認しているため、ファムは一息ついていると、内部に侵入していた2機のゼダスがコロニーの外に出て来る。

 

「こっちは雑魚ばっかだから、終わってないと思ってたが、もう終わってんのかよ」

「まぁね。首尾は?」

「予定通りです」

 

 2機とも機体に損傷もなく、離脱して来たと言う事は予定通りに事が運んだと言う証拠だが、念の為に確認しておいたが、問題なく作戦は完了したようだ。

 

「なら、これ以上はここに留まる理由はないわね。増援部隊が来る前に私達も離脱するわよ」

「だから、お前が仕切んなって」

 

 リカルドは文句を言いつつも増援部隊が来る前に3機はリッデルから離脱して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリッシュ公国の首都コロニー「ブリッシュ」の付近にヴェイガンのファ・ボーゼ級が停泊している。

 ファ・ボーゼ級は従来の地球製の戦艦に比べると大きいため、ブリッシュの港にはファ・ボーゼ級の入るスペースがないため、ファ・ボーゼ級から戦闘艦が分離し、ブリッシュに入港している。

 そのブリッシュの中で最も豪華な建物に王宮の一室でかつては王の執務室として使っていて部屋にマリオンが通されていた。

 王の執務室は王の威厳を示すかのように高価な調度品が揃えられており、金品や調度品でしか、その力を示す事が出来ないと言う事を暴露しているかのようでマリオンは余り好きにはなれない。

 マリオンの対面にはルイーズの父でクーデターの首謀者の一人のローレンス・レミントンが座っている。

 ローレンスは80歳近くになるのにも関わらず、屈強な体格をしており、歴戦の猛者を思わせる。

 マリオンもXラウンダーの能力を使わずともローレンスが歴戦の猛者である事を肌で感じ取っている。

 

「ヴェイガンの地球侵攻軍司令官のマリオン・イーヴィルです」

「ローレンス・レミントンです。指令自ら起こしになるとは恐縮です」

 

 ローレンスは娘と同年代のマリオンに対して低い姿勢でいるが、その目はヴェイガンの司令官がどれほどの物なのかを値踏みしているかのようだ。

 

「指令自ら起こしのところ申し訳ありませんが、これはどう言う事なのかご説明を……」

 

 ローレンスはそう言い、数枚の写真を二人の間のテーブルに置く。

 それを見たマリオンは目を細めてローレンスの方を見る。

 

「これは一体、何の冗談だ?」

 

 マリオンは威圧を込めてローレンスを問い詰めるが、ローレンスはその威圧に気おされている様子はない。

 その写真にはゼダスが田畑や工場を攻撃している様子が映されている。

 ブリッシュ公国との会談の席でこの様な物を出されてマリオンはその真意をローレンスに問うている。

 

「見ての通りです。先日、我々の生産拠点のコロニーがヴェイガンの襲撃を受けました。これはその時に撮られたものです」

「つまらん冗談だ。そんな事をして我々にどんなメリットがある」

 

 元々、ヴェイガンがブリッシュ公国のクーデターに戦力を提供したのはブリッシュ公国をヴェイガンの陣営に取り込んで、ブリッシュ公国にヴェイガンの拠点を置く事が目的だ。

 その中でも本拠地が火星圏にあるヴェイガンは地球圏に生産拠点を持たないため、地球圏の中で自分達に加担する可能性のある生産拠点を取り込もむ事が目下の方針の一つだ。

 それなのに、ブリッシュ公国の重要な生産拠点を襲撃することはあり得ない。

 

「ですが、これも事実です」

 

 画像を擬装するのは容易いが、それをした時のブリッシュ公国のメリットもない。

 返答にとってはブリッシュ公国とヴェイガンは決裂するだろう。

 ヴェイガンとしては生産拠点を失ったブリッシュ公国に肩入れしても、生産拠点を立て直す間は物資の支援を行う必要があり、連邦軍との戦争に足かせになる位ならマリオンは躊躇う事なくブリッシュ公国との関係を切るだろう。

 ブリッシュ公国としてもこの事実は当分の間は隠しておきたい筈だ。

 それなのに、その事実をマリオンに付きつける理由は少ない。

 まず1つ目は生産拠点を失ったから支援を頼むと言う事だ。

 だが、ブリッシュ公国を支援したとて、すぐに見返りが期待出来ない以上、支援をする気がない事をローレンスが分からない訳がない。

 となると、遠回しにこの事を理由をしてヴェイガンと手を切りと言う事だ。

 

「私としましてもマリオン殿がこの様な姑息な真似を指示したとは思っていません。しかし、この襲撃で我々も勇敢な騎士を多く失いました。例え、マリオン殿が指示を出していないとしても、ヴェイガンのMSに同胞を殺された以上、ヴェイガンと共に闘うと言うのを良く思わない者がいる事も理解して頂きたい」

 

 恐らくはそれはヴェイガンと手を切る建前である事は容易に想像がつくが、完全に出まかせと言う訳でもないだろう。

 ローレンスは確実にヴェイガンと手を切るつもりだ。

 この件がなくとも、何か理由をつけて手を切るが自分達を使い捨てる気でいたのだろう。

 それに比べれば、正面をきって手を切ると言っているだけマシだ。

 

「……そう言う事なら致し方がない。われわれもブリッシュ公国から手を引こう」

 

 手を切る気でいるローレンスに何を言ったところで気が変わる事はないだろう。

 その上、情報を信じるのであればヴェイガンにブリッシュ公国を支援する価値もない。

 無理にブリッシュ公国を傘下に入れようならば、ローレンスを相手にすることになる。

 マリオンとて、誰が相手でも負ける気は毛頭ないが、ローレンスを戦えば少なからず痛手を受ける。

 

「ご理解感謝します」

 

 ローレンスはマリオンにふかぶかと頭を下げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ローレンスとの会談を終えたマリオンはファ・ボーゼ級に戻っている。

 

「如何しましたか?」

「会談は決別だ」

 

 マリオンがメデルに手短に説明し、メデルも信じられないと言う表情をする。

 

「まさか、生産拠点を攻撃したのは例の……」

「それ以外には考えられんな」

 

 ブリッシュ公国の生産拠点のリッデルを襲撃したゼダスは恐らくはトルディアでガンダムZERO Ⅲβを強奪した時の陽動に使われていた機体であるとマリオンも踏んでいる。

 だが、あの場でそのゼダスがヴェイガンのMSで無い事を証明することは不可能で、ローレンスもはなから決別するための理由に使っていたので、マリオンのその事はローレンスには話す事はなかった。

 

「それと先ほど、エルピディオから作戦は順調に進んでいるとの報告がありました」

「流石と言うところか」

 

 現在はエルピディオは別の任務をマリオンに与えられその為に別行動している。

 そのエルピディオから定時報告で順調である事が報告されている。

 元より、エルピディオに任せた任務の方が、ブリッシュ公国よりも簡単である為、エルピディオなら出来て当然と言える。

 

「ブリッシュ公国から手を引くとなれば、エルピディオの方の策を盤石にする為に我々も向かった方が良いでは?」

「誰が手を引くと言った」

「しかし、向こうはこちらの手を借りるつもりはないようですが……」

「生産拠点が破壊されたと言う事が事実として考えるが、奴らはなぜここまで強気で居られる」

 

 生産拠点が破壊された上に、ヴェイガンの協力があった事が連邦に知れればブリッシュ公国はヴェイガンに与したとされてもおかしくはない。

 ブリッシュ公国では連邦軍と戦争しても勝ち目はない。

 ローレンスもその事が分からない訳でもない筈だ。

 それなのに、ヴェイガンと決別すると言う事は連邦と戦争になってもどうにかなる秘策があると考えるべきだ。

 

「その裏には何かあると?」

「さぁな。それはこれから調べるさ……すぐにブリッシュ公国のコロニーに密偵を送る。我々も撤退したと見せかけて近くに潜伏する」

 

 ブリッシュ公国の強気な態度が連邦相手にでも十分に戦える秘密兵器などであれば、奪取することも視野にマリオンは行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、我々は本当に後がなくなったな」

 

 マリオンと決別したローレンスは王の執務室で一人そう言う。

 リッデルの生産プラントが破壊され、ブリッシュ公国には長期の戦争をするだけの物資は残されてはいない。

 

「しかし、初めてしまった以上、止まる訳にもいかないじゃろ」

 

 マリオンが出て行った事を見計らい一人の老人、エイブ・ノートンが入って来る。

 エイブとローレンスは先々代からブリッシュ公国に仕えて来た戦友だが、エイブは武人として国を守って来たローレンスとは違い政治や技術方面で国を守って来た。

 

「ローレンスは襲撃が本当にヴェイガンの仕業と考えているのか?」

「いや……連中は公国を生産拠点にすることが目的の筈だ。リッデルを襲撃する理由はない。恐らくは……」

「アスノの小僧の差し金か……」

 

 ローレンスもエイブもリッデル襲撃の背後にはクライドが絡んでいると予測している。

 恐らく、クーデターの時にヴェイガンの手を借りた事を何処からか仕入れて、自分と手を切るつもりでいると考えその報復なのだろう。

 その結果として、ブリッシュ公国は大打撃を受けている。

 

「だろうな……」

「それで、どうするつもりだ? 小僧に頭を下げるか? この程度で済んだのも交渉の余地はあると思うが?」

 

 クライドが本気で報復するとなれば、この程度では済まないだろう。

 と言う事はまだ、向こうにも交渉する気があると言う事になる。

 

「我々にはグレアム王の残したペンドラゴンが残されている。エイブ、例のアレはどうなっている?」

 

 ローレンスがクライドやヴェイガンを利用し、その後に手を切った理由として二つの切り札があったからだ。

 その一つが、先代の王、グレアム専用のMS「ペンドラゴン」だ。

 ペンドラゴンはクライドが設計した試作MSで開発は10年近く前だが、その性能は当時でも破格の性能で今でも十分に高性能機として運用が出来る。

 そして、もう一つの切り札もある。

 

「そうじゃな……すでにほぼ完成していると言っても良いが、完全にするには今のブリッシュ公国では不可能だな。だが、アスノ家の技術を使えば話は別だが……」

「あの男が素直に技術を提供するとは思えんな」

「だろうな。あの小僧は異常なまでに技術に貪欲な男じゃ。もしも、アレの存在を知れば確実に奪いに来る事は目に見えている」

 

 切り札の一つは未完成で完全に完成させるのは現在の技術では不可能とされ、その為にはオーバーテクノロジーを多数所有しているアスノ家の協力、即ちクライドの協力が必要となっているが、クライドが素直に協力するとはとても思えない。

 

「未完成でも使えるのか?」

「数回はな」

「それで十分だ」

 

 クライドへの協力が危険な以上、未完成のまま運用するしかないが、それでも数回使えれば問題はない。

 

「それと逃げだした姫様が戻られたらしい」

「ルイーズめ……余計な事を……」

「連邦の船で戻り、数日前からエクィテスにむかっておる。恐らくは残存兵を集めて反撃に出るつもりなんじゃろ」

 

 エクィテスはブリッシュ公国で唯一、クーデター軍に落ちていないコロニーである為、ヒルデガードが潜伏するのは適しているコロニーだ。

 

「連邦の船の戦力は?」

「未知数じゃな。なんせ、アスノの小僧の息のかかった船らしい。通常の量産機とは違うMSにガンダムタイプのMSまで搭載されていると聞いている」

「ガンダムか……」

 

 ブリッシュ公国はコロニー国家間戦争時に設立されているため、ガンダムに関わる伝承や伝説も多く残されている。

 

「まさか、生きてガンダムを見る事になるとはな……」

 

 ローレンスは執務室から見える王宮の庭園に佇む、巨大な銅像を眺める。

 それは大昔からブリッシュ公国の守り神とされているMSだ。

 そのMSもガンダムと酷似しており、ガンダム伝説から派生した物の一つと推測されている。

 

「そのガンダムを敵に回して勝てるのだろうな?」

「その為に行動を起こしたのだ。今更引く事など出来はしない」

 

 ローレンスもエイブも国の為に主君たるヒルデガードに刃を向けた。

 すでに冗談では済まないところまで来てしまっていた。

 例え、伝説とされたガンダムと相手にしても勝つしかない。

 

「それがこの国の為なのだから……」

 

 ローレンスは像を眺め決意を新たにする。

 

 

 

 

 

 

 

 クライドがフリットの戦力を借りる要請を出し、クライドに言われた通りに2日でフリットは空いている部隊を集めて艦隊を組み、オーヴァンに向けていた。

 

「旗艦をアマデウスにダーウィン級が4隻、MSが25機……うちアデルが10機にジェノアスⅡが8機、シャルドール改が4機……おっGエグゼス改も3機用意して来たか……まぁ、これだけあれば十分か……」

 

 欲を言えばもう少し、戦力が欲しいところだが、フリットに無理を言い、戦時中にも関わらず、これだけの戦力を集めたのだ文句は言えない。

 旗艦となるアマデウスは25年前に新造されたディーヴァの同型艦で新型量産機のアデルを10機も寄こしている。

 その上、かつてのウルフの愛機だったGエグゼスをマッドーナ工房が一般向けに改良したGエグゼス改もある為、戦力としては十分だ。

 

「そんじゃ、俺は少し出て来るから、後は任せた」

「くれぐれも問題は起こして来ないようにお願いします」

「無理だな」

 

 クラリッサはオーヴァンに各研究に指示や局長代理の仕事がある為、クライドに同行出来ないので念を押すがクライドはあっさりと無理だと言う。

 

「これから俺は強引に国盗りをしに行くんだ。後で問題の一つや二つは出て来るさ」

「……もう好きにしてください」

 

 クラリッサもすでに諦め、問題が大きくならないように願いつつクライドを送り出す。

 クライドは旗艦であるアマデウスに乗艦すると、ブリッジに上がる。

 ブリッジには今回アマデウスの艦長を任されたフレデリック・アルグレアスがクライドを待っていた。

 

「お待ちしていました。アスノ局長」

「ご苦労さん。行き成りで悪いがさっさと、出港して欲しい」

「了解です。目的地はブリッシュ公国で間違いないですね」

「ああ」

 

 アマデウスはクライドを乗せ、ブリッシュ公国へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 ヒルデガードを保護したグノーシスはブリッシュ公国に属し、ブリッシュから最も遠いコロニー「エクィテス」に入港している。

 エクィテスはブリッシュから最も遠いため、クーデターには巻き込まれてはいない。

 その為、エクィテスに駐留している騎士団はローレンスの息がかかっていない。

 エクィテスの騎士団の詰め所にルイーズはエリーゼとMS隊の隊長のシドウとウルフを連れて今後の対策の為に作戦会議を開いている。

 

「敵は恐らく、王宮を拠点に構えていると予測される。今は軍を再編しているのだろう。動きは殆ど無いらしい」

「その情報はどの程度当てになるの?」

「ブリッシュに潜伏している同士からの情報だ。まず間違いない」

 

 その情報はヒルデガードとルイーズをブリッシュから逃がしたメルヴィンからの情報だ。

 メルヴィンは未だにブリッシュに潜んでいる。

 ブリッシュでルイーズのナイトルーパーⅤを確保したが、港やコロニーの出口を完全に抑えられているため、MSを持って外に出る事が出来ない状態となっている。

 その情報も傍受される危険性がある中、送って来た物だ。

 

「敵の戦力はキャヴァリアー級が3隻にMSが約30か……随分と少ない様だが?」

「恐らく、クーデターを起こしたとは言え、完全に騎士団を掌握した訳ではないのだろう。その為、反撃を受けないようにその可能性のあるコロニーに騎士を配置しているのだと考えられる」

「となると、ここもいずれは……」

「だろうな」

 

 ここエクィテスにはクーデター軍の戦力が配置されていないが、いずれはここも抑えられるのは時間の問題だ。

 となれば、ここに長時間留まる事は出来ない。

 

「余り時間はないか……」

「だったら、こっちから打って出た方が良いんじゃないか? ここで引きこもっても戦力をこれ以上集める事は出来ないんだろ?」

 

 ウルフの言う通り、これ以上待ったところで戦力を確保するのは無理だろう。

 ならば、体勢の整っていない今の内に打って出るのも一つの手だ。

 

「しかし、向こうには先代のペンドラゴンがある。迂闊に仕掛けても無駄に被害を出すだけだ」

「けど、時間がないんだ。手をこまねいていても勝機はなくなるだけだぞ」

「私もウルフ少佐の意見に賛成ね。そのペンドラゴンがいか程かは知らないけれど、時間をかければ私達に勝ち目はないわ」

 

 エリーゼもウルフの意見に賛成し、シドウも口には出さないが反対する気はない様に見える。

 反対にルイーズはすぐに攻勢に出る事には消極的だ。

 敵にはルイーズの父、ローレンスや先代の専用MSのペンドラゴンがある為、その力を知っているルイーズは攻勢に出る事を慎重にならざる負えない。

 

「今はまだ、私達の存在を敵も知らない可能性があるわ。戦力差で劣るのであれば奇襲をかけて一気に勝負を決めるしかないわ」

 

 その作戦も時間が経ち、エリーゼ達の存在を知られれば使えない。

 ルイーズ達の状況は時間と共に勝機が減っていく。

 ルイーズもその事が理解出来るため、動かざる負えない。

 

「分かった……ではすぐに王都への奇襲を敢行しよう」

 

 ルイーズの重い腰が上がり、王都ブリッシュに対しての奇襲を敢行すべくエリーゼ達も行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

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