コロニーレーザーをめぐり戦闘が繰り広げられている頃、ブリッシュ公国の首都コロニーのブリッシュの内部にファム達はMSで侵入している。
ブリッシュには王都を防衛するためにナイトルーパーⅢが2機とメルヴィン専用の青いナイトルーパーⅤが配置されている。
それ以外はグノーシスと共にコロニーレーザー破壊の為に出向いている為、ブリッシュの守りは薄い。
「コロニーレーザーとか言うのが目的じゃなかったのかよ……」
リカルドは相変わらず、こそこそとした活動に文句を言っている。
「そっちは小父さまが直接出向いているわ」
ファム達がブリッシュに侵入しているのは本来のブリッシュに来た理由とは別の事だ。
状況が変わり、ファム達に捜索させる必要がなくなったとクライドの暗号通信が届き、それとは別の任務とその条件が届けられた。
その任務の一つがコロニーレーザー攻防戦の時に警備の薄くなったブリッシュに侵入し、ある事をしろと言う事だ。
「でもどうしてこんなことをさせるのかな?」
「さぁ? 所詮、私達は実働隊よ。全てを知る必要はないわ」
クライドからの指示は不可解だ。
少なくとも、表だって動く事のない自分達に任せる様な仕事ではない。
「とにかく、私達は私達の任務を遂行することだけを考えなさい」
ファムはそう言い機体のスタビライザーを展開して、王宮へと向かう。
「メルヴィン卿! コロニー内に高速に接近するMSが!」
「分かっている」
王宮に向かうガンダムZERO Ⅲβはすぐに王宮の防衛のMSに捕捉される。
ガンダムZERO Ⅲβは王宮の前に降り立つ。
(このMSは……成程ね)
メルヴィンは王宮の前に降り立ったガンダムZERO Ⅲβを見てある事を確信する。
「ガンダム……グノーシスの奴か?」
「いや……あのガンダムは違う」
ガンダムZERO Ⅲβは両腕にビームサーベルを展開して構える。
明らかな敵対行動であるため、ナイトルーパーⅢもマシンガンとバズーカを構える。
「敵は3型が2機と青い5型が1機……青い奴以外は確実に仕留めろか……」
ガンダムZERO Ⅲβは近い方のナイトルーパーⅢに突っ込む。
ナイトルーパーⅢはマシンガンを連射するが、ガンダムZERO Ⅲβは腕のビームシールドで防ぐ。
そして、接近すると、マシンガンの持っている右腕をビームサーベルで切り落とし、膝をナイトルーパーⅢの胴体に押し付けてニードルガンを撃ち込む。
胴体にニードルガンを撃ち込まれたナイトルーパーⅢは動かなくなり、ガンダムZERO Ⅲβはもう1機のナイトルーパーⅢに向かう。
ナイトルーパーⅢはバズーカを撃つが、ガンダムZERO Ⅲβには当たらない。
ガンダムZERO Ⅲβは掌のビームバルカンを連射しながら距離を詰めてナイトルーパーⅢの胴体に掌を押しつけてビームサーベルを展開した。
ビームサーベルはナイトルーパーⅢの胴体を貫通して、ナイトルーパーⅢは力なく崩れ落ちた。
「全く……アレが彼の隠し玉か……」
メルヴィンの青いナイトルーパーⅤは大型ヒートソードを構える。
「流石に一騎打ちでは勝ち目はなさそうだけど……やるしかないようだね」
ナイトルーパーⅤは大型ヒートソードを構えて、ガンダムZERO Ⅲβに突っ込む。
ガンダムZERO Ⅲβは両手のビームサーベルを展開し、突っ込んでくるナイトルーパーⅤの両腕を切り落とす。
ナイトルーパーⅤは勢い余りそのままうつ伏せに倒れる。
「これで障害は排除した。後は……」
「もう終わってるし」
先行していたファムにリカルドとセラフィナも追いつくがすでに戦闘は終わっていた。
「アイツに止めは良いのかよ」
「構わないわ」
クライドの指示では敵MSは確実に仕留めるように言われいるが、青いナイトルーパーⅤのみは戦闘不能に留めるように言われいる。
その為、メルヴィンのナイトルーパーⅤは戦闘不能に留めている。
「それよりも任務が優先よ……」
ファムは王宮に向かおうとするが、ふと何かを感じ取る。
「どうしたの? ファムちゃん」
「何この感じは……」
ファムはすぐに周囲をスキャンする。
そうすると、王宮に置かれているブリッシュ公国の守り神のMSの銅像に何かの反応を示している。
「おい、さっさと終わらせるぞ」
「リカルド、セラ……この銅像もついでに持ち返るわ」
「はぁ? んなもんどうする気だよ」
銅像の大きさはMSと差ほど変わらない為、持ち返るにしてもかなりの手間がかかる。
クライドからの指示にはその様な事は言われてはいない。
だが、ファムが任務で余計な事をすることはないのも分かっている。
「多分、小父さまへの手土産になるかも知れないわ」
「……たく、これは貸しだからな」
リカルドも渋々ファムの言う通り銅像をセラフィナと共に回収し、ファムもクライドの指示通りに行動する。
連邦軍の介入でクーデター軍は総崩れとなっていた。
元々、ブリッシュ公国はMSの性能では連邦軍よりも優位に立っていたが、兵の質はヴェイガンと戦争をしている連邦軍の方が上だ。
特にブリッシュ公国には艦隊戦のノウハウが連邦軍よりも少ない為、数では優位に立っていたが、次々と落とされている。
「父さんの開発したMSの流れを組んでいるMSが落とされて行くのは余り面白くはないが、俺の為だ。悪く思うなよ」
クライドはそう言いつつ、ビームライフルでナイトルーパーⅣを撃墜する。
蝙蝠退治戦役から25年の間に実戦に出る事はなくなり、肉体的にも衰えているが、改良されたガンダムZEROの性能とXラウンダー能力で十分に戦えている。
「で……どこにいんだよ。余り長い時間は戦いたくはないんだがな……」
クライドは戦場である人物を探している。
肉体の衰えから余り長時間の戦闘は体力的に持たない為、時間をかけてはいられない。
「見つけた……」
「ガンダム……あれか」
クライドはペンドラゴンを見つけて、ローレンスの方もガンダムZEROを見つける。
ガンダムZEROはペンドラゴンにビームライフルを放ち、ペンドラゴンは回避しながら、ビームランスを振るう。
ガンダムZEROはビームランスをシールドで受け止める。
「よもや、お前自ら戦場に出向くとはな」
「まぁね。何処ぞの誰かさんが勝手に動いたせいでね」
ガンダムZEROはペンドラゴンを蹴り飛ばすと、ビームサーベルを抜く。
そして、ペンドラゴンもビームランスを捨てて、腰のヒートソードを抜いた。
「それに脚本、俺、監督、俺と来たんだ。主演も俺でないとな」
ガンダムZEROはビームサーベルで切りかかり、ペンドラゴンはヒートソードで受け止める。
二機は何度も切り合いながらも、次第と戦場の中央へともつれこんで行く。
「取り合えず確認。お前は当初の予定通りに動くんだよな?」
「そう仕向けたのはお前だろう」
リッデルを襲撃したのは恐らくはクライドの息のかかった者である事はローレンスにもうすうすは気づいている。
そうすることでローレンス達に長期戦が出来ないようにし、滅びか当初の予定かどちらかを選ばせた。
そして、ローレンスは後者を選んだ。
「懸命な選択だ」
ガンダムZEROとペンドラゴンの二機は戦場で一際目立つようにぶつかり合う。
まるで、その戦闘を戦場の兵達に見せつけるかのようだ。
「だったら、上手く踊ってくれよ!」
「生憎と舞踏は苦手だ。少し手荒になっても恨むなよ」
「上等」
二機の切り合いは次第に激しさを増していく。
機体性能もパイロットの腕も実戦経験もローレンスが勝り、クライドが唯一ローレンスが持っていない為、勝っているXラウンダー能力もローレンスの実戦経験の前では無意味だが、それでも二機が互角に戦えているのはローレンスが上手く立ちまわり、クライドがそれに完璧に合わせて来ているからだろう。
「そろそろ、終幕にしたいんだけどな……流石にきつくなって来た」
「……良かろう。来い! クライド・アスノ!」
二機は一度距離を取りビームサーベルとヒートソードを構えた。
そして、一機に加速する。
ガンダムZEROとペンドラゴンは交差し、ペンドラゴンの一閃はガンダムZEROの肩の装甲に傷痕をつけ、ガンダムZEROの一撃はペンドラゴンに致命的な傷を負わせた。
「クライド・アスノ……ブリッシュ公国の民の命運……そして、姫の事……確かに託した」
「……生憎と俺はそこまで良い人じゃないけど……それでもグレアムの最後の頼みくらいは聞いてやるよ」
「そうか……」
ローレンスは最後には満足そうな笑みを浮かべ、ペンドラゴンは爆発する。
「そんじゃ、最後の仕上げにかかりますか」
クライドはオープンチャンネルを開く。
「ブリッシュ公国の全ての兵に告げる。お前たちの頭のローレンス・レミントンは俺との一騎打ちにて戦死した。その為、これ以上の戦闘行為は無意味だ。武器と捨てて投降すれば、命までは取らない。彼の死を無駄にしない為にも投降しろ」
クライドの投降勧告と同時に戦場の中央であれほど目立つ戦闘を行いペンドラゴンの爆発も確認出来ている。
それを見た兵も少なくない以上、ローレンスの戦死によって、戦場の兵士達の心を折るには十分だった。
「馬鹿な……」
その通信はルイーズの元にも届いている。
ローレンスとの戦闘で機体を大破させられ、戦闘宙域から離れたところを漂っている。
父の裏切りを自分の手でカタをつける気でいたが、ローレンスのペンドラゴンの前に敗北し見逃された。
その上、このタイミングでの連邦軍の介入からクライドに嵌められたと考えつくのは容易なことだ。
敗北や嵌められた事にショックを受けているルイーズに更に追い打ちの通信が入る。
「ルイーズ……聞こえるかい?」
ノイズ混じりだが、ブリッシュにヒルデガードの防衛を任せたメルヴィンからの通信だ。
「どうした?」
「……す……ない。ヴェイ……ンの襲……を……受……ヒル……ガードさま……が……や……た」
「どうした! 何があった!」
メルヴィンの通信にルイーズは力なく出るが、通信の内容はノイズが入り断片的であるが、ヒルデガードに何かあった事だけは理解出来た。
ルイーズはメルヴィンに事態の説明を求めるが、通信は終わる。
「くそ!何がどうなっているのだ!」
ルイーズは状況が分からない上にヒルデガードに何かあったかも知れないと言うのに何も出来ない自分の無力さを思い知るが戦闘は未だに続いている。
ローレンスの戦死でクーデター軍の士気は大きく低下し、クライドの言う通りに武器を捨てて投降する兵達も出て来ている。
だが、その反対にせめてローレンスを殺したクライドだけは許すまいと数機のナイトルーパーⅣがガンダムZEROにマシンガンを放ち襲いかかっている。
「たく……勘弁して欲しいな。この戦場での俺の出番は終わりだってのに」
ガンダムZEROはシールドで攻撃を防ぎながら、ビームライフルで応戦する。
ナイトルーパーⅣは多少の被弾は覚悟でガンダムZEROに取りついて接近戦に持ち込もうとするが、背後から撃たれて落とされる。
「技術屋がこんなところで何してんだよ」
「ウルフか……俺の方にもいろいろとあるんだよ」
ナイトルーパーⅣを落としたのはエリアルドを送り、コロニーレーザーに敵を向かわせないように足止めをしていたウルフのGバウンサーだ。
ローレンスの戦死で士気が低下していた為、アルベルトを残せば十分に足止めが出来ると判断し、クライドの援護に来ていた。
「そんな事よりも、説明はしてくれるんでしょうね?」
ウルフとの通信にグノーシスのエリーゼが割り込んで来るが、クライドはすぐにグノーシスからの通信を閉じる。
「良いのか?」
「久しぶりの実戦だし、俺も若くないからな。流石に疲れた。この状況でエリーゼの相手をすれば俺は確実に死ねる。それに……まだ、終わって無い」
「どう言う事だ?」
すでに敵の指揮官は戦死し、連邦軍の増援で勝負はついている。
だが、クライドのXラウンダーとしての感はまだ終わっていないと告げている。
「さぁな……ヴェイガンも介入して来ていないからな……油断は出来ない……そう言う事だ。俺はアマデウスに帰る」
「おい! クライド! たく……」
クライドは言う事だけ言うとアマデウスの方に戻っていく。
「つまり、我々はアスノ司令の指示でアスノ大佐の支援の為に来たんですよ」
クライドに通信を切られたエリーゼはアマデウスの方に状況の説明を求めていた。
すでに戦闘に介入する前にビッグリングからの指令書はアマデウスにも届いている。
その為、アルグレアスはエリーゼに模範的な回答で返す。
「分かったわ。支援に感謝するわ」
エリーゼもクライドが意図的に情報を伏せていた事に腹を立てるが、恐らくはアルグレアスもクライドに振りまわされた一人であるのと
同時にアルグレアス達も友軍である事には変わらない為、これ以上アルグレアスを問い詰める必要もない。
「艦長! センサーに反応! ヴェイガンのMSです!」
「数は13! うち一機は例の青い新型機です! コロニーレーザーに向かっています!」
「やってくれるわね」
このタイミングでヴェイガンが出て来ると言う事はヴェイガンも狙いはコロニーレーザーで、クーデター軍と自分達の戦闘がある程度は終結したところを狙っていた可能性が高い。
「やられましたな……」
「その様ね。うちのMSはウルフ隊の二機しか向かわせる事は出来ないわ。そちらで頼める?」
「分かりました。こちらで何とか対処します」
敵の戦意を大きく削いだとは言え、完全に敵が武装を解除した訳でもなく、まだシドウ隊の4機はグノーシスの防衛を行わなくてはならな
い。
増援の連邦軍はクーデター軍もルイーズ配下の部隊も全てブリッシュ公国と纏めている。
その為、戦闘開始当初友軍であったキャヴァリアー級も今では敵となっている。
「と言う訳ですので、アスノ局長ももう少し頼みます」
「無理」
ヴェイガンの接近をクライドに伝え、クライドにももう少しの間だけ戦線にいて貰おうとするが、クライドは即答で断った。
すでにクライドのシナリオではこの戦闘での自分の役目は終わっている為、これ以上戦場にいる気はない。
「そこを何とか出来ませんか?」
「出来ないな」
アルグレアスも食い下がるが、クライドにはその気はない様だ。
「と言いたいんだが……面倒なのが食いついて来た」
クライドはそう言って通信を切る。
感覚的にクライドにはマリオンの接近を感知している。
それと同時にマリオンが厄介な敵である事もだ。
「ローレンス・レントンと戦う事が出来なかったのは残念であったが、まさかあのガンダムと出会う事が出来ようとはな!」
マリオンのティアーズはコロニーレーザーの奪取を部下に任せてアマデウスに帰投途中のガンダムZEROに向かっている。
「ここでクライド・アスノを仕留めておけば後々、優位になる。ついでに兄上の仇も取らせて貰う!」
ティアーズはティアーズガンブレイドを連射し、ガンダムZEROはシールドで防ぎながら、ビームライフルで反撃する。
「報告にあった新型機か……」
「確かに兄上に匹敵するXラウンダー能力を持っているようだ。しかし、年老いた今の貴様の力なぞ恐れるに足りん!」
ティアーズはビームを回避しながら、接近戦に持ち込もうとするが、ガンダムZEROはビームライフルを放ちながら距離を取ろうとする。
すでにティアーズとの戦闘データはクライドも目を通している。
そこからティアーズは近接戦闘を重視したMSであるとクライドは考えている。
只でさえエリアルドのガンダムZERO Ⅲαと互角以上に戦える能力を持っている以上、まともに戦いたくはない。
「ウルフ! コイツの相手は頼めるか?」
「無理だ! こっちも手一杯だ!」
ウルフもウルフでコロニーレーザーに向かおうとするドラドの相手で手一杯であるため、援護の期待は出来ない。
他の連邦軍のMSも同様だ。
その為、クライドはマリオンを一人で相手にしなければならないようだ。
「本当に勘弁してくれ……」
「お前はここで仕留めさせて貰う!」
ティーアズは胸部のビームバスターを放つ。
ガンダムZEROは回避し、ビームライフルで反撃しティアーズは腕の電磁装甲でガードする。
「何だ……この嫌な感じは……コイツらじゃないのか?」
クライドはマリオンと交戦しながらも、先ほどから感じている嫌な感覚が離れない。
すると、クライドとマリオンは不意に強い敵意を感じる。
それと同時に多数のビームが戦場に降り注ぐ。
「おいおい! 敵の増援か?」
「違う」
ウルフはヴェイガンの新たな増援かと思うが、この攻撃は連邦軍だけでなく、ヴェイガンのMSやブリッシュ公国のMSにも攻撃している。
「一体何だと言うのだ!」
そして、各機のレーダーに多数のMSの反応が現れる。
それは連邦軍のMSやヴェイガンのMSのメインカメラとは違いブリッシュ公国のナイトルーパーやザラムやエウバのMSのメインカメラと同タイプのモノアイをしており、ジラに酷似している。
カラーはジラとは違いモスグリーンで統一され、両肩にはL字のシールドを装備している。
そのMSの手にはビームマシンガンが持たれ、先ほどからの攻撃はそのMSの攻撃であると推測される。
「何だあのMSは?」
「あれは……まさか、ゼイ・ドゥかよ……初めて見た」
どうやら、クライドは乱入して来たMSに見覚えがあるようだ。
「知っているのか? クライド」
「ああ……アイツは多分、『ゼイ・ドゥ』コロニー国家間戦争終盤に投入されたMSだ。俺も実物を見るのは初めてだ」
クライドの言う通りあのMSはゼイ・ドゥで間違いはない。
ゼイ・ドゥはコロニー国家間戦争の終盤に投入された量産型MSでザラムの量産型MSであるジラの流れを組むMSだ。
クライドはゼイ・ドゥの実物を実際に見る事が出来て興奮気味だ。
コロニー国家間戦争終結時に締結された銀の杯条約でゼイ・ドゥも全てが廃棄処分となった為、実機はすでに見る事が出来ず、それを再製造する事が可能な施設はすでに地球圏には存在していない。
その為、クライドも記録でしかゼイ・ドゥを見た事は無かった。
「それで、そのゼイ・ドゥとやらに強さはどうなんだ? 分かるか?」
「当然だ。コロニー国家間戦争終盤に投入されただけあって高性能だ。その上、量産コストも低く整備も手間がかからず、操縦性も癖がなくルーキーからエースにまで戦場では幅広い層から愛されたMS史に残る名機だ」
クライドは記憶の中のゼイ・ドゥのデータをウルフに説明するが、どれも余り良い情報とは言えない。
そして、ゼイ・ドゥは本格的に戦闘に介入してくる。
ゼイ・ドゥは手持ちのビームマシンガンを連射し、腕の電磁装甲でガードするドラドを易々と蜂の巣にする。
また別のゼイ・デゥは腰に装備されているビームホークでドラドを胴体から両断する。
アデルのドッズライフルをゼイ・ドゥは肩のシールドであっさりと防ぎ、シールドに内蔵されているミサイルでアデルを破壊する。
数こそは少ないがゼイ・ドゥは圧倒的な性能で連邦軍とヴェイガンのMSを蹂躙して行く。
「ふざけやがって……」
Gバウンサーもドッズライフルでゼイ・ドゥを攻撃するも、ゼイ・ドゥは回避する。
ゼイ・ドゥはGバウンサーの攻撃を回避しならGバウンサーにビームマシンガンを連射しながら接近する。
Gバウンサーも得意の高速戦に持ち込むがゼイ・ドゥとの距離は開く事もない。
「Gバウンサーの機動力について来やがる!」
「当然だ。ゼイ・ドゥは汎用型MSではあるが当時にMSの性能を考えれば当たり前だ」
ゼイ・ドゥが開発されたのは大昔の話だが、当時にMSの性能は現在のMSの性能を遥かに凌駕していた。
その為、現在の高機動型MSのGバウンサーの機動力は昔の汎用型MSのゼイ・ドゥと対等でしかないと言う事だ。
「まぁ、昔のMSと今のMSの基本性能の差は圧倒的だが、昔のMSにはドッズライフルやシグルブレイドの様な武器は開発出来て無かったからその辺りは今のMSの方が優位だ」
クライドはウルフに講釈をするが、ウルフには聞いている余裕はない。
Gバウンサーはゼイ・ドゥのビームホークをシールドで受け止める。
「昔のMSだか何だか知らねぇが……いつまでも好き勝手にやれると思うなよ!」
Gバウンサーはドッズライフルをゼイ・ドゥの装甲に押し付けて放つ。
零距離からの攻撃を回避することが出来ずにゼイ・ドゥはドッズライフルの直撃を受ける。
流石のゼイ・ドゥもドッズライフルの直撃に装甲が耐える事が出来ずに破壊された。
「昔の名機つっても、ビームが当たれば落とせるって事か」
何とかゼイ・ドゥを撃破したウルフはそう確信する。
25年前にAGEシステムが導きだしたドッズライフルはコロニー国家間戦争時に開発されたMSに対しても十分に有効な武器と言う事だ。
少なくとも、ガフランに攻撃を直撃させても無傷だった頃に比べればMSの性能に差があろうとマシだ。
「勿体ない事をする……せめて一機は鹵獲したところだ」
クライドは本来は製造出来ない筈のゼイ・ドゥの出所と共に今まではデータでしか知る事の出来なかった過去の名機に興味があり、鹵獲しじっくりと研究をしたいと思っているがウルフ程のパイロットでも何とか落とせるレベルであるため、一般の兵にはゼイ・ドゥを鹵獲はおろか撃墜することすら難しい。
ウルフも友軍の援護をしながら戦闘している為、ゼイ・ドゥを撃破するのは至らない。
そして、クライドものんびりと戦闘を見物している訳にも行かなかった。
ゼイ・ドゥの乱入で戦場も混乱していたが、ゼイ・ドゥが連邦軍でもヴェイガンでもブリッシュ公国でもない敵であると共通の認識が生まれた為、共闘とまでは行かないが、ゼイ・ドゥも敵として戦闘が続いている。
混乱が収まり、ガンダムZEROにマリオンのティアーズが再び襲いかかって来る。
「予想外の乱入が入ったが、仕留めさせて貰う」
「やっぱそうなるよな……」
二機は対峙するが、更なる横槍が入る。
今度は明確な攻撃と言う訳ではないが、Xラウンダーである二人には無視の出来ない強烈な感覚を感じる。
「なんかやばいな……」
「何だ……これは……」
二人はモニターにその感覚のする方向をアップする。
「マジかよ……ゼイ・ドゥだけじゃなくてこんなのまで……」
「……黒いガンダムだと……」
アップされたモニターには黒いガンダムと思われるMSが映されている。
ガンダム特有のツインアイに額のV字のアンテナはクライドのガンダムZEROと酷似しているが、全身が黒一色で統一されている。
両腕に円盤状のシールド、右肩に大型のビームランチャーを装備している。
機体の色が黒一色と言うだけでなく、黒いガンダムからは異様な気配を感じる。
それは殺気の様な敵意だけではなく、普通の人間が乗ったMSからはまず感じる事のない強い狂気をクライドとマリオンも感じ取っている。
その為、二人は黒いガンダムから目が離せないでいる。
下手に目を離した瞬間に殺られる……そんな印象を黒いガンダムから受け緊張感が漂う。
黒いガンダムは左腰のアーマーに内蔵されているビームサーベルを抜いた。
明らかに戦闘の意思の取れる行動に二人の緊張感が更に強まる。
そして、黒いガンダムはクライドとマリオンの反応の出来ない速度でガンダムZEROとの距離を詰めた。
「なっ!」
「馬鹿な!」
黒いガンダムは右手のビームサーベルを振り上げる。
クライドはとっさに左腕のシールドでその一撃をガードするが、シールドはあっさりと真っ二つにされた。
黒いガンダムの一撃を何とか凌いだかと思われたが、黒いガンダムは空いている左腕でガンダムZEROの胴体を殴り付けた。
「なんてパワーをしてるんだよ!」
ガンダムZEROの胴体は黒いガンダムの一撃で目に見えてへこんでいる。
幸い、コックピットに影響はなかったが、この25年で装甲も強化されているにも関わらず、武器を持っていない素手でガンダムZEROの装甲をへこませている。
ガンダムZEROは殴り飛ばされながらもビームライフルを放つが黒いガンダムは腕のシールドで防御する。
「奴の狙いもガンダムか……」
あの状況で真っ先にガンダムZEROを狙ったのだ、その可能性が高い。
黒いガンダムはガンダムZEROを追撃し、再びビームサーベルを振るう。
先程とは違い、黒いガンダムの機動力が異常に高い事を知っている為、今度は反応が出来たので何とか回避する事が出来た。
「あの黒いガンダムが何なのかは気にはなるが……どう見ても勝ち目はないな……さて、どうやって逃げるか……」
この少しの戦闘で黒いガンダムの性能は大まかに把握出来た。
大体の性能はガンダムZERO Ⅱとほぼ同性能であろう。
クライドが自重することなく設計したガンダムZERO Ⅱの性能と大差がないと言う事は現状で勝ち目はない。
黒いガンダムはガンダムZEROに襲いかかろうとするが、マリオンのティーアズがティアーズガンブレイドで牽制する。
「クライド・アスノを助けるのは癪だが、それ以上にお前は野放しには出来んようだ」
マリオンも黒いガンダムのパイロットから放たれる異常な気配に本能的にクライドよりも先に倒すべきだと感じている。
黒いガンダムはティアーズの攻撃を避けながら、ガンダムZEROに突っ込んで行く。
「あくまでもガンダムを狙うか!」
ティアーズはティアーズガンブレイドを連射しながら黒いガンダムを追いかける。
「共闘するしかないか……」
黒いガンダムの性能はガンダムZEROとは段違いであるため、気が進まないがこの場はマリオンと共闘するしかない。
ガンダムZEROはティアーズの攻撃を回避した黒いガンダムの動きに合わせてビームライフルを放つが、黒いガンダムは二方向からのビームを完全にかわしている。
ティアーズも後から黒いガンダムを追撃していると、不意に黒いガンダムは急制動をかける。
ティアーズと黒いガンダムとの距離は一気に縮まると黒いガンダムは反転してティアーズに対してビームサーベルを振るう。
黒いガンダムの不意を突いた一撃をティアーズは何とかかわすが、黒いガンダムの左腕の円盤状のシールドがスライドして手の部分に移動すると、シールドに内蔵されていた5本の爪が姿を現す。
まるで巨大な腕の様な形になり5本の爪が超振動を起こす。
そして、黒いガンダムはティアーズに巨大な手を振るう。
超振動を起こしている爪はティアーズの装甲を易々と砕き、ティアーズの下半身を粉砕した。
だが、ティアーズも負けじと胸部のビームバスターを至近距離から放つが黒いガンダムの左手のシールドで防がれた。
「馬鹿な!」
「化け物かよ……あのガンダムは!」
ヴェイガン製のMSの装甲を易々と砕く攻撃力にビームバスターを至近距離で防ぐ防御力、そしてXラウンダーの反応速度でようやく追いつく事の出来る機動力。
どの能力も既存のMSを遥かに凌駕している黒いガンダムにクライドもマリオンも戦慄を覚える。
だが、黒いガンダムは右肩の大型ビームランチャーをティアーズに構える。
ガンダムZEROはその隙をついてビームサーベルを抜いて黒いガンダムの背後を取った。
「後ろがガラ空きなんだよ」
「取ったか!」
ガンダムZEROの背後からの攻撃を黒いガンダムは後にも目が付いているかの如く最低限の動きでかわすとガンダムZEROもティアーズと共にビームランチャーの射線に入る。
黒いガンダムはビームランチャーを放ち、ガンダムZEROは目の前のティアーズを踏み台にしてビームの射線から外れる。
ガンダムZEROに踏み台にされた事でティアーズも射線から外れて二機は難を逃れる。
二機に避けられたビームは射線上のナイトルーパーⅣやドラド、連邦軍のMSを破壊し更には連邦軍のダーウィン級の戦艦をも轟沈させた。
「勘弁してくれ……」
ヴェイガン、ゼイ・ドゥや黒いガンダムの乱入でコロニーレーザーをめぐる戦闘が混乱する中、エリアルドはコロニーレーザーまで到達していた。
コロニーレーザーに到達したガンダムZERO ⅢBは砲門から内部に突入する。
内部に突入すると、すぐにコロニーレーザーの管制らしき場所を探す。
コロニーレーザーの元となったコロニーの形状から、管制になっていると思われる場所を特定する事は容易い為、すぐに幾つかの場所を割り出した。
場所を特定するとガンダムZERO ⅢBは持っていたスーパードッズライフルを投げ捨て、バックパックのフォトンブラスターライフルを肩に担いで構える。
「エネルギー充填率……80%……もう少しだ」
出撃してから、ここまでの道中に移動と戦闘に支障のないレベルでフォトンブラスターライフルのエネルギーをチャージしていた為、発射までの時間は差ほどかからない。
「早くしてくれよ……」
エリアルドも先程から嫌な感じを感知している為、その少しの時間がとても長く感じている。
程なくしてフォトンブラスターライフルのチャージが終わる。
「終わった……これで!」
エリアルドは引き金を引くとガンダムZERO ⅢBの担いでいるフォトンブラスターライフルが放たれる。
その一撃は目標に命中するとガンダムZERO ⅢBはフォトンブラスターライフルを動かして、コロニーレーザーを内部から破壊して行く。
コロニーレーザーを破壊して行き、チャージしてエネルギーを全て使い切ったフォトンブラスターライフルの掃射は終わる。
掃射が終わるとフォトンブラスターライフルの攻撃でコロニーレーザー内部から爆発が起き、その爆発で内部の所々が誘爆して行く。
攻撃目標に対しての攻撃が終わった事を確認すると、誘爆に巻き込まれる前にエリアルドはコロニーレーザーから離脱し、嫌な感じのする戦場へと戻っていく。
コロニーレーザーが破壊された事は戦場でも確認出来た。
コロニーレーザーが破壊された事で戦闘理由を失ったヴェイガンは撤退を始め、それに伴いゼイ・ドゥも後退を開始している。
だが、黒いガンダムは必要にガンダムZEROを狙っている。
「コロニーレーザーは落ちたってのに!」
ガンダムZEROは黒いガンダムにビームライフルを放つが当たらない。
いつの間にか大破したティアーズもドラドが回収して撤退してしまったため、クライドは一人で黒いガンダムの相手をしなければならない。
「お前は何なんだよ!」
クライドは黒いガンダムから異常な狂気と同時に自分に対する強い執着や執念も感じている。
だが、体力も限界に近付きつつあるため、余計な事を考えている余裕はない。
今はこのまま耐えて時間を稼げば戦闘が終結した友軍の援護が来る筈であるので今はひたすら耐えるしかない。
ガンダムZEROはビームライフルを連射して黒いガンダムを寄せ付けないようにするが、余り効果もなく接近を許してしまう。
黒いガンダムはビームサーベルを振り下ろして、ガンダムZEROの右腕をビームライフルごと切り落とした。
ガンダムZEROは左手にビームサーベルを持つが、黒いガンダムの左手の巨大な手に掴まれて肩から左腕を引き千切られる。
「流石に不味いな……」
両腕を破壊され、残された抵抗の手段は頭部のビームバルカンくらいしかない。
ガンダムZEROはビームバルカンを放ち、最後の抵抗をするが当然の事ながら黒いガンダムには無意味だった。
黒いガンダムはビームサーベルを振り下ろして、ガンダムZEROに止めを刺そうとしたが、複数のゼイ・ドゥが黒いガンダムに取りついた。
黒いガンダムは少し抵抗するが、やがて抵抗が収まると同時に機体の機能が停止したのが動かなくなる。
動かなくなった黒いガンダムはゼイ・ドゥに連れられて後退して行った。
その一連の出来ごとをクライドは茫然を見ていた。
出て来たタイミング的にゼイ・ドゥの一団と黒いガンダムは何かしらの関係がある事は間違いない。
だが、ゼイ・ドゥは黒いガンダムがクライドを殺すチャンスを止めるかのように黒いガンダムの動きを止めた。
黒いガンダムは明らかにクライドを狙っていた。
そして、現在の技術レベルでは製造の出来ないゼイ・ドゥや圧倒的な性能を持つ黒いガンダムの乱入。
クライドの書いた筋書きにはなかったイレギュラーだ。
「クライド! 生きてるか?」
「ああ……何とか」
ヴェイガンが撤退した事でウルフがクライドのところに駆けつけるがすでに戦闘が終わり、両腕を破壊されたガンダムZEROが漂っているだけだった。
ブリッシュ公国のクーデターは連邦軍やヴェイガンも加わりコロニーレーザー攻防戦を持って終結した。
この戦いに勝利したのはコロニーレーザーの破壊に成功した連邦軍ではあったが、コロニー国家間戦争後期のMS「ゼイ・ドゥ」や黒いガンダムを所有する謎の敵の出現などもあったが、ブリッシュ公国が連邦軍の前に敗北したと言う事実だけが後の歴史に残る事実となった。