機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

46 / 155
第44話

ビッグリングや連邦政府を震撼させた、ブリッシュ公国による恫喝行為は声明よりおおよそ20時間……約1日でコロニーレーザーが破壊され、ブリッシュ公国の完全な敗北で幕を閉じた。

 その後、連邦軍は派遣した艦隊で完全にブリッシュ公国の首都、ブリッシュを制圧しブリッシュ公国全体の掌握を数日で殆ど完了していた。

 

「これが今回の事件の報告です。アスノ司令」

 

 アルグレアスは今回の一件の報告をビッグリングのフリットに報告していた。

 

「脅迫の声明を出したローレンス・レミントンは戦死、そして、主犯の一人のエイブ・ノートンもコロニーレーザー破壊に巻き込まれて死亡か……」

「確証はありませんが捕虜の話によればそうであると」

 

 すでにブリッシュ公国の主だった軍人や国の上層部を戦犯者として逮捕、拘束している。

 その中でコロニーレーザーから脱出した技術者の話によればエイブは一人でコロニーレーザーに残っていたと言う。

 

「その上、我々がコロニーレーザー破壊作戦時にブリッシュにトルディアで奪われた新型ガンダムとゼダスタイプのMSの襲撃でブリッシュ公国の国王であるヒルデガード・ブリッシュの行方は不明となっていますが、状況的に生存は絶望的かと思われます」

 

 戦闘中にファム達が王宮を襲撃の際には王宮は破壊されており、王宮の地下のシェルターも完全に破壊されていた為、ヒルデガードの遺体を確認することは出来ないが、状況的に生きている可能性は限りなくゼロに近い。

 

「それでコロニーレーザーの方はどうだ。修復し我が軍の兵器として使えそうか?」

「すでにアスノ局長が調査した結果、コロニーレーザーは老朽化も激しく、破壊前から1度撃てば実質的には2発目は撃てないようでした。もしもそれを修復するとなれば、相当の資金や資材、人員を投入する必要があるかと……」

 

 フリットはコロニーレーザーはヴェイガンとの戦争に使えないかと思っていたが、それはすでにアルグレアスがクライドに可能かどうかと確かめていた。

 しかし、コロニーレーザー自体、作られたのは100年以上も昔で、ブリッシュ公国はそれを使えるように保守していたが、それも1度限りで2度目以降は使用までの時間がかかり過ぎる為、実質的には一度しか使えない兵器であった事が判明している。

 そのコロニーレーザーを修復するにも必要な物が多過ぎる為、ヴェイガンでの戦争中の今となっては殆ど使えない兵器に回す余裕も軍にはない。

 

「ならば、コロニーレーザーはヴェイガンに使われないように完全に破壊させろ。それとアスノ局長は今どうしている?」

「局長なら、コロニーレーザーの調査を早々に切り上げて、オーヴァンから人員を呼び寄せて今はブリッシュ公国のMSの調査をしています」

「分かった。私はこれからビッグリングを出る用事がある。アルグレアスはすぐにビッグリングに戻って欲しい。すでにお前の代わりの人材は選出して向かわせている。それが到着次第、アマデウスで帰投してくれ」

「了解です」

 

 アルグレアスは通信を閉じると引き継ぎの準備に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうすりゃいんだ? コレ……」

 

 グノーシスの格納庫で運びこまれたガンダムZEROを見上げてジゼルはそう言う。

 すでにグノーシスの搭載機の補修と整備は殆ど終わっている。

 そんな時にアマデウスからガンダムZEROが運び込まれて来た。

 ガンダムZEROはコロニーレーザー攻略作戦時に謎の黒いガンダムとの戦闘で両腕を破壊されている。

 あれから数日経っているが、修理がされていない。

 

「コイツはそのままで良い」

「アニキもグノーシスに?」

「まぁな。こっちは他の奴に任せとけば良いからな」

 

 オーヴァンからはクラリッサが手の空いていたマルガリータやジェラール、その他数名の技術者を派遣している。

 すでにクライドはブリッシュ公国の主要なデータベースにアクセスし、目的のEXA-DBに関する情報が全くなく、そこから連邦が手を出さなかったのはブリッシュ公国の戦力を過小評価していた為と判断した。

 ブリッシュ公国に伝わる古代兵器もコロニーレーザーだった事も記されていた。

 残りはナイトルーパーⅣ、ナイトルーパーⅤのデータ収集だが、これまでのグノーシスの搭載機の戦闘記録からある程度、データは集まっている為、後は他のスタッフに任せても良いと判断した。

 

「そんで、このゼロは当分戦闘で使うつもりはないから、このままで良い」

 

 今回はローレンスとの死闘を文字通り演じる為にガンダムZEROを持ちこんだに過ぎない。

 その為、それが終わった今となってはすぐに直す必要はなかった。

 

「んじゃ、ゼロはこのままにしとく」

 

 どの道、ガンダムZEROの修理用のパーツは積みこまれていない為、修理も出来ないのでジゼルもクライドの指示通りにガンダムZEROはそのままにして他のMSの整備の指示を出す。

 

「ここにいやがったか。クライド」

「ウルフ……どうした」

 

 格納庫にやって来たウルフはクライドを見つけると有無を言わさずにクライドの首のねを掴んでグノーシスの艦内に連れて行く。

 未だに現役でパイロットをしているウルフに腕力で敵う訳もなく、クライドは大人しくウルフに艦長室まで連れて行かれる。

 艦長室にはエリーゼが待ち構えていた。

 

「連れて来たぞ」

「御苦労さま。それで、クライド……貴方をここに連れて来た理由は分かってるわよね?」

「知らん」

 

 エリーゼの問いにクライドは即答かつ簡潔に答えた。

 クライドはエリーゼの聞きたかった事に対する答えで言ったが、その答えはエリーゼの問いに対しての回答ともなってしまう為、元より機嫌の悪かったエリーゼに更に火をつける結果となる。

 

「アンタね……」

「知らんもんは知らん」

「取り合えず、エリーゼも落ち着けって」

 

 話がかみ合わず、口論に発展しそうだったところをウルフがエリーゼを宥める。

 

「クライドだって連れて来られた理由くらいは分かってる筈だ。その上で知らないって事だろ?」

 

 クライドの性格上、無駄な事を省く事は多々ある事をエリーゼも思い出し、何とか自分を落ちかせる。

 

「取り合えず分かっている事は?」

「あのMSはゼイ・ドゥってコロニー国家間戦争時の終盤に投入されたMSである事は間違いない。けど、そいつを地球圏で製造する事は不可能だ」

「特研でも無理なのか?」

「無理だな。出来たらとっくに製造してる。多分、マッドーナ工房でも無理だろうな」

 

 現在の地球圏において特研とマッドーナ工房は最高レベルの技術力を持っている為、その二つでも製造が出来ないと言う事は実質的には地球圏でゼイ・ドゥを製造する事は不可能と言う事になる。

 

「設計データや廃棄を逃れた機体は探せばあるかも知れんが、実戦可能な状態であれだけの数が残っていたとは考え難い。特研やマッドーナ工房でも外見だけなら同じMSを製造する事は出来るが、先の戦闘を見る限りでは性能も当時のままだ」

「ヴェイガンが製造したって可能性は?」

 

 連邦軍や民間の工房で作れないとなると、地球よりも優れたMS開発の技術を持つヴェイガンで製造された可能性が残される。

 先の戦闘でドラドやティアーズを破壊したのはゼイ・ドゥや黒いガンダムがヴェイガンのMSでないと連邦軍に思わせる為にわざとやった可能性も否定は出来ない。

 

「ないな。連中の仲間だと思われる黒いガンダムはヴェイガンの新型機をぶっ壊してる。ゼイ・ドゥや黒いガンダムをヴェイガンでないと見せかけたかったとしても新型機をあそこまで破壊する理由はない」

 

 そうしたかったのであれば、無人機としたガフランでも破壊すれば良い。

 ざわざわ、新型機のティアーズや主力量産機のドラドを破壊する必要はない。

 よってゼイ・ドゥや黒いガンダムはヴェイガンのMSでないと思われる。

 

「それに新型のパイロットも演技をしているって感じはしなかった」

 

 更に言えば、クライドはあの時、ティアーズのパイロットのマリオンは演技でクライドと共闘し黒いガンダムと戦ったような感覚はしなかった。

 寧ろ、クライドと戦うよりも黒いガンダムの異常性を感知しての行動に思えた。

 

「その黒いガンダムに心当たりは?」

「全くない。あのガンダムは俺のゼロともフリットのガンダムとも全く違う技術体系や設計思想の元で開発されている。そんで性能はゼイ・ドゥやヴェイガンのMS、うちで開発したMSとは段違いの性能を持ってた」

 

 クライドも戦闘データを検証したが、黒いガンダムに使われている技術は未知の部分が大きい。

 クライドの持つ、過去の戦争時の兵器データの中に黒いガンダムに使われている技術の一端が記されているかも知れないが、情報が膨大な上に明確な情報もないため、そこから探し出すのは困難だ。

 

「つまりは何も分からないって訳か……」

「まさにアンノウン・エネミーって訳だ」

 

 クライドは軽く言うが事は笑話では事ではない。

 只でさえもヴェイガンとの戦争はヴェイガンの側に傾きつつあり、特研で開発されたガンダムZERO Ⅲβは奪われている。 

 その上、ヴェイガンのドラドを上回る性能を持つ量産機と謎の黒いガンダムを持つ第3勢力の存在が出て来た。

 

「そいつらの事はおいおい調査するとして、グノーシスには俺をアーヴィンにまで連れて行って貰う」

「アーヴィンに? 何でまた……」

 

 アーヴィンと言えばエリーゼの故郷でクライドとエリーゼが初めて出会ったコロニーだ。

 

「俺もいろいろとあるんだよ。アマデウスはビッグリングに戻るから、代わりにグノーシスに乗っけて貰う事にしたから」

 

 クライドはエリーゼ達に大した説明をする事なく、グノーシスの次の行き先を決定し、クライドが決めた以上変更する事なく無理な為、グノーシスは出港の準備を終えると、アーヴィンへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コロニーレーザーの奪取に失敗したヴェイガンもブリッシュ公国を離れてヴェイガンの拠点の一つ、宇宙要塞「ドラゴンファクトリー」への帰還の途中だった。

 コロニーレーザー奪取の際に、予想外の乱入により大きな被害を受けたファ・ボーゼ級は連邦軍と鉢合わせしないように光学迷彩を展開して航行している。

 

「コロニーレーザーを奪取出来ないばかりか、機体を大破させて、兵も無駄死にをさせた私は無能だな」

 

 マリオンはコロニーレーザー奪取作戦の失敗を思いだし、自傷気味にそう言う。

 しかし、連邦軍でもない第三勢力の介入や高性能のガンダムタイプのMSの存在の予測など、事前に何の情報もなければ予測して対策を立てるなど不可能だ。

 

「あれは、仕方がない事です」

「分かっている」

 

 それはマリオンも分かっているが、兵を失い作戦も失敗した以上、指揮官としては仕方がないで済む問題ではない。

 

「私のティアーズの損害は?」

「この艦では修理は無理だそうです」

 

 ファ・ボーゼ級にもティアーズの修理用のパーツは積んではいるが、今回は機体の下半身が丸々破壊されている為、ファ・ボーゼ級に積んでいるパーツでは修理が出来ない。

 マリオンもその事は分かっているようで、対して気にした様子はない。

 

「そうか……ならば、我々は予定通りドラゴンファクトリーに帰還する。戻ったらすぐにティアーズに修理をさせる。それと、例のティアーズの武装強化案を行うように向こうに通達しておけ」

 

 マリオンの専用機のティアーズは少し前に技術部より、武装強化案が提出されていたが、マリオンはティアーズの強化よりもティアーズの姉妹機の開発を優先させていた。

 しかし、ヴェイガンの最新鋭機のティアーズを圧倒する黒いガンダムの出現などから、ティアーズ自身の強化も必要だと感じていた。

 

「分かりました。技術部には伝えておきます」

「うむ。エルピディオの方にもこちらで起きた事を伝え十分に警戒するように伝えておけ」

 

 第三勢力の目的は分からないが、連邦でもヴェイガンでもなく両者に敵対する行動を取った以上、マリオンは第三勢力を敵として認識している。

 目的が分からない以上、別の作戦を進行中のエルピディオの方にも妨害に現れるかも知れない。

 予め来るかも知れないと警戒していれば、コロニーレーザー奪取作戦の時の様な失態を犯す事もないだろう。

 マリオンの指示でエルピディオにも第三勢力の情報が渡り、マリオン達はドラゴンファクトリーへと帰還して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クライドを乗せたグノーシスは元より距離があった訳でもなく、ヴェイガンや海賊などの反政府勢力との遭遇をすることなく、無事にアーヴィンに辿りついていた。

 アーヴィンに接近すると事前に入港する事がアーヴィンの管制に伝わっている為、細かい手続きなどを省いて入港の許可が出てグノーシスは宇宙港に入港する。

 アーヴィンは今でも学園コロニーとして有名でそこからは連邦軍内外に優秀な人材を輩出している。

 

「今回は騒動もなく、目的地に辿りつきましたね」

「全くよ」

 

 トルディアを出港してからは、単艦で敵に仕掛けたり、他国のクーデターに巻き込まれて巨大兵器の奪い合いと次から次へと騒動に巻き込まれて来たが、今回は無事に目的地に着く事が出来た。

 

「後は任せたわ。アーノルド」

 

 エリーゼは艦の指揮をアーノルドに任せるとブリッジを離れる。

 その後、クライドに同行する事になっている。

 クライドに同行したエリーゼは連れて来られたのはコロニー内で最も大きな屋敷、即ちエリーゼの実家のブランシャール邸だ。

 ブランシャール邸に到着すると物々しい出迎えの元、応接室に案内された。

 実家に帰って来たと言うのに応接室に通される事にエリーゼは何とも言えない感じだが、クライドは気にする様子もなく、応接室のソファーに座りこんでいる。

 

「待たせたね……おお、今日はエリーゼも一緒か」

 

 少し待つと応接室に入って来たのはエリーゼの父、パトリックだ。

 パトリックはすでに高齢でありながらも、現役でブランシャール運送の社長を務めている。

 ブランシャール運送も今までは連邦の加盟していないコロニー間が主な運送先だったが、今ではそれ以外でも社員を軍に出港させて、補給物資などの運送で更に会社を発展させている。

 

「丁度暇そうだったんで、俺の代わりにする為に連れて来たんですよ」

「どう言う事よ?」

 

 エリーゼは面倒事を押しつけるクライドに暇呼ばわりされた事に抗議しようとしたが、それ以上にクライドは気になる事を言っていた。

 

「エリーゼには言ってないのか?」

「言ってませんよ。言えば道中でいろいろと五月蠅いですしね」

 

 エリーゼはアーヴィンにクライドが用があるからと言っていたが、どうやら本命は自分をここに連れて来る事だったらしい。

 

「君たちは相変わらずのようだな」

「ほんとですよ」

「どこでも妻は強い物だよ。うちの家内もだな……」

「マジですか。その辺りは遺伝なんですかね」

 

 自分をそっちのけで妻の愚痴で盛り上がる父と夫を前にエリーゼも我慢の限界にきている。

 

「それで……私を代わりにするとか言っていたけどその辺りを説明して貰えるのよね。クライド」

「仕方がないな」

 

 ヤレヤレと言って説明をしようとするクライドに本気で切れたくなるが、理由を聞いてから切れても遅くはないと自分に言い聞かせてエリーゼは耐える。

 

「明日の夜に政財界や軍のお偉いさんが集まって夜会が開かれるんだよ。俺も義理とは言えブランシャール運送の社長の息子だろ? 今までは適当に仕事を理由に欠席してたけどさ、そろそろその言い訳も出来そうにないんだよ。でも俺はそんな面倒な事はしたくない訳だ。そこで社長の実の娘のエリーゼを俺の代わりに出席させようって魂胆だ。オプションとして社長の孫のユーリアかエリアルドも出席させれば文句無しだ」

 

 戦争中とは言え、政財界や軍の上層部は度々、無意味に金のかけたパーティーを開く事は多々あり、それにブランシャール運送の社長であるパトリックが招待される事もあるのは分かる。

 その義理の息子のクライドは社会的にもそれなりの地位を持っている為、同時に招待される事も珍しい訳でもない。

 だが、クライドはそんなパーティーになど全く興味がない。

 本来なら、そのパーティーで政財界や軍の上層部とのパイプを作るのが参加の目的だが、すでにクライドには独自のパイプを様々な方面に持っているため、参加する気など毛頭ない。

 しかし、招待されて何度も断っていれば印象も悪くなる。

 周りの印象を気にしないとは言え、自分の研究に支障が出る事は好ましくないため、自分の代わりにエリーゼを出席させようと言う事だ。

 

「私も上司のせいで忙しいんですけそね」

「安心しろ。すでにその上司の許可も取ってある。そう言う訳だ。後は任せた」

 

 エリーゼの皮肉をクライドは気にする事はない。

 そして、クライドは席を立つと応接室を出て行く。

 残されたエリーゼは諦めてパトリックから詳細の説明を受ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず好き勝手しているようだな」

「誰だ? お前」

 

 応接室を出るとドミニクがクライドが出て来るのも待っていたのか話かけて来た。

 クライドはドミニクの事を覚えてないかの様な事を言うが、すでに顔を合わせるたびに言われているのでドミニクもすでに気にしていない。

 

「ジェラールはどうだ」

「使えると思っているのか?」

 

 ドミニクはクライドの下で働いている息子を気にかけるが、クライドはお世辞抜きでそう言う。

 実際、天狗になっている息子に社会の厳しさを教える為に一流の技術者の揃うクライドの下において貰っているが、元々プライドだけは高いので心配だ。

 

「だよな……」

「それよりも何でお前がここにいるんだよ? 確か独立したんじゃなかったか?」

 

 ドミニクはクライドの言う通り、アーヴィンの防衛部隊から独立し今は民間の警備会社を設立している。

 

「アーヴィンには本社もあるし、ブランシャール運送はうちと契約しているからな。色々と打ち合わせとかがあるんだよ。特に明日の事も

 

あるからな」

 

 明日はアーヴィンで政財界や軍の上層部が招待されて来る。

 そこをヴェイガンに襲撃される可能性は非常に高い。

 軍でも警備に当たるが確実に安全とは言えない為、ドミニクの会社コズミック・ガーディアン・カンパニー通称CGCにも警備の依頼は来ている。

 

「成程ね」

「そんな訳だ。軍の技術部の要のお前もヴェイガンに狙われる可能性があるんだ。勝手な行動は少しは慎め」

「俺の事は気にするなよ。俺は俺で優秀な護衛がいるしな」

 

 ドミニクの心配をよそにクライドは気にしていない。

 元々クライドの警告をする為に待っていた為、ドミニクも用事が済んだのでクライドを別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドミニクと別れたクライドはブランシャール邸の地下に来ていた。

 地下には戦艦が一隻、丸々収納出来るスペースが確保されており、そこにはブリッシュ公国の王宮を襲撃してどさくさに紛れて離脱したアブディエルが停泊していた。

 そのアブディエルの格納庫にクライドは向かい、エミリオらに出迎えられた。

 

「エミリオ、ベータの調子はどうだ?」

「完璧ですよ。パイロットのファムも使いこなせているみたいですしね」

「それは何よりだ」

 

 クライドはエミリオの言葉に満足そうにするが、辺りを見渡す。

 

「ファムはどうしてる?」

「彼女でしたら、街に出てますよ。ここのところは隠密行動や戦闘でしたからね。まずかったですか?」

「いや……ファムなら大丈夫だろ」

 

 アブディエルのエースであるファムもたまには街でリフレッシュする必要があるため、セリアが許可を出している。

 クライドもパイロットの精神面がMSの操縦に影響が出る事は十分に理解しているため、文句はない。

 

「その内、俺のゼロもここに運ばれてくる手筈だ。そいつは直す必要はないから、ベータの整備を完璧にしといてくれ」

「分かりました」

 

 明日の夜会でヴェイガンの襲撃があるとすれば、最悪アーヴィンを出港する必要がありその時にガンダムZERO Ⅲβを使う必要があるかも知れない。

 

「ところで……アレは何だ?」

 

 クライドは格納庫の一画に置かれている銅像を見つける。

 ブリッシュ公国の王宮にあった筈の守り神の銅像がなくなっている事には気がついていたが、大方戦闘の流れ弾か王宮を破壊する際に一緒に破壊されたと思って気にも留めてなかったが、なぜか格納庫の一画に置かれている。

 

「アレですか……何かファムが気になるからスキャンして見たら中に面白い物があったんですよ」

 

 エミリオは近くの整備兵を呼びとめて、銅像のスキャンデータをクライドに見せた。

 そこには銅像の中にMSのフレームらしき影が映されている。

 

「詳しい解析データはまだですが、銅像の中にMSのフレームが隠してあったらしいんですよ。それも、現在のMSに使われているフレームとは機構が異なるフレームがですよ」

 

 ファムはXラウンダーの直感的に銅像に何かあると感じたが、それは内部にMSのフレームが隠されていたかららしい。

 

「ふぅん……そんなもんがね」

「ええ……今は内部のフレームを壊さないように周りを壊してフレームを取りだす作業をしている途中です」

「成程……頼んだ」

 

 クライドは後の事をエミリオに任せると、アブディエルの艦内に向かう。

 そして、クライドはセリアのいる艦長室を訪れた。

 

「こうして直接会うのは何年ぶりかしら?」

「さぁな。最近は直接話す事も少なかったからな」

 

 クライドとセリアが直接会うのは実に数年ぶりだ。

 セリアが元ヴェイガンの兵士である事から、公になると非常に不味いのとセリア達の存在自体を表に出さないために、クライドと連絡を

 

取る事は通信が殆どでその通信も傍受の危険がない場合のみで直接話す事も殆ど無く、クライドからの指示とセリアの報告のどちらかの一方通行である事が殆どだ。

 

「取り合えず、ブリッシュ公国の件は御苦労さん」

「それで目的の物は見つける事が出来たの?」

「外れだったよ」

 

 クライドは肩をすくめてそう言う。

 途中で任務が変わったが、元々アブディエルをブリッシュ公国に向かわせたのはクライドが探しているEXA-DBの捜索だ。

 しかし、ブリッシュ公国を掌握したところ、EXA-DBの影も形もなかった。

 

「古代兵器ってのはあのコロニーレーザーの事だったらしい」

「あれもコロニー国家間戦争時の遺産と言う事では古代兵器と言えるけどね」

「まぁな。でも、生憎と巨大破壊兵器は俺の専門外だからな。情報があれば実物は要らないんだけどな」

 

 あくまでもクライドの専門分野はMSであるため、コロニーレーザーの様な巨大破壊兵器には使われている技術に興味はあるが、情報さえあれば実物を欲しいとは思わない。

 その点、ファムが見つけた銅像に隠されていたMSのフレームには興味を持っている。

 もしかしたら、コロニー国家間戦争時のMSのフレームが状態はともかく、実物を手に入れたかも知れないからだ。

 

「それよりも、彼女はどうするつもりなの?」

「今、どうしてる」

「目を覚ますと面倒な事になりそうだから、コールドスリープで眠らせてあるわ」

「それなら、まだ起こす必要はない」

 

 アブディエルは現在、ある人物を乗せている。

 それこそがクライドが出した指示の最重要事項だ。

 

「分かったわ。私に次は何をさせるつもり?」

 

 クライドが自ら、アブディエルに来たと言う事は次の任務も重要な事をさせる可能性が高い。

 

「次は俺を乗せて、ソロンシティに向かって貰う。そこで積み荷を降ろしてマッドーナ工房だ。そこでファムが持ち帰ったフレームの解析を行う」

「マッドーナ工房で? クライド御自慢の特研ではやらないの?」

「まぁな。ちょっとばかし面倒事を内に抱えているから、マッドーナ工房でやった方が良い。それに勝手に持ち出したも同然だからな」

 

 今回の仕事はクライドに移送だけで済みそうだが、クライドがこれだけで済むとは思えない。

 

「取り合えずは分かったけど、EXA-DBの捜索はどうするの?」

 

 セリアはクライドとある交換条件をかわしてクライドの下に付いている。

 クライドが探しているEXA-DBを発見し確保、もしくは完全に破壊したとあれば自分の出した条件を実行してくれるだろう。

 だが、クライドをソロンシティを経由してマッドーナ工房に移送したくらいでは望みを叶える気はない筈だ。

 

「そうだな……一先ずはお前たちには俺に付き合って貰うからEXA-DB探しは一時中断だ。けど、何もしない手はない。取り合えずは海賊にでも噂を流すか……『世界を手に入れる事の出来る秘宝』とか言う歌い文句でさ。後は海賊の動きを見張ってもしも、海賊がEXA-DBを見つけた場合は奪い取る」

 

 EXA-DBを秘宝に例え情報を流せば幾つかの宇宙海賊は高確率で食いつくのは目に見ている。 

 それをクライドの繋がりを持つ海賊のドレイク海賊団やバッカニア海賊団に見張らせておけば海賊達の動きからEXA-DBのある可能性の範囲をある程度絞る事が出来る。

 そして、海賊が運良くEXA-DBを回収する事が出来たのであれば連邦軍を動かして宇宙海賊討伐の名目で海賊を撃ち、EXA-DBを回収させる事も出来る。

 連邦軍がEXA-DBを回収したとなれば、連邦軍での随一の技術力を持つ特研にEXA-DBを解析するために持ちこまれるのは自然な流れだ。

 そうならなかった場合もその為にEXA-DBを特研に持ちこませるようにフリットに頼めば済む事だ。

 

「海賊より性質が悪いわね」

「世の中は弱肉強食なのは旧世紀から変わらない自然の摂理だ。海賊なんてやってんだ、連中も潰されても文句は言えないさ」

「まぁ良いわ。海賊がどうなろうと私には関係の無い事だから。それよりも戦力の補強はどうにかならないの?」

 

 アブディエルはこれから先も裏で動く事が多いが、MSが3機ではやれる事も限られている。

 その為、セリアとしてはMSを最低でももう2.3機は欲しいところだ。

 

「何ならパイロットは彼を目覚めさせるけど?」

「冗談。俺はまだ死にたくないな。戦力の補充は俺の方でも少し考えてある。取り合えずはマッドーナ工房に到着するまでは待って欲しい」

「それくらいなら……」

 

 本当かどうかは定かではないがクライドも一応は戦力の補充を考えているのであればこれ以上言う事はない。

 クライドとセリアは今後の航海の事を更に詰めて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クライドとエリーゼがブランシャール邸に向かった頃、ウルフが艦長不在で艦を任されているアーノルドを半ば強引にアーヴィンへの上陸許可を取りつけてエリアルドとアルベルトを連れてアーヴィンの街に出ていた。

 ブリッシュ公国の一件でエリアルドはヒルデガードの死亡認定などもあり思うところがあったらしく、アーヴィンまでの道中も一人で考え込む事も多かったため、息抜きも兼ねている。

 

「さて……街に出ては見たが、余りのんびりも出来ねぇ。まずはメシだな」

 

 艦内でも当然の事ながら食事は三食でるが、クルーの健康を優先し味よりも栄養価を重視している。

 その為、味は不味くはないが美味いと言う訳ではない。

 アーヴィンは学園コロニーを称されるだけあってコロニー内には高級のレストランがある訳でもなく、酒の出る店もなく、あるのは安くて量もあるジャンクフードやファーストフードの店が殆どだが、艦内で出る食事よりかは断然良い。

 

「今日は俺の奢りだ。好きな物を腹いっぱい食わせてやる」

「隊長、太っ腹っすね!」

 

 ウルフの奢り発言にアルベルトはテンションが上がるが、エリアルドは上の空だ。

 

「どうしたエリアルド。俺が奢ってやるんだ。もう少し喜べよ」

「ええ……」

 

 相変わらず上の空でウルフとアルベルトも目を合わせて肩をすくめる。

 そんな様子をエリアルドは見ておらず、別の方向を見ていた。

 そして、ウルフとアルベルトをその場に置いたまま、エリアルドは走り出した。

 人ごみをかき分けてエリアルドは進んだ。

 

「ファム!」

 

 エリアルドは目的の人物の近くに寄ると大声でその名を呼んだ。

 

「エリアルド……」

 

 名前を呼ばれたファムは呼んだ相手がエリアルドだと気づくと少し驚く。

 まさか、アーヴィンで再会するとは思ってなかったからだ。

 エリアルドとファムはクライドとエリーゼの初めて会ったコロニーにて再会する。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。