機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第45話

コロニー「アーヴィン」で再会したエリアルドとファム。

 その再会に二人は驚き、二人の間に沈黙が流れる。

 呼び止めたエリアルドもファムに用事があった訳でも無く、衝動的に追いかけて呼びとめている。

 その為、呼びとめた後の事は何も考えてはいなかった。

 

「こんなところで偶然ね」

 

 言葉を探すエリアルドよりも先にファムが口を開く。

 

「ああ……そうだね。君はどうしてここに?」

「私は仕事よ。貴方は?」

「俺も仕事だよ。今は配属が変わって戦艦のMS隊に配属になったんだよ」

 

 軍内部の情報はある程度はクライドから回って来るが軍人個人の情報は自分の方から聞かない限りは回って来る事はない。

 その上、エリアルドがクライドの息子と言う事はすでに知っている為、任務に関係の無いエリアルドの事を聞く訳にも行かない。

 ファムもヴェイガンがトルディアに大々的に攻撃を仕掛けたクリスマスの日にトルディアを離脱し、エリアルドもそのままファムに連絡する間も無く、グノーシスに転属となりガンダムZERO Ⅲβの捜索に駆り出されていたので、二人が合うのはクリスマス以来となる。

 

「そう……」

「エリアルド! どうした?」

 

 お互いがアーヴィンにいる事情を把握すると、エリアルドを追って来たウルフとアルベルトがエリアルドに追いつく。

 

「知り合いか?」

「ええ……まぁ」

「そっか、俺らはこれからメシだけど、野郎だけで潤いがないもんだからさアンタもどうだ?」

「えっと……」

 

 ウルフの突然の誘いにファムも戸惑う。

 エリアルドを信用していない訳ではないが、自分達は連邦軍に追われる身だ。

 ファムも訓練を受けている為、白兵戦もある程度はこなせるが、大の男を三人を正面から相手にする事は厳しい。

 それに下手に騒ぎを起こす事も避けたい。

 

「隊長、行き成り過ぎですよ。ファムだって仕事で来ているみたいですし」

「今なら、エリアルドの奢りだ」

「隊長!」

 

 先程まではウルフの奢りと言う話だったが、いつの間にか自分の奢りになっていた事に抗議しようとするが、ウルフはエリアルドをファムから少し遠ざけて話の内容を聞こえないようにした。

 

「アルベルトから聞いたんだが、あの子がお前の彼女だろ?」

「違いますって……」

 

 そう言えば、アルベルトは自分とファムが付き合っていると思っていた事を思い出す。

 

「そうなのか? まぁ、お前が彼女に惚れてんのは事実だろ?」

 

 そこは図星であるため、言い返す事は出来ない。

 

「ありゃ、かなりの上玉だ。絶対もてるぞ。軍関係の仕事じゃなかったら、接点も少ないからな。グズグズしてたら他の男に取られちまうぞ」

「それはまぁ……」

「だから、俺があの子にお前の太っ腹なところをアピールする機会を与えてやろうとしてんだ。素直に受け取っとけよ」

 

 ウルフはファムから見えないように数枚の札をエリアルドに渡す。

 恐らくはその金で支払えと言う事だろう。

 

「俺達はまたすぐに戦場に戻るんだ。戦場でも一度切りのチャンスを逃せば二度とチャンス無い事も多いんだ。チャンスは確実に物にしろ」

「はぁ……」

 

 エリアルドがウルフに逆らう事も出来ない為、力なく頷く。

 その後、ファムはエリアルド達と共に近くのファーストフード店に入る。

 

「俺らはすぐに戻んないといけないから、酒は飲めないがファムつったけか飲んでもかまわねぇぞ」

「いえ……私は未成年ですので」

 

 酒を勧めたウルフに対するファムの答えにエリアルドまでも驚く。

 普段の言動からエリアルドはファムが自分と同年代だと思っていたが、未成年と言う事はレオーネよりも年下と言う事になる。

 下手をすれば、妹のマリィと同年代とかも知れない。

 ファムの意外な事実も分かり、時よりウルフとアルベルトに冷やかされつつも、エリアルド達は食事を済ませた。

 食事を終えると、隊長命令でエリアルドはファムを送るように言われた。

 無論、それはウルフのエリアルドとファムが二人きりになるための配慮だ。

 

「この辺りで良いわ。エリアルドも船に戻らないといけないでしょ?」

 

 流石にエリアルドをアブディエルまで送らせる訳にも行かない為、ファムは適当なところでそう言う。

 エリアルドもしつこく、送ると言う訳にも行かないが、先ほどのウルフの言葉を思い出す。

 エリアルドは再び戦場に戻るため、次にファムに会う事の出来るのはいつになるか分からない。

 最悪、もう二度と会う事が出来ないかも知れない。

 

「ファム」

 

 エリアルドは意を決した。

 ファムの両肩に手をおいてエリアルドはファムを真っ直ぐ見詰める。

 

「どうしたの? エリアルド」

 

 エリアルドのいつもとは様子の違う雰囲気にファムも少し戸惑う。

 エリアルドは今までファムをデートに誘う時以上に緊張している。

 だが、クリスマスの時にも意を決したのだ、今回も出来ると自分に言い聞かせる。

 

「俺は君の事が好きだ! 俺と付き合って欲しい!」

 

 クリスマスの時は横槍が入り言えなかった事を今回は言う事が出来た。

 ファムは突然の告白に茫然とするが、すぐに冷静になって自分のおかれた状況を考える。

 明らかにエリアルドの告白をされている。

 事前に潜入時の様々な潜入時の対応マニュアルを頭の中に叩きこんでいる。

 異性に告白された場合は相手に遺恨を残す事なく断るべきだ。

 しかし、何故だかファム自身も分からないがそれを拒絶しているように思える。

 その為、告白に対する返事が遅れる。

 エリアルドはそれをファムが告白に対しての戸惑っていると勘違いをした。

 

「ごめん……行き成り過ぎた。返事は次に会った時で構わないから」

 

 エリアルドはそう言って走り去る。

 それで正気に戻ったファムはエリアルドを呼びとめようとするがすでにエリアルドは離れていたため、断念した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クライドとエリーゼがブランシャール邸を訪れた翌日の夜、ブランシャール邸では政府の要人などを招いた夜会が開催されている。

 戦争中とは思えない豪華絢爛な夜会に会場の隅でエリーゼは会場を見渡して一息ついている。

 夜会の少し前にエリーゼは両親に夜会にドレスを着て参加するように言われたが、ドレスを着て喜ぶような年でもないため、断り代わりにユーリアがドレスを着て今はパトリックの後に付いている。

 

「お久しぶりです。艦長」

「そうね。レオ」

 

 会場の隅にいたエリーゼにかつてのアブディエルのクルーのレオナールが話かけて来る。

 蝙蝠退治戦役後にはジゼルと共にクレマン家に戻ったレオナールは現在では名実ともにクレマン家の当主で軍、特に特研に資金援助などを行っている立場にある。

 レオナールの後には赤いドレスを身に纏うレオーネが付いている。

 

「行き成りですが、ジゼルさんは元気にしていますか?」

「相変わらずよ」

 

 懐かしい再会にエリーゼも口元がほころぶ。

 本来ならば、ジゼルもクレマン夫人として夜会に参加出来る立ち場にあり、レオナールも呼んでいるのだが、グノーシスのMSの整備を理由に参加していない。

 実際、今港のグノーシスにはRGブレイドとアデル改が戦闘待機中でジェノバース、RGキャノンはパイロット不在で他のGバウンサー、ガンダムZERO Ⅲα、RGライダーは会場の外に警備に出ている為、ジゼルがグノーシスに残る必要はない。

 だが、ジゼルは夜会の様なところが好きで無いため、整備を理由にして参加をしていないだけだ。

 

「そのようですね」

 

 ジゼルの様子は娘のレオーネから聞いているのか、レオナールも苦笑いしている。

 夫婦中は決して悪い訳ではないが、ジゼルがクレマン家の様な資産家の家とは相性が悪い事をレオナールは気にしているようだ。

 それから、レオナールと少し会話をすると、挨拶周りが終わって無いと言うレオナールはレオーネを連れて夜会に戻る。

 その後、エリーゼは会場を改めて見渡す。

 

「それにしてもここを落とされたら戦争は終わるわね」

 

 エリーゼはポツリと漏らす。

 会場には連邦政府首相のフロイ・オルフェノアと始めとし、政府の要人や軍の上層部が顔を連ねている。

 もしも、ヴェイガンがここを強襲し、アーヴィンを破壊すれば地球連邦軍は大きな打撃を受けて戦争に敗北する事は間違いないだろう。

 

「全くです」

「フリットも呼ばれていたの?」

「ええ……私としてはこんな事をしている暇はなかったのですけどね」

 

 フリットは不機嫌そうにする。

 フリットとしてはこんな夜会に来るくらいなら、ヴェイガン打倒の策を練っていた方が有意義だが、主催者がパトリック・ブランシャールでは無下には出来ない。

 フリットがこの若さでビッグリングの総司令を任されているのはフリットの能力だけではなく、様々な後ろ盾がある。

 その一つがブランシャール家だ。

 ブランシャール家はコロニー間運送業で様々なコロニーに影響力を持つだけでなく、運送業で培った物資運搬のノウハウは補給線の維持には欠かせない。

 ブランシャール家も娘の婿の弟であるフリットに大きな期待を寄せており、いろいろな支援をしている。

 

「だけでこれも必要な事よ」

「理解はしています」

 

 フリットもこの夜会の意味が分からない訳ではない。

 しかし、それと同時に連邦政府の暗部も見え隠れしているこの場に不快感を感じている事も事実だ。

 

「少し良いですか? 義姉さん」

「ここでは不味い話?」

「ええ、出来れば人気のないところで」

 

 フリットにそう言われるとエリーゼはフリットと共に会場からこっそりと出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら話を聞かれる心配はないわ」

 

 会場から離れたブランシャール家の屋敷の一室にエリーゼはフリットを案内している。

 

「その前に確認したいのですが、グノーシスには次の予定は兄さんから言われていますか?」

「知らないわ。クライドはまたどっかに行ってるわ」

 

 エリーゼはクライドに一言文句を言ってやろうと思っていたが、すでにクライドの消息は掴めてめなくなっている。

 グノーシスにも戻っていない事はすでに確認している。 

 クライドの事だから事件に巻き込まれたと言う可能性も低く、好き勝手に動いている可能性の方が高い。

 こう言う時は探したところで中々尻尾を掴ませな無いため、エリーゼはクライドを探すような事はしない。

 その内、気が済めば勝手に戻って来るからだ。

 

「そうですか、ならば義姉さんに頼みたい事があります。義姉さんはフリーダムポートと言うコロニーを知っていますか?」

「知ってるわ。だいぶ前に行った事があるわ」

 

 コロニー「フリーダムポート」……蝙蝠退治戦役時にはサザーランドポートと呼ばれていたコロニーだ。

 連邦軍が駐留していたが、連邦軍の士官のサザーランド兄弟により支配されていた。

 連邦軍への不満の溜まった市民達が反乱軍を結成していたが、連邦軍の前に壊滅させられていたが、偶然にコロニーを訪れていたクライドとヴェイガンの襲撃によって解放されたコロニーだ。

 その数年後にコロニーの名称がサザーランドポートからフリーダムポートへと改名された。

 グノーシスにもシャルロットがフリーダムポートの出身だ。

 

「そのフリーダムポートがヴェイガンに協力しましてね」

「あそこは反連邦思想が強いからね」

 

 理不尽の連邦軍に搾取されていたフリーダムポートでは反連邦思想が非常に強い。

 シャルロットは父のシャルルが元連邦軍の軍人であり、軍全体がサザーランド兄弟と同じで無い事を聞かされて育った為、連邦軍に対しては偏見を持っていないが、未だに連邦軍人は皆サザーランド兄弟の様な軍人ばかりと思っている市民も多い。

 

「それで少々厄介な事態になっていましてね。今はディーヴァを対応に当たらせていますが手が足りないと増援の要請が来たんですが、先のブリッシュ公国の一件でビッグリングにすぐに動かせるだけの余力がないんですよ」

「それですぐに動ける私達に向かって欲しいと言う訳ね」

「ええ……頼めますか?」

「良いわ。この夜会が終わったら向かわせて貰うわ」

 

 どの道、クライドの行方不明でグノーシスの任務はガンダムZERO Ⅲβの捜索だが、ブリッシュ公国で王宮の襲撃の際に現れてからの行方が分からなくなっている。

 それにフリーダムポートの事はエリーゼも無関係と言う訳ではない。

 クライドの独断だろうが、自分達が連邦軍への反乱に関わっている以上、静観をする訳にはいかない。

 

「助かります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブランシャール邸で夜会が開かれている頃、コロニーの外では防衛線が形勢されている。

 軍の方でも夜会に政府の要人や軍の上層部が多数出席をしている為、アーヴィンの防衛は重要とされている。

 

「艦長! ヴェイガンの戦艦を補足しました!」

 

 ダーウィン級の戦艦がファ・ボーゼ級と戦闘艦の接近を補足した。

 ダーヴィン級の艦長も事前に襲撃がある事は予測されていたため、動じることなくMSの出撃をさせる。

 連邦軍も動き出して戦闘が開始される。

 

「社長、ヴェイガンの連中が来ました」

「ああ……分かっている。各機、陣形を形勢しつつ連邦軍を抜けて来た敵MSを叩く」

 

 ドミニクは部下のシャルドール改のパイロットに指示を出している。

 CGCは連邦軍の後方で待機している。

 CGCの主力機はシャルドール改を使っているがドミニクはGエグゼス改に乗っている。

 Gエグゼス改はマッドーナ工房が蝙蝠退治戦役時のウルフの搭乗機のGエグゼスを改良した機体だ。

 外観は殆ど変って無いが、装甲はジェノアスⅡやシャルドール改同様にガンダムAGE-1と同レベルまで強化され、Gエグゼスの問題点の操

 

縦性の悪さは大きく改善している。

 武装も大きな変更点はないが、ビームライフルから銃身の下部に実体剣が装備されているドッズライフルⅡBに変更されている。

 戦闘が開始されると、戦闘宙域にビームの光とMSが爆散した時の光が見える。

 そして、ヴェイガンのドラドやバクトが連邦軍の戦艦を抜けて来る。

 

「来るぞ。敵をコロニーに近づけさせるな」

 

 Gエグゼス改はドッズライフルⅡBを放つ。

 それが合図となり、シャルドール改もドッズガンを連射してヴェイガンを食い止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「副長、戦闘が始まったようです」

「こっちからは反対方向か……」

 

 グノーシスでも戦闘は捕捉出来ているが、グノーシスはアーヴィンの港に停泊中で搭載機も出せるMSは二機しか残されていない。

 その上、戦闘になった場合は現場の判断で動くようにエリーゼに言われている。

 

「どうします?」

「副長、戦闘宙域の反対方向より敵戦闘艦を補足しました」

「陽動か……」

 

 ヴェイガンは二方向からの同時攻撃で来るようだ。

 戦場の反対方向と言う事は連邦軍は対応するのは無理だろう。

 コロニー内に待機しているCGCのMSが来るまでも時間がかかる。

 

「RGブレイドとアデル改を出して」

 

 このままだと、グノーシスは敵の格好の的となる。

 その為、RGブレイドとアデル改を出して最低でも艦の安全の確保と時間を稼ぐ事にした。

 すぐに待機中の二機が射出される。

 

「俺達は船の防衛を最優先だ」

「了解」

 

 アデル改はドッズキャノンでドラドを牽制する。

 ドラドはかわすとビームバルカンで反撃してくる。

 アデル改はシールドで防ぎながらドッズライフルで応戦し、RGブレイドがドッズライフルを撃ちながら敵陣に飛び込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何の騒ぎだ」

 

 クライドはコロニーの様子が騒がしい事を感じてアブディエルのブリッジに上がっていた。

 ブリッジではクルーが慌ただしく作業をしている。

 

「ヴェイガンの襲撃よ。私達もこの騒ぎに乗じてアーヴィンを出るわ。文句はないわね」

「ないが、ファムを出してくれないか?」

「ファムを?」

 

 自分達の存在が知られていないため、騒ぎに乗じれば楽にコロニーを離脱出来ると言うのにわざわざガンダムZERO Ⅲβを出す必要はない。

 

「そっ、屋敷の警備にアルファが回されている。ベータで適当なところに誘いこんでドライ同士の戦闘データが取りたい」

 

 要するにクライドはガンダムZERO Ⅲ同士の戦闘データが欲しいと言う訳だ。

 今まではガンダムZERO Ⅲ同士の戦闘の機会がなかったが、今が絶好の機会と言う訳でクライドはこの機会を逃す手は無い。

 

「ファムには本気を出さずに適度に戦ってデータ収集をさせろ。そんで適当なところで撤退して俺達と合流。後、間違ってもアルファのパイロットは殺さないように。その範囲だったら適度に壊しても構わないとファムに伝えてくれ」

 

 クライドの出した要求はかなりの無茶振りだ。

 ファムはパイロットとしては高い技量を持つが今までは性能で劣る敵しか相手にしてない。

 同型機のガンダムZERO Ⅲαは多少の差異はあれど、基本的な性能はガンダムZERO Ⅲβと殆ど変わらない。

 その為、互いのパイロットの腕と戦い方で勝敗が決まってしまう。

 

「私は構わないわ」

 

 モニターにガンダムZERO Ⅲβに乗り込んだファムからブリッジに通信を繋がれる。

 

「頼めるな」

 

 モニターに映されているファムは頷く。

 ファムも了承している以上、セリアが文句を言ったところで仕方がない為、すぐにガンダムZERO Ⅲβを出撃させ、アブディエルも出港の用意をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隊長、敵が来たみたいです」

「当然だな。ここを見逃す手はないからな」

 

 アーヴィン内でもヴェイガンの襲撃の報は届いている。

 ウルフ隊も会場の警備に回っている。

 今回はコロニー内での重力下でも高い機動性を持つRGライダーがアデル改と入れ替わりとなっている。

 そして、ガンダムZERO Ⅲαはコロニー内での戦闘を想定し格闘戦に特化したクラッシャーアーマーを装備している。

 

「だが、俺達の任務はあくまでもここの防衛だ。外は他の部隊に任せれば良い」

「了解」

 

 エリアルドはいつ敵が来ても良いように集中すると不意に何かを感じ取る。

 そして、周囲を索敵すると反応がありモニターに拡大する。

 

「あれは……ベータ!」

 

 モニターにはガンダムZERO Ⅲβが映されていた。

 

「隊長、ベータがいました! 俺が行きます!」

「おい! 待て! エリアルド!」

 

 ウルフの制止を無視して、エリアルドは機体をガンダムZERO Ⅲβの方に向ける。

 ウルフもエリアルドの後を追いたいが、タイミングが悪くコロニー内にドラドの侵入を補足する。

 

「隊長!」

「分かってる! さっさと終わらせる。ここの防衛は任せた!」

 

 侵入した敵を早く倒し、エリアルドを追う為、ウルフは警備をCGCのシャルドール改に任せるとストライダー形態に変形したRGライダーの背に乗り、ドラドの迎撃に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「食いついた」

 

 ガンダムZERO ⅢCが自分に気づいて追って来ている事を確認したファムは機体をコロニー内の廃棄物処理場に向かう。

 かつて、誘拐されたエリーゼの監禁場所になっていた処理施設は完全に無人化して残されている。

 

「今度は逃がさない!」

 

 ガンダムZERO ⅢCはスーパードッズライフルを放ち、ガンダムZERO Ⅲβを追いかける。

 処理施設に到着したガンダムZERO Ⅲβはビームバルカンを放ちながらガンダムZERO ⅢCに接近する。

 そして、ビームサーベルを展開してガンダムZERO ⅢCに切りかかる。

 ガンダムZERO ⅢCもビームサーベルを抜いて受け止めた。

 

「この感じ……」

「どうして……」

 

 二機のビームサーベルがぶつかり合うと二人の感覚は共鳴し合う。

 そして、互いのガンダムに乗っている相手の事が分かってしまった。

 

「まさか、エリアルドがアルファのパイロットに……」

「どうして……ファムの感覚がベータから……」

 

 互いの事を知った二人だが、反応は対象的だ。

 ファムはエリアルドがクライドの息子である事は知っていた為、ガンダムZERO Ⅲαにエリアルドが乗っていた事にさほど驚いた様子はないが、エリアルドは物凄く動揺している。

 エリアルドはよもや、ガンダムZERO Ⅲβにファムが乗っているなど思っていなかったからだ。

 

「ファム……」

 

 エリアルドは距離を取ると機体を仁王立ちさせた状態でコックピットを開いてハッチから見えるように機体から降りる。

 

「どう言うつもりなの……」

 

 流石に戦闘中に敵の前に姿を晒す事など訓練にもなかったが、エリアルドはヘルメットを取っている。

 ファムはどうするか考えるが、やがて自分の機体のコックピットを開いて姿を晒す。

 そして、ファムもヘルメットを取り素顔を晒すとエリアルドは信じられないような物を見ているかのように驚く。

 

「どうして君がそのガンダムに乗っているんだ!」

 

 エリアルドは叫ぶ。

 ガンダムZERO Ⅲβに乗っていたのがファムである事が動かぬ事実だが、それでの心の中では嘘であって欲しいと思わずにはいられない。

 

「どうして? 私がヴェイガンの人間だからよ」

 

 その言葉が決定的にファムが自分の敵側の人間である事をエリアルドに付きつける。

 

「そんな事が……」

 

 茫然とするエリアルドを余所にファムはヘルメットを付けて機体に乗り込む。

 シートに座ったファムは少しの間俯いていた。

 俯きながら、ファムは心の中で自分の役目を良い聞かせる。

 そして、顔を上げてコントロールステックに手を添える。

 ガンダムZERO Ⅲβは掌からビームサーベルを展開する。

 それで、ファムが戦闘態勢を取った事に気がついたエリアルドはヘルメットをつける事もしないで、機体に戻る。

 ガンダムZERO Ⅲβはビームサーベルを振り下ろし、ガンダムZERO ⅢCは持っていたビームサーベルで受け止める。

 

「止めてくれ! ファム! どうして俺達が戦わないといけないんだ!」

「私はヴェイガンでエリアルドが連邦軍……戦う理由はそれで十分よ」

 

 ファムがヴェイガンの人間でエリアルドが連邦軍の軍人……二人の戦う理由はそれで十分とファムは言うが、エリアルドは割り切る事が出来ない。

 

「そんな理由で!」

「それ以外になにがあるの」

 

 ガンダムZERO Ⅲβはビームサーベルで何度も切りかかり、ガンダムZERO ⅢCは防戦一方となっていく。

 

「生まれた世界が違うってだけで! 敵になると言うのか!」

「個人的な理由が欲しいなら、私の父は貴方の父親と因縁がある。それを子供の私達が引き継いだ。それで私と貴方が戦う個人的な理由が出来たわ」

 

 ガンダムZERO Ⅲβは少し距離を取って膝のニードルガンを撃ち込む。

 普段のエリアルドなら対応が出来るが今のエリアルドにその余裕はない。

 ニードルガンの直撃を受けてよろけたところを腰のベータソードを手に付けたガンダムZERO Ⅲβが一気に接近してガンダムZERO ⅢCの右腕を肩から切り落とす。

 そして、蹴り飛ばすとガンダムZERO ⅢCは飛ばされて尻もちをついた。

 何とか立ちあがろうとするが、ガンダムZERO ⅢβはガンダムZERO ⅢCにベータソードを突き付けている。

 

「これ以上の戦闘は無意味ね」

 

 エリアルドが本気で戦えない以上、クライドの欲しているガンダムZERO Ⅲ同士の戦闘データを取る事は出来ないとファムは判断した。

 

「ファム……」

「エリアルド……昨日、言っていたわね。返事は次に会った時で良いと……」

 

 ファムにそう言われて今まで忘れていたが、エリアルドが昨日ファムに告白した事を思い出す。

 

「私も多分、貴方の事は好きなんだと思う」

 

 思えば、トルディアに潜入中の時も必要以上にエリアルドと親密にする必要もなく、昨日の告白の時も適当な理由ですぐに断る事も出来た。

 しかし、それをしなかったと言う事は自分も少なからずエリアルドに好意を持っていたのだと考えられる。

 

「だけど、私にはやらないといけない事がある。だから……さようなら。次に会う時は敵よ」

 

 ファムははっきりと決別の言葉を口にする。

 その言葉が止めとなり、エリアルドはファムに何も言えない。

 ファムはそのまま機体を上空に舞い上がらせるとクライドに指示されていた撤退ルートに向かう。

 

「これで良いのよ。これで……」

 

 ファムは自分に言い聞かせるように何度も呟いているが、うっすらと涙を流している。

 

「何でこんな事に……」

 

 エリアルドは撤退するガンダムZERO Ⅲβを見ながら呟いていた。

 昨日は邪魔が入る事なくファムに告白出来た筈だ。

 それなのに今の状況がエリアルドには受け入れる事が到底出来ない。

 だが、今起きた事が事実である事がジワジワとエリアルドに押し寄せて来る。

 

「何で……何で何だよぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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