ヴェイガンによるアーヴィン強襲作戦はヴェイガン側がブリッシュ公国や現在進行中の作戦に戦力を裂いていたために投入出来た戦力はアーヴィンを落とすには少な過ぎた。
通常ならばどうにか出来る戦力ではあったが、防衛に派遣された連邦軍意外にもCGCやグノーシスの戦力によって阻まれ、結果としては防衛の連邦軍の戦力に打撃を与える程度でしか戦果を上げる事は出来なかった。
その上でヴェイガン側も多数のMSが破壊された為、両軍の損失を考えるとヴェイガン側の明らかな敗北だ。
その戦闘時にアーヴィン内にガンダムZERO Ⅲβの機影を補足したエリアルドはガンダムZERO Ⅲβと再び対峙するが、想いを寄せていたファムがガンダムZERO Ⅲβのパイロットだと知り戦意を喪失しながらも交戦するが、エリアルドは敗北しファムは事前に用意されていたルートかたアーヴィンを脱出すると、アブディエルとの合流ポイントへと離脱した。
ガンダムZERO Ⅲβはアーヴィンを離脱し合流ポイントに到着すると光学迷彩を展開していたアブディエルが光学迷彩を解除する。
そして、アブディエルのカタパルトが開き、ガンダムZERO Ⅲβはアブディエルに着艦した。
ガンダムZERO Ⅲβは格納庫のハンガーに固定されると、待機していた整備班がガンダムZERO Ⅲβの各部に取りついて整備を始める。
ファムは機体から降りると一人格納庫から艦内に入る。
いつもと違う様子のファムだったが、ガンダムZERO Ⅲβの整備の方に関心が向いている整備班の誰もがそれに気づく事は無い。
ファムは艦内に入るとヘルメットを取り、私服に着替える為に自室に向かっていた。
その道中に涙を拭いていた為、ファムが機体内で涙を流した事はそう簡単には気づかれる事は無いだろう。
「お疲れさん。思ったよりも速かったな」
「小父さま」
クライドに声をかけられてファムは立ち止まる。
「もう少しゆっくりしても良かったんだがな」
「アルファのパイロットが不調だったのか、事前に見せて頂いたアルファのカタログスペックすら出せてませんでしたので、アレ以上の戦闘はこちらの戦闘データを流出させるだけと判断しました」
「あいつがね……」
ファムにそう言われて、クライドは考え込む。
ファムの言った事は完全に嘘と言う訳ではない。
確かにあの時のエリアルドはまともに機体を動かせる状態ではなかった。
尤も、その理由はファムも分かっているがクライドになんて説明すれば良いのか分からない。
流石に貴方の息子に前日に告白を受けて戦闘中にパイロットが自分だと言う事がばれてそれが原因とはとても言えない。
「まぁ、そう言う事もあるか。これはこれで面白いデータが取れた」
対するクライドは珍しいデータが取れたと一応は満足のようだ。
「それよりも、私達の目的地がマッドーナ工房と聞きましたが?」
「ファムが拾って来た銅像の中に奴をマッドーナ工房で解析するんだよ。あそこなら顔も効くしな」
マッドーナ工房との付き合いが軍よりも長く、表に出来ない兵器を発注する事も少なくない。
その為、今回もブリッシュ公国から無断で持ち出した古いフレームの解析をマッドーナ工房で行うつもりだ。
「そうですか」
「その前に野暮用でソロンシティを経由するけどな。予定では戦闘は無いが、いつ戦闘になるか分からん。お前は何かと無理をするからな……休める時に休んどけ」
クライドはファムの肩に手をおいてそう言い、立ち去る。
「小父さま……」
クライドもXラウンダー故に自分が無理をしている事が気づかれていたのかと思い、クライドの気づかいに感謝する。
クライドは必要以上にファムに干渉する事はないが、自分の父親の事を母のセリアやクライドからしか聞いた事がないため、漠然とああ言うのが父親なのだと感じている。
ファムはクライドに言われた通りに休む為、自室に戻る。
ヴェイガンがアーヴィンから撤退し、後はCGCだけで十分に周囲の警戒が出来る為、ウルフ隊には帰還命令が下されていた。
ウルフが内部に侵入したドラドを破壊し、エリアルドの援護に来た時はすでに戦闘は終わり、エリアルドのガンダムZERO ⅢCだけが廃棄物処理施設に残されていた。
右腕が切り落とされた以外は目立った損傷も無く、エリアルドは無事だと思われたがウルフの呼びかけにもエリアルドの反応がなかった為、ウルフとシャルロットで機体ごとグノーシスに連れて来ていた。
「派手にやられたな」
ジゼルはGバウンサーとRGライダーに運ばれたガンダムZERO ⅢCを見てそう言う。
「まぁ、腕が切り落とされたくらいなら修理もすぐに済むか……お前らさっさと作業に入れ!」
ガンダムZERO ⅢαもガンダムAGE-1やアデルのようにウェア換装システムを採用しており、ウェアを換装しなくても四肢が戦闘で破壊された時の修理が新しいパーツに丸々変えれば済むメリットがある。
今回の損傷は右腕だけであるため、腕を新しい物に変えれば済む。
ガンダムZERO ⅢCはハンガーに固定されると、ハッチを外から強制的に開く。
ハッチが開くとウルフが中のエリアルドを無理やり外に出した。
外に出されたエリアルドは力無く項垂れており、ウルフが肩を貸して格納庫から出て行く。
その後、エリアルドはウルフに連れられて艦内のレクリエーションルームの椅子に座らされる。
戦闘が終わったばかりで普段は様々な部署のクルーで賑わっているレクリエーションルームも今は誰もいない。
「負けたのがそんなに悔しいか?」
ウルフはエリアルドが沈んでいる理由はガンダムZERO Ⅲβに負けた事にあると踏んでいる。
ウルフが到着した時にはすでに戦闘が終わり、ガンダムZERO Ⅲβの破壊された残骸や機体がなかった事からエリアルドは戦いに破れて見逃されたと言う事になる。
ウルフもパイロットとして戦いに敗北して見逃される悔しさは分からないでもない。
しかし、エリアルドは静かに首を振る。
「だったら何だ?」
「……あのガンダムにファムが乗っていました」
「何だと?」
エリアルドはウルフに戦闘中にあった事を話す。
奪われたガンダムZERO Ⅲβにはウルフも昨日会ったファムが乗っていた事を。
「成程な……」
ウルフもエリアルドがここまで落ち込む理由が理解出来た。
好きだった相手が敵軍の兵士で事もあろうか、奪った新型機のパイロットだった。
これから先もグノーシスはガンダムZERO Ⅲβを追うだろう。
そうすればガンダムZERO Ⅲβの相手は同型機に乗るエリアルドがする事になる。
「どうしてこんな事になってしまってんでしょうか……隊長」
エリアルドの様子を見て流石にウルフも責任を感じてしまう。
ウルフもエリアルド同様にファムがヴェイガンだとは知らなかったが、エリアルドの背中を押した事は事実だ。
昨日、あの後何があったのかは明確には知らないが何かしらの進展があった事はエリアルドの様子から気づきからかっていた。
「それでお前はどうしたいんだ」
だが、過ぎた事を悔んでいても仕方がない。
問題はこれからだ。
次に戦場でファムと出会った時にこのままではエリアルドはまともに戦う事は出来ないだろう。
戦場で戦えなくなった兵士の末路は死だ。
それが分かっていてエリアルドを戦場に出す訳にはいかない。
クライドに事情を説明したガンダムZERO Ⅲαのパイロットを別の誰かに任せると言う方法もある。
アーマーを装備していない状態ではガンダムZERO Ⅲαは全身の装甲が白い為、最悪自分が乗っても良いとも思っている。
しかし、問題はクライドがそれを認めるかどうかだ。
流石のクライドも息子の命に関わる事な為、話を聞かない事もないのだが、問題はガンダムZERO Ⅲαの後任のパイロットだ。
ガンダムZERO ⅢαはXラウンダーが乗る事を前提としている為、Xラウンダー能力を持たないウルフには性能を出し切る事は出来ない。
連邦軍ではヴェイガンに比べるとXラウンダーの実戦投入が大きく遅れており、ヴェイガンのゼダスの様なXラウンダー専用機は特研以外では開発されていない。
その為、後任のXラウンダーを用意することは難しい。
それ以前にエリアルドをガンダムZERO Ⅲαのパイロットから外せば戦場で死ぬ事は無いが根本的な解決にはならない。
今後もグノーシスはガンダムZERO Ⅲβの奪還に動く。
グノーシスから下しても好意を持っている相手が連邦軍に追われていると言う事実は変わらない。
「分かりません……」
「お前は今でもあの子の事が好きなんだろ?」
そうでなければ敵と分かってここまで悩んで落ち込む事もないだろう。
「……はい」
「だったら簡単だ。お前が彼女をヴェイガンから奪い取れば良い」
「え……?」
至極簡単な答えだ。
ファムがヴェイガンでガンダムZERO Ⅲβに乗っているならば、奪えば良い。
どの道、機体を奪還するのだ、ついでにパイロットも連れてくれば問題は無い。
すでにガンダムZERO Ⅲβの存在は秘匿されている。
存在しないMSを奪ったところで罪に問う事は出来ない。
ファムがヴェイガンの人間だと言う事はクライドに任せれば幾らでも誤魔化しが聞く。
そんな簡単な答えを提示したウルフもエリアルドは驚いた様子で見る。
「そんなに驚く事か? 彼女がヴェイガンならお前がそこから連れ出してこっち側の人間になって貰えば良い」
「でも、ファムは所属だけじゃなくてファムの父親と俺の父さんが因縁があるからって……」
「んな事お前には関係ねぇだろ。クライドが何処で面倒な因縁を作ったかは俺も知らなねぇが。お前とは関係の無い話だ」
親同士に因縁があろうと、ウルフはそれには子供は関係ないと言う。
それは当然の事ではあるが、エリアルドにはそこまでは思い至ってはいなかった。
ファムに自分達は親の代から因縁があると言われてそのまま鵜呑みにしていた。
「それに面白い昔話をしてやる。お前の母親のエリーゼはな、学生時代に親の決めた婚約者がいたんだよ。無論、クライドじゃない別の奴だ
。けどな、クライドはそいつからエリーゼを奪い駆け落ちして結ばれた。お前もクライドの息子なら彼女をヴェイガンから奪い取って見せ
ろよ。それで連邦やヴェイガンが敵に回ったとしたら、お前が彼女を守ってやれば良い」
クライドとエリーゼの駆け落ちの話は昔、エリーゼがウルフにした物でかなりエリーゼの脚色が入っているが、クライドもエリーゼを奪い取ったと言われてエリアルドの中で一筋の可能性が見えた。
「お前も男ならそのくらいやって見せろ」
「……隊長、俺……何処までやれるか分からないし、ファムが俺と一緒に来てくれるか分かりませんがやれるだけの事をやってみようと思います」
「その意気だ」
ファムが敵のパイロットである事は本来ならば、エリーゼに報告すべき事だが、エリアルドがファムをヴェイガンから奪う決意をしているのにそれは野暮な事だ。
その為、ウルフはエリアルドから聞いた事を自分の胸の内に隠す事に決めた。
アーヴィンを出港したグノーシスは目的地のフリーダムポートの付近に停泊しているディーヴァと合流していた。
蝙蝠退治戦役時のアンバット攻略戦の時は連邦軍を離れて私設組織「パラダイスロスト」やザラム、エウバと手を組み攻略作戦時には艦隊の旗艦として運用されていたディーヴァは戦役後にはクルーと共に連邦軍に復帰し、25年経った今でも現役に運用されている。
ディーヴァと合流したグノーシスは状況と今後の事を話合う為に小型艇にてエリーゼがディーヴァを訪れていた。
「お久しぶりです。アスノ大佐」
「そうね」
ディーヴァのブリーフィングルームに入るとディーヴァの艦長のミレース・アロイがエリーゼに敬礼してそう言う。
「よっ」
エリーゼの後から小型艇を動かして来たウルフがミレースに軽く挨拶するが、ミレースは階級的には上官である自分に対しての態度では
ない為、少し顔を顰めるが、今更言ったところで改善はあり得ない事は十分に理解している。
「それで状況は?」
「まずはこれを……」
ミレースはモニターに付近の宙域図かと思われるデータを映す。
「これが数日前のフリーダムポートの位置、そしてこれが現在のフリーダムポートの位置です」
「こいつは……」
「コロニーが動いている」
映されたデータは数日前と今のフリーダムポートの位置を記しているが、誰の目から見ても明らかに位置がずれている。
そこから導き出される答えはコロニーが動いていると言う事だ。
「どう言う事だ?」
「見ての通り。フリーダムポートは動いているのよ」
「自然に動いたって事は無いわよね」
コロニーの質量は膨大で多少の衝撃では移動することはあり得ない。
コロニーを動かす程の力が自然にかかったのであれば、コロニーも無事ではない筈だ。
そうでないと言う事は何らかの人為的な力でコロニーが動いていると言う事になる。
「恐らくは……周囲にヴェイガンの艦艇も捕捉していますから、ヴェイガンの何らかの作戦行動と言う可能性が高いと思われます」
「コロニーを動かす作戦ね……簡単に思いつく事なら、このコロニーをどこかにぶつけるってところかしらね」
コロニーの質量がぶつかれば大抵の物は破壊出来る。
「となると、問題はどこにぶつけるかですね。コロニーの進行ルートから予測され、我が軍に大打撃を与える事の出来るところとすれば……可能な場所は2つですね。ビッグリングとノートラム」
「どっちを落とされても不味い事になるな」
総司令部のビッグリングは当然の事、もう一つのコロニー「ノートラム」を落とされても厄介だ。
ノートラムは地球に最も近いコロニーであると共に重要な生産拠点でもある。
「それと直接地球に落とすって事もあり得るわ。時間を上手く合わせればブルーシアにだってコロニーを落とす事は可能よ」
「たく……ヴェイガンも面倒な事をしやがるな。だったら、さっさと破壊した方が良くないか? ディーヴァのフォトンブラスターならコロニーを破壊することくらいは出来るだろ?」
「そうね。でも、フォトンブラスターキャノンの射程にコロニーを入れるまで、敵の攻撃を凌げる戦力は今のディーヴァにはないわ。それ以上に厄介な事が、まだフリーダムポート内には民間人がいて普通の生活をしていると言う事なのよ」
フリーダムポートを武器として使うと言う可能性はすでにミレースも考えているがコロニーを破壊するための難関がその二つだ。
ディーヴァに搭載されているMSではフォトンブラスターキャノンの射程にフリーダムポートを入れるまで守りきる事が難しいと言う事と、市民がコロニー内に住んでいると言う事だ。
「確かに……例え連邦に加盟していないコロニーとは言え、住民の住んでいるコロニーを破壊することは後々不味い事になるわね」
幾ら、連邦に加盟しておらずコロニーを武器として使われるとは言え、住民がいるコロニーを破壊すれば連邦軍はコロニーの住人を自分達の為に見捨てたと取られかねない。
「住民に避難を呼び掛けようにも連邦の人間の言う事を聞く住民がどれほどいる事か……」
「それにその事を伝える為にはコロニー内の住人と接触する必要があります」
フリーダムポートは過去に連邦軍に支配されていた事から連邦軍の言う事など絶対に聞きはしないだろう。
それ以前にコロニー内の住民に避難を伝える事自体がコロニーの周りにいるヴェイガンが邪魔で簡単にはいきそうにない。
「とはいえ、住民の中には現状に気が付いている人もいます。ジャン・ウルバンと言う人から内部の情報がディーヴァに届けられました」
「と言う事は何とか、コロニー内に侵入するルートは掴めているってことね」
「後はどうにか住人を一斉に避難させる策があれば問題は解決ってところか……」
コロニーの人口密度は低く保たれているが人口はかなりの数になるため、それを一斉に避難させるとなるとかなりの時間と手間がかかる。
「それに関しては私に一つ策があります。住民をコロニーコアに集めて、ディーヴァでコロニーコアを引き抜けばそこまで時間はかかりません」
ミレースの出した案は25年前にヴェイガンの襲撃を受けたノーラが住民を逃がすために取った手段だ。
多少強引だが、25年前に成功しているため、不可能な作戦ではない。
「成程ね……問題は住民が素直にコアに行ってくれるかと言う事と、コアを引きぬくまでディーヴァが身動きが取れないと言う事、後はディーヴァがコアの引き抜きに使われると言う事はコロニーを破壊する手段をフォトンブラスターから変えなければならないと言ったところね」
作戦自体は25年前の物を使う事は出来るが状況までも一緒と言う訳ではない。
当時は後6時間でノーラが崩壊すると言う事態だった為、住民も素直にコロニーコアに避難してくれた。
しかし、フリーダムポートは反連邦思想が強い為、素直にコアに避難はしてくれる筈がない。
コアを引きぬく時にはディーヴァは動く事が出来ない為、敵の格好の的となる。
当時は敵の数はガフランが2機と後からゼダスが1機だけだったが、今はファ・ボーゼ級に多数のドラドがいる。
そして、コロニーを破壊するためにディーヴァのフォトンブラスターキャノンを使う予定だが、コアの引き抜きにグノーシスは適さない。
グノーシスはデータ収集やMSの運搬が主な役目であるため、戦闘能力は低い。
その為、一か所に足を止めてコロニーコアの引き抜きに使うのはグノーシスよりもディーヴァが適任となる。
「そうですね……少し強引ですが当時のノーラと同じ状況にすれば市民も避難してくれるのではないかと……」
フリーダムポートの住人も死にたい訳ではない。
その為、当時のノーラ同様の状況、つまりは後数時間でフリーダムポートが破壊されると言う状況を作りだすと言う事だ。
「まぁ、賭けにはなるが住人を説得するよりかはマシか」
「それなら、コロニーコアを引き抜いた後に勝手にフリーダムポートが破壊されてくれるって訳ね。後はディーヴァの守りね」
「それは防衛のMS隊が頑張るしかないだろ。こっちの戦力は限られているしな。それにコロニーにダメージを与えるとなれば、ヴェイガンも妨害に来る筈だ。そうなればディーヴァを狙う敵も少なくなる筈だ。グノーシスから何機かMSをやれば守りきれる筈だ」
戦力的にはかなり厳しいがそれしか手段はなさそうだ。
「問題は戦力の配分ですね。それを間違えれば作戦の完遂が難しくなりますね」
「コロニーに侵入する組みは少数で行くとして、フリーダムポートの出のシャルロットは確定として……」
「もう一人はエリアルドはどうだ? 少数で行くとすれば機体性能は高い方が良いからな」
侵入組の候補はシャルロットとエリアルドが上がる。
シャルロットは故郷のコロニーであるため、内部の事もある程度は詳しい。
エリアルドは機体性能が最も高い機体に乗っている為、内部で戦闘になった場合は機体性能で押し切る事が出来るだろう。
「そうね。シャルロットのRGライダーは機動力も高いしね。コロニーにダメージを与えるのはシャルロットを抜いたシドウ隊が適任ね」
「だな。レオーネのRGキャノンは火力が高いから、コロニーにダメージを与えるのには最適だ。て事は俺とアルベルトがディーヴァの防衛に回されるって事か」
消去法からウルフとアルベルトが余るため、そうなる。
グノーシスのMS隊の戦力はミレースには未知であるため、二人の会話に口をはさむ事はしない。
「話は纏まったわ」
「ではすぐにでも作戦行動に入りましょう。余り時間をかけたくはないですから」
コロニーを自壊させる以上、時間をかけ過ぎては被害が出るかも知れない。
その為、すぐに作戦行動の為の準備に入る。
作戦を開始するために、ミレースはディーヴァのブリッジに上がり、エリーゼとウルフはアブディエルに戻るために小型艇のある格納庫に戻って来ている。
格納庫にはディーヴァの搭載機が置かれている。
アデルが3機にGエグゼス改が1機、シャルドール改が2機にジェノアスⅡが3機だ。
そのどれもがディーヴァの搭載機である事が一目で分かるように青と白のツートンカラーで塗装がされている。
だが、3機のジェノアスⅡのうち一機だけが、通常カラーの白とピンクで塗装されている。
「ん? アイツ……」
格納庫に置かれている小型艇に向かう途中でウルフは通常カラーのジェノアスⅡの前で整備士と話しているパイロットに目がとまる。
「ラーガン! ラーガンじゃねぇか」
「ウルフ? 何でここに」
そのパイロットの事をウルフが見間違える訳がない。
ラーガン・ドレイス……かつてはコロニー「ノーラ」のアリンストン基地のMS隊の隊長を務めており、フリット達が製造していたガンダムAGE-1のテストパイロットも任されていた。
ウルフとは蝙蝠退治戦役ではディーヴァのMS隊の一画を担い戦い抜いた戦友だ。
「お前、ディーヴァの所属だったんだな」
「ウルフこそ、今は特研に飛ばされたらしいじゃないか」
「まぁな。そのお陰で面倒事に駆り出されてばかりだ」
久しぶりの戦友との再会に互いに軽口を言い合う。
「今回も厄介な作戦をやらないといけないしな」
「そうなのか?」
ラーガンもディーヴァのMS隊の隊長を任されている為、状況は理解しているが、つい先程決まった作戦の事まではまわ伝わっていない。
「その辺りの事はその内、ミレースから聞かされてると思うから俺らは先に船に戻って準備をしないといけないから、悪いがゆっくり話し
てられないんだ」
「ああ……この作戦が終わったらでも構わないさ」
ウルフはエリーゼの待つ小型艇に向かい、ラーガンは作戦の為に機体の調整を整備士と打ち合わせに戻る。
グノーシスがディーヴァと合流し、フリーダムポート破壊の為の作戦を練っている頃、ガンダムZERO Ⅲβを回収したアブディエルはクライドの目的地のソロンシティに到着していた。
ソロンシティは工業コロニーであるため、様々な宇宙船が出入りするため、ブランシャール運送の船籍番号でコロニーの管制は十分に誤魔化せたので堂々を宇宙港にアブディエルを入港させている。
クライドはソロンシティに到着すると、ある施設に向かった。
その施設とはソロンシティ内の片隅に設置されている戦犯者や反逆者を収容している軍刑務所の事だ。
クライドは施設内に到着すると通常は囚人に面会する時にも必ず監視があるが、監視員に金を掴ませて施設内を単独で行動している。
「やぁ、クライド。こうして直接会うのは何年ぶりだろうか」
収監施設の檻の中に収監されていたメルヴィンがクライドにそう言う。
メルヴィンを始めとしたブリッシュ公国の要人は戦犯者として様々な収監施設に収容され、ソロンシティの収監施設に収容されている。
「さぁな」
「まぁ、どうでも良い事だね。それで首尾は?」
「完璧だ。軍はお姫さんは死んだ事になっている。今は騒がれても面倒だから、コールドスリープで眠って貰ってるよ」
表向きは死んだ事になっているヒルデガードだが、実際は王宮が破壊される前に拉致してその事実を知る王宮の防衛の騎士は確実に口を塞ぐためとヒルデガードの生死を確認出来ないように王宮を完全に破壊している。
その事実を知るのはクライドとヒルデガードを確保しているアブディエルのクルー、そしてヒルデガード派に付きながら、裏ではローレンスに情報を流し、クライドとも繋がっていたメルヴィンくらいだ。
「そうか……姫様が無事ならそれで良い」
「相変わらずだな」
「君もね。騎士達の処分はどうなりそうだ」
「お前やルイーズの様な要人はこのまま収監施設に収容されたままだろうな。多分、裁判の結果で懲役は100年くらいになる。ブリッシュ公国の下っ端の騎士達には司法取引で働き次第では懲役は無しにして更にはお前たちの懲役も減らすって事で落ち着きそうだ」
国の重要な役職についていたメルヴィン達はともかく、兵士は軍の戦力として活用したい。
しかし、国を乗っ取った連邦軍に従う訳もない。
そこで政府は騎士達に減刑と言う餌をチラつかせた。
自分だけの減刑なら従わない者も多いだろうが、騎士長達の罪まで働きによっては減刑されると言われれば奴隷のように戦う事は明白だ。
尤も、メルヴィン達の減刑までにどれほど戦果を上げれば良いのかを明確に提示しない為、実質的に減刑などあり得ないが要人を収監施設に人質として取られている以上、騎士達には首を横に振る事は敬愛する騎士長達を見捨てる事になってしまう事からあり得ないだろう。
「君も酷い事をするね」
「俺じゃなくて連邦政府のお偉いさんだよ」
だが、そう仕向けたのは他でもないクライドだ。
「そんな事はどうでも良いんだよ。俺がわざわざお前に会いに来たのはその事を伝えるだけじゃない。メルヴィン、俺の下で働かないか?」
クライドが収監施設まで来た目的の一つはメルヴィンの勧誘だ。
「断るよ」
だが、メルヴィンはクライドが下に付く条件を提示するよりも速く明確に拒絶した。
クライドもその事が分かっていたらしく、即答で断られても驚いた様子は無い。
「お前ならそう言うと思っていたよ」
「悪いね。僕が従うのはグレアム王だけだ」
メルヴィンがクライドの誘いを断った理由それは、ヒルデガードの父親にして先代の王グレアム・ブリッシュを主としたメルヴィンの騎士道故の事だ。
その騎士道があるからメルヴィンはヒルデガードの側に付いているフリをし、ローレンスに付き、クライドに情報を流した。
今のこの結果こそがグレアムの望んだ事を最大限に叶えたと思うがこその行為だ。
「騎士道ね……俺には一生縁がなくて理解出来ないな」
クライドには騎士道の様な高尚な物は持ち合わせていないが、自分にとって譲れない一線があると言うのはクライドも理解出来る。
その為、メルヴィンを幾ら誘おうと自分の下に付く事はあり得ないと判断する。
「だろうね」
「もう、二度と会う事もないだろうな」
「そうだね」
クライドの下に付かない以上、クライドとメルヴィンの接点はなくなる。
そして、今後は二人が会う事は二度とないだろう。
クライドとメルヴィンはそれを理解し完全に決別した。
メルヴィンと完全に袂を分かったクライドは収監施設に来た本命のところまで来ていた。
「お久しぶりです。グルーデックさん」
クライドの本命、それはかつてディーヴァの艦長としてアンバットを落としたグルーデック・エイノアだ。
メルヴィンは偶然にもグルーデックと同じ収監施設に収容されていたため、ついてに勧誘しに来たに過ぎない。
「ああ……久しぶりだな」
グルーデックは以外な客に驚きながらもクライドと対峙する。
「もう少しで出所するみたいだな」
「どこでそんな話を聞いたんだ?」
「少し調べた」
グルーデックはもうすぐ刑期を終えて出所する事が出来る。
クライドはそれを知りグルーデックに接触した。
「そんな事はどうでも良いか……丁度良い。お前から軍に伝えて欲しい事がある。軍内部にヴェイガンと繋がっている者たちがいる。お前の研究所にも……」
グルーデックは収容施設に収容される囚人達から情報を集める内に軍内部にヴェイガンと通じている内通者の存在に気付き、その裏付けとともの更なる情報収集を続けていた。
しかし、グルーデックも反逆者の烙印を押されて囚人の身だ。
その事実を外に伝える術を持たずにいた。
そこに軍内部でもかなりの地位に付いているクライドが監視員の目もなく単独で接触した事でその事をクライドに伝えようとした。
だが、クライドはグルーデックを制止する。
「生憎とそんな事に興味はない。うちの研究所に入り込んだネズミも検討が付いてるし、アリスを監視につかせているから24時間体制でアリスの監視下にいるからプライベートもない状態になってる。軍の内部に内通者がいようと関係ないから、その事は出所後にでもフリットにでも伝えてくれ。アイツ、今はビッグリングの総司令をしてるからさ。グルーデックさんからの呼び出しならすぐに応じてくれるだろうしね」
クライドにとってはこの戦争の行方に対して興味はない。
戦争があろうとなかろうとクライドはMS開発を続けるだえけだ。
軍からストップがかかれば軍を離れて工房でも作り開発を続ければ良いだけの話だ。
「俺がグルーデックさんに会いに来た理由は単調直入に言う。出所後は俺の下に来ないか?」
「お前の下にか?」
「そっ、今はエリーゼ達のグノーシスがあるけど、そろそろ俺の下の戦力を充実させたいからな」
クライドの息のかかっているのは特研以外にはアブディエルだけだ。
しかし、アブディエルは表だって動けないし、グノーシスも余り派手に動かす事も出来ない。
その為、アブディエルとグノーシス以外に自分の息のかかった戦力が欲しくなった。
だが、ある程度信頼を置けて優秀な指揮官はそうそういない。
そんな中、クライドはグルーデックの出所が近い事を知り接触したと言う訳だった。
「何をするつもりだ?」
グルーデックもクライドが戦力を集めて何かをしようとしていると予測する。
だが、自分の様な人材を使う事から表沙汰に出来ない事である事も予測出来る。
「お宝探しだ」
「宝だと?」
「そう、それもとびっきりのお宝だ。それに関してはグルーデックさんも無関係とは言えない」
「ほう……」
クライドにそう言われてグルーデックの目の色が変わる。
「EXA-DB……コロニー国家間戦争時の軍事データを集めたデータバンク、ヴェイガンはそのデータを使いMSを開発している可能性がある。つまり、EXA-DBがグルーデックさんの家族を殺したも同然だ」
グルーデックの妻と娘は40年近く前のヴェイガンが初めて表舞台に現れた「天使の落日」で破壊されたコロニー「エンジェル」で殺されている。
その復讐の為にグルーデックは軍人となり当時はUEと呼ばれて来た敵の事を調査していた。
25年前にその仇であるギーラ・ゾイを自らの手で殺し、復讐を遂げたのですでにグルーデックはヴェイガンと戦う意味を失い自分に付いて来た部下を守るために一人で罪を被って本来ならば英雄として称えられる筈のところを反逆者としてここに収容されている。
だが、クライドがもたらした元凶のEXA-DBの存在はグルーデックが再びヴェイガンと戦う事を決意させるのには十分だ。
「俺はそいつを破壊するつもりだ。その捜索の為に訳ありの連中を動かしている。グルーデックさんにはそれとは別の部隊を率いてEXA-DBを探し破壊して欲しい」
「……良いだろう」
グルーデックは少し考えるが、そう答える。
データバンクに過ぎないEXA-DBに罪があるとは思ってないが、EXA-DBがなければヴェイガンはガフランを製造する事もなく、自分の妻子が死ぬ事もなかった。
そう考えると逆恨みだと分かっていても、野放しにはできない。
どの道、収監施設を出所してもグルーデックはすでに60を過ぎ、前科を持っている為、今更まともな仕事につく事も出来ず、残りの人生を無意味に過ごし、その生涯を終えるのを待つだけだ。
そんな余生を過ごすくらいなら、EXA-DBを探し破壊するために残りの人生を使うのも悪くないと考えた。
「交渉は成立だな……」
「そうだな」
グルーデックから色良い返事を貰えた事でクライドは満足だ。
それだけでわざわざここまで来た意味がある。
「そんじゃ、出所後はよろしく頼むよ。グルーデック艦長」
「こちらこそだ。クライド」
檻越しではあるが、クライドとグルーデック……家族をヴェイガンに殺されて復讐の為に行動を起こした二人は25年前のように同じ目的の為に手を結んだ。