機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第47話

収監施設にてグルーデック・エイノアと再会したクライドは用事を終えるとアブディエルに戻っている。

 25年前には備わっていなかった設備の一つにコールドスリープの装置がいくつも備わっている専用の部屋が作られている。

 そこにブリッシュ公国で拉致して来た元王女のヒルデガード・ブリッシュがコールドスリープして眠っている。

 クライドはヒルデガードのコールドスリープから目覚めさせた。

 コールドスリープを行う時は衣類を付けないのが一般的であるため、起きた状態ではヒルデガードと話す事が出来ないので、クライドの方で用意させた衣類を着るのを待ってクライドはヒルデガードと対峙している。

 

「始めましてと言う事になるのかな。クライド・アスノだ」

「ヒルデガード・ブリッシュです」

 

 ヒルデガードは状況を完全に把握している訳ではないが、少なくとも自分が拉致された事は覚えている為、表情は硬い。

 

「貴方が私を攫ったんですか」

「俺は指示を出しただけだから、そう言う事になるのかな」

「目的は何ですか? お金ですか? それとも地位ですか?」

 

 ヒルデガードの検討違いの発言にクライドは笑いを堪える。

 

「どっちもいらないな。両方持っているし」

 

 すでにクライドはアスノ家の財産だけでなく、MS開発にかける資金は山ほど持っているし、地位も連邦軍で自分のやりたい事をやれるだけの地位を持っている為、金や地位で余所の国の王女を攫う危険を冒す必要はない。

 

「では、私を攫った目的はなんですか?」

 

 金でも地位でもない。

 クライドが自分を拉致した目的がまるで分からいが、ヒルデガードは決してクライドに弱みを見せる事はないが、内心では得体の知れない状況に恐怖し無きたい事を必至に抑えているのをクライドが見抜けない訳もない。

 

「強いていうのであればこの一件に関わった者達の意見を最大限に取り入れた結果かな」

「どう言う事なのですか」

「そうだな。俺の目的はブリッシュ公国のMSや兵器の技術だ。連邦軍は戦力の補強、政府は敵に付くかも知れない不安分子の排除。国民は

 

無能な王を排除。ローレンスは国に最後まで尽くす。そして、グレアムはお前を王家と言う呪いから解き放つ……これらを全ての条件を満たした結果と言う訳だ」

「お父様が……」

 

 クライドの目的はブリッシュ公国の持つ兵器のデータとあるかも知れないEXA-DBのデータ。

 連邦軍はヴェイガンとの戦争における戦力の確保。

 連邦政府は独立国家を名乗って連邦に参加しないブリッシュ公国がいつヴェイガンの側に付くのかの不安の排除。

 それらは全て、ブリッシュ公国を取りこむ事でクリアされる。

 ブリッシュ公国側も、国民は戦時中にも関わらず連邦にもヴェイガンにも付かない事で両方を敵に回しかねない王家の対応に疑問を持ちつつあるが、100年以上も王家が国を纏めていた以上、それに逆らう事は出来ないが、このままでは国は戦争に巻き込まれて滅んでしまう。

 そうならない為にも戦争に参加しようともどちらかの陣営に付く事を内心では望んでいた。

 ローレンスも騎士として国に使え、グレアムとその先代の二代に渡り忠義を尽くし、最後は国の為に死を望んでいた。

 

「俺とお前の父親のグレアムは幼少期からの友人でな。遺言としてお前を王家から解放して欲しいと頼まれた」

「どうしてお父様がそんな事を……」

 

 ヒルデガードには何故、グレアムがこのような事をクライドに頼むのかが分からない。

 ヒルデガードの中のグレアムは国民や自分を心の底から愛した良き王だった。

 そのグレアムがそのような事を頼んだのか分からない。

 

「アイツは王として理想的だった。国民を愛して国の為なら平気で自分を犠牲にて非情に徹することも出来た」

 

 グレアムは決して交戦的では無かったが、国を守るために強い王として振る舞い、自身もMSの操縦を覚えて戦いとなれば自らが先頭に立っていた。

 国を守るためなら、他国を犠牲にする事もいとわないくらいにだ。

 そのつど、グレアムの心は傷付いたがそれを決して誰にも悟らせる事はなかった。

 それがグレアムの父、ヒルデガードの祖父から教えられた王としての覚悟だ。

 しかし、グレアムはヒルデガードにその事をどうしても伝える事が出来ずに病にかかった。

 それにより、自身の最期を悟ったグレアムはメルヴィンを通じてクライドに遺言としてヒルデガードを王家と言う呪いから解くように頼んだのだった。

 

「結局、アイツは最後には王である事よりも父親だったって事だよ」

 

 王としては次の王であるヒルデガードに王としての覚悟を伝えるべきであったが、余りにも辛い覚悟を娘に負わせたくはない。

 だが、ヒルデガードがグレアムの娘である以上、次の王はヒルデガードだ。

 その時にグレアムは王家が決して逃れる事の出来ない呪いに感じた。

 その呪いから娘を救うためには、国の外の人間であるクライドに頼るしかなかった。

 それで多くの犠牲が出ようともだ。

 

「お父様が私の事を思って貴方に頼んだ事は分かりました……でも、やり方は他にあったのではないですか? 誰も傷つく事もなくみんなが救われるやり方が……」

「ないな」

 

 ヒルデガードはここまでの事をやってのけたクライドなら、犠牲を出す事も無く全てを救う事も出来たのかも知れないと訴えたが、クライドが躊躇う事なく一刀両断する。

 

「人が生きる以上、必ず誰かを犠牲にして生きてるんだよ。誰も犠牲にしないでみんなを救うなんてのは理想ですらない妄想だ」

「そんな事は……」

「戦争にしてもそうだ。戦争をすれば多くの人が死ぬ。だからと言って戦争が終われば撃墜王は大量殺人犯だ。戦争があるから兵器の売買で食って来た奴は喰っていた奴は戦争が終われば仕事にあぶれて飢え死にする奴だっている。確かに戦争が終われば理不尽に死ぬ事もないだろう。人殺しの兵器を売って食っている奴が野垂れ死ぬのは自業自得だ。でも、お前の言うみんなに入っているのであれば両方救う事などあり得ない。平和の為に兵器の売人を殺すか、兵器の売人の為に理不尽に死ぬ可能性に目をつぶるか……どちからをな」

 

 クライドの例は極端だが、それも事実だ。

 ヒルデガードはクライドに反論する事が出来ない。

 

「だからお前も選べ。お前はすでに社会的には死んでいる。その通りに死ぬか、別の人間として生きるかだ」

 

 クライドがヒルデガードを拉致した目的がそれだ。

 すでにヒルデガード・ブリッシュと言う人間には死亡認定が出ている。

 その為、戸籍を偽造し、名前や外見を変えればヒルデガード・ブリッシュと言う人間は完全にいなくなる。

 そして、その後はヒルデガードは別の人間として生きる事になる。

 ブリッシュ公国とは無関係の一人の少女としてだ。

 それがクライドが書いた脚本のクライマックス。

 しかし、ヒルデガードがそれを望まず死を選ぶ場合まではクライドは面倒を見る気はない。

 別の人間として生きる気がないのであれば、公式表明の通りに死んで貰う他ない。

 

「その前に一つお聞きしたいです」

「何だ?」

「今でも私は国民に必要とされていますでしょうか?」

「されてないな」

 

 クライドは隠す事なく伝える。

 そして、その事はヒルデガードもうすうすは気づいていた。

 コロニーレーザー攻略戦の前にエリアルドに励まされてたいるが、すでに国民が王として慕っているのは前代のグレアムで自分はその娘としてしか見られてはいないと言う事を……

 その事実をクライドに突き付けられてヒルデガードは決断する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、ディーヴァが予定位置に到達しました」

「ガンダムとRGライダーの射出後、機関最大で前進、シドウ隊を射出」

 

 ヴェイガンの作戦の阻止の為にディーヴァとグノーシスの作戦が開始されようとしている。

 すでにディーヴァにはウルフ隊のGバウンサーとアデル改の二機を移動させている。

 後はガンダムZERO ⅢαとRGライダーを射出した後に敵の目をディーヴァとコロニーに接近する二機から反らすためにシドウ隊が仕掛け、それと共にフリーダムポートに致命的なダメージを与えるのがグノーシスの役目だ。

 グノーシスのカタパルトが開閉し、中央カタパルトにはガンダムZERO Ⅲαが移動されている。

 今回の作戦は時間との勝負であるため、ガンダムZERO Ⅲαは身軽に動けるように追加のアーマーは装備しない。

 その上でコロニー内での戦闘を行う為、威力の高いスーパードッズライフルは腰にマウントし、アーヴィンで積み込まれた物資の中にあったガンダムZERO Ⅲα専用に開発された実弾式のバズーカを装備し、シールドの裏側にはバズーカの予備のマガジンが増設されている。

 それと同時進行で右のカタパルトにはRGライダーが移動されて来る。

 

「エリアルド、シャルロット、頼むわよ。貴方達の働きでこの作戦の犠牲者の数が大きく変わるわ」

「了解」

 

 コロニーの内部に侵入し、住民をコロニーコアへと避難させるようにするためには内部に侵入する二人が重要となって来る。

 フリーダムポートを何処にぶつけるかは現段階では不明だが、予想される場所はどこにぶつけられても被害が大きい。

 最悪、フリーダムポートの住人を見捨ててでもコロニーを破壊する必要が出て来る。

 そして、二機は射出される。

 その後に左側のカタパルトにはコンテナが射出される。

 射出されたコンテナは開閉し、大きな布状の物がコンテナ内から出て来る。

 その布をガンダムZERO Ⅲαが掴み、ストライダー形態のRGライダーの背部を掴む。

 ガンダムZERO ⅢαはRGライダーの背部に乗ると二機が隠れるように掴んだ布を羽織る。

 すると、布を羽織った二機は周囲に溶け込む。

 これはクライドがヴェイガンのステルスシステムを独自に解析し開発したステルスマントだ。

 それを機体に羽織らせる事でヴェイガンの戦艦同様に周囲に溶け込みレーダーにも映らなくなる。

 だが、戦闘に邪魔になる上にMSサイズの物体を覆うほどの大きさでしか生産出来ず、大量に生産する事は出来ない上にステルス自体も完全と言う訳ではないため、正式な採用には至っていない。

 しかし、今回は気休め程度だが敵の目を欺く為に使用されている。

 ステルスマントで身を隠した二機は若干大回りだが、敵に見つかる事なくコロニーに取りつき内部に侵入することが出来た。

 

「……ここまでは順調ね」

「後は協力者と接触だが……」

 

 内部に入りステルスマントを捨て、コロニーの地下に辿りつき周囲を警戒するが敵の気配は感じられない。

 潜入は成功し、次はディーヴァにコンタクトを取っていたジャンと接触し、作戦の内容を伝え協力を要請するだけだが、名前は分かるが顔までは分からない。

 

「どうする。シャル」

「当てがあるわ。私に付いて来て」

 

 シャルロットはジャンの居場所に心当たりがあるらしく、エリアルドを誘導する。

 コロニーの地下を進む二機はかつて、反乱軍がMSを隠していた場所に出る。

 今では使われておらず、人の出入りの無いため、MSを隠すには絶好の場所だ。

 二人はMSをそこに置き、機体から降りる。

 

「ここよ」

 

 シャルロットはエリアルドを誘導して地下の街を歩く。

 二人はパイロットスーツのままな為、普通なら目立つがすでにフリーダムポートの地下には人が済んでいる気配がない。

 その為、パイロットスーツで出歩いても騒ぎになる事はない。

 そして、シャルロットは一軒の家の前に立ち止まる。

 そこはかつて、シャルロットが母と叔父と共に住んでいた家だ。

 シャルロットと母親のローザはシャルロットが幼い時に反連邦運動が盛んとなっていくフリーダムポートに嫌気をさして出て行ったが、叔父のジャンは未だにこのコロニーに残っている。

 そのジャンこそがコンタクトを取って来た相手である可能性は高い。

 シャルロットは警戒しつつも扉をノックする。

 ノックし少し経つを中から人が出て来る。

 二人は警戒するが、中からは目的の相手のジャンが出て来る。

 連邦のパイロットスーツを来た二人が家の前に立っていた為、ジャンは一瞬驚くがシャルロットが来たと言うのと連邦軍のパイロットスーツを来ている事から事情を察し、周囲に人の目がない事を確認して中に招く。

 

「まさなシャルロットが来る事とはな……」

「私の船がフリーダムポートの事件に関わったのは偶然だけどね」

「そうか……そっちの君はシャルロットの同僚かね?」

「はい。エリアルド・アスノ中尉です」

 

 エリアルドの名前を聞いてアスノの姓にジャンは反応する。

 それはかつてコロニーを解放したクライドと同じ姓を持つからであろう。

 

「成程……作戦は理解した。俺はタイミングを合わせて、住民をコロニーコアに避難するように仕向ければ良いんだな」

「出来ますか?」

「やって見る」

 

 そう簡単に出来る事ではないが、聞く限りではそれ以外にフリーダムポートの住人が生き延びる術はない。

 

「それでは俺達は機体に戻ります」

 

 後は外のディーヴァとグノーシスの仕事だ。

 それまではコロニー内に潜伏し、コロニーにダメージを与えた後、コロニーの住人に危機感を植え付けるためにコロニー内でひと騒動をすれば良い。

 二人は隠してある機体に戻りジャンも作戦通りに行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二機がフリーダムポートに潜入して暫くして、グノーシスはコロニーの防衛網に接近している。

 すでにその接近はコロニー側のヴェイガンにも捕捉され、防衛のMSが展開している。

 そして、シドウ隊が出撃し作戦が開始される。

 

「俺とアスノで道を切り開く」

「了解」

 

 シドウのRGブレイドとユーリアのジェノバースが敵防衛網にサブフライトシステムで突撃する。

 敵と接触すると、二機はサブフライトシステムを乗り捨てて、サブフライトシステムはMSを載せていない状態で敵陣に突っ込んで少しすると爆発を起こす。

 周囲の敵を巻き込んでサブフライトシステムが爆発し、それが戦闘開始の合図となる。

 RGブレイドはドッズライフルでジェノバースはスーパードッズライフルを連射する。

 その後方からはRGキャノンとグノーシスの援護射撃が行われている。

 今回の作戦では3機の中で最も火力の高いRGキャノンの砲撃でコロニーにダメージを与える手筈となっている為、RGキャノンはいつもよりも後方で援護している。

 

「ファンネル」

 

 ジェノバースはドッズファンネルは縦横無尽の動き敵を撃墜する。

 それを逃れた敵もRGブレイドによって破壊された。

 

「邪魔」

 

 ジェノバースはシールドの折り畳み式のシグルブレイドでバクトを切り裂き、スーパードッズライフルでガフランを落とす。

 

 

 

 

 

 

 

「グノーシス、戦闘に入りました」

 

 ディーヴァがコロニーコアを引きぬく為に所定の位置に到着すると、グノーシスがヴェイガンと交戦した事が捕捉出来ている。

 そして、それはグノーシスが予定通りに作戦を遂行している事を示している。

 

「MS隊を発進させて、その後、コロニーコアと本艦の接続作業に入れ」

 

 ディーヴァから全MSが射出されてディーヴァも作戦行動を開始する。

 ディーヴァから射出されたMS隊は3隊だ。

 一つはグノーシスから借りて来たウルフ隊にラーガンのジェノアスⅡを隊長機とし3機のアデルの4機で構成されたラーガン小隊、3つ目はGエグゼス改を隊長機としジェノアスⅡ2機とシャルドール改2機の5機で構成されたベルツ隊だ。

 今回の作戦ではラーガン小隊とウルフ隊がディーヴァの防衛、ベルツ隊がディーヴァとコロニーコアとの接続作業を担当している。

 ベルツ隊の5機はジェノアスⅡがディーヴァと繋がっているワイヤーを持ち、その前に隊長機のGエグゼスとシャルドール改が展開している。

 

「隊長、コロニー内から敵MSが」

「分かっている」

 

 コロニーの中からフリーダムポートのMSのジラらゼノがマシンガンを連射して妨害に出て来る。

 

「敵は旧式のMSだ。時間をかけるなよ」

 

 Gエグゼス改はドッズライフルⅡBをシャルドール改はドッズガンで応戦する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルツ隊が交戦を開始したか……」

「敵がこっちにも来るぜ!」

 

 ディーヴァの存在に気付いたヴェイガンも予測通りに戦力を分散させてディーヴァにもMSを差し向けて来る。

 

「ラーガン、俺達が先鋒をやらせて貰うぞ。行くぞアルベルト」

「了解っす」

 

 ウルフのGバウンサーとアルベルトのアデル改がドッズライフルを撃ちながら向かって来る敵を迎撃する。

 

「前線はウルフ達に任せよう。俺達はディーヴァの防衛を優先する」

 

 前線はウルフとアルベルトに任せれば良い。

 元よりそのつもりで三機のアデルの内、二機にはタイタスとスパローのウェアを装備させており、どんな敵が来てもある程度は対応出来るようになっている。

 ラーガンのジェノアスⅡと通常のウェアのアデルがウルフ隊の援護射撃を行い戦闘が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外での戦闘が開始して暫くした頃、内部に侵入した二人はコロニー内に潜んだまま待機している。

 

「まだか……」

「作戦ではすでに戦闘が始まった頃ね」

 

 二人には外の様子は殆ど分からない。

 下手に外と通信を行えば通信を傍受される可能性がある。

 その為、二人はそのの状況が分からないままで待機せざる負えない。

 

「今は待つしかないわね」

「そうだな」

「それよりも、エリアルド……大丈夫なの?」

「何がだ?」

 

 今は待つしかないため、黙って待っていても精神的に疲れて来る為、シャルロットが気になっていた事をエリアルドに尋ねる。

 

「アーヴィンでベータに負けて沈んでたでしょ?」

 

 ウルフと共にファムに敗北したエリアルドのガンダムZERO Ⅲαを回収し、機体から下されたところもシャルロットは見ている。

 その時の様子がいつものエリアルドで無い事は明白で、気にはしていたのだが、いつの間にかいつも通りとは言い難いが普通に戻っていた。

 

「ウルフ隊長に喝でも入れられたの?」

「まぁ、そんなところだ。俺も自分のやる事が見えて来たってところだ」

「ふぅん」

 

 次にファムと戦場で出会った場合にはファムをヴェイガンから奪い取る。

 それが、エリアルドの出した答えだ。

 ファムがそれを望まないにしてもそれはその時になったら考えれば良い事だ。

 今はその事だけを考えて前に進むだけだ。

 

「俺の事よりもシャルの方は大丈夫なのか? ここはお前の故郷なんだろ?」

 

 フリーダムポートはシャルロットの生まれたコロニーで幼少期はここに住んでいた事もある。

 そのコロニーを自分達で破壊しなければならないと言う状況にあるため、自分の事よりもシャルロットの方が心配だ。

 

「別に良いわよ。ここの連中はさ、私の生まれる少し前までは連邦軍に理不尽に虐げられていたらしくてね。それが解放された途端、反連邦運動なんか初めてさ……私の母さんはそれについて行けなくて局長の協力で私と一緒に別のコロニーに移住したのよ。そんで今はヴェイガンに協力してさ……ここが連邦に支配されていた理由がヴェイガンにある事も忘れて……馬鹿みたいなのよ。ここの連中は」

 

 確かにフリーダムポートは連邦軍に支配されていた。

 だが、その一番の名目はヴェイガン……当時のUEからコロニーを守るための軍事資金とされていた。

 その資金を市民から巻き上げ、軍に申請し得た金で支配の為の戦力を集め、私腹を肥やしていたのがサザーランド兄弟だ。

 更に言えば連邦軍が設立されたのもヴェイガンがエンジェルを破壊したせいでUEに対抗するために設立された軍隊が連邦軍だ。

 つまり、ヴェイガンが行動を起こさなければ連邦軍が出来る事もなく、コロニーが理不尽に支配される事もなかっなのかも知れない。

 連邦を糾弾する運動をするだけならまだしも、元凶とも言えるヴェイガンに協力するだけでなく挙句の果てにコロニー自体を武器として使い捨てにされようとしているのだ、シャルロットからすれば、コロニーの住人は馬鹿としか言いようがない。

 

 

「そうか……」

 

 エリアルドもそれ以上は何も言えない。

 会話が途切れて二人の間に沈黙が流れる。

 すると、コロニー全体が大きく揺れた。

 現在の状況的に戦闘によるものだと思われる。

 つまりは上手いぐわいにコロニーに対してダメージを与える事が出来たと言う事だ。

 

「エリアルド」

「ああ……行くぞ」

 

 RGライダーがストライダー形態に変形し、ガンダムZERO Ⅲαを乗せてコロニー内に向かう。

 コロニー内に入った二機はわざと目立つように市街地の上空を飛行し、コロニー内の元連邦軍の駐屯基地に向かう。

 ガンダムZERO Ⅲαは駐屯基地に対してバズーカを撃ち込む。

 バズーカの一撃は駐屯基地の施設を破壊し、迎撃のMSが出て来る。

 

「良くもまぁ、そんな旧式のMSで反連邦運動をやってるわね」

 

 迎撃のMSはジラやガラが殆どで挙句の果てはデスぺラードなどの旧式のMSや作業のモビルスタンダードがマシンガンで武装した程度でドッズガンすら装備していない。

 ガンダムZERO Ⅲαはバズーカを撃ちながらRGライダーの背から降りて駐屯基地に降下する。

 迎撃のMSはマシンガンで応戦するが、ガフランの装甲ですら傷をつける事の出来ない武器ではガンダムZERO Ⅲαの装甲に傷をつける事など出来はしないのは当然の結果だ。

 上空を飛行するRGライダーはミサイルで施設を潰していく。

 ジラがヒートホークを振り上げてガンダムZERO Ⅲαに襲いかかるが、ガンダムZERO Ⅲαはかわしてシールドのビームソードでジラを切り裂く。

 

「エリアルド、そろそろ切り上げてコロニーから脱出するわよ」

「ああ」

 

 ガンダムZERO Ⅲαは大きく飛び上がり、RGライダーに飛び乗る。

 駐屯基地から迎撃部隊がマシンガンなどで追撃するが、ガンダムZERO Ⅲαはシールドのミサイルで弾幕を張り、駐屯基地から離れて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だと?」

 

 戦闘が続く中、エルピディオはフリーダムポートに致命的なダメージを受けて後数時間後には崩壊するとの報告を受けていた。

 今の今までエルピディオに報告がなかったのは戦闘の指揮を取っていた者が相手を地球種と見下し侮っていたと思われる。

 相手が誰であっても見下しこそはしても侮るなどあり得ないが、今はその者を処罰をしている余裕はない。

 

「敵の戦力は」

「戦艦が2隻とMSが10数機です」

「それだけでやってのけたと言うのか……」

 

 たったの戦艦2隻と10数機のMSでそれだけの事をやってのけた事に驚くがモニターに敵艦や敵MSの映像が映されて納得がいく。

 

「ガンダムの母艦に……もう一隻はアンバットを落とした時の木馬か……」

 

 グノーシスは前に交戦した経験もあり、あの艦にガンダムを始めとして、ヴェイガンと対等以上に戦う事が出来る事は重々承知している。

 もう一隻のディーヴァは25年前にアンバットを落とした時の旗艦だ。

 25年経ってすでに最新鋭とは言えないが、地球との戦いにおいて大きな敗北となったアンバットを落とした船だ、それを知っていたのなら誰が油断出来よう。

 

「木馬が足を止めているな……」

「木馬のMSがコロニーコアと木馬を接続しているようですね」

「ノーラの時のようにコアを引きぬくつもりか……」

 

 エルピディオもガンダムAGE-1が初めて投入されたノーラの顛末は知っている。

 その時と同じ様な事をしようとしている事は大体は想像がつく。

 

「如何します?」

「どの道、この作戦は失敗だ。だが、このままやられたままで済ませる訳にはいかないな。私が出る。せめて、このコロニーの連中だけでも始末して来る」

 

 エルピディオはそう言い、ブリッジを離れる。

 

「ジーノ、お前はシルヴァーノとフィルミーノを連れて木馬を落としてこい。他は私と共にガンダムを討つ」

 

 エルピディオは作戦上、動く事の出来ないディーヴァだけでも沈める気だった。

 そこにジーノとフィルミーノの二機の砲戦仕様のゼダスSを差し向けて動けないディーヴァを沈め、グノーシスがいると言う事は戦場のど

 

こかにガンダムがいる可能性が高い為、残りの4機でガンダムを仕留める腹だ。

 

「了解しました」

 

 ジーノ機を戦闘にシルヴァーノ機とフィルミーノ機もディーヴァの方に向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

「隊長、早い奴が来ます!」

「分かってる。Xラウンダー専用機か」

 

 ディーヴァを防衛するウルフ隊とラーガン小隊でも三機のゼダスSの接近は捕捉している。

 

「こんな時に出て来やがって……」

「避難はまだ終わっていない」

「あいつらとは戦闘経験がある。俺達に任せろ」

 

 Gバウンサーとアデル改はゼダスSにドッズライフルを放つ。

 三機のゼダスSは散開してビームバルカンを放ち、Gバウンサーとアデル改はシールドで防ぐ。

 ジーノとフィルミーノの砲戦仕様のゼダスSがゼダスキャノンを放ち、シルヴァーノ機が単体でディーヴァの方に向かう。

 

「シルヴァーノ! 勝手な事を」

「ラーガン! 一機、そっちに向かった」

「一機くらいなら、俺達で対応する」

 

 二機のゼダスSは砲戦仕様な為、下手にディーヴァに接近させればその火力で動く事の出来ないディーヴァは簡単に沈められる。

 その為、Gバウンサーとアデル改は砲戦仕様のゼダスSをこの場に足止めをしなければならない。

 

「ガンダムもどきでもない雑魚が!」

 

 シルヴァーノのゼダスSはビームバルカンを連射してラーガン小隊に突っ込む。

 ラーガンのジェノアスⅡはシールドで防ぎながら、ドッズガンで応戦する。

 

「相手がXラウンダーだからと言っても敵は一機だ。落ち着いて訓練通りに戦えば良い」

 

 連邦軍ではXラウンダーの研究やXラウンダー専用機の開発はヴェイガンよりも遅れているが、対Xラウンダーの訓練は各部隊で行われている。

 無論、ディーヴァでもだ。

 アデルタイタスがゼダスSのビームバルカンを受けながらも肩からビームを展開し、ショルダータックルで突っ込む。

 

「鈍いんだよ」

 

 だが、タイタスの機動性能ではゼダスSの機動力には付いていけない為、簡単にかわされるがタイタスとゼダスとの相性の悪さは25年前から分かっている。

 かわされる事が分かっているのであれば、敵のかわす方向に先回りすれば良いだけの事だ。

 ゼダスSの回避先にはアデルスパローが構えており、膝のニードルガンを連射する。

 

「小賢しい!」

 

 ゼダスSはゼダスソードでニードルガンを弾くが足を止めてしまう。

 足を止めたところを見計らい、ジェノアスⅡとアデルの二機の集中砲火を浴びる。

 

「その程度の攻撃など!」

 

 ゼダスSは腕の電磁装甲で二機からの攻撃を最小限の動きで防ぐ。

 

「シルヴァーノ! 後だ!」

「なっ!」

 

 シルヴァーノは敵の連携を上手いぐわいに防いでいた為、そこに油断が生じていた。

 ウルフ隊と交戦しつつも遠目でシルヴァーノの戦闘を見ていたジーノが警告するが、気付いた時には遅い。

 アデルタイタスのビームラリアットが背後からシルヴァーノ機の胴体に炸裂する。

 バクトの重装甲をぶち破るためにAGEシステムが導き出したタイタスの一撃をまともに食らえばゼダスはひとたまりもない。

 シルヴァーノのゼダスSは一撃で胴体が粉砕されて爆散した。

 

「シルヴァーノ! あの馬鹿が……」

 

 シルヴァーノ機の撃墜に気を取られ過ぎていたため、ジーノ機の右足にドッズライフルが直撃して、右足が吹き飛ぶ。

 

「ちぃ!」

「副隊長!」

 

 フィルミーノ機がジーノ機の前に出てビームバルカンでGバウンサーとアデル改を牽制する。

 

「……敵に流れがある以上、これ以上の損害は出せない。フィルミーノ、撤退するぞ」

「了解」

 

 ジーノとフィルミーノとしてもシルヴァーノの仇を取りたい気持ちがあるが、シルヴァーノのゼダスSを撃墜した時の敵の動きから敵は対Xラウンダー用の訓練を積んでいる上にジェノアスⅡの動きも経験豊富なパイロットの動きをしている。

 その上、Gバウンサーとアデル改の二機も合わせて相手をするのは無理だ。

 無理をして戦って返り討ちにあっては、シルヴァーノの仇を討つ事は出来ない。

 だからこそ、ここは撤退を選択した。

 二機のゼダスSは飛行形態に変形すると、ファ・ボーゼ級に戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンダムZERO ⅢαとRGライダーはコロニーの外へと脱出する。

 コロニーの外に出た途端にガンダムZERO ⅢαはRGライダーから離れて戦闘の光のする方に向かっていく。

 

「ちょっと! エリアルド!」

 

 エリアルドはシャルロットの制止を無視して進む。

 ガンダムZERO Ⅲαの存在に気がついたドラドがビームバルカンで向かえ討つが、ガンダムZERO Ⅲαはシールドのビームソードでドラドを切り裂き、シールドのビームキャノンを連射する。

 

「どこだ……居るのか……」

 

 エリアルドは交戦しながらも、戦場にファムのガンダムZERO Ⅲβがいないかを確認している。

 モニターに反応のある敵機をチェックするが、どれもドラドやガフラン、バクトで違い、ファムの感覚すら掴めない。

 

「この感じは……違う。ファムじゃない」

 

 Xラウンダーの感覚を感じたが、それはファムの物で無い事はすぐに分かる。

 それはエルピディオの物だ。

 エリアルドはその感覚を無視するが、エルピディオの方は無視をする気はない。

 

「お前の首だけはマリオン様に持ち帰えさせて貰う! ガンダム!」

 

 エルピディオを戦闘に4機のゼダスSはガンダムZERO Ⅲαにビームバルカンを放つ。

 

「お前たちの相手をしている暇はない!」

 

 ガンダムZERO Ⅲαはバズーカを放つが、弾速の遅いバズーカではゼダスSを捉える事は出来ない。

 

「そんな武器で私と戦おうとは舐められたものだ!」

 

 エルピディオ機はビームキャノンを放ち、ガンダムZERO Ⅲαはかわすが左右からベアトリーチェ機とデメトリオ機がビームバルカンを放つ。

 ガンダムZERO Ⅲαはシールドで防ぐが、左右からの攻撃に完全に防ぐ事は出来ない。

 そして、セルジョ機がビームサーベルを展開して突っ込んでくる。

 ガンダムZERO Ⅲαはバズーカの砲身を持って接近して来るセルジョ機を殴り飛ばす。

 それによりバズーカの砲身は曲がり使いものにならなくなったため、シールドに増設した予備のマガジンと共にパージする。

 ガンダムZERO Ⅲαはスーパードッズライフルを持ちエルピディオ機に放つ。

 

「そんな攻撃が当たるものかよ!」

 

 エリアルドはファムを探す事に気を取られる余り、目の前の敵に集中出来ていない。

 その為、エルピディオ機や他のゼダスSが攻撃をかわす事は容易だ。

 その上で敵の方が数も多く、機体性能で勝っていても集中せず、追加のアーマーも装備していない今のガンダムZERO Ⅲαでは簡単に倒せる敵ではない。

 それがエリアルドを焦らせて更に集中を欠いて行くと言う悪循環だ。

 

「邪魔をするな!」

 

 ガンダムZERO Ⅲαはビームサーベルでエルピディオ機に切りかかるが簡単にかわされてビームキャノンを放たれる。

 辛うじてシールドで防ぐ事は出来たが、シールドが破壊されて吹き飛ぶ。

 

「我らの力……余り舐めるなよ。ガンダム」

 

 4機のゼダスSはガンダムZERO Ⅲαを囲むようにしながら、ビームバルカンで追い詰める。

 ガンダムZERO Ⅲαはかわしてはいるが、完全にかわせる訳もなく、被弾する。

 追加アーマーを装備しなくてもガンダムZERO Ⅲαの装甲は簡単に破られる物ではないが、このままではやられるのも時間の問題だ。

 

「エリアルド!」

 

 エリアルドに追いついたシャルロットのRGライダーがストライダー形態でソードライフルとビームガンでゼダスSを牽制しつつ、ガンダムZERO Ⅲαに突っ込みガンダムZERO ⅢαはRGライダーに掴まる。

 

「助かった。シャル」

「良いわよ。理由は分からないけど、急ぐ用があるんでしょ。ここは私が時間を稼いでおくわ」

「……助かる」

 

 4機のゼダスSを相手に単機で相手をするのは難しいが時間を稼ぐだけであれば、RGライダー一機でも問題は無いとエリアルドは判断する。

 ガンダムZERO Ⅲαはそのまま、先に進みRGライダーは旋回する。

 

「悪いけど、ここから先は通行止めよ!」

 

 RGライダーはソードライフルを放つ。

 ゼダスSは散開して、エルピディオ機がガンダムZERO Ⅲαを追う。

 RGライダーは牽制しようとするも、残りの三機のゼダスSの妨害を受ける。

 

「ガンダムもどきの相手は適当なところで切り上げろ。本命はガンダムだ」

「流石に4機全てを抑えるのは無理ね」

 

 エルピディオ機の追撃を諦めてRGライダーは残りの三機のゼダスSの相手をする。

 三機のゼダスSは飛行形態でRGライダーを勢いに乗せないように位置取りをしてビームバルカンで攻撃する。

 

「面倒な位置に……」

 

 RGライダーはMS形態に変形し、シールドで防御しながらソードライフルで応戦する。

 

「さっさと片付けて隊長のところに行くよ!」

 

 ベアトリーチェ機が両手にビームサーベルを展開してRGライダーに切りかかる。

 RGライダーはビームサーベルを抜いて受け止めた。

 二機は鍔迫り合いになるが、すぐにベアトリーチェ機が引いて、背後からデメトリオ機がビームサーベルでRGライダーの右腕を切り落とす。

 そして、後方に下がっていた、ベアトリーチェ機がビームバルカンを放ち、更にはセルジョ機がビームキャノンを放つ。

 RGライダーはビームバルカンで致命傷こそはないが装甲が削られ、ビームキャノンで右足が吹き飛ぶ。

 

「このくらいで良いだろう。隊長の援護に向かうぞ」

 

 RGライダーにある程度の損傷を与え、これ以上の戦闘は出来ないと判断して、三機のゼダスSは飛行形態に変形すると、エルピディオの元に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、エリアルドはエルピディオを引き離せないでいる。

 ガンダムZERO Ⅲαは左腕にビームサーベルを持ち、エルピディオ機に切りかかる。

 エルピディオ機はかわしてビームバルカンを放ちながら、接近してビームサーベルを振り下ろす。

 ガンダムZERO Ⅲαはスーパードッズライフルを向けるが、ビームサーベルで切り裂かれた。

 

「ちっ」

 

 ガンダムZERO Ⅲαは頭部のビームバルカンで牽制するが、エルピディオ機はゼダスソードを付けて切りかかり、ビームサーベルで受け止める。

 

「どうした! マリオン様の機体を傷付けた実力はこの程度か!」

 

 エルピディオ機はガンダムZERO Ⅲαを蹴りつける。

 そして、ビームキャノンを放ち、ガンダムZERO Ⅲαの左腕を肘から破壊する。

 

「隊長」

 

 RGライダーを損傷させて来た三機のゼダスSが合流し、ビームバルカンでガンダムZERO Ⅲαに集中砲火を浴びせる。

 シールドを失い、かわすしかないがかわしきれない。

 

「このままじゃ……」

 

 このままではファムを探す前に落とされる。

 だが、近くに友軍もいないため、どうする事も出来ない。

 

「ふん、大した事はなかったが、終わりにさせてその首……貰い受けるぞ! ガンダム!」

 

 エルピディオ機が両手にビームサーベルを展開し、ガンダムZERO Ⅲαに突っ込んでくる。

 避けようにも他のゼダスSのビームバルカンを受けて言う為、思うように動く事も出来ない。

 ビームサーベルを展開し、接近するゼダスSがエリアルドの目前まで接近するが、RGライダーが横からエルピディオ機に突っ込んで軌道を変える。

 

「シャル!」

「余り世話をかけるんじゃないわよ……エリアルド、とにかく引くわよ。グノーシスの近くまで行けば何とかな……」

 

 シャルロットからの通信は不自然なところで潰え、先ほどまでシャルロットが映されていたモニターにもノイズが走っている。

 エリアルドはモニターでシャルロットのRGライダーを確認する。

 そこにはエルピディオのゼダスSに組みついているが、ゼダスSがRGライダーの背中にビームサーベルを突き刺しているのが分かる。

 それを見たエリアルドは状況が理解出来たが、頭の中が真っ白になる。

 ゼダスSのビームサーベルは背中から突き刺され、RGライダーの腹部から先が出ている。

 刺さっている位置から先の出ている位置はどんなに都合良く解釈しようと確実にRGライダーのコックピットは通っている。

 そこから導き出される答えは一つしかない。

 

「シャル……」

 

 それをエリアルドは認めたくはない。

 エリアルドもトルディアで勤務していた時のヴェイガンの襲撃で同僚に戦死者が出ている。

 だが、基地のパイロットはアルベルト以外はあくまでも仕事上の付き合いしかなく、戦死しても何も思わない訳ではないが、戦争なのだと、彼らはトルディアを守って死んだのだと割り切る事が出来た。

 しかし、エリアルドは身近な人の死を体験した訳ではなかった。

 シャルロットとはシャルロットの死んだ父親が両親と戦友だった事もあり、フリーダムポートからの移住の時も何かと手助けとしているだけでなく、軍に入るずっと前から家族ぐるみでの付き合いがあり、家族も同然だった。

 そのシャルロットの死を簡単に受け入れる事は出来ない。

 エリアルドは心の底から受け入れる事が出来ない。

 そして、それは起きた。

 ガンダムZERO Ⅲαから黒いオーラの様な物がガンダムZERO Ⅲαを中心にして、広がっていく。

 この現象は25年前にも一度だけ起きている。

 その時の現象に良く似ているが、あの時とは違いガンダムZERO Ⅲαを中心として球状に広がっているのと、純粋な黒ではなく、若干赤や、青い色も混ざっているように見える。

 

「何だ……アレは!」

 

 エルピディオは直感的に黒いオーラが危険と悟り、機体を引かせる。

 だが、ガンダムZERO Ⅲαに近かったベアトリーチェ機が黒いオーラに触れてしまう。

 すると、黒いオーラに触れているところから粒子になっていく。

 

「隊長……たす……」

 

 ベアトリーチェはエルピディオに助けを求めるが、その前に黒いオーラに飲み込まれて完全に粒子と化し、跡形もなく消滅する。

 

「よくもベアトリーチェを!」

「止せ! セルジョ!」

 

 ベアトリーチェ機が消滅した事に逆上したセルジョがゼダスソードで黒いオーラを切り裂いてガンダムZERO Ⅲαに向かおうとするが、ゼダスソードも黒いオーラに触れた途端に粒子と化す。

 そして、セルジョ機もベアトリーチェ機と同じ運命を辿る。

 

「隊長!」

「とにかく、あの黒い奴に触れるな!」

 

 エルピディオ機とデメトリオ機は飛行形態でとにかく、黒いオーラに触れないように逃げる。

 

 

 

 

 

 

 

「シャルロット……」

 

 コロニーにRGキャノンの砲撃でダメージを与え、ディーヴァに戦力を裂かないように交戦を継続していたシドウ隊の中でユーリアが戦場でシャルロットの気配が消えた事を感じ取っていた。

 

「まさか……」

 

 多少、動揺するがスーパードッズライフルでドラドを落とす。

 

「何だ……アレは」

 

 シドウがそう呟く先には黒いオーラが見える。

 

「全機、すぐに戦闘宙域から離脱して、グノーシスに帰還しなくても良いからすぐに宙域から離れなさい!」

 

 グノーシスからの通信でエリーゼが叫ぶ声が聞こえる。

 その声からあの黒いオーラがやばい物である事が分かる。

 

「聞こえたな」

「はい」

「了解」

 

 エリーゼに言われた通り、邪魔な敵を排除しつつ、三機は黒いオーラに捕まらないようにとにかく戦闘宙域から離れて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンダムZERO Ⅲαから放たれた黒いオーラはヴェイガンのMSを粒子と変えて消滅させている為、それが危険な物である事はすぐにヴェイ

 

ガン側にも分かり、ヴェイガンのMSもファ・ボーゼ級や戦闘艦もすぐに撤退している。

 

「何だ……アレは」

「不味そうですけど……」

「当たり前だ。アレがまともな訳がないだろ。まだかミレース!」

 

 黒いオーラはフリーダムポートに触れるとコロニーをも粒子と変えて消滅させている。

 明らかに危険だが、逃げるにもディーヴァが動けない。

 

「接続は完了しました!」

「機関最大で現宙域を離脱!」

 

 ギリギリのところでコロニーコアとの接続が完了し、ディーヴァは最大出力で宙域から離脱する。

 だが、コロニーコアを引っ張っている為、速度が出ない。

 その間にも黒いオーラは広がり、フリーダムポートを消滅させていく。

 

「くそ!」

 

 少しつづ進んではいるが、刻一刻と黒いオーラはコロニーコアに迫る。

 MS隊もディーヴァと共に離脱しているが、コロニーコアに黒いオーラが接触すればその時点でジャンの誘導でコアに避難した住人は全滅する。

 そして、コロニーコアに接触するかと思われた時に黒いオーラの拡大は止まった。

 だが、動いていたコロニーは止まる事なく進み、やがて黒いオーラに消滅させられていく。

 

「どうにかなったのか……」

「みたいですね」

 

 黒いオーラの拡大が止まった為、黒いオーラに捕まる心配は無くなった。

 ディーヴァは当初の作戦通りに住民の避難したコロニーコアの引き出しに成功し、コロニーはそのまま黒いオーラによって消滅さられた。

 黒いオーラは拡大することなく暫くすると、行き成り消えた。

 そして、黒いオーラが消えるとその場所には今まで何も無かったかのようにコロニーや落とされたMSの残骸すら残されてはいないため、当事者以外はつい先程までここでコロニー「フリーダムポート」の破壊の為に連邦軍とヴェイガンが戦闘としていた事など誰も信じないだろう。

 それ程までに何も残されてはいなかった。

 黒いオーラの中央辺りに漂うガンダムZERO Ⅲαを除いては……

 

 

 

 

 

 

 

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