機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第55話

ダウネスを出発したヴェイガンの艦隊はゼハートの搭乗する赤いファ・ボーゼ級を先頭にして連邦軍の総司令部のビッグリングへと侵攻していた。

 その数はファ・ボーゼ級の戦艦が数隻と戦闘艦が十数隻、MSは100機近く投入し、ドラゴンファクトリーの陥落してヴェイガンにとっ

 

ては戦争の流れを変える重要な一局である事が窺える。

 

「誇り高きヴェイガンの兵士達よ」

 

 ビッグリングに仕掛ける前にゼハートは兵士を鼓舞する為に、立体映像と共に全艦に通信を入れている。

 

「これより我々は忌まわしき悪魔の輪に囚われた。地球を解き放つ。地球連邦軍、総司令部『ビッグリング』への総攻撃を開始する!」

 

 ゼハートの言葉でヴェイガンの兵士は戦意を高め、ヴェイガンはビッグリングへと侵攻する。

 

 

 

 

 

 

 そして、ヴェイガンの侵攻はビッグリングでも察知し、すでに防衛戦の準備を始めている。

 

「総員に告げる。これより我が軍は総力を持ってビッグリングに侵攻して来るヴェイガン艦隊を迎撃する」

 

 すでにヴェイガンの侵攻の情報を得ていた連邦軍はこの侵攻に大して冷静に対処している。

 

「ビッグリングが落とされるような事があれば、ヴェイガンの地球への侵攻を許してしまう。これままさに負けられない戦いですね。しかし、予想される戦力は我々に不利。こう言う時こそ、戦術家の腕の見せ所ですね。アスノ司令」

 

 フリットの横でフリットの補佐を行うアルグレアスはそう言う。

 連邦軍も戦力を可能な限り、集めたが、確認出来るヴェイガンの戦力と単純に比較すれば数ではほぼ互角。

 だが、MSの性能は一部の機体を除いてははこちらの下だ。

 つまり総合的な戦力では連邦軍の方が劣っている。

 この状況で戦いに勝利するためにはフリットやアルグレアスの指揮官としての腕にかかっていると言っても良い。

 

「アルグレアス……これはゲームではないぞ」

「ええ、分かっていますよ。だからこそ、燃えるんですよ」

 

 負けられない戦いで尚且つ戦力で劣る状況で勝つ為の策を練る事に燃えるアルグレアスにフリットは呆れるが、負けられない戦いの前に下手な事を行って補佐官との関係を悪くすると言う自体は避けたい為、今は目の前の戦いに集中する。

 少なくとも、アルグレアスもこの戦いで負ける気が毛頭ないと言う点ではフリットと同じであるのならば問題はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビッグリングから防衛の艦体とMSが展開し、ヴェイガンを迎え撃つ準備が完了し、ヴェイガンもMSを出撃させてビッグリングへの攻撃を開始する。

 戦闘が開始され、まずは互いの戦艦の砲撃戦に始まり、MSのビームが飛び交う。

 そのビームは互いに牽制レベルであるが、不運にも直撃を受けたMSは撃墜され、その攻撃を掻い潜ったMS同士が白兵戦を開始する。

 

「父さんとは別の道……だけど、今は考えている暇はない! 戦って守るんだ!」

 

 ビッグリングでクライドと話してXラウンダーの力以外でフリットを超える道の可能性を標されたが、これだけの大規模な戦闘で余計な事を考えている余裕はアセムにはない。

 その為、頭を切り替えてヴェイガンのMSの迎撃に当たる。

 ガンダムAGE-2はハイパードッズライフルを放ち、バクトを撃破する。

 

「道開けて!」

 

 ウルフ隊が交戦を開始して、隊の最後尾のマリィがそう言い、ウルフ隊のMSがマリィのガンダムZERO Ⅲγの射線上より退避して、ガンダムZERO Ⅲγは両腕のフォトンランチャーを放つ。

 その一撃は戦艦の主砲の威力よりも高く、射線上の敵を容赦なく破壊する。

 

「こんだけの火力をぶっ放すのは気ん持ち良いね!」

 

 ガンダムZERO Ⅲγは肩と膝のフォトンキャノンを放つ。

 フォトンランチャーに比べて大きく威力は落ちるが、十分に脅威的な威力を持つが、マリィの射撃能力の下手さもあり、敵に殆ど当たら

 

ないが、その火力を脅威だと敵に見せつける事には成功している。

 数機のドラドがビームバルカンを放ってガンダムZERO Ⅲγに向かう。

 機動力の低いガンダムZERO Ⅲγでは避ける事が出来ずに直撃を受けるが、厚い装甲を持つ為、損傷を受ける程ではなく、フォトンランチャーをドラドに向ける。

 両腕のフォトンランチャーはMSの火器としては破格の火力ではあるが、チャージに時間がかかる為、まだ撃てないが最初の一撃の威力が印象に残っている為、ドラドはすぐに散開するが、散開したところをアリーサとマックスのアデルやオブライトのジェノアスⅡに狙われてドラドは撃破された。

 

「ちょ! 私の獲物!」

「マリィはそのまま、適当にぶっ放しとけ! 味方に当たらなければ良い!」

 

 Gバウンサーはドッズライフルでガフランを落とす。

 元よりマリィの射撃の腕は当てにしていないが、ガンダムZERO Ⅲγの砲撃能力は敵にとっては脅威となり、優先的に狙われる。

 命中率は低くとも、掠っただけでも致命的な損傷を受けかねないガンダムZERO Ⅲγは攻撃のモーションを取るだけでも、敵の隙を作りだす事が出来る。

 そこを狙えば実戦経験の少ないアリーサやマックスでも簡単に敵を撃墜することが可能だ。

 

「下手に射線に入らなければ当てませんよ!」

 

 再度チャージの完了したフォトンランチャーを放ち、射線上の敵を掃討して後方の戦闘艦を跡形もなく消滅させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディーヴァのMS隊の活躍で戦闘の序盤は連邦軍の有利に進んでいたが、ヴェイガンも「ストラグル7」に代わるXラウンダー部隊の「マジシャンズ8」を投入しており8機のゼダスMによって連邦軍の被害も拡大して行っていた。

 

「はやり出して来たか……」

 

 すでにグノーシスのMS隊が数回、ヴェイガンのXラウンダー部隊と交戦している。

 その部隊はすでに壊滅させたと報告にあったが、Xラウンダー部隊がそれ一つだけしか存在しないとは考え難い為、ヴェイガンにとっても負けられない一戦であるこの戦闘でXラウンダー部隊の投入はフリットの予測の範囲内だ。

 

「はい。数は8機……ディーヴァやグノーシスが交戦した新型機ではなく、ゼダスタイプの改修機のようです」

「となると、早いうちに叩いて置いた方が良いな」

 

 報告に上がっているヴェイガンの新型機のゼイドラとティアーズの性能は脅威的であり、必ずこの戦闘のどこかで投入して来る事は分かり切っている。

 その二機には劣るがゼダスMを一般のパイロットで抑えるのは難しい。

 新型機が投入されさば被害が拡大してしまう。

 その時に持ち堪えさせる為にもゼダスMを余力が残っているうちに叩いておきたい。

 

「ですね。では始めますか」

「やってくれ」

 

 すでに対Xラウンダー部隊への対策は考えてある。

 フリットとアルグレアスはすぐに対Xラウンダー用の布陣の指示を出す。

 

「隊長。アスノ司令より、対Xラウンダー用の戦術ブランの発動が指示されました」

「了解した。クレマン、レクセル。付いて来い。アスノ達は戦線の維持だ」

 

 シドウはグノーシスから指示を受けてゼダスMを抑える為にレオーネとアルベルトを連れてマジシャンズ8が猛威を揮う宙域に向かう。

 フリットの策はすでに何度もXラウンダーとの交戦経験を持つグノーシスのMSを中心にXラウンダーのMSを分断し、包囲して集中的に攻撃すると言う物だ。

 それによってグノーシスのMS隊が守っていた宙域の防衛が甘くなるが、そこは宙域に残されているユーリアとエリアルドが中心となって防衛する。

 

「ここは通さない……ファンネル!」

 

 ジェノバースがドッズファンネルを射出して、ビッグリングに侵攻するドラドを破壊する。

 何とかドッズファンネルの攻撃から逃げる事が出来たドラドをアデルやジェノアスⅡ、シャルドール改によって落とされる。

 ジェノバースはスーパードッズライフルでバクトを撃ち抜く。

 

「この感じ……まさか」

 

 敵を確実に落とす中、ユーリアは何かを感じている。

 だが、攻撃の手を緩める事無く、シールドの折り畳み式シグルブレイドでガフランを切り裂く。

 

「お前たちは俺が倒す!」

 

 ガンダムZERO ⅢRは新しく装備されたハイパードッズライフルでドラドを破壊する。

 高機動戦闘用のライトニングアーマーの特性を最大限に利用して、ガンダムZERO ⅢRはシドウ達の抜けた穴を広範囲でカバーする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マジシャンズ8の対応に向かったシドウ隊も8機のゼダスMと交戦に入っている。

 

「クレマン!」

「了解です」

 

 RGキャノンはハイパードッズランチャーを放ち、ゼダスMを散開させる。

 

「各機、敵と距離を取って包囲し、集中砲火を浴びせろ」

 

 ゼダスMを砲撃で分散させたところにアルベルトのアデル・ストライダーをはじめとしたMSがゼダスMを包囲しながら、ビームを浴びせる。

 ゼダスMもXラウンダーが乗っているだけの事はあり、包囲されても攻撃を腕の電磁装甲で防ぐか、避けるかをしているが先ほどまでとは違い防戦一方となっている。

 マジシャンズ8は防戦一方となり、砲撃を放ったRGキャノンもスナイパードッズライフルの狙撃で友軍と合流出来ないように牽制射撃を放ち、シドウのRGブレイドもドッズライフルを撃ちながらマジシャンズ8に攻撃を仕掛ける。

 シドウ隊と連邦軍のMSの猛攻でマジシャンズ8は後退を余儀なくされれた。

 

「上手く行きましたね。アスノ司令」

「この程度で浮かれるなよ。アルグレアス。想定の範囲内だ」

 

 マジシャンズ8は後退して行き、対Xラウンダー用の戦術は上手く機能したと言う事になる。

 だが、それはフリットの予測通りの結果であるため、喜ぶ必要はない。

 未だに戦場の敵機はドラドを中心とした量産機で報告にあった新型機は投入されていない。

 その二機が投入されてからが正念場である。

 

 

「信じられん。マジシャンズ8が完全に抑え込まれている。敵の司令官は相当な切れ者か……」

 

 旗艦ではマジシャンズ8の後退の報告を聞き、メデルが敵の指揮官、つまりはフリット・アスノをそう評価する。

 マジシャンズ8は今回の戦闘が初陣とは言え、報告によればマジシャンズ8を抑えたMSは高性能MSが混じってはいたが、Xラウンダーは一人もいなかったとの事だ。

 それでマジシャンズ8を抑え込んだのは指揮官の戦術故の事だろう。

 

「フリット・アスノか……連邦軍の指揮官にして兄のクライド・アスノ同様優秀な技術者でもある……厄介な男だ」

 

 クライドは技術者としては超一流で高いXラウンダー能力者ではあるが、パイロットとしてはすでに実力は脅威とは言えない。

 だが、フリットは技術者としては一流だが、指揮官としても一流の能力を持っている為、クライド以上に今は厄介な相手だ。

 

「ならば……私が出るしかないか」

「司令官が出るなど……」

「ここには貴方がいます」

 

 総司令官であるゼハートが旗艦を離れると全体の指揮を取る者がいなくなり、万が一にもゼハートが戦死したならば、ゼハートの事を総司令と認めていない者が多くとも、艦隊の士気は低下し総崩れになる危険性もある。

 この戦いで大敗すれば今後の戦いにも支障が出て来る為、ビッグリング攻略に失敗してもある程度の戦力を確保しなければならない。

 無論、ゼハートもその事は重々承知だ。

 だが、フリットの戦術でマジシャンズ8が抑えられて撤退した今こそが自分達を投入するタイミングで、ゼハートが持ち場を離れたとて、先代のマリオンの頃から副司令として総司令の補佐をしていたメデルがいれば問題は無いとゼハートは考えている。

 ゼハートがそう言って格納庫のゼイドラに向かおうとすると、ブリッジにデシルが入って来る。

 

「俺も行くぜ。お前だけに楽しい事を一人占めはさせねぇよ。それにさっきからあそこにぶち殺したい奴の気配も感じるんでな」

「……良いでしょう。行こう。兄さん」

 

 戦局を左右する戦いで戦いそのものを楽しむデシルの物言いは気に入らないが、デシルのXラウンダー能力とデシル専用MS『クロノス』は戦局を打開するための戦力としては申し分ないと言う事も事実だ。

 

「そう来なくちゃな」

 

 ゼハートはデシルと共に格納庫に向かう。

 格納庫にはゼハートのゼイドラの他に黒い装甲のクロノス、そして、ドラゴンファクトリーで改修作業をされていてダウネスで完成したティアーズ改が置かれている。

 ティアーズ改はカラーリングがマリオンが使っていた時の青からエルピディオのゼダスS同様の白で統一されている。

 武装はティアーズガンブレイドから大型の槍のティアーズランスに変更され、左腕には先端に高周波ブレードが三本装備された大型のティアーズシールドが装備され、腰のところには従来のヴェイガンのMS同様にビームライフルが追加され、バックパックには大型の追加スラスターにティアーズビットが5基内蔵されている。

 

「エルピディオ、私達も出るぞ」

「……了解」

「さぁ……思いっきり楽しませろよ……」

 

 三機のXラウンダー専用機は旗艦より出撃して、戦場に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場に出た三機のうち、クロノスが飛び出す。

 

「兄さん! 一人で出過ぎです!」

「知るか! 俺はあのアマをぶち殺しに行くんだよ!」

 

 ゼイドラはゼイドラガンでジェノアスⅡを撃墜し、クロノスは肩のクロノスキャノンを連射する。

 本来、ゼイドラ、クロノス、ティアーズの三機は連携する事を前提に開発された。

 機動力を重視したゼイドラが敵陣をかき乱し、白兵戦を重視したティアーズが混乱する敵陣に切り込み、火力を重視したクロノスが後方から砲撃支援と言うのが本来の三機の理想とする戦い方だ。

 しかし、デシルのクロノスは単機で突撃している。

 クロノスは砲戦用MSではあるが、基本的な性能も高い為、問題は無いがだからといって砲戦用MSが突撃するなど褒められた事ではない。

 

「兄さん!」

「総司令殿。私がガンダムを仕留めて来ます」

「エルピディオ!」

 

 エルピディオにティアーズ改はビームライフルを放ちながら、戦列を離れて行く。

 ゼイドラはビームバスターでアデルを撃墜するが、連邦軍のMSの攻撃を受ける。

 

「ちっ」

 

 ゼイドラは攻撃を避けて、逆にゼイドラガンでシャルドール改やジェノアスⅡを撃墜するが、すでにクロノスとティアーズ改は遠く離れてしまっている為、追いかける事よりもこのまま戦闘を続行した方が良いと考えてゼイドラガンを放ちながら、自分が抑えるべき相手のいる方向に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり……感じる」

「姉さん?」

 

 ジェノバースはスーパードッズライフルでガフランを破壊する。

 ガンダムZERO ⅢRもハイパードッズライフルでバクトとガフランを同時に撃ち抜いた。

 

「来る!」

 

 ユーリアがそう言うと、ビームが飛んで来る。

 ジェノバースはかわすが、射線上にいたアデルが直撃を受けて破壊される。

 

「アイツ……新型か!」

「見つけたぜ……見つけたぞ! ユーリアァァァァ!」

 

 クロノスはクロノスガンの先端からビームサーベルを展開して、ジェノバースに切りかかる。

 ジェノバースはシールドの折り畳み式シグルブレイドで受け止める。

 

「この感じ……やっぱりデシル!」

 

 ユーリアが先ほどから感じていた感覚、それは蝙蝠退治戦役時にアーヴィンにて出会い友達となった少年、デシル・ガレットのものであった。

 

「久しぶりじゃねぇか……あの時の借りを返しに来てやったぞぉ! コイツはその礼だ! 受け取れよ!」

 

 クロノスはジェノバースを蹴り飛ばしてクロノスキャノンを放つ。

 ジェノバースはかわしながらドッズファンネルを差し向ける。

 ドッズファンネルの攻撃をクロノスはかわしてビームサーベルで切り裂き、ジェノバースに突っ込む。

 

「デシル。貴方まだこんな事をやっているの?」

「お前には関係ないだろ!」

 

 ジェノバースはビームサーベルを抜いて受け止めて、二機は弾き合いドッズファンネルがクロノスを狙う。

 クロノスはドッズファンネルの攻撃をかわして、クロノスキャノンでドッズファンネルを二基落とす。

 

「関係ある! 友達だから」

「うざいんだよ! お前はよぉ!」

 

 クロノスはクロノスキャノンを放ち、ジェノバースはスーパードッズライフルで応戦する。

 

「だからさぁ! フリットの前にお前からぶっ殺してやるよ!」

 

 クロノスはビームバスターを放ち、ジェノバースはシールドで受け止めるもシールドは破壊される。

 だが、すぐにビームサーベルを抜いてクロノスに接近する。

 クロノスはクロノスガンにビームサーベルを展開して向かえ討つ。

 二機はビームサーベルで何度も切り合う。

 

「いい加減に……」

「すんのはテメェだ!」

 

 ジェノバースはスーパードッズライフルを放ち、クロノスは避けながらクロノスガンを連射する。

 

「姉さん!」

 

 エリアルドもユーリアの加勢に向かおうとするが、ガンダムZERO ⅢRの前にティアーズ改が立ちふさがる。

 

「見つけたぞ! ガンダム!」

 

 ティアーズ改はティアーズランスを振るい、ガンダムZERO ⅢRはシールドで防ぐが、そのまま後方に弾かれる。

 

「コイツ……あの時の奴か!」

 

 ガンダムZERO ⅢRはティアーズ改にハイパードッズライフルを放つ。

 ティアーズ改はその攻撃をティアーズシールドで防ぐ。

 

「防がれた!」

「温いんだよ!」

 

 ティアーズ改のティアーズシールドはドラドなどに採用された電磁装甲以上の耐久力を持っており、ハイパードッズライフルの攻撃すらも防ぐ事が可能となっていた。

 攻撃を防いだティアーズ改はティアーズランスを突き出し、ガンダムZERO ⅢRはシールドで受け流すが、ティアーズシールドの高周波ブレードが迫っていた。

 ガンダムZERO ⅢRはティアーズ改の腕を蹴り飛ばして、距離を取りながらハイパードッズライフルを放つ。

 

「マリオン様の仇! その首、今度こそ貰う受ける!」

「俺は……お前らを倒すと決めたんだ! こんなところで!」

 

 ガンダムZERO ⅢRはシグルブレイドを抜いてティアーズ改のティアーズランスを受け止める。

 

「やられる訳にはいかない!」

 

 ガンダムZERO ⅢRは距離を取ってバックパックのミサイルを一斉掃射する。

 ティアーズ改はバックパックのティアーズビットを射出してミサイルを迎撃する。

 ミサイルを全て撃墜するとティアーズビットはガンダムZERO ⅢRへと向かい、全方位からビームを浴びせる。

 ガンダムZERO ⅢRはその機動力を使い、ティアーズビットからの攻撃をかわしつつシグルブレイドでティアーズビットの一基を切り裂き、そのまま別のティアーズビットにシグルブレイドを投げつけて破壊する。

 

「ファムの為にも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アスノ司令。厄介な奴が出て来たようですね。それも三機も……」

「そのようだな」

 

 ビッグリングでは三機のXラウンダー専用機が投入された事を確認している。

 その内の一機はすでに報告を受けているゼイドラであるが、一機は見確認の新型でもう一機はティアーズの改良機であると報告を受けている。

 クロノス以外の二機の投入は想定内であったが、新型のクロノスは少々想定外の敵であった。

 

「さっきのゼダスタイプの方にはいかないようですが、どうします?」

 

 アルグレアスは次の手を分かっているが、一応フリットに尋ねる。

 

「アスノ局長、例の機体は出せるか?」

 

 フリットは格納庫で作業中のクライドに通信を繋ぐ。

 

「すでに改修作業は終わってる。後はテストをするだけだ」

「分かった」

 

 フリットは通信を切って席を立つ。

 

「ですよね」

 

 フリットは何をする為に席を離れたかを、アルグレアスは分かっている。

 そして、それはアルグレアスも考えていた中でも最も勝算の高い手段でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリットが指令室を離れた事により、指揮系統はアルグレアスに移譲され、フリットはパイロットスーツに着替えてクライドのいる格納庫に来ていた。

 

「テストをするって言ったんだがな」

「兄さんの仕事だ。信用はしているさ」

 

 フリットは格納庫に置かれているMSに乗り込む。

 その機体はかつてフリットが搭乗していたガンダムAGE-1からクライドがAGEシステムを取り外し、情報収集能力や情報解析能力を強化され、胸部には装甲板が追加されているガンダムAGE-1 フラットだ。

 フリットの次の一手は自身がAGE-1フラットにて戦線に加わると言う事だ。

 

「言ってくれるな」

 

 指令室からの通信にクライドはテストがする必要があると、言っていたがフリットはクライドの仕事ならテストをするまでもないと判断して、自身が出撃すると言う手を選択した。

 総司令でありながら、個人的な主観で行動することを呆れながらも、クライドはフリットの判断通りテストをしなくても、AGE-1フラットは使えると言う事は自分でも分かっている。

 

「折角、改良したんだ。行き成り壊してくれるなよ」

「分かっている。フリット・アスノ。ガンダムAGE-1フラット……出るぞ」

 

 クライドは退避して、フリットはガンダムAGE-1フラットにて出撃をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 順調に敵MSを撃墜していたガンダムAGE-2がゼイドラの接近を補足していた。

 その機動性能からすぐにアセムは接近しているのがゼイドラであると確信する。

 そして、そのパイロットがゼハートである事が否応なしにアセムは緊張してしまう。

 

「ゼハート!」

「ガンダム!」

 

 ゼイドラはAGE-2にゼイドラガンを放つ。

 その間にGバウンサーが割り込みシールドで防ぐが、弾き飛ばされつつもドッズライフルで反撃する。

 

「アセム! コイツは普通じゃねぇ。一人でやろうとするな!」

「分かってます!」

 

 AGE-2はビームサーベルを抜いてゼイドラは左手にゼイドラソードを付けてAGE-2を迎え撃つ。

 ゼイドラはAGE-2を蹴り飛ばすと、ゼイドラソードでAGE-2を突き刺そうとする。

 だが、ゼイドラソードの横っ腹にビームが直撃し、ゼイドラソードを破壊する。

 

「何!」

「あれは……ガンダム。まさか……父さんのAGE-1!」

 

 ゼイドラソードを撃ち抜いたMS……それはフリットの乗るガンダムAGE-1フラットだ。

 そして、その機体に乗っているのはフリットである事はすぐに分かった。

 AGE-1フラットはドッズライフルを放ち、ゼイドラをAGE-2から引き離す。

 

「フリット! お前、何しに来やがった」

「二人とも、私の指揮下に入れ」

「行き成り出て来て仕切るのかよ」

 

 ウルフは不満そうに言うが、フリットの指揮官としての能力はウルフも知っている為、口で言っている事は裏腹にフリットの指揮下に入る事に不服はない。

 

「まさか、フリット・アスノ自ら出て来るとなは……」

 

 まさか、フリット自身が出て来た事は予想外ではあったが、ここでフリットを仕留める事が出来れば今後の戦局が大きく変わる事は間違いない。

 その機会を得たと考えれば良い。

 だが、問題は戦力差があると言う事だ。

 ゼハートの前にはAGE-1フラットとAGE-2以外にもGバウンサーがいる。

 三対一では少々分が悪い。

 フリットを倒せば戦局が変わるのと同様に自分が倒されても戦局が変わって来る。

 このままでは流石のゼイドラでも危険な賭けに出なければならないかと思っていたが、ユーリアのジェノバースと切り合いながら、デシルのクロノスが接近している。

 

「兄さん。手を貸して頂きたい」

「知るかよ! 自分で何とかしやがれ!」

 

 デシルは目の前のジェノバースを落とす事の方が重要であったが、AGE-1フラットを見て考えを変える。

 

「アイツ……アイツも出て来たのか! フリット・アスノがよぉ!」

 

 デシルにとってユーリア以上に敗北と言う屈辱を二度も味あわせた憎き敵のフリット・アスノが戦場に出て来ている。

 この機会を逃す手は無い。

 クロノスはAGE-1フラットにビームバルカンを放つ。

 AGE-1フラットはシールドで防ぎながらドッズライフルで応戦する。

 

「アセム、ウルフ、私のAGE-1を撃て」

「そんな!」

「アセム、フリットには考えがあるんだよ」

 

 フリットは友軍に自分を撃てと訳の分からない事を言っているが、ウルフはそれには意味があると思っている。

 ウルフはアセム以上にフリットとは付き合いが長い為、こんな時に無意味な指示を出さない事を知っているからだ。

 アセムはウルフにそう言われて、それを信じてAGE-1フラットに狙いを定めて指示を待つ。

 

「今だ!」

 

 フリットは冷静に状況を見極めてアセムとウルフに指示を出す。

 フリットの指示で二人はAGE-1フラットに攻撃するが、丁度その瞬間にクロノスがビームサーベルで切りかかり、AGE-1フラットはクロノスの攻撃をかわした。

 AGE-1フラットが移動した事でビームの先にはクロノスがいる。

 クロノスはAGE-1フラットに攻撃を避けられた直後である為、回避が間に合わず、右足に直撃する。

 

「何が起きたんだ……」

 

 その様子を少し離れて見ていたゼハートが驚いている。

 AGE-2とGバウンサーはAGE-1フラットを攻撃した筈だ。

 それなのに、攻撃はクロノスに当たっている。

 

「お前のお友達はXラウンダーじゃなかったのかよ!」

「あれはアセムの仕業じゃない……」

 

 この短期間でアセムがそこまで出来るとは思えない。

 となると、考えられる可能性は一つしかない。

 

「奴が指示を出している!」

 

 つい先程、戦線に加わったフリットのAGE-1フラット。

 その機体からフリットがアセムに指示を出していたと考えれば辻褄が合う。

 デシルはまんまとフリットに誘い込まれたと言う事だ。

 ゼイドラはゼイドラガンを撃ちながら、ビームサーベルでAGE-1フラットに切りかかり、AGE-1フラットもビームサーベルで受け止める。

 

「そいつは俺の獲物だ! ゼハート!」

 

 クロノスもビームサーベルでAGE-1フラットに切りかかろうとするが、ジェノバースがスーパードッズライフルを撃ちながら接近して、ビームサーベルを振るう。

 

「邪魔すんな!」

「貴方の相手は私よ。デシル」

 

 クロノスはジェノバースの攻撃を受け止めると、クロノスキャノンを放ちジェノバースはスーパードッズライフルを放つ。

 その間に、AGE-1フラットはゼイドラを蹴り飛ばし、ゼイドラは蹴り飛ばされながらもゼイドラガンを放ち、AGE-1フラットはシールドで防ぎながら、ビームサーベルを振るい、ゼイドラはゼイドラガンの先端からビームサーベルを出して受け止める。

 

「これが父さんの力……」

 

 AGE-1フラットはAGE-2よりも性能は下であるが、ゼハートのゼイドラを互角以上の戦いを行っている。

 機体性能で劣る機体で性能の勝る機体を押すと言う事はそれだけゼハートとフリットの間に技量の差があると言う事になる。

 それがアセムの父に対する劣等感を思い出させる。

 

「そいつの相手は俺だ! ゼハート!」

 

 クロノスはクロノスガンにビームサーベルを展開して、二機の間に割り込む。

 ジェノバースもクロノスを追うが、ゼイドラがゼイドラガンを放ち、ジェノバースを抑える。

 

「邪魔をしないで」

「仕方がない……」

 

 ゼイドラがジェノバースの相手を行い、クロノスはAGE-1フラットに向かう。

 

「会いたかったよ! あんたに!」

「この感じ……デシルか!」

 

 二機はビームサーベルでぶつかり合い、フリットはクロノスに乗っているのがデシルであると気付く。

 

「ならば……この戦い……勝たせて貰う!」

 

 フリットにとってはデシルはユリンの仇である為、この一戦だけはどんな事が合っても負ける訳にはいかない。

 

「お前に受けた屈辱……昨日のように覚えてるぞぉ!」

 

 デシルにとっても自分を見捨てたユーリア以上にフリットは許す事の出来ない相手だ。

 あの時の屈辱を払拭するのはフリットを自分の手で殺すしかない。

 

「殺すぅぅぅぅ!」

「償って貰うぞ!」

 

 AGE-1フラットとクロノスの二機は互いの憎しみをぶつけ合うかのようにビームサーベルで切りつけ合う。

 

「これがXラウンダー同士の戦い……」

 

 アセムはフリットとデシルのXラウンダー同士の高度な戦闘を目の当たりにしている。

 それが隙となり、ジェノバースの相手をしていたゼイドラは狙いをAGE-2に変える。

 

「アセム!」

 

 ユーリアはアセムにゼイドラの接近を告げ、自身もゼイドラを追おうとするが、ドラドやバクトのビームライフルの横槍が入る。

 ジェノバースはスーパードッズライフルでドラドを撃ち抜くが、その間にゼイドラはAGE-2に体当たりでAGE-2を吹き飛ばすとゼイドラガンをGバウンサーに放ち、Gバウンサーの左肩を撃ち抜いて左腕ごと破壊しAGE-2に対峙する。

 

「ゼハート!」

 

 アセムは叫ぶがゼハートは答えない。

 

「アセム!」

「隊長。こっちは限界です! 援護を!」

「俺なら大丈夫です! 行って下さい!」

 

 オブライトからの通信でオブライト達の方が押されている事を知るが、ユーリアもドラドらの邪魔を受けている以上、ゼイドラにアセムを一人で任せる事は危険ではあるが、オブライトが自分の援護を頼んで来る事を考えれば向こうも状況が悪い事は明白だ。

 

「……分かった。死ぬなよ」

「はい!」

 

 ウルフはアセムを信じるしかなく、オブライト達の援護に向かう。

 

「私にはすでに迷いはない……私はお前を倒す!」

「俺だって!」

 

 アセムは自分の中の迷いを断ち切るかのようにゼハートに向かう。

 ゼハートもそれを正面から受け止める。

 

「こんな戦争さえなかったら俺達は!」

「友達でいられたでも? お互いの運命だと何故受け入れられない! アセム!」

「受け入れるさ!」

 

 戦争がなければアセムとゼハートは敵として戦う事はなかったのかも知れない。

 だが、皮肉にも戦争がなければ二人は出会う事もなければ友達になる事もなかったかもしれない。

 

「だけど……地球とヴェイガン……生まれたところが違うだけで!」

 

 アセムとゼハートは生まれたところこそは違うが、そんな事は関係なく友達になれた。

 だからこそ、生まれたところが違うと言うだけで敵同士になる事はアセムにはどうしても納得がいかない。

 

「お前には分からぬさ! フリット・アスノに追いつく為に……自分の為に戦っているお前には!」

「違う! 俺は!」

 

 確かにアセムはフリットに追いつきたいと思っている。

 だが、それだけで戦っている訳ではない。

 トルディアでヴェイガンの襲撃を受けて大切な物を守る為にガンダムに乗った。

 軍に志願した今も、その気持ちは間違いではない。

 

「俺はヴェイガンから地球を守る為に戦っているんだ!」

 

 AGE-2はビームサーベルを振るい、ゼイドラもビームサーベルで受け止める。

 だが、背後からクロノスがクロノスガンで攻撃し、直撃を受ける。

 

「アセム!」

 

 アセムを狙われた事でフリットにも隙が生じクロノスはクロノスキャノンでAGE-1フラットを攻撃する。

 

「戦闘に集中しないとねぇ! お兄ちゃん?」

 

 多少の余裕が生まれた事でデシルはフリットに対してかつてのように上からで物を言えるようになるが、背後からアデルやシャルドール改の攻撃を受ける。

 それは、ユーリアが単機でこの付近の敵を一手に引き受けた為に手の相手MSがフリットの援護に来ていた。

 

「テメェら!」

 

 他の連邦軍のMSにデシルが気を取られていた為、その隙にAGE-1フラットはクロノスに接近し、ビームサーベルでクロノスの右腕から右足までを切り裂く。

 

「フリット……貴様ぁ!」

「これは戦争だ。どんな手を使ってでもお前を倒す!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「アセム……私はヴェイガンに生まれたから戦っている訳ではない。私にはあるのだよ。全てを賭けてでもやりたい事が!」

 

 ゼイドラはゼイドラガンを放つ。

 AGE-2はハイパードッズライフルで応戦する。

 

「何だよ! それは!」

「お前には分からんさ!」

 

 ゼイドラはAGE-2に仕掛けようとするが、強烈な閃光が輝く。

 

「ファ・ボーゼが落ちたのか」

 

 その閃光はファ・ボーゼ級の一隻が撃沈した閃光であった。

 それと同時に旗艦から通信が入る。

 

「ゼハート……否、司令官。我が軍の多くが退却を強いられている。予備戦力を投入してもどうにもならん。これ以上の戦闘は悪戯に兵力を消費するだけだ」

 

 フリットが戦場に出た後もアルグレアスが指揮を取り、確実に戦局を連邦側に傾いていた。

 メデルもそれを阻止しようと指揮したが、アルグレアスの方が一枚上手であった為、すでに戦局を覆す事が出来ない状況にまで追い込まれていた。

 戦場に出ているゼハートには戦場全体の状況は把握出来ないがメデルは戦場全体を見渡せる位置にいる。

 そのメデルがそう言うのであれば間違いはないのだろう。

 ゼハートは決断しなければならない。

 

「くっ……撤退する」

「了解した」

 

 すでに勝敗は決した。

 これ以上の戦闘はメデルの言う通り悪戯に戦力を消費するだけだ。

 今、ゼハートがすべきことは次の作戦の為に少しでも兵力を温存する事だ。

 ゼイドラはフリットを始めとした連邦軍の攻撃を受けているデシルのクロノスを旗艦へと連れて行く。

 

「兄さん……ここまでだ。撤退する」

「撤退だと? ふざけるなよ!」

「作戦は失敗したんだ!」

 

 ゼハートはつい叫んでしまう。

 

「知るか! 俺は勝てる! 俺はまだ戦える! 俺に戦わせろ! ゼハートォォォォォ!」

 

 デシルは叫ぶが、クロノスの損傷ではこれ以上戦えば確実に撃墜される事は目に見えている。

 性格に問題があろうと、デシルが貴重な戦力である事は確かな為、ゼハートはデシルを無視して旗艦へと撤退する。

 

「我々は連邦軍の戦力を見誤っていた。特にフリット・アスノの力をだ」

 

 戦力差にはこちらに分があり、簡単に覆す事は出来ないと思っていたが、ゼハートの思っている以上にフリット・アスノは優秀であった。

 技術者や指揮官だけでなくパイロットとしても一流であった事が最大の誤算だ。

 

(アセム……次に会った時はお前を殺す。私が私でいる為にも……)

 

 ゼハートはそう自分に言い聞かせて旗艦に帰投する。

 ゼハートを始めとしたヴェイガンのMSが母艦に帰投すると、ヴェイガンの艦隊はステルスシステム「見えざる傘」を展開して撤退して行く。

 

「俺は皆の為に戦ってるんだ……自分の為なんかじゃない……」

 

 アセムもまた、自分にそう言い聞かせる。

 ヴェイガンが撤退した事で、連邦軍はビッグリングの防衛に成功する。

 今までにない大規模戦闘で総司令部のビッグリングを守り切り、連邦軍のMSは次々に祝砲を上げる。

 この日、ヴェイガンのビッグリング侵攻作戦は失敗し、ビッグリングは守られた。

 

 

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