特別技術開発研究所のクーデターを鎮圧したディーヴァはその足でノートラムに入港していた。
すでにヴェイガンの艦隊がノートラムに向けて侵攻を始めている為、補給を受けている暇はなく、ノートラムに到着してようやく補給を受ける事が出来た。
その道中でクライドは用事があると言い出し、単独で出て行ってしまい、現在は行方が分からない状況ではあるが、そんな事に時間を費やしている暇は無い。
ヴェイガンはビッグリング攻略に失敗し、その失敗を取り戻すべく戦力を集中させ、今回は地球圏での中心拠点である移動要塞『ダウネス』も投入し、戦艦、MSも過去の地球圏での戦闘とは比べ物にならない程大量の戦力を投入して来た。
連邦軍もノートラムにディーヴァやグノーシスを配備して、正面から向かえ討つ構えを取りまさに決戦と言う雰囲気が漂っている。
「我々はこれより、コロニーノートラム制圧する」
ダウネスのブリーフィングルームでゼハートはイゼルカントより指示のあったノートラム制圧作戦の概要を説明している。
ブリーフィングルームではゼハート以外にもゼハートの補佐のダズや副司令のメデル、そして戦力の要であるマジシャンズ8にエルピディオがいる。
「連邦軍の防衛線を突破後、このダウネスをノートラムに結合させる。そして、ノートラムを地球侵略の前線基地とする」
ノートラムは連邦軍の兵器の生産工場もある為、そこを改良すればヴェイガンのMSを生産する事の可能で、それ以上にノートラムは地球軌道上あるコロニーの中で最も地球に近い位置に位置している為、ここを制圧する事でヴェイガンは地球に戦力を送る事が容易となる。
そうなれば地球侵攻計画も大きく前進すると言っても良い。
「馬鹿な!こんな作戦が成功するはずが!」
今回の作戦にマジシャンズ8の隊長、ドール・フロストが異を唱えた。
確かにノートラムを制圧すればノートラムの住人を労働力とするだけでなく、連邦軍に対しては人質も同然にする事が可能だ。
しかし、ビッグリングの時はビッグリングを落とす事が目的だったが、今回はノートラムの制圧だ。
破壊と違って制圧する為にはノートラムに対して攻撃を殆ど行えない事になる。
流れ弾などでノートラムを破壊しないように細心の注意を払いながら、連邦軍と戦わなければならなくなる。
ヴェイガンはこの作戦に地球圏の大半の戦力を投入している為、この作戦が失敗したら次の大規模な作戦行動は出来ない。
「これはイゼルカント様の御意志だ」
ゼハートにそう言われてしまえば、ドールも何も言えない。
その後、詳細な作戦を撃ち合わせてヴェイガンはノートラム制圧作戦を開始する。
ヴェイガンのノートラム侵攻に対して連邦軍もディーヴァを艦隊旗艦とした布陣を取っている。
そのディーヴァの前方にクライドが開発したフォトンリング・レイの準備を始めている。
フォトンリング・レイはディーヴァのフォトンブラスターキャノンの威力と射程を大幅に向上させる装置で、この戦いにおける連邦軍の切り札の一つだ。
敵もフォトンリング・レイを使うまでの時間を待ってはくれない事は分かり切っており、その時間をMS隊でフォトンリング・レイの端末を死守する事になっている。
「全員揃っているみたいだな」
ディーヴァのパイロットアラートにウルフが入って来て、ウルフ隊のパイロットが全員、揃っている事を確認する。
ウルフ隊の面々もこれから始まる戦いはビッグリング攻防戦よりも大規模であるため、緊張した表情を取っている。
「良いか聞け。これから行われる戦闘は今だかつてない規模の戦闘だ。俺から言う事は一つ。全員生きて帰って来い。その為には覚悟は必要だ。死んでも生き残って戦い続けるって覚悟がな。敵が誰であろうとぶっ倒して生き延びる」
ウルフの言葉を皆、真剣に聞いている。
「死ぬかも知れない戦いをするのは辛いだろうよ。けどな……仲間が死ぬのはもっと辛い。お前らだってそんな辛い事を味わいたくは無いだろうし。俺だって御免だ。だからお前ら、全員生きて帰って来い!」
「はい!」
皆は背筋を伸ばして返事をする。
その表情に先ほどまでの緊張は無く、皆一様に今から始まる激戦を生き延びる覚悟が見える。
皆の表情を確かめたウルフはニヤリと笑う。
「それで良い。生きて帰って来た奴には俺がとびっきりの酒をおごってやる」
ウルフはそう締めてパイロットは各自の搭乗機に向かう。
グノーシスのパイロットアラートでエリアルドは一人で俯いている。
これから始まる戦闘は戦争の流れを大きく決める戦闘だ。
その戦闘を前にエリアルドは精神を集中している。
「ファム……シャル……俺、ヴェイガンを倒すから……」
エリアルドは一人、そう呟く。
エリアルドはこれ以上、戦争で何かを失わない為にヴェイガンを倒すを決めた。
その為にガンダムで戦うと……
「エリアルド、時間だぜ」
「今行く」
アルベルトがエリアルドを呼びに来て、エリアルドはアルベルトと共に格納庫に向かう。
格納庫では整備班が忙しく働いている。
戦闘が始まれば、グノーシスも少なからず被害が出る為、その応急処置の用意とこれから出撃するMSを万全の状態で戦場に送り出す準備だ。
エリアルドはアルベルトと別れてガンダムZERO Ⅲαに乗り込む。
今回は対艦戦闘を行う為のブラスターアーマーで出撃する為、すでにブラスターアーマーを装備している。
エリアルドは機体に乗り込みハッチを締めると操縦桿を強く握り締める。
そして、MS隊の発進命令が発令されて、エリアルドは出撃する。
連邦軍とヴェイガンのノートラム防衛戦が始まる頃、戦闘宙域から少し離れたところをアブディエルが停泊し、戦闘の状態をモニターしている。
「ヴェイガンも後がないみたいね」
「ビッグリングを落とし損ねたんだ。連中も後がないと言ったところだろうな」
セリアの横でクライドがそう言う。
ディーヴァから離れたクライドはアブディエルと合流し、この戦闘に参加をする事なく、見ている。
「どちらが勝つにしても歴史に残る程の大規模な戦闘になるのは間違いないな……その戦闘をよりにもよって今日、開戦するとはね。ヴェイガンは狙っているのか?」
「今日?」
「今日はアンタらが戦争を仕掛けた『天使の落日』と同じ日だろ」
セリアも言われて見て初めて気がついた今日はヴェイガンが戦争を仕掛けた天使の落日と同じ日だ。
クライドの言う通り、この戦闘は歴史に残る程の大規模戦闘になる事は確かで、それが戦争の始まった日と重なっている事は意味深だ。
「そんな事はどうでも良い……」
クライドは天使の落日を重なっている事を軽く流すと難しい顔をする。
「どうかした?」
「なんか嫌な予感がするんだよな……この戦闘……簡単に終わってはくれない気がする」
「ヴェイガンか連邦が何か隠し玉を用意していると?」
「違う……そうじゃない。そうじゃないんだ……だけど、何かが気になる」
クライドはこの戦闘で何かが起こるを感じている。
それが何かと言う事は漠然とし過ぎている。
だが、それを気のせいにする事は出来そうにない。
「とにかく、MS隊の出撃準備、俺のゼロツーもいつでも出せるようにしておいてくれ」
「分かったわ」
それはクライドのXラウンダーとしての感がそう感じさせているのだと判断してセリアはすぐにMSの発進の準備をさせる。
戦闘が開始され、両軍の戦艦による艦砲射撃からMS戦へと以降している。
連邦軍のMS隊はディーヴァのフォトンリング・レイを守る為にヴェイガンのMSを迎撃している。
「やれる……」
ガンダムAGE-2DBはストライダー形態で前方にツインドッズキャノンを放ち、ドラドを撃ち抜く。
そして、MS形態に変形して両手にツインドッズキャノンの砲身を取り外した状態のドッズライフルを持ち、バクトを撃ち抜き、両肩の大型ビームサーベルで周囲の敵を切り裂いて一掃する。
「すげぇ……もうエース級だろ……」
「アリーサ君! 来るよ!」
アリーサとマックスのアデルもシールドで攻撃を防ぎながらドッズライフルで確実に敵機を撃墜する。
「アセムの癖に生意気!」
その後方からはマリィのガンダムZERO Ⅲγがフォトンランチャーで射線上の敵を一掃する。
「見つけたぞ! ガンダム!」
デシルのクロノスがAGE-2DBを発見して襲いかかって来る。
「アセム! 気を付けろ! この前のXラウンダーだ!」
クロノスはビームサーベルを展開して、AGE-2DBに切りかかるがAGE-2DBはビームサーベルで受け止める。
「ちっ……このガンダムは違うじゃねぇかよ」
デシルは自分の探しているフリットのガンダムで無い為、AGE-2DBから離れて行くがAGE-2DBはツインドッズキャノンを放ちながら、クロノスを追いかける。
「逃がすか!」
「面白い! フリットと戦う前のウォーミングアップだ!」
クロノスはクロノスガンにビームサーベルを展開して、AGE-2DBに応戦する。
ガンダムZERO ⅢBは両肩のツインドッズキャノンでガフランを撃墜する。
後方からはレオーネのRGキャノンがスナイパードッズライフルで援護射撃を行い、シドウのRGブレイド刀型シグルブレイドでドラドを両断する。
「くそ……ヴェイガンの奴らどんだけ戦力を投入してやがるんだよ!」
アルベルトのアデル・ストライダーはドッズライフルを放ち、シールドで攻撃を防ぐ。
「関係ない……全て叩くだけだ!」
ガンダムZERO ⅢBはハイパードッズライフルでドラドを撃ち落とし、シールドのビームソードでガフランを両断すると、バックパックのハイパードッズキャノンで近くの戦闘艦を撃沈する。
「気合入り過ぎだっての!」
アデル・ストライダーはビームサーベルをガフランに突き刺す。
「ファンネル!」
ユーリアのジェノバースはドッズファンネルを射出して、スーパードッズライフルを放つ。
「……この感じ……デシルが戦場に来ているの」
ドッズファンネルのオールレンジ攻撃でガフランやバクトを撃墜していると、戦場にデシルの気配を感じる。
その感じを感じたユーリアは機体をその気配の方に向ける
「ユーリア! どこに行くの」
持ち場を離れて行くユーリアにグノーシスからエリーゼが通信を繋ぐが、ユーリアは黙って通信を切る。
そして、そのままユーリアはデシルの気配を頼りにデシルの元に向かう。
「姉さん?」
エリアルドもユーリアが単独で持ち場を離れた事に気づくがそれどころではない。
ガンダムZERO ⅢBはシールドで攻撃を防ぐ。
そんな中、エリアルドは自分の周囲から殺気を感じて機体をすぐに移動させると、今まで機体のあったところを囲むようにビームが放たれる。
「この攻撃は……」
「ガンダム!」
それはエルピディオのティアーズ改のティアーズビットによる攻撃でティアーズ改はティアーズランスを振り上げてガンダムZERO ⅢBに切りかかって来る。
それをガンダムZERO ⅢBはシールドで受け止める。
「どう言う事だ……」
前線でMS隊の指揮を取っていたゼハートは連邦軍の布陣に違和感を覚える。
敵はまるで自分達に中央突破をして欲しいと言っているかのような布陣だ。
そこから考えられる可能性は二つだ。
敵の指揮官が無能で中央突破を許していると言う可能性と、意図的に中央突破をさせている可能性だ。
ビッグリング攻略作戦では指揮官のフリットの能力を甘く見ていたせいで敗走した経験からゼハートは敵の指揮官が無能である可能性は低いと考える。
となれば、敵は意図的に中央に部隊を誘っていると言う事になる。
「メデル、すぐにダウネスを緊急回頭させろ」
「しかし……今はMS隊の出撃中でして……」
「中止させろ。連邦軍はアレを完成させているぞ」
「まさか……こんなに早く」
すでにヴェイガンでも特研に入り込んだクラリッサから、連邦軍が強力な兵器を開発していると言う情報を得ている。
情報ではまだ実戦配備はされていない筈だが、ゼハートは連邦軍は中央突破させる理由として、敵をその兵器の射線上に誘いこんで戦力を一気に削ぐ事が目的であると読んでいる。
ゼハートの指示でダウネスは回頭を始める。
「全部隊に緊急命令。すぐに戦闘を中断して撤退しろ!」
次に中央を突破しているMS隊を射線上より退避する命令を出す。
ゼハートの指示でMS隊は撤退し始めるが、それよりも早くディーヴァはフォトンブラスターキャノンを放ち、フォトンリング・レイによって威力と射程が向上して射線上のヴェイガンのMSを一掃する。
その一撃はダウネスに向かうがダウネスは防御システム『ギガンテスの盾』を展開する事で直撃を受けたが耐え切った。
ディーヴァのフォトンブラスターキャノンの掃射が終わり、ヴェイガンは再びMS隊で中央突破を開始する。
デシルはアセムと交戦しつつも、すでに意識をフリットを倒す事に向けているが、アセムはデシルを逃がす事なく、ツインドッズライフルを放つ。
デシルもそろそろ、戦闘を切り上げて戦場にいるであろうフリットを探しに行きたい。
AGE-2DBの攻撃をかわしていると、前方で交戦している二機のゼダスMを発見する。
デシルはそのゼダスMを丁度良いと思い、クロノスに搭載しちているシステムを起動させる。
それにより、ゼダスMはパイロットからの操作を受け付けなくなり、デシルの意のままに操る事が出来るようになった。
「くそ!」
「落ち着け、アセム」
アセムと共にデシルを追うウルフがアセムを落ち着かせようとする。
「やれます!」
しかし、アセムは聞く耳を持たない。
オーヴァンでの戦闘で蝙蝠退治戦役時のデータの再現とは言え、フリットとウルフに勝った事でアセムの中ではそれが自信となるが、同時に冷静に敵の実力を見極める事が出来なくなっていた。
「アリーサ達が来るのを待て!」
デシルがXラウンダーでクロノスが高性能MSであるため、ウルフはウルフ隊の全機で仕留めようとするが、アセムは一人で飛び出す。
クロノスはクロノスガンのビームサーベルでAGE-2DBを迎え撃ち、AGE-2DBもビームサーベルで切りかかる。
二機は激しく切り合うが不意にAGE-2DBの両サイドからデシルによって操作されているゼダスMがAGE-2DBのツインドッズキャノンを腕ごと抑える。
「フリットの前にお前から始末してやるよ!」
動けないAGE-2DBにクロノスはビームサーベルで襲いかかるが、その前にウルフのGバウンサーがドッズライフルでゼダスMを撃ち抜いてAGE-2DBを助け出す。
しかし、そのせいでGバウンサーはクロノスに背を向けてしまう。
「終わりだぁぁぁ!」
クロノスがビームサーベルをGバウンサーに突き刺そうとするが、ビームサーベルがGバウンサーを貫くよりも先にユーリアのジェノバースがクロノスに激突する。
「デシル!」
「ユーリア! てめぇ!」
そして、そのままジェノバースはクロノスに突っ込んで移動する。
「隊長……俺……」
アセムは冷静さを取り戻すと自分の行動を後悔する。
自分の実力に自信を持つが故にその力を過信し、単独でもクロノスを倒せると突っ込んでユーリアの横槍がなければウルフは戦死していた。
「気にするな。俺は死んでない。今はそれで良い。後悔は戦いを生き延びてからにしろ」
例え、自分の力を過信しようとも最悪の事態になってはいない。
その為、今はその事を悔むよりも次に活かす方が大切だ。
アセムも何とか頭を切り替えて、戦闘に戻る。
AGE-2DBはドッズライフルを放ちつつ、大型ビームサーベルで敵MSを切り裂くと友軍機をゼイドラソードで破壊したゼハートのゼイドラを遭遇する。
「あのMS……ゼハートか」
「アセム!」
アセムはゼハートと対峙するが、今までの様なゼハートへの劣等感を今は感じない。
AGE-2DBはゼイドラに向かい、ゼイドラもAGE-2DBを迎え撃つ。
ゼイドラはゼイドラガンを放つが、AGE-2DBはかわしてストライダー形態に変形するとツインドッズキャノンを放ちゼイドラは回避するもAGE-2DBはゼイドラに体当たりをする。
「くっ!」
今までのアセムとは違うとゼハートは感じ取る。
それは新しいウェアを装備しているからではなく、アセム自身が大きく成長しているからである。
「俺は……お前を倒す!」
「アセム……私も負ける訳にはいかない!」
ゼイドラのゼイドラソードをAGE-2DBの二刀流がぶつかり合う。
「妙だな……」
ディーヴァで指揮を執っているフリットは敵の攻撃のおかしさに気がつく。
敵の攻撃はMSや戦艦に集中し、ノートラムに対しては攻撃をしていない。
防衛部隊を先に叩く事はおかしい事ではないが、ノートラムに対して全く攻撃が行かない事は偶然とは思えない。
「そう言う事か……全艦隊は敵移動要塞を攻撃させろ。敵の狙いはノートラムの破壊ではない」
フリットも敵の動きから敵はノートラムを無傷で手に入れるつもりだと確信する。
敵がノートラムを破壊しないとなると防衛の部隊を配置するだけ戦力を無駄に使う事になる。
その為、防衛部隊も前線に投入する。
「アルグレアス、後は任せた」
フリットは指揮をアルグレアスに任せると自信もガンダムAGE-1 フラットで出撃する。
出撃したフリットは部隊の指揮を取り、ダウネスの攻略を開始する。
今回AGE-1フラットには対艦ミサイル『ゼフルドランチャー』を装備して来ている。
AGE-1フラットはドッズライフルで敵MSを撃破しつつダウネスへと向かっていく。
敵の攻撃を掻い潜ったフリットだが、ダウネスの防衛システムのビーム砲の迎撃にあい、ダウネスのギガンテスの盾の発生装置を破壊する事は容易ではない。
「ウルフ隊は私の指揮下に入れ」
「また勝手に仕切りやがって」
ウルフは文句を言いつつもすでに別の戦場に向かったアセムとディーヴァの防衛を任せてあるマリィを除くオブライト、マックス、アリーサと共にフリットの元へ向かう。
「それで俺らに何をさせる気だ?」
「要塞に姿勢制御システムを潰す。ウルフ達はその援護を頼む」
ギガンテスの盾はフリットの見立てでは前方にしか、展開は出来ない。
その為、わざわざ回頭して使用した。
「あの要塞はフォトンリング・レイの攻撃を防ぐ為に本体ごと回頭させた」
「つまり、アレを使うには制限があるって事か」
「そう言う事だ」
つまりはダウネスのスラスターを破壊すれば回頭も出来なくなり、敵はギガンテスの盾でフォトンリング・レイを防ぐ事は出来ないと言う事だ。
「時間がない。私はこのまま姿勢制御システムを潰す」
「分かった。護衛はまかせとけ」
AGE-1フラットはダウネスのスラスターを破壊する為、バックパックの追加ユニットに搭載されている対艦ミサイル『ゼフルドランチャー』の発射体勢を取る。
それを阻止する為に数機のドラドがAGE-1フラットを狙うがウルフ達がAGE-1フラットを守るように陣形を取る。
ウルフ隊の防衛もあり、AGE-1フラットへの攻撃が収まり、AGE-1フラットはゼフルドランチャーを構える。
「喰らえ! ヴェイガン!」
フリットが引き金を引き、ゼフルドランチャーが放たれ、ダウネスのスラスターに直撃する。
それによってダウネスのスラスターの一基が破壊された。
「アルグレアス。敵要塞の姿勢制御システムは潰した」
フリットはディーヴァで指揮を取るアルグレアスのフォトンリング・レイを使わせようとするが、スラスターを破壊した筈のダウネスが回頭を始め、ギガンテスの盾を展開する。
「馬鹿な……姿勢制御システムは潰した筈だ」
フリットは状況を確かめるべく、ダウネスの後方に回り込む。
そこにはヴェイガンのMSが大量のダウネスを押して無理やり回頭させていた。
幾ら、ヴェイガンのMSの方が連邦軍のMSよりも高性能だろうと、ダウネス程の質量を回頭させるのは容易ではないが、大量のMSの推力を集めた事でそれを可能にした。
まさに、この一戦に賭けるヴェイガンの執念によるものだ。
だが、ダウネスを押す事で完全にAGE-1フラットに対しては何も出来ない為、落とすのは容易でダウネスを押しているMSの数を減らせばダウネスの回頭は止まり、フォトンリング・レイを防ぐ事は出来なくなる。
しかし、それをドラドLで出撃したダズが拡散ビーム砲をAGE-1フラットに放ち、妨害する。
「あのガンダムは……フリット・アスノか……私では敵わない事は理解している。だが……ミューセルをフルパワーで使えば!」
ダズは機体性能で劣るAGE-1フラットでゼハートと対等以上に戦えるフリットに勝てるとは思ってはいないが、疑似的にXラウンダーに近い能力を得る事の出来るミューセルを最大出力で使えば、フリットを相手に戦える筈と考え最大出力で使う。
それは自身の命を危険にする諸刃の剣だが、自身の命一つでフリットを倒せるなら安いものだった。
ドラドLはAGE-1フラットに突っ込んで行く。
「コイツ……捨て身か!」
フリットもドラドLに乗っているダズが刺し違える覚悟を感じとる。
ドラドLはビームサーベルを展開して、AGE-1フラットに切りかかる。
AGE-1フラットはかわして、一時距離を取るがドラドLは両腕の小型シールドに内蔵している小型ミサイルを放つ。
AGE-1フラットは小型ミサイルをかわしつつ、ドッズライフルで迎撃する。
「まだ……まだぁぁ!」
ミューセルをフルパワーで使ったせいでダズの脳は限界に達しつつあるが、AGE-1フラットに手傷すら与えていない為、ダズはミューセルを止める事はしない。
ドラドLはビームサーベルでAGE-1フラットに切りかかるも逆にAGE-1フラットにビームサーベルで胴体を両断された。
だが、機体を真っ二つにされても爆発までの時間は残されており、ダズは最後の力を振り絞り、AGE-1フラットに組み付く。
「ゼハート様! ヴェイガンに未来を……!」
AGE-1フラットは直前に両腕をドラドLとの間に割りこませてガードするも、ゼロ距離でドラドLは爆発してAGE-1フラットの両腕は吹き飛ばされた。
「フリット! 生きてるか!」
「ああ……だが、これ以上の戦闘継続は無理のようだ。私はディーヴァに帰投する。ウルフは戦線に復帰してくれ」
「分かった。フリットも気を付けて戻れよ」
両腕を破壊された以上、AGE-1フラットに戦闘能力はなく、これ以上戦場に留まるのは逆に足手まといとなる為、フリットはディーヴァへと帰投し、ウルフ隊は戦線に復帰する。
ディーヴァを防衛しているMSもこの激戦で限界に達しつつある。
そのせいでフォトンリング・レイの防衛も危険域に達している。
その為、ディーヴァでは判断を迫られていた。
無理にフォトンリング・レイを死守させるが、フォトンリング・レイの防衛を諦めて通常戦闘にディーヴァを参戦させるかだ。
「艦長、フォトンリング・レイの発射準備を一時中断してください」
フリットの代わりにディーヴァで艦隊指揮を取っていたアルグレアスがそう言う。
「私に考えがあります。フォトンリング・レイではなく、フォトンブラスターキャノンを使います」
「……良いでしょう」
この状況で何をするのか分からないが、フリットの右腕であるアルグレアスは考えがあると言う。
ミレースもその言葉を信じてアルグレアスにフォトンブラスターキャノンの照準を委ねる。
そして、アルグレアスは照準を設定し、ディーヴァはフォトンブラスターキャノンを放つ。
その一撃は敵部隊を一掃するが、ファ・ボーゼ級に掠るだけで終わった。
しかし、そのファ・ボーゼ級はフォトンブラスターキャノンが掠り進路が変更されて、そのままダウネスの背後に激突する。
アルグレアスはこれを狙っていた。
まともに正面からの攻撃ではダウネスには通用しないが、敵戦艦を利用してダウネスの背後から攻撃を与えた。
これならば、ダウネスのギガンテスの盾では防げない上にぶつけるのは敵の戦艦で自軍への被害はない。
更に嬉しい誤算として、ダウネスのギガンテスの盾の発生装置の一つが破損してギガンテスの盾が使用できなくなり、スラスターにも被害が出てダウネスの姿勢制御も出来なくなった。
「ふぅ……これで何とか」
自分の策が予想以上の結果を出して、アルグレアスは安堵するが、事態は多く動いた。
ダウネスの推進システムの破壊によってダウネスは姿勢制御が出来なくなった。
その上で、ダウネスはノートラムへの衝突コースを進み、姿勢制御が出来ない為、自力で回避する事が不可能になってしまった。
「至急、ノートラムの管制に避難指示を……」
ミレースがすぐにノートラムの住民を安全なところまで退避させようとするが、時間的に厳しい。
そんな中、帰投したフリットがブリッジに上がって来る。
「敵要塞は盾を使えない。今度こそ、フォトンリング・レイで落とせる」
「しかし、連射による影響でディーヴァが航行不能になる恐れもあります」
「やらねば、ノートラムは落とされる」
ディーヴァのフォトンブラスターキャノンは連射が出来ず、無理をして使えば艦に影響が出る。
だからと言って今、ダウネスを破壊しなければコロニー一つが崩壊する。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
すぐに、ディーヴァはフォトンブラスターキャノンを誘導発射するが、フォトンリング・レイで威力を増しても、すでにこの戦闘で二発撃っており、前に撃った時からまともにチャージも出来なかった為、出力は殆ど上がらずにダウネスに直撃させても破壊するには至っていない。
だが、その一撃でダウネスの速度は遅くなり、軌道がそれてノートラムへの衝突コースは外れた。
しかし、それた軌道の先にはディーヴァがいる。
フォトンブラスターキャノンを無理に撃った影響でディーヴァはまともに動く事すら出来ない。
その為、ディーヴァはダウネスを激突し、ダウネスに捕まった状態で動けなくなる。
ダウネスはそのままノートラムに掠って衝突は回避された。
「このままでは敵要塞ごと、大気圏に突入してしまいます!」
悪い事は重なる事でダウネスの勢いは完全に止まった訳ではなく、このままでは地球の重力に掴まり大気圏に突入してしまうと言う事態となる。
ダウネス程の質量が地球に落ちると地上には甚大は被害を受け、ダウネスが大気圏で燃え尽きてくれる可能性はない。
「まずはディーヴァを要塞から離脱させる。その後、艦隊の総力を持って要塞を破壊する」
ディーヴァはダウネスから離脱しようとするも、ディーヴァの現在の推力ではダウネスから離脱する事は出来ない。
「出来ません!」
「ならば、フォトンブラスターで突破口を作る!」
「出力が安定しません!」
「撃てればそれで良い!」
フォトンブラスターキャノンの使い過ぎですでにフォトンブラスターキャノンは限界に達している。
それでも辛うじて撃てない訳ではない為、無理やりフォトンブラスターキャノンを放つ。
その一撃でダウネスの一部を破壊し、反動でダウネスから離脱する事に成功するも、フォトンブラスターキャノンの発射口が破損して修理をしないとフォトンブラスターキャノンが使用出来なくなった。
だが、依然としてダウネスは地球への降下は止まらない。
「このままでは地球に降下します……」
「指令! アセムから通信です!」
ゼハートの戦闘中にダウネスが地球に降下している事に気がついたアセムは戦闘を中断して、戻ってきており、ディーヴァに通信を入れて来た。
「このままでは要塞が地球に降下します。俺が内部に突入して要塞のエネルギーコアを破壊します。それなら、大気圏に突入する前に要塞を破壊出来ます」
アセムの言っている事は理論上は実現は可能だ。
しかし、覆す事の出来ない問題があった。
「だが、それでは時間が足りない」
例え、要塞の破壊に成功しても内部に突入して離脱するだけの時間は残らないだろう。
つまり、内部に侵入して破壊しても逃げる時間がない為、要塞と運命を共にしなければならない。
「お前……まさか!」
フリットはアセムの真意に気がつく。
アセムは可能性を提示したのではなく、今からそれをやると言う事を報告しただけであった。
すでにアセムはダウネスの付近まで戻ってきており、戦闘で破損した箇所からダウネス内に侵入していた。
「聞いて下さい……父さん。今の俺なら皆を守れる」
「戻ってアセム!」
「ロマリー……今まで俺は焦りとか妬みとかで自分の戦う理由を見失ってた。けどさ……今は迷ってないし、戦う理由も見つけたんだ。だから……俺は皆を守るんだ」
アセムはそう言って通信を終える。
要塞に突入したアセムはエネルギーコアを探してダウネス内を移動している。
しかし、アセムにはダウネス内の詳細な見取り図を知らない為、今はしらみ潰しに探すしかない。
そんな中、同じくダウネスに突入したゼハートと遭遇する。
「アセム……要塞を中から破壊する気か?」
「ああ……お前に邪魔はさせない」
アセムはゼハートを警戒してそう言う。
最悪、ダウネスの中でゼハートと決着を付けなければならない。
だが、今はそんな事をしている暇は無い。
「内部は複雑だ。ついて来い」
ゼハートのゼイドラはアセムのAGE-2DBに背を向ける。
一瞬、何かの罠かも知れないと勘繰るが今はそんな事を言っている暇は無い。
アセムは完全にゼハートを信用した訳でもないが、地球を守る為にゼハートに続く。
「どうするつもりなんだよ」
「コロニーデストロイヤーを使う」
ダウネスには数基だが、コロニー破壊用のミサイル『コロニーデストロイヤー』が残されている。
それを使えば確実にエネルギーコアを破壊する事は可能だ。
「後は時間との勝負だ」
位置的にコロニーデストロイヤーを確保して、エネルギーコアまで辿りつき、コアを破壊するまでの時間はギリギリだ。
その後、アセムとゼハートの二人がダウネスの外に離脱する時間は今の二人の頭の中にはない。
ゼイドラと共にダウネスの進路を進んでいると前方の外壁が吹き飛ぶ。
「何だ!」
「こんな時に……」
ただでさえ、時間がないと言うのに前方の道が使えなくなれば遠回りとするしかない。
だが、外壁が壊れた時に舞い上がった煙からMSの影が見える。
「見つけた!」
煙からはマリィのガンダムZERO Ⅲγが出て来る。
「マリィ! どうして……」
「事情はロマリーから聞いてる。アンタ馬鹿でしょ。こう言う時は私のガンマの出番でしょうに」
マリィはロマリーから事情を聞いて援護の為にダウネスに突入した。
だが、アセム同様内部の構造を知らない為、アセムのAGE-2DBの反応まで途中の壁を破壊して直線距離で突き進んで来ていた。
「ゼハートもいる見たいだけど、どうすんの?」
その後、時間の短縮の為にガンダムZERO Ⅲγの砲撃で最短距離でコロニーデストロイヤーを確保して、エネルギーコアまで到着した。
「ここがエネルギーコアだ。起爆ポイントは指示をする」
そして、マニュピレーターを持たないガンダムZERO Ⅲγは待機してAGE-2DBとゼイドラの二機でエネルギーコアにコロニーデストロイヤーを取りつけて、その間にマリィが起爆の為の準備を行う。
「まさか、お前とこんな事をする日があるなんてな……」
「そうだな……」
アセムもゼハートももう、互いに戦場でしか会う事もなく会えば戦う事以外は無いと思っていたが、まさか地球を救う為に共に協力する事があるとは思ってはいなかった。
その為、不謹慎ではあったが作業中に学生時代に戻ったかのように思っていた。
「俺は今まで戦い続けて来た。ヴェイガンの戦士として……我らの悲願である地球への帰還の為に……」
「ゼハート……それがゼハートの戦う理由か……」
アセムは少しだけゼハートの戦う理由を理解する。
ゼハートは火星圏の同胞の為に戦って来た。
だからこそ、あそこまで強くなれたのかも知れない。
「俺は今まで何の為に戦うかは分からなかった。俺はお前や父さんに嫉妬ばかりして……」
「だが、お前はここで命を賭けて多くの命を救った。お前も立派な戦士だ」
今まではXラウンダー能力を持っていたフリットやゼハートに嫉妬していた。
だが、今は自身の進むべき道を見つけて地球を守る為に命を賭けている。
ゼハートはアセムを戦士として認めている。
「こっちは終わったわよ! アンタ達は何してんのよ!」
起爆の準備が整ったマリィが二人を呼びに来るが、二人の雰囲気が違う事に気がつく。
「どったの?」
「何でも無いよ」
アセムはそう言ってAGE-2DBに乗り込む。
「済まなかった」
ゼハートもマリィとすれ違いざまにそう呟く。
マリィは状況を飲み込めないが、ゆっくりと聞いている暇は無い。
こうしている間にもダウネスは地球へと降下しているからだ。
マリィもガンダムZERO Ⅲγに乗り込むとコロニーデストロイヤーを起爆させて、エネルギーコアを爆破する。
そして、三機はダウネスの外に離脱する為に退避を始める。
ガンダムZERO Ⅲγの砲撃で時間を短縮したお陰で離脱出来るかも知れない時間が出来た。
「マリィ!」
ダウネスの通路をフルスピードで突っ切るが、機動力がAGE-2DBやゼイドラとは圧倒的に劣るガンダムZERO Ⅲγがどんどん距離を話されていく。
「ああもう! 勿体ないけど!」
マリィは強制的にウェアをパージしコアファイターの状態となる。
火力を使わなければ重いだけのウェアをパージした事で若干だが、速度が増すが、それでも二機にはついて行けない。
「俺が行く!」
ゼハートのゼイドラはコアファイターを掴んで加速する。
コアファイターを持っている事でゼイドラの機動力は落ちるがそれでもコアファイターだけで進むよりかはマシだ。
「くそ!」
AGE-2DBもゼイドラに並ぶが、時間短縮の為に壁を砲撃で破壊して来たせいでダウネスの内部はボロボロでエネルギーコアの爆破の衝撃で
すでにところどころが破壊されて、前方からも爆風が押し寄せる。
「万事休すか……」
「何とかなりなさいっての!」
爆風が三機を飲み込もうとするが、マリィのコアファイターから青白いオーラが展開されて、三機を包み込む。
「何だ……これは……」
そのオーラは三機には何の影響も及ぼさないが爆風や落ちて来る瓦礫を弾いている。
「何だか知んないけど、さっさと逃げるわよ!」
何が起きているのかは分からないが、今は逃げる事の方が先決だ。
三機はそのままダウネスの外まで離脱する。
すでにダウネスは大気圏のギリギリまで落ちている為、三機はそのまま大気圏に突入する。
AGE-2DBはストライダー形態で大気圏に突入し、コアファイターを抱えているゼイドラはそのままコアファイターを庇うように大気圏に突入している。
その後方からはディーヴァもAGE-2DBを追うように大気圏に突入している。
コアファイターを抱えている為、大気圏の突入体勢を取れないゼイドラはその状態のまま大気圏に突入しているが、その後ろに一機のゼダスMがゼイドラを庇うように位置取りをしていた。
「ドール……」
「今、お前を死なせる訳にはいかないからな……」
ゼハートは若くしてイゼルカントに才能を見込まれて司令官となった。
このままではゼイドラは大気圏で燃え尽きるだろう。
そうなれば、ヴェイガンにとっては大きな打撃となる。
ノートラム制圧は失敗したが、戦争で負けた訳じゃない。
その為、後の戦いの為に才能あるゼハートをここで死なせる訳には行けない。
だからこそ、ドールは自身を盾にしてゼハートを活かそうとした。
「お前に託すぞ……ヴェイガンの未来を……」
そしてドールのゼダスMはゼイドラを守りながら大気圏で燃え尽きた。
こうしてダウネスの地球降下は阻止され、地球は守られたが今だに戦闘は続いている。