機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第三部フォルス編
第64話


A.G.164年、勇気の日から23年が過ぎていた。

 世界は地球とビッグリングを中心とした勢力を持つ地球連邦軍、火星圏に本拠地を持ち、地球圏で勢力を伸ばしたヴェイガン、超ド級戦艦ノアを拠点としたUIEの三つの勢力が地球圏の覇権を争い戦争をしている。

 当初は連邦軍とヴェイガンが正面から戦争をしていたが、第三軍としてUIEが台頭した。

 UIEの台頭で連邦軍とヴェイガンは大打撃を受けて、互いに戦力を増強し、戦争は一気に冷戦状態となり、すでに23年が経過した。

 その間、戦力の充実しているUIEは気味が悪い程、大規模な作戦行動は行わず、まるで力を更に蓄えているかのように行動し、連邦軍とヴェイガンも宇宙では小規模な戦闘は多々あるが、人々の記憶から戦争をしているのと言う事を忘れさせるのは十分だった。

 

 

 

 

 

 連邦軍の所有しているコロニー「ブランベルグ」から遠く離れたところにUIEの保持するオリンポス級戦艦「ゼウス」と同型艦の「アポロン」、「アプロディテ」の三隻が駐留している。

 オリンポス級戦艦は直方体の箱を二つ繋げて推進システムと艦橋、最低限の居住ブロックを加えただけの戦艦で、主にMSの運搬を目的としている。

 一つの直方体にはMSが6機搭載出来、一隻にMSが12機で三隻で36機のMSが搭載されている事になる。

 だが、現在、ゼウスにはMSの空きが5機分残っている。

 それは戦闘でMSを落とされたからではない。

 これから、この三隻が行う任務に関わっているからだ。

 三隻の戦艦の内、ゼウスの立方体のMS格納庫の上部が開閉しMSが出て来る。

 6機の内5機が23年前にクライド・アスノが再設計したナイトルーパー改でもう1機がゼイ・ドゥだが23年前に投入された機体とは少し違う。

 本来ゼイ・ドゥは高い拡張性を持つ為、パイロットや陣営、用途に応じてカスタムする事が一般的だったが、23年前はカスタムのされていない通常機を投入していた。

 このゼイ・ドゥはパイロットのマドック・アークライト専用のMカスタムだ。

 カラーリングは通常機の緑から水色に変更され、両肩のL字型のシールドから突起の付いたスパイクアーマーとなり左腕には先端にビームガトリング砲が搭載されたビームガトリングシールドを右手には高出力ヒートソードを装備した近接戦闘を重視したカスタムがされている。

 

「マドック小隊。出るぞ」

 

 マドックのゼイ・ドゥMカスタムを戦闘に6機のMSはコロニー「ブランベルグ」を目指す。

 マドック小隊が出た後にアポロンの格納庫の上部ハッチが解放される。

 ゼウスとは違い二つの格納庫からMSが出て来る。

 11機はナイトルーパー改で一機だけが、ゼイ・ドゥだ。

 このゼイ・ドゥもカスタムタイプでパイロットのボリス・ブレイフマン専用のBカスタムだ。

 Bカスタムは両腕に腰に固体アームで固定されている大型レールガン二基と、両肩にはL字型のシールド、バックパックにはレールガンをマウントするラックが追加され腰にはビームホークを装備した中距離支援用のMSとなっている。

 残りのナイトルーパー改は改良されたARISUシステムによって無人機となっている。

 MSの隊長機以外は無人機である為、隊長機のパイロットと艦を運用する最低限の人材しか乗せない為、オリンポス級の戦艦は格納庫の大きさに対して居住区などの大きさが小さいのだった。

 

「ボリス隊、出る」

 

 ゼイ・ドゥBカスタムが出撃し、11機のナイトルーパー改もそれに続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UIEの戦艦からコロニー「ブランベルグ」を挟んだ反対方向にもCMCの戦艦が航行していた。

 CMC……Cosmic Mercenary Companio元はCGCとして民間の警備会社だったが、今は代表が代替わりと共に経営方針も変わり、今では傭兵派遣会社となっていた。

 そのCMCに所属している戦艦「ホワイトファング」だ。

 蝙蝠退治戦役から連邦軍で運用されて来たディーヴァの同型艦を独自に改造を加えた艦で高速巡航形態と強襲揚陸形態の二人の形態を持ち、現在は高速巡航形態となっている。

 ホワイトファングの大きな特徴としては艦体が白一色で塗装されている事だ。

 そのせいで宇宙では非情に視認性が高く目立つ。

 そして、甲板には赤い狼のマーキングがされている。

 これらはホワイトファングの艦長の趣味であった。

 

「通信妨害だと?」

 

 ホワイトファングのブリッジに艦長のウルフ・エニアクルが副長のラウラ・ハイゼンベルクによって呼び出されて上がって来る。

 艦長のウルフは軍を退役しようかと考えていた時にCMCにスカウトを受けた。

 すでにウルフも歳でMSのパイロットとしては体力的に厳しくなっていたが、蝙蝠退治戦役やビッグリング防衛戦、ノートラム防衛戦など、数々の激戦を潜り抜けて来た歴戦の猛者である為、その経験を活かして戦艦の艦長として契約したいと言って来たのだ。

 ウルフとしても軍を退役しようとした理由は軍人である事のしがらみが鬱陶しくなった為であり、CMCならある程度は好き勝手に出来る上に主に雇うのは連邦軍である為、戦う相手はヴェイガンかUIEで今までと変わらず、面倒な事は軍よりも少ないと考えたからだ。

 CMCとの契約条件の一つとして自分の乗る戦艦は白で塗装した高機動艦で目立つところの狼のマーキングを入れる事とその艦に搭載するMSは全機、白で塗装する事を条件に出した。

 CMC側もその程度で歴戦の猛者と契約が出来るならと受け入れて交渉は成立して今に至る。

 

「恐らく人為的な物と思われます」

 

 ラウラはウルフに事務的に答える。

 ラウラは典型的な役人気質である為、直感や感情で判断する事の多いウルフとは余り反りが合わないが、配属先は会社の方で決められる事が殆どなので、正確的に正反対であるウルフの補佐に会社はラウラを置いている。

 

「どう言う事だ……近くに敵影は無いんだろ?」

「敵どころか、民間船すら通らないっすよ」

 

 艦のCICが適当に答えるとラウラはCICを睨みつけ、CICは肩をすくめるがウルフは気にした様子は無い。

 ホワイトファングのクルーの大半は、艦長からして規律に厳しい訳じゃない。

 締めるところさえ締めれば、特にきつい規律はないが、未だにその様な環境にラウラは慣れてはいないようだ。

 

「近くにコロニーがありますね。そこを襲う気なんじゃないですか?」

 

 モニターに付近の宙域図を出すと近くにコロニー「ブランベルグ」がある事が分かる。

 

「ブランベルグか……どんなところだったけな?」

「確か……連邦軍の基地と大きな演習場がありましたね」

 

 ブランベルグの連邦軍の基地は規模としては小規模ではあるが、規模には似合わない大きな演習場がある事で有名だ。

 

「演習場か……そんなとこをわざわざ通信妨害をかけてまで襲撃するとこか?」

 

 連邦軍によって戦略的には大して価値の無いコロニーに通信妨害をかけてまで攻撃を仕掛ける理由は考え難い。

 ウルフは少し考え込み、ラウラは嫌な予感がして顔を顰めている。

 

「艦長……」

「少し様子を見に行くか」

 

 ラウラの嫌な予感が辺り、ため息をつく。

 

「しかし、本艦は現在、補給の必要があります」

 

 ホワイトファングは任務の帰りで物資の補給が必要な状態にある。

 そんな時に状況の分からない事に首を突っ込めば次にいつ補給を受ける事が出来るのか分からない。

 最低でも一度、近くのコロニーで補給を受けてからの方が良い。

 

「だからって、戦闘が起きたら場合によってはブランベルグの連邦軍だけじゃ対応出来きねぇかも知れない。それを放っておく訳にも行かないだろ」

 

 ウルフの言っている事にも一理はある。

 ブランベルグには軍人や軍関係者だけでなく、多くの民間人も済んでいる。

 そのコロニーに危険が迫っているかも知れないと言うのに無視して先に進むと言うのも人道的に欠けると言うものだ。

 

「ボクが言って様子を見てくれば良い」

「フォルス……」

 

 新たにブリッジに入って来たフォルスがそう言い、ラウラは少し動揺する。

 フォルス・マースカイザー。このホワイトファングのMS隊に所属している不動のエースパイロットだ。

 自身の体のサイズよりも一回り大きいロングコートを着用し、革のグローブと大きめのゴーグル型のサングラスを愛用している。

 黒い髪を頭の後で束ねており、声も成人男性としては高めで全体的に中性的な容姿をしている為、髪を下して女だと言えば女に見えない事もない。

 

「ボクのガンダムなら、足も早し長距離移動も得意だからね。ボクが様子を見て来る。それで危険がないようなら、戻って来て知らせる。状況によっては連絡を入れられないかも知れないからその時はキース達を出せば良い」

「すぐにガンダムの発進準備を急がせなさい」

 

 今までは様子を見に行く事自体、余り気が進まない様子だったラウラだが、フォルスが言った途端に態度を変えた。

 そのあからさまな態度からホワイトファングのクルーではラウラがフォルスに対して気がある事は周知の事実でそれを知らないのは当人達だけだろう。

 そして、ラウラがフォルスの意見に絶対に反対しないのはいつもの事なのでクルーの誰もラウラの変わり身の早さに戸惑う事は無い。

 

「それじゃ、艦長。ボクが様子見に行くって事で構わない?」

「ああ……但し、余り無茶な事はしてくれるなよ」

「それは無理だと思うな。うちは艦長が艦長だし」

 

 フォルスがそう言うとクルーの間で笑いが零れる。

 

「馬鹿な事言ってないでさっさと行って来い」

 

 ウルフにそう言われてフォルスは格納庫へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 パイロットスーツに着替えたフォルスは格納庫へと向かっていた。

 パイロットスーツを着用してもフォルスは愛用のサングラスを外す事は無い。

 その為、クルーの中にはフォルスがサングラスを外したところを見た物は一人もいない。

 フォルスはアラートに入るとそこにはフォルス以外のMS隊のパイロットが待機していた。

 一人は大柄で黒人で尚且つ、スキンヘッドと言う非情に目立つ男、キース・バークレイだ。

 キースはMS隊の隊長を任されている。

 二人目は赤みの掛かった髪の少年、ライル・ローレインだ。

 ライルは艦長のウルフの軍人時代の部下のオブライト・ローレインの息子で、父に憧れて軍人になろうとするも、父の愛機であるジェノアス系のMSはアデル系が軍では主流となり、更には新型機のクランシェの配備によってジェノアス系は一部のオブライトのようにジェノアス系のMSに慣れている熟練パイロットのみが搭乗する以外は新人はアデル系かクランシェを与えられる事を知り、ジェノアス系のMSに乗る為に軍人ではなく、CMCのMSパイロットを志望した。

 そして、ライルは前の任務の前に父のコネでウルフの面倒になる事になり、ホワイトファングに配属されたばかりで前の任務では戦闘が無かった為、実戦経験はまだない。

 最後はアラートのエロ本を読みながら、寝そべっているレスリー・エイベルだ。

 

「何かあったのか?」

 

 急にパイロットはアラートで待機するように艦内アナウンスが入り、事情を知っていそうなフォルスにキースは尋ねる。

 キースはMS隊の隊長だが、CMCではフォルスの方が先輩に当たる。

 その上、フォルスは破格の待遇で契約している為、実質的には艦長のウルフと同位の扱いとなっている。

 その為、隊長の自分よりも仕事の事情を知っている事の方が多い。

 

「いや、少し偵察に出るだけだよ。キース」

「エースパイロット様は偵察まで自分でやってくれるとは頭が下がりますね」

「レスリーさん! そんな言い方は無いんじゃないですか!」

 

 フォルスに対して刺々しい態度を取るレスリーに対してライルが立ちあがり抗議するが、当のレスリーはエロ本から目を離す事は無い。

 

「その辺にしておけ」

「ボクは気にして無いさ」

「ですけど……」

 

 ライルは納得がいかない表情をして座る。

 ライルは幼少の頃から両親にガンダムの話を聞かされている為、ガンダムのパイロットになりたいとは思ってはいないが、ガンダムに対してある種の憧れを持っている。

 その為、CMCきってのエースパイロットでガンダムのパイロットであるフォルスを尊敬している為、フォルスに対してはきつい言葉を言うレスリーについ感情的になってしまう。

 

「ボクが様子見に言って何も報告が無ければ君たちも出撃するかも知れないから、その事だけは覚えておいて欲しい。後はキースに任せるよ」

「ああ……気を付けて来い」

「分かってる」

 

 フォルスはそう言い、格納庫に向かう。

 格納庫には4機のMSが置かれている。

 フォルスの搭乗機はガンダムAGE-2Xだ。

 23年前に連邦軍が実戦に投入したガンダムで今ではその機体も13年前に喪失している。

 そのガンダムAGE-2をフォルスは個人所有している。

 軍の中でも機密情報とされているガンダムの設計データを何処で手に入れてそれを何処で製造したかなどは一切不明で、その事を調査する事を禁じる事もフォルスとの契約内容の一つである。

 その上なぜか、補給物資の中にAGE-2用の予備の部品が混じり込んでいる為、AGE-2Xが部品が足りないと言う事態は今まで一度も起きていない事からフォルスと言う人物は謎に包まれている。

 そして、そのガンダムAGE-2をフォルスは独自の改良を加えていた。

 外見こそは色が白い以外はハイパードッズライフルにシールド、ビームサーベルが二基と言ったオリジナルと変わらないが、装甲を限界ギリギリまで軽くすることで重量を減らした為、防御力はオリジナルに劣るが機動力を向上させている。

 それだけでなく、フォルスの持つXラウンダー能力に対応した改良もされている。

 故に機体名に「X」とつけられている。

 オリジナルのようにAGEシステムは搭載されていないが、23年経った今でもフォルスの技量を相まってホワイトファングのエース機として運用されている。

 他にはGバウンサーが二機だ。

 このGバウンサーはウルフが乗っていた時とは違い、後に軍の中の一部の部隊で正規採用したタイプでシールドにシグルブレイドが付いて

いない。

 それをCMCで独自の改良を施して任務に合わせて武装を変更出来るように通常装備のドッズライフル以外の武器の装備も視野に入れている。

 胸部に1と2とマーキングがされており一号機がキースで二号機にレスリーが搭乗する。

 4機目がジェノアスキャノンⅡだ。

 ジェノアス系はすでに軍でも一線から引いており、ジェノアスⅡも多く民間に流れて来ている。

 その内の1機だが、ジェノアスⅡの性能はアデルと比べるとウェアの換装システムも採用されていない為、全体的に劣る。

 その為、ジェノアスⅡを後方支援用のMSに改良したのはジェノアスキャノンⅡである。

 両肩にアデルキャノンのドッズキャノンと3連装ミサイルポッドを肩と脚部に計4基装備し、左腕にはビームサーベルのラックを兼ねたシールド、右手にはアデルと同タイプのドッズライフルを装備している。

 この機体は強くジェノアス系のMSに乗りたがっているライルの搭乗機だ。

 これらの4機のMSは全て艦長のウルフの意向で白く染め上げられている。

 フォルスは自身の愛機のガンダムAGE-2Xに乗り込む。

 機体に乗り込むとシステムを立ちえげて、コックピット内に常備しているピルケースから白い錠剤を2,3粒出してそれを飲むとピルケースをしまい操縦桿を握る。

 そうしているうちにガンダムAGE-2Xホワイトファングのカタパルトにセットされる。

 

「フォルス。目的はあくまでも偵察よ」

「分かってるよ。だけど、状況によっては現場の判断で行動するかも知れないけどね」

 

 ラウラはその言葉に不安そうな顔をする。

 フォルスの現場判断は高確率で戦闘に発展する事が多い。

 高い操縦技術を持つが故に大抵の事は戦闘で敵を倒す事が一番手っ取り早いと判断する事が多いからだ。

 

「大丈夫。コロニーを破壊しない程度に留めるからさ」

 

 そんな事を言われても全く安心出来ない。

 コロニーを破壊しない程度に留めると言う事はコロニーを破壊しない程度には暴れると言っているからだ。

 即ち、戦闘を避ける気は余りないと言う事になる。

 そんなラウラの心配をよそにフォルスはブリッチからの通信を閉じる。

 

「フォルス・フォルス・マースカイザー。ガンダムAGE-2X……行きます」

 

 ガンダムAGE-2Xが射出され、AGE-2Xはストライダー形態に変形するとコロニー「ブランベルグ」へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UIEとガンダムAGE-2Xの接近を知るよしもないブランベルグでは昨日と変わらない一日が過ぎようとしていた。

 コロニー内の連邦軍の演習場では今日もマッドーナ工房での試作機のテストが行われていた。

 そのテストも大きな事故もなく無事に終了している。

 連邦軍の基地の一画は今はマッドーナ工房の試作機のテストチームが借りている。

 

「今日のテストの結果はまとめて工房の方に送って起きました」

 

 基地の一画でキャロル・アスノは地球へのプライベート通信を行っていた。

 キャロルはエリアルドとファムの娘で祖父の血を濃く受け継いだのか物心ついた時からMS開発に興味を示し、今では20歳と言う若さでマッドーナ工房で試作機の開発チーフを任されている。

 母親譲りの金髪を邪魔にならないように括り、眼鏡をかけて、首には作業中に眼鏡がずれる事を防ぐ為に代わりに付けて言う度の入ったゴールグをかけている。

 

「うむ。それはじきにこちらにも届くだろう」

 

 通信の相手は地球で暮らしているフリット・アスノだ。

 フリットは今では軍を退役した身だ。

 そして、キャロルにとってはMS開発に師とも言える相手だ。

 

「それでキャロルから見たプロト3はどうだ?」

「そうですね……イノベーション以外の4機は既存のガンダムの延長上でしかないですね。性能は良いんですけど。新しさに欠けると言ったところです。イノベーションは新技術を使っていますから、他の4機とは比べ物にはなりませんけど、AGEドライヴが安定しませんのであれだけ複座にして正解でしたよ」

 

 キャロルはフリットに試作機の感想を述べる。

 すでにテストの結果はマッドーナ工房経由でフリットの元に届くようになっているが、形式的に書かれている報告書だけでなく現場の率直な意見が聞きたかったため、フリットはキャロルに聞いた。

 

「やはりAGE-3はイノベーションをベースにした方が良いと言う事か……」

「そうですね。それよりキオの方はどうです? 幾らAGE-3が完成してもパイロットが扱え切れなかったら意味がないですよ」

「今はMSバトルシュミレーターで遊びながら操縦を覚えている。私が教えた通り、敵を倒す術は大体は習得しておる。これですぐに実戦に出てもヴェイガンの量産機には遅れはとらんだろう。後は指揮官機やエース機の様な高性能機との戦い方を身につけさせるだけじゃ。それに後、数年は要すると思っとる」

「数年ですか……キオも今はまだ子供ですし、出来れば今の私くらいになるまでは実戦に出したくはないですね」

「そうじゃな……だが、奴らはいつ地球に侵略を開始して来るか分からん! いざと言う時の準備をしておくにこしたことはないじゃろう」

 

 フリットは軍を退役してもヴェイガンへの憎しみや敵意を忘れた訳ではない。

 その為、ヴェイガンを倒す為の準備を今も独自に行っていた。

 キャロルがチーフをしている試作機の開発計画もフリットの次世代のガンダムの開発計画の一環だ。

 今は5機の試作機が完成し、テストでデータを収集し、それを元にフリットが新型のガンダムを地球で製造している。

 そして、フリットの孫にしてアセムの息子であるキオ・アスノにもガンダムのパイロットとなるべく、MSバトルシュミレーターで本人の知らないところでガンダムの操縦訓練をしている。 

 まだ、キオは子供である為、すぐに実戦に出す訳ではないがヴェイガンがいつ本格的に攻めて来るのか分からない状況では一日も早く訓練をさせた方が良いとの判断で、幼い時から遊びと称して訓練をさせている。

 

「失ってからではもう遅いのだ……」

「そうですね」

 

 フリットはヴェイガンとの戦争の中で両親を失い大切な人を失い、今は息子も戦いの中で帰って来ない。

 その上、UIEが宣戦を布告してから大した動きを見せてはいない。

 その為、キオには自分で大切な物を守れるようにするように早いうちからMSの操縦を身につけてさせている。

 キャロルはフリットの通信を切って一息つく。

 だが、休む暇もなく、警報が鳴り響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボリス隊が正面からブランベルグに接近した事でブランベルグの連邦軍はMS隊を出撃させた。

 そして、マドック小隊はその隙にコロニー内に侵入していた。

 すぐに基地で待機していたアデルが出撃して来るも機体性能の差は歴然ですぐに壊滅してしまう。

 

「新型機の格納庫はあそこか……」

 

 マドックのゼイ・ドゥMカスタムはビームガトリング砲で基地の砲台を潰して基地に降りる。

 後方から五機のナイトルーパー改も基地に降りるとナイトルーパー改からパイロットが降りて来た。

 このナイトルーパー改は無人機ではなく、パイロットが乗っており、機体から降りた後はARISUシステムによって無人機として作戦行動を取る手筈だ。

 マドックの援護でナイトルーパー改のパイロット達は格納庫に入る。

 

「隊長。新型機は4機しかありません」

 

 格納庫に入ったパイロットの一人のフェルナンドから通信が入る。

 当初の予定では新型機は5機だった筈だが、格納庫には4機しかなかったらしい。

 

「まずはその4機だけ回収しろ。バルトロはナイトルーパー改に戻り最後の1機の探せ」

  

 マドックが指示を出すとバルトロの不満そうな声が聞こえるが、マドックは無視して、バルトロはナイトルーパー改に戻る。

 そして、少しすると格納庫から4機のMSが出て来る。

 

「隊長。新型機を確保しました」

 

 試作機のプロトガンダムAGE-3 ストライダーに乗ったフェルナンドがそう言う。

 プロトガンダムAGE-3 ストライダーはプロト3シリーズの一機でガンダムAGE-2のデータを元にした可変MSだ。

 他のプロト3とは違いストライダー形態への可変機構を持つ。

 同じく、AGE-2をベースにした量産機のクランシェのデータも多く流用されている。

 青を基調として右手にはクランシェのドッズライフルの改良型を装備し、両腕と足の先端に固定式のビームサーベルを装備、頭部にはバルカンを必要最低限の装備しかなく、AGE-2のように肩にストライダー形態時の主翼は無く、バックパックにストライダー形態時の主翼が折り畳まれており、主翼には部隊長用のカスタムタイプのクランシェ同様にビームキャノンが内蔵され、肩にはストライダー形態時に使われる大口径のビームバルカンが内蔵されている。

 

「何で私の機体はトロイのよ」

 

 そう言って愚痴を零すのはプロトガンダムAGE-3 タイタスを奪取したカティア・バルザックだ。

 プトロ3 タイタスはガンダムAGE-1 タイタスをベースにした機体でタイタスの特徴である高い防御力とパワーを受け継いでいる。

 タイタスの欠点である機動力の遅さは未だに解決していない。

 武装は両腕と脚部にビームリングの発生装置が内蔵され、膝と肩からもビームニードルを出す事が可能だ。

 バックパックには大型のハンマーのドッズハンマーと実体剣とビーム刀を一体化させた対艦刀がマウントされ、更に近接戦闘での破壊力を重視した機体だ。

 

「カティアのは良いよ。僕のなんて陰険な機体だぜ?」

 

 ニック・バジョットは奪ったプロトガンダムAGE-3 スパローをそう評価する。

 この機体はガンダムAGE-1 スパローをベースとして隠密戦闘を得意としている。

 武装は両端にシグルブレイドが搭載され、ワイヤーによっ刃を飛ばす事が可能なシグルランスに左腕には実弾式の固定マシンガン、膝にはニードルガンが内蔵されている。

 装甲には特殊な装甲を採用する事で防御力は低いがレーダーに反応し難くなっている。

 

「文句を言うな。我らは任務を真っ当すれば良い」

 

 最後の一機、プロトガンダムAGE-3 ダブルバレットに乗るアレクセイ・ヴァレンニコフが自分の奪取した機体に文句を言う二人を諌める。

 プロト3 ダブルバレットはガンダムAGE-2 ダブルバレットをベースとしている。

 両肩にツインドッズキャノンを装備し、両手には専用のドッズライフル、胸部にはビーム砲、脚部にカーフミサイルと高い火力を誇る。

 また、脚部にはアデルマークⅡの地上戦用に使用されている、ローラーが付いている為、陸上でのある程度の機動力を確保している。

 そして、この機体はダブルバレットの火力を伸ばしている為、可変機構は付いていない。

 

「お前らは新型を奪えて良いけど、俺なんてナイトルーパー改だぜ?」

「奪った新型機は先にゼウスに帰還しろ。残りの1機は俺とバルトロで探す」

 

 奪取した4機のプロト3はブランべルグから離脱して行き、マドックのゼイ・ドゥMカスタムとナイトルーパー改はそのまま残りの1機のプロト3の捜索に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 警報がなりブランベルグの少年、クリフォード・マクダエルは軍の基地の方に急いでいた。

 クリフォードは髪を金髪に染めて逆立てており、耳にはピアス、学校の制服も適当に着崩している。 

 すでに街は無人のナイトルーパー改の攻撃で混乱し、多くの住人はシェルターに避難している。

 だが、彼の母親は軍で働いており、連絡も取れないので安否の確認をする為に基地に走っていた。

 

「何でこんな事になってんだよ!」

 

 クリフォードはコロニーの惨状を見て叫ぶ。

 今日もいつの一日だと思っていた。

 学校では授業をサボり、屋上で悪友達を駄弁り、放課後は別の学校の連中に絡まれたから返り討ちにして、ゲームセンターで憂さを晴らしていた。

 だが、そんな一日は脆くも崩れ去った。

 UIEの襲撃でコロニーは瞬く間に今の惨状だ。

 クリフォードは基地に到着するも、母の勤務は基地のどこかまでは知らない。

 事務系だと言う事は知っている為、適当に近くの施設を探す。

 施設を探しているうちにクリフォードはMSの格納庫に迷い込んでいた。

 

「MS……」

 

 そこには1機のMSが佇んでいた。

 それがマドック達が探している最後の1機のプロトガンダムAGE-3 イノベーションだ。

 ガンダムAGE-1をベースにして今までのガンダムのデータを反映させつつも新機軸の技術を試験的に多数採用している。

 それ故にこの機体には「イノベーション」と名づけられた。

 新素材の装甲にヴェイガンのMSの技術を取り込み、両肩にはAGE-2の物を改良した光波推進システムを内蔵した大型可変翼を2基つづ搭載し、メインの武器にはガンダムZERO Ⅲγなどにも使われたフォトンランチャーを更に洗練したシグマシスライフルを装備し、左腕には大型シールド、頭部にはバルカン、腰にはビームサーベルが二基装備されている。

 更にはかつてはガンダムZERO Ⅲαに搭載されていたAGEドライヴも搭載されている。

 AGEドライヴはクライドが不在の為、出力の安定化が難しいくコックピットには機体操縦の他にAGEドライヴの制御担当のパイロットも乗る必要があり、複座となっている。

 AGEドライヴの出力が安定していない為、最悪オーバーロードを起こして爆発する危険性もあり、ガンダムZERO Ⅲに搭載されたコアファイターも採用され、緊急時にパイロットを脱出させる脱出装置となっている。

 

「これってガンダムだよな……」

 

 クリフォードもガンダムと呼ばれるMSが今まで戦いで活躍している事は知っている。

 

「君! そこで何をやってるの!」

 

 プロト3 イノベーションを見えげていたクリフォードに機体内にいたキャロルが気付きコックピットから顔を出す。

 キャロルは敵の狙いがプロト3である事に気がつく、5機の中でAGEドライヴの調整の為に唯一別の場所に戻されていたプロト3 イノベーションだけでも死守する為に部下を避難させてここまで来ていた。

 そして、今は機体の調整を行い何とかUIEの手からこの機体を隠そうする策を考えていたところにクリフォードが迷い込んで来た。

 

「そこは危険だからこっちに来なさい!」

 

 キャロルのそう言われてクリフォードはプロト3 イノベーションのコックピットまでよじ登る。

 

「コイツ、動くのか?」

「パイロットがいないから無理よ」

「だったら俺が動かしてやるよ!」

 

 クリフォードはキャロルを後のAGEドライヴの制御担当の席に押し込めて、前の機体操縦の席に座る。

 

「見たところ、学生だけど、MSの操縦経験は?」

「ないけど、喧嘩なら慣れてる!」

 

 クリフォードは学生服を着ている為、すぐに学生だと分かったが、学生でも戦闘用で無くとも作業用や競技用のMSに乗った経験があるかも知れないと思っていたが、どうやらその経験もない素人らしい。

 しかし、プロト3 イノベーションは他の4機と比べて新技術を多用しているだけあって非常に性能は高い。

 パイロットが素人だろうと、他のプロト3は敵の母艦に運ばれる筈だからすぐに戦闘になる事は無い為、この場はクリフォードに任せるしかない。

 

「私の方でサポートをするわ」

 

 キャロルの腹を括り、後部座席に座りAGEドライヴの調整を始める。

 クリフォードも操縦桿を握りして、キャロルの指示でゆっくりと機体を前に進ませる。

 この日、少年はガンダムと出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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