機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第65話

コロニー「ブランベルグ」に対するUIEの攻撃によるコロニーの外でも迎撃のMSが出ている。

 クランシェの部隊長用のカスタム機であるクランシェカスタムに通常機のクランシェにアデルマークⅡの宇宙戦仕様が迎撃に出るも、ゼイ・ドゥBカスタムやナイトルーパー改の前に壊滅状態に陥っていた。

 

「くそぉぉぉ!」

 

 クランシェカスタムがドッズライフルを撃つがゼイ・ドゥBカスタムはかわして大型レールガンを放ち、クランシェカスタムはシールドで受け止めるも腕ごとシールドが吹き飛ぶ。

 

「隊長!」

 

 ナイトルーパー改はロングビームサーベルでクランシェカスタムに切りかかるが、ロングビームサーベルがクランシェカスタムを切り裂く前にナイトルーパー改は横からビームで撃ち抜かれる。

 

「大丈夫かい?」

 

 ナイトルーパー改を撃墜したのは戦闘の様子を眺めていたフォルスのガンダムAGE-2Xだった。

 

「ガンダム……」

「こっちはCMC所属のフォルス・マースカイザー。状況はどうなってんの?」

「傭兵だと……奴らの狙いはマッドーナの新型だ!」

「新型機ね……聞いていた通りにセコイ連中だね」

 

 ガンダムAGE-2Xはストライダー形態に変形するとブランベルグに方に向かう。

 

「悪いけど。ここから少し離れたところにボクの母艦がいるから状況を伝えておいてね」

 

 フォルスはそう言い残してコロニー内に侵入して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プロトガンダムAGE-3 イノベーションを起動させたクリフォードとキャロルは何とか、格納庫の外まで歩いた。

 クリフォードはキャロルの最低限の動かし方は簡単にレクチャーされたが、慣れない操縦である為、動きがぎこちない。

 一方のキャロルも異常を起こせばすぐにAGEドライヴを停止させて、中断出来たテストとは違い、異常が出たら終わりの状況でAGEドライヴの制御で精一杯だ。

 その前にマドックのゼイ・ドゥMカスタムが立ちはだかる。

 

「最後の1機はすでに稼働しているか……ならば仕方がない。破壊させて貰う!」

 

 ゼイ・ドゥMカスタムは高出力ヒートソードで切りかかる。

 それをとっさにシールドで受け止める。

 

「おい! なんか武器は無いのかよ!」

「腰にビームサーベルがあるわ! それを使って!」

 

 キャロルはモニターにビームサーベルの位置を示す。

 プロト3イノベーションはビームサーベルを抜く。

 ゼイ・ドゥMカスタムは一度距離を取って高出力ヒートソードを構える。

 プロト3イノベーションはビームサーベルで切りかかるも、ゼイ・ドゥMカスタムは簡単にかわす。

 

「動きに無駄が多いな。素人か?」

 

 マドックはプロト3イノベーションの動きからパイロットが実戦経験が無いと予測する。

 そして、ゼイ・ドゥMカスタムは高出力ヒートソードで切りかかり、シールドで受け止めるも高出力ヒートソードでシールドを掬いあげられて至近距離からビームガトリング砲を撃ちこまれる。

 その攻撃は直撃するも、プロト3イノベーションの装甲は無傷だ。

 

「無傷だと!」

「何ともないのか……」

「あの程度の攻撃なら大丈夫だけど、いつまでも耐える事は出来ないわ」

 

 ビームガトリング砲は連射速度を優先している為、威力は小さい上に新素材を採用したプロト3イノベーションの装甲は厚く、簡単に損傷を与える事は出来ないが、攻撃を無効化している訳ではない。

 攻撃を受け続ければいつかは限界が来る。

 

「だが……装甲とて無限ではない筈だ!」

 

 ゼイ・ドゥMカスタムは再び、プロト3イノベーションに攻撃を開始しようとするが、上空からビームの雨が降って来る。

 それをゼイ・ドゥMカスタムはシールドで受け止めると、プロト3イノベーションの前にガンダムAGE-2Xが降りて来る。

 

「あれってAGE-2! 何で……」

 

 AGE-2Xの乱入にキャロルが驚く。

 キャロルにとってその機体は少なからず意味のある機体だ。

 

「どうやら、その一機は奪われずに済んだ様だね」

 

 フォルスはプロト3イノベーションに通信を入れると、キャロルは少なからず落胆する。

 もしかしたらと言う希望を少なからず持っていたからだ。

 白いAGE-2は13年前に行方不明となったキャロルの親戚に当たるアセム・アスノの搭乗機だったからだ。

 キャロルも当時は7歳だったが、少なからずアセムとは面識があった。

 13年前に行方不明となったが、戦死を確認された訳ではないので家族の間ではもしかしたらどこかで生きているのかも知れないとは暗黙の了解で思われていた。

 その白いAGE-2が出て来たのだ、一瞬希望を持ってしまうのは仕方がない事だ。

 だが、相手のパイロットはどう考えてもアセムではないのは明白だ。

 

「ボクはCMC所属のフォルス・マースカイザー。それに乗っているのは軍の人?」

「マッドーナ工房のキャロル・アスノです! 緊急事態で動かしているのは民間人の学生です!」

「アスノ……あの人の……か……」

 

 フォルスはキャロルの名前を聞き、何かを呟くがキャロルやクリフォードには聞き取れなかった。

 

「了解したよ。少し下がって。すぐに片づけるから」

 

 AGE-2Xはハイパードッズライフルをリアスカートに付けるとビームサーベルを持つ。

 

「白い四枚羽根のガンダム……新型機のパイロットとは違うな」

 

 マドックもAGE-2Xのパイロットがプロト3イノベーションのパイロットとは違う事を肌で感じ取り気を引き締める。

 

「カスタムタイプのゼイ・ドゥか……その力見せて貰うよ!」

 

 AGE-2Xはスラスターを全開でゼイ・ドゥMカスタムに突撃してビームサーベルを振るう。

 ゼイ・ドゥMカスタムはAGE-2Xの横払いの一撃を機体を姿勢を低くして、AGE-2Xの懐に潜りこみ高出力ヒートソードを突き上げてAGE-2Xのメインカメラを潰そうとするが、AGE-2Xは頭部を少しずらしてかわす。

 そして、AGE-2Xは機体を少し浮かしてビームサーベルを振り下ろし、ゼイ・ドゥMカスタムも高出力ヒートソードを振るう。

 二機は互いに斬撃をシールドで受け止める。

 

「ボクの動きについて来れるなんてやるね」

「やはり、このガンダムのパイロット、只者ではないか」

 

 二機は一度、距離を取り仕切り直す。

 

「これが実戦かよ……」

「どっちのパイロットも凄い……」

 

 ガンダムAGE-2Xとゼイ・ドゥMカスタムの一連の戦闘の流れを見て来た二人は呟く。

 今まで戦いとは無縁の生活をしていたクリフォードは目の前で起きているエースパイロット同士の一騎討ちをただ茫然と見ているだけだ。

 一方のキャロルも職業柄様々なパイロットや実戦を見る事が多いが、ここまでの技量のパイロット同士がぶつかる事は滅多に無い。

 

「不味いね……これほどの敵は久しぶりだよ。このままじゃ、本気を出したくなるじゃないか」

「流石はガンダムと言ったところか……」

 

 二機は慎重に間合いと取り合い一気に距離を詰める。

 AGE-2Xはビームサーベルを突き出して、ゼイ・ドゥMカスタムはシールドで流して逆に高出力ヒートソードを突き出すが、AGE-2Xはシールドで弾く。

 二機は交差して、すぐに反転するとビームサーベルと高出力ヒートソードを振るい二機の剣はぶつかり合う。

 AGE-2Xはもう一本のビームサーベルも抜き、ゼイ・ドゥMカスタムに飛びかかる。

 ゼイ・ドゥMカスタムは後に飛び退いてビームガトリング砲をAGE-2Xに向ける。

 AGE-2Xはゼイ・ドゥMカスタムを中心に円を描くように走り回避して行くが、そのままストライダー形態に変形する。

 可変ウイングが地面に当たるかギリギリの高度を維持しつつ、ビームガトリング砲をかわし、そのまま旋回して、MS形態に変形して、ビームサーベルを抜く。

 AGE-2Xのビームサーベルをゼイ・ドゥMカスタムは高出力ヒートソードで受け流す。

 

「これほどまでとは……」

「これ以上は機体の反応が追いついてはくれないだけどな」

 

 AGE-2Xの攻撃をゼイ・ドゥMカスタムは上手く捌いているが、フォルスも更に早く動かそうと思えば動かせるのだが、これ以上早く動かすと機体の反応速度がついては来ない。

 

「ん? そこのガンダム。一機そっちに言ったぞ」

 

 ゼイ・ドゥMカスタムと交戦しつつも、プロト3イノベーションの方にも注意を向けていたフォルスが警告する。

 プロト3イノベーションの方にはバルトロのナイトルーパー改が向かっていた。

 

「そのガンダムを寄こさないってんなら潰してやるよ!」

 

 プロト3イノベーションは頭部のバルカンで応戦するも、ナイトルーパー改はビームシールドでガードして突っ込んで来る。

 

「他に武器は……こいつか!」

「待って! それは!」

 

 クリフォードはバルカン以外に武器が無いか探すと機体のバックパックにシグマシスライフルを装備していると表示されている事に気がついてシグマシスライフルを持つ。

 その威力を知るキャロルはクリフォードを止めるが、それが隙となりプロト3イノベーションはナイトルーパー改の体当たりを受けて尻餅をつくように倒れる。

 

「死ね! ガンダム!」

 

 ナイトルーパー改はロングビームサーベルを抜いて高く飛び上がる。

 AGE-2Xはゼイ・ドゥMカスタムの相手をしている為、助けに向かう事は出来ない。

 

「くそ! こんなところで……死ねるかよ!」

 

 プロト3イノベーションはシグマシスライフルをナイトルーパー改に向ける。

 そしてクリフォードはシグマシスライフルの引き金を引く。

 シグマシスライフルから放たれた一撃をナイトルーパー改はビームシールドで防ごうとするが、その威力の前にビームシールドは何の役にも立つ事は無い。

 ナイトルーパー改は跡形もなく消し飛ぶだけでなくその一撃はコロニーの外壁すらも穴を開ける。

 

「嘘だろ……」

「あれほどの威力を持った武器を開発していたのか……」

 

 その威力を目の当たりしたクリフォードとマドックは茫然として、その威力を知っており撃つ事を止める事が出来なかったキャロルは悲痛な表情を浮かべている。

 そんな中でフォルスだけは大して気にした様子をしていない。

 

「丁度良い。あの穴から外に逃げるよ。コロニーの中じゃ戦い難いからね」

 

 AGE-2Xはプロト3イノベーションを連れて、コロニーの外での脱出を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォルスが出撃してから、何の連絡もなく戦闘の反応が確認出来た為、ホワイトファングからMS隊が出撃してフォルスと合流しようとしている。

 

「たく……あの馬鹿は何してんだよ」

「襲撃して来たのはUIEだ。ライルは俺の後についていろ、無理に敵を落とす必要は無い。今回は戦場の空気を感じるだけで良い」

「……了解」

 

 ブランベルグに接近しながらもキースは状況を把握して行く。

 今回が初陣となるライルは無意識の内に操縦桿を強く握っている。

 

「来るぞ!」

 

 ホワイトファング隊の接近を補足したナイトルーパー改が数機接近して来る。

 ナイトルーパー改はドッズバズーカを放ちホワイトファング隊は散開する。

 

「雑魚は隊長に任せるぜ」

「レスリー!」

 

 レスリーのGバウンサーはキースの制止を無視してコロニーの方に向かう。

 実戦経験の無いライルを置いておく訳にも行かず、キースは向かって来るナイトルーパー改を迎撃する。

 

「あんな訳の分からねぇ優男の力なんてなくなってな!」

 

 レスリーのGバウンサーはナイトルーパー改にドッズライフルを放つ。

 だが、ナイトルーパー改は回避する。

 そして、別のナイトルーパー改がドッズバズーカを放ち、Gバウンサーは回避するが、更に別のナイトルーパー改が数機、ロングビームサーベルを抜いてGバウンサーに襲いかかる。

 最初の数撃はかわす事が出来たが、やがて回避しきれずにナイトルーパー改の攻撃によって機体を切り裂かれてGバウンサーは撃墜される。

 

「レスリー!」

「隊長! レスリーさんが!」

「分かってる!」

 

 初めての実戦で仲が良かったとは言えないが友軍が撃墜された事でライルは少なからず動揺し、ナイトルーパー改がロングビームサーベルを抜いて接近するが、コロニーから脱出して来たAGE-2Xがハイパードッズライフルでナイトルーパー改を撃ち抜いた。

 

「ライル。生きているね」

「フォルスか! これはどう言う状況なんだ? それのあの穴は何だ?」

「連中の狙いはコイツですでに他の4機は持ってかれた後見たいだったよ。後、コロニーに穴を開けたのはボクじゃない」

 

 フォルスは完結にキースに説明する。

 後からはおぼつか無い様子でプロト3イノベーションがついて来ている。

 

「君たちはホワイトファングに行きな。キース、ライル。任せたよ。レイリーは……落とされたか」

 

 近くにレイリーのGバウンサーがいない事から、フォルスはすでにレイリーは戦死していると判断するが、友軍機が落とされたにしてはフォルスの反応は非常に淡泊だ。

 

「おい! アンタ! コロニーから逃げるのかよ!」

「そうだよ。連中の狙いは君のそのMSだからね。それが戦場にいちゃ敵は躍起になって奪うか破壊かをしにくる。だけど、戦場からいなくなれば敵もそれ以上の戦闘はしないよ」

 

 クリフォードは完全にフォルスに言いくるめられて反論が出来ない。

 

「それにまともに戦えないMSは邪魔だからさっさと消えてくれると助かる」

「邪魔って!」

 

 フォルスの物言いにクリフォードはカッとなるが、先ほど自分のした事を思い出す。

 自分の引いた引き金によってコロニーに穴が開くと言う事態を引き起こした。

 すでに住人はシェルターに避難している為、最悪の事態にはならなかったが、自分の攻撃でコロニーに穴を開けてしまった事実は変わらない。

 

「……分かったよ」

 

 その為、クリフォードは大人しくキースとライルと共にホワイトファングに向かう。

 その後、追撃して来るMSをフォルスが相手をしていると敵MSも撤退して行く。

 それを確認したフォルスもホワイトファングに帰投する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が終結し、キャロルから艦長のウルフに何が起きたかはすぐに伝わった。

 そして、クリフォードは艦長室でウルフと対峙している。

 ウルフの後にはラウラも待機しているが、そっちを気にしている余裕はクリフォードにはない。

 クリフォードも喧嘩三昧の毎日でそれなりに腕っ節にも自身はある。

 だが、今自分と向かい合っているのはクリフォードが生まれるずっと前から戦場でヴェイガンと戦って来た男だ。

 クリフォードが委縮してしまうのも無理は無い。

 

「事情はキャロルから聞いた。災難だったな。襲撃を受けてガンダムで戦う羽目になるなんてよ。どっかで聞いたような話だがな」

 

 ウルフはそう言う。

 かつて、ウルフと共に戦ったフリット・アスノとアセム・アスノの親子もヴェイガンの襲撃でガンダムに乗って戦った経験を持つ。

 クリフォードとは縁もゆかりもないが、二人の乗っていたガンダムの流れを汲んだガンダムに同じ様な状況で乗る羽目になったクリフォードにウルフは面白い運命を少し感じていた。

 

「俺はこれからどうなるんですか?」

「貴方の行った行為はテロ行為に当たり重大な犯罪行為となります。我々には貴方を連邦軍に引き渡す義務があります」

「ちょっと! 待ってくれよ!」

 

 行き成り、犯罪行為と言われてクリフォードは立ちあがり抗議するが、ウルフの一睨みでクリフォードは黙って座る。

 

「ラウラの言っている事は一般論だ。今回は緊急時だから軍はお前を逮捕しようとは思ってないだろうな」

 

 ウルフにそう言われてクリフォードは一安心する。

 民間人の学生であるクリフォードが戦闘用MSに乗って戦闘行為を行う事は重大な違法行為に当たるのだが、状況的に仕方がなかった事はキャロルから聞いている。

 

「まぁ、それでも厳重注意くらいはされるだろうよ。お前はまだ未成年みたいだからお前の両親にだろうがな」

「お袋は関係ないじゃないですか!」

「まぁな。お前もその成りだ。普段から親に面倒をかけている口なんだろ?」

 

 ウルフはクリフォードの服装や髪形から思春期特有の少し悪ぶってつっぱるているのだと予測するが、ウルフの読みは大体あたっている。

 

「それでだ。お前は歳はいくつだ?」

「もう18になりましたけど……」

「それは都合が良い。ラウラ」

 

 ラウラは一枚の紙をクリフォードに渡す。

 

「これは契約書?」

「そうです。その契約書にサインをすれば時間を遡り、襲撃のあった時点ではすでにわが社の社員と言う事になります。そうなれば貴方の行為は完全に正当化されます。そうなれば親御さんに厳重注意が行く事もありません」

 

 ラウラに渡されたのはSMSとの契約書だ。

 その日付は昨日の物になっており、サインをすれば昨日の時点でクリフォードはCMCの社員となり、民間人ではなくなる為、今日の戦闘行為は正当化される。

 ウルフがクリフォードに歳を聞いたのはCMCの規定で契約はMSパイロットは18歳以上でないと契約が出来ない事になっているからだ。

 

「これにサインすればこれはどうなるんですか?」

「その時点でお前は俺様の船『ホワイトファング』のパイロットになる。だが、安心しろ。パイロットになっても、戦う覚悟を持たない奴を戦場に出す気はねぇからよ。尤も、タダ飯を食わしてやる程、お人よしでもないから雑用くらいはやって貰うがな」

「その契約を破棄して退社する為には手続きが必要ですので次の支社につくまで本艦から降りる事は出来ない事は了承して貰います」

 

 クリフォードは少し迷うが母に迷惑はかけたくない為、サインする。

 

「それで……ブランベルグはどうなるんですか?」

「コロニーに穴が開いちまったんだ。当分は住めないだろうな」

 

 ウルフにそう言われて戦闘時は無我夢中で殆ど考える余裕は無かったが、戦闘で自分の仕出かした事の重大さに気がつく。

 

「まぁ、気にするな。お前は自分の身を守ろうとしただけだ」

 

 ウルフがフォローするが、クリフォードの気は晴れない。

 一先ず、クリフォードは艦長室から出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったのかい?」

 

 艦長室から出たクリフォードをフォルスが待ち構えていた。

 すでにいつもの服装に着替えていたフォルスをクリフォードは少し戸惑う。

 ホワイトファングのクルーはすでに慣れている為、フォルスの恰好を気にする事はないが、サイズの大きいロングコートにゴーグル状のサングラスをかけているのだ慣れない人間の感覚からすれば十分に怪しい。

 それはフォルスと初めて会う人が誰もが通る道だ。

 

「アンタ……あの白い奴に乗っていた」

「フォルス・マースカイザー。よろしく」

「はぁ……」

 

 クリフォードは曖昧に返事をする。

 声からガンダムAGE-2Xのパイロットである事は分かったが、いかんせんその外見が特徴的過ぎる。

 

「ひょっとして艦長に絞られた? 艦長は人相が悪いからね。本人は恥ずかしがって認めないけど、アレで面倒見は良い方だから安心して良いよ」

 

 そんなクリフォードを気にした様子は無く、フォルスは続ける。

 

「それで、君はあのガンダムに乗らないの?」

「あの人はその気がないなら、無理に乗せないって言ってたけど」

「それは勿体ないな」

「俺じゃまともに戦えないって……」

 

 クリフォードは少し苛立つ。

 フォルスは自分がコロニーに穴を開けたところを見ているのに自分にまた、MSを乗るのか聞いて来るのだ。

 

「誰しも初めてはあるからね。ライルも今日が初陣だし……それとも、コロニーに穴を開けた事を気にしているとか?」

 

 クリフォードは勢いでフォルスに掴みかかろうとするが、フォルスはあっさりとクリフォードを避ける。

 

「怖いんだね。また、同じ事をしてしまうのが」

「だったら何だってんだよ!」

「くだらないと思ってね。結局、MSは道具に過ぎないんだよ。扱う人間がどう扱うかで大量殺戮に使われるのか、人を救う為に使われるのかは変わって来る。君があのガンダムを何に使うかを決めるのは君自身だよ。君があのMSで人を救いたいと思うなら人を救えるかも知れない。でも、君があのガンダムから逃げるのならばいずれ同じ事が繰り返されるかもね」

 

 クリフォードはフォルスに何も言い返す言葉もなく、掴みかかっておいてあっさりと避けられた事が恥ずかしくもあり、黙って歩いて行く。

 

「あんまり餓鬼を苛めてやるなよ」

 

 クリフォードがいなくなったところを見計らいウルフがフォルスにそう言う。

 

「苛めているように見えた?」

「かなりな」

 

 フォルス自身に自覚は無いが、クリフォードが自分のやった事に罪悪感を覚えているところに追い打ちをしている。

 

「ボクは正論を言ったつもりなんだけどな」

「まぁ、概ね間違ってはいないだろうな。だけど、誰でもお前程割り切りが良くないんだよ」

「ボクは割り切っている訳じゃなくて、その辺りの善悪に興味がないんだよね。ボクはMSの性能を120%発揮する事が出来る。だから、自分のやりたいと思った事は大抵出来るから悩んだ事は生まれてから一度もない」

 

 そう言い切る、フォルスに流石にウルフも呆れている。

 フォルスのパイロットとしての技量はウルフも知っている。

 その技量以上にフォルスは一切の迷いがない。

 戦場で友軍機が落とされても動じるどころか次の瞬間には忘れてすらいる。

 戦場で自分がミスをする事など全く思っていない為、どんな難し任務でも平然とこなしてしまう。

 そんなフォルスと時より本当に人間かとも思ってしまう程にだ。

 ウルフも今までに『天才』と呼ばれる人間を何人も見て来たが、フォルスはそのどの天才とも違うタイプだ。

 

「ボクとしては彼とあのガンダムに戦って欲しいものだね。先の戦闘でレイニーがやられたから戦力が足りないし、ライルは実戦経験がないし、才能も良くも悪くも平凡だからね。彼はエースには成れない。キースがライルの面倒を見るとして、ボクが一人で頑張らないといけないからね」

「ラウラは上に新しいパイロットの配属要請を出す見たいだぞ」

「それでも、UIEが次に仕掛けて来るまでの間は必要だよね?」

「俺は戦う覚悟を持たない奴を戦場に出す気はねぇぞ。お前も余り俺の船で勝手な行動はするなよ」

 

 ウルフもフォルスの実力は評価しているし、基本的には信用もしている。

 だが、フォルスは時に想像もつかない事をやりだす事がある。

 その為、今の内に釘をさしておく。

 

「分かってるよ。ボクも役に立たない友軍がいるくらいなら一人で戦った方が良いからね」

 

 フォルスはそう言いながら、艦長室から離れて行く。

 

 

 

 

 

 

 その後、フォルスは艦の展望デッキにいた。

 そこでフォルスは携帯端末でどこかと連絡を取ってる。

 

「その事なら知っている。ボクも関わっているからな。ああ……連中の狙いは新型機だ。5機の内4機は奪われた」

 

 通信で話しているフォルスの口調はいつもと違い堅い。

 

「ん? ああ……そいつが残った1機で今はホワイトファングに乗せているがそれがどうした? 成程……そう言う事か……また無茶を言う。そんな訳がないだろう。このボクにかかれば出来ない訳がない。それは更に無茶な注文だ。しかし、それがプロジェクトUGに必要ならば完璧に成し遂げて見せるさ……それとキャロル・アスノにも会った。面白い偶然だろう? まぁそう言うなよ。分かっている簡単に本気は出さないさ。薬も定期的に服用している。今のところ体に異常は出ていない。報告は以上だ。任務はどちらもやって見るさ。精々、期待していてくれ」

 

 フォルスはそう言って通信を終える。

 

「さて……あの人も大概無茶を言うんだから……」

 

 フォルスはぼやきながら、展望デッキを後にする。

 

 

 

 

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