機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第7話

 ヘンリーからの誘いを受けて数日、アブディエルはマッドーナ工房のファクトリーシップと合流していた。

 そのファクトリーシップの複数ある格納庫に一機のMSが置かれていた。

 

  ASN-B790S 『ジェノワーズ』

 

 クライドが設計した試作MSである。

 ジェノアスをベースとしているが、バックパックはガンダムZERO Nと同タイプのスラスターを2基搭載し、全体的に装甲が増加している。

 その為、ガンダムZERO Nに匹敵する機動力を有している。

 頭部には実弾式のバルカンが増設されて、バイザーの下のメインカメラはガンダムZERO同様ツインアイを採用している。

 右手にはマッドーナ工房で開発された試作のビームライフルが、左腕にはZERO Nのシールドを装備し、腰のはビームライフル同様マッドーナ工房で開発さえた試作のビームサーベルが二基装備されている。

 機体のカラーは連邦宇宙軍のジェノアス同様、白とブルーグレーのツートンで塗装されている。

 同じくクライドが改良したジェノアス改やジェノアス・キャノンはガンダムZEROの援護に主眼を置いている為、サポート用の多数の武装を装備しているのに対し、ジェノワーズはガンダムZEROと並ぶエースパイロット用に設計されている為、実用性の高い必要最低限の武装のみを装備している。

 

「届かない……」

「だろうな」

 

 そのジェノワーズのコックピットでシートに座るユーリアはクライドにそう言う。

 ジェノワーズはエースパイロット用の機体である為、幼いながらも高いXラウンダー能力から来る、高い能力を持つユーリアの搭乗機として運用するつもりであった。

 ジェノワーズのコックピットはユーリアの背丈に合わせて作られている訳ではないため、当然の事ながら、ユーリアがシートに座ってもコックピット内のレバーやフットペダルには手足が届かなかった。

 

「クライド、待たせたな」

 

 分かり切ったことを確認していると、完成したグラディエーターアーマーをアブディエルへの搬送指示を出していたムクレドがジェノワーズまで戻って来た。

 

「御苦労さんです」

「それで、ジェノワーズの完成度はどうだ?もう、コイツのパイロットが乗ってんだろ?」

 

 ムクレドはそう言ってコックピットの中を覗いてすぐに視線をクライドに戻す。

 

「これはどういう冗談だ?」

 

 流石に年端の行かない少女が乗っている事は予想外らしく、ムクレドはクライドに尋ねる。

 そこには年端もいかない少女をMSに乗せることに対する非難も混じっている。

 

「これが、大マジなんだよね……」

「正気か? 幾ら、何でも幼過ぎるだろ」

「大丈夫。私……出来る」

 

 ユーリアがジェノワーズのコックピットから出て来てムクレドに主張する。

 

「こう言って聞かないんだよ……そんで、ユーリアは小さいからコックピットブロックをユーリアサイズに交換して欲しい。ああ、後はコイツサイズのパイロットスーツも用意出来るか?」

「パイロットスーツは子供用のノーマルスーツを改良すれば良いが……コックピットはな……うちも子供用のコックピットは作った試しがないからな……時間がかかるぞ」

 

 ユーリア本人が乗る気でおり、ユーリアがパイロットをするのは完全にパラダイスロストの中の問題な為、ムクレドもそれ以上は追及しない。

 一般的にMSのコックピットは成人した大人の背丈を基準としているため、ユーリアのような小さい子供が乗れるコックピットを作ったことの無いのは当然と言える。

 

「それなら、ユーリアが使っていたジラがある。そいつをばらしてコックピットを少し弄ってコイツに流用すれば、時間も経費も削減出来るし、コックピットが殆ど変ってないからユーリアが新しい機体に慣れるのも早いだろ」

 

 どの道、ユーリアがウィンターガーデン脱出時に乗っていたジラはパラダイスロストでは運用することなく、適当なジャンク屋にでも売って資金の足しにでもする予定だったが、流石に子供用のコックピットの買い手はつき難い。

 だから、コックピットをジェノワーズに移植すれば、子供用のコックピットの制作の手間が大きく省ける。

 

「確かに……そっちの方が早そうだな。嬢ちゃん、他に要望はないか?言うなら今の内だぞ」

 

 ムクレドがそう言い、ユーリアはジェノワーズを見つめる。

 機体を大きく改良する以上、改良後にまた注文されるよりも先に注文を受けていた方が改良をする方としても楽である。

 ジェノワーズを見つめていたユーリアがポツリと言う。

 

「色」

「色?」

「そう……この色可愛くない」

 

 ユーリアはジェノワーズを見てそう言う。

 どうやらユーリアはジェノワーズの色が可愛く無く気に入らない様子だった。

 

「可愛くないって、ジェノワーズはカラーリングまで俺がこだわり抜いて設計したんだ。それが不満なのか?」

 

 クライドはMSを設計する際に機体の性能だけでなくデザインにも拘っている。

 幾ら、超高性能のMSを設計しても見た目がださいのはクライドのMS鍛冶としてのプライドが許さない。

 

「うん……可愛くないから……」

「……だったら、何色が良いんだ?」

 

 個人的な趣味とは言え、ユーリアの主張はクライドのMS鍛冶としてのプライドを傷つけるが、クライドが自分の作るMSに拘りがあるようにパイロットにも自分の乗るMSに拘りを持っている場合も多い。

 この場合MSに乗るパイロットの意見を反映させた方がパイロットが気持ち良く機体に乗ることが出来、その結果として戦場で落とされる可能性ひ低くなるので、クライドはユーリアの意見を聞くことにする。

 

「ピンク」

「ピンクって……ああ……」

 

 クライドは闘技場での闇バトルでもピンク色のジラを使っていたことを思い出す。

 お世辞にも良い趣味とは思えなかったピンクの塗装がされていたが、それはユーリアの趣味だった。

 つまりはピンク色がユーリアのパーソナルカラーと言う事だ。

 

「……おやっさん。ユーリアの言う通りにジェノワーズをピンクで塗装してくれ……」

「……了解した」

 

 ムクレドはジェノワーズをピンク色に塗装すること戸惑うが、すぐに工房の技術者に指示と飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……おやっさん、おやっさんにまた仕事を頼みたい」

 

 ジェノワーズの改修を工房の技術者に指示を出し終えたムクレドにクライドがそう言う。

 クライドはマッドーナ工房に新しい仕事の依頼をするためでもあった。

 

「ゼロの新しいアーマーとして、ジェノサイドアーマーを製造して欲しい」

「おいおい……本当に正気なのか?あれは欠陥品だからと言って作る必要はないと言ったのはクライドだぞ」

「まぁね。でもジェノサイドのハイパービームランチャーが必要になるかも知れない」

 

 ジェノサイドアーマーがZEROの砲撃戦用のアーマーだが、大きな欠陥を抱えていた。

 ジェノサイドアーマーの武器はハイパービームランチャーのみでその破壊力は戦艦はおろか、使い方次第ではコロニーですら破壊することも可能とされている。

 しかし、その半面威力が強過ぎることと戦闘中に一度くらいしか撃てないこともあり、マッドーナ工房で製造して貰う事はなかった。

 だが、先日のウィンターガーデン近くの戦闘でアブディエルの主砲ですら無傷のヴェイガンの戦闘艦を破壊するためにその火力が絶対に必要と判断して今回発注を決めた。

 

「仕事として依頼するなら、構わんが一体何に使うつもりだ……いや、詮索は止そう。だが、アーマーはともかく、ハイパービームランチャーの製造はかなり時間がかかるぞ」

「構わないよ」

「分かった。すぐに取りかかろう。それはそうとクライドに見せたいものがある」

 

 ムクレドはそう言って、クライドをファクトリー内の一つの格納庫に案内される。

 ムクレドが格納庫内の明りを付けると一機の青いMSが置かされている。

 

「コイツは……シャルドールか? それにしてはかなりカスタムされているが……」

 

 そのMSはシャルドールをベースにしているのは一目で分かるが部分的に装甲が増えていたりとカスタムがされていた。

 

「コイツは俺が今、製造しているMS、Gエグゼスのプロトタイプだ」

「Gエグゼスね……」

「お前のガンダムに触発されてな。1から新しい新型機を製造するのはそう簡単にはいかんからな。シャルドールをベースにカスタムしたのがGエグゼスだ。このプロトタイプでの稼働データは十分取ったからな。後は実戦データが取りたい」

 

 ムクレドは興奮気味にそう言う。

 実際、クライドが見る限りではシャルドールよりも全体的に性能が向上しているように見える。

 

「つまりは、俺のところで実戦で使えと?」

 

 クライドはムクレドの意図をそう読み、プロトGエグゼスを見上げる。

 

「話が早い。実戦データを後少しの何かを足せばGエグゼスはガンダムに劣ることのないMSとなる筈だ」

 

 ムクレドは自信満々でそう言う。

 ムクレドの言う事がそれが虚言で無いことはクライドも十分理解出来る。

 この機体はそれだけの性能を持っているのは確実だ。

 

「まぁ……見た感じでは悪くはないが……何と言うか地味だな」

 

 クライドはプロトGエグゼスを見てそう言う。

 プロトGエグゼスはベース機のシャルドールは戦闘用のMSではなくレース用のMSな為、固定武装を持っていないため、戦闘用MSの設計、カスタムを専門としているクライドから見れば物足りなくなるのは当然かも知れない。

 

「おやっさん、コイツをここの武器を使ってカスタムしても良いか?」

「カスタムか……面白そうだな」

「だろ?」

 

 クライドとムクレドは近くのコンソールでマッドーナ工房内の武器の一覧に目を通す。

 

「コイツを装備したらどうだ?」

「成程な……だとしたら、こっちも必要になるな」

「それを装備したら、機体のバランスが悪くなるな……」

「なら、新規製造でこれを付ければ……」

「良いね。んなら……」

 

 クライドとムクレドは嬉々としてプロトGエグゼスのカスタムプランを話している。

 

「全く……子供ね」

 

 その様子をエリーゼとムクレドの妻、ララパーリーとエリーゼが呆れながら見ている。。

 

「MS鍛冶の男なんてみんなあんなものよ」

「ですね……」

「お互い苦労するわね……」

 

 後ろの女二人に気がつくことなく、子供みたいに話す男二人を見て二人は目を合わせて苦笑いする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アブディエルがマッドーナ工房を訪れてすでに半月近くが経っていた。

 クライドはプロトGエグゼスのカスタムに熱中するあまり、ヘンリーの呼び出しを半ば忘れていた。

 クライドにとってはヘンリーの呼び出しよりもプロトGエグゼスの改良の方が優先すべきことになっている。

 その間にユーリアのジェノワーズのコックピットの改修作業に塗装を終えて、ユーリアの慣熟を終えている。

 

「……随分と様変わりしたな」

「ああ……少しやり過ぎたかも知れん……後悔はないが……」

 

 半月前の時と同じ格納庫に改造されたプロトGエグゼスが置かれている。

 カラーリングは青一色なのは変わらないが、その様が大きく変わっている。

 頭部にはビームバルカンを装備し、両肩には中距離砲撃用のキャノン砲に小型ミサイルポッド、両腕には外側に三連装ヒートクローを、内側に小型のビームガトリング砲を装備した小型シールド、両手にジェノワーズのビームライフルを改造した物を装備している。

 腰にはビームライフルを収納することで使用出来るバインダーキャノンを装備し、バインダーキャノンにはジェノワーズと同系統のビームサーベルが一基つづついている。

 脚部には重装備化した機体を支えるために、キャラピラがついた追加装甲を装備し、陸戦での機動力を確保している。

 宇宙空間でもバックパックの大出力スラスターを通常の二基から四基に増やして機動力を確保している。

 

「作ったは良いが、問題はパイロットか……」

「アブディエルのパイロットはどうなんだ?」

「コイツはじゃじゃ馬だからな……」

 

 この機体はクライドとムクレドが後先考えずに武装したために非常に機体のバランスが悪くなったためにかなり無理やりにバランスを取っているために扱う為には相当な技量が必要になってしまった。

 

「ジゼルが乗れば、無茶してすぐに壊しそうだし、レオではコイツの性能を扱い切れないだろうし、ユーリアが乗るにはまた、コックピットを改修しないといけない、俺はゼロ以外のMSには乗りたくないしな……アリスもあれで自分の機体が気にいっているみたいだし……取り合えずパイロットは保留でいざって時の予備機として運用するしかないな。パイロットは航海の途中でスカウトするまでお預けって事で……」

 

 アブディエルのパイロットの中のこの機体を扱えそうないない為そこで落ち着いた。

 

「クライドの理由はどうかと思うが、実戦じゃ命をかけてるからな。無理は言わんよ」

「それよりも、コイツをいつまでもプロトGエグゼスなのは可哀そうじゃね? もう、別の機体と言っても良いからな」

 

 この半月の改造でクライドの言う通り、このMSは当初のプロトGエグゼスの面影もなく、ムクレドの思い描くGエグゼスともまるっきり違うMSへと変貌している。

 

「そうだな……クライドは良い案はないか?」

「……Gレックスってのはどうだ?」

 

 クライドはこの機体を見てふと思い浮かんだ名前を出す。

 

「Gレックスか……」

「なかなかカッコイイと思うんだが?」

「そうだな。それで行こう」

「そんじゃ、俺達はGレックスをアブディエルに搬入したら行くよ。当初の予定よりもだいぶ遅れているからな。代金はいつもの口座に振り込んでおく」

 

 予定では数日の滞在の予定がすでに半月も滞在している。

 その原因はクライドなのだが、クライドは気にした様子はない。

 

「そうしてくれ。ジェノサイドアーマーに関しては出来次第、連絡を入れるがまだかなりかかることは覚悟しておいてくれよ」

 

 この半月で同時のジェノサイドアーマーの製造にも取りかかっているが、ムクレドの言う通り殆ど進んでいない。

 

「分かってる。気長に待つさ……」

 

 クライドはそう言いアブディエルに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、Gレックスの搬入を確認しました」

 

 Gレックスが完成し、クライドがアブディエルに戻ると、すぐに出港の準備に取り掛かっている。

 特に期限がある訳ではなかったが、ヘンリーに呼び出されてからすでに半月が経ち、未だにマッドーナ工房にいるため、少しでも時間を取り戻すために急ピッチで作業が行われた。

 

「分かったわ。マッドーナ工房を出港し、本艦はコロニー『サザーランドポート』に向かうわ。各員は所定の位置について」

 

 エリーゼの指示とともにブリッジクルーはすぐに各部署の確認に入る。

 

「それでは長い間お邪魔しました」

「いいわよ。また、いつでも遊びにおいで」

 

 ララパーリーがモニター越しでエリーゼにそう言う。

 

「ええ……また、機会があれば窺います」

「楽しみにしてるわ」

 

 ララパーリーがそう言うとエリーゼはマッドーナ工房との通信を終えて、前を見据える。

 

「艦長、各部署の配置を確認」

「前方のゲートの開放を確認しました」

 

 前方のゲートが開き、エリーゼは一息ついて指示を出す。

 

「機関最大、目的地はコロニー『サザーランドポート』!」

 

エリーゼの掛け声とともにアブディエルはマッドーナ工房を出港し、次なる目的地のサザーランドポートに向かう。

 

 

 

 

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