機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第66話

ブランベルグ襲撃は一時的にUIEが撤退した事で収まった。

 ホワイトファングはブランベルグの宇宙港に入港している。

 プロト3イノベーションの一撃でコロニーに穴が開いたが、幸いにもコロニーが完全に崩壊すると言う最悪の事態は回避された。

 今も、住民はシェルターに避難している状態が続き、襲撃して来たUIEの母艦もコロニー側で捕捉され予断を許さない状況が続いている。

 

「今回は助かりました」

「気にするな。たまたま通りかかっただけだ」

 

 ホワイトファングのブリッジで軍の指揮官にウルフはそう言う。

 相手は一基地の指揮官だが、相手のウルフは蝙蝠退治戦役からのエースパイロットである為、相手の指揮官も恐縮している。

 

「そんで、お前たちはこれからどうするつもりなんだ? コロニーに穴が開いた状態じゃ住民も住めないだろ」

「すでに住民を近隣のコロニーに避難させる準備は進めています。その後、ブランベルグに修復の為の部隊を送り修復する予定になっています」

 

 ブランベルグは襲撃を受けたが、廃棄するまでの被害は受けていない。

 その為、軍は一度住民を別のコロニーに避難させてからコロニーを修復する事を決定している。

 

「妥当なところだな。だが問題は連中が大人しく引き下がってくれるかって事だ」

 

 試作のプロト3を4機も奪取したが、未だに戻る様子が見られないと言う事は残った1機も狙っている可能性が高いと言う事だろう。

 

「ですね……」

「連中の狙いはホワイトファングで回収した新型機だろうな。そいつはうちで預からせて貰う。マッドーナの方にはこっちで説明しておく」

「よろしいので?」

 

 プトロ3イノベーションをホワイトファングで引き受けてくれれば、ブランベルグが狙われる危険性はぐっと低くなる。

 だが、その代わりにホワイトファングがUIEに狙われる事になる。

 只でさえ、コロニーの危機を救って貰った上に、厄介事まで押しつけるのは気が引ける。

 

「別に良いさ。アレに乗っていたパイロットも今はうちで預かる事になってる。面倒事が一つ増えたところで今更だ」

「感謝します」

 

 指揮官はモニターの前でウルフにふかぶかと頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブランベルグに入港したホワイトファングはブランベルグから補給を受けるのと同時に基地内に残されているプロト3イノベーションの予備パーツの回収を行っている。

 敵の狙いが奪取であった為、基地は砲台や防衛のMSが破壊されただけで基地自体への損害、特にプロト3イノベーションのある可能性のあった格納庫への攻撃は殆どなかった事もあり、予備パーツは破壊されずに残されていた。

 それをキースとライルがMSで回収しに向かっている。

 

「コイツが新型のガンダムのプロトタイプか?」

 

 格納庫に置かれているプロト3イノベーションを見上げて、ホワイトファングの整備班長のガストンがそう言う。

 ガストンはホワイトファングではウルフに次いで年長者でホワイトファング搭載機の各班を纏め上げている。

 

「はい。この機体は開発コード『イノベーション』です。AGE-1、AGE-2を母体にしてます」

 

 キャロルが機体の整備マニュアルの説明がてら、ガストンに機体の説明をしている。

 プロト3イノベーションは新しい技術を多く取り入れている為、今までもMSとは整備の手順も変わって来る。

 そのせいで整備士としては熟練のガストンでもマニュアルを無しで整備するには危険だ。

 キャロルから説明を受けていると、フォルスのガンダムAGE-2Xがホワイトファングに帰投する。

 フォルスはUIEの母艦の偵察に出ていた。

 まだ、動く気配が感じられない為、一度ホワイトファングに帰還した。

 

「フォルス。敵はどうだった?」

 

 機体をハンガーに戻して降りて来た、フォルスにガストンがそう言う。

 

「敵さんは当分、動く気配はないよ。お陰でこっちはゆっくりと補給を受けられるよ」

「貴方があのAGE-2のパイロットですか?」

 

 キャロルは今までドタバタしていたせいで助けてくれたAGE-2Xのパイロットであるフォルスとは今が直接会うのは初めてだ。

 

「フォルス・マースカイザー。改めてよろしく」

「こちらこそ、先程は助かりました」

「何、当然の事をしたまでさ」

 

 フォルスはそう言い、AGE-2Xの整備をガストンに任せて、格納庫を出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 格納庫を出て行くとラウラがフォルスを待っていた。

 

「フォルス、艦長が呼んでるわ」

「そう? 分かったよ」

 

 フォルスはウルフのいると思われる艦長室に向かい、ラウラもその後に続く。

 その道中でラウラはフォルスに端末を渡す。

 

「先ほど本部から増援申請の返事が来たわ」

「へぇ……意外と早いね」

 

 増援申請は遅い時には返答だけで数日かかるが、今回は数時間で返事が来た為、随分と早い。

 

「以前よりホワイトファングへの転勤希望があった様です」

「アキラ・キャンベル……ああ、アキラか」

 

 端末には本部から送られて来た増員のデータが記されている。

 そこには、本人の画像データも添えられている。

 黒髪に黒い目で日系の顔立ちをしている。

 

「知り合い?」

「彼女とはここに来る前に同じ部隊に所属していてね。その時の相方だよ」

 

 フォルスがホワイトファングの勤務になったのは数年前でそれまでは別の船に乗っていた。

 新しくホワイトファングに乗艦するアキラはその時の同僚だと言う事らしい。

 

「どう言う人?」

「そうだね……パイロットとしての実力は優秀だったよ。クランシェでのドッグファイトでは右に出るのはボク位だったよ。性格はプライドが高かったな。女だからとか、女の癖にって言われるのを非常に嫌ってたっけな」

 

 すでに人類が宇宙に進出してから数百年が経ち、男尊女卑と言う考えからは古い考えとなっているが、未だに男尊女卑と言う考え方を持っている人は少なくない。

 特に軍人などでMSのパイロットではそう言う考えを持っている人がそれなりにいる。

 そのせいでアキラは極端にそう言う考えを嫌い、その手の輩は自身の実力でねじ伏せて来た。

 その為、アキラのパイロットとしての技量はフォルスの中でも高い。

 

「そして、どう言う訳がボクの事を非常に敵視している」

 

 フォルスも自分ではなぜだか見当もつかないが、アキラはフォルスを敵視しており、アキラもそれを隠す事はしていない。

 フォルスの方はアキラを優秀なパイロットとして認めているが、フォルスの高い技量を前にCMCではフォルスに対して敬意を持つか、勝てないと張り合う事を諦めている事が殆どである為、アキラのように社内で敵意やライバル心をむき出しにして来る反応は新鮮であるので、関係の改善をする気は無かった。

 

「初対面の時はそうでもなかったのに、一度、互いの技量を見る為に模擬戦をしたんだよ。その後、行き成り態度が変わったんだよね」

 

 フォルスは心底不思議だと思っていた。

 その模擬戦はあくまでも互いの力量を知る為で勝敗に意味は無い。

 模擬戦自体はフォルスの勝利で終わったが、それだけでアキラが自分に敵意を持つとは考えられない。

 

「何か失礼な事を言ったんじゃないの?」

「そうだっけかなぁ……」

 

 少なくとも、アキラの嫌う男尊女卑的な発言は無かった。

 だが、フォルスは自覚していないのか、フォルスは良くサラッと毒を吐く。

 ホワイトファングのクルーはすでに気にする事は無いが、人によってはそれで気分を害する事は良くある事だ。

 

「でも、そんな人が何でうちに?」

「さぁね。ボクも聞きたいよ」

 

 増員が早く決まった事も、アキラ自身がホワイトファングへの転勤を希望していたからだ。

 アキラもフォルスがホワイトファングにいる事は知っているだろうし、わざわざ敵視している相手のいる船に転勤する理由はない。

 

「そんな人が転勤して来ても大丈夫なの?」

「それは問題ないと思うよ。アキラはプライドも高いけど、プロ意識も高いからね。仕事に私情は挟まないよ」

 

 フォルスもアキラとは数年間、コンビを組んだ事があるが、プライベートでは完全に敵視されていた為、交流は殆ど無かったが、アキラも仕事ではフォルスと上手く合わせていた。

 フォルスの言う通りプライドとプロ意識が強い為、仕事で意図的にミスをして足を引っ張ると言うのは彼女のプライドが許さなかったのだろう。

 

「その辺りは信用して良いよ。ボクが保障する」

 

 フォルスはそう言い切り、言い切る以上は大丈夫だとは思うが、ラウラとしては少し面白くは無い。

 そうこうしているうちに二人は艦長室に到着する。

 

「偵察、御苦労だったな」

「本当だよ。危うく攻撃したくなった」

 

 フォルスは冗談のように言うが、フォルスなら本当に攻撃し兼ねなく、実際にフォルスは攻撃しようかと本気で考えていた。

 

「それでどうだった?」

「コロニーの方で捕捉した通り、三隻の内一隻だけが残って他の二隻はいなかったよ。近くにステルスシステムで隠れている感じはしなかったから本当にいなかったと思う」

「どう言う事でしょうか? 仕掛ける気があるのならば、一隻だけ残ると言うのも不自然です」

 

 一隻が撤退したのであれば、奪取した機体を移送する為と考えられる。

 だが、二隻が消えたと言う事は奪取した機体を移送とその護衛だと考えられるが、一隻だけ残すのは不自然だ。

 先の戦闘でフォルスと交戦している為、一隻の戦力でこちらを落とせると楽観視しているとは考え難い。

 

「そうだな。敵は何か狙いがあって一隻残していると考える方が妥当だ」

「もしかしたら、連中は網を張っているかも知れない」

「網? どう言う事。フォルス」

「連中は進化の為に人類の全てを宇宙に進出させたいと思っている連中だから、コロニーに対しては何度も攻撃を仕掛けたくは無い。となれば、ボク達が補給を完了してコロニーを出た後に仕掛けたいと思うんだ。連中の船はMSの輸送をメインとした輸送艦だ。それに大してこっちは高速艦だ。足の早さで競えば勝ち目は無い。となれば、先回りして網を張りこちらの頭を抑えたい」

 

 UIEは人類の進化の為に宇宙に進出するべきだと唱えていた。

 そのUIEが人類が宇宙で暮らす為に必要不可欠であるコロニーに対して何度も攻撃を仕掛けると言う事は考え難い。

 だからこそ、逃がす可能性があっても、網を張ってホワイトファングを待ち構えると言う策を取った可能性が高いとフォルスは考える。

 

「成程な。連中はコロニーに対して攻撃を行った事は少ない上に攻撃自体、コロニーへの攻撃は最小限に行ってる。前の戦闘でコロニーに穴を開けちまったから、そう言うやり方に変えたってところか……だったら好都合だ」

「ですね。少なくとも敵はこちらの補給を待ってくれているのですから」

 

 その仮説が正しければ、敵はホワイトファングがブランベルグを離れるまで攻撃はしてこない。

 余り長居をしていれば痺れを切らして仕掛けて来るかも知れないが、十分な補給をしている時間はあるだろう。

 

「だが、敵に時間を与えれば敵も増援を呼ばれる恐れがあるな。ちっ、どの道時間は余りないって事か」

 

 敵は仕掛けてはこないが、増援を呼んでいる可能性もあり、今では網は二隻で網の目は広いが増援を呼ばれるとその目は狭まる。

 

「では、補給を急がせるように通達しておきます」

 

 その為、補給を迅速に済ませて網の目を突破する必要があった。

 

 

 

 

 

 

 

 補給作業を急がせるように指示があり、艦内は慌ただしくなっていた。

 クリフォードは何となく、ホワイトファングの食堂の前を通りかかる。

 

「お前、あの新型機に乗っていた奴だろ?」

 

 食堂からキースがクリフォードにそう言い、クリフォードは立ち止まる。

 

「まぁ……そうだけど」

「だったら、こっちに来い」

 

 そう言われてクリフォードはキースの方に行くとキースに食事の乗ったトレイを渡される。

 

「今の内に食べとけ、コロニーを出たらすぐに戦闘になるかも知れん。食べれるうちに食べて休めるうちに休むのもパイロットの仕事だ」

 

 ホワイトファングのクルーが各部署で慌ただしく動きている中、食堂にはキース以外にライルとフォルスもいる。

 

「俺、パイロットの契約はしたけど、MSに乗らなくても良いって言われたけど……」

「それでも、戦闘になる以上はお前もMSに乗る覚悟はしておけ」

 

 クリフォードは成り行きでプロト3イノベーションに乗る事になり、CMCとパイロットとして契約を結んだが、ウルフはMSに乗る必要はないと言った。

 だが、現在のホワイトファングのMSは3機しか搭載されていない。

 その為、場合によってはプロト3イノベーションを出す必要があるかも知れない。

 

「俺が……MSに……」

 

 クリフォードはそう呟きながら、食事を済ませる。

 

 

 

 

 

 

 

 ホワイトファングは補給を済ませると、出港の準備に入っている。

 コロニーを出たらすぐに交戦になる可能性がある為、パイロットは皆待機が命じられている。

 各パイロットは搭乗機にて待機し、クリフォードはパイロットスーツに着替えさせられて、パイロットアラートで待機している。

 アラートで待機しているクリフォードの顔は暗い。

 つい昨日までは普通の生活だったが、今では戦艦に乗ってMSで戦わなければいけないかも知れない状況となっている。

 クリフォードも毎日のように繰り返していた喧嘩で腕っ節には自身があるが、目の前で起きた戦争の前に喧嘩は所詮は喧嘩でしかない事を思い知らされた。

 そんなクリフォードに構う事なく、ホワイトファングはブランベルグを出港する。

 

「艦長! 前方に熱源反応! UIEの戦艦と思われます!」

「ちっ……こっちは外れかよ」

 

 ホワイトファングが出港すると、案の定、残っていた一隻がホワイトファングを追撃に動きだした。

 だが、その前方から別の戦艦の反応を捉えた。

 敵の網はブランベルグから近隣のコロニーに向かうルートに張っていると予測され、その数本のルートから二本が外れのルートで上手く行けば後の一隻だけを相手にすれば良かったが、ホワイトファングの選んだルートは外れのルートであった。

 

「MSの出撃を確認。数12です」

「連中は戦力を全て投入して来たって事か」

「後方の戦艦からもMSの射出を確認しました。数は5……うち、4機は奪われた新型機ですよ!」

「随分を景気が良いじゃねぇかよ」

 

 すでにUIEではホワイトファングの補給の待ち時間を利用して、奪った4機のプロト3のデータを取り終えていたらしい。

 そして、データが取り終えたのならば、実戦に投入しても問題は無いのだろう。

 

「MS隊を出撃させろ。機関最大で前方の敵を叩き突破する!」

「対ビーム拡散弾用意。主砲、照準は敵輸送艦にセット」

 

 前方の敵さえ叩けば、ホワイトファングの足ならば後方の輸送艦を引き離す事は容易だ。

 その為、ウルフは前方の敵を叩く事から始める。

 

「出撃命令が出たぞ」

「後ろからプロト3が全部か……後はボクが抑える」

「一人でですか?」

「ボクのAGE-2Xなら後からでも追える。だけど、前方の敵を突破出来なかったら、ホワイトファングは逃げる事が出来ないよ。だから、前方は二人に任せる」

 

 後方からは新型機が4機も接近している。

 だからこそフォルスはその4機を含めた後方からの敵を全て引き受けると言う。

 

「任せる」

 

 一見。フォルスの言っている事は無茶に思えるが、キースはフォルスなら出来ると思い、後方の敵を任せた。

 

「任されたよ。ダブルバレットがあれば少しは楽が出来るんだけどね」

 

 フォルスはそう言いながら、コックピット内に常備している錠剤を飲む。

 

「でもまぁ……やって見るさ」

 

 フォルスのAGE-2Xが射出されて、それに続いて、GバウンサーとジェノアスキャノンⅡも射出される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前方の敵を任されたキースとライルは迫る敵の迎撃を開始する。

 ホワイトファングの砲撃でナイトルーパー改は散開し、その先に狙いを付けて二機はドッズライフルを放って撃墜する。

 

「隊長……一機だけ違う奴がいます!」

「アレが向こうの隊長機か……」

 

 ナイトルーパー改の他に別のMSが迫って来ていた。

 ゼイ・ドゥLカスタムだ。

 パイロットのレーラ・シャリアピン専用機で、機体は紫で統一されている。

 両肩にL字シールドにバックパックには円柱状のビットが4基搭載されて、サブスラスターも兼ねている。 

 そのビットは新型で半自動制御により、パイロットにXラウンダー適正が無くとも扱う事が可能となっている。

 右手には専用のビームライフルを持っており、腰の裏にはビームホークがマウントされている。

 

「早いな……」

 

 Gバウンサーはドッズライフルでゼイ・ドゥLカスタムを狙うが、ゼイ・ドゥLカスタムは高い機動力を発揮してかわして、ビームライフルを放つ。

 

「白い四枚羽根のガンダムはマドックの方に向かったのね。ボリスは無駄足に終わったから、獲物がいるだけマシってことね」

 

 ゼイ・ドゥLカスタムはバックパックのビットを射出する。

 

「踊りなさい!」

 

 4基のビットはGバウンサーを囲うように展開する。

 ビットからの攻撃をGバウンサーは何とか、かわしてドッズライフルでビットを落とそうとするも素早く動くビットには当たらない。

 

「隊長!」

 

 ジェノアスキャノンⅡはドッズキャノンでGバウンサーを援護する。

 だが、ゼイ・ドゥLカスタムのビームライフルがジェノアスキャノンⅡの右足を貫きバランスを崩す。

 

「ライル!」

 

 キースはライルのフォローに回ろうとするも、隙が生じてビットの攻撃を背部に直撃を受けて、テールバインダーの片方が吹き飛ぶ。

 

「ほらほら……もう少し踊んなよ!」

 

 ゼイ・ドゥLカスタムはジェノアスキャノンⅡにビームライフルを放つ、ジェノアスキャノンⅡはシールドで防ぎながら、ドッズライフル

 

で応戦するもドッズライフルにビームの直撃を受けて爆発する前に捨てる。

 

 

 

 

 

 

 

 ホワイトファングの前方でキースとライルが劣勢を強いられている頃、ホワイトファングの後方のフォルスも敵と遭遇している。

 後方からは奪取された4機のプロト3にマドックのゼイ・ドゥMカスタムが接近している。

 

「プロト3が三機のあの時のゼイ・ドゥか……参ったね。こっちの獲物は豪華過ぎるよ」

 

 5機の敵MSを補足して、フォルスはそう言う。

 フォルスのガンダムAGE-2Xは機動性能の向上とフォルスのXラウンダー能力に対応した調整がされているが、それでも基本性能ではオリジナルのAGE-2と大きな差は無い。

 それでもブランベルグでマドックと互角に戦えたのはフォルスの実力だろう。

 だが、今度はそれに加えて今度は4機のプロト3までいる。

 普通に考えれば勝ち目など無いのだが、フォルスは勝てると思っている。

 なぜなら、フォルスは自分が最強であると確信しているからだ。

 敵の射程に入る前にAGE-2Xはハイパードッズライフルを放つ。

 その一撃は距離がある為、有効的な攻撃とはならないが、ここまで離れた距離からの精密な狙撃は敵にとっては脅威となる。

 

「この距離で撃って来た!」

「油断するな。相手は旧式といえどもガンダムだ」

 

 プロト3ダブルバレットがAGE-2Xを射程に入れて両肩のツインドッズキャノンをAGE-2Xに放つ。

 その攻撃を、AGE-2Xは回避し、プロト3ストライダーがストライダー形態に変形し、AGE-2Xもストライダー形態に変形して一気に距離を詰めて戦闘が開始される。

 AGE-2Xとプロト3ストライダーは交差するとMS形態に戻る。

 プロト3ストライダーはドッズライフルを放ち、AGE-2Xはかわす。

 そして、後方からゼイ・ドゥMカスタムがビームガトリング砲を連射しながら、高出力ヒートソードを振るう。

 AGE-2Xはビームサーベルで受け止めると、ゼイ・ドゥMカスタムを蹴り飛ばして、ハイパードッズライフルを放つ。

 ゼイ・ドゥMカスタムはかわし、AGE-2Xの背後にはプロト3スパローがシグルランスの先端をAGE-2Xに向けて射出する。

 AGE-2Xはそれをギリギリでかわして、ワイヤーを掴み、そのままプロト3スパローをようやく追いついて来たプロト3タイタスの方に振りまわして投げつける。

 プロト3タイタスはプロト3スパローを受け止める。

 その後、AGE-2Xはプロト3タイタスとプロト3スパローにハイパードッズライフルを向けるが、プロト3ダブルバレットがツインドッズキャノンとドッズライフルを放ち、AGE-2Xは攻撃を中止してかわす。

 その回避先を狙い、ゼイ・ドゥMカスタムとプロト3ストライダーが高出力ヒートソードとビームサーベルで切りかかる。

 AGE-2Xはストライダー形態に変形しての急加速で二機の攻撃をやり過ごして、プロト3ストライダーもストライダー形態でAGE-2Xを追う。

 プトロ3ストライダーはビームキャノンとドッズライフルでAGE-2Xを後ろから攻撃するも、AGE-2Xは最低限の動きで回避し、行き成りMS形態に変形して急制動をかける。

 それに対応しきれなかったプロト3ストライダーはそのまま、急制動をかけるAGE-2Xを追い抜いてAGE-2Xはプロト3ストライダーにハイパードッズライフルを放つ。

 完全に隙を付かれたが、攻撃の間にプロト3タイタスが入り、AGE-2Xの攻撃を防ぐ。

 

「こっちは5機で仕掛けていると言うのに……」

「隊長が手こずる程だ」

「化け物じゃない……」

「どうするんです? アレ」

 

 マドックは前回の戦闘でAGE-2Xの高い戦闘能力をある程度は把握していたが、それを戦闘データでしか知らないプロト3のパイロット達は予想以上の強さのAGE-2Xに少なからず驚いている。

 

「母艦の前に奴を叩く」

「そろそろ帰りたいんだけどな」

 

 戦闘は一時仕切り直しとなり、再び5機はAGE-2Xに仕掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が開始され、ホワイトファングは後方の敵はフォルスが完全に抑え込んでいるが前方からの敵を抑える事が出来ずにホワイトファングにも攻撃を受けている。

 ホワイトファングにも防衛用の火器はあるが、それだけでは完全に凌ぎ切れる訳ではなく、攻撃を受けて先ほどから艦体が何度も揺れている。

 

「不味いんじゃないのかよ……」

 

 クリフォードは艦体が揺れる度にそう思う。

 通常の戦闘では厳しい状況ではこの程度は当たり前だが、実戦を殆ど知らないクリフォードがそう思うのは無理もない。

 

「このままじゃ、この船……沈むんじゃないのか?」

 

 その事を口にした事で現実味が出て来る。

 このまま、船が沈めばパイロットスーツを着ていても終わりだ。

 そうなれば、自分は死ぬ。

 

「ふざけんなよ……」

 

 このままでは自分は死ぬ。

 クリフォードにはそんな理不尽な死に方は納得がいかなかった。

 クリフォードはそう呟き、アラートから格納庫に入る。

 格納庫ではホワイトファングが被弾し、それによる被害を最小限に抑える為に動いている為、戦場となっていた。

 その為、クリフォードがプロト3イノベーションに近づいている事も誰も気にしている余裕は無い為、誰に咎められることなくクリフォードはプロト3イノベーションまで辿り着く。

 プロト3イノベーションではいつでも出せるようにキャロルがAGEドライヴの調整を行っている。

 

「クリフォード君! 何しに来たの!」

「コイツは出せるのか!」

「そりゃ……出せるけど……」

「なら、すぐに出す!」

 

 クリフォードはそう言って機体操縦の前部の座席に座る。

 

「出すって……君が動かすの!?」

「それしかないだろ!」

 

 キャロルは仕方がなく、ブリッジに通信を繋ぐ。

 

「何だ。こっちは忙しい、指示ならガストンに聞け!」

 

 ブリッジに通信を繋ぐと、敵MSの対応で忙しい為、ウルフの怒号が帰って来るが、今はそれにビビっている余裕は無い。

 

「クリフォード君が、イノベーションで出るって言ってます!」

「何だと?」

「俺が出ます! このままじゃ不味いでしょ!」

 

 クリフォードは今度は前の時見たいにウルフに臆する事なく、叫ぶ。

 ウルフはそんなクリフォードを少し睨む。

 

「良いだろう。行って来い。但し、戻って来い。それが条件だ」

「艦長!」

「ありがとうございます!」

 

 ウルフの判断にラウラは抗議するが、今は議論している暇ではないとそれ以上は言わない。

 ウルフの許可が出た事でプロト3イノベーションはカタパルトにセットされる。

 

「クリフォード・マクダエル! ガンダム、出るぞ!」

 

 クリフォードの叫びと共にプロト3イノベーションが射出された。

 

「よろしいので?」

 

 ラウラは戦況を把握しつつも、ウルフに尋ねる。

 ラウラもウルフがアスノ家と少なからず繋がりを持っている事は知っている。

 そのアスノ家の人間であるキャロルもプロト3イノベーションに乗っている事は知っている。

 それを分かった上でウルフは出撃の許可を出している。

 

「ガンダムのパイロットってのはな。いつの時代も馬鹿か頑固者って決まってんだよ。止めたところで無駄だ」

 

 今までウルフは様々なガンダムのパイロットを見て来た。

 その経験上、クリフォードも止めても無駄であると判断した為、ウルフはプロト3イノベーションの出撃を許可した。

 

「艦長! イノベーションが後に行きました!」

 

 だが、プロト3イノベーションはホワイトファングの後方に向かう。

 ウルフとしてはプロト3イノベーションのシグマシスライフルの火力ならば、前方の敵ごと、敵艦を沈める事が可能だが、その予想に反してプロト3イノベーションはフォルスのいる後方に向かっていた。

 

「クリフォード君! そっちよりも前の敵をなんとかしないと!」

「後ろからは奪われたガンダムが来てるんだろ! だったら、そっちを先に倒さなきゃ逃げれないだろ!」

 

 クリフォードが後に向かった理由は後から奪われた4機のプロト3が投入されているからである。

 前からは量産機以外ではゼイ・ドゥLカスタムのみで2機が防衛に当たっているが、後方からは4機の新型機とカスタム機の5機をフォルスが一人で抑えている為、その援護に向かうつもりだった。

 プロト3イノベーションは交戦している6機の方にシグマシスライフルを放つ。

 それにより6機のMSは散開する。

 

「どうして、君がこっちに来てるの?」

「助けに来たに決まってるだろ!」

 

 プロト3イノベーションはシグマシスライフルを可能な限りで連射するが、敵には当たらない。

 

「下手な援護射撃は逆に邪魔なだけなんだけどな……」

 

 フォルスからして見れば単機で交戦する方が戦い易いのだが、今更文句を言っても何も始まらない。

 

「くそ! 何で当たらないんだよ!」

「落ち着いて! シグマシスライフルは銃身が長い分、射線が分かり易いの! 敵はそれを読んで回避してるんだよ!」

 

 プロト3イノベーションのシグマシスライフルは銃身が長い為、向けている向きから攻撃の射線を読むのは容易で連射も出来ない為、回避する事は難しい事ではない。

 すでにコロニーに穴を開ける程の威力を見せ付けている為、簡単には当たってはくれないのは当然だ。

 

「ちょっと、それ借りるよ」

 

 AGE-2Xがプロト3イノベーションに接近して、プロト3イノベーションからシグマシスライフルを奪い取る。

 

「何すんだ!」

「ボクの方が上手く扱えるんだよ」

 

 フォルスはそう言ってシグマシスライフルを構える。

 そして、引き金を引いてシグマシスライフルを放つ。

 

「少し反動があるけど、撃てない事は無い様だね。流石ボクのガンダム」

 

 AGE-2Xが放ったシグマシスライフルを5機のMSは回避するが、その一撃の本当の狙いは5機のMSの後方で待機しているオリンポス級戦艦のゼウスだ。

 オリンポス級戦艦は主にMSの輸送を行う事が目的である為、旋回能力は高くなく、避ける間もなく、シグマシスライフルの一撃の直撃を受けて轟沈した。

 

「更におまけだよ」

 

 AGE-2Xは今度はホワイトファングの方に銃身を向けた。

 そして、シグマシスライフルのチャージが終わるとホワイトファングの方に向けてシグマシスライフルを放つ。

 放たれた一撃はホワイトファングに当たるギリギリのところを通過し、射線上のホワイトファングを攻撃するナイトルーパー改を破壊し、そのまま前方でホワイトファングの頭を抑えていたオリンポス級戦艦「アプロディテ」を沈める。

 

「これで終わりだよ。ボク達も撤収するよ」

 

 シグマシスライフルをプロト3イノベーションに返すとAGE-2Xはホワイトファングの方に戻っていく。

 マドック達は母艦を沈められた以上、下手に追撃する訳にはいかない。

 それは前方を抑えたレーナも同様で前方はAGE-2Xが戻った事で戦局が覆り、ホワイトファングへの攻撃を諦めざる負えなかった。

 それによってホワイトファングはUIEの網を突破する事に成功した。

 

 

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