救難信号の一件後はホワイトファングの航海は問題なく進んでいた。
相変わらずメナスが離れたところから追尾して来ている事以外は異常は無い。
その為、ホワイトファングの艦内では今までの張りつめた空気がなくなっている。
「そう言えば、フォルスって何者だんだよ」
ホワイトファングのレクリエーションルームでクリフォードはふとそう漏らす。
クリフォードがホワイトファングに乗艦してからの謎であったが、今まではそんな事を気にする余裕は無かった。
「凄い人だ」
「そうじゃなくてさ、見た感じは大して強そうには見えないだろ? アイツ」
その疑問にライルが答えるが、クリフォードが聞きたい事ではない。
フォルスは見るからに怪しい格好をして、見た目では強そうには見えない。
だが、戦場では一騎当千のエースパイロットだ。
「確かに……軍でも機密になっているガンダムAGE-2を個人で所有してるしね」
「隊長はフォルスさんと長いんですよね?」
ライルはパイロットの中で一番、フォルスとの付き合いの長いであろうキースに話を振る。
「俺に聞かれてもな……フォルスは一言で言うと『謎』だな。素性に関しては一切の情報が無い。まぁ、分かっている事は俺よりかは年上だって事くらいだ」
「隊長は確か、27歳でしたよね」
「ああ。フォルスがうちにパイロットした入社したのが丁度10年前だ。うちに規定ではパイロットの最低年齢は18。つまり、アイツは最低でも28以上になる計算だ」
「マジかよ。あれでおっさんってあり得ないだろ……」
その事実に驚くばかりだ。
キースが大柄な上にフォルスは大柄で無い事もあり、二人が並べば身長差はかなりの物となる。
それ以外でもフォルスは20代の後半なのは信じがたい事実だ。
「お前ら、集まってるな!」
フォルスの意外な事実に驚いていると、レクリエーションルームにウルフが入って来て中を見渡してそう言う。
レクリエーションルームにいた者たちは皆、ウルフの方に注目する。
「ここのところ、穏やかな航海で退屈している奴もいるだろう。そこで心優しい艦長様はお前らに良い物を見せてやろう!」
ウルフがそう言うとレクリエーションルームにラウラと共に一人の女が入って来る。
白いドレスに肩までの黒髪、金色の目に顔のパーツの一つ一つが計算されて作られたかの様で、少し幼さを残した美女だ。
その美女がレクリエーションルームに入って来るとレクリエーションルームの時は止まったかのように錯覚をする。
特に男連中はその美女に釘付けだ。
「誰ですか艦長。その美女は……」
「まさか、艦長。どっかから拉致って来たんじゃないんですか?」
「もしかしたて、艦長の隠し子とかじゃ……」
我に返った物から次々にウルフに質問を投げかける。
すると、ラウラはいつも、フォルスがつけているゴーグル状のサングラスを美女に渡すと美女はそれを付ける。
「君たちは本当に失礼だな。こんな格好をしただけで気が付かないなんてね。ボクは悲しいよ」
美女はその外見からは想像も付かない、言葉遣いでそう言う。
その口調はクルーなら誰もが一度は聞いた事があり、薄々と美女の正体に気がついて来る。
「まさか……フォルスか?」
「まさかも何もボク以外に誰がいるんだい?」
フォルスは心底呆れた表情をする。
「いやでもなぁ……」
未だにフォルスだと信じられない一番の要因は服装ではない。
キース達は無意識の内にフォルスの胸元に目をやってしまう。
そこにはキャロルやラウラよりも明らかに膨らんでいる。
男連中の視線がフォルスの胸元に行っている事に気がついたキャロルやラウラは男連中を白い目で見る。
「最低……」
「全く……フォルスもフォルスでわざわざそんなに詰めなくても良いのに……」
キャロルはフォルスの胸元をガン見している男達に白い目でそう言い、ラウラはブツブツとつぶやいている。
「まぁ、そう言うなって、フォルスもナヨナヨしてるけど男って事だ」
ウルフは機嫌の悪いラウラにフォローを入れる。
今のフォルスの格好はフォルスが自分で着替えた物でラウラは関わっていない。
そして、フォルスのドレス姿は余りにも似合っている為、ラウラは女として敗北感を味わった。
「触って見るかい? クリフォード」
「触るって……何をだよ」
「決まってるじゃないか。君はモテそうにないから触った事は無いだろ?」
フォルスは胸を寄せてクリフォードに見せつける。
クリフォードは目を反らすがそれでもチラチラとフォルスの胸を見てしまう。
その様子はフォルスは明らかに楽しんでいる。
「別に減る物じゃないからね。ボクは気にしない。フォルス。君もパイロットなら即断即決だよ。戦場じゃ一瞬の迷いが生死を分ける事になるんだ。君の場合、君の判断ミスで死ぬのは君だけじゃない。君の後に乗っているキャロルも死ぬんだよ」
フォルスは戦場での心構えをクリフォードに説くが、ドレス姿では締まらない。
フォルスにそう言われてクリフォードは覚悟を決める。
「分かったよ! 触ればいんだろ!」
クリフォードは半ば自棄になって、フォルスの胸を掴む。
その行為によって、キャロルやラウラは白い目から完全に軽蔑した目でクリフォードを見る。
ライルは先ほどから完全に目を瞑って見ないようにしている。
キースとウルフは勢いでもやってのけたクリフォードを若干、見直している。
「どうだい?」
「どうって……言われても……柔らかい?」
クリフォードはフォルスの指摘通り、そんな経験は一度もない為、他の女との比較など出来る訳が無かった。
「つまらない答えだね。もっとこうあるだろ? 人生で最初で最後の経験かも知れないのにさ」
フォルスは自分の望む様な面白いリアクションでは無かった為、不服そうにして、クリフォードは何か人として大切な物を捨てた感じを受けている。
「そんな事よりも何で、フォルスはそんな格好してんだよ」
「これから少し、単独で任務に出る事になってね。その任務ではこの格好の方が何かと都合が良いんだよ」
フォルスがドレス姿なのは伊達や酔狂でもなければ、フォルスにそう言う趣味がある訳でもない。
フォルスはホワイトファングの所属しているが、常にホワイトファングで任務をこなす必要が無い。
任務中だろうと、ウルフにフォルスへの命令権は無いため、フォルスが従う気が無ければ無視をしても社則的には一切の罰則を与える事が出来ない。
それでも普段はウルフの指示に従っているのは、艦の長たるウルフと仲違いする事はフォルスにとってもデメリットしかないからだ。
その為、フォルスは度々、単独で任務の出て行く事がある。
今回もフォルスは単独で任務をする為にウルフに一時的にホワイトファングを離れると告げている。
そして、その任務は潜入任務であり、女の格好の方が都合が良い為、フォルスは女の格好をしている。
それを見たウルフは面白そうだと、穏やかな航海で退屈しているクルーにレクリエーションの一環で女の格好をしたフォルスを見せに来たと言う訳だ。
「艦長。もう披露はしたから、ボクは行くからね」
「おう。どんな任務かは知らないが、余り問題は起こして来るなよ」
「善処するよ」
フォルスはそう言ってホワイトファングから離脱する。
フォルスのガンダムAGE-2Xがホワイトファングから離脱した事をメナスでも捕捉していた。
その報告を受けてスラッシュはメナスのブリッジに上がっている。
「ガンダムが母艦を離れただって?」
「理由は不明ですが、確定情報の様です」
ヴァレリはホワイトファングを離脱したAGE-2Xの予想進路を表示する。
「母艦を離れたガンダムは現在はこの付近を飛行しています」
「近くには我々の拠点もUIEの拠点もないですね……」
「いや、ティアナはセカンドムーンから来たばかりだが、最近ではこのコロニー『スプリングフォレスト』はUIEのシンパが多いって噂だ」
スラッシュはAGE-2Xのいると思われる宙域の近くのコロニーを指す。
「スプリングフォレスト」は観光コロニーの一つで季節を夏に固定されている「サマーウォール」、冬に固定されている「ウィンターガーデン」のように春で固定されている。
そのスプリングフォレストにはUIEの理念に賛同している者も多く、噂ではUIEに資金の提供も行っていると言われている。
「ガンダムはそこを仕掛け行ったのでしょうか?」
「考え難いな。スプリングフォレストがUIEと繋がっているのは噂レベルだからな。その噂も信憑性が高いがそれだけで仕掛けたら、問題になるぞ」
スラッシュ達もホワイトファングを大人しく追尾していた訳じゃない。
その間にホワイトファングの所属を調べていた。
その結果、傭兵派遣会社のCMCの所属であると判明した。
CMCは民間の会社であるが、主に連邦軍が雇う事が多い為、UIEを支援しているコロニーに何かしらの武力行使を依頼される事はおかしい話ではないが、馬鹿正直に正面から攻める事はあり得ない。
「恐らくは、証拠を掴む為に潜入と言ったところでしょう」
武力行使を依頼された場合、正面からコロニーに仕掛けると大問題だが、コロニーがUIEに手を貸していると証拠を掴めば問題は無い。
その為に、目立つ戦艦は待機してMSが単独でコロニーに潜入して証拠を掴みに行ったと言うところであろう。
「ヴァレリ、MS隊の準備は出来ているな?」
「すでに前回の戦闘で使用したゼイドラとジルスベインの出撃も可能です」
「なら決まりだ。連中が戦闘を始めたら俺達も仕掛けるぞ」
状況的に戦闘になる可能性が非常に高い。
そうなれば、一気の距離を詰めて戦闘に介入して、デブリベルトで雪辱を晴らす事が出来る。
スラッシュはフォルスとの再戦を胸に戦闘準備に入る。
コロニー「スプリングフォレスト」は年中緑に囲まれているコロニーだ。
季節が地球の春に設定されている為、年中住み易い気候で時間がゆったりと流れている感覚すら覚える。
そのスプリングフォレストの巨大ホールにてUIEの総帥たる、フェオドール・カルティエは支援者達の主催するパーティーに出席している。
フェオドール・カルティエは20代後半と言う若さと甘いマスクでパーティ会場の女性を虜にしていた。
その後ろにはUIEの強化Xラウンダーのルクスリア・ラストと、インウィディア・エンヴィが付いている。
インウィディアはかつて、クライドの特別技術開発研究所でマルガリータ・クリフチェンコと言う名で潜入していた頃があるが、あの頃の彼女の愛嬌は欠片もなく、パーティー会場にいるのにも関わらず、不機嫌だ。
インウィディアもルクセリアも23年前にノートラム攻防戦に出撃した時と歳は変わっていないように見える。
ただ、インウィディアの顔に大きな傷やパーティドレスから見える肌にも傷が多く見える。
ノートラム攻防戦の時にクライドが開発したガンダムZERO Ⅱに搭乗して戦闘したが、クライドの決死の自爆で機体を大破させて、インウィディア自体も瀕死の重傷を受けた。
普通の人間ならば確実に死んでいるが、強化Xラウンダーとして肉体改造を受けているインウィディアは死ぬ事が無く、今もこうして生きている。
「成程……アレが、UIEの総帥フェオドール・カルティエか……中々の色男じゃないか」
パーティー会場でワインの入ったグラスを持って遠目からフェオドールを見ているフォルスはそう呟く。
フォルスはスプリングフォレスト内にAGE-2Xを隠し、コロニー内でフォルスでパーティーの招待状を受け取って堂々とパーティー会場に乗り込んでいた。
「常に護衛が二人と会場内にも数人の警備の兵が徘徊……極めつけはアルべリック・バルベルか……」
すでに、フォルスは会場の見取り図を頭に叩き込み、警備状況を把握している。
その上で会場でフェオドール・カルティエの顔を確認している。
会場ではフォルスは目立たないように気を使っているが、その容姿から先ほどから会場の女は皆がフェオドールに熱を上げている為、会場内で唯一フェオドールに熱を上げていないフォルスに声をかける者が後を絶たないが、フォルスは見事な笑顔でやんわりと男を遠ざけている。
「会場で仕掛けるのは難しいか……となると、やり方を変えるか」
フォルスは会場内の警備が予想以上に厳重である為、会場内で任務を遂行する事を諦めると、音もなく、会場を去る。
その余りにも手際の良さで会場内で悪戯に目立っていたのにも関わらず、誰一人としてフォルスが会場内から消えた事に気がつく者はいなかった。
会場を後にしたフォルスは隠してあったAGE-2Xに戻って来ていた。
そして、コロニー内で招待状と共に用意して貰っていた狙撃用のライフルを用意している。
AGE-2Xはスプリングフォレストの森の中に隠してあったが、単に機体を隠すだけでなく、コックピットからは直接パーティー会場の入り口を覗ける位置取りをしている。
その為、ここから会場の入り口を直接狙撃する事が可能だ。
機体に戻ると機体内に着替えを用意していない為、ドレス姿のままで狙撃用のライフルの準備に入る。
フォルスはライフルの用意を済ませると、ライフルを構えてフェオドールが会場から出て来る事を待つ。
待つ事数時間、すでにコロニーは夜時間となっている。
夜となり、コロニー内が暗くなるが、フォルスはスコープ越しに会場の入り口の状況を把握出来る為、暗くても問題は無い。
そして、遂にターゲットが出て来る。
アルべリッヒとインウィディアとルクスリアと共にフェオドールが出て来る。
フォルスはライフルの照準をフェオドールの頭部に定める。
フォルスは引き金を引いて、ライフルを放つ。
放った瞬間にフォルスは直撃を確信する。
だが、その確信を裏切り、アルベリッヒはフェオドールの頭を抑えて、向かえの車の影にフェオドールを隠す。
その為、弾丸はフェオドールには当たる事は無い。
「外した! 馬鹿な……」
狙撃を失敗した驚きをフォルスは隠せない。
フォルスはMSの操縦以外でも白兵戦や銃撃戦、狙撃にも絶対の自信を持っている。
今の狙撃に一切のミスは無かった。
殺気も引き金を引く一瞬しか放たなかった。
だが、アルベリッヒはその一瞬の殺気に反応して、フェオドールを狙撃から守ったのだった。
「狙撃は失敗か……まぁ良い。少々予定は狂うが想定内だ」
狙撃が失敗した事は今更、どうしようもない事だ。
だが、フォルスの任務はフェオドールを暗殺出来るかは重要な問題ではない。
それによって騒ぎを起こす事の方が重要だからだ。
フェオドールが狙撃された事でパーティー会場は騒然となり、護衛の為にコロニーに持ち込んで来たMSが時期に出て来るだろう。
AGE-2Xは森から飛び出るとストライダー形態に変形して、コロニーから離脱する。
コロニーを離脱したAGE-2Xを三機のゼイ・ドゥが追撃に出て来ていた。
マドックのMカスタム、ボリスのBカスタム、レーラのLカスタムだ。
「追撃は三機……ブランベルグで戦った奴か……」
「まさか、あの白い四枚羽根のガンダムが総帥を暗殺をしようとするとはな……アレには博士から鹵獲の指示が出ている。逃がすなよ」
三機のゼイ・ドゥは散開して、三方向からAGE-2Xを狙う。
Bカスタムがレールガンを放ち、Lカスタムがビットを射出してビームライフルを放つ。
AGE-2Xは攻撃を回避して、ハイパードッズライフルで応戦する。
その隙にMカスタムが距離を詰めて高出力ヒートソードを振るい、AGE-2Xはビームサーベルで受け止める。
「成程……どう言う意図かは知らんが、こちらを落とす気は無いと言う事か。好都合だ」
フォルスも気配から三人はこちらを殺す意思がない事を感じ取る。
それはフォルスにとっても好都合だった。
AGE-2XはMカスタムを弾き飛ばすとストライダー形態に変形して、離脱しようとする。
だが、LカスタムのビットがAGE-2Xの周囲からビームを放ち、MS形態に変形して回避しながら、ビームサーベルを抜いて近くのビットを切り裂く。
「逃がさん!」
Bカスタムがシールドのミサイルをレールガンを一斉掃射して、AGE-2Xはレールガンを回避しつつストライダー形態となり、ビームバルカンでミサイルと迎撃しながらBカスタムに接近すると、MS形態に変形してビームサーベルでレールガンの銃身を切り裂いて、Bカスタムの背部を踏み台として、蹴り飛ばしてMカスタムにビームサーベルを振るう。
Mカスタムは高出力ヒートサーベルを振るい、二機は互いを弾き飛ばす。
Lカスタムはビームライフルを放ち、AGE-2Xは機体をくねらせながら回避してハイパードッズライフルでLカスタムのビットを一気に二基撃ち落とす。
「相変わらずの強さだが……」
MカスタムがAGE-2X向かうが、そこに戦闘の反応を捕捉して来たヴェイガンも乱入する。
「見つけたぞ! お前は俺が落とす!」
「今度はヴェイガンか……お前たちはお呼びじゃないんだけどな」
スラッシュのゼイドラがゼイドラガンを撃ちながら、AGE-2Xに突っ込んでくる。
そして、ゼイドラガンの先端からビームサーベルを展開して切りかかる。
AGE-2Xはゼイドラの攻撃を回避するし、ハイパードッズライフルを構える。
だが、それをティアナのジルスベインがビームバスターで妨害する。
「スラッシュ様はやらせない!」
ジルスベインはジルスベインビットを展開して、AGE-2Xに差し向ける。
AGE-2Xはジルスベインビットを回避しながらハイパードッズライフルで迎撃する。
ジルスベインビットを迎撃しているうちにMカスタムが高出力ヒートソードを振るい、AGE-2Xはビームサーベルで受け止めるが、ゼイドラとジルスベインがビームバルカンを放ち、二機は離れ、ジルスベインはジルスベインガンでMカスタムを牽制して、ゼイドラはビームサーベルでAGE-2Xに切りかかるが、AGE-2Xはゼイドラを蹴り飛ばす。
「ヴェイガンの狙いはこちらか……」
ヴェイガンの目的も自分であると言うのはゼイドラがAGE-2Xを狙い、同じくAGE-2Xを狙うUIEのMSをゼイドラ以外のMSが牽制していることからも明らかだ。
「そろそろなんだがな……」
フォルスは敵の猛攻を凌ぎながら、コロニーを離脱して行き、計算では予定通りに航行していればすでにホワイトファングのレーダーの範囲内だ。
「フォルス! こいつはどう言う事だ?」
ホワイトファングでも戦闘の反応の中にAGE-2Xの識別信号を捉えて、通信を入れて来た。
「少し、しくじってね。見ての通りだよ。悪いけど援軍を頼める?」
「後できっちりと説明をして貰うからな」
ウルフは状況を完全に把握していないが、フォルスが多勢に無勢でる為、すぐにMS隊の準備に入らせる。
戦闘宙域からホワイトファングまでは相当な距離があり、援軍が来るのには時間がかかるだろう。
「これで良い」
ホワイトファングとの通信を終えるとAGE-2Xはストライダー形態に変形して、Mカスタムにビームバルカンを撃ちながら接近する。
MS形態に変形すると、Mカスタムとゼイドラにハイパードッズライフルを放つ。
二機は攻撃を回避すると、競うようにAGE-2Xに攻撃する。
AGE-2Xはその攻撃を回避していると、戦場をビームが横切る。
その攻撃はAGE-2Xに真っ直ぐ向かうが、その射線上のヴェイガンのガフランやバクトを破壊して行く。
AGE-2Xはその攻撃をかわす。
「あのMSは……レヴィアタンか……」
そこには通常のMSの倍以上の大きさのMSがAGE-2Xに向かっていた。
頭部はメインカメラの上下にサブカメラの付いた6つ目で両肩には大きく湾曲したMSサイズの大型シールドを装備し、両腕が異常に長い。
掌の中央にはビームソードが内蔵され、指にはビームガンが内蔵されている。
掌は有線式のビット兵器としての使え、腹部には高出力のビーム砲が内蔵され、腰には尾の様な武器も搭載されている。
それはかつてクライドが開発した大罪シリーズの一機『レヴィアタン』だ。
「レヴィアタン……まさか強化Xラウンダーも投入したのか」
「アンタ達雑魚は引っこんでなさい。あのガンダムは私が鹵獲するから」
レヴィアタンは指のビームガンを撃ちながら、AGE-2Xに向かっていく。
AGE-2Xはビームを回避しながら、ハイパードッズライフルで応戦するが、ハイパードッズライフルの一撃はレヴィアタンのシールドに阻まれる。
「そんな攻撃が通ると思って!」
レヴィアタンはビームガンを撃ちながら、インヴィディアは機体に搭載されているあるシステムを起動させる。
そのシステムを起動させるが、レヴィアタンに変化は無い。
だが、別のところで変化が現れた。
「何……これ……」
「ティアナ! どうした!」
ティアナは機体の動きを止めて頭を抑える。
今までは何ともなかったのだが、突然にティアナを頭痛が襲った。
それも、戦闘中である為、多少の頭痛なら耐えるが耐え切れずにヘルメット越しに頭を抑える程だ。
「っ……これがAXシステムか……聞いてはいたが効くな……」
ティアナと同様にフォルスも頭痛で顔を歪ませている。
フォルスは何が起きているか理解していた。
レヴィアタンに搭載されているAXシステムが起動したのだ。
AXシステムとはアンチXラウンダーシステムの略称だ。
そのシステムが起動すると効果範囲内に機体から特殊な電波が放出され、範囲内の人間の脳のX領域に直接刺激を与える。
普通の人間なら、何も感じる事もなく影響はないが、X領域にアクセスする事が可能なXラウンダーにのみ影響を与える対Xラウンダー用のシステムだ。
その為、戦場のXラウンダーのフォルスとティアナはその影響を受けて頭痛を引き起こされている。
AGE-2Xのパイロットが優れたXラウンダーである事はUIEにも知れている事である為、対Xラウンダー用MSであるレヴィアタンを投入し、強化Xラウンダーであるルクスリアを戦闘に投入してはいない。
「苦しみなさい! Xラウンダーは皆苦しめば良いのよ!」
レヴィアタンは掌を射出すると、AGE-2Xにビームガンを放つ。
AGE-2Xもかわそうとするが明らかにその動きに今までの動きの切れは無い。
最初の数発はかわす事が出来たが、遂にはハイパードッズライフルごと、右腕がビームガンによって破壊される。
更に背後からの攻撃でAGE-2Xの両足が吹き飛ぶ。
そして、レヴィアタンは腕を戻して、AGE-2Xを腕で払い吹き飛ばす。
その勢いでコックピット内は大きな衝撃を受けて、フォルスは体をシートに固定はしてあるが、衝撃で頭をコックピット内でぶつけて頭から血を流して意識を失っている。
フォルスが意識を失った事でAGE-2Xはぐったりとして動かなくなる。
「所詮はXラウンダーもこの程度なのよ」
レヴィアタンは動かなくなったAGE-2Xを頭部を掴む。
「コイツを捕まえれば良いんでしょ?」
「……ああ」
マドックはあっさりとAGE-2Xを鹵獲した事に驚きを隠せない。
AGE-2Xとフォルスの力は良く知っている為、レヴィアタンのAXシステムを知らないマドックは何が起きたか理解は出来ない。
だが、一つ確実なのはダグの要望通り、AGE-2Xの鹵獲に成功したと言う事だ。
「ガンダムが鹵獲されたのか……」
それはスラッシュも同様だった。
突如、苦しみ出したティアナに気を取られている間にAGE-2Xは損傷して鹵獲されていた。
実際に戦ったスラッシュには信じられない光景だ。
「くそ……今は引くしかないか……」
ティアナの不調もあり、今の戦力でレヴィアタンを相手にする事が出来ないと判断したスラッシュはティアナのジルスベインを抱えて、友軍機と共に撤退して行く。
UIEも目的がAGE-2Xの鹵獲である為、撤退するヴェイガンを追いかける事はしない。
ヴェイガンが完全に撤退して行き、AGE-2Xは鹵獲されてスプリングフォレストから出港して来たUIEの輸送艦に連れて行かれた。