機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

75 / 155
第71話

スプリングフォレストでの戦闘から離脱したスラッシュ達、ヴェイガンもフォルスの行方を独自の情報網を駆使して捜索していた。

 スラッシュとしてもガンダムを倒すと言う目的がある為、このままでは済ます気は無かったからだ。

 

「恐らく鹵獲されたガンダムとそのパイロットはUIEの大型母艦ドレッドノートに移送されている可能性が高いですね」

 

 ヴァレリがそのドレッドノートの付近の宙域図をモニターに出す。

 

「ガンダムの母艦も民間の工房に立ちよった後に、ドレッドノートに進路を取っています。現在はこの辺りにいるかと」

 

 今度はホワイトファングの位置の予想を出す。

 その進路からドレットノートに進路を向けている事が分かる。

 

「単艦であそこに仕掛けるのか」

「周囲に別の艦艇は確認出来ないので恐らくは」

 

 ヴェイガンでもドレッドノートの戦力は完全ではないが、おおよそは把握しているが、単艦で仕掛けるのは自殺行為だ。

 

「ティアナの容体は?」

「命に別状は無いですね。不調の原因は不明ですが、あの大型MSによる影響かと思われます。今のところティアナ以外に同様の症状が出ていない事を考えると、あの大型MSはXラウンダーにのみ何かしらの悪影響を与える機能を持っていると言うのが技術班の見解です」

 

 ヴェイガンの兵の中ではティアナは唯一のXラウンダーで、あの時の戦闘では誰もミューセルを使っていない。

 その上、レヴィアタンが出て来てからティアナだけでなく、AGE-2Xの動きも明らかに悪くなった。

 あの時、ティアナ同様にAGE-2Xのパイロットのフォルスも不調だったと考えれば動きが悪くなった説明もつく。

 

「分かった。俺一人で出る」

「スラッシュ様! ガンダムのパイロットを助けるつもりですか!」

 

 ヴァレリは珍しく声を上げる。

 スラッシュにとっては倒したい敵かも知れないが、AGE-2Xを倒したとて戦争の流れが変わる訳でもない。

 そのAGE-2Xとそのパイロットを助ける為に動く理由は何処にもない。

 寧ろ、あれだけの力を持つパイロットをUEIが処分してくれるのだから、救出の邪魔をする方がヴェイガンにとって利益をもたらす。

 

「ああ……だけど、俺がガンダムをいずれは倒すから問題は無いだろ。それにこれは俺一人の問題だ。だから俺が一人で出る」

 

 ヴェイガンの不利益になるかも知れない戦いにMSを投入する事は出来ないが、スラッシュが一人で出る事を止める事も出来ない。

 

「……分かりました。それと、この前地球に移送する手筈だったMSを乗せた連邦軍の輸送団を襲撃した海賊が付近で目撃されています。連中は我々の敵ですので用心してください」

 

 ヴァレリはガンダムのパイロットを助ける事に不満を持つが、スラッシュを止めても無駄である為、ヴァレリは止める事を諦めた。

 そして、理由こそ分からないが、ドレッドノートの近くで宇宙海賊ビシディアンの母艦『バロノーク』を補足している。

 ビシディアンは連邦軍の艦艇を襲うがヴェイガンの艦艇も襲う。

 その為、ビシディアンは確実に敵であると見なしている。

 その事をスラッシュに報告し、スラッシュも出撃の準備に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マッドーナ工房で武器や弾薬の補充を終えて、AGE-2Xとフォルスが連行されていると思われるUIEの大型母艦ドレッドノートに接近していた。

 今回の戦闘で艦長のウルフもGファングで戦場に出る為、臨時的に副長であるラウラがホワイトファングの指揮を取る事になっている。

 

「MS隊を射出後、強襲揚陸形態に変形、フォトンブラスターキャノンのチャージを開始します」

 

 ラウラは緊張気味に命令を矢継ぎ早に指示する。

 今まではラウラは艦長のウルフの補佐をしてれば良いが、今回は自分が艦長代行として指揮を執る事になっている。

 それもフォルスの救出作戦だ。

 すでにアキラのクランシェは作戦行動を開始している。

 未だにドレッドノートが動きがなく、アキラからの連絡がないと言う事はアキラは順調に作戦を遂行している事になる。

 救出作戦である為、ドレッドノートを陥落させる必要はないが、フォルスを回収するまでは離脱する事が出来ない。

 

「余り堅く成るな。お前はいつも通り、そこで指示を出せば良い」

 

 Gファングからウルフの通信が入る。

 ウルフに言われてラウラはようやく、いつも以上に緊張して堅くなっている事に気がつく。

 それに気付いた為、ラウラは深呼吸をする。

 

「それで良い。ウルフ・エニアクル。Gファング。出るぞ」

 

 ウルフのGファングが射出され、他のMS隊も出撃してフォルス救出作戦が開始される。

 今回の作戦ではキースのGバウンサーはフル装備で出撃している。

 専用のドッズライフルは腰の裏側にマウントされ、両手にはハイパー・バズーカ、シールドの裏側にはパンツァーファウストが二本、右腕にもパンツァーファウストが二本、脚部にはドッズガトリングポッド、両肩とテールバインダーにはミサイルポッドが追加されている。

 それにとり火力は大幅に向上するが、Gバウンサー本来の機動性能は大幅に低下している為、残弾の切れた武器はパージ出来るようになっている。

 

「行くぞ。お前ら、連中の気をこちらに引きつける為に派手に暴れるぞ!」

 

 Gファングがドレッドノートに接近して行き、ドレッドノートから防衛のMSが出て来る。

 出て来ているのはナイトルーパー改のみで数は多いがドレッドノートに配備されている予測の戦力よりも遥かに少ない為、敵はホワイトファングの戦力を大した事は無いと思っているのだろう。

 

「この白い狼も舐められたもんだ!」

 

 Gファングはナイトルーパー改に接近すると、シールドのビームソードでナイトルーパー改を切り裂く、そのままハイパードッズライフルを連射して正確にナイトルーパー改を撃ち抜いて行く。

 ナイトルーパー改がドッズバズーカを放つが、Gファングは回避してハイパードッズライフルで撃ち抜く。

 別のナイトルーパー改がロングビームサーベルで切りかかるもGファングはナイトルーパー改を蹴り飛ばして、ハイパードッズライフルで落とす。

 

「マジかよ……アレが爺さんの戦いかよ」

「クリフォード君! 前!」

 

 クリフォードが歳を感じさせないウルフの戦いに驚いていると、ナイトルーパー改がロングビームサーベルを抜いて接近して来るが、Gファングはハイパードッズライフルで撃墜する。

 

「クリフォード。俺の戦いに見とれてる暇は無いぞ!」

 

 ウルフはそう言いGファングはハイパードッズライフルを放つ。

 

「それにしてもこのMS……」

 

 ウルフは戦いながらもある違和感を覚えていた。

 Gファングの機体特性はGエグゼスやGバウンサーの様な高速戦闘が主体だ。

 当然、それに伴うパイロットへの負担が大きくなり、若い頃のように戦えるとは思ってはいない。

 だが、このGファングは高速戦闘時のパイロットへの負荷を大きく軽減する事が出来るらしく、余り自身への負荷は少ない。

 しかし、それ以上に違和感があるのがGファングが余りにも自分に合い過ぎている事だ。

 ララパーリーはこの機体はウルフに合うと言っていた様に機体特性は自分好みの高機動型だ。

 それを踏まえても、Gファングはウルフの戦い方や操縦の癖に合い過ぎている。

 まるで始めからウルフが乗る事を前提に設計されていたかのようにだ。

 ウルフはそこまで考えるがすぐに、頭を切り替える。

 Gファングを設計したドクターCとは面識がない筈で、今はそんな事はどうでも良い。

 

「まぁ良い。久しぶりに暴れさせて貰うぜ!」

 

 今は敵の注意をホワイトファングに向ける事が重要だ。

 その為に一騎当千で暴れるエース機は多いに越したことは無い。

 

「アレが白い狼の力……」

「ライル! ぼさっとしてるなよ!」

 

 ライルも以前に父から聞いていたウルフの実力を目の当たりにするが、今は戦闘中である為余所見をしている暇は無い。

 ジェノアスキャノンⅡはドッズキャノンを放つ。

 Gバウンサーもハイパー・バズーカに脚部のドッズガトリング砲を連射して弾幕を張る。

 

「この反応……」

「どうしたんだよ?」

 

 プロト3はシグマシスライフルを放ち、ナイトルーパー改を数機纏めて撃墜していると、AGEドライヴの出力調整と共に周囲の警戒をしていたキャロルが戦闘宙域に接近する機影を補足している。

 

「ウルフ艦長、近くに接近して来るMSがあります……これってこの前の海賊です!」

「何だと?」

 

 そして、戦場にビシディアンのMSがガンダムAGE-2 ダークハウンドを先頭に介入して来て、UIEのMSへと攻撃を始める。

 

「正面からの攻撃か……あの人らしいと言えばそうだが、単純過ぎる。何かあるな」

 

 アセムはホワイトファングが正面から仕掛けている事は何らかの策があると予測している。

 あの戦闘の後、アセムはフォルスが何故自分の事を知っていたかを調べる為にビシディアンの情報網を駆使したが、フォルスがCMCの所属でアセムの元隊長のウルフの船に乗っている事は掴んだ。

 しかし、フォルスがCMCに入社した10年前までのフォルスの事は大方のところは調べる事が出来たが、そこにアセムの事を知るに至る理由は確認出来ず、その前の事になると途端にフォルスの足取りが掴めない。

 まるで、フォルス・マースカイザーと言う人物が10年前に突然現れてそれ以前には存在すらしていなかったかのようにだ。

 その為、アセムは本人に直接聞く事にした。

 そして、フォルスの現在の所在を調べいるうちにスプリングフォレストで騒ぎを起こしてUEIに捕まり、今はドレッドノートにいる事を掴んでフォルスをドレッドノートから奪う為に行動を起こした。

 アセムの予想ではCMCがフォルスの救出作戦を開始するまでにはそれなりの時間を必要とし、その前に自分達で確保するつもりであったが、予想に反してCMCはホワイトファングが単艦でドレッドノートに仕掛けていた。

 普通ならそんな自殺行為はしないのだが、ホワイトファングの艦長のウルフはその無茶を部下の為なら平気でやりだす人であったとアセムは再認識した。

 ダークハウンドはドッズランサーでナイトルーパー改を貫いて破壊し、ロングビームサーベルで切りかかって来たナイトルーパー改をビームサーベルで弾き、ドッズガンを至近距離で撃ち込んで破壊する。

 その後方から追いついて来たビシディアンのMSも各機が連携を取ってナイトルーパーを渡り合う。

 

「だが……悪いが、こっちにはこっちの事情があるんでね」

 

 ダークハウンドはドッズガンでナイトルーパー改を牽制して、ビームサーベルで切り裂く。

 その後、アンカーショットをナイトルーパー改に向けて射出しようとするが、その前にGファングがハイパードッズライフルでナイトルーパー改を撃墜する。

 

「そこの海賊ガンダム! 聞こえるか……お前、アセムだな」

 

 Gファングはダークハウンドの近くまで来るとダークハウンドに通信を繋ぎ、ウルフはアセムにそう言う。

 その言葉にアセムは一瞬、ドキリとする。

 まさか、戦闘を少し見ただけで自分だと見破られていたからだ。

 パイロットはどこまで行っても人である以上、操縦の癖を隠す事は難しい。

 それが共に戦った事のある相手なら見抜く事はあり得ない事ではなかった。

 アセムもウルフがいる為、動きからばれないように気を付けていたが、まさかここまで早くばれてしまったのは計算外だ。

 

「……お久しぶりです。ウルフ隊長」

 

 アセムはどうすべきが悩むが、ウルフはダークハウンドに乗っているのがアセムだと半ば確信している様子だった。

 その為、アセムも通信に応じる。

 

「アセム……お前、生きていたのか……」

 

 自分からアセムだと言っておきながら、実際にアセムだった事にウルフの声から流石のウルフも困惑している様子がうかがえる。

 

「ええ……俺もいろいろあったんですよ」

「その事は後できっちりと聞かせて貰う。それよりもだ。海賊が何のようだ」

 

 ウルフもウルフでアセムが何故、生きていて海賊になっている事よりも、海賊であるアセムがここに来た理由を優先した。

 幾ら、かつての部下だろうが、海賊である以上素直に友軍と認める訳にはいかない。

 

「あそこに囚われているフォルス・マースカイザーに少し聞きたい事があるんですよ」

「フォルスにだと? つまり、お前も俺達同様フォルスを助けに来たって事か?」

「そう考えてくれて結構です」

 

 アセムとしてはフォルスから話が聞ければそれで構わなかった。

 今はウルフを敵に回すのは不味い事はアセムは良く知っている。

 その為、敵対する理由は無く、寧ろ共闘した方がフォルス救出の確立が上がる。

 そして、それはウルフも同様であった。

 

「分かった。今、うちのMSが一機、別ルートからアレに接近している」

「成程。こちらは陽動と言う訳ですか」

 

 単純な戦力差ではホワイトファングに勝ち目はない。

 その為、ホワイトファングが囮となり、ホワイトファングの搭載機に機動性が高い上に今のところUIEとの戦闘で投入されていないアキラのクランシェの存在はUIEが知らない筈である為、ウルフ達が敵の目を引きつけて、アキラが別ルートからドレッドノートを強襲すると言う

 

事が今回の作戦だ。

 その作戦の唯一の問題は強襲後にフォルスがある程度は自力で動かなければフォルスを回収する事が出来ないと言うところだが、そこは

 

フォルスを信用するしかない。

 これが本社を頼らずにホワイトファングの戦力で出来る数少ない作戦だ。

 敵との戦力差は多き過ぎる為、敵の全ての戦力を囮に集める事は出来ない上に、アキラが強襲をかけてフォルスを回収出来る保証は何処にもない。

 今のフォルスの状態が自力で動ける状態ですらないかも知れないからだ。

 だが、それでも今はこの作戦に賭けるしかなかった。

 

「そう言う事だ。アセム、お前たちにも派手に暴れて貰うぞ」

「分かりました」

 

 ダークハウンドはビームサーベルでナイトルーパー改を切り裂き、ドッズガンを連射する。

 

「隊長ももう若くないんですから。余り無茶はしないでくださいよ」

「抜かせ!」

 

 Gファングはシールドのビームソードでナイトルーパー改を両断する。

 そして、ナイトルーパー改のドッズバズーカをかわして、ハイパードッズライフルで撃ち抜く。

 

「生憎と俺はまだ現役なんでね!」

 

 ダークハウンドとGファングが先陣を切って、敵の注意を引き付けながら戦闘は続いている。

 

 

 

 

 

 

 

 ホワイトファングとビシディアンがドレッドノートに襲撃をかけて戦闘が開始されているが、ドレッドノート内は戦闘中とは思えない程、落ち着いている。

 所詮は、戦艦二隻による襲撃である為、ドレッドノートの戦力では取るに足らない戦闘でしかなかった。

 艦内には指揮を取れる指揮官が数人が常に在中している為、アルべリックが自ら指揮を取らずとも十分に対応出来る。 

 その為、アルベリッヒはその数日で取ったフォルスのデータをノアにいるダグに送っている。

 

「素晴らしぃぃぃ! 実に素晴らしい!」

 

 そのデータを見たダグはマドックにAGE-2Xの戦闘データを見た時以上に興奮している。

 アルベリッヒには送ったデータが何を示しているのかは専門外である為、殆ど理解出来ないが、ダグはそれを理解しているのだろう。

 

「少しは落ち着いたらどうなんだ」

「これが落ち着いていられるか! 彼女は最高だ!」

「どう言う事か説明しろ」

 

 余りにも高いテンションのダグはアルベリッヒにそう言われてもすぐに興奮が収まらない。

 暫くして、ようやくダグも落ち着いて話せるようになった為、モニターにデータを表示させる。

 そこにはドレッドノートで取ったフォルスの身体データだ。

 

「ガンダムに乗っていた少女の肉体は人為的な処置を受けている。それも私が強化Xラウンダーに行った強化処置は外的処置だけだが、彼女の場合は遺伝子レベルで、行われている。遺伝子改造と外的処置によって人間の限界を遥かに上回る能力を得る事に成功しているのだ。この技術自体はすでに確立されているが、実際に成功させた前例はない。更に遺伝子の改良により老化のしない肉体に、常人の数倍の寿命を持ったパイロットとしては理想的と言える!」

 

 ダグは説明しているうちに興奮仕掛けるも、説明を続ける。

 フォルスには遺伝子レベルので改造や人工筋肉の移植などの外的処置が施されている。

 その為、人間離れした身体能力をMSの操縦技術を可能にしていると言う事だ。

 更には遺伝子操作によって肉体は一切の老化をしない為、寿命が尽きるまで肉体が老化で劣化する事は無く、常人よりも遥かに長い寿命は普通のパイロット以上の実戦経験を得る事が出来る。

 その上でXラウンダー能力も意図的に強化されている痕跡も確認出来る。

 それらから、ダグはフォルスはパイロットとして自然には決して発生したい肉体を持った理想的なパイロットだと興奮している。

 ダグは長々とその理論を説明するが、要約すると普通の人間ではないと言う事だった。

 それも、ダグの強化Xラウンダー以上の技術を使って改造が行われている。

 それならば、プロト3を4機とカスタムタイプのゼイ・ドゥを相手に出来たりするのも頷ける。

 

「そう言う訳だ。アルベリッヒ、早いところ彼女をノアに連れて来て欲しい。彼女はツヴァイのパイロットに適任だ」

「修復が終わったのか? それ以前に彼女が我らに協力するとは思えないが」

「関係ない。彼女の意思はどうでも良いのだよ。彼女にはガンダムを動かすパーツであってくれさえすればな」

 

 現在、ノアでは23年前に大破したガンダムZERO Ⅱの補修と強化を行っている。

 機体を奪取したは良いが、実戦テストでもあったノートラム攻防戦で大破しており、UIEの技術力でも簡単に修理をする事が出来ず、更に強化をしようとしている為、未だに実戦に投入出来る状態ではない。

 そして、その時のデータを検証した結果、ガンダムZERO Ⅱの性能はあんなものではなかった事が判明した。

 だが、そこで問題が生じたガンダムZERO Ⅱの全性能を引き出す為には強化Xラウンダーでは力不足だった。

 ダグの見立てでは最強のパイロットとなるべく作られたフォルスならば、それも可能だ。

 実際に尋問でフォルスと話したアルベリッヒはフォルスがとても、素直にUIEに協力するとは思えない。

 しかし、ダグにとってフォルスが自分の意思で協力するかはどうでも良かった。

 その気がないのならば、薬を使い自我を崩壊させるなり、洗脳するなりすれば良いだけの事だ。

 ダグにとってはフォルスはガンダムZERO Ⅱの性能を引き出す為のパーツに過ぎないからだ。

 

「問題があるとすればこれだけ強化すれば肉体が持たないと言う事だ。実際に問題なく動いていると言う事は何らかの方法で抑えている筈なんだがな……それが分からない以上、彼女の体は長くは持たない」

 

 パイロットとして非常に理想的な肉体を持っているフォルスだが、強化と改造のし過ぎで肉体への負荷が多き過ぎて、肉体を維持する事が難しくなる。

 その為、何らかの方法でその問題をクリアしていると思われるが、その方法を知らなければ理想のパイロットを手に入れても遠くなく、フォルスは死ぬ。

 

「分かった。こちらでも調べておく」

「それよりも彼女はどうしている?」

「今は薬で眠らせて拘束しているが」

 

 アルベリッヒがそう言うと、ダグは勢い余ってモニターから飛び出そうな勢いで立ちあがる。

 

「何を馬鹿な事を! そんな事で拘束出来る筈がないだろう!」

 

 ダグはアルベリッヒに怒鳴るとほぼ同時に兵が入って来る。

 

「将軍! 拘束していました捕虜が脱走しました!」

「どう言う事だ。警備は何をしていた!」

「当然だ。彼女の体には既存の薬物に対する抗体は一通り備わっている。そして、普通の人間の拘束具も牢も意味をなさない」

 

 アルベリッヒはモニターにフォルスの牢の監視カメラの映像を出すが、牢の中にはフォルスはいない。

 牢の中には拘束具の一部が落ちており、拘束具を強引に引き千切った事が分かる。

 更には牢の扉にはロックが掛けられていたが、今は牢の扉は無く、別のアングルのカメラには廊下に転がっている牢の扉が映されているが、飛びらにはくっきりと足跡が残されている。

 恐らくはフォルスが牢から逃げる際に扉を蹴破ったのだろう。

 だが、拘束具は元より、扉を人間の力で蹴破るのは不可能だ。

 

「信じられん……」

「彼女は見た目こそは普通の少女だが、中身はまるで違う。普通の常識が通用するものか」

「すぐに総帥の安全を確保しろ! その後、脱走した捕虜の確保をするのだ!」

 

 アルベリッヒが指示を飛ばして、すぐにドレッドノート内のフォルスの捜索を開始する。

 

 

 

 

 

 

 フォルスの脱走が明るみとなり、ドレッドノート内は慌ただしくフォルスを捜索している。

 只でさえ、ドレッドノートは広く、そこからフォルスを探し出す事は容易ではない。

 フォルスは拘束具を来たまま、ドレッドノート内を走っている。

 すでに拘束具はその意味をなしてはおらず、単にフォルスの衣服となり果てている。

 フォルスは通路を走っていると不意に止まり、両手を上げる。

 その前には銃を構えているフェオドールがいた。

 アルベリッヒの報告はまだ、フェオドールには届いてはいなかったが、ドレッドノート内の雰囲気から只事で無い事を悟ってはいた。

 

「フェオドール・カルティエか……」

「まさか、君の様な女の子がガンダムのパイロットだったとはね……」

「MSを動かすには性別は関係ない」

 

 フェオドールはパーティー会場での温和な表情ではなく、フォルスに銃を向けたまま、油断はしていない。

 フォルスはこの状況を打開する事はそんなに難しい事ではないが、フェオドールの能力が未知数である為、強引な策を避ける事にした。

 フォルスは手始めに片手を抑えてうずくまる。

 そして、顔を歪めるとフェオドールはあっさりとフォルスに近づいて来た。

 フォルスはフェオドールに感づかれないようにその事を確認して、フェオドールが自分の手の届く範囲に入って来ると、すぐさまフェオドールの銃を奪い、フェオドールを老化にうつ伏せに押し倒すと、フェオドールの手を後手に抑え込み、背中に圧し掛かり銃を突き付ける。

 その一連の動きは流れるようでフェオドールには何が起きたのかを理解する前に今の状況に持って行った。

 

「大したフェミニストだな」

 

 フォルスはフェオドールに銃を突き付けた状態でそう言う。

 フォルスは負傷を装いフェオドールの油断を誘う気でいたが、予想に反してフェオドールは不用意にフォルスに接近してあっさりと銃を奪い拘束する事に成功した。

 

「驚いたよ。君みたいな子がこんな事が出来るなんてね」

「甘いな。戦場で女子供を相手に油断しているようでは生き残る事など出来はしないぞ」

 

 女子供だろうと戦場に出る事は珍しくは無い。

 特にテロリストなどは敵を油断させる為に敢えて女子供を使う事もある。

 そんな時に外見から油断されば、それは命取りとなるだろう。

 今のフェオドールがその状況に陥っている。

 フェオドールも体をよじらせて、何とか脱出を試みてはいるが、フォルスの細身の体からは想像も出来ない程の力で抑えられている為、フェオドールの力では微動だにしない。

 

「肝に銘じておくよ」

「そうか……ならば、来世で活かすが良い」

 

 フォルスが引き金を引こうとするがその前に、フォルスの捜索に駆り出されていた兵士が駆けつけて来る足音が聞こえて来る。

 今ここで、銃を放てばその銃声で兵士が来るだろう。

 そうなれば非常に面倒だ。

 その為、フォルスは銃でフェオドールの頭部を殴り気絶させる。

 フォルスがその気になればフェオドールを撲殺出来るが、ここでUIEの総帥であるフェオドールを殺してしまえば、その敵討ちでフォルスの事を血眼になって捜すだろう。

 今のフォルスにはやるべき事があるので、生涯となる不確定要素は減らすに越したことは無い。

 殺してない為、フェオドールを発見した兵士をここに足止めが出来、フェオドールの警護や治療に兵士を回す為、追手も少しは減らす事が出来るかも知れない。

 フェオドールを気絶させると、フォルスは再び走りだす。

 その後、フォルスは兵士に見つからないように注意を払いつつも、ドレッドノート内の部屋を虱潰しに探す。

 ここに連れて来られて以降、検査の為に牢から出される時はアイマスクと催眠ガスで眠らされていたフォルスだが、薬物の類は効果がないので、その間は寝ているフリをしてドレッドノート内の見取り図を大方把握しているが、検査に必要のない場所は牢との往復で通らない場所までは把握していない事もあって目的の場所を探す為に違うと分かっているところを除いて探す必要があった。

 すると、大きなモニターや端末が一通り揃っているドレッドノートのデータルームと思しき場所を見つけた。

 

「ここなら……」

 

 フォルスは端末を起動させて、データを閲覧しようとするが、当然ながらプロテクトがかかっている為、見る事が出来ない。

 フォルスもその事は予測の範囲内で次々をプロテクトを解除して行く。

 正規の方法で解除して行っている訳ではない為、指令室にもその事はすぐに伝わり、兵士がデータルームに駆けつけるが、フォルスはデータルームの前に室内の適当な物でバリケートを作っている為、容易に中に入る事は出来ず、万が一にもデータルームの端末を傷付ける危険性がある為、銃の類は使えない。

 それによって時間を稼いでいる間にフォルスはプロテクトを解除して、データを閲覧する。

 

「予想以上の収穫だな」

 

 データを凄いスピードで閲覧しながらも、フォルスは内容も把握している。

 そのデータの中にはノアやドレッドノートの見取り図を始めとしたUIEの機密情報が克明に記されている。

 フォルスはそのデータを一通り見るとフェオドールから奪った銃でデータルーム内の端末を銃の弾が切れるまで放ち破壊する。

 

「これで任務は完了だ。次はどうやって離脱するかだ……」

 

 UIEの機密データを閲覧した時点でフォルスがわざわざ機体を壊して捕虜となってまでここに来た理由は無くなった為、次はここから離脱しなければならない。

 フォルスが行動を起こしたのも、外で戦闘が起きた事に気がついたからだ。

 タイミング的にホワイトファングが自分を救出する為に仕掛けたのだろう。

 その為にフォルスはホワイトファングのレーダー範囲内にまで逃げて通信をホワイトファングに寄こした。

 その後、自分の消息がつかめなくなった場合、UIEに捕まった可能性を考えて救出に来る事までを見越しての事だ。

  

「仕方がない……自力で脱出はするか」

 

 フォルスはバリケードの前で軽く屈伸をして、助走を付けてバリケードごとデータルームの扉を蹴破る。

 扉の前には兵士が扉を開ける為に作業をしていたが、突然の事で避ける暇もなく、扉ごと吹き飛ばされる。

 その後ろで待機していた兵はフォルスに銃を向けるが、引き金を引くよりも早く、フォルスによって仕留められた。

 兵士を仕留めて装備を奪い、フォルスはドレッドノート内の格納庫を目指していた。

 フォルスはアルベリッヒにガンダムAGE-2Xの場所を聞いていたが、フォルスにはその位置をする術があった。

 その為、目的を果たした以上次はAGE-2Xを奪い返してドレッドノートから離脱する事だ。

 通路を走るフォルスだが、不意に目眩を起こして立ち止まる。

 そして、胸を抑えて通路の壁にもたれ掛かるとそのまま座り込んでその場でうずくまる。

 フォルスの息は粗く、先ほどフェオドールを油断させる演技ではない事が分かる。

 

(薬が切れかかっている……)

 

 ダグが言っていた通り、フォルスの肉体はフォルスが常に常用している錠剤を飲まなければ維持が出来ない。

 ここに来て数日は常に拘束された状態で監視されていた事もあり一度も薬を飲んでいはいない。

 そのせいでフォルスの体は悲鳴を上げている。

 

(全く……厄介な体だ。これも改良の余地があると言う事か……)

 

 フォルスは少しの間、それに耐えて収まるのを待つ。

 薬を服用しなかった事で発作が起こるが、すぐにどうこうなる訳ではないが、発作が起きたと言う事は早いところ薬を飲まなければ不味い事になる事は明白だ。

 フォルスは発作が治まるとすぐにAGE-2Xの元に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 発作が治まり、AGE-2Xの置かれている格納庫に到着するも、AGE-2Xを奪還すると言う可能性は当然ながら読まれており、格納庫には兵士が待ち構えていた。

 フォルスは兵士からの銃撃を防ぐ為、格納庫のコンテナの影に隠れている。

 フォルスの位置からAGE-2Xまでの距離はそれなりにあり、兵士からの銃撃をかわしながらAGE-2Xまで辿りつく事は難しく、そこから機体に乗り込む事は更に難しい。

 だが、発作が起きた以上、フォルスには余り時間の余裕がなかった。

 

「ガンダムまでもうすぐなんだがな……仕方がない」

 

 フォルスがそう言うと無人である筈にAGE-2Xのシステムが起動する。

 そして、スラスターを最大出力で使い、機体を固定していたアームを破壊して、自由となる。

 だが、脚部はすでに破壊されている為、そのまま機体は格納庫にうつ伏せに倒れるが、それによってフォルスが機体をよじ登る手間を省く事が出来た。

 これはオリジナルには搭載されていない機能の一つだ。

 AGE-2XはフォルスのXラウンダー能力によって機体を遠隔で操作する事が可能になっている。

 しかし、それのコントロールは非常に面倒でフォルスが直接視界に入れて使わなければとてもじゃないが、まともに動かす事は出来ず、実際に機体に乗り込んで操縦した方が圧倒的に楽である為、この機能を実際に使う事はなかったが、今回ばかりは役になった。

 この機能のお陰でフォルスはAGE-2Xの位置をある程度は把握出来る。

 

「行くか」

 

 AGE-2Xが格納庫で倒れ込んだ事で兵士達をどかした為、フォルスはAGE-2Xに急ぐが、格納庫に銃声が鳴り響く。

 フォルスはとっさに近くのコンテナの影に隠れる。

 

「残念だったわね。Xラウンダー」

 

 そこには、銃を構えるインウィディアの姿がある。

 それを確認したフォルスは内心舌打ちをする。

 相手が普通の兵士が一人なら、実力行使で十分に突破は可能だが、インウィディアは強化Xラウンダーである事は先ほど閲覧したデータに記されていた。

 強化XラウンダーはXラウンダー能力だけでなく、身体能力も強化されている為、相手が女でも油断は出来ない。

 その上、フォルスは万全の状態とは言い難い為、出来ればまともに戦いたくはない相手だ。

 

「最後に厄介な奴が出て来たか……」

「いい加減に出てきたら?」

 

 フォルスはインウィディアの言葉を無視して、打開策を練る。

 

「お前……強化Xラウンダーとやらだな」

「良く知っているわね」

「まぁな……だが、滑稽だな」

 

 フォルスは閲覧したインウィディアのデータからある策を練り実行する。

 

「何が言いたいの?」

「Xラウンダー能力を持たない強化Xラウンダーは実に滑稽だとは思わないかい?」

 

 フォルスはいつもの口調にでそう言う。

 そう言われたインウィディアが少し反応した事をフォルスは見逃さなかった。

 それと同時にフォルスの策が通用するとほぼ確信が出来た。

 

「ねぇ……知っているかい? かつて連邦軍の特別技術開発研究所の局長、クライド・アスノが設計したMSの中にレヴィアタンと言うMSがあるってさ。そのMSは対Xラウンダー用のMSとして設計されたけど、面白い欠陥があるんだよね」

「欠陥?」

 

 自身の搭乗機の名前を名指しで言われ、自分も知らない欠陥があると指摘された事でインウィディアは少なからず、フォルスの言葉に興味を持ちだすが依然として警戒を緩める事はない。

 

「そう。対Xラウンダー用のシステム、アンチXラウンダーシステム、通称AXシステム。そのシステムの欠点は効果範囲内の全てのXラウンダーに影響を及ぼすんだよね。そのせいで戦場の友軍機に乗るXラウンダーにも影響を与えてしまう」

 

 その事はインウィディアも知っている。

 

「それ以上の欠陥……それはXラウンダーが乗る事が出来ないって事なんだよね。対象を選ぶ事が出来ないから、友軍のXラウンダーは効果範囲内から出れば良い。だけど、機体に乗っているパイロットは逃げようがない。そのせいでレヴィアタンにはXラウンダーは乗れないと言う欠点があるんだよ」

 

 フォルスの言う通り、レヴィアタンにはXラウンダーは乗れない。

 厳密には乗れない訳ではないが、AXシステムの影響を一番受けて効果範囲から出ようがないのがパイロットである為、レヴィアタンのパイロットはXラウンダーで無い事が望ましい。

 これは欠陥と言うよりも、設計者のクライドが意図的に行った機体の仕様であった。

 レヴィアタンとは七つの大罪の内、嫉妬を司る悪魔だ。

 その為、強い力を持つXラウンダーに影響を与えるシステムを搭載した。

 そして、そのシステムを使う為には力を持たない非Xラウンダーでなければ扱えないようにしていた。

 

「けど、おかしいよね? さっき見たデータではレヴィアタンのパイロットも強化Xラウンダーの筈……でもレヴィアタンにはXラウンダーは乗れない。それなのにパイロットは強化Xラウンダー……矛盾しているよね?」

 

 フォルスがそこまで言うとフォルスの言葉を遮る様にインウィディアが銃を撃つがコンテナに当たる。

 その反応から、フォルスは自分の仮説が正しい事を確信する。

 

「ひょっとしてさ……レヴィアタンのパイロットの強化XラウンダーってXラウンダー能力が使えないんじゃないの?」

「うるさい!」

 

 フォルスの言葉が引き金となり、インウィディアは叫ぶ。

 それは完全に図星であった。

 インウィディアは強化Xラウンダーでありながら、他の強化Xラウンダーとは違い意図的にXラウンダー能力を使えないようにされている。

 万が一にもXラウンダー能力に目覚めてしまえばレヴィアタンのAXシステムを使う事が出来なくなるからだ。

 その為、インウィディアは強化Xラウンダーとは名ばかりの強化人間でしかない。

 フォルスの言葉はXラウンダー能力を持たないインウィディアのコンプレックスを刺激した。

 その事を確認しながらも、フォルスは続ける。

 

「ほんと、可哀そうだよね。強くする為の強化でXラウンダー能力を使えなくされてさ、ボクには理解出来ないね。ボクは人より優れているからね」

「黙れ! 黙れ! 黙れ!」

 

 インウィディアが半ば半狂乱となり、フォルスは詰めに入る。

 

「まぁ、嫉妬を司る悪魔の名を持つMSのパイロットは力を持つ者に嫉妬する力の無い人間がお似合いと言うクライド・アスノのメッセージなのかも知れないね。君さ、昔彼の部下だったんだろ? その辺りの事は詳しそうだからどうなんだい? ボクの仮説は正しかったりするのかな?」

「うるさぁぁぁい!」

 

 フォルスにそう言われてインウィディアは思わず、思いだしてしまう特件に居た頃、インウィディアにとってクライドはあらゆる力を持っていた為、憎悪の対象であった。

 そして、クライドが設計したレヴィアタンがフォルスの言う様な意味が込められている事はクライドを見ていればあり得ない事だとすぞうが付く。

 インウィディアが叫ぶのと同時にフォルスはコンテナの影から飛びてて、奪った装備の中で一番小さい銃をインウィディアに投げつける。

 インウィディアはとっさに腕で防ぐがその隙に、フォルスは全力でAGE-2Xに走る。

 それに気がついたインウィディアは走るフォルスに銃を撃つが、フォルスの挑発で冷静さを失っているインウィディアでは当てる事が出来ない。

 フォルスはそのままAGE-2Xのコックピットに飛び込むとすぐにハッチを締める。

 

「何とか上手くいったな……」

 

 フォルスはAGE-2Xに乗り込むとコックピット内に常備していたピルケースを取り出す。

 ピルケースを収納している場所はオリジナルにはない上に機体が稼働していない状態ではロックがかけられている為、機体を調べたUIEに

 

見つかる事はなかった。

 フォルスはピルケースから錠剤を数粒取り出すとすぐに飲み込む。

 

「フゥ……」

 

 錠剤を飲んでフォルスは一息つく。

 錠剤を飲んだ事で暫くは発作が起こる事はないからだ。

 フォルスが出撃前や度々服用している錠剤こそがフォルスの人間離れした肉体を維持する生命線であった。

 

「さて……武器は当然外されているか」

 

 フォルスは錠剤を飲んですぐに機体の状態を確認する。

 戦闘で右腕をハイパードッズライフルごと破損しており、今は肘から下がない状態で両足も失っている為、歩く事も出来ない。

 バックパックのスラスターは無事である為、それで移動する事は可能だ。

 武器は腕ごとハイパードッズライフルを失い、ビームサーベルは外されている。

 その為、使える武装と言えばストライダー形態時で使うビームバルカンのみだが、今の状況ではストライダー形態に変形する事も出来ないので実質的には武器は何も持っておらず、自力では殆ど動けない状態になる。

 

「どうしたものか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォルスがドレッドノート内で牢から脱走している頃、外での戦闘はUIEは更にナイトルーパー改を投入している。

 その殆どがARISUシステムで制御されている無人機である為、脱走したフォルスの捜索に人員を裂く為にパイロットが不要なナイトルーパー改を次々と投入している。

 

「くそ! どれだけ出て来るんだよ!」

 

 プロト3はシグマシスライフルを放つ。

 その一撃でナイトルーパー改を数機同時に撃墜する。

 だが、シグマシスライフルの砲撃の隙を付いてナイトルーパー改がロングビームサーベルを抜いて接近しようとするが、ライルのジェノアスキャノンⅡがドッズキャノンで牽制して、シグマシスライフルでナイトルーパーを撃墜する。

 

「まだ来やがる!」

 

 プロト3は更に迫って来るナイトルーパー改にシグマシスライフルを放ち、ジェノアスキャノンⅡもミサイルを放ちドッズキャノンとドッズライフルを放つ。

 

「どいてろ!」

 

 二機の後方からキースのGバウンサーがミサイルを一斉掃射して残弾がゼロになったミサイルポッドをパージして、二機よりも前に出て、ハイパー・バズーカを残弾が尽きるまで撃ち尽くす。

 ハイパー・バズーカの残弾が尽きると近くのナイトルーパー改に投げつけて、右腕にシュトゥムファウストを撃ちこんで破壊すると、腰に装備されていたドッズライフルを持つ。

 Gバウンサーは脚部のドッズガトリング砲を連射しながら、ドッズライフルを放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 Gファングはハイパードッズライフルを放つが、戦闘開始当初より明らかに命中精度が落ちている。

 Gファングの攻撃をかわしていたナイトルーパー改をダークハウンドがドッズランサーで貫く。

 

「隊長も若くないんですから、余り無茶はしない方が良いですよ」

「若い奴に譲る気はねぇな!」

 

 Gファングはシールドのビームソードでナイトルーパー改を切り裂き、ハイパードッズライフルを放つ。

 ウルフも歳のせいで若い頃よりも体力は落ちているが、それでも蝙蝠退治戦役から戦場で戦果を上げているウルフの技量でカバーする事が出来ている。

 

「隊長、何か接近してますね」

「ああ……一機だと? どこのMSだ?」

 

 アセムとウルフは戦闘宙域に接近する機影を補足している。

 数は一機だが、単独行動をしているアキラではない事は間違いない。

 

「アイツ……この前の奴か?」

「ゼイドラ……まさか……」

 

 それはメナスから出撃して来たスラッシュのゼイドラであった。

 ゼイドラは戦闘宙域に到着するとゼイドラガンを放ちナイトルーパー改に攻撃する。

 ナイトルーパー改がロングビームサーベルで切りかかり、ゼイドラはゼイドラソードで受け止めると、ナイトルーパー改を蹴り飛ばしてビームバスターを撃ちこむ。

 

「どう言う事だ? この前は俺達に仕掛けて来て今回はUIEに仕掛けるのか?」

「あの動き……ゼハートじゃないのか?」

 

 ウルフは前に攻撃を受けている為、今回はこちらには見向きもしないでUIEに攻撃を仕掛けた事を気にするが、アセムはゼイドラの動きはかつて、自分が対峙した時とは違う事から、ゼイドラに乗っているパイロットはゼハートでは無いと判断する。

 

「どうします? 隊長」

「敵は一機だ。注意はするに越したことはないが、攻撃を受けるまで無視で構わないだろ」

 

 スラッシュの思惑を二人は知らないが、明確に敵対する意思が見られない以上は無視して少しでも敵の数の減らす為に利用した方が良いのでウルフとアセムはゼイドラを無視して戦闘を継続する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホワイトファングとビシディアンが陽動の為の攻撃を開始している頃、アキラのクランシェは単独でドレッドノートに接近していた。

 今回の戦闘ではアキラのクランシェはマッドーナ工房製のオプションユニットである大型ブースターを装備している。

 飛行形態でのみ装備可能でブースターとカーフミサイルが内蔵しているミサイルポッドが搭載されている。

 それによって通常のクランシェとは段違いの機動性能を持つが、その半面追加のユニットがクランシェの可変機構に干渉している為、ユニットを装備している状態ではMS形態に変形が出来ないので格闘能力は皆無となる。

 その為、MS形態での格闘戦やMS形態と飛行形態の二つの形態を使った不規則な攻撃が出来ない事もあり、軍では全くと言って良いほど使われる事はないが、今回の作戦ではその高い機動力が必要と言う事もあり、クランシェに装備している。

 陽動のお陰でドレッドノートの周囲のMS隊は殆どが陽動に向かい、クランシェは敵に見つかる事なく接近する事が出来た。

 

「これだけ接近すれば……」

 

 クランシェはカーフミサイルを一斉掃射して、ドレッドノートに攻撃する。

 そのカーフミサイルはドレッドノートの迎撃システムに迎撃されるが、全弾が迎撃された訳ではなく、何発かはドレッドノートに命中して、内部に侵入出来る程の穴がドレッドノートに開いた。

 

「あそこから侵入出来そうね」

 

 穴の大きさがクランシェが内部に入れるだけの大きさがある事を確認すると追加ブースターのハイパーブーストを使う。

 ハイパーブーストはマッドーナ工房で改修されたダークハウンドに追加された機能で飛行形態時の推進力を飛躍的に向上させる。

 それによって一気に加速したクランシェは開けた穴に向かい、ハイパーブーストを使用した事によりオーバーヒートを起こしかけているブースターなどの追加ユニットをパージすると、MS形態に変形して穴に突っ込み、隔壁をドッズライフルでぶち抜いて内部に突入した。

 いくつかの隔壁を突破して行くとクランシェは格納庫に出る。

 そこにはフォルスのAGE-2Xが格納庫にうつ伏せで倒れている状態になっていた。

 

「フォルス?」

「その声……アキラか」

 

 アキラはAGE-2Xに通信を繋ぐとフォルスが応答する。

 それにより、作戦の一番の問題点がクリアされた事になる。

 

「無事ならここから離脱するわよ」

「悪いがそとまで連れて行って欲しいんだけど」

 

 状況的に歩く事が出来ないのが明白である為、アキラも文句を言わずにAGE-2Xを抱えてドレッドノートの外に出る。

 外に出ると、フォルスの脱走や伏兵の強襲で逃げられる事を予想してい為、ナイトルーパー改が待ち構えていた。

 

「待ち伏せされていたようね」

「突破するしかないようだね。こっちは武器がないから、サーベルかライフルを貸してくれるとありがたいんだけどね」

 

 敵に鹵獲された以上、武器を外される事も当然なので、アキラはシールドに装備されていたビームサーベルを渡して、AGE-2Xから離れる。

 

「足を引っ張らないでよ」

「サーベル一本あれば、この程度は問題ではないよ」

 

 AGE-2Xはビームサーベルを展開してナイトルーパー改に接近する。

 ナイトルーパー改もドッズバズーカで応戦するが、AGE-2Xはかわしてビームサーベルで切り裂く。

 アキラのクランシェも飛行形態に変形して、ビームバルカンで牽制しつつ、接近しMS形態に変形して左腕の固定式のビームサーベルでナイトルーパー改を切り裂き、ドッズライフルでナイトルーパー改を落とす。

 

「武器がビームサーベルだけと言うのは少々面倒だね。それに機体が損傷しているからバランスが悪い……アキラ、悪いけどホワイトファングまで頼むよ」

 

 AGE-2Xはクランシェの近くに寄って行く。

 クランシェは飛行形態に変形すると、AGE-2Xの方に向かい、AGE-2Xはクランシェを掴むとクランシェはホワイトファングの方に向かっていく。

 

「ホワイトファング。聞こえるかい?」

 

 フォルスはホワイトファングに向かう道中でホワイトファングに通信を繋ぐ。

 

「フォルス! 無事だったのね!」

 

 ラウラはフォルスからの通信で戦闘中にも関わらず、歓喜の声を上げて思わず艦長席から立ちあがってしまう。

 その喜びによってモニターの向こうのフォルスが未だに女の姿である事に違和感を覚える事はなかった。

 

「ラウラ? 艦長はどうしたんだい?」

「MSで出ているわ」

「MSって……あの人も少しは歳を考えた方が良いのに……まぁ、年寄りの事はどうでも良いか。それよりもボクのAGE-2Xの換装パーツはあるかい?」

「ダブルバレットは積んで来ているわ」

 

 マッドーナ工房で積み込んだのはGファングや武器、弾薬だけでなくAGE-2Xの換装パーツとしてダブルバレットのウェアも積み込んでいた。

 

「それをすぐに射出して」

「でも、貴方を回収して離脱する手筈よ」

「関係ないよ。ボクとしても借りを返しておきたいからね」

 

 この戦闘の目的はフォルスの救出だ。

 すでにフォルスはドレッドノートから離脱している為、後はフォルスを回収して宙域から離脱するだけだ。

 敵もフォルスを逃がした事で更に戦力を投入して来る為、その前に離脱しておきたい。

 だが、フォルスはそんな事よりもやらなければならない事があった。 

 その為にも別のウェアに換装する必要がある。

 

「……分かったわ」

 

 ラウラも少し考えるが結論を出す。

 フォルスが何をするかは分からないが、換装しなくても行きそうであるので今の状況で行かせるくらいならば、ダブルバレットに換装させた方が良い。

 その後、すぐにホワイトファングからダブルバレットのウェアの射出準備が開始されて程なくダブルバレットのウェアがホワイトファンうより射出される。

 

「来たか……援護は任せたよ。アキラ」

「分かってるわよ」

 

 AGE-2Xはクランシェから離れると射出されたダブルバレットのウェアに換装に向かい、クランシェは反転して追撃のMSを抑える。

 そして、AGE-2Xはノーマルウェアからダブルバレットに換装する。

 AGE-2XDBはストライダー形態に変形すると、ドレッドノートの方に戻っていく。

 

「どこに行くつもり?」

「借りを返して来るよ」

 

 フォルスはそう言って通信を閉じる。

 アキラもフォルスの後を追いたいが、ナイトルーパー改の相手をしている為、AGE-2XDBとの距離が離れて行く。

 

「そろそろ、私を捕まえに来るんだろ」

 

 AGE-2XDBはツインドッズライフルでナイトルーパー改を撃墜すると、MS形態となりツインドッズライフルを手持ちのドッズライフルにして放ち、両肩の大型ビームサーベルで周囲のナイトルーパー改を一掃する。

 すると、三方向からビームが放たれてAGE-2XDBはかわす。

 

「来たか……」

 

 モニターにはインウィディアのレヴィアタンが映されている。

 フォルスはレヴィアタンが出て来る事を待っていた。

 AGE-2XDBはレヴィアタンの方に向かっていく。

 

「待っていたぞ」

「殺してやるわよ!」

 

 レヴィアタンはビームソードを展開して、AGE-2XDBに切りかかり、AGE-2XDBはかわしてドッズライフルを放つが、レヴィアタンは肩のシールドで防いでビームキャノンを放つ。

 

「Xラウンダーなんか!」

 

 レヴィアタンはAXシステムを起動させると、フォルスに頭痛が襲う。

 レヴィアタンは腕を切り離して、AGE-2XDBを二方向から狙うがAGE-2XDBはかわして、ドッズライフルで腕の一つ撃ち落として肩のビームサーベルでもう片方の腕を切り裂く。

 そして、AGE-2XDBはレヴィアタンの方に向かい、カーフミサイルを放つ。

 

「どう言う事なのよ! システムは機能している筈!」

 

 レヴィアタンはビームキャノンを連射して、カーフミサイルの迎撃と同時にAGE-2XDBを攻撃するも、AGE-2XDBの動きは殆ど変わらない。

 AXシステムは確かに機能しているが、AGE-2XDBにはそんな事が関係ないかのように攻撃をかわしている。

 

「冥土の土産に良い事を教えておく。AXシステムは確かにXラウンダーに対しては有効な装備だ」

 

 AGE-2XDBはレヴィアタンに接近すると、肩のビームサーベルの出力を最大で使い、レヴィアタンの肩のシールドの一つを切り裂いて、レヴィアタンの頭部を蹴り飛ばす。

 レヴィアタンは蹴り飛ばされながらもビームキャノンを放つが、AGE-2XDBには当たらない。

 

「だが、対処法があるんだよ」

 

 AGE-2XDBはドッズライフルを放ち、レヴィアタンも避けようともするが、足に被弾してバランスを崩す。

 

「Xラウンダーが!」

「それは……我慢すれば良い」

 

 AXシステムはXラウンダーに効果的なシステムだが、その威力はXラウンダーに頭痛を与えるなどが限界でそれによって動きを鈍らせてから倒すしかない。

 その為、Xラウンダーがその頭痛を我慢してしまえば大した意味はないのだった。

 強引だが、実際にAXシステムを使ってもフォルスのAGE-2XDBの動きに変化がない事が何よりの証明となっている。

 

「結局のところ、力の無い奴が力を持っている奴に嫉妬しているだけでは追い越すのも、追いつく事すら出来ないと言う事だ」

 

 AGE-2XDBはビームサーベルでレヴィアタンの残っているシールドごと、頭部を切り裂く。

 

「所詮、お前は私の足元にも及ばない強化人間なんだよ」

「ふざけるな! 私は……私は!」

 

 レヴィアタンのビームキャノンをかわしたAGE-2XDBはレヴィアタンにドッズライフルを放つ。

 

「Xラウンダーなんかに!」

「Xラウンダーにこだわった事がお前の敗因と言いたいが、私と対峙した事がお前の敗因だ」

 

 レヴィアタンはドッズライフルの直撃を受けて次々と機体が破壊されていく。

 

「私は最強で最強でなければならない。だから、例え任務の為だろうと負けたままでいる事を私は我慢が出来ない!」

「私は……Xラウンダーなんかに……」

 

 AGE-2XDBのドッズライフルで機体がボロボロに破壊されて、レヴィアタンは爆散する。

 それを確認したフォルスは機体をストライダー形態に変形させて、ホワイトファングに方に向かう。

 

「ボクの方も終わったから帰るよ」

「誰の為にここまで来たと思ってんだ……まぁ良い。ラウラ!」

 

 助けに来た友軍に対しても余りにもいつも通りのフォルスにウルフは怒りを通り越して呆れるが、今はそんな事をしている暇はない。

 

「了解です! フォトンブラスターの掃射後、回頭して高速巡航形態に変形し、現宙域を離脱します!」

 

 フォルスが無事離脱出来た為、すでにチャージを終えていたフォトンブラスターキャノンの発射準備に入る。

 ドレッドノートとは距離がある為、フォトンブラスターキャノンでは有効的な攻撃は出来ないが、その一撃で敵の数を減らす事は可能だ。

 掃射準備を終えたホワイトファングはフォトンブラスターキャノンを放つ。

 放たれたフォトンブラスターキャノンは射線上のナイトルーパー改を破壊して行く。

 掃射が終わるとホワイトファングは回頭して、強襲揚陸モードから高速巡航モードへと変形する。

 それに合わせてバロノークも回頭して、宙域に煙幕弾をばら撒いてホワイトファングと共に後退して行く。

 

「撤退? ガンダムを回収したのか?」

 

 ホワイトファングとバロノークの撤退からスラッシュはフォルスを回収したと判断する。

 ゼイドラはビームバルカンを放ちつつ、後退して行く。

 ホワイトファングとバロノークが撤退して行くが、フォルスがドレッドノート内で暴れたり、フェオドールが負傷した事もあってUIEはこれ以上の追撃は出来ずに二隻の撤退を許してしまった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。