機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第73話

宇宙海賊ビシディアンを別れたホワイトファングはUIEやヴェイガンと遭遇する事なく、ノートラムへと航海を続けている。

 ビシディアンと別れた後は敵の襲撃に備えて、警戒態勢を取っていたが、周囲に敵影を確認出来ない為、今は通常体勢での警戒になっている。

 

「これでボクの20連勝だね」

 

 ホワイトファングのシミュレーションルームではアキラがフォルスにシミュレーションでの模擬戦に挑むがすでに20回もフォルスに敗北している。

 

「もう一度よ」

「またかい?」

 

 すでに数時間も相手をしている為、フォルスもそろそろ飽きて来ている。

 だからと言ってアキラが諦めてくれるとは思えない。

 

「一先ず、休憩をしたらどうだ? 今のはアキラの動きが鈍くなってたぞ」

 

 シミュレーションを見ていたキースが助け舟を出すが、アキラはキースを思い切り睨みつける。

 疲れのせいで操縦が鈍くなっている事はアキラも自覚している。

 だが、同じ時間だけシミュレーションをしているフォルスが顔色一つ変えずにシミュレーションを行っている為、アキラも引くに引けない。

 ここで疲れを理由に休憩を入れてしまえば、フォルスに負けを認める事も同然だったからだ。

 すると、シミュレーションルームにラウラが顔を出す。

 

「フォルス。そろそろ偵察に出る時間よ。準備が出来たら出てね」

 

 ラウラはフォルスに要件だけを伝えるとそそくさと行ってしまう。

 その上、フォルスの事をまともに見る事なく、一方的に要件を伝えるだけだ。

 フォルスはそんなラウラの態度にキョトンとしており、それを見たキースは流石に呆れる。

 フォルスの性別を知り、キース達も衝撃を受けているが、一番衝撃を受けたのはラウラであろう。

 ラウラはフォルスをあからさまに贔屓していて、フォルスに好意を持っていた事は誰の目からも明らかであったが、そのフォルスが男ではなく女である事を知ったのだ無理はない。

 フォルスにとっては自分の性別を隠す事に大した意味はなく、ばれても良くばれた以上はあの格好をする気はないので今は着替えがない事もあってパイロットスーツを着た状態でパイロットスーツの胸元を開けた状態で髪も下している為、女にしか見えない。

 いつもつけていたゴーグル型のサングラスは今も着用しているが、ラウラにはフォルスが女であると言う事実を直視出来ないでいる。

 だが、当のフォルスはその辺りの人の気持ちに疎い為、ラウラの言動を理解出来ずにいた。

 

「まぁ良いか。聞いての通りだよ。アキラ。ボクはこれから偵察に出るからシミュレーションはここまで」

 

 アキラも偵察の重要性は理解出来ている為、文句は言えない。

 アキラが文句を言えない事を確認したフォルスは偵察に出る。

 

 

 

 

 

 

 フォルスはクリフォードを連れて偵察に出る。

 ホワイトファングのレーダーに敵影が映されていない為、周囲に敵や宇宙船がいない事は確認済みではあるが、ヴェイガンの見えざる傘のようなステルスシステムやデブリにMSが紛れている可能性などが考えられる以上、定期的に偵察のMSを出す必要がある。

 その時にフォルスはXラウンダー能力を持っている為、ステルスシステムを使おうとも感知する事が出来るもあり偵察に出される事が多い。

 その上でMSの搭乗経験や戦闘経験などがパイロットの中で一番低い、クリフォードも操縦訓練も兼ねてフォルスについて行かされる事が多くなっている。

 そのお陰でクリフォードもプロト3の操縦はある程度は様になって来ている。

 

「フォルスさん、こっちのレーダーに反応はありませんけど、どうですか?」

「んー……なにも感じないから周囲に敵影は無しだね」

 

 プロト3のレーダーに反応もなく、フォルスのXラウンダー能力でもなにも感知出来ないと言う事は周囲に隠れている敵はいないと言う事だ。

 周囲の安全を確認して、ホワイトファングに帰投しようとするが、不意にプロト3が変な方向に飛んでいく。

 その軌道はプロト3のスラスターの向きとはまるで違う為、傍からはなにが起きているのか理解は出来ないだろう。

 

「クリフォード、キャロル。なにをしてるんだい?」

「分かりません! AGEドライヴの出力が落ちて……システムがハッキングを受けてる!」

「くそ! どうなってんだよ! 機体が言う事を聞かない!」

 

 プロト3は制御が出来ない状態で尚且つAGEドライヴの出力が落ちているらしい。

 その上、機体のシステムがハッキングを受けているらしく、確実に何者かによる攻撃と見ても良い。

 フォルスはすぐに周囲をXラウンダー能力で感知する。

 プロト3にハッキングを仕掛けるのであれば、差ほど遠くからは仕掛けてはいない筈だ。

 すると、フォルスは何かを感じ取る。

 

「成程ね。全く、シドを出すなんてせっかちなんだからさ……」

 

 フォルスは事態を理解する。

 プロト3はシドによって捕まっている状態にあった。

 プロト3の周囲に何もいないのは、シドにはヴェイガンも使っている見えざる傘を搭載して展開している為、肉眼では捉える事が出来ないので、プロト3はひとりでに動いて見える。

 今までフォルスが感知出来なかったのはシドは無人機である為、Xラウンダー能力では感知しきれずにいたが、本気で感知した事によってプロト3をシドが運んでいる事が感知出来た。

 それと同時に自分の成すべき事もフォルスは理解する。

 

「仕方がないね」

 

 AGE-2XDBはストライダー形態に変形してプロト3を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 プロト3はシドに連れられて近くの小惑星帯にまで来ると急にその動きが止まる。

 その後方からストライダー形態のAGE-2XDBが追いついてMS形態に変形する。

 

「大丈夫かい?」

「機体が動かなねぇ……」

 

 クリフォードが操縦桿を動かすもプロト3は全く反応しない。

 辛うじてサブ動力で通信機能や機体の生命維持機能が使える程度だ。

 

「機体のシステムが完全にダウンしてるみたい」

「そうか……」

 

 シドがここまで連れて来た理由はフォルスも分かっている。

 そして、状況は整えられている。

 

「丁度良かった。この近くにボクの隠れ家の一つがあるから。そこまで行こうか」

「隠れ家?」

「そう。そこにはMSを修理する為の機材も部品も揃っているからね」

 

 この小惑星帯にはクライドの所有しているラボがある。

 恐らく、シドがここまでプロト3を連れて来たのはそこにプロト3を持ってこさせる為だろう。

 わざわざ、フォルスにそうさせたのはパイロットのクリフォードとキャロルに不信感を持たせないためだ。

 

「そうね……お願い」

 

 原因が不明で外部からハッキングを受けた以上、敵の攻撃を受ける危険性がある為、今は安全な場所で機体を直す必要がある。

 AGE-2XDBはプロト3を連れてラボの隠されてる小惑星を目指す。

 

 

 

 

 

 

 プロト3を連れたAGE-2XDBが接近すると、小惑星の一つが動き、中に入る事が出来るようになる。

 AGE-2XDBはその小惑星にプロト3と共に入る。

 

「小惑星にこんな仕掛けが……」

「ついたよ」

 

 AGE-2XDBはプロト3を小惑星の中に入ってすぐの格納庫に置くとフォルスは機体から降りる。

 それに続いてクリフォードもキャロルも機体から降りる。

 

「ようこそ、私のラボに」

「ただいま。ドクター」

 

 フォルス達が機体から降りるとドクターCこと、クライドが三人を出迎える。

 

「ドクター?」

「そう。ドクターCとは私の事だ」

 

 キャロルもドクターCの事は知っている。

 バロノークでフォルスが話したフォルスがドクターCの指示で動いている事や、そのドクターCがキャロルの祖父のクライドである事は知らないが、ドクターCが高い技術力を持った技術者でその素性に関しては一切の情報が出回っていない事は知っている。

 

「ドクター、あのMSのシステムがハックされてね。直して欲しいんだけど」

「それは大変だ。それに他でもないフォルスの頼みだ。引き受けよう」

「良いんですか?」

「無論だとも。緊急時は助けあわないとな」

 

 クライドはそう言い、フォルスは顔にこそ出さないが内心では感心している。

 恐らくはここまでの事はクライドの立てた筋書き通りなのだろう。

 

「君たちもここで休んで行きたまえ。と言っても余りラボをウロウロさせる訳にはいかないけどね。フォルス、案内してあげなさい」

「私も手伝います」

 

 プロト3の開発責任者であるキャロルはプロト3の修理を手伝い、クリフォードはフォルスにラボの中に案内される。

 

 

 

 

 

 

 

「すげえぇな……秘密基地かよ」

 

 ラボの中に案内されたクリフォードはフォルスに一つの部屋に案内される。

 そこはホワイトファングや戦艦に大抵は付いているパイロットの待機用のアラートに似ている。

 部屋の壁の一面がガラス張りになっている為、そこから格納庫の様子が見える。

 すでに、プロト3とAGE-2XDBがハンガーに固定されており、小さいがクライドとキャロルが修理の事を話合っているのが見える。

 フォルスはクリフォードを部屋で待つ様に言ってどこかに行ってしまった為、部屋にはクリフォード一人で何となく、格納庫を眺めている。

 

「待たせたね」

「ああって……」

 

 フォルスが戻って来た為、クリフォードはフォルスの方を見ると一瞬つまる。

 フォルスは先ほどのパイロットスーツではなく、ノースリーブのジャケットにミニスカートにブーツとグローブと言った動きやすさを重視した格好をしており、お気に入りなのか、ゴーグル型のサングラスを付けている。

 

「どうかしたのかい?」

「何でも無い……」

 

 クリフォードはフォルスの私服姿に一瞬、見とれるが慌てて視線を反らす。

 一方のフォルスはそんなクリフォードにお構いなしに格納庫の様子を覗きこむ。

 

「プロト3の修理を始めるみたいだね」

「そうだな。俺達にはなにも出来る事はなさそうだけどな」

 

 クリフォードはそう言うと、それ以上話が続かず沈黙だけが流れる。

 その空気にクリフォードは耐える事は出来ないが、だからと言って勝手に出歩く事も出来ない為、何か話題を探す。

 

「なぁ、あのドクターCって何者なんだよ。こんな物を持っていたりしてさ……」

 

 ドクターCの名は技術関係が軍関係の人間の間では知名度は高いが、ついこの間まで民間人だったクリフォードには馴染みがない。

 だが、小惑星を改造してここまでの設備を持っているクライドが只者で無い事は分かる。

 

「そうだね……ボクの父に当たる人かな?」

「父親って……」

 

 クライドは見た感じだと相当な歳で老人と言っても良い歳だ。

 フォルスとの歳の差は父と娘と言うとりも祖父と孫娘に近いと思ったが、以前にフォルスの歳が30近いと聞かされていた為、その話しが本当ならば、二人が親子であると言うのも何とか納得も出来る。

 だが、クリフォードの想像している父とフォルスの言う父は違っていた。

 クリフォードの想像する父は一般的な父親であるが、フォルスの言う父と言うのはクライドが自分を作った人だから父と称していた。

 

「そんなに意外かい? まぁ、ボクも見た目通りの歳と言う訳でもないからね。色々とあるんだよ。ボクにもね」

「そっか……」

 

 フォルスは遠回しに自分が普通の人間でなく、外見と歳が一致していない事を言うが、クリフォードはそれをフォルスが見た目以上の歳で父と言うクライドをドクターと呼ぶことなどから、フォルスにもいろいろな事情がある解釈する。

 人にはいろいろと他人には言えない事情がある事は、クリフォードにもある為、それ以上は深くフォルスに聞く事はしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォルスとクリフォードが話している頃、格納庫ではクライドとキャロルがプロト3の修理の準備を始めている。

 

「OSの方は修正すれば何とかなりそうですけど……問題はAGEドライヴの方ですね」

「それなら何とか出来そうだな」

「本当ですか!」

 

 プロト3を直す上で一番のネックはAGEドライヴだった。

 AGEドライヴはオーバーテクノロジーの塊である為、連邦軍では扱い切れなかった為、ガンダムZERO Ⅲαから取り外されてフリットの手に渡ったが、フリットやマッドーナ工房の技術者でもAGEドライヴの解析は殆ど出来てはいない。

 その為、AGEドライヴが起動出来ない状態を直すのは非常に困難だとキャロルは踏んでいた。

 しかし、クライドは完全にではないにしろ、AGEドライヴに関しては右に出る者はいない。

 尤も、AGEドライヴの機能停止はクライドの指示でシドが行った物であるのでそれを直すのも容易ではあった。

 だが、その事実を知る良しもないキャロルは噂に違わないドクターCの技術力に驚くばかりだ。

「それにしてもこのMS……良く出来ているな。流石、フリット・アスノと言うところか」

 

 クライドはプロト3のデータを見てそう言う。

 プロト3には光波推進システムのようにヴェイガン側の技術やクライドがMSに実装したフォトンブラスターライフルの技術を応用された新技術や、AGEシステムが導き出した質量装甲や疑似斥力システムなどの技術も余すところなく導入されMSとしては非常に高い完成度を誇っている。

 

「これでプロトタイプと言うのだ、完成した機体は相当な性能になるだろうな」

 

 プロト3はその名の通りAGE-2に続く新たなガンダムのプロトタイプだ。

 その実戦データを元に更に改良を加えられるとなると、従来のMSとは性能は大きく異なる事は明白だ。

 クライドは23年も合わない間にフリットが更に技術者としての腕を上げた事を確認すると同じ技術者として対抗意識を燃やしている。

 

「それに動力炉が素晴らしい」

「そのAGEドライヴは私の死んだお爺ちゃんが研究したいた物なんです。クライド・アスノって言うんですけど知っていますか?」

「無論だとも、私は彼以上の技術者を知らないな」

 

 キャロルは一度も合った事がないが、技術者としては一流の腕を持っていたクライドの事を褒められてうれしいが、その様子をドクターCの正体を知る者が見れば非常に滑稽だろう。

 なぜならば、ドクターCこそがそのクライド・アスノで今の発言は自分で自分以上の技術者を知らないと言っているからであった。

 

「話を戻すがこのAGEドライヴとやらを直す過程で出力が安定させる事も出来るかも知れんな」

 

 キャロルはまた、驚きそうになるが今更驚く事でもない為、驚く事を堪える。

 

「何から何まで助かります」

「気にするな。私も久々に面白い仕事が出来たからな」

 

 クライドはそう言って作業を進める。

 

 

 

 

 

 

 プロト3とAGE-2XDBが予定していた時間を過ぎても連絡も無しに帰投しない為、ホワイトファングはアキラのクランシェを捜索に出すが、なにも情報を得る事がなくアキラはホワイトファングに帰投していた。

 

「消息を絶った宙域を捜索しましたけど、なにもありませんでした。戦闘の形跡すらも……」

 

 戦闘が起きれば少なからず残骸などの痕跡が残るが、それすらも残されていないとなると、戦闘以外の理由で二機は消息を絶ったと考えられる。

「たく……次から次へと……似せてんのは性格だけにして欲しいぞ……全く」

 

 ウルフはまたフォルスが問題を起こした事にそう言う。

 バロノークで自分の人格はクライドを模していると言っていたが、やたらと問題を起こしては周りを巻き込むところまでも似せる事に若干の苛立ちを覚えている。

 

「どうします。艦長?」

「探すしかないだろ」

 

 ラウラはフォルスが少し前にもUIEに捕まっている為、今度は取り乱すことなく次の事を考える余裕は残っている。

 ウルフとしてもクライドを真似ているのなら、トラブルになっても自分達でどうにか出来るとは思うが、クライドの厄介なところは自分だけでもどうにか出来る面倒と、周りを巻き込む事を前提で起こす面倒がある。

 前者なら放っておいても問題はないが、後者ならホワイトファングが動く事が前提で行動している可能性が高い。

 どちらかが分からない以上は後者として考えるしかない。

 

「仕方がない……近くを虱潰しに探すしかないか」

「ですね。そうすれば向こうから連絡を取って来るかも知れませんし」

 

 どの道、CMCのエースパイロットのフォルスとマッドーナ工房の技術者であるキャロルが行方不明の状態でノートラムに向かう事も出来ない為、ホワイトファングは再び進路をノートラムから二機の消えた宙域へと変更する。

 

 

 

 

 

 

 フォルスがプロト3を小惑星のラボに持ち込み、数時間が経過している。

 すでにラボは夜時間となり、クリフォードとキャロルはフォルスに案内されたアラートで寝ている。

 その間にプロト3に小型のシドが取りついている。

 シドは小型のシドを使い周囲の残骸から自分を修復する機能を持っており、小型のシドは作業用の小型MSとしても使えた。

 

「夜中に精が出るな。ドクター」

「まぁな。あの二人が寝ている間に作業を終わらせないといけないからな」

 

 クライドは小型のシドに指示を与えながら、フォルスに答える。

 クライドは今、プロト3に対してある作業をしている。

 だが、それはキャロルには言えない事である為、寝ている間にやってしまわなければいけない。

 プロト3に小型のシドが取りついている為、アラートで寝ている二人の内のどちらかが起きてしまえばすぐにばれてしまうと思うが、その辺りはぬかりはない。

 あの部屋のガラスには特殊な細工がされており、ガラスの向こう側が覗けるが、ラボの方から映像を流す事も可能となっていた。

 その為、今はガラスではなくプロト3に小型のシドが取りついていない映像が映されているので起きたところで気付かれる事はない。

 

「それで、孫娘に会った感想は?」

「良い技術者だ。フリットの教えの賜物だろうな」

「そう言う意味ではないんだがな……」

 

 クライドは自分の孫のキャロルと初めて会った。

 向こうは、クライドが自分の祖父である事を知らないが、クライドは当然の事ながら、キャロルがエリアルドとファムの娘である事は知っている。

 その為、初めて孫に会った感想をフォルスが聞いたのだが、クライドは技術者としてのキャロルの感想を言っている。

 だが、何処までも技術者であるクライドらしくもあった。 

 

「そんな事は今はどうでも良い。AGEドライヴをすり替えて本当に誤魔化せるのか?」

「当たり前だ。AGEドライヴに関しては俺が一番、良く分かっているからな。精巧な偽物とすり替える事など訳ないさ」

 

 クライドが用意した偽物のAGEドライヴとプロト3に搭載されているAGEドライヴをすり替える作業であった。

 3基のAGEドライヴの内、一基はガンダムZERO Ⅲγに搭載していた物がマリィと共に消息不明となり、一基はガンダムZERO Ⅱに搭載されていた物が機体ごとUIEの手に分かっている。

 その為、すぐに回収出来るのがプロト3に搭載されている奴だ。

 クライドはフォルスにAGEドライヴの回収を命じていたが、痺れを切らしてタイミングを見計らってプロト3をここまで持って来れるように段取りをしていた。

 クライドの用意した偽のAGEドライヴは今までに起きた超常現象を起こす事以外はAGEドライヴを全く同じ物である為、まだ、一度も超常現象を起こしていないので、まず気付かれる事はない。

 

「ドクターが言うのなら、私はなにも言う事はない。だが、ばれれば面倒なことになるぞ。私もCMCに留まる事は出来なくなる。ホワイトファングはなかなかに面白いからな」

 

 フォルスがそう言うとクライドは以外そうにするが、それと同時に計画が上手く言っている事を感じている。

 

「そうか。だが、大丈夫だ。ばれなければ問題ない。万が一にもばれてもCMCにいられなくなるだけだ。それもまた、お前に必要な経験だ」

「だからと言ってわざとばれるように仕組むのは止めてくれ」

「分かっている。仕事で手を抜くのは俺の主義に反する」

 

 自身の技術に関しては一切の妥協をする事のないクライドである為、偽AGEドライヴの擬装は完璧なのだろう。

 

「それとお前にAGE-2Xも調整と改良をしておいた。ダークハウンドに搭載したハイパーブーストと共に脚部はダブルバレットのままで両腕はノーマルに戻しておいた。スラスターの強化もしたから機動性能は上がっている筈だ。それと面白い物を見つけたぞ」

「面白い物?」

「恐らくお前がドレッドノートに捕まった時につけられたんだろう。AGE-2Xに発信機が取り付けられていた」

 

 クライドはAGE-2XDBを調整する際にドレッドノートで取り付けられた発信機を見つけていた。

 

「それで?」

「無論、そのままだ。発信機のお陰でUIEはAGE-2Xの位置を補足出来るから、向こうから来てくれる。中々上手く隠していたから普段の整備では見つかる事はないだろうな。そんな訳だからフォルスには暫くの間、UIEに追いかけて貰ってくれ」

「簡単に言ってくれるな……」

 

 発信機がつけられている事は何処に行こうとも、AGE-2Xの位置が捕捉されると言う事だ。

 つまり、常に敵にAGE-2Xの位置を知られている状態でいろと言っている。

 

「ドクター、AGE-2Xに発信機がつけられていると言う事はここの位置も知られたのではないか?」

 

 発信機によってAGE-2Xの位置が捕捉出来ると言うのならば、当然、このラボの位置がUIEに知られていると言う事になる。

 

「だろうな。だから、ここはお前たちを送り出した後に破棄する」

 

 このラボにはEXA-DBのサブユニットは置かれているが本体は別の場所に隠してある。

 だが、サブユニットでも敵に渡すのは面白くはない。

 敵に渡すくらいなら破棄した方がマシである為、クライドはラボの破棄を決定した。

 

「その後は、別の場所で姿を隠すさ。どうやら、俺の戦いは終わって無かったみたいだからな」

「ドクターの戦い?」

「お前がドレッドノートで取って来た情報に面白い物を見つけた」

 

 クライドはモニターに映像を映す。

 そこにはフォルスがドレッドノートで見て来た機密情報が映されている。

 フォルスの任務はAGEドライヴの回収の他にUIEのMSや兵器に関する情報の奪取だった。

 その為にフォルスは自身のプライドを傷つけてまで、ドレッドノートに潜入した。

 その時にオッドアイを隠す為に付けたカラーコンタクトはなにもオッドアイを隠す為だけのものではない。

 カラーコンタクトはクライドが開発した超薄型のカメラの役割を持っていた為、それを付けたフォルスは片目が使えないが、その目で見た映像は全てクライドの元に届くようになっていた。

 そうして、クライドはUIEの機密情報を得る事に成功した。

 その中にクライドは無視の出来ない情報を見つけた。

 それはガンダムTHE ENDのパイロットの事であった。

 

「ナーガ・ヘルター……俺の両親を故郷の仇だ」

 

 ガンダムTHE ENDのパイロットの欄にはそう書かれていた。

 ナーガは蝙蝠退治戦役の時にアンバットでクライドを道連れにした自爆したが、生きていたらしい。

 同姓同名である可能性も否定は出来ないが、生きていた可能性がある以上クライドは無視は出来ない。

 

「アンバットで仕留めたと思っていたが、生きていたかも知れない……否、生きていると言う表現は少し違うな。ナーガはジエンドの生態ユニットにされているらしい」

 

 フォルスが得た情報にはナーガはガンダムTHE ENDのパイロットと言う訳ではなく、生体ユニットにされているらしい。

 

「奴のXラウンダー能力を使う為だろうな。だから、すでに人としては死んでいる。だが、俺はアイツの存在を認めない。そんな形であろうとも、存在している限り宇宙の果てにいようとも追い詰めて殺す」

 

 アンバットでナーガを倒した事で両親を殺された憎しみは消えたが、仇の存在にクライドの中の憎しみは再び現れて来ている。

 

「ドクターの事情は理解した。だったら、私が始末して来ても良いが? ドクターも若くないんだ。無理は出来ないだろう」

「関係ない。奴は俺の手で殺す。フォルスはプロジェクトUGの遂行を第一に考えろ」

「了解だ」

 

 クライドもすでにMSに乗って戦える程、若くはない。

 だが、そんな事はどうでも良かった。

 フォルスを差し向ければ確かにナーガを殺す事は容易だが、それでは意味がない。

 自分で殺すからこそ、復讐の意味があるからだ。

 フォルスもクライドの個人的な復讐に付き合う事はクライドに指示されない限りはない為、それ以上はなにも言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、一晩でAGEドライヴと偽物とのすり替えが終わり、キャロルとクリフォードはその事を知らずにAGEドライヴの修理が終わったと聞かされていた。

 まさか、一晩で完全に修復出来るとは思ってなかったが、キャロルが確認するとAGEドライヴはきちんと稼働している上に安定している。

 

「本当に安定している……」

「当然だ」

「ありがとうございます!」

 

キャロルはクライドに頭を下げる。

幾ら、AGEドライヴが自分の物であっても黙ったすり替えている為、孫に何の疑いもなく感謝される事に少し罪悪感を覚えるが、自分の目的の為にはAGEドライヴは必須であるのでクライドがそれを顔に出さずに耐える。

 

「それじゃボク達はホワイトファングを探しに行くよ」

「ちょっと待って!」

 

 フォルスが普通にAGE-2X改に向かおうとするのをキャロルが止める。

 

「フォルスさん! パイロットスーツはどうしたんですか?」

「アレはきついし通気性が悪いから蒸れるから嫌なんだよ」

 

 フォルスはAGE-2X改に私服のまま乗ろうとしていた。

 一般的にMSに乗る時は緊急時を除いてはパイロットスーツを着用するのが当たり前だ。

 パイロットスーツには宇宙服としての役割を持っているので、戦闘中に機体の損傷で宇宙に投げ出された時にパイロットスーツを着ていないと確実に助からない。

 それは身体機能を大幅に強化しているフォルスも例外ではない。

 がだ、フォルスはパイロットスーツがきつくて蒸れるから嫌だと言う。

 きついのはサイズを大きくすれば何とかなるが、通気性が悪いのは改善のしようがない。

 もしも通気性を良くすればそれはパイロットスーツとしての機能を失うと言う事になるからだ。

 

「だから、ボクは元々パイロットスーツは着ない派なんだよ。戦闘で機体を損傷させて空気が外に漏れないようにすれば大丈夫だよ」

 

 フォルスは簡単に言うが、それはわざととは言え、一度でも負けた自分に対する戒めでもあった。

 機体を損傷させコックピットに亀裂が走るだけで命に関わる様な状態に自分を追い込むと言う決意の表れであった。

 

「そう言う訳だからね」

 

 フォルスはそのまま、AGE-2X改に乗り込む。

 

「気にする事はないさ。フォルスはああ見えても強いからな」

「それは分かってますけど……」

 

 フォルスがパイロットとして高い能力を持っている事は知っているが、だかと言って安心出来ると言う訳でもない。

 だが、キャロルにフォルスを説得出来る訳でもない為、キャロルも諦めてクリフォードと共にプロト3に乗り込んでラボから出て行く。

 

「これからどうすんだ?」

「向こうもボク達を探しているだろうからね。プロト3の調子がおかしくなった方に向かって見るよ」

 

 ラボを出て、行き先を決めるとレーダーに反応が出る。

 プロト3の異常は何者かにハッキングされた為であるので、キャロルとクリフォードはすぐに警戒する。

 AGEドライヴがすり替えられた事で出力が安定しているので、キャロルが出力の安定を行う必要がなくなった事でキャロルはクリフォードの支援を行えるようになっている。

 

「丁度良い。足が来たようだね」

 

 フォルスはそう言い機体をストライダー形態に変形させると、飛んでいく。

 プロト3もそれに続くと、その先にはビシディアンの母艦であるバロノークを見つける。

 ホワイトファングと別れた後、ビシディアンもEXA-DBの捜索をしていた。

 その過程でまだ調べていない小惑星帯を調べに来る事は当然で、一番近くの小惑星帯を調べにくれば当然、遭遇するのは当たり前だ。

 

「また、会ったね」

 

 突然、現れてバロノークに通信を繋いで来たフォルスにバロノークのブリッジでは驚かれ、アセムは少し呆れている。

 

「なぜ、ここにいる?」

「それがプロト3の調子が悪くて、遭難してね。ドクターにラボで直して貰ったんだけどさ、ホワイトファングに連れてって欲しいんだけどさ……」

 

 フォルスは余りにも図図しい事を言うが、そんな事はどうでも良かった。

 フォルスは今、『ドクターにラボで直して貰った』と言っていた。

 つまり、EXA-DBはともかく、近くにクライドがいると言う事だ。

 

「フォルス! 叔父さんが近くにいるのか?」

「いるよ。でも……もうすぐ、ラボは破棄するよ」

 

 フォルスがそう言うと小惑星帯で爆発が起こる。

 それは昨日の内に破棄の用意をしていたクライドがラボを破棄したのだろう。

 

「どうやら破棄したようだね」

「そのようだな……」

「それでボク達をホワイトファングまで乗せて行って欲しいんだけど?」

「その代わり、俺達が周囲を捜索するのを手伝って貰うぞ」

 

 ラボを破棄してもすぐには遠くへは行けない為、今から周囲を捜索すれば何かしらの足取りは掴めるかも知れない。

 そして、クライドが身内に甘い事はアセムも知っている。

 今までEXA-DBを捜索してもビシディアンを本気で潰そうとしなかったのは、ビシディアンの首領が甥である自分がいたからだとアセムは考えている。

 フォルスはクライドの最強のガンダムを作る計画には必要な存在である為、強硬策を取る事は考え難い。

 フォルスが意図的にクライドを逃がす可能性もあるが、そこはアセムがフォルスの動きに注意すれば良いだけの事だ。

 

「良いよ」

 

 少しは条件を出して来ると思ったが、以外にもフォルスは了承した。

 何か裏があるかと、勘繰るが実際はクライドが簡単に見つかる様なヘマはしないと分かっているからであった。

 アセムとの話がつく頃にはプロト3も到着する。

 

「フォルスって……これ、この間の海賊の戦艦じゃないかよ」

「遅かったね。ビシディアンと話はつけてホワイトファングまで乗せて行ってくれる見たい」

 

 いつの間にかビシディアンとの間で話が付いており、事態に付いて行けないがバロノークのハッチが開き、AGE-2X改がバロノークに入っていく為、プロト3もそれに続いてバロノークに入っていく。

 AGE-2X改とプロト3を回収したバロノークはクライドの追跡に入る。

 

 

 

 

 

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