宇宙海賊ビシディアンがフォルス達を回収してクライドの捜索に入るがすでに数時間が経過し、クライドの足取りは掴めてはいない。
クライドにはバロノークに搭載している見えざる傘の技術を持っている為、それを使って隠れられたら、探すのは困難なのは始めから分かっていた。
いっその事、向こうから仕掛けてくれれば少しはマシだったのかも知れないが、クライドにビシディアンを襲う理由はない。
EXA-DBを探しているビシディアンを本気で潰そうとすればシドを消しかけての奇襲を行えば容易ではあるが、それをしないのはアセムがビシディアンにいるからだろう。
クライドは自分にとって邪魔な相手であれば容赦なく潰しにかかる反面、身内には甘い。
十年以上も追いかけて来ているビシディアンを潰さないのは一重にアセムがいるからなのだと、アセムは考えていた。
その為、アセムも追いかけるだけでなく別の方法でクライドとEXA-DBを探す方法を考えている。
「あの! 待って下さい!」
付近の捜索の為に、部下を数人連れてダークハウンドで出ていたアセムが成果は無かったが、長時間バロノークを開ける訳にも行かず、一度帰投したところにキャロルがアセムが戻って来るのを待っていたかのように格納庫で待っていた。
「君は確か、マッドーナ工房の……」
「キャロル・アスノです」
アセムはキャロルに自分の事をばれないように話す。
幸い、アセムが最後にキャロルに会った時はキャロルもまだ十歳にも満たない為、ウルフの時のように簡単にはばれたりはしないが、バロノークに乗艦している以上はなにがきっかけでばれるのかは気が気ではないが、だからと言ってキャロルだけを無理やりバロノークから下すにも不自然だ。
両親から受け継いだ髪と目の色はあの時のままだが、髪形などはキャロルの知っているアセムではない為、受け答えさえ間違えなければばれる事はないだろう。
「俺に何か用か?」
「……以前にどこかで会った事はありませんか?」
キャロルはそう言いアセムはどうするか考える。
素直に自分の素性を明かす事は出来ない。
ヴェイガンと通じている部隊を叩く上でアセムはいろいろと連邦軍の暗部を見て来た。
その為、アセム・アスノは死んでいるとなっていた方が良い。
もしも、アセム・アスノが生きている事が軍に知られて、軍の暗部の事を知っていると感づかれたら、最悪地球に残して来たロマリーやキオに危害が及ぶかも知れない。
いざとなればフリットが軍を敵に回してでも守ってくれるとは思うが、フリットも若くはなく、軍内部でフリットの事を未だに慕っている軍人はかつての右腕のアルグレアスを始めとして軍に残っている軍人もいるが、共に戦場をかけた戦友は退役しているか戦死しているかのどちらかでどこまで軍から守れるのかは分からない。
だからこそ、アセム・アスノが生きていると連邦軍に知られる訳にはいかない。
「まさか……名門アスノ家の令嬢と海賊に身を堕としている俺の間に面識がある訳がない」
アセムはキャロルにばれないように答える。
確かにアスノ家は名門で社会不適応者の集まりとも言える宇宙海賊と繋がりはある訳がないとキャロルも何故、海賊の首領にそんな事を思ったのだろうと思ってしまう。
余り表向きには出来ない事ではあるが、キャロルの祖父のクライドはかつて海賊と繋がっていた事がある為、名門だかと言ってならず者と繋がりが無いとは言い切れないのだが、今のアスノ家にはそこまでの繋がりはない。
「そうですよね……もう一つ良いですか? このガンダムタイプ……何処で手に入れたんですか?」
アセムのダークハウンドはAGE-2から大幅な改修がされている為、一見、AGE-2とは別のMSに見えるが専門知識を持つ者が見ればダークハウンドがAGE-2を改修した物か、設計を流用した物かと言うくらいは見分けがつく。
無論、キャロルもダークハウンドがAGE-2と非常に良く似ている事に気がついての質問だ。
「コイツは13年前に回収したガンダムの残骸を使って作られている。その時にマッドーナ工房に依頼しているから工房長にでも聞けば分かるだろう」
マッドーナ工房でダークハウンドは改修されている為、下手に嘘を付けば後でその事が知れた時に話が矛盾するので敢えて本当の事を話す。
キャロルはダークハウンドがマッドーナ工房製である事には差ほど驚かない。
マッドーナ工房が連邦軍以外にもMSを売っている事は周知の事実だ。
その為、海賊のMSを作っている事に今更驚く事はない。
それ以上に13年前と言う事に食いつく
「その時にガンダムのパイロットはどうなったか知りませんか?」
「さぁな……俺達が回収したのはガンダムの残骸だけだ。パイロットの事までは分からないな」
本当ならば、ここでパイロットは死んでいたと言うのはベストではあったが、曖昧な言葉にしたのはアセムの甘さ故にことだった。
アセムはMIA認定を受けて軍からは戦死と言う扱いだが、その死を確認された訳ではない。
今もこうして生きているのだから、アセム・アスノが死んでいると言う事を証明する事は生きている事を証明するよりも難しい。
だが、ここでガンダムのパイロットは死んでいたと言えばアセム・アスノの死は確定的になる。
そうした方が家族への危険は大きく減る上にウルフにはいつかは終わらせて帰る様に言われたが、生きているうちに家族の元に帰る事が出来る保証など何処にもない。
もしかすれば、一生帰る事が出来ないかも知れない。
ロマリーにはいっその事、自分が死んだ事を確定させる事でいつ帰って来るかもわからない自分の事など、忘れて貰って別の人と一緒になった方が幸せなのかとも考えた事もある。
ウルフの言ったように息子のキオは一度も父親に会った事が無く育っている為、例え血が繋がらなくても実の息子のように愛してくれる相手がそばにいた方が良いのかとも考えた。
海賊として罪を重ねて生きている不肖の息子よりも連邦軍の軍人として地球の平和の為に立派に戦って死んだ息子の方がフリットも良かったのではないかとも思う。
だが、自分を自分で殺す事が出来ないのはアセムの中に再び生きて家族の元に戻りたいと思っているのかも知れない。
ロマリーとは結婚して数年が経ち、子供も出来てキオを含めた三人できちんと家族として幸せにしたいとも思っていて、キオとも父親として遊んでやりたいとも思っている。
フリットとも意見が合わない事もあり、ヴェイガンを殲滅すると言う事にも賛同は出来ないが、それでもアセムにとっては世界でたった一人の父親である為、例え、自分の意見を受け入れられる事が無くとも、一度はきちんと面と向かって自分の考えを言いたい。
それらの思いがアセムの中に残されている為、アセムは自分を殺す事が出来ないでいた。
「話はそれだけか?」
これ以上、話しを続けるとボロが出てきそうな為、アセムは離しを切り上げて格納庫を出て行く。
格納庫に残されたキャロルは気分を紛らわす為にプロト3の整備に戻る。
格納庫からブリッジに戻る道中でバロノーク内の談話室の前を通りかかると、中から強烈な酒の匂いが漂い、アセムは顔を顰める。
ビシディアンは正規の軍隊と言う訳ではない為、規律は緩い事もあり談話室での飲酒は当たり前のように行われているが、ここまでの匂いが外まで漏れて来る事は今までには一度もなかった。
「何をやっている」
アセムは注意をする為に談話室を覗きこむとそこには顔を真っ赤にして談話室のテーブルに平伏している部下が何人もいた。
更にテーブルには酒の瓶が何本も転がっており、その殆どが空になっている。
これだけの量の酒は宴の時くらいにしか飲む事はないだろう。
「なんか、フォルスと飲み比べを始めていつの間にか……」
談話室で唯一酒を飲んでいなかったクリフォードが事態を説明する。
フォルスを相手にアセム達の隊が戻るまでの間に飲み比べをしようと言う事になったが、見た目は10代後半くらいの娘であるが、中身は別物であるフォルスは幾ら飲んでも酔い潰れる事が無く、ビシディアンの方も意地となった引くに引けない状態となった今の至ると言う事だった。
首領が偵察に出ているのにも関わらず、意地になって酔い潰れている部下にアセムは呆れて物も言えないでいると酔っている様子もないフォルスはアセムに気がつく。
「どうだった? ドクターは見つかったかい?」
「見つかったら、呆れている暇もないさ」
「ご尤も」
もしも、クライドを見つけた場合、クライドが素直にビシディアンに捕まる訳もなく、確実に戦闘になっているだろう。
戦闘になっていないと言う事はクライドを見つける事が出来なかったと言う事だ。
「本当に行き先を知らないのか?」
「知らないね」
フォルスがバロノークに乗艦した時にアセムもフォルスにクライドの行き先について、心当たりが無いか聞いたが、フォルスの答えは知らないであった。
無論、フォルスが嘘を付いている可能性も否定は出来ないが、前に話を聞いた感じではフォルスはクライドに関する情報をそこまで秘匿しようとは思っていないようだった。
クライドに言うなと口止めされている事は言わないか、適当なことを言い誤魔化すが、そうでない事は聞かれさえすれば普通に答える。
それがこちらを欺く為に敢えて、情報の一部を漏らす事で重要な情報を隠しているのかも知れないが、その真偽を確かめる術はない。
その為、フォルスの言っている事は全面的には信用は出来ないが、ある程度の信憑性はあるとみている。
「それよりもさ……敵が来るよ」
「どう言う事だ?」
フォルスはそう言って談話室を出て行く。
その後をアセムとクリフォードが追いかける。
「感じるんだよね。何処の誰だか知らないけど、こっちを狙ってるよ」
アセムはすぐにフォルスのXラウンダー能力が何かを感じ取ったのだと理解する。
ブリッジのいるラドックから何の報告もないと言う事は見えざる傘のように何らかのステルスシステムを使って接近している可能性が高い。
見えざる傘で隠れているバロノークを発見する事が出来たのは、何らかの方法で見えざる傘のステルス能力を見破ったのか、偵察に出ていた自分達をつけて来たのかは分からないが、フォルスはこちらを狙って来ていると言っている。
アセムはレーダーにすら反応しない敵を感知出来るXラウンダー能力を自分の力としては今更欲する事はないが、この時ばかりは助かったと思いつつ格納庫に戻る。
「どうしたんですかい? キャプテン」
「敵が来るそうだ。ブリッジのラドックに知らせろ。それとMSの出撃の準備を急げよ」
アセムは格納庫でダークハウンドや偵察に出ていたMSを整備していた整備班に指示を出すとダークハウンドに乗り込む。
幸い、ダークハウンドは首領であるアセムの搭乗機である為、いざと言う時にすぐに出せるように最優先で整備がされているのですぐに出せる。
だが、問題は他のMSだ。
フォルスとのの飲み比べで多くの部下が酔い潰れている。
すぐに酔いを覚ますのは無理なので、出せるMSは限られる。
取り合えずは、自分のダークハウンドとフォルスのAGE-2X改とクリフォードとキャロすのプロト3の三機はすぐに出せる事もあり敵の戦力を把握する為に三機が先行する。
バロノークから出撃するが、やはり外には敵と思われる機影や戦艦も見つける事が出来ない。
「なにもいないな……」
「レーダーにも反応はないわ」
「フォルス」
「分かってるよ」
レーダーに反応が無い事は分かり切っている為、フォルスのXラウンダー能力による探知だけが頼りであった。
AGE-2X改はハイパードッズライフルを構えて放つ。
なにもない方向を狙ったように見えた攻撃があるところで不自然に曲がった。
すると、なにもなかった空間が歪んでMSが出て来る。
「成程ね……道理で……」
「アイツか……」
そこにはノートラム攻防戦でも投入されたMS、ベルフェゴールが現れた。
ベルフェゴールの高いステルス能力によってバロノークやMSのレーダーから捉える事が出来なかったと言う事だ。
ベルフェゴールが姿を現した事で敵がUIEであると判明する。
「聞いてた通り、白い四枚羽根のガンダムのパイロットは普通じゃないみたいだね」
ベルフェゴールが姿を現すと、その後方から大量のミサイルがバロノークに放たれる。
「ミサイルか!」
ダークハウンドはドッズランサーについているドッズガンでプロト3はシグマシスライフル、AGE-2X改はハイパードッズライフルでミサイルを迎撃する。
ミサイルを迎撃しているうちにUIEのMS隊が接近していた。
ブランベルグの騒動の時に交戦した三機のカスタムタイプのゼイ・ドゥにカスタムのされていない通常のゼイ・ドゥが襲いかかって来る。
「バロノークのMSがすぐに出て来る。それまで堪えろ」
ダークハウンドはストライダー形態に変形して、ドッズガンとビームバルカンを連射して、MS隊に突撃する。
プロト3はシグマシスライフルを放ち、敵MS隊は散開する。
「ベルフェゴールがいないね」
「また、ステルスシステムを使ったのか!」
AGE-2X改がハイパードッズライフルでゼイ・ドゥを撃墜し、ダークハウンドがMS形態に変形してドッズランサーでゼイ・ドゥを貫く。
交戦しながらも、ベルフェゴールの機影が無くなっている事に気がつく。
状況的に撃墜された訳でも撤退した訳でもないのは明白で、つまりは再び姿を隠したと言う事になる。
「フォルス!」
「分かっているよ」
姿を隠してレーダーから逃れようともフォルスのXラウンダー能力から逃れる事までは出来ない事は奇襲を伏せいだことから証明している。
フォルスはベルフェゴールの位置を感知しようとするが、マドックのゼイ・ドゥMカスタムが高出力ヒートソードで切りかかり、AGE-2X改はビームサーベルで受け止める。
「また、君か……いい加減にして欲しいな!」
「四枚羽根のガンダム! 悪いが落とさせて貰う!」
ダグはフォルスを生け捕りにする様に言っていたが、常識を遥かに超えた力を持っているフォルスは脅威でしかなく、アルベリッヒは確実に殺す様に指示を出している。
マドックも今までの戦闘からフォルスの異常とも言える戦闘能力は実感している為、捕獲する事よりもAGE-2X改を撃墜するつもりで攻撃している。
AGE-2X改はMカスタムを弾き飛ばすとハイパードッズライフルを放つ。
Mカスタムは攻撃をかわすと、ビームガトリング砲を放ちながら、接近する。
「今は君の相手をしている暇はないんだけどね」
AGE-2X改はビームサーベルを振るい、Mカスタムは高出力ヒートソードで受け止める。
「フォルスは抑えられているか……」
ダークハウンドはドッズガンでゼイ・ドゥを牽制して接近するとビームサーベルでゼイ・ドゥを両断する。
すでにバロノークからシャルドール・ローグやGエグゼス・ジャックエッジが出撃して防衛行動に入っている為、急いでバロノークの防衛に戻る必要はないが、戦場のどこかにはベルフェゴールがいるので、それを感知出来るのはXラウンダー能力を持つフォルスしかいない。
だが、フォルスはマドックに抑えられている。
ゼイ・ドゥのビームマシンガンをかわして、ドッズガンを連射してゼイ・ドゥを撃墜すると、アセムは不意に背中が凍りつくような感覚を感じてとっさに反応する。
ダークハウンドは背後にドッズランサーを振り上げると、ドッズランサーが何かに当たったような衝撃を受け、腕に付いている爪を弾かされているベルフェゴールが姿を現す。
アセムの感じた背筋が凍りつくような感覚はアケディアが攻撃の時に僅かに漏れた殺気であったが、そんな事を考えている余裕はない。
ダークハウンドはベルフェゴールから一旦距離を置く為に、ドッズガンを連射しながら下がる。
「やるねぇ……Xラウンダー能力すら持たない只の人間がさ……」
ダークハウンドの攻撃をもろともしないベルフェゴールは再び、姿を隠す。
「さて……どうするかな」
アセムは全神経を研ぎ澄ます。
例え、Xラウンダー能力を持たずとも、今までの戦闘経験から全く反応が出来ない訳で会ない。
だが、一瞬の判断ミスが命取りになる。
ベルフェゴール以外にも敵機がいる為、他のMSの相手をしながら、いつでもベルフェゴールの奇襲に備える。
プロト3の方にはボリスのBカスタムとレーラのLカスタムが向かっている。
BカスタムのレールガンとLカスタムのビームライフルをプロト3はシールドで受け止めながら、シグマシスライフルで応戦するが、二機は散開する。
「白い四枚羽根のガンダムと海賊のガンダムは強いらしけど……コイツは火力を頑丈さだけが売りじゃないの」
Lカスタムはビットをパージする。
Bカスタムはシールドに内蔵されているミサイルを放つ。
不規則な動きで舞うビットと追尾して来るミサイルをプロト3は迎撃するが、ミサイルは何発かは迎撃出来たが、ビットには当たらない。
「ライフルの出力を調整するから少し使わないで!」
「ならどうしろってんだよ!」
「バルカンで牽制して!」
シグマシスライフルは威力は高いが、連射が殆ど出来ない為、キャロルがその出力を調整して、威力を最低レベルまで落として連射速度を上げようとしている。
元からMSの火器としては破格の威力を持つシグマシスライフルは威力を最低まで落としてもMSを撃墜するのには十分な威力を持っている。
その為、威力よりも連射速度を優先して対応する気だった。
プロト3は頭部のバルカンでBカスタムとLカスタムを攻撃する。
頭部のバルカンは攻撃力こそはシグマシスライフルには全く及びもしないが、MSの装甲に対しては致命傷にはならないが、装甲にダメージを与える程の威力を持っている為、二機のゼイ・ドゥカスタムは容易に接近する事はしないでレールガンとビームライフルで反撃する。
プロト3は何とか、かわしながらかわし切れない攻撃をシールドで防ぎ、シグマシスライフルを放つ。
Lカスタムはその攻撃を避けるとビームサーベルを抜いて接近する。
「この辺りで終わりにしてあげるわ!」
「やられるかよ!」
プロト3は接近するLカスタムにシグマシスライフルを放つ。
レーラはシグマシスライフルの出力を落としていた事を知る訳もなく、先の攻撃が今までの攻撃よりも威力が落ちている事に気付く事も無かった為、シグマシスライフルの攻撃への反応が遅れる。
プロト3の放ったシグマシスライフルの一撃をLカスタムは何とかかわす事が可能であったが、完全にかわし切れず、ビームサーベルを持つ右腕に直撃を受ける。
これが通常の威力ならば、腕ごと機体を撃墜する事が可能であったが、威力を落としていたので、Lカスタムの右腕を破壊するに留まるが、それがLカスタムの致命的な隙となる。
プロト3はシグマシスライフルをバックパックにマウントすると、ビームサーベルを抜いてLカスタムに突っ込む。
Lカスタムは体勢を崩している為、避ける事は不可能に思えたが、プロト3がLカスタムを切り裂くよりも先にボリスのBカスタムがプロト3に体当たりを行う。
完全に注意がLカスタムに向いていて、Bカスタムに注意が行っていなかった為、不意をつかれる形となったプロト3はそのまま吹っ飛ばされる。
Bカスタムはレールガンを連射し、プロト3も吹き飛ばされつつも頭部のバルカンを連射する。
吹き飛ばされながらであったので、まともに狙いをつけてはいないが、運良くBカスタムのレールガンの片方に直撃してBカスタムのレールガンが破壊される。
Bカスタムは破壊されたレールガンを捨てるとLカスタムを連れて後退する。
「ボリス! 私はまだ!」
「その機体では無理だ。今は後退する」
二機のゼイ・ドゥカスタムが後退し、プロト3はそれを追撃する事なく、バロノークの防衛に向かう。
姿を隠しては攻撃してくるベルフェゴールにダークハウンドは苦戦するも何とか攻撃を防ぐ事は出来ている。
数回の奇襲で、アセムも大方は敵の攻撃のパターンは掴んでは来ているが、その攻撃パターンが敵がわざと行っている可能性もあり、ここからが正念場だ。
「ここまで耐えるとはね……旧式でも流石はガンダムと言ったところか……そろそろ、面倒になった来たから終わらせるとするかね」
「このまま守っていても埒がない……ならば、こちらから仕掛ける!」
どの道、このままでは消耗させられて敗北するのは時間の問題である為、アセムは少々危険ではあるが攻勢に出る事を決める。
ダークハウンドは胸部のドクロのレリーフに内蔵されているフラッシュアイを使う。
「うわっ眩しっ!」
それによってアケディアの目を眩ませる。
「そこか!」
だが、アセムの狙いは目暗ましではない。
幾ら、ステルスシステムで姿を隠してレーダーから消えようとも存在までは消す事は出来ない。
その為、フラッシュアイを使う事で不自然に光を遮っている場所がある。
そこにはなにも見えないが、光を遮る何かがあると言う事になる。
ダークハウンドはバインダーについているアンカーショットを射出する。
アンカーショットはなにもない筈の空間で確かに何かに引っ掛かった感触があった。
「ようやく捉えたぞ」
「やっぱり、ガンダムは厄介だから嫌だったんだよ」
ダークハウンドはアンカーショットを戻す勢いを利用して、ドッズランサーを突き出す。
ベルフェゴールはアンカーショットで位置が特定されている以上、姿を隠す事を止めて姿を現してドッズランサーの一撃をかわす。
「悪いが……逃がさん!」
アンカーショットがベルフェゴールに繋がっている以上、ダークハウンドは何処までもベルフェゴールを追い続ける事が出来る。
ダークハウンドは再び、アンカーショットを引き寄せて勢いをつけてベルフェゴールに突撃する。
「そう何度も!」
ベルフェゴールも黙ってやられている訳ではない。
ダークハウンドの突撃をカウンターで返す。
ベルフェゴールはダークハウンドに蹴りを入れて、機体への強い衝撃を受けてダークハウンドのドッズランサーはダークハウンドの手を離れて慣性の法則に従い真っ直ぐ飛んでいく。
「その厄介な槍が無ければ……今度はこっちが捕まえたよ。ガンダム」
ダークハウンドの武装の中で唯一、ベルフェゴールの装甲を撃ち破る事の出来る攻撃力のドッズランサーがダークハウンドの手を離れ、ダークハウンドがベルフェゴールを捕まえているアンカーショットが逆にダークハウンドを逃げれなくしている。
「白い四枚羽根のガンダムはともかく、君はここで死んで貰うよ」
「白い四枚羽根がそっちに行ったぞ!」
ダークハウンドに対してアケディアは勝利を確信するが、マドックからの通信が入る。
そして、モニターにMカスタムの追撃を受けながらもベルフェゴールに接近するAGE-2X改の姿が確認出来る。
それだけなら大した脅威ではない。
AGE-2X改のハイパードッズライフルもベルフェゴールの装甲ならば耐える事は可能だ。
「キャプテン……これを借りるよ」
「好きにしろ。その代わり」
「分かってるよ。確実にそいつは仕留めるさ」
ダークハウンドの手を離れたドッズランサーに先にAGE-2X改がいる。
AGE-2X改はハイパードッズライフルを思いっきり前方に投げると、ドッズランサーとすれ違いざまにドッズランサーを掴む。
その後、AGE-2X改はストライダー形態に変形する。
ダークハウンドのドッズランサーはハイパードッズライフルをベースに開発された武器である為、グリップはハイパードッズライフルと共通しているのでAGE-2X改がストライダー形態に変形した時に問題なくドッズランサーはストライダー形態の機首となる。
「ついでだ。ハイパーブーストも使わせて貰うよ」
AGE-2X改はクライドが新しく搭載したハイパーブーストを使う。
それによって更に加速した事で後方から追撃して来るMカスタムを振り切る。
その機動力はハイパーブーストを使ったダークハウンドをも上回っている。
AGE-2X改はその機動力で勢いをつけてベルフェゴールに突貫攻撃を行う。
AGE-2X改の圧倒的な機動性能で勢いを付けたドッズランサーでの特攻による攻撃力は先ほどまでのダークハウンドの攻撃とは比較にはならない。
「流石にアレは不味いでしょ……」
「言った筈だ……逃がさないとな」
AGE-2X改の突貫は脅威的ではあるが、勢いを殺さないように真っ直ぐベルフェゴールに向かっている。
ベルフェゴールに火器は搭載されていないが、攻撃が直線でしか来ないと分かっていればかわすのは容易だ。
しかし、まだダークハウンドはアンカーショットをベルフェゴールにつけたままだ。
ベルフェゴールはアンカーショットを外そうとするが、ダークハウンドはアンカーショットに電流を流す。
本来はパイロットのみを殺す為の武器ではあるが、強化Xラウンダーとして肉体を強化されているアケディアには致命傷になる事はなかったが、動きを止めるのは十分であった。
AGE-2X改は勢いを保ったまま、ベルフェゴールに突撃する。
ベルフェゴールはドッズランサーによって貫かれる。
だが、ドッズランサーもそこまでの勢いで突撃する事は考えられていなかった為、突撃時の衝撃に耐えきれずに粉砕される。
ベルフェゴールを貫いたAGE-2X改の背中にダークハウンドは捕まりバロノークの方に向かう。
「どうにか、撃墜は出来たけど、流石にきついよ。全く」
「良く言うな」
超加速からの突貫でAGE-2X改にも相応の衝撃を受けて、フォルスはその衝撃が堪えているような事を言っているが、その口ぶりはまだ余裕が残っていると言う風だ。
「ベルフェゴールが落とされた……」
ベルフェゴールが撃墜され、ボリスとレーラのゼイ・ドゥカスタムもすでに後退している。
状況は明らかにUIEの不利となっている。
更に、状況が悪くなる警報がMカスタムのコックピットに鳴り響く。
「アレは……白い四枚羽根のガンダムの母艦か……仕方がない。全機、撤退だ!」
戦闘を見つけて、更にそこにAGE-2X改とプロト3の反応を見つけたホワイトファングの増援が来たことでこれ以上の戦闘は無意味と判断したマドックは撤退の指示を出す。
「撤退するのか……」
「まぁ当然の判断だね」
撤退するUIEをビシディアンもフォルスも追撃する事はない。
ビシディアンは被害も出ている為、無用な追撃は更に被害を増やすだけで、フォルスも追撃する理由がないので追撃はしない。
「ボク達も向かえが来たみたいだから、帰るとするよ」
AGE-2X改はホワイトファングの方に向かい、プロト3もそれに続く。
「まさか、こんなに早く再開する事になるとはな」
「全くだ」
ホワイトファングがダークハウンドに通信を繋いでウルフがそう言う。
通信はブリッジから繋がっていると言う事は会話は他のブリッジクルーも聞いている事を考慮して、アセムはウルフと昔からの知り合いである事を隠す為に敢えて、敬語を使わない。
ウルフもその事を理解している為、タメ口である事には触れない。
前に会った時は当分会う事もないと思っていたが、意外とすぐにまた会う事になった。
「うちのバカが面倒をかけたな」
「いや、こっちも助かった。正直、フォルスが居なければ奇襲で終わっていたからな。それでお相子だ」
UIEはフォルスのAGE-2X改につけられている発信機の反応を頼りに襲撃して来た為、ビシディアンは完全に巻き込まれた事になるので、フォルスによって全滅は間逃れても、感謝する必要はなく、寧ろ、フォルスのせいで被害が出た事を糾弾する権利もあるのだが、その事実をアセムは知らない。
「なら、そう言う事にしといてやるよ」
「俺達は少し急ぎの用事があるのでこれで」
クライドの足取りを掴む事はすでに絶望的とは言えるが、アセムもここで引き下がる事は出来ない。
その為、今はウルフと長々と話している暇はない。
ダークハウンドはバロノークに帰投して、AGE-2X改とプロト3を回収したホワイトファングの今度こそ、目的地であるノートラムに向かう。