機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

79 / 155
第75話

ビシディアンとホワイトファングとの戦闘から撤退したUIEは母艦まで帰還している。

 今は、フォルスのAGE-2X改に取りつけた発信機からホワイトファングをトレースしているだけだ。

 先の戦闘でゼイ・ドゥの約半数を撃墜され、レーナとボリスのゼイ・ドゥカスタムも損傷している。

 何より、ベルフェゴールが撃墜された事が多き。

 確実に仕留める為にベルフェゴールの隠密能力を活かす為にMSは必要最小限の数しか用意していなかった。

 その為、ベルフェゴールの撃墜で戦力不足に陥っていた。

 この状況でホワイトファングに仕掛けても返り討ちに会う事は目に見えている。

 

「連中の目的地はノートラムか……」

「だろうな。船の針路上にあるCMCの支部のあるコロニーはノートラムしかない」

「でも、どうするの? マドック。このまま連中を黙って行かせる気?」

 

 レーナはそう言うが、レーナも今のままで仕掛けても勝ち目が無い事は分かり切っている。

 彼女が聞きたいのは仕掛けないでなにもしないのか、勝てないなら勝てないなりに何か手を打つのかと言う事だ。

 

「すでに増援としてゼイ・ドゥとお前たちのゼイ・ドゥカスタムの予備パーツを手配してある。今度は奪ったガンダムも投入する」

「奪ったガンダムと増援が来るまでに連中はノートラムに到着するな」

 

 現在のホワイトファングの位置と速度、ノートラムの位置からノートラムにホワイトファングがつくまでの時間と増援が到着して戦闘準備を終えるまでの時間を計算すれば確実に間に合わない。

 

「それは覚悟の上だ。どの道、今の戦力で仕掛けてもいらずらに戦力を消費するだけだ」

 

 今の戦力では勝てないからこそ、ノートラムにつくまでに仕掛ける事は出来ず、マドックはホワイトファングがノートラムに到着すると言う事を容認せざる負えない。

 

「俺達の任務はあくまでも白い四枚羽根のガンダムの撃破だ。連中もいつまでもノートラムにいる訳ではない。連中がノートラムを出港した後に仕掛ける」

 

 ノートラムを出港する時には急ぎの用や緊急事態でもない限りは補給を整備を万全にして出港する事は当然で、そこに仕掛けるとすればそれだけ難度が高くなるのも当然と言える。

 だが、マドックはそれらを承知の上でノートラムから出港した後を狙う。

 そうしなければ、自分達もまともに戦力の無い状態で仕掛けなければならない。

 どの道、リスクを背負うのならば、自分達も万全の状態で仕掛ける事を選択した。

 

「今まで何度も襲撃しながら、白い四枚羽根のガンダムを落とせなかった失態は意地でも取り返す。次の戦闘で奴を落とす」

 

 マドックは決意と共にそう言い、ボリスとレーネも頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 バロノークの見えざる傘でホワイトファングを見失ったメナスは補給を受けている。

 スラッシュは格納庫で搬入されたMSと修理用の予備パーツの確認と共に新たな任務をセカンドムーンからの使者から受けていた。

 

「ノートラムをね……だからか」

 

 スラッシュは搬入されているドラドを見てそう言う。

 ドラドはダナジンがロールアウトしている為、旧式となっているが未だに現役で使う事も出来る。

 そのドラドがメナスに配備されるのだ、それ相応の任務が与えられる事は分かっていた。

 そして、任務の内容はノートラムを襲撃せよと言う事だった。

 

「アレか? 例の地球侵攻作戦の為か?」

「恐らくラ・グラミスを動かすに当たり、少しでも敵の注意をビッグリングから反らしておきたいのかと」

 

 ヴァレリの予想では地球侵攻作戦を開始するに当たり連邦軍の総司令部であるビッグリングへの攻撃作戦を行う為の準備段階の作戦であると予測している。

 ノートラムを襲撃する事で連邦軍にヴェイガンが未だにノートラムを制圧しようと思っていると思わせてノートラムに戦力を集めさせることでビッグリングの守りを手薄にすると言うものだ。

 

「その為に少しでも危機感を持たせる為にMSを回してくれるって言ってもな……」

「その為の試作機も配備してくれているではないですか」

「試作機ってもな……」

 

 ドラドの他にもう一機のMSをスラッシュとヴァレリが見上げる。

 コックピットでは試作機のパイロットであるティアナが技術者と共に調整を行っている。

 

「プロトギラーガ……親父の乗るMSの試作機か」

 

 元々は指揮官専用機として開発されたMSをヴェイガンの技術力の総力を結集して改良されたMSである。

 プロトギラーガはダナジンと始めとしたヴェイガンが開発をしている地球での戦闘を主眼に置いた非人型ではなく、ドラドやゼイドラと言った人型のMSの設計を受け継いでいる。

 ヴェイガンの特徴とも言える武装を受けつぎつつも多彩な機能を持ったマルチウェポンのプロトギラーガスピアや、多関節機構が採用されている尾のプロトギラーガテイルなどが装備され、これらは完成機のにも搭載の予定されている。

 最終的にはジルスベインにも搭載されていたXトランスミッターも搭載されてビット兵器の使用も可能となるが、今はXトランスミッターは搭載されずに機体の基本性能のテストの段階だ。

 プロトギラーガの運用データを元に完成予定のMS『ギラーガ』はスラッシュの父であるゼハート・ガレットの専用機として運用される予定となっている。

 そのプロトタイプとして開発されたのがプロトギラーガだ。

 今は、暗い緑で塗装されているが、完成形であるギラーガはゼハートのパーソナルカラーの深紅に塗装される。

 いずれは父のゼハートの専用機のプロトタイプであるプロトギラーガを見上げて父の事を思い出す。

 自分が産まれてすぐにコールドスリープによって眠りについたため、ゼハートとの記憶はないが、人づてに聞いた話ではゼハートは高いXラウンダー能力を持った一流のパイロットで彼を慕う兵は少なくない。

 その反面、高ランクのXラウンダーとは言え若くして出世したゼハートを妬む者も多く、トルディアでガンダム奪取の任務に失敗した事や地球に兵を送りこむ事に成功こそしたが、当初の目的であるノートラムの制圧を失敗した事や、指導者のイゼルカントが認めたとは言え地球側の女を連れて来てその女との間に子供を作った事で批判的な声も多い。

 あまつさえ、トルディアでのガンダム奪取の失敗は任務を疎かにして女にうつつを抜かしていたからだと言う者までいた。

 だが、スラッシュは記憶に残っていない父とは言え、ヴェイガンの未来の為に戦ったゼハートを誇りに思いゼハートがコールドスリープから目覚めた時にはゼハート・ガレットの息子の名に恥じない戦果を上げたいと思っている。

 

「ノートラムの制圧は可能ならやっても良いんだよな?」

「無論です」

 

 本来の目的は戦力をノートラムに向けてビッグリングの戦力を落とす事にあるが、ノートラムの制圧が可能ならば制圧する事にこしたことはない。

 ノートラムを制圧すれば戦争が有利に運ぶ上に、連邦軍の注意と戦力をノートラムに向ける事も可能だ。

 

「ノートラムの制圧にガンダムの撃破……親父の出来なかった事を俺がやり遂げてやるよ」

 

 ゼハート専用機の開発が開始されていると言う事は近々、ヴェイガンは地球侵略作戦を本格的に始動し、その作戦にゼハートも参加すると言う事だろう。

 ならば、ゼハートがコールドスリープから目覚める前にゼハートが出来なかった事を息子の自分がやり遂げる。

 その決意と共にスラッシュを乗せたメナスはノートラムへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 ブランベルグでの4機のプロトガンダムAGE-3の強奪事件に巻き込まれてから、トラブル続きで予定を大幅に遅れたが、ホワイトファングはようやくコロニー「ノートラム」へと入港する事が出て来ていた。

 ノートラムの宇宙港に入港したホワイトファングだが、艦のクルー全員が食堂に集められていた。

 元々、全員が一同に入る事がない為、食堂は完全に定員オーバーで席に座れないで立ったままのクルーも多い。

 クルーは皆、集められた理由は分かっているのか、普通に雑談をしているが、クリフォードは理由を飲み込めていない様子だった。

 クルーが集まって少しすると、ウルフとラウラが食堂に入って来ると、今まで雑談をしていたクルーは雑談を止めて食堂は静かになる。

 そして、クルーは皆真剣な表情で緊張した面持ちをしている。

 

「それでは呼ばれた人から来て下さい」

 

 ラウラがそう言い、クルーの名前が一人一人読み上げられていく。

 名前を呼ばれたクルーはウルフの元に向かい、何かを渡される。

 それを何度も繰り返す。

 名前を呼ばれてウルフに何かを渡されたクルーは明らかに喜ぶ者もいれば逆に落胆する者もいた。

 それが続き、ようやくクリフォードの名前も呼ばれた。

 クリフォードは訳も分からなかったが、ウルフの前に出る。

 そして、一枚の紙を渡される。

 

「何すか? これ?」

「給料明細です。それと、貴方はこちらの退職届けも受け取って下さい」

 

 ラウラはもう一枚の紙をクリフォードに渡す。

 

「給料明細?」

「おいおい。何言ってんだよ。ブランベルグからここまでの戦いは子供も遊びじゃねぇんだ。働いた分の給料は出るに決まってんだろ」

 

 呆気に取られていたクリフォードに呆れた様子でウルフがそう言う。

 クルーに渡されていたのはCMCからの給料の明細であった。

 クリフォードはブランベルグでの戦闘行為を正当化する為に、CMCと契約を結んでいる。

 その時点でクリフォードは正式なCMCの社員と言う事になる。

 その為、ブランベルグからノートラムまでの航海での給料が支払われる。

 元々、死にたくないが為にプロト3に乗って戦って来たクリフォードにとっては給料が出るなど考えてもいない事だった。

 

「俺の給料……」

 

 クリフォードは驚きつつも、給料明細を見て更に驚く。

 そこに記されていた金額は学生のバイトでは到底稼げる額ではない。

 

「貴方の場合、過去の実績も訓練経験も無いですので、社としてはそれだけの額しか出せません」

 

 クリフォードの感覚では相当の金額だが、実際に他のパイロットと比べると大した額では無かった。

 パイロットはMSで戦場で直接戦う為、他の部署と比べると給料は少し高い。

 基本給に戦場に出撃した回数、敵MSの撃墜数や作戦への貢献度を計算し、そこから補給や整備、修理に使ったパーツの代金などを引かれて給料は出される。

 基本給はパイロットの過去の実績や訓練経験などで計算される為、学生で戦闘経験も訓練経験も皆無であってクリフォードは設定されている基本給の中でも一番安いが、撃墜数がドレッドノートを攻撃した時などでかなり稼いでいる。

 その上でプロト3の部品はブランベルグで回収した予備パーツを使い大きな損傷も無い為、給料から引かれる事もない。

 それらを計算してクリフォードの給料が計算されている。

 その額はクリフォードにとっては大金ではあったが、一般的なCMCのパイロットの給料と比べると安い。

 ホワイトファングのMS隊の隊長であるキースやエース級の実力を持っているアキラはクリフォードの倍以上の給料で、ライルでもクリフォードよりも給料は多く、フォルスに至ってはホワイトファングの艦長であるウルフ以上の給料を貰い、クリフォードの給料とは桁が違う。

 

「その金はお前が自分の命をかけて稼いだ金だ。それを何に使うかはお前の自由だから好きに使えば良い」

 

 クリフォードは無意識の内に給料明細を強く握り締めている。

 今までも遊ぶ金を稼ぐ為に何度かバイトはしている為、給料を貰う事は今回が初めてではない。

 だが、今回は自分の命をかけて必死に戦って稼いだ金だ。

 金額以上に感慨深い物があった。

 

「艦長……プロト3はどうなるんですか?」

 

 元々、CMCの支社に到着するまでプロト3のパイロットとしてホワイトファングに乗艦すると言う事になっていたのでノートラムに到着したと言う事はクリフォードはここで降りる事になる。

 そこでプロト3の事が気になった。

 戦いに巻き込まれたとは言え、クリフォードもここまでの航海でそれなりにプロト3への愛着が沸いている。

 

「プロト3はここで下してマッドーナ工房に搬送される予定だ」

 

 本来ならば、機密情報である為、部外者となるクリフォードに教える事は機密漏洩に当たるかも知れないが、今まで乗っていたMSがどうなるかと言う事はパイロットだったら気になると言うのはウルフも理解出来ることもあり、クリフォードに話す。

 いつもなら、ラウラが文句の一つも言うところだが、ラウラは今の話を聞いていなかった事にした。

 

「あの……俺……」

「止めとけ」

 

 クリフォードが何かを言いかけるが、ウルフがそれを止める。

 

「お前はここまで良くやった。戦いに巻き込まれて死に物狂いに戦ってきた。だが、これ以上戦う必要はない」

 

 ウルフにそう言われて、クリフォードは黙りこむ。

 大方、クリフォードはパイロットを続けると言おうとしていたと言う事は予測できたが黙ると言う反応からそれが当たっている事を示している。

 今までの戦いを見る限りではクリフォードにはパイロットとしての適正は十分にあるとウルフは思っているが、だからと言って戦場にいる事を進める気はない。

 ウルフもかつてはレーサーとして戦いとは無関係だったが、レースで敵がいなくなると更なる刺激を求めて連邦軍に入っている。

 そして、それから何十年経っても未だに戦場から離れないでいる。

 これからも離れる事はなく、死ぬまで戦場にいるだろう。

 ウルフは自分の人生は自分の好きなように選択して生きて来たから後悔している訳でも悲観している訳でもないが、自分の人生が碌でも無かった事は自覚している。

 

「まっ、お前の人生だ。自分の人生をどう生きるかはお前の自由だが、こっちの世界に足を踏み入れるなら相応の覚悟が必要だ」

 

 戦場に出れば自分の命を危険に晒し、敵の命を奪う事になる。

 敵を撃てば敵の仲間に恨まれることもあり、敵の事を知ってしまえば迷いが生じる事もある。

 そこに迷いが生じれば自分の命だけでなく仲間の命をも危険に晒す事になる。

 その為、戦場に出るにはそれ相応の覚悟が必要となる。

 ホワイトファングのパイロットも多かれ少なかれその覚悟を持ってパイロットと言う道に進んでいる。

 フォルスはパイロットとなるべくして生み出された為、そんな覚悟は一切なく、当たり前のようにMSに乗って戦い敵を撃ち、任務を完遂させるだけだが、フォルスの場合は特殊な例だ。

 状況的に戦うさる負えなかった今までとは違い、ここからはそう言う訳ではない。

 クリフォードはまだ18で戦う以外でもいろんな道を選んで生きる事が出来る。

 

「だが、親父への当てつけでパイロットになるってんなら止めておけ。後悔するだけだ」

「艦長……」

「悪いが簡単にお前の事は調べさせた。驚いたぞ。お前がうちのボスの息子だってことを知った時はな」

 

 クリフォードはそう言われて驚く。

 クリフォードがホワイトファングに乗艦することになった時にウルフはラウラにクリフォードの素性を調べさせた。

 ホワイトファングでは詳しいところまでは調べる事が出来なかったが、クリフォードのファミリーネームのマクダエルと言うのは母方のファミリーネームで母は数年前に離婚している事が分かった。

 その母の元夫が、CMCの社長であるジェラール・プラドンである事が分かった。

 クリフォードの父のジェラールは元はクライドの特研に所属していたが、23年前のクラリッサが起こしたクーデターの時はオーヴァンにいなかった為、難を逃れていた。

 その後、ジェラールの父であるドミニクの警備会社であるCGCを受け継いで傭兵派遣会社であるCMCの社長となった。

 だが、自身の能力と才能を絶対視して、周囲を見下す事の多かったジェラールとクリフォードの母との夫婦間に亀裂が入り、二人は離婚してクリフォードは母親に引き取られていた。

 クリフォードがグレたのもジェラールとの確執が原因であるとウルフは考えていた。

 父親に反発する事は珍しい事ではないが、その当てつけの為にMSに乗る事は褒められたことではない。

 男なら一度は父親に反発する事はあるが、それは一過性の物が殆どでいずれは父親の事を理解出来るようになり収まる事が殆どだ。

 その時に当てつけでMSのパイロットとなってしまえば収まった時にパイロット以外の道に進む事が難しくなるかも知れない。

 

「お前はまだ若い。たっぷりと悩んで自分の将来について考えろ。それでもパイロットになろうってんなら、ホワイトファングで面倒を見てやるよ」

 

 ウルフにそう言われて、クリフォードはウルフに言われた事を考えつつ離れて行く。

 

 

 

 

 給料明細を受け取ったクリフォードは何となく、格納庫に来ていた。

 格納庫ではプトロ3を搬送の為にトレーラーへの積み込み作業が始まっている。

 キャロルが食堂にいないと思っていたら、格納庫でプロト3の搬送の指揮を執っていた様だ。

 クリフォードは準備の邪魔にならないように格納庫の隅に座りこんで搬送の準備を眺める事にした。

 搬送の準備を見ると、本当に自分は船を降りるのだと言う事を実感する。

 ホワイトファングに乗っていたのは約一月程度で、乗った時はそれしかなかったと言う状況だったが、いざMSを降りるとなると寂しい物を感じる。

 

「戦いから解放されると言うのに随分と暗い顔をしているね」

「フォルス……」

 

 そこには給料明細を受け取って、食堂にいる必要のなくなったフォルスがいた。

 フォルスはクリフォードの横に座りこむ。

 

「その顔は迷っていると見た」

 

 フォルスに自分の迷いを言い当てられてクリフォードはバツが悪そうにしている。

 そんなクリフォードにお構いなしにフォルスは続ける。

 

「パイロットを続けたいが、明確に戦う理由を見つける事が出来ない」

「フォルスは何でパイロットになったんだよ? フォルスなら他にだって幾らでも道はあったんだろ?」

 

 クリフォードはフォルスが何故、パイロットになったのか興味があった。

 フォルスの素性を聞かされていないクリフォードにはフォルスが外見の事もあり戦いとは無縁の人間にも思える。

 

「ボクがボクである為だよ。ボクにはパイロット以外の生き方はあり得ないし、その気もない。パイロットで無いボクはボクではないからパイロットになった。ボクがパイロットであるのはそれが全てだよ」

 

 フォルスの口調はいつもと同じだけど、クリフォードは何故だかわからないが、背筋が凍る様な感じを一瞬受けた。

 それは、フォルスの本質に触れてからかも知れないが、クリフォードにはどう言う訳かはまるで分からない。

 だが、これ以上、この話題を話すのは不味いと言う事は本能的に感じていた。

 

「そっか……話を戻すけど、フォルスの言う通り迷ってんのかも知れない。状況が戦わないといけなかった事もあるけど、ブランベルグでの戦闘で街が破壊されて、ふざけんなって思って俺にも戦えるなら戦うって決めた。死にたくないからもう一度プロト3に乗ろうともした。だけどさ……ウルフ艦長の言う通り親父への当てつけもあったんだと思う」

 

 一度目は目の前の惨状を見て戦おうと決めた。

 二度目は生きる為に戦うと決めた。

 その後は、ホワイトファングのMSパイロットをして戦っていたが、心のどこかでは父親への当てつけと言う一面を持っていた事は今になっては否定できない。

 父親のジェラールは才能や能力にばかりを見ていて、それ以外には興味を示す事はなかった。

 だから、MSのパイロットとして結果を出す事でジェラールを見返したいと言う気持ちは少なからず持っていた。

 今までは何かと理由を付けて誤魔化していたが、もう誤魔化す事は出来ない。

 

「クリフォードは自分の父親が嫌いなんだね」

「まぁ……」

 

 そこまではっきり言われると素直に肯定はし辛いが、ジェラールを嫌っているのは確かだ。

 

「じゃぁさ。その父親に面と向かって何かを言った事はないよね? MSのパイロットになって当てつけをするくらいなんだからさ」

 

 それは図星だ。

 昔はそれなりに反論もしたが、いつしか言っても無駄だと言って諦めていた。

 

「はっきり、言うけどさ。当てつけをするって相手に直接、何かを出来ないから間接的にやるんだと思うんだよね。つまりは負け犬の思考。迷惑なんだよね。そう言うのはさ」

 

 歯に衣を着せぬ言い方のクリフォードは更に沈むが、的を得ているだけに反論は出来ない。

 

「クリフォードが負け犬のままで良いなら、ボクは別に良いけどね」

「言い訳がないだろ……んなの」

「だよね。クリフォードは単純バカっぽいからね。だったら、難しく考える必要はないよ。父親にぶつかれば良い。結果はどうあれ、それだけの事だよ」

 

 それは簡単な事だった。

 直接、ぶつからずに当てつけをするから負け犬であって、結果はどうあっても直接ぶつかればそれは負け犬で無い事になる。

 

「んだよそれ……そんな簡単な事で良かったのかよ」

 

 余りにも簡単な答えにクリフォードは自傷気味に笑う。

 

「世の中ってのは複雑に見えて以外と簡単なんだよ」

「サンキュな。フォルス……俺、やって見る。親父と面と向かって話して見る。そうすれば少しは自分の道が見えて来るかも知れない」

「うん。頑張なよ」

 

 クリフォードは先ほどまでの暗い表情から一変して影が落ちている。

 自分のやるべきことを見つけたクリフォードは退艦の準備の為に格納庫から出て行く。

 

「まぁ、簡単だけど単純じゃないんだけどね……」

 

 そんなクリフォードの背中を見ながらフォルスは呟いた。

 

 

 

 

 

 

 食堂での給料明細の配布が終わり、ホワイトファングではノートラムへの上陸許可が出されていた。

 当然の事ながら、何時敵の攻撃を受けるか分からない為、クルーの全員に上陸許可が出ている訳ではなく、交代で艦を運用出来るだけの最低限の人員は待機している。

 

「艦長、本社からの通信が来てますが?」

「無視しろって訳にはいかないか……」

「当然です。繋いで」

 

 ウルフとしては本社からの通信など、面倒なだけなので無視をしたいが、まともに通信の取れない状態でなら無視をしても後々問題にされても言い逃れは出来るが、今の状況ではそれも出来ない。

 

「無事にノートラムに到着したようだな」

 

 ホワイトファングのモニターに映されたのはCMCの社長、ジェラール・プラトンであった。

 まさか、社長自ら通信を送って来る事は流石に予想外の事態でクルーは動揺し、ウルフも顔にこそ出さないが、内心では驚いていた。

 

「まさか、お忙しい社長自らが通信を送って来るとは緊急の用件ですかね?」

 

 相手が相手だけにウルフは一応の敬語を使う。

 敬語を使っている筈だが、その言葉には若干の棘が見え隠れする。

 その物言いにウルフの後に控えているラウラは気が気でない。

 

「何、フォルスがUIEに捕まったと耳にしてね。無事に救出出来たようじゃないか。流石は白い狼と言ったところか」

「そいつはどうも」

「まぁ、高い金を出して雇っているんだその位はして貰わないとな」

 

 相変わらず相手を自分よりも下に見ている態度にウルフは内心では苛立っていた。

 ジェラールはCMCの社長でウルフはCMCに雇われている立ち場である為、社会的な立ち場ではジェラールの方が上であるが、それ以上にジェラールの言動は常に自分以外の人間は社会的地位は関係なく、下に見ている節がある。

 軍よりも高い給料と軍よりも自由に動く権限がなければ確実にウルフはジェラールに対して一発殴っていたかも知れない。

 

「それで、社長自ら連絡して来た理由は? ご子息なら船を降りる予定ですよ」

「ああ……そう言えばうちの愚息が乗っていたな」

 

 ジェラールは今、思い出したようにそう言う。

 その口ぶりから事前にクリフォードがホワイトファングに乗っていた事は知っていたようだが、気にした様子はない。

 息子を持ったことのない、ウルフだが息子が戦いに巻き込まれてMSに乗っていた事を知れば、直接的で無いにしろ、息子の安否を気にするのが親だと思うが、ジェラールにはそれがない。

 心配を隠しているとも考えられるが、少なくともジェラールは会社経営に関してはそれなりの実力を持っているが、他人を見下している事が多く、腹芸が得意とは思えないので、本当にクリフォードの事は何とも思っていなかったのだろう。

 そう考えるとクリフォードがグレるのも分かる気がした。

 

「そんな事はどうでも良い。艦長、ホワイトファングの進路はどうなっている?」

「予定ではこのまま、地球に降下してオリバーノーツに向かう予定になってはいますが……」

 

 何故、社長自らがホワイトファングの進路を聞くのか不思議ではあるが、相手が社長であるのでラウラは戸惑いつつも答える。

 

「そうか。気を付けるんだぞ」

 

 ジェラールはそう言ってさっさと通信を終えた。

 

「何だったんでしょうか?」

「知るか! んなことよりも、ホワイトファングの補修と補給を急がせろ。ウェイボードは多めに積んどくように言っとけ」

 

 ジェラールがどう言う意図で今の通信を送って来たかは不明だが、今はそんな事を考える気はなかった。

 マッドーナ工房によった時に最低限の補修を行ったが、十分ではないので地球に降下する前に完全に補修を終えておきたい。

 その上で大気圏内での戦闘などの為にサブフライトシステムであるウェイボードなどの大気圏内で使う物も搬入しなければならない。

 ノートラムは地球に最も近い中軌道上にあり、軍の施設もある為、防衛は十分だが敵の規模によってはホワイトファングの戦力も投入する必要があるかも知れず、それだけの敵の攻撃がすぐにでもあるかも知れないと思えば少しでも早く出港の準備を整えるのにこしたことはない。

 ゆっくりするにしてもホワイトファングの補修と補給を終えなければ気が気でない。

 

 

 

 

 

 

 

「聞いての通りだ」

 

 ノートラムに入港したホワイトファングとの通信を半ば無理やりに終わったジェラールはアーヴィンの本社の執務室でジェラール以外の人物にそう言う。

 その人物はアルべリック・バルベルであった。

 

「あの船は地球に降りると言う事か」

 

 本来ならば、ここにいる筈の無いアルべリックはCMCの社長であるジェラールの元にいた。

 

「ホワイトファングの進路を教えたんだ。分かっているな?」

「分かっている。こちらで開発中の新型MSの設計データの譲渡とCMCのUIEへの加入は総帥に進言しておく」

 

 アルべリックはホワイトファングに関する情報と交換に、CMCに対してUIEで開発中の新型MSの設計データとジェラールのUIEへの加入を持ちかけていた。

 ホワイトファングをUIEに売ればフォルスやウルフと言った優秀な人材を失うが、代わりにコロニー国家間戦争時の陣営であるUIEに加入する事が出来る為、ホワイトファングを売る事に決めていた。

 その為に、わざわざ、ホワイトファングに直接、進路を聞いたのだった。

 UIEの側からすれば、CMCの持つ戦力はある程度は魅力的でフォルスの属している組織を抱き込むことでフォルスを仕留める事を容易にすると言う腹だった。

 AGE-2X改には発信機がついている為、位置を補足する事は出来るが、目的地や進路が分かっていれば作戦も立て易くなると言う狙いもあった。

 

「そうしてくれ」

 

 ジェラールはアルベリッヒに対しても態度を変える事はない。

 ジェラールからすれば、UIEはザラムやエウバに負けて隠れていた負け犬でしかないが、それはアルベリッヒからすれば似たような物だった。

 CMCの保有している施設や戦力は欲しいが、正直なところジェラールは必要ではない。

 自分の実力以上に思いあがっている味方など邪魔でしかないからだ。

 しかし、UIEが進めている計画には少しでも多くの戦力が必要なのも確かだ。

 その為、多少の事には目をつぶる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 メナスを出撃したスラッシュとティアナは小さいデブリに紛れてノートラムに接近していた。

 メナスは見えざる傘を展開して、別ルートからノートラムに接近している。

 スラッシュとティアナはプロトギラーガの実戦テストを兼ねた囮として、メナスから離れて行動している。

 デブリに紛れているとは言え、そろそろノートラムの警戒エリアに入り、ノートラムの防衛のMSが出て来るだろう。

 

 

「どうだ? その機体は?」

「反応が機敏である事以外は問題はありません」

 

 プロトギラーガはゼハートが乗る事が前提に開発されているので、ゼハートの反応速度にもついて来る事が出来る程の反応速度である為、ティアナには反応速度が早過ぎて機体を動かすのもやっとで少しで集中を切らしてしまえば、機体の制御が出来なくなりそうだった。

 

「そろそろ、ノートラムの警戒エリアか……」

「スラッシュ様! 来ます!」

 

 ノートラムの警戒エリアに入る前にティアナが叫び、スラッシュのゼイドラとティアナのプロトギラーガはすぐに隠れていたデブリから離れるとデブリはビームによって破壊される。

 

「まだ、警戒エリアに入って無いぞ……連邦にしては鼻が効くな」

「どうやら、違うようです……」

 

 レーダーに反応しているMSの機影は2機しか映されてはいない。

 もしも、連邦軍ならばもっとMSを出して来る筈だ。

 

「あいつは……ガンダムか!」

 

 レーダーに映されているMSをモニターに出すとそこにはフォルスのガンダムAGE-2X改とアキラのクランシェが映されている。

 ノートラムの警戒エリアに入る前に気付かれたのはフォルスのXラウンダー能力でスラッシュとティアナが感知されたからであった。

 それにより、すぐに出せたAGE-2X改とクランシェを出したのだった。

 ノートラムにホワイトファングが入港していると言う情報があれば、敵にもXラウンダーがいる事を想定する事が出来たのだが、そんな事を言っていても仕方がない。

 

「まさか、こんなところでまた会えるなんてな。丁度良い。ここでアイツを落とすぞ」

「了解」

 

 ゼイドラとプロトギラーガはAGE-2X改とクランシェの方に向かっていく。

 

「本当に敵がいたわね。相変わらず鼻は良く効くわね」

「まぁね。一機は前に戦ったゼイドラだね。もう一機は見た事はないから新型かな? パイロットは黒い方に乗っていた娘か」

 

 AGE-2X改がハイパードッズライフルでデブリを破壊した事でデブリに隠れていたゼイドラとプロトギラーガを補足している。

 フォルスは感覚的に敵MSのパイロットが以前に戦ったヴェイガンのパイロットである事を感じている。

 

「来るよ」

 

 ゼイドラはゼイドラガンを放ち、プロトギラーガはプロトギラーガスピアからビームを放ち、AGE-2X改とクランシェは散開する。

 クランシェはMS形態に変形するとドッズライフルを放ち、AGE-2X改を援護する。

 AGE-2X改はある程度、接近してMS形態に変形してハイパードッズライフルを放つ。

 

「今度こそ、落とす!」

「悪いけど、君はお呼びじゃないんだよね」

 

 ゼイドラがゼイドラガンの先端からビームサーベルを展開して切りかかるもAGE-2X改は避ける。

 攻撃をかわしたAGE-2X改はプロトギラーガにハイパードッズライフルを放つ。

 ゼイドラはビームバルカンを向けるが、クランシェがドッズライフルを放ち、左腕の固定式ビームサーベルで切りかかり、ビームサーベルで受け止める。

 プロトギラーガはプロトギラーガスピアの先端から鎌状のビームを展開して、AGE-2X改の攻撃をかわしながら接近する。

 AGE-2X改はビームサーベルを抜いてプロトギラーガの一閃をかわして、背後を取るが、プロトギラーガは尾のプロトギラーガテイルで応戦し、それをAGE-2X改はビームサーベルで弾く。

 そして、プロトギラーガはプロトギラーガスピアをAGE-2X改に突き出す。

 AGE-2X改は距離を取ろうとするも、プロトギラーガを離す事が出来ず、プロトギラーガスピアからの攻撃をビームサーベルでいなす。

 

「逃がさない!」

「流石は新型……こっちよりも早いね」

 

 ストライダー形態ならば機動性能で劣る事はないが、ストライダー形態では格闘戦が出来ないので、フォルスはプロトギラーガと距離を取る事を止めて近接戦闘に切り替える。

 クランシェがゼイドラを蹴り飛ばして、頭部のビームバルカンで牽制しながら、ドッズライフルをプロトギラーガに放ち、プロトギラーガはプロトギラーガスピアを回転させて攻撃を防ぎ、AGE-2X改がビームサーベルを振るい、プトロギラーガはプロトギラーガスピアで受け止める。

 体勢を整えたゼイドラはAGE-2X改にゼイドラガンを放ち、AGE-2X改とプロトギラーガは距離を取ってAGE-2X改はハイパードッズライフルを放ち、プロトギラーガはビームバスターを放つ。

 二機の放ったビームはぶつかり合い、AGE-2X改の放ったビームをプロトギラーガのビームが撃ち破る。

 

「機動性だけじゃないって事か」

 

 AGE-2X改はギリギリのところでビームをかわすとストライダー形態に変形して、プロトギラーガにビームバルカンを連射してプロトギラーガに接近する。

 プロトギラーガも掌のビームバルカンで応戦し、勢いに乗ったAGE-2X改はMS形態に変形してビームサーベルを振るい、プロトギラーガはプロトギラーガスピアで受け止める。

 ゼイドラがプロトギラーガの援護の為にゼイドラガンを向けるも、クランシェがドッズライフルで牽制して、攻撃を避けながらゼイドラガンでクランシェを狙い、クランシェはシールドで防ぐ。

 

 

 

 

 

 

 AGE-2X改とクランシェがゼイドラとプロトギラーガとの戦闘が開始されているが、未だにノートラムの連邦軍のMSは出ていない。

 警戒ラインのギリギリのところで戦闘をしている為、当然の事ながらノートラムの管制も戦闘には気付いている。

 だが、それでもMSが出て来ないのは明らかにゼイドラとプロトギラーガが陽動であるからだ。

 幾ら新型機を投入しようともたった二機のMSでノートラムを襲撃するには少な過ぎる。

 その為、ゼイドラとプロトギラーガは囮で別動隊がいるのは明らかだった。

 囮の二機はAGE-2X改とクランシェで十分に抑えているのでノートラムの連邦軍は囮を二機に任せて周囲の警戒にMSを回している。

 

「艦長! ヴェイガンの別動隊と連邦軍のMSが交戦し、突破されかけています!」

 

 ホワイトファングは艦の補修作業中である為、港から動く事は出来ないが、軍と連携して情報を共有している。

 

「キースとライルを回す様に伝えとけ」

 

 キースのGバウンサーとライルのジェノアスキャノンⅡは整備中であったので、フォルスが陽動の二機を補足した時には出せなかったが、整備を中止して、今はすぐに出せるように準備が出来ている。

 軍の防衛網が突破されかけているところに他の部隊を回せば、回したところの防衛が手薄になり更に敵の突破される危険性があるので、出撃していないホワイトファングの二機を守りに回す。

 

 

「あそこか……行くぞ。ライル」

「了解です」

 

 ホワイトファングから出撃したGバウンサーとジェノアスキャノンⅡは報告で突破されつつある地点へと向かう。

 すでに連邦軍のMSの残骸が周囲を漂っている。

 残されているのはシャルドール改とアデルマークⅡが数機だ。

 それに対してヴェイガンはドラドを中心としてガフランやバクトでMSの性能ではガフランやバクトよりもアデルマークⅡの方が上だが、報告通り押されている。

 GバウンサーとジェノアスキャノンⅡはドッズライフルを放つ。

 

「こちらはCMC所属のホワイトファング隊だ。援護する」

「助かる」

 

 Gバウンサーは最大出力でスラスターを使い、ドッズライフルを放ちガフランを撃墜する。

 バクトがビームサーベルを展開して、Gバウンサーに切りかかるも、Gバウンサーの機動力について行く事が出来ずにジェノアスキャノンⅡのドッズキャノンで撃ち抜かれる。

 そのまま、ジェノアスキャノンⅡはドッズキャノンで援護射撃を行い、それをかわしていたガフランにシャルドール改がドッズガンを連射して撃墜する。

 ドラドが拡散ビーム砲を放ち、シャルドール改の一機が撃墜され、Gバウンサーにビームバルカンを放ち、Gバウンサーはシールドで防ぐ。

 

「隊長!」

 

 ジェノアスキャノンⅡがドッズライフルをドラドに放ち、ドラドは腕の電磁装甲を使いながら、避けているがGバウンサーがドッズライフルを放ち、脚部に被弾しバランスを崩れたところにアデルマークⅡがビームサーベルでドラドの両腕を切り落としてGバウンサーのドッズライフルに撃ち抜かれて爆散する。

 

「援護に感謝する」

「こっちも仕事だからな。まだ敵がいるかも知れない。油断は出来ないぞ」

 

 GバウンサーとジェノアスキャノンⅡの援護で持ち直す事が出来たが、敵の規模が分からない以上、油断する事は出来ず警戒を続けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「機体性能は良いけど、パイロットは性能を扱い切れていないようだね」

 

 AGE-2X改はプロトギラーガを蹴り飛ばして、ハイパードッズライフルを放つ。

 プロトギラーガはビームバルカンで牽制しながら、体勢を整えて一気に加速してプロトギラーガスピアを振るう。

 だが、その一撃をAGE-2X改はかわす。

 

「もう、見切ったよ。幾らボクより早く動けてもパターンが読めてしまえば意味はないさ」

 

 プロトギラーガの性能や反応速度はAGE-2X改を上回っているが、その性能が故にティアナには扱い切れずに機動性能に物を言わせた攻撃が多くなり、攻撃自体も単調になっている。

 初めは機動性能の高さで誤魔化す事が出来たが、フォルスはその機動力に慣れて来た為、攻撃を見切るのも容易となった。

 AGE-2X改はビームサーベルを振り下ろし、プロトギラーガはプロトギラーガスピアで受け止めるが体勢を崩す。

 

「ティアナ!」

 

 ゼイドラがゼイドラガンを連射して、AGE-2X改をプロトギラーガから引き離し、クランシェが飛行形態に変形してドッズライフルをビームバルカンをゼイドラに放つ。

 プロトギラーガはプロトギラーガスピアからビームを放ち、クランシェはMS形態に変形して、ドッズライフルを放つ。

 ゼイドラとプロトギラーガ、AGE-2X改とクランシェは互いに友軍機と合流して睨み合う。

 

「スラッシュ様。別動隊のMSが次々と落とされています」

「連邦軍のMSが出て来ないと思ったが、読まれてたってことか」

 

 メナスで別動隊の指揮を執っているヴァレリからの通信で、未だに連邦軍のMSが出て来ないのはこちらの作戦を読んでの事であると確信する。

 そして、それはスラッシュ達の方でも想定内の事だ。

 ここまであからさまな陽動に引っ掛かってくれれば儲け物だが、流石にそこまで連邦軍を舐めている訳ではない。

 この戦闘で重要なのはヴェイガンがノートラムにいつでも仕掛ける事が出来ると言う事を連邦軍に見せつける事だ。

 その目的自体はすでに完了している。

 

「これ以上の戦闘は無意味か……ヴァレリ、MS隊に帰還命令を出せ。俺達も撤退する」

「よろしいので?」

「構わん……すでに戦闘の目的は達した。これ以上の戦闘は必要ない」

 

 スラッシュとしてはAGE-2X改を倒したいが、AGE-2X改との交戦は完全なイレギュラーだ。

 この戦闘の目的が達成された以上、これ以上の戦闘はスラッシュの個人的な戦いとなる。

 個人的な戦いに部下を巻き込む訳にはいかないので、スラッシュは撤退を決める。

 

「了解」

 

 ゼイドラとプロトギラーガは後退を始め、別動隊もノートラムから撤退して行く。

 

「撤退?」

「みたいだね。ボク達はこれから地球に降りるんだ深追いして藪蛇は御免だよ」

「そうね」

 

 フォルス達も敵が撤退する以上、深追いをする必要はない為、二機がレーダーの範囲外に撤退する事を見届けてから一応の警戒をしつつホワイトファングへと帰還して行く。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。