機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第76話

ヴェイガンのノートラム襲撃は一応の成功を収めた。

 ノートラムから撤退した部隊はメナスまで後退している。

 メナスに帰還したスラッシュは格納庫でメナスに帰投したMSの数を数えている。

 

「帰投出来たMSは5機か……」

 

 格納庫にはゼイドラとプロトギラーガの他にガフランとバクトが合わせて5機が戻って来ていた。

 だが、その5機もどれもが損傷を受けている為、すぐには使えそうにはない。

 

「ですが、作戦は成功です」

 

 スラッシュとティアナが帰投しメナスのブリッジからヴァレリが格納庫に来てそう言う。

 ヴァレリに言う通り、攻撃の目的はノートラムに破壊でも制圧でもなく、ノートラムに攻撃を仕掛ける事で連邦軍の注意をノートラムに向ける事で攻撃をした時点で概ね成功と言える。

 しかし、帰投出来たMSは自分達を含めて7機だ。

 作戦開始当初は15機のMSを投入したが、帰投出来たのは約半分だった。

 その為、作戦が成功してもスラッシュは素直に喜べない。

 もしも、この作戦の指揮をゼハートが執っていたのであれば、自軍への損害が減ったのではないかと考えてしまう。

 だが、そんな事を考えたところで8機のMSが落とされた事実は変わらない。

 

「ガンダムさえ出て来なければ……」

「ですね。まさか、こんなところであのガンダムと遭遇するとは運が無い」

 

 スラッシュは自軍に被害が出た以上、運が無いで済まされないと反論しかけるが実際に運が無かった。

 元々の作戦ではスラッシュとティアナが囮となり、ノートラムの正面から仕掛けて、連邦軍のMSの多くと抑える手筈だったが、その思惑は大きく外れて、ノートラムからはガンダムAGE-2X改とクランシェの二機しか出て来なかった。

 その二機に自分達の方が抑えられて、結果として連邦軍は別動隊の対応に十分の余裕が出来た。 そのせいでこちらへの被害が大きくなった。

 

「この借りは必ず返す」

「ではガンダムを?」

「当然だ」

 

 一度は見失って、本国からの指示でノートラムを襲撃する事になったが、AGE-2X改を発見した事でスラッシュは再び、AGE-2X改を追う事を決めている。

 今後の指示はまだ来ていない為、ヴェイガンにとっては鬼門でもあるガンダムを地球侵略作戦が大々的に開始される前に叩いて置く事は今後の戦局を左右する事と言っても良い。

 それはヴァレリも承知の事でスラッシュがガンダムを叩く事に関しては異論はない。

 

「しかし、こちらも疲弊しています。すぐに攻撃を仕掛ける事は無理です」

「だろうな。それに増援も期待は出来ない……MSの修理を急がせろ」

 

 すでにノートラム攻撃前に増援を受けて、旧式ではあるが主力機でもあるドラドも数機配備されている。

 そのドラドも全機が落とされたが、だからと言って増援を望む事は出来ないだろう。

 その為、スラッシュ達は今のメナスの戦力だけでホワイトファングへの攻撃をしなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

 ヴェイガンのノートラム攻撃から数日が経ち、その間は連邦軍も警戒していたが、ヴェイガンの攻撃もなく予定通りにホワイトファングや搭載機の整備と補給を終えている。

 この後、ホワイトファングは大気圏に突入して地球に降りる為、すでに強襲揚陸形態に変形している。

 

「艦長、出港準備完了しました」

 

 艦の各部署の状況を確認し、コロニー側からも出港の許可が出た事を確認してラウラがウルフに報告する。

 

「微速前進、これより大気圏に突入して地上に降りる」

 

 すでにホワイトファングの行き先はクルーにも知れ渡っているが、改めてウルフはクルーにそう言う。

 その言葉でクルーは顔を強張らせる。

 クルーの大半はコロニー生まれで地球は宇宙から見下ろした経験しかない。

 地球生まれのクルーもシャトルで地球に降りた事はあるが、戦艦の単独の大気圏の降下は初めてだ。

 

「たく……お前ら、柄にもなく緊張し過ぎだ。オリバーノーツの近くに降りるのは難しいがアメリカ大陸に降りればオリバーノーツはすぐだ。それこそ、砂漠や海、雪山のど真ん中に降りない限りはな」

 

 ウルフは冗談半分にそう言い、ブリッジの空気が和らぐ。

 軍艦が直接大気圏に突入するのは23年前にディーヴァが行った時以外には公式では記録されていないが、ディーヴァはその時で20年以上も前に建造された戦艦で、ホワイトファングはそのディーヴァの同型艦である為、大気圏の突入には問題はない。

 問題があるとすれば、大気圏に突入の際に操舵を誤り予定している地域から大きくずれる事だ。

 それでも余程の事が無ければ、大気圏に突入に失敗する事はない筈だ。

 クルーさえいつも通りの働きが出来れば何の問題も無い為、クルーの緊張を解く事が大気圏の突入の成功に必要だった。

 クルーの緊張も解けてホワイトファングはノートラムを出港する。

 

 

 

 

 

 ノートラムを出港し、いざと言う時の為にパイロットはアラートで待機が命じられていた。

 アラートにはホワイトファングのパイロットとノートラムでプロト3を下して、運用データをオリバーノーツのフリットの元に届ける為にデータを纏めているキャロルがいる。

 パイロットはそれぞれで時間を潰し、キャロルはデータを纏める時にプロト3のパイロットであったクリフォードの視点からの意見も聞いておいた方が良かったことを今更ながら、痛感していた。

 本来なら試作機はテストパイロットの意見も重要なデータであるので、テストパイロットの意見も聞くのは常識であったが、自分も同乗していた事もあり完全に失念していた。

 クリフォードの連絡先は聞いてなく、今後の事も聞いていないのでどうしようもない。

 

「次の目的地ってオリバーノーツだよね」

 

 誰に対して言った訳ではないがフォルスがそう言う。

 フォルスの言葉にキャロルも含めて他のパイロットも反応するが、アキラはすぐに興味を失う。

 

「ああ……確か北米の都市だったな」

「へぇ。ボクは地上は初めてだけど、どんなとこ?」

「そこまでは知らないが……」

「平和な街ですよ」

 

 キースも次の目的地のオリバーノーツが北米の都市である事までは知っているが、どんなところかまでは知らないが、知っていたキャロルがそう言う。

 オリバーノーツは近くに比較的大規模な連邦軍の基地がある為、ヴェイガンやUIEとの戦闘も起きる事なく平和な街だ。

 

「ふぅん。キャロルはオリバーノーツに行ったことあるの?」

「小さい頃に住んでいた事があります」

 

 キャロルは両親が共働きなこともあり、幼い時は主婦をしており、家にいる事の多いロマリーのいるアセム夫妻の元に預けられる事が多い為、幼い頃はオリバーノーツで育っている。

 

「今は私の父もオリバーノーツの勤務でパイロットの教官をしています」

「そうなんだ」

 

 キャロルの父、即ちクライドの息子であるエリアルドはクライドを父をするフォルスにとっては兄にあたる相手だ。

 そのエリアルドは現在はオリバーノーツで勤務してMSパイロットの教官をしている。

 特研の解体後はビッグリングの防衛部隊に所属していたが、キャロルをアセム夫妻に預ける事が多くなったこともあり、少しでもキャロルの傍にいる為にオリバーノーツ基地への転属を希望し、その意図を汲んだフリットによってオリバーノーツ基地に転属となり、そこでいずれは戦争が激化する事を考えMSパイロットの育成に努めている。

 

「キャロルさんのところもですか? 俺の父さんもオリバーノーツ基地所属ですよ。尤も、キャロルさんのところのように目立った戦果はないんですけどね」

 

 キャロルの言葉にライルがそう言う。

 ライルの父、オブライトも今はオリバーノーツに配属されている。

 エリアルドはノートラム防衛戦後も戦果を挙げて出世しているが、オブライトは未だに昇進もぜずにディーヴァの配属された時同様に中尉のままだった。

 だが、ライルはその事で父を軽蔑している訳ではない。

 元々、オブライトは単独で戦果を挙げるタイプのパイロットではなく、同僚や隊長、エースパイロットを援護する事で真価を発揮するタイプである為、過去の戦果を見る限りでも地味としか良いようはない。

 ライルも幼少の頃は軍に20年以上も籍を置きつつも戦果をあげる事もなく出世のしない父をカッコ悪いと思っていた頃もあるが、成長につれて戦場ではエースだけでは勝てない事に気付いた。

 戦果を挙げるエースにそれを援護する友軍が居て初めて勝つ事が出来ると言う事に気付いて今では隊の縁の下の力持ちであるオブライトを尊敬している。

 尤も、フォルスのようにその気になれば一人で勝てる規格外のパイロットもいる事を知って軽くショックを受けたが、今では目標とはしていないが、フォルスの事も父とは違うベクトルで尊敬はしている。

 

「そうだったんですか」

「確か、ライルの父親は艦長の部下だったんだよな」

「ええ、艦長がディーヴァのMS隊にいた頃の部下だったみたいです」

 

 実際はそれ以前にも部下だったことはあるが、ディーヴァにいた頃の話は両親の馴れ初めも含めて良く聞いたのでその時に部下だったことしかライルは知らない。

 

「ディーヴァにいた頃って事はガンダムと一緒に戦ったって事だよね」

「そう言う事になりますね」

 

 ライルは少し誇らしげにそう言う。

 ウルフがディーヴァのMS隊の隊長だった時にはディーヴァにガンダムが配備されていたと言う話は有名だ。

 つまり、ウルフがディーヴァに配属されていた時に部下だったと言う事はオブライトが共にガンダムと戦ったと言う事になる。

 ガンダムは連邦軍以外でもヴェイガンとの戦いの流れを大きく変えたMSとして非常に有名で、ガンダムと配備された戦艦に配属されて共に戦ったパイロットは多くはない。

 だが、そのガンダムと共に戦ったパイロットに自分も含まれている事にライルは気がついてはいなかった。

 

 

 

 

 

 ノートラムを出港し、ホワイトファングは大気圏の突入の準備に入っていた。

 しかし、大気圏に突入しようと言う時にホワイトファングのレーダーに反応が出た。

 

「艦長! 接近する熱源が……MSです!」

「このタイミングでか!」

「どうします? 艦長?」

「どうするも何も、ホワイトファングは動けん。MS隊を出すしかないだろう」

 

 すでに大気圏の突入準備に入っており、ホワイトファングは下手に動けば降下地点が大きくずれる危険性がある。

 その為、MS隊を出して接近するMSを追い払うしかない。

 だが、下手をすれば出撃させたMSがホワイトファングに帰投出来なくなれば単独で大気圏に突入しなければならない。

 フォルスのガンダムAGE-2X改は機動性を重視して装甲がオリジナルよりも薄いがそれでもストライダー形態で単独で大気圏の突入は可能だが、他のMSには大気圏の突入能力はない為、大気圏に突入した場合、運が良ければ死なないが突入時の摩擦熱で機体が燃え尽きるか、コックピット内の温度が上昇して焼け死ぬ可能性もある。

 しかし、敵と思われるMSが接近している以上、フォルス以外にも出て貰わなければならない。

 

「このままでは沈められる。俺も出る。ラウラ、後は任せた」

 

 プロト3を下してホワイトファングの戦力がダウンしている上に地球に降下する以外に逃げ場がないので、少しでも戦力を投入する為にウルフもGファングで出撃する事にする。

 ウルフがブリッジを離れてラウラはウルフの代わりに艦の指揮を執る。

 

「まさか、こんなタイミングで仕掛けて来るなんてね」

 

 MSの出撃命令が出た為、パイロット達は自分の機体に乗りこんでいる。

 フォルスは敵の仕掛けて来るタイミングに違和感を覚えていた。

 すでに接近している敵はUIEでその中に三機のカスタムゼイ・ドゥに奪取された四機のプロト3である事が報告されている。

 相手がUIEならば、フォルスのAGE-2X改につけられている発信機によってこちらの位置は常に捕捉されているが、余りにもタイミングが良すぎる。

 ここまでの道中で仕掛けるタイミングは幾らでもあった。

 だが、UIEはホワイトファングが一番、無防備となる大気圏への突入のところを狙って来ている。

 ノートラムへの入港や進路からでは大気圏に突入して地球に降りると言うのは可能性の一つでしかなく、他の可能性も無数に存在している。

 その可能性の中から一番有利に戦えるタイミングで仕掛けてきたのは偶然には思えなかった。

 

「まぁ、そんな事は今は関係ないか」

「フォルスさん! 今回もパイロットスーツは着ないんですか」

「そうだね。今回も着ないよ」

 

 いつも通り、私服の状態で機体に乗り込もうとしていたところにキャロルが止める。

 今回は最悪の場合、フォルスは単独で大気圏に突入しなければならない。

 AGE-2X改は単独で大気圏に突入が可能だが、その時にコックピット内の温度は上昇する。

 その時にパイロットスーツを着ているか否かではフォルスの生存率に関わって来る。

 だが、フォルスはそれをお構いなしに機体に乗り込む。

 これ以上は言っても無駄であるので、キャロルはフォルスが無事に戻って来る事を祈るしかない。

 機体に乗り込んだフォルスはピルケースから錠剤を出して飲み、出撃する。

 

 

 

 

 

「機体が重い……重力に引かれてるんだね」

 

 出撃したフォルスはそう感じていた。

 すでに大気圏ギリギリである為、機体が重力に引かれて重く感じる。

 その感覚は今までの戦闘経験では味わった事のない感覚でコロニー内での戦闘とも違う。

 

「フォルス以外は余りホワイトファングから離れるなよ。お前たちのMSでは大気圏で燃え尽きるからな」

 

 ウルフはフォルス以外に忠告する。

 実際は運が良ければ死なないのだが、運に頼って大気圏に突入など最後の手段でそれを前提に戦闘するなどあり得ない。

 

「つぅ訳だフォルス。暴れて来い」

「仕方がないね。艦長達の分は回さないかも知れないよ」

 

 AGE-2X改はストライダー形態に変形すると、ハイパーブーストを使い重力を振り切るかのように加速する。

 ハイパーブーストで加速したAGE-2X改にゼイ・ドゥがビームマシンガンを放ち、迎撃する。

 AGE-2X改は機体を左右に振って的を絞らせずにしつつも、ハイパードッズライフルでゼイ・ドゥを撃墜し、カーフミサイルで弾幕を張る。

 

「貰ったよ! ガンダム!」

 

 プロト3タイタスがドッズハンマーを振るい、AGE-2X改はMS形態に変形して回避する。

 

「悪いけど、君を正面切って戦う気はないよ」

 

 プロト3タイタスを相手に正面からぶつかり合っては勝ち目はないのは目に見えている為、AGE-2X改はプロト3タイタスから距離を取ってハイパードッズライフルを放つが、プロト3タイタスは腕でガードする。

 AGE-2X改の放ったビームはプロト3タイタスの腕に弾かれる。

 

「分かったけどね」

 

 AGE-1タイタスのパワーと防御力を更に強化されているプロト3タイタスに生半可な攻撃力では意味がない。

 だが、ハイパードッズライフルの威力ならば、当たり所が良ければ撃破は可能で攻撃する事自体は無意味と言う訳ではないので、AGE-2X改はハイパードッズライフルを向けるが、プロト3ストライダーがドッズライフルで妨害する。

 

「挟み込むぞ。カティア」

「分かってるわよ。フェルナンド」

「良いよ。二人まとめて面倒を見て上げるよ」

 

 プトロ3ストライダーはストライダー形態でドッズライフルをビームキャノンを放ち、AGE-2X改はかわしつつハイパードッズライフルで反撃していると、プロト3タイタスがドッズハンマーで殴りかかる。

 その一撃をAGE-2X改は受ける事なく、かわす。

 だが、その先にはマドックのゼイ・ドゥMカスタムが待ち構えていた。

 

「お前は!」

「君もしつこいね!」

 

 Mカスタムは高出力ヒートソードを振るいAGE-2X改はビームサーベルで受け止める。

 

「今日はいつもと違うね」

 

 フォルスは対峙するマドックが今までとは違う決意を持って向かっている事を感じ取る。

 

「凄い執念だよ。しつこい男は嫌われるらしいけど、ボクは執念深いのは嫌いじゃないね!」

 

 AGE-2X改はMカスタムの高出力ヒートソードをはねのけるとハイパードッズライフルを向ける。

 AGE-2X改がハイパードッズライフルを放つ前に、プロト3ストライダーがドッズライフルを放ち、AGE-2X改は回避するが、その先にはプロト3タイタスがドッズハンマーを振り下ろしている。

 

「回避先を狙うのは戦術の基本中の基本だけど、こうしてやられるとうざいよね」

 

 AGE-2X改はストライダー形態に変形し、ハイパーブーストの急加速でかわす。

 プロト3ストライダーとMカスタムはドッズライフルとビームキャノン、ビームガトリング砲でAGE-2X改を追撃する。

 

「ヤレヤレ……どうして……三機でも楽しめそうじゃないか……」

 

 AGE-2X改は攻撃をかわしながら、旋回してハイパードッズライフルとビームバルカン、残っているカーフミサイルを放つ。

 思いの外、手こずっている為、フォルスも戦いに熱が入り、本来の目的であるホワイトファングに敵を向かわせない事はどうでも良くなっていた。

 その為、すでにMカスタム、プロト3タイタス、プロト3ストライダー以外のMSはホワイトファングに向かって行っていた。

 

「フォルスが抜かれたか……まぁ良い。プロト3を二機も抑えてるんだ。キース。前衛は任せた。後の事は気にしないで構わん」

「了解です」

 

 フォルスを抜いて来たUIEのMSをキース達が迎撃に当たる。

 ジェノアスキャノンⅡがドッズキャノンで砲撃を行い敵を散開させると、飛行形態のクランシェが敵MSに突っ込む。

 クランシェはドッズライフルを放ち、ゼイ・ドゥを撃墜すると、MS形態に変形するとドッズライフルをレーラのLカスタムに放つ。

 

「敵の数は三機……ここは私達の部隊で相手をするわ」

「頼んだぞ」

 

 Lカスタムがビームライフルを放ち、バックパックのビットを射出する。

 クランシェはドッズライフルを放ちながら、ビームバルカンを放つ。

 Gバウンサーがドッズライフルでクランシェの援護をしているうちにアレクセイのプロト3ダブルバレットと、ニックのプロト3スパローがボリスのBカスタムと共に迂回しつつ、ホワイトファングに向かっていく。

 それをライルのジェノアスキャノンⅡがドッズキャノンで牽制するが、ゼイ・ドゥのビームマシンガンの攻撃をシールドで防ぐ為、砲撃を中断せざる負えない。

 

「ライル、あいつらは俺の方で何とかする。お前はキース達の援護をしろ!」

「分かりました!」

 

 ウルフのGファングが防衛線を突破して来た三機の方にハイパードッズライフルを放ち向かって行き、ジェノアスキャノンⅡはゼイ・ドゥに肩の三連装を放ち、ドッズライフルで撃墜する。

 

「ここまで突破して来て御苦労だが、この俺様を突破出来ると思うなよ!」

「敵は一機だ。戦艦ごと叩く」

 

 Bカスタムはレールガンを放ち、プロト3ダブルバレットは両手のドッズライフルを放つ。

 Gファングはハイパードッズライフルで応戦し、二機は回避する事で手一杯で突破が出来ない。

 

「一機だが、厄介な敵のようだ」

「だが、それでもここで沈ませる」

 

 プロト3ダブルバレットは胸部のビーム砲を放つ。

 Gファングは避けようと思えば避ける事は可能だったが、プロト3ダブルバレットの胸部のビーム砲の威力は高く、ホワイトファングも対ビーム拡散弾を使ってはいるが、完全に威力を殺す事は出来ない為、下手に回避するとホワイトファングに直撃する。

 その為、Gファングはシールドで受け止める。

 幸い、一撃ではシールドは破壊されなかったが、何度も防げる威力ではない。

 

「最後に残ったのが火力に特化したタイプか……」

 

 防衛線を突破して来たのが火力を重視したタイプのプロト3ダブルバレットとゼイ・ドゥBカスタムである事は非常に厄介だった。

 対して火力が無いのであれば、Gファングの機動力で翻弄して仕留める事は出来た。

 だが、高火力の二機を前に下手に自分が良ければホワイトファングが沈められる。

 尤も、UIEはそれを見越して火力の高い二機を先に行かせたのは明白であった。

 

「だが……そいつは普通のパイロットを相手にした時だ。この俺様にそんな事が通用すると思うなよ!」

 

 Gファングはハイパードッズライフルを放ち、シールドを捨ててビームサーベルを抜いて二機に切りかかる。

 二機は散開して、Gファングはビームサーベルをプロト3ダブルバレットに振い、プロト3ダブルバレットはかわし、GファングはハイパードッズライフルをBカスタムに放ち、再度プロト3ダブルバレットに切りかかる。

 プロト3ダブルバレットはGファングにツインドッズキャノンと両手のドッズライフルを放つが、ホワイトファングを背にしない位置取りをしているのでGファングは好きにかわせる。

 そして、Gファングがプロト3ダブルバレットと交戦している隙にBカスタムがレールガンをホワイトファングに向けるが、Gファングはハイパードッズライフルで妨害する。

 

「撃たせないつもりか」

 

 ウルフの取った戦術は非常に単純な物だった。

 砲撃を避ける訳にはいかないのであれば、ホワイトファングを背にしないで戦い、攻撃を続けることで敵に砲撃を撃たせ辛くする事だった。

 ホワイトファングを背にしない事で攻撃をかわせるようになり、ホワイトファングを狙うと必然的にGファングに背を向ける事になるのでホワイトファングを狙う事も難しくなる。

 その上で自分は格闘戦を仕掛ければホワイトファングに攻撃が当たる心配はない。

 もう一機には攻撃をし続ける事で砲撃を撃たせないようにする。

 強力な火器を使う時にはどうしても足を止める必要があり、その隙を与えなければ強力な砲撃を撃てないことになる。

 言うのは簡単だが、それをやり続けるのは高い操縦技術と判断能力が必要となって来る。

 歳のせいでこのまま長時間の戦闘は出来そうにないが、敵も離脱限界高度に接近すればホワイトファングを沈める事を諦めて撤退する筈なので、それまで粘れば良い。

 だが、そこでウルフはある事に気がつく。

 防衛線を突破して来たのはBカスタムとプロト3ダブルバレットの二機ではない。

 もう一機、プロト3スパローが接近して来ていた筈だった。

 高火力の二機に気を取られていたがプロト3スパローはAGE-1 スパローの俊敏性と隠密性を受け継いでいる為、ウルフが二機の相手をしているうちにホワイトファングに接近していた。

 

「くそ! あの野郎!」

 

 すでにウルフのGファングを突破してプロト3スパローはホワイトファングに向かっている。

 ホワイトファングは対ビーム拡散弾を射出しているが、プロト3スパローにはビーム兵器が装備されていないので意味がない。

 ホワイトファングは主砲を放つが、大気圏に突入する為、射角が固定されているのでプロト3スパローは主砲の射角から外れて左腕の固定式マシンガンを構える。

 だが、プロト3スパローがマシンガンを放つ前にGファングやBカスタム、プロト3ダブルバレット、プロト3スパローに対してビームが飛んで来る。

 

「今度は何だ!」

「艦長! ヴェイガンのMSが接近中です!」

「今度はヴェイガンかよ!」

 

 プロト3スパローの攻撃を邪魔してくれたが、接近しているのがヴェイガンである為、確実に自分達の敵であるので素直に喜べはしない。

 

「白い四枚羽根のガンダムは俺がやる。ティアナは母艦を頼む」

「了解」

 

 スラッシュのゼイドラはAGE-2X改の方に向かい、ティアナのプロトギラーガはホワイトファングの方へと向かう。

 プロトギラーガはビームバルカンを連射しながら、プロト3スパローに突っ込む。

 

「邪魔しないで欲しいな」

「ガンダムタイプのMS……どう言う状況なのよ」

 

 AGE-2X改以外のガンダムタイプはプロト3イノベーションとは交戦経験があったが、その他にも四機もガンダムタイプのMSがある事はスラッシュ達は知らない事だったが、ガンダムタイプである以上、ヴェイガンにとっては鬼門でしかない。

 プロト3スパローはシグルランスの先端を射出して、プロトギラーガはプロトギラーガスピアで弾き、ビームバルカンを放つ。

 AGE-1 スパロー同様、装甲の薄いプロト3スパローではビームバルカンでも十分に脅威である為、プロト3スパローは完全にかわそうとしるが、プロトギラーガは接近してプロトギラーガスピアを振るいプロト3スパローはシグルランスで受け止める。

 

「連中にとってはガンダムは敵ってか……好都合だ」

 

 Bカスタムとプロト3ダブルバレットを抑えているウルフにとってはプロト3スパローとプロトギラーガが潰しあってくれるのは非常に好都合だった。

 そして、バクトやガフランがGファング達の方にもビームバルカンで攻撃してくる。

 

「まぁ、俺も敵であるって事だわな」

 

 Gファングは攻撃をかわしつつも、ヴェイガンのMSではなくUIEの二機にハイパードッズライフルを放つ。

 

「そろそろか……フォルス! 早いところ戻って来い!」

 

 すでにホワイトファングは大気圏に突入し、MSの推力では離脱可能限界高度に近づいている。

 その為、UIEのMSも深追いは出来ない。

 

「分かってる」

 

 AGE-2X改はホワイトファングの方に戻ろうとするが、ゼイドラがゼイドラガンを放つ。

 ゼイドラはゼイドラソードでAGE-2X改に切りかかり、AGE-2X改はビームサーベルで受け止める。

 

「君もしつこいね」

「こっちも手ぶらじゃ帰れないんだよ!」

 

 AGE-2X改はゼイドラを蹴り飛ばし、ゼイドラは蹴り飛ばされながらもゼイドラガンで反撃する。

 

「スラッシュ様!」

「くそ……しくじった!」

 

 蹴り飛ばされたゼイドラは不運にも地球の方に蹴り飛ばされている。

 それによってゼイドラは離脱限界高度を超えてしまっている。

 つまり、ゼイドラは単独で戻る事が出来なくなったと言う事だ。

 

「今、行きます!」

「来るな! お前までこっちに来たら誰がメナスを守るんだ!」

 

 この後も、場合によってはUIEと交戦するかも知れない。

 そうなった時、今のメナスの戦力では守りきる事は不可能だ。

 その為、ティアナまで地球に降りる事は出来ない。

 

「しかし、ゼイドラでは!」

「何とかする。俺を信じろ。俺はこんなところで死なない」

 

 ゼイドラでは単独で大気圏に突入出来るかは微妙なところだ。

 かつてゼハートもゼイドラで大気圏を突入に成功しているが、あの時はマジシャンズ8のリーダーのドール・フロストのゼダスMがゼイドラの盾になったから成功しているので今回も成功するとは限らない。

 

「了解しました……必ず戻って来て下さい」

「分かってる。必ず戻る」

 

 プロトギラーガは残存しているMSと共にメナスまで後退していく。

 

「全機、撤退だ」

 

 ホワイトファングが離脱限界高度を超えたことでUIEのMS隊も後退を始めている。

 だが、その指揮を執っていたマドックのMカスタムはホワイトファングに帰投しようとしているAGE-2X改の方にビームガトリング砲を撃ちながら向かう。

 

「マドック、何をしている」

「ガンダムは落とす」

「正気なの? 幾ら、カスタムゼイ・ドゥでも離脱出来なくなるわ」

「構わん」

 

 ボリスとレーナの制止を振り切り、マドックはAGE-2X改の方に向かう。

 二人の言う通り、このままでは大気圏を離脱は出来なくなる。

 それでもここで意地でもAGE-2X改を落とすと言う決意がマドックにはあった。

 

「またやるってのかい?」

 

 AGE-2X改はMカスタムにハイパードッズライフルを放つ。

 Mカスタムはシールドで防ごうとするが、Mカスタムの腕ごとシールドが吹き飛ぶ。

 

「お前だけは!」

 

 Mカスタムは高出力ヒートソードを振るい、AGE-2X改はビームサーベルで受け止める。

 そのまま、Mカスタムはスラスターを最大出力で使う。

 それによって、AGE-2X改はMカスタムと共に加速して行く。

 

「コイツ……死ぬ気!」

「私の命に代えても! ここで仕留める!」

 

 AGE-2X改は重力に引かれて加速して行き、ホワイトファングからも離れて行く。

 AGE-2X改はMカスタムを押し戻すと、もう一本のビームサーベルを抜いてMカスタムの右腕を切り落とす。

 両腕を失ったMカスタムはAGE-2X改に突撃する。

 だが、AGE-2X改はビームサーベルを突き出して、Mカスタムの胴体に突き刺さる。

 Mカスタムは爆発を起こして、更にAGE-2X改は爆風で加速する。

 

「これは少し不味いな……まさに執念の成せる技と言う事か……」

 

 AGE-2X改はストライダー形態に変形しする。

 

「フォルス!」

「悪いけど、戻れそうにないよ。ボクはこのまま大気圏に降下する。何、少し勢いが付き過ぎているけど、大丈夫だと思うよ」

「でも!」

「艦を寄せろ」

 

 ホワイトファングに帰投出来なくなった、AGE-2X改に通信を繋いでいたホワイトファングのブリッジに帰投したウルフが戻って来る。

 

「アイツは大丈夫だ」

 

 ウルフはフォルスの出生の事を知っている為、この程度では死なない事は分かっている。

 

「それよりも、このままじゃガンダムを見失う。ホワイトファングの推力ならまだ突入角を変える事が出来る。多少、目的地から離れるが地球を旅行出来ると思え」

 

 今、突入角を変えれば何処に降下出来るか分からないが、このままではフォルスを見失う事は確実である為、ホワイトファングはすぐにAGE-2X改を追うように突入角を変える。

 

「全く……ボクを追っかけてくれるんだ」

 

 AGE-2X改の方でもホワイトファングが突入角を変えた事は確認出来る。

 すでに摩擦熱でコックピット内の温度は上昇し、フォルスも汗だくになっている。

 Mカスタムの決死の攻撃で勢いが付き過ぎてはいるが、十分に大気圏に突入出来る範囲内だったが、コックピット内に衝撃が走る。

 

「今度はって……君か」

 

 その衝撃は重力に捕まったゼイドラがAGE-2X改の上に乗った衝撃だった。

 少しでも無事に大気圏を抜ける為にスラッシュは降下体勢のAGE-2X改の上に乗りAGE-2X改を盾にしようとしていた。

 

「悪いな。俺もまだ死ねないんでね」

「参ったな。今からじゃ振り下ろせないね」

 

 今、振り下ろせば、AGE-2X改も体勢を崩しかねない。

 ゼイドラが上に乗った事で更に勢いが付き、乗った時の衝撃で更に突入角がずれてホワイトファングから遠ざかっていく。

 

「ここから先は運次第と言ったところか……」

 

 AGE-2X改はゼイドラを乗せたまま、大気圏に突入していく。

 

 

 

 

 

 

 大気圏に突入したAGE-2X改は無事に大気圏を抜ける事に成功するも、勢いが付き過ぎてまともに機体を制御出来ない状態で地上に降下していく。

 その途中でゼイドラは振り下ろされてその分は軽くなったが、勢いが衰える事はない。

 そして、AGE-2X改はそのまま地上に激突する。

 幸い、AGE-2X改が降下したのは雪山で雪がクッションとなるが、地上に落ちた衝撃がフォルスを襲う。

 シートにベルトで体を固定しているが、その衝撃でベルトは壊れ、フォルスはコックピット内で何度も体を撃ちつけて気を失う。

 それからある程度の時間が経ち、フォルスは意識を取り戻す。

 

「……何とか生きてはいるな」

 

 意識を取り戻したフォルスはコックピット内でひっくり返った状態になっていた。

 フォルスは重力の向きから自分の方が逆さになっていると判断して、体の向きを変えると、コックピットが上下がさかさまになっている事から、機体が仰向けになっていると言うことが分かる。

 その後、自分の体の状態を確認する。

 地上に落ちた時に体の至るところと打ち付けた為、体の至るところに痛みがあり、骨が折れているところもある。

 

「問題はないな」

 

 骨が折れているところも行動に支障がない事を確認すると、機体の状態を確認する。

 大気圏の突入と地上に激突した時の衝撃で機体へのダメージは少なくない。

 幸い、稼働する事には問題はなさそうだが、ハイパードッズライフルは使えそうにない。

 

「機体も問題はないな」

 

 機体が動く事を確認すると次は周囲の状況を把握する。

 モニターの周りは吹雪いている為、視界は非常に悪い。

 センサー系も調子が悪い為、何も映さず通信も出来そうにない。

 

「こうも視界が悪いと外の状況も分からんな」

 

 フォルスはハッチを開けて機体の外に出る。

 外に出ると、フォルスは外から機体を確認すると、やはり、ストライダー形態のまま仰向けになっている。

 

「さて……どうしたものか……」

 

 このままではいつ救援が来るか分からない。

 機体に発信機が取り付けられている為、来るのは友軍よりもUIEの可能性も高い。

 

「仕方がない。近くの街まで歩くか」

 

 いつ、友軍と合流出来るか分からない以上、機体を動かしたくはない。

 先ほどまで戦闘をしており、ハイパーブーストまで使っている為、推進剤は節約したかった。

 その為、フォルスは近くの街まで歩きそこから友軍に連絡を取るなり、機体の補修をするなりしようと判断する。

 そう決めたフォルスは人のいそうな方向に歩きだす。

 

 

 

 

 

 その判断が誤りであった事をフォルスは数時間後に痛感していた。

 怪我自体は問題ではなかった。

 問題は吹雪にあった。

 フォルスは自分の能力に絶対の自信を持っており、今の体の状態でも数キロを数時間かけて歩く事も可能だと思っていたが、吹雪は容赦なくフォルスから体力を奪っていた。

 それも当然の事だった。

 フォルスの格好は動き易さを重視した物で、戦艦やコロニー内では季節を再現しているところ以外では問題はなかったが、地上ではまだ冬が開けていない。

 その上、吹雪いておりそこを夏に着る様な服装で歩くなど自殺行為でしかない。

 フォルスはクライドの人格をトレースしている為、常に自分の能力には自信を持っているが、クライドのように才能と能力から来る物ではなく、単にクライドを真似ているだけであるので、戦闘に置いては自信に違わない力を発揮するフォルスもそれ以外ではただの過信でしかなかったと言う事だった。

 一度、AGE-2X改に戻ろうとするも、AGE-2X改の場所をXラウンダー能力で感知しようにも寒さから集中出来ずに場所を感知出来ない。

 歩いて来た道も吹雪で足跡も消えて戻るに戻れない。

 

「自然と言う物を甘く見ていた様だ」

 

 フォルスは足を滑らせて雪の上に倒れる。

 只でさえ、降下時のコックピット内の温度の上昇で体力を奪われて、雪山に落ちた時の衝撃で負傷し、夏場の格好で吹雪の中を歩いて来たフォルスの体力は限界だった。

 普通の人間ならそこまでは持たずに機体で大人しく救援を待っていただろうが、身体能力を強化されていたフォルスは不幸にも機体から降りて出歩くだけの力は残されていた為に、雪山の真ん中で力尽きると言う最悪の事態を招く事になった。

 

「体が動かん……」

 

 力尽きたフォルスの視界は次第にボンヤリとして行く。

 もはや、自分で動く事すら出来ないフォルスの意識は遠のき、やがて完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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